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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

もとは人間だった吸血鬼

2017年10月30日(Mon) 06:17:40

この街に棲みついている吸血鬼は、二種類いる。
ひとつは、この街を征服した、齢何百年になるかわからないという吸血鬼と、その親族。
もうひとつは、そうした吸血鬼に咬まれて吸血鬼になった、もとはふつうの人間だった人たち。
吸血鬼になるには、根っからの吸血鬼に咬まれないと駄目なので、そこに一定の歯止めはかかってはいるものの、
吸血鬼になった元人間も、かなりの数棲息しているのはたしかだった。
邑田タツヤもまた、そうした一人だった。

若いころ、妻ともども咬まれた彼は、ほどなく吸血鬼になった。
彼の妻を狙った吸血鬼は、自分の恋人を独り占めにするために、夫のことも咬んだのだ。
お弔いをされて墓からよみがえるまでの一週間くらいの間、
吸血鬼は、恋した人妻に対する欲望を、気の済むまで成就させていた。
望まれた妻もまた、夫の仇敵であるはずの男にほだされてしまって、
それまで夫以外の男を識らない身体を、放恣に開いていくようになっていた。

墓場から泥だらけになって出てきて帰宅を許された夫は、寛大な夫になった。
吸血鬼に促されるまま、彼は自分の妻だった女の血を吸った。
身体じゅうから血液を抜かれて空っぽになった血管を、自分の妻の血潮で充たしたのだ。
欲するだけの血液を妻から獲ることができた夫は、
妻と吸血鬼のと交際を認め、最愛の妻が吸血鬼の情婦に堕ちることを許した。
いちど弔われた事実さえも意図的に消され、
それまでと同じように妻とは夫婦として暮らしたけれど、
夜な夜な訪れてくる吸血鬼と妻とを二人きりにしてやるために家を空ける雅量を備えていた。
同時に彼は、自身の欲求を満たすために、
妻の情夫の手を借りて、そこかしこの人妻に手を伸ばして、次々と射止めていった。

もと人間の吸血鬼は、周囲にあまり迷惑をかけないために、自身の欲する血液はまず身内からまかなうのが不文律だった。
母親が若いうちは、母親が。
それから、その母親に説得された兄嫁が。そして、弟の婚約者が、
齢の順に毒牙にかかった。
父親も、兄も弟も、吸血鬼になった家族を餓えさせないために、
息子が、ないしは兄弟が、自分の妻に不義を働くのを、
さいしょは見て見ぬふりをして、
やがて妖しい歓びに目ざめていって、
すすんで献血に協力し、ひいては不倫の交際の手助けをするようになっていった。

夫が長じてからは、
結婚前の娘に手を出してはらませてしまったり、
息子の嫁をたぶらかしてしまったり、
姪娘はもちろん、甥っ子の結婚相手にまで手を出していった。
ついでにいうと、姪娘のひとりは、彼自身の種だった。
それでも、毒牙にかかった女の夫たちは苦笑しながら、
自分の嫁が押し倒されてわがものにされてゆくのを、見て見ぬふりを決め込んでいた。

そんな彼がもっともたいせつにしているのは、自分の妻との逢瀬だと、知っていたから。

吸血鬼の寵愛を得た妻は、在宅はしていても、めったに自分の身体を空けることはできなかった。
月に一夜か二夜――吸血鬼が浮気に出かけた晩、男は自分の妻との逢瀬を遂げる。
そんな夜がいちばん長いのだと、だれもが知っていた。
そうした夜、どの家の夫たちも、どんな重要な用事も放り出して自宅に帰り、
自分の妻との本来の営みに、明け方まで没頭するという。
強制された別離は、かえって愛情を深めるものだと。
吸血鬼になったものも、そうでないものも、等しく自覚していたのだった。

初めておじ様に逢った夜

2017年10月30日(Mon) 05:14:19

「キムスメ・・・って、なに・・・?」
まだ〇〇歳の小娘だったあたしには、100歳にもなる吸血鬼とお話するにはボキャブラリイがなさすぎた。
「生娘というのはの、お前のような可愛い娘のことをいうのじゃよ」
吸血鬼のおじ様は、あたしが逃げようとするのをさりげなく封じながらも、わかりやすく説明してくれた。
あとで考えたら、その説明はあまり正確ではなかったのだけれど、
〇〇歳のあたしには、その説明だけでじゅうぶんだった。
美女が吸血鬼に抱かれるシーンはなん度となく、パパといっしょに映画館で観たことがあったから。
「生命はほんとに、助けてくれるんだよね?」
ちょっぴり心配になったあたしは、知らず知らず怯えた表情を作り、媚びるような上目遣いをして、おじ様を見あげたけれど。
おじ様は「よしよし」とあやすようにあたしの肩を抱いて、
「嬢やはそんなこと、心配しなくてだいじょうぶ」
とだけ、いった。
「ちょっとだけなら・・・いいよ・・・」
キムスメの血を吸いたいとおねだりされたあたしは、
いつもは親におねだりばかりしているわがままな女の子だったのに、
いつもとあべこべなんだけど・・・って思いながらも、
おじ様のわがままを聞いてあげる気になった。
どうしてそんな気分になったのか、いまでもよくわからない。
たしかにおじ様の片手は、あたしの二の腕を強くつかんで離そうとしなかったし、
逃げられないのはいやというほどわかっていたけれど、
あたしがおじ様のいうことをきいたのは、そんなことのせいじゃなくって、もっと別な理由からだと、いまでもはっきりそう思っている。
「そんなに欲しいのなら、マミの血を吸わせてあげる」
あたしは自分がちょっとだけやせガマンをしていると感じながらも、
パパといっしょに観たドラキュラ映画のヒロインみたいに、
おとがいをわずかに仰のけて、目をつぶる――
「あんまり痛くしないでね」って、小声でつぶやきながら。

