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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

優しい伯母。

2017年11月27日(Mon) 07:36:56

高級住宅街の瀟洒なたたずまいの一角から、優雅なピアノの音色が漂ってくる。
「奥村敏恵 ピアノ教室」
そんな古びた看板が生垣に埋もれかけたお邸からは、かなり流ちょうな旋律が踊るように流れてくる。
その流れが、ふと途切れた――

「アラ、間違いよ。あなたいっつもここで、途切れるわね」
親切そうな中年のピアノ教師・奥村敏恵は、うわべだけの優しいほほ笑みを、教え子の少女の横顔に投げかける。
逃げられないように抑えつけた少女の両肩にかけた掌に、ギュッと力を込めながら。
少女の足許には、背後から近寄せられた男の唇が、もの欲しげに吸いつけられている。
白の薄地のハイソックスが、少女のひざ小僧の下までお行儀よく引き伸ばされていたけれど。
ヒルのように密着した、赤黒い唇の下。
ピンク色の脛を滲ませた白の薄地のハイソックスはむぞうさに噛み破られて、
裂け目が縦にツツッ・・・と走る。
そしてひと呼吸おいて、真新しいナイロン生地にはバラ色の血の滴りがしみ込んで、拡がっていった。
息をのんだまま硬直した少女の凍りついた顔つきを、敏恵は小気味よさそうに覗き込む。
「優子さん、もう少しの辛抱よ。
 あなたの若い血で、うちの甥っ子をもう少しだけ、愉しませてあげて」
気品のある白い頬に意地悪い笑みを泛べて、ピアノ教師は教え子に、うわべだけのいたわりを囁きつづけた。

男は少女の椅子の下、這いつくばった姿勢のまま、
喉をゴクゴクと鳴らしながら、うら若い乙女の血潮に酔い痴れている。
若いピチピチとした活力を、痩せこけた身体いっぱいに行き渡らせようとして。

白い顔になってソファに横たわる少女を、ピアノ教師は無同情に見おろした後。
「30分もすれば回復するわ」
と言い捨てて、
「由佳さん、よろしいですよ」
と、つぎの教え子の名前を呼んだ。
「あなたはあっちにいらして、この子の相手をなさい」
甥っ子にそう言い捨てると、気絶した教え子にはもう関心がないといわんばかりに、ふたりに背を向けている。

ふすま一枚へだてた向こう側。
ズズッ・・・じゅるじゅるっ。
不気味な音が洩れてくるのを、つぎの少女はことさらに無視してピアノの前に座った。
若い女の生き血を啜る音だと気づいていないわけはないはずなのに、
ブゾーニの何番をお願いします、と、お行儀よく頭を下げて、セミロングの黒髪を揺らせる。
「じゃあいつものところから」
ピアノ教師はうわべだけの優雅な笑みを湛えながら、少女の指先に奏でるようにと促していく。
ピアノ教室に出入りする少女たちは、いずれも良家の子女である。
こういう場にくるときには例外なく良い服を着て、先生に教えを請いに訪れる。
由佳と呼ばれた少女もまた、淡いピンクのワンピースの下、齢不相応にストッキングを脚に通していた。
仲の良いお友だちの優子ちゃんのつぎの獲物は自分なのだと、自覚し過ぎるほど自覚していたし、
せっかく穿いて来た大人っぽい肌色のストッキングも、
レッスンの後で見る影もなく咬み破られてしまうとわかっていながら、
心の動揺を覚られてしまうのは恥だといわんばかりに、ことさらもの静かに、優雅なメヌエットを奏でてゆく。


「ショウジさん、よかったわね。皆さん優しくて・・・
 お嬢さんたちはだれも、あなたのこと嫌がったりしなかったじゃないの。
 あなた、もっと自信持ちなさいよ。
 それから早く、あの子たちのなかから、お嫁さんを選んでね」
教え子たちが順ぐりに咬まれて、破れた靴下を穿き替えて帰宅していったあと。
敏恵は血色を取り戻した甥っ子の横顔を、優しいまなざしで見つめる。
さっきまでのうわべだけの笑みとは裏腹な、いたわりに満ちたまなざしだった。
甥っ子には甘く、どこまでも親切な伯母だったのだ。

甥のショウジに初めて襲われたときには、びっくりして取り乱してしまった。
そのままじゅうたんの上に押し倒されて、ショーツを引きずりおろされたときには、まさかと思った。
この齢になったのに、敏恵がセックスを識ったのは初めてだったのだ。

吸血鬼になった息子を姉の家に差し向けた妹は、あとからすべてを告げた。
妹の一家は家族全員が吸血鬼に襲われて、甥のショウジが吸血鬼になったということを。
後出しは卑怯だわ。
したたかな妹に、姉は冷ややかにそういった。
首すじに咬み痕をつけられた後であっても、そういうところまでは崩れ果てないらしい。
姉と同じ痕をつけられた後、すべてを崩れ果てさせてしまった妹は、
姉の気丈さとひさびさに向かい合って、さすがだと素直に思った。
「わかったわ。うちの教室に若いお嬢さんが大勢出入りしているから、私にあの子を預けるというのね?」
皆まで言わせず、露骨に言い切った姉に、妹は綺麗な女の冷酷さを見る思いだった。

それ以来。
独り住まいのピアノ教師の邸に居候を決め込んだ甥っ子は、若い好奇心のまま、
伯母の教え子たちを襲いつづけた。

同性には冷酷なこの女はしかし、甥っ子にはどこまでも優しかった。
血を欲しがって呻きをこらえる甥っ子のまえ、優雅に装ったドレス姿を見せびらかして、
すすんで押し倒されていって、股間も首すじも、ためらいもなく愉しませてやった。
女性が脚にまとう丈の長い靴下に執着するショウジの嗜好を、
「いけない子ねぇ」と優しく咎めただけで、
ストッキングで上品に装った足許を、ロングスカートをたくし上げて惜しげもなくさらけ出すと、
狂おしい本能のおもむくままに、荒々しくむしり取らせてしまっていた。
さいしょは伯母のもとに出入りする教え子たちのことを、恐る恐るのぞき見するだけだった甥っ子の好みを、優しい伯母は懇切に聞き取ってやり、
甥っ子が手を出してもよさそうな娘を択んでは、レッスン後に二人で逢わせてやるようになった。
――あなた、吸血鬼に襲われてみない?
先生にそんな誘いを受けて戸惑う教え子たちをあるときはなだめすかして、あるときは高飛車に抑えつけて、
レッスン室の隣のお座敷に送り込まれた教え子たちは、
ひとり、またひとりと、甥っ子の毒牙にかかっていった。
それが近所の評判にならなかったのは、少女たちが口が堅かったのと、
たまたま知ってしまった親たちも外聞を憚って見て見ぬふりをし、
自分の娘が吸血に狎れてしまったことに薄々気づきながらも、
ピアノのレッスンを続けたいというまな娘の願いを叶えつづけた結果だった。

