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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

相姦の構図

2016年10月26日(Wed) 05:41:51

息子は母親で、女の味を知り、
父親は息子の嫁で、処女の味を知る。
弟は兄嫁で、兄は弟の嫁で、不倫の味を知る。
たまさか一方的にむさぼられるものがいたとすると、
その者は寝取られる歓びに目ざめてゆく。


あとがき
八方丸く収まる・・・ということで。^^

男と浮気妻

2016年10月23日(Sun) 17:59:53

性には淡泊なほうだった。
30過ぎで結婚して、2年ほど経つけれど、セックスの回数はどんどん疎遠になっていって、
妻も内心の不満を抑えつつも、子供をあきらめかけているようだった。
そんなわたしが、こともあろうに、”男”にハマってしまった。
相手は取引先の、年齢不詳の男。
たまたま出張先で同室に泊まり合わせて、いっしょに酒を飲んで部屋に戻って、気がついたら抱かれていた。
その晩ひと晩のあいだに、わたしはすっかり作り変えられてしまっていた――

来る夜も来る夜も、彼との激しい情事なしに帰宅することはなかった。
そして疲れ果てたわたしは、妻を抱くこともなく眠りをむさぼった。
そんなあるとき、彼からのおねだり――奥さんの服を着て、逢ってくれないか?
わたしが小柄で、妻と同じくらいの背格好であることは、彼はとっくに知っている。
もちろん、ふたつ返事でOKした。

わたしが狙ったのは、季節外れの夏物の服。
クリーニングして戻しておけば、たぶん気づかれないだろう。
というよりも。
そんな配慮以前に、わたしは彼に尽くすことに夢中になって、後先考えることなく行動に移してしまっていた。

純白のボウタイブラウスに薄紫のタイトスカート、肌色のストッキングを身に着けたわたしに、
男はいつも以上に息荒く、のしかかってくる。
初めて気がついた。
妻になり切って犯される。
男の要求している趣向は、まさにそういうことなのだ。
わたしはいままでにないエクスタシーに喘ぎながら、女になり切って、朝まで辱め抜かれていった。
別れぎわ、男は言った。こんどは奥さんを連れて来い。
いつにない命令形に、強引にされる快感さえ覚えたわたしは、奴隷になった女のように、頷いていた。

無断外泊をしたわたしに、妻は目を尖らせた。相手の女に会わせて頂戴。渡りに船とはこのことだった。
わたしはさっそく男と連絡を取って、奥深い森のに隠れたその住処へと、妻を伴って訪問した。
すでになん度も訪れたことのあるその家は、わたしにとっては勝手知ったる場所だったが。
妻はもとより不案内で、勢い込んで来たのはよかったけれどと、きょろきょろと滑稽なまでにあたりのようすを窺っていた。
そんな妻を男と二人きりにすると、わたしはいちぶしじゅうを隣室で見届けていった。
すでに男を識ってしまったわたしにとって、もはや彼がすべてと思えるほどだったから。
セックスの対象ではなくなった妻が抱きすくめられるのは、思ったほどの痛痒さえ、伴わなかった。

妻がよそ行きのスーツを着崩れさせて、いともあっけなく陥落して、アヘアヘとだらしなく乱れてしまうのを、
わたしはしらっと眺めていたが――そこでふたたび、変化が起こった。
男の腕に抱かれているのは、わたし・・・?
そんな想いが兆したとき。
わたしのなかで、彼の腕のなかにある妻とわたし自身とが、瞬時に入れ代わっていた。

脱げかかったストッキングをひらひらさせながら、大胆に脚を開いて応じてゆく妻は、わたし自身。
もっと・・・もっと・・・そうせがむ妻の喘ぎは、わたしの声。
妻の痴態とわたしの願望とは、ぴったりひとつに重なっていった。

男が立ち去ったあと。
乱れた着衣をわたしの前でごまかしようもなくなった妻に、わたしは獣と化して飛びかかっていた。
男はわたしたちを、車で送り届けてくれて――その晩ひと晩じゅう、わたしたち夫婦は、いままでにないセックスに入りびたりになっていった。

男がスッとわたしの前から姿を消したのは、それから間もなくのことだった。
けれども妻はひそかに、男と逢いつづけているらしい。
わたしの留守中には男と逢瀬を愉しんで。
わたしが戻ってくると、セクシィに着飾って、夫婦の営みに応じてゆく。
ひところ男にはまったわたしは、いまは浮気妻に乗り換えていた。
浮気帰りの妻が、男と交し合った汗の匂いをぷんぷんさせながら、夫婦のベッドで大の字になるそのうえに、
わたしは鼻息荒く、のしかかる。
妻に子供が授かったのは、それからいくらもしない頃だった――

気丈。

2016年10月22日(Sat) 07:28:41

公園の朝もやのかなたから、濃紺の制服姿がのろのろと、こちらに向かって歩みを進めてくる。
足許を引き締めるのは、真っ白なハイソックス。
グレーのひだスカートとぴかぴかの黒の革靴にしっくりと似合う、絶妙のアンサンブル。

少女の歩みが遅いのは、ほとんど俺のせい。
夕べも吸った。その前の日も吸った。たぶん、そのまた前の日も――
なのに彼女は、俺の求めに応じて、今朝もこうして通学路をはるかにはずれ、来てくれる。
牙の毒でたぶらかしたわけじゃない。
そんなことだけでここまでいうことを聞いてくれるような、自分のない子じゃない。
いや、ほんのすこしはたぶらかしたか・・・
けれども強い意志を秘めた瞳は、まだあんなに遠くにいるというのに、
しっかりとまっすぐに、俺を目ざして近づいてくる。

遅れてごめんなさい。
きょうは、どうしても学校に行かなければならないの。
言いにくそうな謝罪の言葉。
そして、自分の事情を説明するには、あまりにも言葉足らずな言い訳。
ほんらいは、人に頭を下げることなど大嫌いな、高慢で気の強い少女。
それがいまは、俺の隣に腰をおろして、「どこから噛んでもいいわよ」って顔をしている。
すまないね。
俺はひと言囁くと、そろそろと彼女の足許にかがみ込む。
真新しいハイソックスに浮いた細めのリブが、ゆるやかなカーブを帯びて、たっぷりとした脚線に沿っている。
整然としたリブの流れは、「これから学校に行くのよ」という少女の凛とした気合を伝えるように。
まっすぐとしたカーブを描いていた。
俺はどうにもならなくなって、爛れた欲情でいびつに膨らんだ唇を、ブチュッと圧しつけていた。
恥知らずな唇を吸いつけて、しなやかなナイロン生地の感触をたしかめるように、ふくらはぎをなぞってゆく。
お行儀よくきちんと履かれたハイソックスを微妙によじらせて、
じょじょにずらしていった唇のあとを、よだれの痕が拡がってゆく。
そのあいだ。
彼女はじいっと何かをこらえるように、地面の一点を睨みつけて。
そして、俺のほうへは目も向けようとしない。
目の前の屈辱が、そもそも最初からありはしないのだと言わんばかりに。

いつもなら、そのままガブリといくところだったが。
きょうはなぜか気が引けて、彼女のハイソックスによだれの痕だけを残して起き上がる。
横抱きにして引き寄せると、彼女はなんの抵抗もなく、俺の腕のなかに落ちた。
咥えたうなじのなめらかな皮膚は、かさかさに干からびた俺の唇に、初々しい体温を心地よく伝えてくる。
俺はとうとう我慢できずに、ググッ・・・と牙を沈めていった。
じわじわとにじみ出るうら若い血潮を、じゅるじゅると汚らしい音をたてて、吸い取っていった。
そのあいだもずっと、彼女の目線は、おぞましい吸血行為を全く無視するかのように、地上の一点を睨みつづけていた。

今朝は少なくて、ゴメンね。
俺が手かげんしたのを、この子はとっくに見通していた。
かまわない。ちゃんと学校行けよ。
俺も瘦せ我慢をして、そう応えてやる。
明日は学校お休みだから、帰りにまた寄るね。
無理するんじゃないぞ。
無理なんか、してない。あなたこそ、無理しないで。
生意気な少女は、どこまでも減らず口をやめなかった。
ふと気がつくと。
彼女のことをしっかりと、抱きしめていた。

制服越しに伝わる体温が、彼女の心意気をありありと、伝えてくる。
だいじょうぶ。きょうもこの子は、がんばれる。きっとこの子だから、がんばれる。
帰りを愉しみにしているぞ。
虚勢を張った負け惜しみを、彼女はすぐに見抜いたはず。
けれどもそんなことは色にも出さず、しつようだった抱擁からスッと身を離すと、
期待しててね。
そっけなく言い捨てて、歩みを進めていく。
今朝はまだらもように彩られることのなかった白のハイソックスの歩みが、
整然と、ゆったりと、朝もやの彼方に消えていった。

見あげれば、天井が一段高くなったような青空――
気がつけば、周りは秋一色に彩られていた。

お見合いの条件。

2016年10月21日(Fri) 07:29:50

じつはわたし、女装者なんです。
職場にも、離れて暮らす家族にも、内緒なんですが。
オフのときにはいつも、女性の恰好をしています。
性対象は女性だけですよ・・・たぶん。
でもね。
結婚しても、女装はやめられないと思うんです。
夫婦なのに女ふたりの外見で出歩く夫婦なんて・・・おかしいでしょう?
そういうのがどうしても耐えられない・・・というのなら、
どうかこのお話はなかったことにしてください。

女装がお好きなんですね。かまわないじゃないですか。
私は気にしませんよ。家にいるときくらい、リラックスなさればいいと思います。
あなたとは服のサイズが近そうだから、着れる服が合ったら貸してあげてもいいですよ。
では、私の事情も話しますね。
じつは私、つき合ってる人がいるんです。
相手は結婚している方で・・・でもセックスの相性がよくって、結婚しても別れられそうにありません。
あなたの留守中にその人に逢いに行ったり、時には家にいるときでも出かけてしまうかもしれません。
結婚したばかりなのに日常的に浮気されるなんて耐えられない・・・というのなら、
どうかこのお話はなかったことにしてください。

このお二人は、結局いっしょになったようです。
奥さんはご主人に見送られて浮気に出かけていって。
そんなときでもご主人は、女の姿で見送ったり、送り迎えをしてあげたり。
そのうちに、奥さんの浮気相手に、ご主人のパリッとしたスーツ姿が目に留まって、
夫婦ながらひとりの男性に愛されるようになって。
いまでは二人連れだって、女ふたりでその男性のところに心ウキウキと通う週末を過ごしているということです。


あとがき
こんなカップルがいてもいいかな・・・と思い、描いてみました。

斡旋。

2016年10月18日(Tue) 07:55:09

わたしは、吸血鬼専用の女の斡旋屋。
手近な女をやつに紹介して血を吸わせ、悩乱するありさまを観て愉しむのが役得。
きょうはだれを、堕とそうか?