首すじに食い込んだ牙は、さいしょのうちだけは予防注射と同じくらい痛かったけど、
あたしは涙をガマンして、吸血鬼に抱かれる美女になりきろうとした。
気がつけば、貧血で頭がくらぁっとするほど、生き血を吸い取られていた。
首すじから牙を引き抜くと、
おじ様はあたしの血を吸い取ったばかりの唇を、耳たぶに触れるくらいまで近寄せて、
「ありがとう。嬢やは強い子だね」
って、ささやいた。
どうせなら、そんな子どもをあやすような言いかたじゃなくって、
もっとロマンチックなことをつぶやいてくれればいいのにって、
ちょっぴり不満に思った。

あたしの履いている真っ白なハイソックスをイタズラしたいといわれたとき、
すっかり、彼の餌食となっていたあたしは気前よく、
「ウン、いいよ。マミ、イヤらしいの大嫌いだけど、おじ様だったらガマンする」
そんな言い方がおじ様をそそるのだと、あたしはなんとなくだけど、わかってしまっていた。
おじ様がさいしょにあたしを見たときから、
ミニのワンピースからのぞく太ももと、
ひざ小僧の下までお行儀よく引きあげたハイソックスとをとても気にして、
なん度もチラチラ盗み見るのを、ママといっしょにいるときから気がついていたから。
おじ様はあたしのハイソックスのうえから唇を吸いつけて、
その唇の奥から、舌をぬめらせてきた。
上から下まで、脚の線をなぞるようにして舌を這わせてきて、
よだれのたっぷり浮いたべろで、あたしのハイソックスを汚すことに夢中になった。
なま温かいよだれがハイソックスにしみ込んできたとき、
あたしは初めて「イヤラシイ」って感じたけれど。
「女に二言はないもん」と、おじ様に聞こえないようにつぶやいて、
知らん顔をしたまま、おじ様の好きなようにさせてあげていた。
やがておじ様は、ふくらはぎのいちばん肉づきのいいあたりに牙を突き立てて、
ハイソックスを咬み破ってあたしの血を吸い始めた。
ごくっ、ごくっ・・・という音が生々しくって、あたしは思わず肩をすくめたけれど。
おじ様はあたしのひざ小僧や太ももをあやすようにまさぐりながら、
あたしの生き血で喉を鳴らすのをやめなかった。
あたしもいつの間にか夢中になって、
もう片方の脚に唇を近寄せてくるおじ様のため、
おじ様がよだれをなすりつけやすいようにと、
ハイソックスの脚をちょっぴり優雅にくねらせてみた。

気がついたら、あたしは貧血を起こしていて、じゅうたんの上にあお向けに倒れていた。
咬み破られてずり落ちかけたハイソックスは両方とも、それもあちこち咬み破られていて、
しみ込んだ血潮のぬくもりにまみれてしまっていた。
頭のうえで、「きゃあッ・・・」と、ママの悲鳴が聞こえた。
バタバタッとあわただしい物音がして、それからゴクゴクッ・・・と、おじ様の喉が鳴る音がした。
あたしと同じように貧血を起こして尻もちをついたのも、気配でわかった。
いつもはきびしいママが、
「あうッ・・・あうッ・・・」
と、べそをかいたみたいな声をあげながら、ストッキングを穿いた脚を咬まれているみたいだった。
おじ様はあたしのときと同じくらいしんけんにママを襲うのに熱中して、
そのあいだじゅう「ゴクゴク」と、喉を鳴らしつづけていた。

いちばんえらいと思ったのは、お兄ちゃんだった。
逃げようと思えば逃げられたのに、
「ボクだけ無傷なの、カッコ悪いから」
といって、たるんで履いていたハイソックスをきっちりと引き伸ばして、
「母さんのストッキングほど面白くないだろうけどさ」っていいながら、
白のラインの入ったあざやかなブルーのハイソックスに血潮が赤紫ににじむのを、
「楽しそうだね」っていいながら、静かな目をして見つめていた。

それからあたしたち兄妹は、ママのことが好きになってしまったおじ様が、
倒れて気絶寸前のママのうえにのしかかっていやらしいことをするのを、
表情を消して見守っていた。
しばらくしてママが声をあげはじめて、おじ様の背中に腕を回すのを見たお兄ちゃんは、
「仲良くなったみたいだから、もう視ちゃダメ」と、あたしにいった。
そのくせ自分はずうっと、ママがおじ様と愛し合ういちぶしじゅうから、目を離そうとはしなかったんだけど。

その夜ママがおじ様としていたことのすべてを識ったのは、大人になってからのことだった。
高校を卒業してからは、ハイソックスをストッキングに穿き替えて、
ママと代わりばんこにおじ様のお相手をした。
「お嫁入り前なのに、男のひととそんなことをしてはダメ」
って、ママは言うけれど。
パパの目を盗んでおじ様と逢うときにウキウキとしているママがそう言っても、あまり納得出来はしなかった。
いまはもう、結婚する彼がいるくせに、あたしはおじ様と逢いつづけている。
きっと結婚してからも、おじ様の恋人でいつづけてあげると思う。

あの夜。
初めておじ様にハイソックスを履いた脚を咬ませてあげたとき。
ママは「母」から「女」に逆戻りをして、
あたしは「子ども」から「少女」に成長したのだと。
だいぶあとになってから、そう自覚した――

血の輪廻

2017年10月29日(Sun) 04:36:39

きょうは母さんといっしょに、街はずれの小父様の家に行ってきなさい。
知っているだろうが、小父様は人の生き血を吸って暮らしていらっしゃる。
だからお前も、母さんといっしょに生き血を吸わせておあげなさい。
男の子は女のひとを守らなくてはいけないから、
お前が先に吸われなくちゃいけないよ。