良家の子女のなかには、すでに男を識ってしまった娘も、当然のようにいた。
そうした娘たちには、敏恵は容赦がなかった。
「お行儀の悪い子は、犯してもいいのよ。遠慮なくおやりなさい」
敏恵の言いぐさはひどくそっけなかったけれど、甥っ子への歪んだ愛情に満ちあふれていた。
伯母の冷ややかに澄んだ声が突き放したような言いぐさを口にするのを、
ショウジはくすぐったそうに受け流しながら、
小ぎれいなお洋服に着飾った伯母の教え子を組み伏せて、荒々しくスカートをたくし上げてゆく。
鋭利な牙を秘めた唇を柔らかな首すじにあてがうと、
どんなに気の強い少女も例外なく怯えた視線をさ迷わせながら、従順になっていった。
生き血を吸い取られてゆくあいだ。
ハイソックスの脚がじたばたと暴れ、
切なげに足摺りをくり返し、
やがて力を失ってぐったりと横たわる。
けれどもショウジの黒ずみ痩せこけた腰がスカートの奥に肉薄し、深く沈み込んでくると、
ふたたび身じろぎを始め、淫らな躍動をはじけさせてゆく――
敏恵はワイングラスを片手に弄びながら、
そんな恥知らずな教え子たちが甥っ子に組み伏せられて、
嫁入り前の娘としての名誉を奪われてゆくのを、
小気味よさそうに眺めていた。


「ありがとうございました」
丹生加奈子はお行儀よく両ひざの上で手を重ねて、レッスン後のあいさつを終えた。
ロングの黒髪を揺らしてお辞儀をする少女に、敏恵は、
「あちらにいらっしゃい。甥っ子があなたのことを待ちかねていますよ」
と、少女を促した。
加奈子はちょっとだけ羞ずかしそうな笑みを色白な童顔によぎらせると、
「ではちょっとだけ、お邪魔していきますね」
と、白い歯をみせた。そしてピアノの前から起ちあがりかけて、
「きょうのレッスンは、私が最後ですよね?」
と、忘れずに確かめていた。

「白のカーディガン、汚れが目立たないかしら」
首すじを咬まれたあとの血のほとびを気づかわれたと知りながら、少女は笑みを絶やさない。
「だいじょうぶ。彼、優しくしてくれますから」
加奈子が白い服を着てくるときには、血が撥ねないようにソフトに咬んでくれるのだという。
「きっときょうは、優しく咬まれたい気分なのね」
心優しい伯母は、甥っ子の相手をためらいなくつとめてくれる少女のことを、そう判断した。
リビングのドアが開いて、ショウジが顔を出した。
「やあ」
おおぜいの女の子を組み敷いて来た彼には珍しく、よそよそしいはにかみを泛べているのを、伯母はほほ笑ましく見守る。
つぎの教え子が控えているときには、
イスの下にもぐり込んでハイソックスのふくらはぎをひと咬みするだけで、
レッスンを終えた少女をすぐに連れ出してしまうショウジが、
加奈子がいちばんさいごにレッスンに訪れるときだけは、レッスン室に長居をするのだ。
加奈子もショウジの抱いている好意を、それとなくわきまえているらしい。
「おニューのタイツ履いて来たの。楽しんでね」
笑くぼを滲ませて人懐こく笑うと、こげ茶のスカートのすそを抑えながら、
「失礼」と先生にひと声かけて、じゅうたんの上に身を横たえていく。
真新しい黒タイツに包まれた発育のよいふくらはぎが、しなやかなナイロン生地ごしにピチピチとした生気を滲ませていた。
ウウ・・・
吸血鬼としての本能を目覚めさせてしまったらしい甥っ子が、
少女の足許に性急に唇を圧しつけてゆくのを、
心優しい伯母は「あらまあ、ホホホ・・・」と、嬉し気に見つめていた。

少女が純潔を喪ったのは、それから小一時間ほど経ってからのことだった。

濃い紫のドレスに身を包んだ伯母は、最愛の甥っ子が自分の教え子を女にしてゆくのを、そむけた背中越しに感じつづけていた。

相手の女がすでにセックスを識っているとき、甥っ子は必ず彼女を犯した。
けれども相手が身持ちの良い少女の場合には、生き血を吸い取っても犯すことはなかった。
相手が処女でも犯してしまうとき、彼が本気なのだということを、
敏恵は自分の身体で識っていた。

加奈子さんのご家族には、ご挨拶に伺わないとね。
お母さまはおきれいな方だし、お父さまは物わかりのよい方よ。
中学にあがったばかりの、可愛い妹さんもいらっしゃるの。
あの子もきっと、ピアノを習うようになるわ。才能あるから。
あなたは特別な子なんだから、お嫁さんはなん人ももらうといいわ。
伯母はどこまでも、甥っ子に甘く優しかった。


あとがき
このお話に登場する人物・団体名は、他のお話同様架空のものです。
・・・なんて断り書きを入れるのは。
だいぶ前のことですが、たまたま同姓同名だったらしい方から「私のことを知ってるの?」と問い合わせられたのを思い出したからなのでした。

さいごに加奈子さんの妹さんを「才能あるから」と評価した伯母さまは。
妹娘のどんな才能に注目したのでしょうか?
気になるところではあります・・・

受話器 2

2017年11月27日(Mon) 06:26:29

夜が明ける。
真っ暗にしたはずのこの部屋にも、閉め切ったカーテンの向こうから、明け方の気配が洩れてきていた。
男は顔をあげ、あたりの様子を窺った。
女はとうに、気絶している。
気絶した女の傍らに、黒い受話器が転がっている。
男は吸血鬼。
魅入らせてたらし込んだ人妻を呼び寄せて、ひと晩かけて欲望を満たしつづけていた。
血を吸うだけではない。
ちゃんと女として、愛し抜いた。
夫は単身赴任のサラリーマン。
そんな手薄な身辺に近寄るのは、たやすいことだった。
やすやすと堕とした女の肢体に、夜な夜な酔い痴れる。
もちろん吸い取る血液の量は、手かげんしている。
軽い貧血が却って陶酔をそそるのか、
女は心地よげに男に身をあずけ、守り抜いてきたはずの貞操を、惜しげもなく差し出してくる。

転がった受話器を、男は手に取って、耳にあてがう。
もしもし――?
とうに切れていたと思っていた受話器の向こう側は、まだ回線がつながっていた。
ツーツーという無機質な発信音の代わり、耳元に聞こえてくるのは、男性の昂った息遣い。
切迫し切った息遣いは、女の夫のものだった。
あんた、きょうは仕事だろ?
・・・休むよ。
息遣いの主の声色は、長時間続いた緊張の果てにある疲労と愉悦に満ちていた。
家内、ぼく相手のときには、そんな声立てないんですよ・・・
満足できた?
ええ、とっても・・・