向坂くん、ちょっと打ち合わせ室に。
きょうの獲物は、同じ課にいる若いOL・向坂京子。
個室の打ち合わせスペースに呼び出すと、そこには吸血鬼が待ち構えている。
「アッ、あなたは・・・吸血鬼・・・!!」
相手の正体をすぐに察して棒立ちになり、
壁ぎわに追い詰められて悲鳴をあげそうな口許を両手で抑えるスキに、
やつは彼女の足許にかがみ込んで、
肌色のストッキングに縁どられた脚線美を、唇で冒してゆく――
ちゅうっ・・・
口をひん曲げ、白目になって。
向坂クンは、たちまち貧血を起こしその場に倒れ伏す。
「きみ、まだ嫁入り前なのに、いけないお遊びをしているね・・・?」
吸血鬼は彼女の寝顔に悪戯っぽく笑いかけ、ピンクのタイトスカートをまくり上げる。
ぁぁぁぁぁぁ・・・
声にならない声を、半開きになったドアのすき間から窺って、ひたすらたんのうしてしまった。


脇本さんの奥さんですね?
ご主人のことで、折り入ってお話が。個別にお越しくださいませんか?
ひたすら紳士的な丁寧語をあやつって呼び出したのは、同僚の脇本の奥さん。
40代の熟女の血を吸いたい。そんな吸血鬼のねがいをかなえるための処置だった。
脇本さんには、もちろんナイショ。
約束の夜、公園に現れた脇本夫人の目の前を、吸血鬼の黒マントがさえぎった。
「えっ?ええっ!?あなた吸血鬼・・・!?」
両手で口許を抑える脇本夫人に迫ったやつは、彼女の足許にかがみ込んで、
黒のストッキングごし、ふくらはぎに唇を吸いつけて、ヒルのようにしつっこく、ねばりつけてゆく――
ちゅうっ・・・
口許を弛め、白目になって。
脇本夫人はそれでも、傍らの街灯にすがりつづけて、立ったまま血を吸い取られてゆく。
「気の毒だが、エッチの経験のあるご婦人とは、そちらも愉しむことにしているんでね」
貧血を起こして倒れ伏した脇本夫人のスーツ姿に覆いかぶさって、
濃い紫のフレアスカートをたくし上げると、やつはせわしなく、腰を動かしていった。


喉が渇いた。血が欲しい。今夜は熟女がいいな。
血を吸わせる女の心当たりが尽きかけた夜、やつはまたもわたしに、おねだりをくり返す。
ええ、ままよ。仕方がない・・・。
今夜はうちの妻しかいませんが・・・
恐る恐る切り出すと。やつはヌケヌケと、言ったものだ。
「さいしょからそいつが、お目当てだった」
連れて帰った、深夜の自宅。
お客を連れて行くから、ちょっといいかっこして待っていなさい。
そんなわたしの言いぐさに、妻は口を尖らせて、
「なによ、こんな時間にどうしたのよ。着替えるなんてめんどうくさい」
その代わり食べたり飲んだりの用意はいらないから・・・と、なだめすかして納得させる。
それはそうだ。やつの飲み物は他ならぬ、あんたの血なんだからね。
不承不承の顔つきを押し隠して、よそ行きの顔でやつを出迎えた妻は。
玄関先で思わず「きゃー!」
だって、いきなり首すじに咬みつくんだもの・・・
そのままその場でチュウチュウ吸われ、ノックダウン。
お姫様抱っこされて、夫婦の寝室に直行させられてしまった。
肌色のストッキングのふくらはぎに、やつの唇がそれはしっくりと吸いついてゆく。

ああ・・・
やっぱり妻のときが、一番昂奮してしまった。

交際それぞれ

2016年10月11日(Tue) 07:59:52

麻利絵ちゃんは、すでに経験者。
彼氏と初エッチしたあと、彼氏の悪友の吸血鬼のところに連れていかれて、血を吸われちゃったそうです。
ほんとうは、エッチのまえに血を吸わせるものだって、彼氏怒られていたけれど。
そのあと、吸血鬼はセックスをしたことのある子の血を吸うときには、エッチもしちゃうって聞かされて。
彼氏の前で、エッチまでされちゃったみたい。
一日でふたりの経験しちゃって、いいのかなーって、麻利絵ちゃん言ってたけど。
そのわりにあんまりシンコクそうじゃなかったのは、
麻利絵ちゃんが犯されるのを見た彼氏が昂奮しちゃって、
それからも二人がしているところを見たがって、すすんでふたりを逢せるようになったからなんだって。


百合香ちゃんはつき合っている男の子はいるけれど、エッチはまだ未経験。
やっぱり怖いって言っていたら、彼氏がセックスの話題を明るく話してくれて。
「さいしょは痛いけど、あとからだんだん、キモチよくなるんだよ」って、教えてくれて。
なんのことかと思ってついて行ったら、其処には吸血鬼が待ち構えていて。
百合香ちゃん、ガブリッ!って、咬まれちゃったんだって。
でも、百合香ちゃんはそれから、咬まれるのにはまっちゃって。
また逢わせて・・・って、彼氏にお願いしているんだって。
彼氏が逢わせてくれたのは、彼氏の叔父さんで、処女の生き血を欲しがっていたらしくって。
それからというもの、週に1~2回の割合で、叔父さんのところに連れて行ってもらってるんだって。
彼氏に連れて行ってもらうのは週1か2だけれど、
それ以外に2、3回こっそり叔父さんと逢っているのは、まだ彼氏にはナイショにしているらしい。

結衣ちゃんは、うちの女学校に女装して通学している、おませさん。
制服が大好きで、うちは女学校なのに30倍の競争率を越えて入学を許可されたんだって。
うちの学校に棲みついている吸血鬼さんも、制服が大好きで・・・同じ趣味で、気が合っちゃったみたい。
だから結衣ちゃんは、いつも吸血鬼の小父さんの好みに合わせて、紺のハイソックスを履いてきて、
「あなたに愉しんでもらうために履いてきたの。咬み破られても泣かないからね」って、お約束しているんだって。
咬み破ってもらったハイソックスは、その場で脱がされちゃうんだけど。
脱がされたハイソックスが1ダースになったら、今度はつき合っている同級生の若菜ちゃんを、紹介してあげるんだって。
おそろいの制服で、おそろいの紺ハイソの脚を、順ぐりに咬ませてあげるのが夢なんだって。
結衣ちゃん、若菜ちゃんのことよろしくね。しっかり、導いてあげてね。
そして二人で愉しく妖しく、堕ちるんだよ~っ☆

同僚

2016年10月11日(Tue) 07:41:59

某地方都市に転勤になったとき。
前々任地でいっしょだった同僚・葉裏になん年ぶりかで再会した。

忘れもしないあの土地は、創業者の出身地。
都会にいられなくなった者たちのなかでも、家族状況を勘案の上、
極秘の性格テストに合格したものだけが赴任を許されるあの土地で。
其処は、吸血鬼と人間とが、密かに共存を許された土地。

たいした仕事を割り当てられずにぶらぶらと過ごすことを許されたわたしたちは、
自分自身と家族の血液を提供して、のんびとした日常を送っていた。
自分の妻を吸血鬼に抱かせた者は、あとから赴任してきたものの妻や娘を抱く特権を手に入れる。

そんな輪廻にも似た連鎖のなかで。
この街に来て初めてわたし以外の男を識った妻に、もっとも執心だったのが葉裏だった。
街の有力者に初めて抱かれ、身も心も解放されてしまった妻は。
そのあと、なん人もの吸血鬼を相手に、性の処理まで引き受けて。
それから、わたしの同僚たちを相手に、順ぐりに不倫をくり返した。
そのなかで、いちばん深く妻に執心し、いちばん多く妻を抱いたのが葉裏だった。
この街に棲みつく都会妻は、だれしもが街の吸血鬼たちの愛人にされるというのに、
妻は異例にも、都会育ちの葉裏とカップリングすることを許された。

葉裏はあの街に棲みついて、家族ぐるみで服従していた。
街の長老に母親を紹介し、長老は父親の理解を勝ち得てその妻を囲い者にしていたし、
子供たちは母親の愛人に懐いていて、
娘たちは齢の順に、村の男衆に処女を捧げていた。
息子は地元でできた彼女を、自分の母親を愛人に紹介し、女の歓びを教え込んでもらっているという。

そんな葉裏が、街に家族を置いて単身赴任してきた。
葉裏の妻が、愛人との同棲を望んだので、願いを叶えてやるために単身赴任を選んだという。
もちろんこんな会話は――ふつうの社員の知るところではない。
なにも知らない同僚たちの視線をかいくぐるようにして、
わたしたちは共犯者同士の目配せを、交し合うのだった。

葉裏が転勤してきた。
わたしが妻にそう告げると、妻は驚いて、嬉しげな顔色をあわてて隠した。
こんど連れてくるから――そういうわたしに、不安そうに頷いていたのは。
なにも知らないこの土地の同僚や奥さん仲間にばれてしまうと困るから――そんな気分だったのかもしれない。

常識的な日常が支配するこの土地で。
わたしはふたたび、妻を葉裏に抱かせていた。
葉裏はわたしの夜勤や残業の時を狙って留守宅に忍び込むと、
着飾って待ち受けている妻に襲いかかって、夫への貞節を守ろうとする妻を、力ずくでねじ伏せる。
首すじを熱く吸われながら、妻はすぐさま偽りの抵抗をあきらめていた。
そんな妻の堕落のありさまを、夜勤で帰りが遅れるはずのわたしは、隣室で息をつめて、見守っていた。
敷かれた布団のうえ、あお向けに転がされた妻は、こちら側に脚を向けて、
わたしの目線には気づきもせずに、喘ぎと媚びとをあらわにする。
向けられた脚を彩るなまめかしいストッキングが、照明を照り返してツヤツヤと輝いて、
組み敷かれた婦人のリッチな日常と、その陰に隠れたふしだらさとを物語って。
しわくちゃになってずり降ろされ、みるかげもなく引き破かれていく薄手のナイロン生地が、
いびつで不規則に波打って、妖しく乱れ果ててゆく。
遠目にも。
葉裏が気を入れて、ありったけの精液を熱く熱くそそぎ込むようすが、
生々しい筋肉の隆起とくり返される激しい上下動とともに、わたしの網膜を狂わせた。

解放された街で許された情事が、いま常識まみれのこの街で再演される。
あのときは強いられて行った淫姦を、いまはすすんで取り結んでいた。
禁忌に触れる。そんな想いが、むしろ歓びと昂ぶりとを、掻きたてていった。

妻子を飢えた吸血鬼の棲む街に住まわせてきた男は、代わりにわたしの妻を、現地妻として勝ち得ていて。
あのときでさえ愛人を持とうとしなかったわたしは、妻を一方的に侵されることで、淫らな歓びを勝ち得ていた。

在任数か月で、葉裏はこの街を去り、前任地へと戻っていった。
それと前後して妻がわたしの前々任地に転居していったのを、不審に思うものはいなかった。
葉裏がこの街を去る、さいごの夜に。
わたしたち夫婦は彼を家に招いて、夜の宴をともにした。
わたしは結婚指輪をはずして彼に餞別として与えようとし、
彼はそれを遠慮して、これからもはめつづけるようにと願っていた。
妻は、わたしと同じ結婚指輪をはめた手を彼にあずけることを希望して、わたしはそれを承知した。
わたしたちは、彼女がわたしの妻の立場でありながら、葉裏の想いのままにされる――そんな日常を選んだのだ。

いま、わたしの妻は葉裏と暮らしている。
けれどもその家の表札には、わたしの苗字が書き入れられていて、
葉裏は自分の妻が吸血鬼の訪問を受けているときだけ、わたしの家に入り浸っている。
もっとも――吸われるべき若い血がふんだんに得られる葉裏家が、吸血鬼の訪問を受けない日のほうが珍しいのだが。
わたしがその家に「戻る」とき。
葉裏は夜這いをしかけてくる。
夜這いのすんだ夜明けになると。
わたしは初めて妻を熱く抱き、この街をいったん離れてから過ごすことのまれになっていた熱い夫婦の営みを、再開する。


あとがき
村に棲みついた都会の夫婦が、常識の支配する別の任地に赴いて、
そこで再び、村で奥さんを好んで「相伴」した同僚と一緒になって。
あのときの記憶が、再現される――

吸血鬼に妻を譲り渡した都会の夫たちが手にした特権を、あとから赴任した同僚の妻を相手に行使して。
それがエスカレートして、任期が終わっても愛人関係を継続する・・・そんな世界が、あるようです。

”女生徒”どうし。

2016年10月11日(Tue) 03:45:53

マキちゃんまた貧血ぅ?よっぽど吸血鬼の小父さまに気に入られちゃったのね♪
んー、それ、困るよぉ。ウレしくないよぉ・・・
マキちゃんと呼ばれた女生徒は、眠たそうに目をこする。
そおー?でもよかったじゃない。楽しいんでしょ?吸われてる最中って。
そうだけどさー、ヒラちゃんみたいに、あたしもスポーツとかやりたいよぉ。
マキちゃんはそういいながら、教室に向かう生徒の列を外れて、ひとり保健室をめざす。

はぁ・・・

ヒラちゃんと呼ばれた女生徒は、ちょっと立ち止まってクラスメイトの行き先を見つめ、ため息をついた。
よく見ると。
マキちゃんもヒラちゃんも、ほんとの女生徒ではない。
女装した男子生徒だった。
この学校は、じつは男子校。
でも生徒のうちの約半分は女生徒の制服を着用して登校するので、はた目には共学校とよく間違われている。
マキちゃんの本名は、牧野純男。ヒラちゃんは平岡清太郎。りっぱな男らしい名前だった。