父さんにそんなふうに諭されて、まだ半ズボンを穿いていたころのぼくは、
好んで脚を咬みたがるという街はずれの小父様のため、
紺のハイソックスを履いて出かけていった。
母さんはよそ行きのスーツのすそから、真新しい肌色のストッキングを穿いた脚をすらりと伸ばして、
ぼくといっしょに出かけていった。
リョウちゃん、お母さんのことを守ってね。
母さんはひっそりとほほ笑みながら、決して泣くまいと歯を食いしばるぼくのことを見守って、
そのうち咬まれることに慣れたぼくが、もう片方の脚を進んで差し伸べるのをみて、さらにひっそりと笑っていた。
それから自分も、肌色のストッキングの脚を差し伸べて、ぼくの血を吸ったばかりの唇を、苦笑いしながら吸いつけられていった。
貧血でぼうっとなった意識の向こう、母さんが小父様に抱きすくめられたまま、
ブラウスをはだけられ、おっぱいをまる見えにさせながらさらに強く抱かれるのを、
なぜかドキドキとしながら、見つめてしまっていた。

もぅ、お兄ちゃんなんだから、奈々枝のことをちゃんとエスコートしてね。
小父様に逢ったら、お母さんからもよろしくって、伝えてね。
お兄ちゃんは妹にお手本を見せなくちゃいけないから、
リョウちゃんが先に咬まれなくちゃいけないわ。

母さんにそんなふうに諭されて、初めてセーラー服を着た妹を連れて、
やはり初めて脚に通した黒のストッキングのなまめかしさにウキウキしている妹を連れて、
ぼくは街はずれの小父様の屋敷へと出かけていった。
ぼくのお手本をなぞるように、黒のストッキングの脚を差し伸べていった妹は、
初めての痛みにべそを掻き掻き、しっかりお相手をつとめていた。
さいしょはおずおずと、片方の脚を差し出したあと。
貧血に蒼ざめた頬に、母さんゆずりのひっそりとした笑みを絶やさぬまま、
「こっちの脚も咬ませてあげるね」
妹は気丈にもそういうと、涙の痕のように拡がるストッキングの伝線を、
こんどはクスクス笑いながら、いくすじもつけられていった。


葉子さんを連れていくのは、結婚前になさいね。
あのかたは隣町だから、葉子さんもご両親も、小父様のことは知らないの。
だからあなたが、うまく引き合わせてあげて。
母さんも都会から父さんのところに嫁いでくるまえに、
父さんが上手に逢わせてくれたから――あなたもうまくやるのよ。

母さんはひっそりと笑いながら、そんないけないことを平然とぼくにすすめる。
ぼくも母さんと同じくひっそりと笑いながら、ごく平然とそれに応える。
「あの小父様なら、だいじょうぶだね。きっと葉子さんも、いちころだろうね」と。
ぼくはよく心得ていた。
既婚のご婦人の場合、血を吸うときには男女としても仲良くなってしまう小父様の性癖を。
そして相手が未婚でも、男を識っている場合は男として抱いてしまうということも。
妹は処女だったけれど、慣れ親しむうちに打ち解けていって、
お嫁入り前に、鼻を鳴らしながらスカートのすそを引き上げられていった――
「小父様の態度ひとつで、葉子さんが身持ちの正しい娘さんか、ふしだらなお嬢さんなのかもわかるわね」
母さんはそういってひっそりと笑い、
ぼくも頷きながらひっそりと笑った。
「ぼくは平気だよ。どのみち結婚したら葉子さんも小父さんに抱かれるようになるんだし、順序がちょっと、後先になるだけさ」

ぼくの花嫁は処女だった。
初めは戸惑った葉子さんも、お洋服の襟に血のシミひとつつけずに首すじから血を吸い取った小父様の腕前に感心をして、
その場ですっかり、心服してしまったようだった。
「これからは、良太さんといっしょに咬まれに来ますね」
そういって羞ずかしそうにほほ笑んだ彼女は、つぎの訪問のとき、着替えの服を用意してきた。
なにも知らない両親に気づかれないようにと、いちどぼくの家に立ち寄って、
別の服に着替えると、ぼくといっしょに小父様に逢って、
さいしょにぼくが咬まれ、それから彼女が咬まれて、
ブラウスをしとどに濡らしながら、葉子さんは処女の生き血で相手を満喫させてあげていた。
結婚式の三日前、葉子さんは思い切った表情をして、ぼくにいった。
「大切なものを――あなたよりも先に小父様にあげたいの」
ぼくはもちろん、異存はなかった。
葉子さんが身持ちの良い娘さんなら、ぼくが先――
なんとなくそうは思っていたけれど、
花嫁の純潔をプレゼントするのも悪くないなって、ふつうに感じるようになっていたし、
美しい血管に毒液を注ぎ込まれてしまった葉子さんも、まったく同じように感じていたのだった。

真っ白なスーツ姿で目を瞑った葉子さんのうえから身を起こした小父様は、
「リョウくん、ありがとう。お礼にきみにもいつか、処女の子を抱かせてあげるよ」
って約束してくれたけど。
ぼくは葉子さんひとすじでいくから、そんな気遣いしなくていいよって、笑ってこたえていた。


未来の花嫁の純潔を勝ち得た小父様は、長いことずっとそのことを、気にしてくれていたらしい。
十数年も経った頃、妻を抱きに来た小父様はひっそりと囁いた。
「今夜はお嬢さんの勉強部屋に行くといい。貴恵ちゃんには葉子さんから、話してあるから」
熟妻になった葉子さんを小父様が抱いているあいだ、ぼくは自分のまな娘の勉強部屋のドアをノックする。
妹のときもこうだった。
なにも知らない男のところに嫁いだ彼女にとって、実の兄のぼくは、二番目の男だったから。
夜なのにまだセーラー服を着ていた貴恵はぼくを迎え入れて、
母さんや妹のときのように、ひっそりと笑った。
あの夜の妹の白い顔が、二重写しになったまま、重たい制服のスカートを、
まるで少年のころみたいな震える手ももどかしく、太ももがまる見えになるまでたくし上げていった。

こういう関係はもう断とう。
小父様に思い切ってそう切り出すと、意外にも小父様は納得したようにこたえてきた。
そうだね、貴恵ちゃんのお婿さんは、なにも知らない土地の人だものね。
けれども血というものは怖いものだった。
それから十数年も経ってもこまめに実家に顔を出していた貴恵は、
年ごろになった娘たちを連れて、泊りに来た。
そしてふたりの娘を齢の順に、小父様に咬ませてしまっていた。