手ごめにした人妻の夫は、男にとって幸いなことに、マゾヒストだった。
そして夫自身にとっても、己の性癖は幸いしていた。
ことの真相を知った夫は協定に応じ、潔く吸血鬼の軍門に降ると、
留守宅を守る妻の肢体をよろこんで提供すると約束してくれた。
そのご褒美に。
今夜は逢瀬を遂げるというその晩に、夫のところに電話をかけて、
ことのなりゆきを面白がって笑いこけるその妻のまえ、電話をつないだままの受話器を転がしてみせた。
――今夜はあんたの愛妻の、悩ましい喘ぎ声をプレゼントしてあげる。
吸血鬼の言いぐさに、受話器の向こうでおっとりと頷く夫。
転がした受話器の揺れが止まる前に、吸血鬼は女に襲いかかっていた――

ひと晩寝ずに、奥さんの声を聞きつづけていたのか?
眠れる夜じゃ、ないからね・・・
きみは良いご主人だ。
あんたも、良い間男だ。
うふふふふふっ――男は、くすぐったそうに笑う。
軽はずみな女だが・・・これからも家内のことをよろしくな。
ああ、任せておけ。
震えを帯びた昂ぶりの声の主は、やっと自分のほうから電話を切った。
あとに残るのは、ツーツーという無機質な発信音。
男は受話器を置いて、傍らに転がる女の肢体を見おろした。
女は口許にかすかな唾液を滴らせ、整った目鼻立ちに淫らな陶酔の痕跡をありありと残している。
クククククッ・・・
男はくぐもった昏い笑いを洩らすと、われにかえって身じろぎを始めた女のうえにのしかかり、
アッと声をあげかけた唇を、自分の唇でふさぎながら。
もういちど女の背中に腕を回して、ギュッと抱きすくめていった。


あとがき
前作に触発されて、受話器をテーマにもう一話描いてみました。
昨日から、前作に触発されて次のを描き、さらにそのまた次のお話・・・と、つむいでしまいました。
たまにはこううことも、ありますよね?^^

受話器。

2017年11月26日(Sun) 08:29:25

「お義母さまにも、いい想いをさせてあげましょうよ。すこしでもお若いうちに」
妻のそんないけない囁きにそそのかされて、受話器をとったわたし――
ここは吸血鬼の棲む村。
村の衆は誰もが彼らのいうことを聞き、妻や娘さえも捧げることを、むしろ誇りとし悦びとしていた。
そんな土地だと知りながら、都会に住むことができなくなったわたしたちはこの村にやって来て、
いまではわたし自身すらが、妻が愛人をつくることに同意してしまっていた。

母をこの土地に招ぶ――
多少の罪悪感と後ろめたさを感じながら、わたしは受話器をとった。
受話器の向こうから聞こえてくる声色は落ち着いていて、
それでも熟れた美味しい血を宿した女が放つ声だと自覚してしまうのは、
この土地に慣れ親しんでしまったものの身につける忌まわしい感覚なのだろうか。
母は、紅葉の見ごろになったら父といっしょに遊びに来ると、約束してくれた――

身体が埋もれるほど積み重なった紅葉のうえで。
それまで気丈に振る舞っていた母は、
帯を解かれ襟足をはだけられ、眩しいほどの裸身を輝かせながら、
息荒く群がる男衆たちを相手に、気丈に振る舞い抜いていった――

数か月後。
母は父を連れて、この村に移り住むようになった。
うわべは渋っていた父もまた、母と村の衆との交際を認めないわけにはいかない仕儀となったらしく、
いまは潔く?妻の貞操を荒々しい抱擁と吶喊とに、譲り渡してしまっている。

握りしめた受話器の向こうから聞こえてくる、母の声は。
ひどく若やいではずんでいて、
きっとよそ行きのスーツを奥ゆかしく着込んでいるはずなのに、
そのスーツのすそを腰までまくり上げられて、
ストッキングを脛まで引きずり降ろされて、
後ろからズンズンと突き抜かれつづけているらしく、
「あなたもっ・・・典子さんにきをつけてッ・・・あげなさい・・・ネッ・・・!?」
と、声の抑揚もどことなく、おぼつかなくなっていた。

数か月前の老成しきった、もの静かで冷静な声色とは、20歳は若返ったかのように、はずみきっていた。

受話器の向こう側はどうやら、収拾がつかないことになってしまったらしい。
やがて母の手から受話器をひったくったらしい父が出て、いった。
「もういいから、かんべんしてあげなさい。あとは父さんが面倒見ておくから」

振り返ると妻は、ベッドのうえに片脚だけもたれかけさせながら、床のうえに大の字になって気絶している。
口許からは、だらしなく垂れたよだれがしたたり、
ベッドのうえに無造作に投げられた脚は、ひざ小僧までずり降ろされたストッキングが、ふしだらな光沢を放っていた。

目のまえには、抜け殻どうぜんになるまでむさぼられた妻の裸体。
受話器の向こう側からは、理性を塗り替えられた両親の声。
そのどちらもが、わたしの理性をも狂おしく塗り替えてゆく。

妻のすすめ

2017年11月26日(Sun) 08:09:11

吸血鬼に襲われて生き血を吸われ犯された妻は、愛人との逢瀬をわたしに認めさせ、
すすんで彼の奴隷となった。
妻は女の生き血に飢えている愛人のため、自分の母親を実家から呼び寄せて襲わせた。
娘の生き血をたんのうした男にとって、その母親の生き血はどうしても、気になるところだったから。
見返りに妻は、義母の不在を寂しがる義父とのあいだに、父娘ではあり得ない結びつきをもつようになった。
「父はね、前から私のこと気にしていたの」と、妻はうそぶいた。
「母の献血を認めてくれたから、お礼をしたかったの。いいでしょ?」
きっと舅は、「献血」だけではなく「不倫」までも、認めさせられてしまったのだろう。
すっかり主導権を握られたわたしは、妻のもっともらしい言い分に、ただ頷くことしかできなかった。
妻と情夫との濡れ場を目の当たりにすることを歓びと感じてしまう恥ずかしい性癖を、
しっかりと植えつけられてしまったから。
娘に対し「恥を知りなさい」と咎めだてをした気丈な義母は、いまでは公然と不倫に耽るようになって、
永年連れ添った妻が痴態もあらわに納屋で男衆と乱れ合うのを、その夫は恥を忘れてのぞき見することに熱中していた。

自分の母親に、愛人を。
父親に、妖しい歓びを。
そんな贈り物で“親孝行”を果たした妻は、そしてわたしにも、囁きかけてきた。
「お義母さま、少しでもお若いうちに、生き血を味わってもらいましょうよ」
「御実家からこちらへ、おひとりで来てもらいましょうよ。あとの手引きは私がするから」
「どうしてもお義父さまもついていらっしゃるというのなら、私お相手するわ。そのあいだにお義母さまを、味わっていただくの。どう?」
嫁の乱行を、夫以上にとがめだてするはずの存在を、この際葬ってしまおう――そんな意図をありありと感じながらも、わたしは知らず知らず受話器をとってしまっている。
母のときはもしかすると、妻のときよりも昂ってしまうかもしれない――そんないけない妄想にとりつかれながら・・・