ヒラちゃんの悩みは、まさに「男らしい」体格と風貌。
入学以来女子として振る舞っていて、念入りに化粧までして学校に来るけれど、どうしたって地は隠せない。
マキちゃんのなで肩の体格に典雅な風貌、それに持ち前のなよっとした立ち居振る舞いにはかないっこなかった。
もっともマキちゃんはそうした「女子力」のために、まえの学校ではいじめに遭っていたらしいけれど。

あー、くさくさする。

ヒラちゃんは教室に着くと、すぐさま部活のユニフォームに着替えていた。
所属しているバスケットボール部では、主力選手なのだった。
一時間目は、体育。けれども、出席率はよくなかった。
えー、あたしだけ・・・?
クラスの全員が貧血で、ヒラちゃん以外の生徒はどうやら、教室で自習を決め込むらしい。

がらんどうの体育館に、ボールのはずむ音が残響たっぷりにうつろに響く。
・・・ったく、もう!
ヒラちゃんはボールを手に取ると、いきなりダンダンダン・・・と短兵急な音を響かせてドリブルして、
ゴール前で巧みに身をくねらすと、鞭のようにしなる腕から、ボールを繰り出す。
放たれたボールはあやまたずゴールポストに食い入って、直下の床をダン!と響かせた。
きょうの授業は、教師さえもが貧血らしい。
かまうものか。独りで授業こなしてしまおう。
さらにもう一回――ヒラちゃんはボールを手に取ると、再び敏捷な動きでドリブルをくり返し、ゴールに迫る。
ライン入りのハイソックスの下、がっちりとした筋肉がギュッと隆起する。

と――

放たれたボールはあらぬかたをめざし、体育館の高い天井間近まで舞い上がると空しく落下した。
おい・・・ッ
思わず男声になって振り返ると、ムササビのように飛びかかって来た男の影は
ヒラちゃんと反対側に飛び交って、床に這うようにうずくまると、こちらを見返してくる。
目にもとまらぬ早業だった。
そいつがヒラちゃんの一瞬のスキを突いてボールに手を伸ばし、ゴールをまっすぐ目指すはずの弾道をでたらめにねじ曲げたのだ。
こんの野郎――
ヒラちゃんは闘争心もあらわに、こんどは男の妨害を許さずゴールを狙う。
けれども結果は、同じことだった。
いままで幾重の防御を縫ってゴール前に突進し、外されたことのなかったシュートは三度、みじめな放物線を描いてゆく。
気がつくと、汗だくになっていた。
挑発され、幻惑され、さいごに絶望させられる――
こいつ・・・新顔の吸血鬼じゃないか。
気がついたときにはもう、体育館の床に腹ばいになって、男にふくらはぎを咬まれていた。
どうやらこいつも、脚フェチらしい。
いままでヒラちゃんのスカートの下を狙う吸血鬼はほとんどなかったし、貧血を覚えるほど血を吸われたこともなかった。
だのにこいつは、平気でヒラちゃんのふくらはぎに食いついて、身体ぜんたいがふわぁってなるほど、したたかに血を吸いあげる。
部活のユニフォームの一部であるライン入りのハイソックスは、勝った側のご褒美といわんばかりにもてあそばれて、
くまなく舐め抜かれ、あちこちと咬み破られて、ずるずるとだらしなく、ひざ小僧の下からずり落ちていった。
・・・ったく、このっ・・・
ヒラちゃんは悔しがったが、どうすることもできない。今度の体育の時間にリベンジを誓うのが精いっぱいだった。

つぎの日の体育の時間。
授業に参加した生徒はやはり、まばらだった。先生も来なかった。
しかし、あのいまいましい黒い影は、やはり彼のことを目あてに体育館に来ていた。
狙ったシュートは7回外され、敏捷な身のこなしは先の先まで読まれてつかまえられて、ヒラちゃんはふたたび、床に転がった。
好きにしなよッ。もうッ!
やけになって投げ出した脚に男はむしゃぶりついて、ライン入りのハイソックスのうえからヒラちゃんのふくらはぎに唇を吸いつけると、
それはおいしそうに舌をねぶり着けて、しなやかなナイロン生地に唾液をたっぷりとしみ込ませてゆく。
女生徒のかっこうをしているときには近寄りがたいと敬遠されつづけるヒラちゃんが、
体育館では恰好の餌食として狙われる。
女もののハイソックスは無傷のまま家路をたどることがほとんどだったのに、
部活用のハイソックスは毎日のように赤黒いシミに汚されていった――
ヒラちゃんが女装をやめたのは、それからすぐのことだった。

よぅ。
朝の通学路で声をかけてきたヒラちゃんは、入学前の平岡清太郎に戻っている。
おはよっ。
女声で返してくるマキちゃんは、女生徒の服装がすっかり板についていた。
元に戻ったの?でもヒラちゃんカッコいいよ。ファンになりそう♪
マキちゃんの女ぶりに、いつも以上にグッとくるのは。
ブレザーの女子用制服を脱ぎ捨てて、詰襟に戻ったからだろうか?
行こうぜ。
二人は連れだって、学校を目ざす。
俺さ、やっぱ男もいいんだよね。
ウン、ヒラちゃん男服似合うもん。
いや・・・それだけじゃなくってさ・・・
ヒラちゃんはちょっとだけ口ごもると、それでも言った。男らしく、まっすぐに。
――俺の彼女になってくれないか?
マキちゃんは一瞬立ち止まってヒラちゃんを見あげ、眩しそうに顔を見返すと、すんなりと頷いていた。

あたし、もう処女じゃないんだよ。先週、吸血鬼の小父さんに犯されちゃった。
人間の彼氏ができても、彼氏と話しつけてでもお前を放さない・・・って、言われているの。それでもいい?
もちろん・・・さ。
ヒラちゃんも、意外なことをいった。
いつもバスケでかなわない彼ね、こないだ俺のこと組み伏せて、短パン脱がされて無理やり姦られちゃった。
ライン入りのハイソックスの脚おっ拡げてさ、みんなの前で、ウンウンうなりながら、夢中になっちまった。
だからさっきも言ったろ。やっぱ男もいいって。
あいつ、いいライバルだから。俺もマキちゃんを彼女にしながら、あいつと男同士も愉しむからさ。
マキちゃんもいっぱい、小父さんにかわいがってもらいなよ。
お互い女の彼女ができたら、きっとあいつらに紹介しちゃうだろうから。
そうなるまえに、マキちゃんを寝取られても愉しめるようになっておきたいんだ。

ほんと、あたしたちってば歪んでるよねー。
マキちゃんはあっけらかんと笑った。宅まぬ笑い声が、すでに女声だった。
それをうらやましがっていたヒラちゃんが、いまは別の目でマキちゃんの女ぶりに目を留めている。
いきなりマキちゃんの行く手に立ちふさがると――
熱い唇が、マキちゃんの唇をふさいでいた。
や・・・だ・・・
マキちゃんはヒラちゃんの腕のなか、ちょっとだけ抗ったけど。
すぐに傍らの草むらに引きずり込まれて、スカートのなかに手をさ迷わされてゆく。
ヒラちゃんはどこまでも男らしく、マキちゃんを圧倒しつづけた。
そんなヒラちゃんに、マキちゃんは女になりきって、華奢な身体をすがりつけていった。


あとがき
完全な?同性同士のお話は、じつは珍しいかも知れませんね。 ^^;

潔癖OLのストッキング 2 ~恋人の視線~

2016年10月10日(Mon) 11:51:33

「具合悪そうですね、寺浦次長」
出勤してきた瀬藤は、部署の席につかずにまっすぐ寺浦の席に来ると、そういってねぎらった。
どうやらきのうも、徹夜だったらしい。
次長というのは、割の合わない仕事らしい。すべてのトラブルが持ち込まれる。
新人時代のさいしょの半年だけその下で仕事をした経験のある瀬藤には、
部署を離れてしまったいまでも、不思議な愛着と共感を抱いていた。
「これから朝いちで、お客に会いに行く」
寺浦の言葉に瀬藤はびっくりした。
「えッ、これからですか!?」
「めんどうくさい案件になりそうでね。だから初期消火しておくのさ」

寺浦の話術は、超一流である。
だれかが「あいつの言いぐさには、麻薬が混じっている」と評したが、まさに言い得て妙だった。
彼が本気になると、だれもが魔術にかかったように、いうことを聞いてしまう。
そのくせ欲のない世渡りをするものだから、そうした話術でセコいもうけを得たという話を、瀬藤は聞いたことがない。
表向きは、苦労ばかりで貧乏くじを引きっぱなしの不器用な上司だった。
そう、吸血鬼であるという影の顔を別としたら――

思わず「だれかの血を吸ってから出かけたほうが、いいんじゃないですか?」と、口走ってしまいそうになる。
でも寺浦は、よほどのことがないかぎり、出勤してきたばかりのOLを襲うことはない。
「これから仕事をするという緊張感に包まれてやって来るものの気持ちを、むやみとそぎたくない」というのだ。
瀬藤の懸念は顔に出たらしい。そうでなくても、彼は寺浦に血を吸われたことがある。
いちど血を吸った相手の想いは、寺浦の胸の奥に直感的に伝わるという。このときの寺浦もそうだった。
「だいじょうぶだ。俺には夕べもらったお守りがあるから」
ポケットから取り出したのは、薄手の肌色の、ナイロン製のストッキング。
見覚えのあるかかとのあるストッキングに、瀬藤はぎくりとした。
よく見ると裂け目が広がり、ところどころ赤黒いしずくが凝固してこびりついている。
節くれだった掌にもてあそばれるストッキングは、もとの持ち主の脚の輪郭をかすかに残し、
その輪郭をいとおしむかのように、寺浦は手にした薄衣を慕わしげに撫でていった。


「美織、さいきん顔色悪いわよ。少し無理し過ぎなんじゃない?」
母親が部屋の向こうから、気づかわしげな声をかけてくる。
「ううん、大丈夫。ちょっと疲れただけ・・・」
目のまえに漂う眩暈を押し隠しながら、美織は無理に強い声で、母の気遣いを打ち消した。
母さんたら、心配性なんだから、って。
美織の母は、心配性というわけではない。カンが鋭いのだ。それは美織も、わかっている。
けれども、上司に血を吸われているなんて、とてもいえない。
まして、さいきんは血を吸われることを愉しめるようになってきた なんて。とてもいえない。
親は間違いなく、嘆くだろう。

明日も朝、早いから。
風呂場のまえのユーティリティーで、脱ぎ捨てたストッキングを洗濯機に放り込みながら、
美織はことさら、いつもの声音でそういった。
洗濯もののいちばん上にふぁさっと帯のようにたなびいたのは、かかとのついた、真新しいストッキング。
今朝家を出るときに穿いていたのとは、べつのものだった。
明日の朝、出勤するときに脚に通すものも、あの飢えた唇に、むざんに噛み破かれてしまうのだろうか。

あくる朝、出勤していく美織を見送る母親の目は、まだ心配そうにしていた。
そんな母親の気遣いに気づかないふりをして、美織は家を出る。
きのうの終業後、したたかにあたしの血を吸い取った次長は、夕べも徹夜だろうか。
出勤そうそうに血を吸われたりしなければ、たぶんきょうも一日持つだろう。
でも――いっそ朝から咬みつかれてしまったほうが、よほど安心できる。
あのひと、それくらい働き過ぎだから・・・


ふたりきりで過ごす4階の部屋に、逢引きを妨げに来るものはいない。
4時過ぎが寺浦の吸血タイムだということは、オフィスのだれもが知っていたから。
だれ一人、近寄ろうとはしないのだ。
初めてこの部屋に呼び出されて、吸われたとき。
素肌にヒルを這わされたような不快感と恐怖感とを、人並みに感じたけれど。
床にあお向けになってしまったときにはもう、噛み破かれたストッキングと同じように、
それまでの潔癖な理性は、すりむけていた。
そのあと――
どれほど彼に、咬ませてしまったことか。
どれほど彼を、愉しませてしまったことか。
吸血行為は、たんなる献血だと思っていた。慈善事業だと思っていた。けれどもそうではなかった。
結婚退職で辞めていった先輩OL、「逃げ足の尾藤」は、かんじんなことを美織に告げずに、自分の役割を引き継いでいった。