妹の場合、義理の弟の家は遠く、妹はまっとうな世界へと埋没していったけれど、
娘の貴恵の場合はそうではなかった。
やがて、どう説得したものか、貴恵の婿も実家に泊まるようになった。
「うちの場合も、いつもわたしが先に相手をするようにしてるんです。
男の子は女のひとを守らなければならないですからね」
どこかで聞いたことのある科白を口にした義理の息子は、
どこかで見覚えのあるひっそりとした笑いを、口許に浮かべる。
しょせん血の輪廻はつづくのか――
そう思ったわたしのことを見透かすように、彼はいった。
「ぼくは娘の純潔は、欲しがりません。妻ひとすじでいきますから」と。

少女たちは、ソックスを濡らして家路をたどる

2017年10月14日(Sat) 08:19:08

放課後の空き教室で、貧血を起こしてへたり込んだ優奈は、
吸血鬼に抱きすくめられて泣きべそをかきながら、生き血を吸い取られていった。
咬まれつづけた首すじには、いくつもの咬み痕が、セミロングの黒髪に見え隠れしながら、赤い斑点を濡らしていた。
クラスメイトの澪に、話があると誘い出された教室で。
襲いかかってきた吸血鬼に、あろうことか澪は手助けをして、
じたばた暴れる両腕を抑えられ、どうすることもできずに首すじを咬まれていた。

ひどい、ひどいよ澪ったら・・・っ!
抗議の叫びも空しく、優奈の血はゴクゴクと喉を鳴らして飲みこまれていって、
視界を薄れさせた優奈はひざの力が抜けて、身体のバランスを失った。

「この教室でおひざを突いちゃうとね、罰ゲームが待ってるの。
 どんな罰ゲームか、知りたい?
 訊きたくなくても教えてあげるね。
 脚をね、咬まれるの。ハイソックスを履いたまま。
 いやらしく、ねちっこく咬まれて、
 ハイソックスに血とよだれがたっぷりしみ込むまで、くり返されちゃうの。
 あたしも昨日、やられちゃったの。
 優奈も、仲間になろっ☆」

耳もとに唇を近寄せて囁きかける澪の声色は、しっとりと、ネチネチと、優奈の鼓膜に突き刺さってきた。
――あなたが汚され辱められてゆくのを視ているのが、あたしとっても愉しいの。
小憎らしく笑う白い顔に、ありありとそう描いてあった。

「うぅぅ・・・たまらない!あたしも咬まれたくなっちゃった」
意識が朦朧となった優奈の前、
澪は大胆に髪の毛を自分で掻きのけて、赤黒く爛(ただ)れた咬み痕を吸血鬼の目の前にさらしてゆく。
吸血鬼は澪を抱きすくめて、優奈に襲いかかった時と同じように、がぶりと食いついた。
欲情もあらわな食いつきぶりに、優奈は悲鳴を忘れ、澪は随喜の声をあげる。
ぐちゅっ・・・ぐちゅっ・・・
生々しい吸血の音が、男の口許からあふれた。

「見て見て。お手本だよ。優奈もこんなふうに、脚を咬まれちゃうんだよ」
澪は嬉しそうに優奈に笑みかけると、弛んでずり落ちたハイソックスをぴっちりと引き伸ばした。
「ほら・・・ほら・・・見て・・・やらしい・・・ほんっと、意地汚いっ」
言葉とは裏腹に、澪は露骨に嬉し気な顔をして、優奈に視つづけるように促した。
ハイソックスごしに吸いつけられた赤黒い唇から、飴色をしたよだれが糸を引き、澪の足許を汚した。
「うう~、たまらない・・・たまらなくいやらしいっ」
「んもうっ、恥知らずっ!」
「侮辱だわっ・・・汚らしいわっ・・・」
口ではさんざん相手を罵りながらも、澪は男の非礼な仕打ちをやめさせようとはしていない。
失血でへたり込んでしまった優奈も、涙も忘れてクラスメイトの痴態をただ見つめるばかりだった。

吸血鬼が澪の履いているハイソックスを見る影もなく咬み破ってしまうと、
澪は白目を剥いてその場に倒れ、吸血鬼は射すくめるような目で優奈を見据えた。
伸びてくる猿臂を、避けようもなかった。
足首をつかまれて引きずり倒された優奈は、ハイソックスの上から男の唇がふくらはぎに吸いつくのを感じた。
生温かいよだれがじわじわと、優奈のハイソックスにしみ込まされてくる。
いやらしい・・・いやらしい・・・やめて・・・よして・・・
優奈は声にならない声をあげて、男を制止しようとしたけれど、
男は優奈の無抵抗をいいことに、ただひたすら彼女の足許を辱める行為に熱中しつづける。
ハイソックスごしに感じる男のなまの唇がいやらしくぬめるのを、
優奈は眉をひそめて耐え忍んだ。

這わされた唇の両端から、尖った異物がにじみ出て、優奈のふくらはぎの一角をハイソックスのうえから冒してきた。
あ・・・咬まれる・・・
そう思ったけれど、痛いほど抑えつけられていて、身じろぎひとつできなかった。
「お嬢さん、ご馳走になるよ」
男は優奈をからかいながら、ハイソックスのうえから牙を埋めた――

数刻後。
ふたりの少女は椅子に腰かけ、机に突っ伏しながら、
破かれてずり落ちたハイソックスのふくらはぎや、
スカートをたくし上げられてあらわにされた太ももを、
飽きもせずに這わされてくる男の唇に、
恥知らずにもぬめりつけられてくる男の舌に、
惜しげもなくさらしつづけた。