戦利品 その2 ――蟻地獄――

2017年11月26日(Sun) 07:54:12

「嬉し恥ずかし」の初応接の時期が過ぎると、妻と交際を続ける男衆の頭数はぐっとしぼられてくる。
犯す側と犯される側とのあいだには、必然的に「相性」というものが生まれてくるからだ。
いまは、2~3人の特定の男衆が代わる代わる妻をあの藁納屋に誘い出して、
時には一対一で、時には複数で、辱め抜いてゆく。
「辱め」といっても、人妻本人にもその夫にすらも苦痛を感じさせることがないのは、こういう村ならではのことなのだろう。
わたしもまた、妻ともども彼らに誘われたときには、できるだけ応じるようにしている。
彼らは獲物にした人妻を夫の目のまえで弄びたがるというけしからぬ趣味を持っていたので、彼らの願望を好意的にかなえてやるために――
都会育ちの人妻の淫らな遊戯は、夫までも巻き込んで、明け方までつづくのだった。

妻の身体からはぎ取られ、せしめられていった洋服や装身具たちは、
その後交際から遠ざかった男の手から、交際を続ける男の手へと移っていって、
さいごはひとりの男が、あのときの服装のすべてを手にすることになる。
それを見せつけられた夫は、妻と間男との交際に、三人で乾杯をして、
「おめでとう、末永く妻をよろしく」と言って、すべてをゆだねることになっている。

妻の父親もわたしの父も、わたしと同じように寛大な夫になるのに、そうは時間がかからなかった。
さいしょに妻を咎めたのは、実の母親だった。
けれども彼女はすぐに、母娘もろともあの納屋で輪姦されて、すっかり大人しくなってしまった。
身ぐるみ剥がれてムシロ一枚の「お菰さん」なんかにされてしまっては、それまでの人生観など無に等しいものになってしまったとしても、あながち本人を責められない。
「娘に関心があったら、お袋のことも抱きたくなるもんだね」
妻の洋服ひとそろいをの所有者になったあの男衆は、そういいながら、
さっきわたしの義母を犯してきたという一物を、ズボンのうえから自慢げに撫でさするのだった。

彼がふたたび自分の一物をズボンのうえから自慢げに撫でさするのを見たのは、それからひと月あとのことだった。
相手はわたしの母だった。
ぐうぜん妻の濡れ場を目撃して、姑として厳しい咎めだてをしたときのことだった。
そのときも。
嫁と姑はひとしく男衆たちの餌食にされて、納屋の中で衣装ひとそろいをせしめられて、
引きかえにムシロを一枚渡されて、家に帰されたのだった。
そのときの妻の機転で、母は自らの裸体を通行人にさらす機会をあまり多く持たずに済んだ。
自分の母親の時もそうだったから、もう慣れたものだった。
母は自分が咎めようとしたはずの嫁の機転に、後々まで感謝することになる。
そして息子に隠れて――息子であるわたしは、すべてを知ったうえで黙認したのだが――毎朝毎昼毎晩情事にいそしんで、いままで厳しく守り抜いていたあそこをゆるゆるにされて、都会の自宅に戻っていった。
そして次の訪問のときには、父のことも連れてきた。
「どうして父さんまで連れてきたの?」と訊くわたしに、
「だって、お父さんだけのけ者じゃ、かわいそうじゃない」と、彼女は答えたものだった。
母の不始末をネタにやんわりと脅された父は、脅しに屈することなく――しかも彼らの好意的な真の意図をきちんと見抜いたうえで――自発的に妻の貞操をプレゼントすると彼らに約束した。
彼らが都会妻たちと関係を取り結ぼうとする強引なやり口から、独特の好意を汲み取ることができる才能は、もしかしたら“血”だったかもしれない――
彼らはきっと、その血を口にすることで、獲物に見合った待遇を決めるのだろう。

もう、還暦を過ぎてしまったのに――
そういって恥じる母に父は優しく、「魅力と年齢とは関係ないのだよ」と諭し、
若い肉体を持て余す男衆の待つ藁納屋へと、促してやっていた。
楚々としたワンピースも、なまめかしいストッキングも、一枚のムシロにひき変えられてしまうと知りながら――

村の男どもの棲み処にまた、女もののよそ行きの衣装がこれ見よがしにとひるがえる。
落ち着いた年輩の婦人が好んで身につける、洗練された衣装たち――
それは花柄やベーズリー柄のワンピースだったり、高価なシルクのブラウスだったりする。
スカートハンガーに丁寧に吊るされた丈長のスカートたちは、その裏側に、
忌まわしくも淫らな粘液をたっぷりと吐き散らされて、
裏地が白茶けるほど濡らされているのだろう。
なん足も引きむしられたストッキングは束にされて、持ち主が犯された回数を誇示するように、夫たちの目のまえにぶら提げられる。
夫たちはそれを見あげて満足げに、こう呟く――
「家内のことを気に入ってもらえて、嬉しいですな」と。

村を中心にして親族知人を巻き込む“蟻地獄”は、こうして今回も平和裏に、都会の家族を呑み込んでいった。


あとがき
人妻が堕ちてしまったあとにどうしてもつけ加えたくなるのが、その母親や姑の濡れ場です。
悔しがり、歯がみをし、羞じらいながらも欲望に勝てずに、それまでの気丈さをかなぐり捨てて耽ってしまう彼女たち。
村の男衆と永年連れ添った妻たちとの関係を快く受け容れる、寛大な父親たち。
あり得ない風景かもしれませんが、どういうわけか鮮明に妄想することができてしまうのです。

戦利品。

2017年11月26日(Sun) 07:32:44

村の男衆たちの手で、納屋に引きずり込まれるまえ。
妻が着ていたよそ行きのスーツの代わり、
納屋からふらふらとさ迷い出てきた妻がまとっていたのは、一片のムシロ。
むき出しの腕や藁にまみれた裸足を隠しかねながら、
まだ息荒く、それでもあたりのようすを憚るように身をかがめながら、
こちらへと戻って来た。
いつもの気の強さには不似合いな、オドオドとした目線をあたりに配りながら。

出し抜けに首すじに貼りついたヒルのような唇が、欲望を果たし切ってしまうまで、
とうとう離すことができないままに、
くらくらと貧血を起こしてその場に倒れたわたし。
そのわたしを気づかうような、昏い視線だけを残した妻は、
吸血の習癖を持つ男衆の手で、納屋に引きずり込まれていった。
妻がようやく解放されて、貧血から立ち直りかけたわたしの許に戻ってくるまでに、
小一時間が経過していた。

生き血を吸い取られる意外になにをされたのかは、明白だった。
けれども、わたしにはどうすることもできなかった。
彼らがそういう性癖を持つことまで知りながらこの村を訪れたのは、
他に行く場を失ったわたしたち夫婦の意思だったから。