ふだんは冷静で温厚な寺浦が、部屋のなかでだけは、ひょう変した。
美織の両肩を掴まえて、強いて椅子に腰かけさせると。
そのまま牙を、首のつけ根におろしてきて。
制服のブラウスを、血で濡らしてしまったことも、二度や三度ではなかったはず。
いきなり非日常的な衝撃を加えて、美織の脳天から日常業務の緊張感を強引にぬぐい取ると。
いつもそのまま、足許にかがみ込んできて。
きょうもかかとのついた高価なストッキングを穿いた脚に、唇を、舌を、狂おしく這わせてくる。
ロコツで下品な舐めっぷりに、思わず声をあげかけたこともある。
男は美織の穿いているストッキングの舌触りを愉しむように、なん度もなぞるように舌をあてがうと、
やがて牙をむき出しにして、がぶりと食いついた。
美織のストッキングはパチパチと音をたてて裂けて、
拡がった伝線のすき間から、冷え冷えとした外気が、じかに素肌を嘗める。
それでも男は、ふだんの冷静さをかなぐり捨てて、美織の足許をしつように凌辱していった。
男の熱っぽさに気おされながら、美織はためらいながらも、もう片方の脚を、そろそろと差し伸べてゆく。


4階から独りおりてきた美織に、熱っぽいまなざしが密かに注がれる。
まなざしの主は、瀬藤だった。
瀬藤は、美織の同期で恋人だった。
咬まれたことのないものには見えない、咬まれたものの咬み痕が。
咬まれたことのある彼には、くっきりと映っている。
黒髪のすき間からのぞく、白い首すじに。
穿き替えられた真新しいストッキングに透ける、ふくらはぎに。
それは口許の両端から滲み出された牙の間隔さえわかるほどはっきりと、これ見よがしに刻印されていた。
自分の血を吸った男が、恋人の血まで吸ってしまった――その事実を聞かされたのは、美織本人からだった。

その日の夕方は、習い事がある日だからと早く帰る曜日だったのに。
美織は夜ごいっしょして・・・と誘いかけてきた。
まだ、つき合っているといえるのかどうか?
おくての美織の好意を疑うことはなかったけれど、セックスはもちろんキスさえも交わしていないカップルだった。
いつものレストランの食卓で向かい合うなり、美織はいった。
「あたし、寺浦次長に血を吸われちゃった」
「え・・・!」
たしかにそのときの美織の頬は、ほんのりと蒼ざめていて。
その蒼さは、血を吸われたもの独特の翳を帯びていた。
「尾藤先輩に一方的に引き継がれて・・・呼び出されたその場でだったの。ごめんなさい」
「いや・・・謝ることは・・・それよりも大丈夫?」
明らかに貧血だった美織を瀬藤は恋人らしく気遣ったが、美織はすぐにかぶりを振った。
「あたしは大丈夫。でも――」
「でも・・・?」
「いままで意識してなかったんだけど・・・吸血されるのって、なんかいやらしい」
「・・・」
「このまま寺浦次長とつき合っっちゃっても、あたしいいのかな」
「・・・」
「いちばんたいせつなのは、あなたなの。それだけはわかって」
最後のひと言に思わず目を見張った瀬藤に、美織ははっとわれに返って、
「・・・ごめんなさい。あたし・・・」
戸惑う目線を遮るように、スープが運ばれてきた。
いままでは。瀬藤が一方的に誘い、美織がそれに従(つ)いてくる。それだけの関係だった。
好きだなどとお互いに口に出すこともなく、なんとなく夜を一緒に過ごし、
それも深夜と呼ばれる刻限が近くなると、帰りたいのを何と切り出したものかと居心地悪そうな顔つきになる美織を、それと察してバイバイする。
それだけの関係だった。
美織はおくてだったが、瀬藤も負けず劣らず、おくてだった。
それなのに、吸血を受けてしまったというただならぬ状況のあとだったとはいえ、きょうは美織から誘って、一方的に話した。
瀬藤が無言なのに焦ったのか、日頃の美織には見られない大胆さだった。
「いちばんたいせつなのは、あなたなの」
そのひと言で、じゅうぶんだった。
「あなたが逢っちゃダメっていうなら、逢わない。でもその代わり、会社にはいられなくなる――」
言いかけた美織を遮るように、瀬藤はいった。
「だいじょうぶだよ、信じてるから。きみがぼくから離れないって」
「そお?」
憂い顔だった美織の目鼻が、嬉しそうにぱっと輝くのがわかった。
「4階で二人きりになっちゃうのは、ちょっぴり嫉妬するけど――素敵な関係だと思うな。
それに、うちのオフィスではふつうにあることだし」
瀬藤は悩む美織のために、理解ある恋人を演じることを決意した。
そう。
美織のためにも、自分のためにも・・・

いつものように4階から降りてきた美織のすぐあとから、寺浦が階段を下りてくる。
ふたりは一瞬、意味深げなまなざしを交し合うと、それぞれの部署へと戻ってゆく。
いちぶしじゅうをそれとなく見届けてしまうと。
瀬藤は、胸の奥が甘美でどす黒い歓びで満たされるのを感じた。
俺は、寝取られマゾだったのか。
スラックスをたくし上げ、ひざ丈の靴下を引き下ろすと、そこにはふたつ並んだ赤い斑点。
先刻、寺浦に咬まれたあとだった
咬み痕にわだかまる疼痛が、瀬藤の理性を蝕んでいる。
それだとわかっていても・・・蝕まれていることが・・・小気味よかった。

恋人が尊敬する上司にうら若い血を愉しまれ、自分の知らないところで逢っている。
そんな非日常的な状況が、瀬藤の脳裏と心の奥とを、妖しい色に塗り替えてゆく。
もちろん嫉妬はあった。
部下想いの寺浦が彼の恋人を地位にものを言わせて奪うとは思えなかったが、
恋人が寺浦に夢中になってしまう可能性は、たぶんにあった。
なにしろ瀬藤ですら、恋人の血を吸われているというのに、寺浦に対する尊敬や慕情に近い感情が、損なわれることがなかったくらいだから。
むしろ――美織が選ばれたのか。そんな想いさえある。
美食家らしい寺浦は、自分の相手を勤める女性をはっきりと選別していた。
それはもちろん、必要以上に”被害“を拡大させまいとする意思の表れでもあったが、
同時に彼の好みがはっきりしていることを自ら白状する結果にもなっていた。
選り好みをする寺浦が、美織と毎日のように逢っている。
寺浦はきっと、美織が瀬藤とつき合っていることに気づいている。
瀬藤の恋人と知りながら美織の血を吸いつづけるということは、瀬藤もまた恋人を寺浦に捧げることで、彼に尽くしていることになる。
美織を通して、俺は次長とつながっている―――瀬藤はくすぐったそうに、ひとり笑いを泛べた、。


「すまないね。残業中なのに呼びつけて」
支店長の退勤した後の支店長室に瀬藤を呼び出すと、寺浦は瀬藤にソファを進め、自分も瀬藤の向かいのソファにどっかりと腰をおろす。
「取引、うまくいったんですね」
「ああ、もうちょっとでしくじるところだった。胃が痛いよまったく」
こういうときの寺浦は、ちょっとヘタレで気さくな上司。仕事の悩みを聞いてもらうことも再三だった。
その寺浦が、ちょっとだけ本性をあらわにする。
「きみの協力のおかげだった。いつも献血してもらってすまないね」
「いえ・・・」
「きみだけじゃない・・・んだよね?」
瀬藤はぎくりとした。美織のことだ、と、直感した。
「え・・・エエ」
我ながら歯がゆいような、煮え切らないなま返事。
「すまない。灰田くんの血を吸うまで、気がつかなかった。ぼくとしたことが」
「・・・」
「彼女と逢うのを、やめようと思う」
「え・・・?」
「きみに悪いからな。将来結婚するんだろう?」
「え・・・いや、まだそこまでは」
「彼女はその気になっている」
「そんなこと・・・灰田が次長に言ったんですか?」
どうして本心を俺より先に次長に言うのだろう?
本物の嫉妬心が鎌首をもたげかけたのを、寺浦はそれと気づかないふりをして和らげてゆく。
「きみも知ってのとおり、本心が伝わってきちゃうんだよ。血を吸っているとね」
ああ、そうか。そうだったんだ。俺としたことが、うろたえちゃった。
瀬藤は自分の不注意を恥じた。何年、寺浦といっしょに仕事をしているのだろう。
瀬藤の気持ちを無視するように、寺浦は続ける。
「きみのほうは、そういうつもりで彼女とつき合っているわけじゃないのかね?」
「そんなことないです――結婚したいです。彼女さえよければ」
「よかった」
部下同士の恋愛が良い結論に結びつくことに安堵を泛べる上司の表情が、そこにあった。
でも――
瀬藤は知らず知らず、言葉をついでいる。

このあいだ彼女と食事をしているとき、言ったんです。きみがぼくから離れないって信じていると。
だから――次長が美織の血を気に入っているなら、吸ってあげてください。
美織も次長に吸われるの、嫌じゃないはずです。
ぼくも、美織が次長に血を吸われるの、嫌じゃありませんから。
むしろ、嬉しく感じてますから。
きょうは美織、まだ残業してますよ。声、かけてあげてくださいよ。
帰りは、ぼくが家まで送って行きますから――

彼女を家まで送る。
それは、彼女の親と顔を合わせるということ。
ふつうは彼も彼女も、いちどは躊躇を感じる行動を、瀬藤はあえて踏み越えようとした。

その代わり――俺も4階に招(よ)んでください。
彼女がどんなに乱れても、気持ちを変えない自信ありますからね。


薄暗い4階のがらどうのオフィスのなかで。
「ああっ・・・ああっ・・・ああっ・・・」
迫ってくる寺浦を相手に、美織は髪を振り乱して、ひたすら惑いつづけている。
まんざらではないことは、白い豊かな頬に、かすかに朱がさしているのでそれと知れた。
恋人の視線を意識して形ばかり演じかけた抵抗は、いつか悩ましいせめぎ合いにすり替えられていて。
素肌から飢えた唇を隔てよう説いた細腕は、いつか男の背中にまわり込んでいた。
潔く首すじを差し伸べて、ブラウスを惜しげもなく血浸しにしたあとは。
制服のタイトスカートを、ちょっとだけたくし上げて。
「いやらしい・・・いやらしいです・・・」と、くり返しながら。
ストッキングを穿いた脚を、情夫の唇にさらしてゆく。
すねや足首、太ももにくり返される貪欲なキスに曝されて。
装われたかかと付きのストッキングはみるかげもなく破れ果て、
ひざ小僧の下までふしだらにたるんで、ずり落ちてゆく。
男はふたたび、美織のうえにのしかかった。
「やだっ・・・やだっ・・・ああッ・・・瀬藤くん・・・っ」
唐突について出た自分の名前に瀬藤は不覚にも、股間をじわりと濡らしてしまう。
ブラウスの胸に寺浦の掌が、美織の豊かな乳房をまさぐってゆくのを、ただの男として愉しんでしまっていた。


「きょうは、お疲れさん。ちょっと、栄養つけに行こう」
気を利かして姿を消した寺浦の行く手を背に、瀬藤は美織をいつものレストランへと誘った。
ふたりが注文したのは、血もしたたるようなビーフ・ステーキ。
「お互い元気つけなきゃね。次長のためにも」
「そうね」
自分の言葉が美織の胸にもしっかりと落ちたらしいのに満足して、瀬藤は料理を口に運んだ。
「ごめん、あたし――」
美織が言いさして、俯いた。
「どうしたの?」
「あたし、これからも次長に逢うわ」
「いいと思うよ。ぼくのことを忘れなかったら」
「忘れない――されちゃってる最中でも、あなたの名前呼びつづけるから」
ひたと見すえてくるまっすぐな視線を、瀬藤はしっかりと受け止めた。
「結婚しても連絡しちゃうような・・・悪いお嫁さんになっちゃうかもよ」
ウフフ。
瀬藤は自分の意思をみなまで言わず、含み笑いで受け流す。
夫に隠れて情夫に逢いに行くという嫁の濡れ場をのぞき見したがる、趣味の悪い夫がそこにいた。
瀬藤の考えてることをおおよそ察した美織は、やっと安心したらしい。
「このステーキ、おいしい」
さっきまでの深刻な話題など忘れたように、無邪気な女の子に戻って料理にぱくつき始めていた。