「キモチわるーい!ハイソックス、びしょ濡れだよ・・・」
さいしょは嫌がっていた優奈の声も、いまは明るい。
「ほんとだ、優奈お行儀悪いよ、学校に履いて行くハイソックスに、よだれつけられてるよ」
「澪だって、ひとのこと言えないじゃないっ」
「フフフ、愉しいでしょ?優奈も、愉しんじゃってるでしょ?」
優奈は照れ笑いを浮かべながら、なおも舌を這わせてくる男の仕打ちを許しつづけていった。
「濡れ濡れのハイソックス履いたまま帰るわけ?」
「だいじょうぶだよ。もう暗いし、紺のハイソックスだからシミも目立たないよ」
そういう問題じゃないと思うけど――そういいかけた優奈は、裏腹のことをいった。
「ママにばれないうちに脱いじゃえばいいんだよね?」
それから、チャームポイントのえくぼを可愛くにじませながら、いった。
「仲間、増やそ。」

「こんどは、お友だち連れてきてあげるね」

2017年10月14日(Sat) 07:48:21

放課後の教室で、澪(みお)は吸血鬼に襲われていた。
首すじを咬まれ、しつように吸血されて貧血を起こして、
教室の床にひざを突き、制服のスカートのすそを乱してうつ伏せに倒れ込んだ。
さいしょは忌まわしかった、血を吸われるという行為が。
だんだんと澪の理性を侵食して、快感を植えつける。

いまはもう・・・
血を吸い取られることが、快感になってきた。
素肌を牙に侵されることに、小気味よささえ覚えていた。
血潮が傷口を抜けてゆくときのむず痒い疼きが、むしょうに嬉しくなっていた。

さっきから。
男はしつように、澪の脚を咬んでいる。
紺のハイソックスを履いたふくらはぎを、それはいとおしげに撫でさすりながら。
欲情のおもむくままに、ふくらはぎのあちこちに牙を食い入れて、咬み応えを愉しんでいる。
愉しまれている。
そうとわかっていても、やめさせることはできなかった。やめさせようとも思わなかった。

うつ伏せの格好のままでは、自分の足許をどんなふうに苛まれているのかは見えなかった。
澪の想像のなかで、
彼女のひざ下をぴっちりと引き締めていたハイソックスは、見る影もなく咬み破られていた。
ほとばされた血潮はしなやかなナイロン生地にぬらぬらとしみ込んで、濡れ濡れになっていた。
けれどもそんなことさえが、むしょうに心地よい。小気味よい。

教室の窓に夕闇が迫るころ。
吸血鬼はやっと、澪のことを解放した。
「気が済んだ?」
澪は自分でもびっくりするくらいサバサバとした口調で、吸血鬼にいった。
吸血鬼は黙って頷いた。
「あたしの血、美味しかった?」
吸血鬼はまたも、黙って頷いた。
「黙ってちゃ、わかんない」
澪はしつこく応えをねだった。
吸血鬼は少女の耳もとに唇を寄せて、
「あんた、処女だな?」
とだけ、いった。
澪はプッとふくれ面をつくって、
「あたし子供じゃないもん」
と小声でいった。
「そのうちわしが、大人にしてやる」
「いやらしい」
口を尖らせる少女の首すじに男はもういちど唇を這わせ、喉を鳴らした。
「いや・・・死んじゃう・・・」
「また来てくれるね?」
「たぶん・・・」
澪は教室の隅に目線を迷わせながら、つづけた。
「こんどは、お友だち連れてきてあげるね」

この教室は、魔の教室――
そう呼ばれていると知ったのは、澪の血をたっぷりと吸い取ったこの憎らしい吸血鬼の口からだった。
そして、この教室に澪のことを呼び出したのは、いちばん親しいクラスメイトだった。
裏切られた――というさいしょの思いはすでに消えて、
他の子も、巻き込んじゃおう――という危険な思いつきだけが、彼女の胸の奥を駆けめぐっている。
だれが良いかな。美那子ちゃんかな、香織ちゃんかな。
そういえば、ここにあたしを誘った加奈は、あたしと同じ黒髪のセミロング。
そういう子が好きなのかな。
だったら明日誘うのは――優奈で決まり。

澪はちょっぴりだけ伸びた犬歯を唇の端に押し隠して、吸血鬼にバイバイをした。
「お友だち、連れてきてあげる」
澪はもういちど、男に囁いた。
男はくすぐったそうに笑みを浮かべ、少女の囁きに応えた。
きっと夕べ、加奈のやつあたしを紹介するって約束をして、こいつの笑みをもらったに違いない。
ちょっとだけ心が疼いたけれど。
親から受け継いだたいせつな血で彼の渇きを潤すことがもう、快感になってしまっていたから、
むしろ明日の想像をするだけで、身体じゅうがくすぐったくなってくるのを感じるだけだった。
加奈はこの教室に来なかったけど。
あたしは優奈のことを、ちゃんとここに連れてきてあげよう。
そしてあの子がかわいい顔に翳りをたたえて、うら若い血潮をたっぷりと吸い取られてしまうのを、小憎らしく笑いながら見守ってあげよう。

おそろいのライン入りハイソックス

2017年10月14日(Sat) 05:07:43

ったく、吸血鬼のくせに小心者なんだなお前は――
志郎は口をとがらせて、レイジを責めた。
レイジには、気になる女の子がいる。
同級生のアヤコのことだった。
けれども、レイジはアヤコに話しかけることもできず、
まして正体を明かして血を吸わせてほしいなんて、死んでも告白することができないでいた。
親友の志郎に打ち明けると、志郎は「まったくお前らしいな」と言い、
アヤコと同じ柄のライン入りの靴下を履いているときに吸血をねだられると、
仕方なさそうに靴下をひざ下まで引き上げて、咬み破らせてやっている。
きょうも体育の授業のあと、
志郎が短パンの下に履いていたライン入りの靴下に目を輝かせたレイジは、
体育館の裏手に志郎を誘って脚を咬んだ。
本人にお願いすることって、できないの?
志郎は咬ませてやりながらレイジに訊いたが、
レイジはひたすら首を横に振って、「無理無理」と言うばかり。
「わかったよ、じゃあ俺が話をつけて、連れて来てやるから」
志郎は仕方なさそうに、自分の足許にむしゃぶりついてくるレイジを見おろした。
「え?ほんと?ほ・・・ほんと?」
目を輝かせるレイジに、志郎はいった。
「でもさ、ほんとうのこというと、アヤコはぼくの彼女なんだ」