妻のあとをついてくるようにして、男衆たちも納屋から姿を現した。
手に手に妻の身体からはぎ取った衣類を、戦利品としてぶら下げながら。

ブラウス。
ジャケット。
ネックレス。
スカート。
スリップ。
ブラジャー。
ショーツ。
ストッキング。
ハイヒール。
どれもがひとつひとつ、別々の男の手に持たれて、せしめられている。
見返りに妻に手渡されたのは、かろうじて身を覆うことができる大きさの、一片のムシロだけ。
妻は怯えたように彼らを見回し、
彼らはなれなれしい目で、自分たちが支配した女を眺めまわす。

「真面目な奥さんなんだな。ずいぶん手こずったぜ」
若い衆のひとりが言った。
「んだんだ。でも、エエ身体しとるのぅ」
もうひとりが応じるようにして、そう言った。
「こんな女優さんみたいな嫁さんもろうて、羨ましいのぉ」
べつの男がしんそこ眩し気に、わたしたち夫婦を見る。
「気ぃつけて」
さいごに口を開いた頭だった男の声色は、奇妙な親しみといたわりに満ちていた。

道行く人たちは皆、見て見ぬふりをしてくれた。
こちらの異変に、明らかに気づいていながらも。
自分の妻を捧げた夫を、侮辱してはならない――そんな不文律に支配されているかのように。
村に迎えられるためにだれもが通らなければならない荒っぽい通過儀礼は、
こうしてわたしたち夫婦の間を、嵐のように通り過ぎた。


「早くしよ。遅れたら失礼よ」
そういってわたしを促す妻は、真っ赤なスーツに黒のブラウス。
足許を染める薄地の黒のストッキングは、肉づきのよいふくらはぎをなまめかしく染めて、
淡いピンク色をした脛が、ジューシィに透きとおっている。
休みの日ごとにかかるお誘いに、きょうも夫婦そろって出かけるのだ。

迎える男衆はたいがい、独り者だ。
夫婦者の場合には、自分の妻がほかの男の相手をしに出かけていったときに、声をかけてくる。
女っ気のない寒々とした部屋に妻を呼び入れる彼らの目的は、わかりきっている。
熟れた人妻の生き血と、その血を宿す瑞々しい肉体――
身につけたスーツを突き通すように鋭い男どもの視線は、
夫であるわたしの目の前であるにもかかわらず、露骨に鋭くもの欲しげだった。
応接間には、これ見よがしに掲げられた、女もののジャケット、ブラウス、ストッキング――
初めてのとき、納屋のなかで組み敷いた妻からせしめた戦利品が、あの日の出来事を鮮明に蘇らせる。

男どもの接待は、それは念が入っていて、
土地の料理からここでしか口にすることのできない地酒にいたるまで、至れり尽くせりなのだ。
わたしはわざとのように途中で酔いつぶれ、
あとは妻と相手の男との痴態が、夫の目の前もはばからずくり広げられる。
夫公認の浮気にすっかり狎れてしまった妻は、
いけませんわ、いけませんわ・・・あなた、助けてえっ!
と、相手とわたしの気を引くような声をわざとあげながら、息荒い欲情のもとに、組み敷かれてゆく。

目のまえの凌辱を愉しむことができるようになったわたしにとって、
こうしたお呼ばれに、苦痛を感じることはない。
若い血液と都会妻の肉体を、男どもと分かち合う歓びだけが、
狂った鼓膜と網膜とを痺れさせてゆく――

かつては妻の地位と品性とを彩っていたネックレスが、ブラウスが、スカートが。
愚かな痴態に耽るわたしたちを見おろすように、ハンガーにかけられてぶら下げられている。
なにもかもが初めてだった妻の身体からはぎ取られ、せしめられた戦利品たちが、
わたしたちの和解を祝っているのか、呪っているのか、
ただ無表情に、わたしたちのことを見おろしている。

逢う瀬のあとに

2017年11月21日(Tue) 07:06:16

幼なじみの“彼”が妻といっしょに、夫婦の寝室に入ってから約一時間。
妻の声に呼ばれて部屋に入るとすでに“彼”は立ち去ったあと。
ベッドのうえには首すじから血をしたたらせ、よそ行きのワンピースを着崩した妻がひとり、じっとこちらを視ていた。
「妬きもちやかないの?」と、わたしの気分を逆なでしようとする妻。
「相手が“彼”ではね」と、受け流すわたし。
わたしは知っている。
昔からこの街に棲んでいる人間で吸血鬼になったものは皆、自分だけではなく妻も娘も吸われているのだと。
「だから、お互い様だと思えるんだよ」
「あなたも吸血鬼になっちゃえばいいのに♪」と、挑発する妻。
「ほかの女を襲いたいとは思わないから」
不思議なくらい、こたえがさらりと出てきた。
そのさらりと出た答えに妻は納得したのか、もう何も言わなかった。
わたしはベッドのうえの妻に近寄り、ふたりはしっかりと抱き合っていた。
犯されるきみが理性を狂わせてゆくのをのぞき見するほうが、他の女よりもよほどそそられるから――
かみ殺したはずのそんな想いは、いつもよりも激しい衝動となって、きっと妻にも伝わったはず。
妻はなにもかも心得ているかのようにわたしに応じつづけて、
まるで新婚のころのような熱情あふれた交歓を、くり返してゆく。

もつれ込んだベッドのうえで過ごした時間は、たぶん“彼”の襲撃よりも長かったはず。
「男のひとって、単純ね」と、妻は挑発をつづけようとする。
――「長い」とか。「おっきい」とか。ばっかみたい。
つまらない男の見栄をあっさりと笑い飛ばすと、わたしの腕をすり抜けるようにして、台所へと立ってゆく。
あわてて目線で追った後ろ姿はもう、エプロンを締めかけていた。
女というやつは、おそろしい。たとえ女房であっても。
女は非日常の痴情から、こともなげに日常に戻っていく。
きっと妻は・・・
きょうのような公然とした訪問以外の誘惑を、その何倍も受け止めているのだろう。

「こんどはいつ来るのかしら」
テーブルのうえに料理を運びながら、独り言を呟く妻。
エプロンの長いすそから覗いた脛の上を、ストッキングの伝線の太いすじが、あざやかに走っていた。
わたしはふと言いかけて、あわてて押し黙る。
そんなことを指摘したらまた、彼女は不倫妻のモードに戻ってしまうだろうから。
そういえば。
勤めから戻ったわたしを迎える妻はよく、ストッキングを伝線させている。
じわりと肚の底にこみ上げた衝動をかろうじて押し隠し、わたしは食卓につく。
今夜も覚悟をしているのか、小ぎれいに身づくろいをした妻は、なにかを待ち受けるようにわたしのことを盗み見た。

管理人のつぶやき

2017年11月14日(Tue) 06:59:07

今月は、第一作が13日と、ひどく遅咲きです。^^
淫らな妄想がもつれ合って、どうにもうまくお話をつむぐことができませんでした。
うち一、二作目は、「花火」がテーマです。
本当は二作目のほうが先に着想したのですが、11月ではいくらなんでも季節外れだなあと思い、
その前段で「季節はずれの花火」を描いたのです。
そのうち二作目のほうも構想(妄想?)がふくらんで、成稿をみたのがやっと今朝のこと。
まあ、せいこうってほどのもんでもありませんがね・・・ (^^ゞ