潔癖OLのストッキング

2016年10月08日(Sat) 10:37:01

灰田君、きょうからきみの血を吸うから。
寺浦次長に呼び止められた灰田美織は、ビクッとして振り向いた。
あ・・・は・・・はいッ・・・
うろたえてつんのめった声で、あいまいな返事をくり返す美織に、
寺浦はニッと笑ってこたえた。
あとで、4階に来てね。
4階はもともと庶務部のあったところだが、今は空き部屋になっている。
そこは、寺浦が女子社員を呼び出して吸血する、「吸血部屋」と呼ばれていた。

寺浦に吸血の性癖があるのは、社内でもだれ一人知らない者はなかった。
吸血鬼と人間とが共存するこの街で、彼は排除されることも制圧されることもなく、
といっても本人も必要以上にのさばるということはまったくなく、
ふだんは人望もあって温厚な一社員の日常で通していた。

灰田美織は、OL3年生。
先輩の尾藤が結婚退職するとき、陰に呼ばれて言われたのだった。
――あたし、美織のこと次長に推薦しといたから。
えっ?私――?
戸惑う美織に、尾藤はいった。
あたし結婚しちゃうし、当分次長と逢うわけにいかないでしょ?それで、後任さがしてたの。
しっかりあなたに引き継ぐからねっ。
いつだか、それまで手こずっていた小面倒な顧客と本格的にモメた尾藤が、担当を美織に振り替えたとき。
たしかこんなふうに気軽に、言われちゃったっけ。
そう思い出したときにはもう、尾藤は目の前から立ち去りかけていた。
逃げ足の尾藤。
そう呼ばれたこの女はしかし、ランナウェイしようとしたきびすを返して、もういちど美織に向き直る。
いいこと教えてあげる。あいつ、ストッキング・フェチだから。
吸血するときは首すじももちろんアリだけど、脚咬まれるからねー。
美織の高そうなストッキング、あいつお目当てみたい。
ぼう然とする美織を取り残して、尾藤はわざとらしく幸せそうなハミングをしながら、今度はほんとうに背中を向けた。

終業後。
4階のフロアの照明は、ところどころ間引きされていて、ほかのフロアよりも薄暗かった。
ふだん使われていないこの部屋には、それまで同様スチール製の机がそれらしく並べてあったが、
壁ぎわには不要物が雑然と折り重ねられていて、いかにも見捨てられた部屋の様相を呈している。
「吸血部屋」というおどろおどろしい異名を想像させるものはなにもない、なんの変哲もない空き部屋。
けれども複数の先輩後輩から体験談を聞かされている美織には、
そうした机やついたてや、なにが入っているかもわからない段ボール箱たちさえもが、いかにもいわくありげに映るのだった。

呼び出されてあとから部屋に入った美織は、さっきまで寺浦以外のだれかがここにいたのを、なんとなく感じ取る。
寺浦の口許に紅いしずくがまだ滲んでいるのを認めた美織は、自分の直感が正しいのを知った。
美織の視線を敏感に受け止めた寺浦は、「おっと失礼」といって、口許をハンカチで拭う。
「尾藤とはもう、逢えなくなるからね」
寺浦の言葉で、さっきまで逢っていたのが尾藤なのだとわかった。
結婚して、ほんとうに切れるのだろうか?このふたり――妖しい疑念が、美織の胸をかすめる。
そんな美織の心境などおかまいなしに、寺浦はいった。

「ぼくがどこから咬むか、彼女から聞いてるね?」
寺浦の問いは、いかにも直截的だった。
「あ・・・は、はい・・・っ・・・」
美織はどぎまぎして、またもあいまいなあいさつをくり返す。
もともと小心で、さいしょに接客したときにはしどろもどろで舌が回りかね、あとで物陰で泣いたことが何度もある――
そんなとろくさい性格が、われながらもどかしい。
けれども同時に、いちど覚えた仕事はなにがなんでもやり抜く実直さと丁寧さとが評価され、
この春からは新人トレーナーを任されているのも美織なのだ。
彼女の目つきがほんの少しだけ、色を変えた。
「脚から・・・ですよね?」
「ご名答」
寺浦の応えはいささかシニカルだったが、思ったほどのいやらしさはそこにはない。

教わるまでもなく、美織はそうした光景を目の当たりにしていた。
10年選手の河西主任が執務中に脚を咬まれ、それでもなにごともないかのように執務をつづけ、
打ちつづく吸血に耐えかねて、とうとう突っ伏してしまったのも、つい先週のことだった。
気の強い河西主任は終始気丈に振る舞っていたけれど、
裂けたストッキングを穿きながら執務をつづけざるを得なくなったことを、しきりに恥じていた。
わたしもあんなふうに、気丈に振る舞うことができるのだろうか――?
そう思いながらも、そろそろ鈍い疼痛をしみ込まされるはずの足許が気になって、肌色のストッキングの脚をもじもじさせ始めていた。

「きみはまじめだし、身体も強そうだ。以前から気になっていたんで、尾藤に紹介させた」
あの・・・
美織にしては、人の話を遮るなど異例のことだったけれど。
口をついて問いを発してしまったのは、美織なりに気になっていたのだろう。
「あたしの穿いているストッキングのこと気にしてるって・・・尾藤先輩から・・・」
「いまどき、かかとのついているストッキングをちゃんと穿いてくる子は、珍しいからね」
寺浦はどこまでも、悪びれない。
「そういう礼儀正しさ、気に入っているんだよ」
言う人が言えば、気持ち悪いの一語に尽きそうなセリフが、なぜかしっくりと胸に落ちる。
まったくもって、うらやましい性格だ。
美織は思わず、寺浦を上目づかいに見あげた。
「高いんです、このストッキング」
「弁償しようか?」
「イイエ、そんなこと望んでません」
「じゃあ、私に咬まれるときには、安いのを穿いて来たまえ」
「そんな失礼なこと、できません――する以上は、きちんとお相手させていただきます」
口にした科白の大胆さに気づいて再びもじもじを始めた美織を見て。
肚が据わると、こいつ河西よりもしゃんとするな――寺浦はメガネの奥で獣の瞳を光らせた。
寺浦は腰かけていた上司の席から起ちあがると、すぐ斜め前の部下の席に座っている美織のほうへと歩み寄り、その足許にかがみ込んだ。

あ・・・・・
とっさに、逃げなきゃ、と、思った。
けれども脚は床に根を下ろしたみたいに、微動だにしなかった。
ストッキングごしに男のなまの唇を感じて、美織は縮みあがった。
唾液に濡れた舌が、唇が、美織の足許に吸いつき、しつように這いまわるのを。
恋愛経験が皆無の、うぶな小娘の本性をさらけ出して、しきりに恥じらいつづけていた。

気がつくと。
床に大の字にあお向けになっていた。
貧血が思ったよりも心地よく、頭のなかを空っぽにしてくれている。
立て膝になった片脚は、ストッキングが太くひと筋、裂け目を拡げていて、裂け目から露出した脛が、外気に直接触れてすーすーするのを感じた。
寺浦は、もう片方の脚のふくらはぎを舐めつづけていた。
すでにどれほど、血を吸い取られたのだろう?頭が、ぼうっとしている。
父さんと母さんから受け継いだ血を、こんなふうに愉しまれてしまうなんて。
中学・高校のころ不純異性交遊という言葉さえ嫌い抜いていた美織だったから、ハンパではない後ろめたさが心に満ちた。
そんな気持ちが、寺浦に伝わったらしい。
「気にするな。あんたが今しているのは、慈善事業だ。あんたが相手してくれてなければ、俺は明日から会社にいない。この世にもいない」
潔癖な罪悪感をたったひと言で斥けると。
寺浦はふたたび美織の足許に唇をおろして、薄地のストッキングに包まれたふくらはぎを、それはいやらしくいたぶり始めた。

嫌・・・厭・・・いやっ。
激しくかぶりを振る以外の抵抗を思いつくことができずに、美織はひたすら悩乱した。
無抵抗な悩乱に乗ずるかのように、男は美織の足許からストッキングを見る影もなく咬み剥いでゆく。
ふくらはぎから太もも、さらにその奥――
制服のピンストライプのタイトスカートをたくし上げられながら、美織はパンツが見えちゃう・・・と、見当違いな拒否反応を示す。
生命が危うくなるくらいの吸血をされているかもしれないのに。
男はあお向けの美織のうえにのしかかってきて、こんどは髪の毛を掻きのける。
豊かな黒髪は、丸ぽちゃで容貌がいまいちと自認する美織にとって、ほぼ唯一の自慢だった。
その黒髪を、男はまるで貴重品を取り扱うかのように、丁寧に搔きのけてゆく。
掻きのけられた黒髪のすき間から、白い首すじが覗くと――分厚い熱情のこもった唇が、強引に押し当てられてきた。
ナメクジかヒルのように這いまわる唇に秘められた唾液の熱さにへきえきしながら、美織は逃げ出したい思いをけんめいにこらえている。
その思いが通じたのか、寺浦は美織の肩をギュッと抱きすくめ、抑えかねた息遣いを性急に首のつけ根へとおろしてゆく。
ぢゅぶ・・・っ。
不気味だ・・・ホラーだよっ。
美織はそう叫びたいのをかろうじてこらえ、寺浦の吸血に身をゆだねた。
ちゅう――っ。
熱烈に這わされた唇が、けんめいに自分の血を吸い取ってゆくのを感じながら。
美織もまたけんめいに、悲鳴をこらえつづけていった。

きみは自分のことを、でぶだと言って、自虐しているそうだね。
でもぼくにとっては、きみのそうした肉づきのよさも、十分魅力なんだけどな。
なにしろ、きみの身体からは、血液がたっぷり採れる。これはありがたいことなのだ。
きみを襲う日は、同僚が1人よけいに助かるだろう。毎日2~3人襲っているからな。

寺浦の言いぐさに、美織は組み敷かれたまま冷ややかな視線を返しながら応える。

それだけじゃないでしょ?ストッキング・・・

う、ふ、ふ、ふ。
寺浦はくすぐったそうに笑う。
こんどから、穿き替えをいつもよりよけいに一足、持ち歩くことをすすめるよ。
もちろん、そうするつもりです――2足でも3足でも・・・
オフィスに救う魔物に魅入られた娘は、自分が術中に堕ちたとも気づかずに。
いつものひたむきさをひたすら、あこがれていた上司にぶつけつづけてゆく。

某男子校の学校案内より。

2016年10月05日(Wed) 07:57:52

【女子制服の着用について】
当校では、情操教育の一環として女子の制服の着用を認めています。
希望者には指定のセーラー服もしくはブレザーを頒布しています。
入学段階から女子の制服を着用して登校する生徒は、全体の約1割程度ですが、
学年によってばらつきはあるものの、卒業時にはほぼ半々になっています。
そのために、当校は共学校と誤解されることもあるようです。
キャンパスライフは自由を旨としており、詰襟の男子生徒と女子の制服を着用した生徒との疑似的な男女交際も盛んです。
自由な気風の中で、生徒たちはマイノリティへの共感や自由の中の責任といったことを学んでいきます。

【地域との連携~血液提供を目的とした、吸血鬼の受け入れについて】
当校の所在する〇〇市は、「吸血鬼と人間の共存」を目指しています。
そのため、当校も市の方針に従って、若い血を求めてさまよう吸血鬼の来校を、積極的に受け容れています。
来校した吸血鬼には、生徒や父兄、教職員に対する吸血を行う権利を付与しております。
吸血鬼に対する献血行為に協力することは、入学許可の必須条件となっておりますので、ご注意ください。
献血行為に協力する義務を有するのは、生徒本人及びその家族を含みます。
ご子息の入学が決定次第、ご本人様及び父兄の方々全員に、誓約書の提出をお願いしております。

なお、この種の来校者は、女性に対する吸血を好む習性があります。
生徒のお母様、姉妹のかたの来校を、極力歓迎します。
女子の制服着用を希望する生徒は、特に好んで吸血される傾向にありますので、体調管理にご留意をお願いします。