彼女を紹介して、血を吸わせてくれる――破格の好意だった。
でも、思春期で喉をしじゅう渇かせているレイジは、「悪いね・・・」とためらいながらも、志郎の好意にすがることにした。

「ぼく、あいつ(アヤコ)に告っといたから」
志郎の浮かない顔を見て、親友想いのレイジはちょっと心を痛めたけれど、
「ほんとうに来てくれるの?」
思わず飛び出た言葉は、嬉しさに満ちていた。
「さいしょはさ、お前のことが吸血鬼だって知って、あいつ“うそ~”って驚いてた」
「そうだよね・・・クラスに吸血鬼がいるなんて、やっぱ不気味だろうなあ」
「さいしょは怖がっていたけどさ、“でも志郎は彼と仲好いんだよね?”って気づいてくれて、“あいつ、お前の血を吸いたがってる”って言ったら、”志郎はいいの?“って言うから、”ぼくは構わないし、むしろ吸わせてほしいと思ってる“って言ったら、”志郎がいいなら私逢う“って応えてきた。まんざらお前のこと、嫌いなわけじゃないみたいだな」
でもその感情は、間に志郎が介在してこそ初めて成り立っているのだと、レイジはよくわきまえていた。
志郎の彼女を奪(と)るつもりはなかったし、たまたま彼女と同じ柄の靴下を履いていたのを見てあつかましくもねだった吸血に応えてくれた彼のことをないがしろにするつもりもなかった。

翌日の放課後、約束した校舎の裏手に、アヤコは現れた。
紺のプリーツスカートの下には、あのライン入りのハイソックスを履いている。
きりっとした縦のリブが走った白地のハイソックスは、発育のよい肉づきたっぷりなふくらはぎ――そういわれるのを彼女は好まなかったが――の印象を、ほどよく引き締めていた。
「やっぱり二人きりは怖いから、志郎そばにいてくれる?」
アヤコの希望を容れて、志郎は終始ふたりの傍らにいて、視線だけは逸らしつづけていた。

ライン入りの白のハイソックスに赤黒いシミを拡げながら、
アヤコは気前よく、若い血液を吸い取らせてゆく。
「だいじょうぶ?」
つかまえた足許から時折口を放してレイジはアヤコの顔を見あげたが、
「ううん、平気」
アヤコは気丈にもそう応えて、はらはらしながら見守る彼氏には、
「血を吸われるのって、意外にキモチいいね」
と、余裕の態度をみせていた。
やがて少女は顔色を変えて脚をふらつかせたけれど、
こんどはレイジのほうが夢中になってしまい、
めまいを起こしたアヤコが尻もちをついてしまうまで、彼女の脚を放さなかった。
うつ伏せになったアヤコの制服姿に、レイジはわが身を重ねていって、
左右の脚に代わりばんこに咬みつきながら、憧れていた靴下破りに熱中しつづけていた。

「やり過ぎたかな・・・」
われに返ったレイジは翌日、志郎に礼を言った後アヤコのことを気づかった。
「だいじょうぶ、うまく話しておいたから」
あの日現場で彼女が血を吸い取られてしまうのをはらはらしながら見つめていた親友は、
すっかりいつもの優しさを取り戻している。
「あいつ、言ってたぜ。
“あたしの血が気に入ったから、レイジはなかなか放してくれなかったんだね”
ってさ。
案外物わかりが良かったな。
まあ、俺の彼女だから、俺に似ているのかもしれないな。
お前の牙との相性も、なかなかいいみたい」
彼女の生き血を気前よく振る舞ってくれた親友は、意外にさばさばとした声色で、レイジにそういった。
「でもさ、お前・・・」
ちょっぴりだけ眉をひそめた志郎の顔を、レイジは怪訝そうにのぞき込んだ。
「血を吸った後、犯すだろ・・・?
 このあいだは、そんなことしないでいてくれたけど」
母親の血をレイジに吸わせるため家に招んだ志郎は、自身もしたたかに血を吸い取られたあげく、母親の首すじにかじりついたレイジがそのあとなにをしたのかまで、しっかりと見届けてしまっていた。
「ああ、あのときね・・・」
レイジは苦笑いしながらつづけた。
「大丈夫。アヤコが処女のあいだは、そういうことはしないから。」

ちょっとだけ安心した志郎は、レイジと別れた後にふと気がついた。
いつか俺がアヤコと結婚したら、アヤコは処女じゃなくなる。
そのときもしもレイジとつき合いつづけていたら――というか、そういう可能性が高いのだけれど――レイジはアヤコを抱くことになるの・・・?

一週間後。
志郎はレイジにねだられるまま、制服姿のアヤコを伴って放課後の教室にあらわれた。
「こいつのこと、咬んでやってくれないか?」
え?と、親友を見あげるレイジに、志郎はつづけた。
「お前、こいつの素肌に毒をしみ込ませたろ?
 あれ以来、彼女お前に襲われたがってるんだ」
たしかに――吸血鬼の習性として、牙から分泌する毒液がいくばくか、彼女の体内に流れ込んだのは間違いない。
毒液を植えつけながら、レイジがこう願いつづけたのも、間違いない。
――アヤコともう一度逢いたい。クラスメイトとしてではなく、吸血鬼として。

俺のことなら気にすんな、と、志郎はいった。
「お前が初めてアヤコのことを咬んだ時、異常にドキドキして昂奮しちまった。
 これっていったいなんなんだろう?って思った。
 お前が度胸をつけて、うちの母さんを襲ったとき、それが初めて分かった。
 ぼく本当は、おまえがアヤコを犯すのを視てみたかったんだ。」
アヤコは志郎の話を傍らで聞きながらも、頬を真っ赤にしながら俯いていた。
そして志郎に「ごめんね志郎、あなたの恋人のまま、この人に咬まれつづけるから」
というと、レイジの胸に飛び込んでいった。