ナースステーションの宴

2017年11月14日(Tue) 06:53:46

真夜中のナースステーションは、吸血鬼の楽園。
この夜のために選ばれた若い看護婦も。
ややとうはたったけれどまだまだイケるベテラン看護婦も。
しっかり者で知られた四十代の婦長も。
夜中なのによそ行きのスーツでバッチリとキメた、院長夫人までも。
きゃあきゃあと悲鳴をあげながら、首すじを咬まれていって。
ひとり、またひとりと姿勢を崩し、ストッキングに包まれたひざを床に突いてゆく。

首すじから血を流した女たちは、
うつ伏せに伸びたふくらはぎにまで、もの欲しげな唇を吸いつけられる。
若い看護婦は、透きとおる白のストッキングを。
ベテラン看護婦は、本来禁止が不文律の光沢入りの白ストッキングを。
婦長は、もっさりとした白タイツを。
院長夫人は、光沢のよぎる高価な肌色のガーターストッキングを。
ヌルヌルとしたよだれに濡らされ、
飢えた牙にメリメリと裂かれてしまう。

悔し気に歪む整った目鼻立ちは、辱めを受ける足許に目線をクギづけにして、
さらに悔しそうに、キュッと歯がみをしてみせる。

吸血鬼を患者として受け容れるこの病院では、
患者への輸血行為が、深夜の看護婦たちの業務のひとつ。
だから選ばれた女たちは深夜のナースステーションに集められ、
わが身をめぐる血潮で、患者の渇きを満たしてゆく。
長患いに鬱積した気分を、己れの身につけたストッキングを食い破らせてやることで、まぎらわせてゆく。

けれども彼女たちのお勤めは、これだけでは終わらない。
ああ・・・
悲しげなうめきをあげて、ベテラン看護婦がのけぞった。
身につけた白衣はびりびりと引き剥がれ、はぎ取られたブラジャーの下からは、豊かな乳房を惜しげもなくさらけ出してしまっている。
吸血鬼の長い舌がもの慣れたやり口で、三十路女の乳首をいたぶった。
そしてストッキングを剥ぎ堕とされてむき出しにされた太ももを抱くようにして、
ユサユサと女の身体を揺らしながら、淫らな吶喊をくり返した。

このひと、ご主人いるのよ。
訴えるようにそう囁いた婦長のうえに、男は劣情もあらわにのしかかる。
つぎはお前の番だといいたげに。
生真面目な婦長は四十にもなって、吸血鬼相手に初めてのものを散らしていた。
いや・・・いや・・・いやぁん・・・
齢がいもない、あられもない声を洩らしながら。
純な気持ちに齢は関係ないのよといいたげに、
肉づき豊かな腰つきを、男の強引な動きにけんめいになじませようと努めている。
いまはすっかり狎れ合ってしまった、肉と肉――
婦長が満足するまで、男はなん度も犯しつづけた。

私、もうじき結婚するんです・・・
そう哀願した若い看護婦も例外なく、劣情の餌食となった。
すでになん度も犯されてしまっている嫁入り前の女は、
男のテクにすっかりイカされて、不覚にもはしたない声をあげてはじめている。
純白のウェディングドレスの下に身につけるはずの白のストッキングは、
彼女の足許を清楚に引き締めていたけれど、
襲う男には、ただ劣情しか催さなかったらしい。
業務ですよ、あくまで業務・・・
うつろな目になった婦長が、幼子に言い聞かせるような口調で囁きつづけるのに肯きながら、
女は禁じられた淫らな舞いを、吸血鬼相手に披露しつづけた。

さいごは院長夫人だった。
このなかではいちばん年配の彼女を最後の獲物に選んだのは。
いちばんおいしい獲物をさいごまで取っておくという、
彼なりの礼儀作法なのだという。
陽のあたる場所では威厳たっぷりの街の有力者も、
吸血鬼のまえでは、一介の素人女――
心見だされ、淫らに舞ってしまうのは、ほかの女たちといっしょだった。
人手の足りないナースステーションに彼女を送り込んだのは、他ならぬ夫の院長だった。
今夜血液を提供する看護婦の頭数が足りない――そんな婦長の申し出に応じて、
躊躇なく、自分の妻に吸血鬼の夜伽(よとぎ)を命じたのだ。
お手本は、いちばん頭だったものが見せるもの――
夫の言葉に妻は肯いてみせて、夫を裏切る行為に、いまは耽り抜くようになってしまっている。

深夜のナースステーション。
そこは歪んだ宴の場。
今夜も救いと癒しを求める吸血鬼どもが、前の廊下を徘徊し、
待ち受ける女たちは、強いられた淫らな業務に息を詰め、心震わせながら、従事してゆく――

妻は地に舞う大輪の花火

2017年11月14日(Tue) 06:26:09

ねっ、花火見に行こ♡
妻はウキウキとした顔をして、わたしのことを肘で小突いた。
えっ?
わざとうろたえた声をして応じると、妻は「うふふッ」と肩をすくめて笑い、逃げるように台所に入っていった。
季節外れの花火に誘われてあの村に出向いたのは、去年のいまごろのことだった。

花火師の棲むその村では、来年あげる花火の品定めをするために、季節外れのこの時期に内輪のものたちだけを招く花火会をやるという。
たまたまなにかの縁で毎年招かれるようになったという友人に強く誘われて、わたしは妻を伴ってその村に行った。

花火よりも先に、振る舞い酒に酔い痴れた友人とわたしはいつの間にか、
村の男衆たちの手でぐるぐる巻きに縛り上げられて、草地に転がされていた。
空を舞う大輪の花火。
その下で友人の妻も、わたしの妻までも。
男衆の手で浴衣をはぎ取られて、やはり草地に転がされた。
一糸まとわぬ二体の裸体が、明滅する光芒に切れ切れに照らし出され、
夫たちの目を眩しく射抜く。
その上に、息荒くのしかかった男たちは、彼女たちの股間に忘れられない衝撃を加えていった。
都会育ちの妻たちはその夜、地を舞う大輪の花火になった――

こと果てたのち。
縛めを解かれたわたしたちは、それぞれの妻を介抱しながらほうほうのていで宿に戻った。
部屋に落ち着いたわたしたちが互いに目を背け合って座り込んでいると、
友人は自分の妻を連れて、わたしたちの部屋に現れた。
「これから出かけるんだけど、いっしょに来ない?」
「どこへ?」
「さっきの連中のたまり場」
「なにをしに?」
「こいつ、もういちどやってもらいたいって言うんだ。で、ぼくは妻を守れなかった罰ゲームで、見せつけられに」
友人の顔にあるのは卑屈で後ろめたい作り笑いなどではなく、
むしろこれからなにか特別なイベントを楽しもうという、サバサバとした晴れやかなものだった。
面白そう――
声をあげたのは妻だった。
さっきまでの憔悴した表情はかき消えて、白い歯を嬉し気に洩らして屈託なく笑っている。
「ね、あたしたちも行こ。あなたも罰ゲームよ」
わたしは妻に急き立てられるように座を起って、村の男衆たちのところへ出向いていた。