男子生徒を対象に吸血する場合も、来校者が好んで脚を咬む習性をもつことに対応し、男子生徒の制服は季節を問わず半ズボンを指定しております。
ハイソックスの着用が義務づけられていますが、婦人用ストッキングの着用も可とします。
靴下を着用したまま吸血されるケースが多々発生しますが、通学用のハイソックスは校内の購買でも頒布しますので、ご活用ください。

PTAの会合でも、随時、来校者に対する歓迎行事が開催されることがあります。
保護者(特にお母様)の協力が必須となります。ご理解ください。
PTAの会合にご出席の際は、スカート・ストッキングの着用が奨励されております。ご協力ください。
生徒の姉妹の参加が歓迎されるのはもちろんのこと、お父様、ご兄弟の方々の婦人服(女子制服)着用によるご参加も歓迎しています。

妹の紺ハイソ

2016年10月05日(Wed) 06:40:04

公園のベンチのごつごつとした感触にも、もうだいぶ慣れた。
むしろここにうつ伏しているときのほうが、教室にいるよりもリラックスした気分になれる。
というも――
このベンチで腹ばいの姿勢を取っているときは、吸血鬼の小父さんに、脚を咬んでもらっているときだから。

きょうも小父さんは、ボクのふくらはぎにとりついて。
小父さんのために履いてきたハイソックスを脱がせもせずに、牙を深々と埋め込んでいる。
しっかりとしたナイロン生地の舌触りが、たまらないのだという。
さいごはハイソックスをずり降ろして、素肌の上から咬むのだけれど。
そうする前に、たっぷりと・・・ボクの履いているハイソックスを舌や唇で愉しんでいくのだった。
そんな小父さんのために、チュウチュウと勢いよくボクの血を吸いあげる小父さんのため、
うら若い血液を気前よく、分けてあげてしまっている。
血液が傷口を通り抜けるときのあの妖しい疼きが、きょうもボクを迷わせていた。

ふぅ・・・
傷口から牙を引き抜いて、小父さんが満足そうなため息を洩らすとき。
ボクも身体から力を抜いて、「ふぅ」と息をはずませる。
ライン入りのハイソックスは、運動部の部活のときのユニフォーム。
この服装で小父さんの相手をするときは、チームメイトを裏切っているような後ろめたさを感じたけれど。
うちのキャプテンが餌食になってからはみんな、小父さんやその仲間たちのため、
みんながおそろいで、ライン入りのハイソックスの脚を咬ませるようになっていた。

また女の子が相手をしてくれなかったんだね。小父さんのこと怖がって、みんな逃げちゃうんだよね?
ボクのからかい文句を、小父さんはくすぐったそうに受け流すと、いった。
こんど、きみの妹さんを連れてきてくれないか?

やらしい・・・なんだか、やらしいな・・・
兄さんに妹を紹介させるの?
みんなそんなふうにして、女子の生き血をゲットしているの?
だからさいしょに、男子をたぶらかしにかかっているの?
小父さんたちのやり口が見えてしまったとき――それでもボクは批難の言葉を慎んで、素直に肯いてしまっている。
じゃあこんど、妹の下校時間に合わせて、小父さんと逢うことにするからね。

公園の通路を横切っていく制服姿の妹を、遠目に追っていくと。
その小さな人影は、こちらを振り向いて。立ち止まって。びっくりしたように佇みながら、様子を窺っていた。
「春江、おいで!」
ボクが脚を咬まれながら声をあげると、妹の春江はもじもじしていたけれど、
くり返し名前を呼ぶと、気の進まないような足どりで、こちらに歩み寄ってきた。

「お前も脚咬んでもらいな」
ボクの命令なんかいつも無視しているくせに、どういうわけかその時だけは、春江はとても従順だった。
「お兄ちゃん。顔色悪いよ」
そういって、ちょっとだけ心配そうにボクの顔を窺うと。
ボクは無言でベンチの上から降りて、春江も無言で、ボクのいたところにそのまま腰をおろす。
「ハイソックスの上から、咬むんだね」
ぶすっと呟く仏頂面の妹に。小父さんは猫なで声で迫っていく。
「面白そうだろ?だから自分から来たんだろ?」
「そんなこと・・・ないよ・・・」
「お兄ちゃんのことが心配だったのか」
「それも・・・あるけど・・・」
言葉を交わしながら春江の横に座って、なれなれしく肩に腕を回してくる小父さんに。
いつも気の強いはずの春江は、意外にも無抵抗だった。
「紺のハイソックス、たっぷりとしていい感じだね」
「あたし、脚太いもん」
「いや、これくらいの肉づきのほうが、男子にモテるんだ。本当はね」
「そうなんだ」
春江はまんざらでもない顔になる。
「咬まれるのは初めてかい」
「まだ咬ませてあげるって、決めたわけじゃない」
そういって春江は強がるけれど、もうすっかり小父さんの腕のなかに取り込まれていて、
スカートの上から太ももをもの欲しげにまさぐる手を、どうすることもできないでいる。
さすがに、露骨にやな顔をして、さっきから小父さんをにらみつづけていたけれど。
小父さんはそんな春江の目線がむしろ好もしいらしくって、
「女子にモテない」ってボクにからかわれたときと同じように、くすぐったそうに受け流していく。
「首すじと、どっちが先がいいかね」
「だからー!まだ咬ませてあげるって決めたわけじゃない」
「安心しなさい。きみにそんな恥ずかしい決断をさせたりしないから」
「エ・・・どういうこと」
「わしが一方的に・・・咬む・・・!」
さいごは大きく口を開いて。
伸びた犬歯にあわてた春江が、両手で口をふさぐ間に。
おさげの黒髪をかいくぐり、むき出した牙を春江のうなじに埋めていた。
きゃ~っ。
時ならぬ悲鳴に、不覚にも射精してしまっい、半ズボンの裏をびしょ濡れにさせたことは、いまでもナイショ。
吸血鬼は妹を掴まえたまま、ごくり・・・ぐびり・・・とロコツな音をたてて、十代の女子の生き血を飲み耽る。
妹は座ったしせいのまま、気おされまいとするように、歯を食いしばって悲鳴をこらえる。
決して泣くまい。弱みを見せる麻衣。
そんな意地っ張りなようすが手に取るように伝わってきて、思わず「かわいいなあ」って、呟いてしまう。
春江はボクのことをにらんだけれど。
知らず知らず施してしまっている飲血の奉仕の光景を、ボクは絶句しながら見届けていた。

「もう、知らないからね」
やっとやっと首すじを放してくれた小父さんに、春江は精いっぱい強がってそういうと。
ずりおちかけた紺のハイソックスを、ひざ小僧の下まで引き伸ばす。
「ご馳走すればいいんでしょ」
どこまでも、ツンツンとした態度。
吸血鬼は、女の子のそんな強がりをまるきり無視して、
自分は自分の仕事をするといわんばかりに春江の足許にかがみ込むと、
差し伸べられたふくらはぎに、ねっとりと唇を吸いつける。
紺のハイソックスを履いたまま、春江は小父さんの牙を受け容れた。
ボクがいつも、運動部のユニフォームのライン入りハイソックスをご馳走してあげるときと、まったく同じようにして。

紺のハイソックスも、いいなあ。
ボクも脚に通して、小父さんに咬ませてあげたいなあ。
妹が生き血を吸い取られていくというのに、このけしからぬ兄はそんなことを妄想して。
吸血鬼の不埒で好色な唇の下、春江の履いている紺のハイソックスが、みるみるよじれて、くしゃくしゃになってずり落ちてゆくありさまを。
息をつめて見守って、愉しんでしまっている。


愉しんでたよね?お兄ちゃん。
小父さんと別れてしまうと、いつもの力関係が、現実と一緒に戻ってきた。
そうだね。愉しんでたかな。
ボクは頭上に広がる青空を見あげながら、ひとごとみたいにそう応えると。
そのまま空を見あげながら、いった。
紺のハイソックス、まだ持ってる?ボクも履いてみたいんだけど。
じゃあ、こんどはおそろいで――あたしのハイソックスお兄ちゃんにも履かせてあげるから。
春江は血の気の失せた蒼ざめた頬に、満面の笑みを浮かべてこたえた。
そして、イタズラっぽい笑みを切らさずに、言ったのだ。

こんどさ、ママがお兄ちゃん用に、女子の制服買ってくれるってさ。
今度から、女子になって登校するんだよ。学校でももうなん人か、そういう男子いるからさ。恥ずかしがらないでも平気だって。

妹を堕落させるのにひと役かったつもりでいたけれど。
やはり妹のほうが、一枚上手だったらしい。

結衣の通学路

2016年10月04日(Tue) 07:52:28

朝からヘンな気分にさせられちゃって、もぅぅっ・・・
制服姿の結衣は勉強机に頬杖を突きながら、
さっきから足許にかがみ込んでいる吸血鬼を見おろし、にらみつける。
尖った視線がよけいにうれしいらしくって。
男は結衣の足許に忍ばせる唇を、余計せわしなくうごめかせた。
唾液のたっぷり浮いた舌でなぞられた紺のハイソックスは、だらしなく脛の半ばまでずり降ろされて。
あぐぅ・・・
と嚙みついてくる牙に、裂け目を拡げた。

あぁぁぁぁ・・・っ
結衣はマジな声になって、椅子から転がり落ちるように、畳に横倒しになってゆく。
くくく・・・
それが思うつぼだったらしい。男は、こんどは結衣の上体にのしかかった。
肩までかかる黒髪を掻きのけて、首すじをたんねんに噛んでゆくのだ。
あっ・・・あっ・・・あっ・・・
声をあげてあえぎながら、結衣は思う――きょうは学校休もう。

ホラ、遅刻するぞ。
男は貧血と眩暈に立ち眩む結衣を引きたてるようにして、玄関に向かわせる。
台所からは、結衣の母親の声。
ほら、結衣ちゃん、遅れるわよ。早く学校行きなさい!
当たり前の日常の、当たり前の母の𠮟り言葉。
でも母は知っている。
結衣がほんとうは男の子で、学校公認で女子の制服を着て通学していることを。
吸血鬼が宿るこの家で、結衣がすでに大人の女になって、同性の彼氏を裏切りつづけていることを。
今朝も結衣といっしょに学校に行こうと誘いに来た彼氏が、物陰に隠れて、
結衣の吸血シーンを、息をつめ昂ぶりながら見守りつづけていたことも。

学校をさぼって、きのうで三日。そうだ、きょうは学校行かなきゃ。ノリくんが心配する。
結衣にとって学校の価値は、彼氏のノリくんとイコールだった。
数学は苦手でも、そういう方程式だけは得意である。

家を出たとき、吸血鬼はもう追いかけてこなかった。
きっといまごろ、ママを襲っているころだろう。
あ いけない。
結衣は一瞬、立ち止まる。
だって・・・咬まれてよだれで濡らされたハイソックス、そのまま履いてきちゃったから。
でも・・・もう行かなきゃ。遅刻しちゃう。

よう、待ったぞ。きょうも休みかよって思っていた。
そういって寄って来たのは、彼氏のノリくんだった。
ノリくんとはまだ、セックスしてない。本人も童貞だって、照れずにそう告げていた。
いつか・・・ノリくんに教えてあげよう。あたしが吸血鬼のおっさんから教わったセックスを。
渦巻く想いを笑顔の裏側に押し込めて。結衣はにっこりと笑み返す。
ウン、行こっ。
勢い良く踏み出した紺のハイソックスの足許を、彼氏がチラチラ盗み見るのをくすぐったく感じながら。
結衣はわざとらしいほどら明るい話題で、通学路を華やがせていった。

妻のいない家

2016年10月03日(Mon) 05:05:32

はじめに
同性色の強いお話です。お嫌いな人はスルーしてね。^^


よぅ。
玄関先に立った多々野は、ちょっと当惑気にわたしを見る。
やぁ。
ドアを開けた向こう側にいた多々野をみて、わたしもちょっと当惑気に彼を見る。

多々野は会社の同僚で、去年までとある山村の事務所で、いっしょに仕事をしていた関係。
でも、わざわざ都会の家にまで訪ねてくるほどの仲ではない。
あの山村に赴任して、別れ別れになったどうしで、こうやって都会で再び顔を合わせる機会は、ありそうで意外になかった。
彼の当惑気な顔つきを見て、わたしはすぐにピンと来た。
こいつが逢いたかったのは、わたしではなかったのだ――と。