その日この空き教室で行われたのは、決してレイプではなかった。
恋人まで認めた、彼の親友による女子生徒の処女破りの儀式。
明日もきっと、ふたりはおそろいのライン入りのハイソックスの脚を並べて、
渇いた喉を抱えた彼氏の親友に若い血液を振る舞うために、連れだって訪れることだろう。


(10月4日構想、今朝脱稿)

「だめダンナ」

2017年10月14日(Sat) 04:32:50

オフィスの中でいつもいかつい顔をして肩をいからせている部長が、
めずらしく照れくさそうに笑っている。
部長のデスクには、いつも威厳たっぷりに置かれている「〇〇部長」のプレートの代わり、
「だめダンナ」と大きく書いたプレートが。
いったいあれはなに?
この職場に来て間もないわたしが周りに訊いても、だれもがニヤニヤ笑うだけ。
だいじょうぶ、すぐわかるから。だれもが順番に置いてもらえるから。
同僚の一人はそう言って、自分のところにも月2か3くらいで置かれるんだといって、
部長と同じように、照れくさそうに笑った。

その晩自宅に戻った私は、この街に棲むという吸血鬼の訪問を、初めて受けた。
首すじにつけられた咬み痕が、ジンジンと妖しく疼いた。
相手は父親よりも年老いた、100に近いのではという老人。
それがまだ吸われていない妻のまえ、わたしに言った。
ご夫婦の寝室はどちらかな?
こっちです。もう布団を敷いてありますけど。
恐る恐る、妻がこたえた。
では、わしはその部屋で寝(やす)むとしよう。
吸血鬼はつづけていった。
奥さんを小ぎれいに着替えさせて、わしの部屋に連れて来てくれ。
寝苦しかろうが、あんたはそこのソファで寝ると良い。
首すじの疼きは、わたしの理性をあっさりと奪い、
どうぞお気の済むようにと会釈を返すと、ためらう妻を促していた。

「だめダンナ」
きのう部長の机に置かれたプレートが、今朝はわたしのデスクに置いてある。
臨席の同僚が、そっと囁いた――おめでとう、と。
職場のだれもが、見てみぬふりを決め込んでいる。
そしていつもと変わらぬ日常が、くり返されてゆく。
帰りぎわ。
プレートはいつの間にか、なくなっていた。
そして、向かいの同僚の席に置かれていた。
「彼のところがいちばん多くて、週1くらい。
そのつぎがぼくで、月2か3くらい。
やっぱり若い奥さんのほうが、彼としてもいいらしくって。
部長はきのうが初めてだったから、あんなに照れくさそうにしていたんだ。
あの人、部下の奥さんのことをあっせんするのは、得意なんだけれどもね」
彼の口調にちょっぴり非難の色があったのは。
彼の奥さんも部長にあっせんされてしまったからだろうか?

来月も。
若い社員がひとり、この職場に赴任してくる。
たしか新婚三か月だときいている。
事態は薄々、事前にきかされているはず。
でも、断り切れないなにかを抱えて、この職場にやってくる。
みんな都会にいられなくなった事情を抱えながら、
きょうも自分の机のうえにプレートが乗るのを、
なぜかドキドキしながら、待ち焦がれている。

(10月6日構想)

有言実行の男

2017年10月04日(Wed) 07:57:01

有言実行な男だった。
この街に移り住んですぐのころ、やつは面と向かってわたしに言った――
きみの嫁を、征服する、と。
吸血鬼と人間とが共存する街、とはきいていたけれど。
当時の思いのまま、それは気が進まない、と、わたしはこたえた。

一週間後。
身体じゅうの血をすっかり抜かれたわたしは部屋の隅に転がったまま、
妻までもがむざむざと首すじを咬まれてゆくのを、視ているしかなかった。
吸血鬼が人妻をモノにするとき、身体の関係まで結んでゆく。
そして愛情を抱いた相手のことは、決して生命を奪わない――という彼らの掟を、
わたしは目の前で、見せつけられた。

翌朝のこと。
今夜も遊びに来るという彼に向って、
歓迎するよ。ふたりは似合いのカップルだ。家内をモノにできておめでとう――
思わず口走った祝福に、妻はほっと胸をなでおろしていた。

孕ませてやるよ――
有言実行な男は、目の前で妻を抱きながらそういった。
でも第一子は、あんたの子だ。
生れてくるのが男の子なら。
手なずけて、彼女を紹介してもらう。ちょうどあんたのときみたいにね。
生れてくるのが女の子なら。
俺が犯す。
つぎに生まれてくるのは、俺の子だ。
生れてくるのが息子なら。
きっとあんたの息子の嫁か、自分の姉を犯すだろう。
生れてくるのが娘なら。
やっぱり俺が犯す。

気の長い話だな。
そんな軽口をたたくくらい、やつとはすっかり打ち解けた関係になっていた。
妻の浮気相手という事実も、
おなじ女を好きになったもの同士の連帯感にすり替わっていた。
妻の母親や、わたし自身の母親を紹介したときは、
やつと妻、それにわたしとは完全に、共犯者の関係になっていた。
あなたも母のことを抱いてみる?
妻はイタズラっぽい流し目で、わたしのことをいともかんたんに、篭絡していった。
息子の嫁の火遊びに、この世で最も厳しいはずの母は、嫁と同じ男を愛人として共有して、
「昼間はあなた、夜はあたし」と、嫁姑で夫を裏切る共同戦線を張るようになった。
父はわたしのときと同じ経緯で、寛大な夫になっていた。
長年連れ添った愛妻に向けられた老いらくの恋を認めてやって、
新たな恋に夢中になった母の浮ついた振る舞いに、見てみぬふりを決め込んでいた。