地元の姐さんたちを相手に乱交していた彼らは、わたしたちの奇特な訪問を歓迎してくれた。
「あんたの奥さん、貞操堅固だな。手こずったぜ」
目を細めて笑う老爺は、還暦をずっと過ぎた目じりを皺くちゃにして、屈託なく笑った。
周囲にいたもっと若い男どもも、乾いた声で笑った。
老爺はみすぼらしい格好をしていたが、なぜか威圧されるものを感じて、受け答えが知らず知らず敬語に変わってゆくのをわたしは自覚した。
「こ、今夜は・・・どうぞよろしくお願いします」
かすれた声で応じたわたしは、自分でもどういう表情を作っていいかまだわからずに、あいまいに笑って見せた。
「それでいいんだよ。あんたは正解」
だれかがいった。
男どもは口々に、難に遭ったわたしたちのことを侮辱するふうはなく、
「今夜は災難だったな」と、いたわる者。
「あんたの嫁、エエ身体してんなぁ」と、露骨にうらやましがる者。
「今夜は楽しかっただろ?」
「みんなでもっと楽しもうな」
「まったく手間を掛けさせやがって」
とかいいながら、どこか称賛のこもったまなざしを、わたしたちに向けてくる。
「都会の綺麗な女を嫁にできて羨ましい」と顔に書いたように、素直な称賛と羨望の視線を、わたしたち男性に、そして妻たちに、そそぎつづける。
わたしたちの妻を犯した村の男どもは、女好きという同じ人種の共感をこめて、
都会育ちのふた組の夫婦のほうへと歩み寄ってくる。
わたしは戸惑いながらも、老爺の悪びれない笑みに応えた。
「びっくりしたよ。こんなこと初めてだから」
「そうだろうね、ここじゃ日常茶飯事なんだけどな」
「妻が、もういちどしてみたいって・・・それで連れてきたんだ」
「一人で来させなかったってことは、あんたも見せつけられたくなったかい?」
老爺はからかうように言ったが、なぜか腹は立たなかった。
「いや――さすがに一人で出すのは心配だから――」
「あんた、好いだんなだね。教わんなくてもちゃんとわかるのは、奥さんのこと愛してる証拠だよ」
「そうなんですか?」
「しまいまできちんと見届けるのが、夫の務めってことだ」
「よくわからないけど・・・わかるような気もします」
自分でもびっくりするような受け答えだったが、なぜかすらすらと言葉が出てきた。
敬語と他人行儀な言葉つきが入り乱れているのは、まだきっと状況に慣れていないせいだろうと思ったけれど。

「なあお前ら、女房がほかのやつに姦(や)られるの、ズキズキ来んぢゃろ?」
老爺は仲間をふり返ると、田舎言葉でそういった。
えへへへへへっ・・・
だれもが身に覚えがあるらしい。
「わしは爺さんのおっ母さんで筆おろししたしの」
「お前ぇの女房抱いてるときに、お前ぇずっと部屋の隅っこで視ておったろうが」
「じゃけど~、気になるからの~」
彼らはしばしの間笑いをはじけさせながら、みじかいことばで互いの女房の痴態をはやし合った。
邪気の全くない笑い声を、わたしたちはあっけに取られて聞いていた。

「さてと、宴の続きに入ろうかい」
老爺がそういったときにはいつの間にか、村の姐さんたちは姿を消していて、女といえば妻と友人の妻だけになっていた。
対する男は、わたしと友人を抜きにしても、8人――
頭数を無意識に勘定してしまい、そんなことをしてしまっている自分に、思わずゴクリと生唾を呑む。
「だんなの名誉は守らないとな」
頭だった男がそういうと、夫たちは村の男衆たちの手でふたたびぐるぐる巻きに縛られて、
妻たちがなにをされているのか見えるように転がされた。
「あんたたち、抵抗できない状態で、女房を犯されたんだよな?みすみす指くわえて、自分の女房が姦られるのを覗き見してたわけじゃあないってことだ」
「ウン・・・そうだ。もちろんそうだとも」
友人が応えた。
「でもこんどは、典子が犯されるのを見たくて連れてきたんだ」
「素直でよろしい」
あんたはどうなんだ?わたしもそう訊かれた。
妻が息を凝らしてわたしのことを見つめているのを意識しながら、わたしはいった。
「ぼくもだ」
カサカサに乾いた唇から洩れた言葉は、昂ぶりに上ずっていて、それは妻にも伝わったようだった。
妻は身体から力を抜いて、村の男衆たちのほうをふり返り、媚びるような笑みを浮かべた。
それが合図だった。
「うへへへへっ」
一人の男が妻に、別の男が友人の妻に襲いかかると、男どもは飢えをこらえ切れなくなった獣のように、わらの上に横倒しになった二人の都会妻の身体のうえに、折り重なるようにしておおいかぶさっていった。
二人の都会妻は洗練されたワンピースを引き裂かれて、きゃあきゃあと小娘みたいにはしゃぎながら、犯されていった――


「旦那さんがたも、愉しんでいただけたようですな。来年もぜひ、いらっしゃい」
夕べの老爺が目を細めて、わたしたちに親し気な視線を送って来る。
あたりは、夕べの熱気にむせかえった闇は幻だったのかと思うほどの、冴え冴えとした晴れ空――
この村では昔から、夜這い合う風習があって、どの人妻も村じゅうの男という男の身体を識っていた。
それが近年の過疎化で女不足となり、村に少しでも縁故のある夫婦が招かれては、こんな夜を体験するのだという。
あくまでも口コミで、親しいものが親しいものを誘い込む形で、少しずつ“輪”が拡がりつつあるそうだ。
その“輪”のなかに、わたしたち夫婦は友人によって引き込まれ、“輪”は少しだけ、その広がりを増した。

なにも知らない夫婦を“輪”に招き入れるとき、もっとも重視されるのが夫の資質で、こうしたことに耐えうるかどうかが基準になるという。
そういえばかつて、友人が妻を誘惑して堕としてしまったのを知ったわたしは、
内心の昂奮を押し隠しながら、ふたりの交際を黙認していた過去があった。
かつて友人に、見て見ぬふりをして妻を捧げたように。
わたしは田舎の男衆たちの、粗野で荒々しい腕のなかに、妻をゆだねる決意をかためた。
こうして都会妻がまたひとり、村を彩る花火になった。