妖気あふれる山村だった。
一見して風貌明媚なこの村には、まがまがしい因習が生きていた。
妻を交換し合い、母子は父娘、兄妹ですら交わり合う世界。
そんななか、なにも知らないで赴任してくる都会妻は、村の男衆のいい餌食だった。
勤め先の会社の創立者は、この村の出身だという。
彼は社員の妻たちを地元に渦巻く性欲の渦に巻き込むことで、「故郷に錦を」飾ろうとしたのだという。

妻の肉体を提供した夫たちは、村の女と交わることを許された。
そんな「村の女たち」のなかに、自分たちの同僚も含まれる――それは都会育ちのわれわれにとってさえ、抗えない誘惑。
赴任した順に堕ちていった男たちは、なにも知らずに妻を伴い都会からやって来る後任者たちを、よだれもたらさんばかりに待ち受けていた。
そんななか、都会にいられなくなったわたしは、妻を伴って赴任していったのだ。
任地に夫人を帯同することは、絶対条件だった。
帯同した妻は、ひなびた山村には不似合いな都会の正装を、常に着用すること。自宅にいるときでも着飾ること。
そんな厳密?な社内規則に半ばあきれていたのは、さいしょの半月のことだった。
以来――妻もわたしも、破倫の渦に巻き込まれていった。
多々野はそのときから妻に執心で、なん度も挑みかかるのを見せつけられたし、盗み見ていた。
この村の風習になじんでしまった男たちが目覚めた、特異な昂ぶりと歓びに、胸とどろかせながら。
多々野とは、そういう関係だった。


女房に逢いに来たの?今週はあっちだよ。
ああそうなんだ。「あっち」なんだ。
多々野は悪びれもせず、頭を掻いて照れ笑いした。
いや、うちのやつもね、いまごろ「あっち」なもんだから・・・ちょっと寂しくなっちゃってね。
そんな多々野を前に、わたしのなかに悪戯心が湧いてきた。
俺で良かったら、女房の服着てやろうか?

逞しいスポーツマンの多々野をまえにすると、わたしの華奢な身体つきはふた周りほども小柄に見える。
あの村にいる時分。
幸か不幸か、妻と同じサイズの服を着れるわたしは、なん度となく妻の服を着て、男衆たちの相手を務めた「実績」があった。
うふふ。
多々野が微妙な含み笑いをする。
面白いかも――


長い夜だった。
多々野のために着てやったのは、洋装の喪服。
畳のうえに正座をして、きちんと三つ指突いてお辞儀をすると、
あいさつ抜きに、息荒くのしかかってきて。
太もも丈の黒ストッキングの奥では、むき出しの肉徑が、逆立ってしまっていた。

なん度もなん度も、突き込まれながら。
あぁ、こんなことだからあいつは、多々野に夢中だったんだ。
自分の身体で、そう自覚してしまっていた。
わたしはいつしか女になりきって、自分のなかの”女“もあらわに、あえかなうめき声をあげ、セイセイと切なく喘ぎつづけた。
半ば女になり切りながら、妻を演じつづけるわたしに、多々野は熱い接吻を身体じゅうに浴びせつづけた。
多々野をまえにわたしを裏切りつづける妻になり切って、
「主人よりいいわ、おっきいわっ」って、囁いて。
のしかかる男の身体をその気にさせつづけ、その気になった男のビンビンにそそり立つその勁(つよ)さに歓びを感じつづけた。

翌朝、玄関から出ていく時に。
わたしは新婚ほやほやの新妻のような気分で、多々野のキスに応えていた。
多々野は別れぎわ、照れ笑いを隠した後ろ姿で、ぼそっと呟く。
――こんどは、奥さんのいないときに来ようかな。
きっと妻ならこういったであろう応えが、わたしの口を突いて出た。
いつでもいらしてね。待ってますから――と。

墓場で妻を襲われて。 ~拒絶する夫の場合~

2016年10月02日(Sun) 09:24:39

すまないが、協力することはできない。
相手の口から出たおぞましい申し出に、わたしはとっさにかぶりを振った。
ここは、夜風の冷たい墓地。
どうしてこんなところにいるのかは、すぐに察しがついていた。
最後に意識があったのは
赴任したばかりのこの街の事務所の一角で、取引客と称する地元の男に、血を吸われているときだった。
わたしよりもずっと年配のその男は、ひと月のあいだになん度となく顔を合わせていたが。
ある日スッとわたしの傍らに寄り添うと。
――ずっと、あんたの血を狙っていた。
そんな風に囁くなり、だしぬけにわたしの首すじを咬んでいた。

ドロッと流れ落ちた血がワイシャツを濡らすのを、かすかに意識して――それが残った意識のさいごだった。
初七日だよ。おめでとう。
男は、わたしが亡くなって初七日の夜が今夜だと告げる。
「おめでとう」という祝い言葉が、はたしてどこまで適切なのか――逡巡するわたしに、男は囁いたのだった。
――今夜、あんたの奥さんが墓詣りに来る。さいしょに襲わせてもらいたいから、手引きをしてくれないか。
とうてい、受け入れがたい提案だった。


仕方ない。じゃあ、ほかのもんとやるから。
視たくないのなら、あんたはここで待ってな。
男はそういうと、背後に連れ添う数個の人影とともに、その場を立ち去った。
取り残されたわたしは、地に根が生えたように、身じろぎもできない。
男に従って闇に消えた者たちのなかに、顔見知りのものたちがいたような気がするが、
頭の中がまだはっきりしないいまでは、それさえ定かではなかった。

一時間後。
男は影たちをひき従えて、戻ってきた。
背後の影たちは、言葉を交し合っていたが、なにを話しているのかは聞き取れなかった。
「あんたの奥さんを襲ってきた。ご馳走になった」
先頭を切って歩み寄ってきた男がそういうと、背後の影たちはしゃべり止んだ。
むしょうに、涙が出てきた――妻も殺してしまったのか。
男はわたしの心を読むように、適切な言葉をかけてくる。
「安心しな。相手が女の場合、一回の吸血で死なせることはしない。
 というよりも、死んで吸血鬼になるほうが、例外なのだとわかってほしい」
この街では吸血鬼と人間が仲良く暮らしているから、人間は進んで生き血を吸わせてくれるし、吸血鬼も相手を死なせるようなへまはやらないというのだ。
相手が気のりをしない時には遠慮するくらいの気持ちは、持ち合わせているんだぜ?
男のいうことは、たぶんほんとうなのだと、わたしは悟った。
気になったのは、「相手が女の場合、一回では死なせない」という言葉――どういう意味だ?

男はやはり、そこでわたしの心を読んだらしい。すぐに応えてくれた――わたしの最も聞きたくないようなこたえを。
「血を吸った後、セックスするのさ。こいつらも(と、影たちのほうをふり返って)手伝ってくれたから、あとからお相伴だ。
 奥さんは、夕べまでは男はあんたしか識らなかったようだが――今夜だけでもう五人、男を識ってしまった。
 これからもまだまだ、識るだろう」
なんてことをっ!!
わたしは男に詰め寄り、殴りつけている。
男はわたしに殴られるままになっていたが、やがて口許からわずかに血を噴いた。
口許に飛び散った、鮮紅色のしずく――妻の身体から吸い取られた血だ、と、直感した。
わたしはとっさに、よろける男を抱きとめていた。
「ああ・・・いいんだよ。あんたの気持ちはもっともだ。
 だが、ほんとうはあんたに手伝ってもらいたかった。
あんたがあの場にいてくれたなら、奥さんもあんなには逃げ回らなかったし、
怖がる必要もなかったのだから。
初めて血を吸われるときには、身内の者が居合わせたほうが、女も心強いものだからな」
そんな理屈があるのか?立ちすくむわたしに、影たちが声をかけてくる。

すまないな。みんな、奥さんの血吸って、そのあと抱いてしまった。
お礼に、俺たちの女房の番がきたら、あんたも襲ってもらってかまわないんだからな。
よく見ると、影たちのほとんどが、勤め先の同僚だった。

「この中で、吸血鬼にまでなったものはおらん。
だれもが自分の女房を、わしらにただ食いされるのを黙って目こぼししてくれておる。
じゃからお礼に、こういう場に招待してやるんじゃよ。悪く思うな」
男は黙って、大きな杯に注いだ液体を、わたしのまえに突きつける。
「飲め」といわれた盃の中身は、真っ赤な液体――それがだれのものかは、言われなくても察しがついた。
渇きという本能が初めて芽ばえた。
眩暈を覚えたわたしは、盃を受け取ると、みなまで飲み干してしまっていた。

それ以来。
影たちは夜な夜な、それぞれの妻を伴い墓場にやって来た。
彼女たちは皆、こうした応接に慣れているようだった。
夫たちは自分の妻を後ろから抱きとめると、おとがいを仰のけてくれ、
わたしは吸血鬼から教わったやり口で、彼女たちのうなじに、唇を吸いつけゆく。
生温かくほろ苦い血潮が、渇いた喉をたっぷりと潤すまで、彼らは儀式をつづけてくれた。

四十九日の夜のこと。
男はわたしに「おめでとう」をいい、わたしは素直に「ありがとうございます」と、応えている。
男がわたしのために携えて来たのは、ちっぽけな盃などではなかった。
そう、影たちが連れてきたのは、わたしの妻。
わたしの留守中、彼らの訪問を頻繁に受け容れたらしくって。
しばらく見ないうちに、すっかりけばけばしい女になっていた。
化粧は濃くなり、髪を染め、けれども厚化粧の下の清楚な目鼻立ちは、かわっていなかった。
なるほど夫を弔うための喪服は身に着けていたけれど、
スカート丈はひざ上で、黒無地だったはずのストッキングは、毒々しい網タイツに変貌している。

ごめんなさい。喪服を破られちゃったの。黒のストッキングも、全部咬み破らせてあげちゃったの。
言葉ではしおらしく謝罪を繰り返す彼女だったが、悪びれるふうはない。
でもわたしは、そんな彼女を抱きしめている。

留守をよく守ってくれたね。
もうじき、家に帰るから。
そうしたら二人して、客人をもてなそう。
妻はわたしの腕のなか、こくりと頷いていた。

真奈美の血は、吸わせていないの。
あの子ったら、最初にお父さんに吸わせてあげたいって言っているの。
家に帰ったら、襲ってあげてね。
股間の昂ぶりをスカート越しに感じたのか、妻はわたしを見あげると、
しょうがないわね。と、笑った。
わたしも妻を見つめると、
みんなの相手をしてあげて、と、笑って言った。

ウフフ。
妻は娼婦の本性をあらわにして、身をくねらせて男を誘う。
今夜はおおっぴらの宴――
夜明けまでつづく儀式を、わたしはほかの妻たちにそうしたように、ただの男として愉しみ抜いてゆく――

墓場で妻を襲われて。

2016年10月02日(Sun) 08:51:16

血を吸われつづけて、意識が遠のいていくなかで。
錯覚だったのだろうか?
囁く声を俺は聞いていた。

あんたは死んで、吸血鬼になる。
そうなったらあんたも、わしらの仲間。
血の吸いかたを、教えてやろう。
この村ではな、吸血鬼と人間とが、仲良う暮らしておる。
じゃから、相手を死なせるわけにはいかんのじゃ。
人の血を吸うには、作法を知らねばならん。
それを教えてつかわそう――あんたの女房を襲ってな。
それとも・・・あんたの留守中に、女房を好きなようにされたいか?