気の長い話は、ほんとうに実現した。
わたしは長男と長女に恵まれた。
息子は彼女ができたとき、真っ先にやつに紹介をして、
セーラー服の襟首から、処女の生血を吸い取らせてやって、
律儀な男だったので、責任をとってちゃんと結婚をして、
花嫁が披露宴を迎えるまえの晩、親しんだ小父さまを相手に処女を捧げるシーンまで、しっかり見届けてしまっていた。

父親ちがいの弟は、実の父親に似て、有言実行の男だった。
父さん、ぼくはぼくのほんとうの父さんみたいにして、この家族を乗っ取るからね。
でも許してね。優しい母さんや素敵な姉さんたちを与えてくれた父さんには、心から感謝するから――
そう宣言したその夜に、彼は息子の嫁を相手に筆おろしをして、
そのつぎの晩には、やはり父親ちがいの姉を襲って処女を奪った。
弟に犯された娘はそのつぎの夜、母親の情夫に誘惑されて、二人目の男を経験した。
けれどもこの父親ちがいの弟は、実の父に似てべつの意味で律儀な男で、
嫁入り前の身体を汚されてしまった姉のため、自分が作った人間の親友を紹介してやって、
結婚後も姉弟がつき合うのを承知のうえで、娘を娶ることを承知した。
親友の母親が口うるさい姑だったら、きっと吸血鬼の親子に犯されてしまうのだろうね。
そういうわたしのまえ、
妻の情夫と血のつながっていない息子とは、似通った面差しを並べて笑う。
父さん、だいじょうぶ。もう征服しちゃったから――
ふたりとも本当に、有言実行の男たちだった。

村の吸血鬼に捧げた妻

2017年10月04日(Wed) 07:00:49

薄いピンクのスーツに、黒の網タイツ。
そんないでたちをお出かけ姿にした妻は、
立派に「都会育ちの淫乱妻」。
そういう役柄を望んだのは。
望んできたわけでもないこの片田舎の任地で、
妻を見初めた村の衆。
相手は妻の父親よりもずっと年上な、みすぼらしい爺さまだった。

むしろそういうひとのほうが、気楽だわ。
妻がそう言ったのは、男が妻を組み伏せて、無理やり想いを遂げたあとのこと。
前もって首すじを咬まれて血を抜かれてしまったわたしは、
むざむざと征服されてゆく妻のありさまを、ただ見せつけられることしかできなかった。
植えつけられてしまった妖しい昂ぶりを、歯を食いしばってこらえながら。

行為が済まされてしまうまでのあいだ、わたしが歯を食いしばっていたのを、
屈辱をこらえていたのだと誤解した妻は、
はだけたブラウスを直そうともせずに、わたしのほうへとすり寄って、
あなたごめんなさいを、ひたすらにくり返していたけれど。
男との取引はその場で成立して、妻を安心させていた。

夫を愛しているから、離婚するつもりはない――と、妻。
妻を愛しているから、離婚するつもりはない――と、わたし。
離婚してもらうには及ばない。家族を壊すのも嫌だし――と、爺さま。
そして爺さまがそっと囁いたひと言に、わたしはゾクッと昂ぶりを覚える。
あんたの奥さんを、志藤夫人のまま辱め抜きたいのぢゃ。

でも二人が望むなら、お付き合いに応じさせても・・・と言いかけてしまったら。
妻があとを継いで、つつしんでデートのお供をつとめさせていただきますと言い出して、
あなたの妻のまま、あなたを裏切らせて――そう囁く妻に、無言で肯きかえしてしまっていた。

都会に住んでいたころ、肌色のストッキングしか穿かなかった妻は、
いまでは男の好みに合せて、妖艶な黒のストッキングや、けばけばしい光沢タイツ、網タイツを穿くようになった。
そして逢引きをする時には、わたしの送り迎えを望むようになった。
だって、貧血になるんですもの。
頭をかかえながら一人で帰るのはいやだわ。
だって、お洋服をくしゃくしゃにされてしまうんですもの。
おっぱいをまる見えにさせながら一人で帰るのは困るわ。
妻の言うなりに、送り迎えのつとめを果たすことに、
辱めよりも歓びを感じはじめてしまった、わたし――


きょうもまた、わたしの隣を歩く妻は、
網タイツの脚をおおまたに、歩みを進めてゆく。
発育のよろしい肉づき豊かなむっちりとしたふくらはぎに、
水商売の女みたいな妖しい網タイツを穿いて。
大またで歩いてゆくその先には、
年老いた情夫の待ち焦がれる、恥知らずな不倫のベッド。

娘よりも若い女を迎え入れた爺さまは、
おぅ、おぅ、きょうはいちだんと、あでやかぢゃの――と、妻のことをほめたたえて、
どうせ、血をたっぷり獲るには太い脚のほうがいいって仰るんでしょ――と、妻はこれ見よがしなふくれ面をして、
どうぞごゆっくり――と、わたしは気をきかせて、座をはずす。
うかうかしているとその場で血を抜かれて、いちぶしじゅうを見せつけられる羽目になる。

そ知らぬふりをするわたしの背後、
爺さまは恥知らずに妻にすり寄って、網タイツの脚にしゃぶりつき、
妻は恥を忘れてきゃあきゃあとはしゃぎながら、つま先立ちをしてもの欲しげな唇をなすりつけられてゆく。
黒の網タイツをびりびりと咬み破かれながら、生き血を吸われ、犯されてゆく――

9月のまとめ

2017年10月02日(Mon) 05:46:36

先月あっぷをした記事の数は8作と、今年のなかでは比較的少なめでした。
すとれすが多いと記事数が増える傾向にありますが、
記事数が少ないからすとれすとは無縁なリアルを過ごしているわけでは決してなくて・・・
今月はどうなるかな?

それはさておき。
8つのお話のうち、5つにコメントをいただきました。
(ありがとうございます)
ノーコメント記事が圧倒的に多数であるココとしましては、出色の出来です☆
いちいち統計は撮っていないけれど、割合としては過去最高なんじゃないかな?

こりずに読みに来てくださる方。
コメントまでくださる方。

ほんとうに、ありがとうございます。