ところでどうでしょう?
今年も花火大会、あるんですけど・・・
あなたも来ませんか?よかったら、奥さんを連れて。

季節はずれの花火

2017年11月13日(Mon) 07:45:38

ひどい眩暈がぐるぐると、俺の頭のなかを渦巻いている。
闇夜でいきなり羽交い絞めにされて、首すじに尖った異物を刺し込まれて・・・
それが吸血鬼の牙だとわかったときにはもう、抵抗もできないほどに、血を抜かれてしまっていた。
その場でへたり込んだ俺のまえで。
連れだって歩いていた真由美までもが、襲われた。
「やだー!助けてー!」
悲鳴をあげて逃げ惑う真由美もすぐつかまえられて、俺と同じように首すじを咬まれてしまった。
ゴクゴクと露骨に喉を鳴らして、男は真由美の血をもの欲しげに啜りつづけた。
黒のワンピースを血しぶきに濡らしながら、じょじょに姿勢を崩してゆく真由美の姿が、薄らいだ意識の向こうへと埋没していった――
うつ伏せに倒れたまゆみの脚に、吸血鬼の老いさらばえた唇がもの欲しげに吸いついて、
ストッキングをパリパリと破りながら血を吸い上げる光景が、俺の記憶を狂おしく染めた。

気がつくと、傍らで真由美がべそをかきながら、俺の顔を覗き込んでいる。
どうやら俺のほうが、重症だったらしい。
あたりはまだ暗く、でも俺たちを襲った忌まわしい翳は、とうにその気配をかき消していた。
「血・・・吸われちゃった・・・へへ・・・」
真由美が下手な照れ笑いを作りながら、目じりの涙を拭っている。
片方だけ脚を通したストッキングは見る影もなく裂け、それだけではなく、
ワンピースのすそはめくれあがって、白い太ももが眩しく俺の目を射た。
どうやら血を吸われただけでは、すまなかったらしい。
けれども真由美は吸血鬼に犯されたことをあからさまに口にはしなかったし、
俺もそんなことを訊くことはできなかった。
話題を択ぼうとして目線をさ迷わせた真由美が、ふと自分の胸元に目を止めた。
気に入りの黒のワンピースに撥ねた血潮が折からの月の光を浴びて、チロチロと毒々しい輝きを放っている。
「花火みたい・・・だね――季節はずれだけど・・・」
放射状に伸びた血潮の痕を目でたどりながら、真由美は独りごとのように呟いた。
こんなに可愛い恋人を守り切れなかったのか――そんな無力感と敗北感にさいなまれそうになった。
そのうち沈んだ空気を追い払うように、真由美がいった。
「ねえ、もういちど、してもらお」
びっくりするほどハッキリとした、いつもの真由美らしいあっけらかんとした声色だった。

え・・・なにを・・・?
戸惑う俺に、真由美はいった。
「あの人言ってたの。週1でだれかの血を吸わないと、灰になっちゃうんだって。だから、感謝するって言ってたよ。また夜道であっても絶対死なせたりしないから、仲良くしよう、また吸わせてほしいって」
そんなバカな・・・言いかけた俺を、真由美は押しとどめた。
「ウフフ。あたしが吸われてるのを見ていて、洩らしちゃったくせにぃ~」
俺の股間に手を差し伸べて、ズボンのうえからイタズラっぽく撫で撫でをする細い指が、半透明の粘液に濡れていた――


「うわ・・・わッ!何するんだッ!?」
いきなりの襲撃にうろたえた声をあげる俺。
でもその声は、すぐに突き入れられた強烈な食いつきに、断ち切れてしまう。
「あんたの首は咬み応えがエエ」
男はそういいながら、なおも深々と、俺の首すじを抉ってゆく。
「くそ・・・く・・・そっ・・・」
歯ぎしりしながら相手を罵りつづける声は声にならず、ただ相手を愉しませるばかり。
俺の生き血がみすみす相手の栄養源になって、その力を得て真由美を犯す気だ――
そんな魂胆を知りながら、もうどうすることもできなかった。
そのうち、くらあっ・・・・とした眩暈が俺を襲い、俺はだらしなくその場に尻もちをついてしまう。
「きゃーっ!ユウくん、ユウくんっ、助けてえッ!」
真由美のあげる悲鳴はどことなく芝居じみていて、わざとらしくて。
逃げ足も遅く、ただバタバタと大げさに、かっこうの良い脚をうろうろさせている。
いくらヒールの高いパンプスを穿いていたとしても、もう少し早く逃げられそうなものだ。
これじゃあ俺の視界にいるうちに、咬まれちまうだろうが。
そんなことを薄ぼんやりと考えながら尻もちを突いたままの俺のまえ、
吸血鬼は真由美のことをつかまえて、不必要に弄ぶように振り回し、
俺によく見えるように真由美の首を締めあげて、白い首すじにガブリ!と食いついた。
「きゃあーッ!」
かん高い絶叫が、夜空にこだました。
愛しい恋人がムザムザと生き血を吸い取られるありさまを、
俺ははじめからおわりまで、たんのう――いや、見せつけられる羽目になったのだ。

「ううん・・・ううん・・・だめ・・・だめえッ・・・」
真由美の拒絶は甘えがちな声色になって、
迫って来る男をはねつけようとしているのか、そそりたてようとしているのか、わからないくらいだった。
卑猥な唇を足許に近寄せてくる吸血鬼のまえ、黒のストッキングになまめかしく染めた脚をくねらせながら、真由美はひたすらお慈悲を乞うている。
もちろんそんなものが認められるはずもなく、
吸血鬼は真由美の脚にストッキングのうえから舌を這わせ唇をふるいつけて、
むざんな裂け目をメリメリと拡げてゆく。
「ああーッ、いやぁ~ッ!ユウくーんッ!」
真由美がまたも、俺の名を呼んだ。

わざとなのだ。
すべてわざとなのだ。
襲われ始めたところから、すべては俺たちのお芝居。
吸血鬼に襲われるカップルを熱演したご褒美に、俺たちは若い血をたっぷりと吸い取られて、
あげくの果てに真由美はストッキングを剥ぎおろされて、
股間に深々と、もうひとつの牙を埋め込まれていき、
俺は俺で、恋人が吸血鬼に姦られるハードなベッドシーンを、心行くまでたんのうさせられる。
真由美はわざと、ユウくん、ユウくんと俺の名を呼びつづけて、俺のなかで覚醒してしまったマゾヒズムを、強引なまでに掻き立ててゆく。
いつもベッドのうえで、俺を無理やりその気にさせるときと、同じようにして――

「花火・・・」
貧血を起こして助け起こされた真由美が、吸血鬼の腕に抱かれたまま、
今夜のために着てきた純白のブラウスの胸に視線を落とす。
撥ねた血潮が放射状に散って、たしかに花火のように見えなくもなかった。
それ以上に真由美の脳裏には、もうひとつの花火が散っている。
恋人のまえで犯されて、ありのままの本能をさらけ出して悶え狂ってしまう――そんな衝動が昏(くら)い閃光となって、真由美の脳裏を狂おしく染めていた。
そして俺も――
植えつけられたマゾヒズムが妖しい触手を拡げ、心の奥を侵蝕し、塗り替えてゆく。
支配され飼い慣らされてゆく恋人を目の当たりにする悦びに、
今夜も不覚にも、激しい射精をくり返してしまっている。

花火は夏だけとは、かぎらない。
恋人の足どりが薄黒いストッキングに妖しく映える秋。
欲情に満ちた吸血鬼の目が次にとらえるのは、貴男の恋人の足許かも知れない――