さいごの問いに激しくかぶりを振ると、男は言った。
じゃあ、あんたが吸血鬼になるまで、待ってやる。
女房の生き血は、あんたと分け取り。約束じゃぞ。

そして、約束は守られた。

冷たい風の吹きしきる、真夜中の墓場のなかで。
キャーッという悲鳴を聞いたのは。
遠のいた意識が戻ってきた直後だった。
はっと目が覚めたようになって、辺りを見回して。
自分が吸血鬼になったこと、ここが自分が弔われた墓場であること、
そして――さっきの悲鳴の主が、妻であることを瞬時に察した。
俺は、悲鳴の音源を求めて小走りに駈けた。
“探索”は、すぐにおわった。
墓場の隅っこの草むらから、女の脚が一対、大の字になって伸びていた。
黒のストッキングを穿いた、肉づきたっぷりのふくらはぎ――
妻のものだと知りながら、ついもの欲しげに眺めてしまったとき。
俺は自分のなかの吸血鬼を、改めて自覚した。

よう。
俺の血を吸ったやつが、草むらのなかから顔を出す。
頬をべっとり濡らす血は。
妻の身体から吸い取った血――
俺ははらわたの煮えるのを感じ、その焦燥が生理的な渇きにとって代わるのを感じた。

無理するなよ。喉、渇いているんだろ?
男の語調に、揶揄の響きがないのが救いだった。
目のまえが昏(くら)くなって、気がついたら妻のうえにのしかかっていた。
ここを咬むんだ。
男は妻のおとがいをあおのけて、咬み痕の浮いた首すじを見せつける。
いきなり食い破るんじゃねえぞ。そう言われながら。
俺はやつの唾液の浮いた傷口を避けて、咬まれてない側の首すじに食いついていた。
ぬるいぬくもりを帯びた柔らかい液体がビュッ!とほとばしり、頬を生温かく濡らすのを感じた。
あっ、やっちまった!
男は俺を力任せに押しのけると、妻の首すじから噴水のようにあがった鮮血を喰いとめにかかる。
強く咥えられたうなじから噴き出る血の勢いが収まるのに、しばしの刻がかかった。
そのあいだ。
俺は妻のようすを気づかわしく見守っていたけれど。
妻は意識を取り戻す様子はなく、吸血鬼の腕のなかでぐったりその身をゆだねていた。
アブねえだろうが。
男は静かな声で俺を咎めると、それ以上咎めつづけようとはしないで、俺に吸いかたの手本を見せてくれた。
妻が男の腕のなか、夢見心地のまま吸われるのを見ながら、俺は人の血を吸う作法を目で覚え込んでいた。

奥さんを正気づかせるぞ。
男はそういうと、もういちど妻の首すじに咬みついて、吸い取った血をほんの少しだけ、戻してやる。
妻は薄っすらと目を開いて俺を見つめ、
びっくりしたようにその目を見開いて、
それからわが身を抱きすくめる男を上目遣いで見あげる。
見あげた瞳に媚びが泛ぶのを、俺は見逃さなかった。

ホントに・・・吸血鬼になっちゃったの?
ひそめた声は低く震え、生身の女の気配がじかに伝わってくる。
植えつけられてしまった本能が、またもや鎌首をもたげる。
ほら、咬んでみな。
男は俺の背中を、押していた。
俺は妻の首すじに食いついたが、妻は無抵抗にそれを受け容れる。
ほろ苦い血潮の香りが鼻腔に満ちて、俺は芽ばえかけた本能を覚え込んでいく。
いままで識らなかった快感が、どす黒い意識の泥沼の中、鮮やかな蓮のように花開く。

身を離したとき、目線を合わせた妻は、なぜか後ろめたそうに目をそらす。
後ろめたい想いなど、なぜ芽ばえるのか。
俺が妻にした以上に後ろめたいことでも、したというのか。
でもそれは、泥道の上に伸びた黒ストッキングの脚を見たときから、察しがついていた。
吸血鬼はセックス経験のある女を襲うとき、血を飽食したあと肉も愉しむものなのだ  と。

かまわない。この男は俺の兄弟だ。
俺の出まかせは、少しは妻の気持ちを救ったらしい。
そうなの?
理解し切れていないゲームのルールを反芻するように遠い目になった妻を、
男は俺の腕から横抱きにして奪い取り、再び首すじを咬んでゆく。
片方の手は裂けたブラウス越しに胸を揉みしだき、
もう片方の手は、たくし上げられた喪服のスカートの奥深くをまさぐってゆく。
ふたりの痴態を俺はただぼう然と見つめつづけ、
その間にすっかり飼いならされてしまった妻は、さいしょはためらいがちに、
やがて――これ見よがしに振る舞いはじめる。

男は妻を犯しながら、昂ぶりをこらえかねている俺を横目で見ると、
代われ。
ひと言告げると、瞬時に身体をすり替えてゆく。
気がつくと、腕のなかの妻は、いままでにないほどの喘ぎを、まるで娼婦のように発散していた。

儀式は、夜明けまでつづいた。
妻は自分を奴隷にした男に、丁寧に頭を垂れると、俺のほうにウィンクをして、
「またね」と、小手をかざすようにして手を振った。
ヒールの折れたパンプスを片手にぶら提げ、破れ果てたストッキングを穿いたままの脚で、のろのろと歩み始める。
頬は青ざめ、目はうつろ。
髪はボサボサになって夜風に流れ、裂けたブラウスからは胸元もあらわに、まるで酔っ払いのようによたよたと歩み去ってゆく。
安心しな。
あんな恰好で街なかを歩いたら、うわさはいっぺんに広まるだろう。
だからといって、あんたの奥さんの不名誉にはならない。
ここは、そういう街だから。
吸血鬼の女になった後家に言い寄る男は、この街にはいない。
あんたの女房は、わしらの大切な共有財産じゃ。
もちろんわしらは、奥さんの血も吸うし抱きもする。
けれども、おろそかに扱うことは決してない。
あんたは好きなときに家に戻って、また奥さんと暮らせばいい。
じゃが、奥さん目当てにわしらがかける夜這いを、あんたは拒むわけにはいかない。
仲良くやろうぜ・・・

男の言いぐさに、さいごまで揶揄や嘲りはなかった。
ただ、そこにあるのは共犯者としての想いだけ。
俺はやつのいうことすべてに、頷きつづけながら。
墓場の入り口から出てゆく妻が、なんの躊躇もなく半裸の姿を街なかにさらすのを、見届けていた。

父娘。 ~ミホ物語異伝~

2016年10月01日(Sat) 16:14:33

ミホの父さんが、あるときそっとボクの傍らに佇んだ。
あのふたり、じつは父娘なんだよ。
え?
びっくりして振り返るボクに、ミホの父さんは愉しそうに笑いながら。
もういちど、同じ言葉をくり返した。
あのふたり、じつは父娘なんだよ。

きょうもボクの視線を意識しながら、まぐわいつづけるふたり――
紺のハイソックスが半ばずり落ちた脚をばたつかせながら。
ミホはきょうも、うめきつづける。
「結婚前に、いいのかな?いいのかな?あたし、婚約者いるんだよ?ユウくん、ユウくん、きょうもゴメンねっ」

いつもは赤の他人として過ごす二人。
その二人が父娘であることを確かめ合う、唯一の儀式がこれなのか。
そういえば。
尾崎の小父さんはミホを抱くとき、母さんのとき以上に慕わし気に、若い素肌を撫でまわしていた。
それがただのエッチな気分のものなのか。
実の娘の成長を歓ぶための行為なのか。
もちろんボクには、わからない。
じつのところ小父さんにだって、わかっていないのかもしれない。

ミホの母さんは、結婚してからもしばらくの間は、尾崎とつきあっていたらしい。
そうと薄々知りながら、ミホの父さんはとやかくいわかなったらしい。
むしろ二人の交際を愉しんでいた。
そういうミホの父さんと。
やはり尾崎のことを妻の情夫として受け容れていたらしいうちの父さんと。
そして、婚約者の密会を、こうして愉しんでしまうようになったボクと。
みんな、同じ種類の男なのかも。

ふとそんなことを考えていたら、ミホの父さんがにまっと笑う。
今度の会でさ。きみの妹さん食べちゃうから、よろしくね。
まだ妹さん、なんにも知らないらしいんだ。
うちに彼女を連れてきてくれるの、どうやらきみになりそうだから。
先にぼくの口から、伝えておくね。

さっきとは別人のような顔つきになっている、ミホの父さんを見返しながら。
ボクは思わず、言っていた。
「よろしくお願いします」って。
そういえば。
ミホの純潔をゲットするって、尾崎の小父さんが宣言したときも。
思わず口走ってしまっていたっけな。
「ミホをよろしくお願いします」って・・・



あとがき
ちょっと毛色の違うお話になってしまったかも。
^^;

娘の純潔 ~べつの視点から~

2016年10月01日(Sat) 16:10:25

この街の風習で、年頃になった女子は純潔を、親たちの知人相手に捧げることになっている。
だから、クラスの女子の大半は、一人また一人と、処女を卒業していった。
この街では、婚約を結ぶ年齢はとても若い。
ボクが同級生の城崎ミホと婚約したのは、もう半年も前のことだった。
同年代の男子と婚約して後で処女を卒業する。
それも、婚約者とは別の、親と同じくらいの齢の男を相手に。
そういうことになるのも、決して珍しいことではなかった。
そしてボクも――婚約者のミホを目のまえで、寝取られることになっていた。

わし、ミホちゃんを抱くことになったからな。
そう囁いて来たのは、父さんの親友の尾崎だった。
尾崎は父さんの悪友だったが、同時に母さんの浮気相手でもあった。
中学に上がる前から、ボクは母さんが尾崎を相手に、夫婦のベッドでくんずほぐれつしているのをのぞき見しながら、育っていった。
母親の浮気相手と息子とは、奇妙な共犯関係にある。
父親にばらさない代わり、母親のエッチをのぞき見する特権を得られるのだから。
そういういけない子の一人に、ボクはいつの間にか育っていた。
そして今――婚約者の純潔まで、同じ男に獲られようとしているのだった。

尾崎の小父さんの言いぐさに、しぶしぶめかしてOKしてしまったのは。
彼のいけない囁きに背中を押されてしまったから。
小父さんは囁いたのだ。
相手がわしでOKだったらその代わり、ミホを抱くところ見せてやっから。

ミホが自宅のリビングで、ほかの女子と一緒に組み敷かれていったとき。
小父さんはボクやミホの父さんが見つめるまえで。
ぬけぬけといったものだった。
「おおー!あんたが城崎の娘かあ?すっかりおっきくなったなー」
尾崎は制服姿のミホの、おっきなおっぱいばかりをじろじろと見て。
「ミホちゃんがわしの相手してくれるンか。ほんとに娘らしくなったなー。
 わし、女子高生抱くのが夢だったんじゃ。その夢をミホちゃんが、かなえてくれるんかー」
尾崎の小父さんは手放しで、ひとの婚約者ににじり寄り、物陰から見つめるボクの視線を受け流しながら、ミホを抱きすくめていった。

女子校生抱くのが夢――それはボクだって、同じこと。
でも尾崎の小父さんは、そんなボクの正当な権利を無視して、ミホのスカートをたくし上げていった。
ミホは紺のハイソックスの脚をばたばたさせながら。
それでもきゃあきゃあとはしゃぎ切っていて。
慣れた手つきでスカートの奥に入り込んだまさぐりを、まともに受け止めてしまっている。

痛い!痛い!痛あいいっ!!
ボクが聞いているとも知らないで。
あたりかまわずわめき散らしながら、ミホは純潔を汚されていった。
ゾクゾク。ゾクゾク。恥ずかしくていけない昂ぶりに目ざめてしまったボクは。
小父さんが何度も何度もミホのお尻に大きなおCHINCHINを突っ込むのを、
ただぼう然として、眺めつづけてしまっていた。

建前では、その場限りで終わる関係。
でもミホは相変わらずボクと親しみながら、ボクにはナイショで小父さんと逢いつづけていて。
ボクも相変わらず小父さんとうらでつながりながら、ミホとナイショの逢瀬を遂げる現場に招待されて。
制服姿で抱かれる婚約者の痴態を、のぞき見しつづけている。
このごろは、ミホも薄々気づいているらしい。
「やだあっ!やだあっ!小父さんやらしいッ!」と叫んでいた少女は、
「ユウくん!ユウくん!ゴメンねッ!ゴメンねッ!」って、ボクをそそる声をあげ続けるようになっていた。


あとがき
おっさんたちが、女子高生の純潔をゲットできるということは。
その少女の未来の夫は、花嫁の処女喪失を強いられるワケですな。
たいがいは、そんな過去を知らずに結婚するのでしょうが、
どうしてもそのあたりの機微や心理が気になってしまう私。。。
^^;