淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
卒アルに夏服で載った私 K学院中学校 2年E組 福野香織の場合
2018年02月26日(Mon) 07:40:30
卒アルに載る写真を撮るタイミングは、とても早い。
なにも2年の冬に撮ることないじゃない。
ほかの子以上にそんなふうに思ったのは。
私がそのころ、学校に通っていなかったから。
クラス全員の撮影には間に合ったけど、お友だち同士のページの写真では、
私はみんなといっしょには写れなくって、切り抜きの形で混ぜてもらった。
それもみんなとは違う、夏服の写真で――
ちょうどみんなが先生の構えるカメラに向かってピースサインをしている頃、
私は病院のベッドで、赤ちゃんを抱っこしていた・・・
さいしょの出逢いは、とつぜんだった。
学校帰りの夜道で待ち伏せしていたそのいけない小父さまは、
父よりずっと年上のはずの、その小父さまは、
ずっと私の帰りが遅い日を待ちわびていたのだと、あとで教えてくれた。
提げていた学生鞄を振り飛ばし、けんめいに逃げたはずの私は、
獣のようにすばしこい小父さまの動きのまえにはなすすべもなく、
すぐにセーラー服の襟首をつかまえられて、首すじをガブリ!と咬まれてしまっていた
ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
ひとをこばかにしたような、血を吸い上げる音を耳にしながら、
私は気が遠くなって、その場にひざを突き、四つん這いになり、
とうとう我慢できなくなって、仰向けに倒れてしまった。
セーラー服を汚したくないのだ――小父さまはすぐに、私がなんとか身を支えようとした理由に気づいてくれて、
倒れる瞬間地面と私の背中の間に腕を差し入れて、支えてくれた。
その代わり、もっと強く抱きすくめられて、私はしたたかに血を吸い取られていった。
K学院の子だね?
制服見れば、わかりますよね?
私はすねて、そんな答え方しかできなかった。
つねに礼儀正しく――を教えている校風に逆らってしまったことをとっさに恥じたのが相手に伝わったのか、
「そんなことまで気にするなんて、あんたは優等生なんだな」とだけ、小父さまは言った。
K学院の制服を着た子なら、ほかにいくらもいるじゃない――
私はとっさに、そう思った。
清楚な校風で知られたわが校でも、パンクな子たちはいくらもいる。
どうしてよりによって私なの?
わざわざ私に目をつけて、何カ月も前から血を吸いたいのを我慢して、帰りの遅い日を待ったという小父さまを、私は烈しい視線で睨んでいた。
「そう睨まんでくれ」
小父さまはそういって、もうひとしきり私の血を吸うと、
「献血に感謝する」といって、昔語りを手短にした。
「きみのお母さんも、K学院だったね?」
母は17の夏、制服姿の帰り道を、この小父さまに襲われた。
じたばたと手足をばたつかせて抵抗したけれど、手近な草むらに引きずり込まれて――
いちおうは都会といわれるこの街でも、昔はそんな草むらがあったんだ・・・
あたしはぼんやりとした横っ面を向けたまま、母の身に起こった手荒な初体験の話を、聞くともなしに聞き入ってしまった。
「あんまりよかったので、つい本気になった。それがきっかけで、あんたが生まれた」
え・・・?
ということは、私と小父さまとは、血のつながった親子?
目を丸くする私に、小父さまは言った。
そのとききみのお母さんには、つき合っていた男子がいた。
本当はその子に処女をあげたかったので、お母さんはひどく悔いていた。
けれども、その男子は物わかりの良い子だった。
お母さんのことが本気で、好きだったのだろう。
わしがお母さんの血を吸うことも、お母さんがお腹に宿したきみを生むことも、承知してくれたのだ。
わしは、後継ぎが欲しい。
きみのご両親が、きみの弟さんを生んだようにな。
でもわしの後継ぎは、実の娘と交わることで、初めてできるのだ。
小父さまは――お父さまと呼ぶべきなのかもしれないけれど――は、じいっと私を見た。
しんけんな眼だった。
「わかった」
私はぽつりと、そう言った。
どうしてそんなに物わかりがよかったのか、今でもよくわからない。
もういちどのしかかってくる小父さまを、拒もうとする代わりに
合服の袖を通した腕を小父さまの背中に廻して、小父さまを迎え入れていた。
丈の長いスカートをたくし上げるのに、小父さまはちょっとだけ手間取ったのを、なぜかよく憶えている。
いちどまくり上げてしまうと、小父さまは私のパンツを引き裂いて、むき出しの男性のシンボルを、やはりむき出しにされた私の太ももの間に、強引に突き刺してきた。
首すじを咬まれたときと似た快感が、私を貫いた――
結局私は、夜が明けるまで小父さまの相手をして、最後は悦び合い愉しみ合ってしまっていた。
帰りの遅い私を心配して、母がやって来たのを私は知っている。
でも母は、物陰に隠れて初めてセックスに夢中になってる私を見ると、
そして私の相手を見ると、
ホッとしたような諦めたような顔をして、回れ右をして戻っていった。
それ以来。
私は毎日のように小父さまのお邸に伺って、
セーラー服で良い。いや、セーラー服が良い。
という小父さまにせがまれるまま、
母校の制服を辱められながら、小父さまに服従する歓びにめざめていった。
母が従兄との縁談を持ってきたのは、そのころだった。
お式は、高校を卒業してからでいいから。
その子のことは、だいじょうぶ。
だって、小父さまが引き取って下さるのだから――
初体験ばかりか、子供まで生んだ身体を、従兄のマサハル兄さんは、お嫁さんにしてくれるのかしら?
なにも知らないマサハル兄さんがかわいそう――
そんなふうに思いかけた私のことを、母はたしなめた。
男のひとは、黙りとおしたほうが良い人と、なにもかも打ち明けたほうが良い人とに分かれるの。
お父さんは、何もかも知っているけれど。
姉さん(マサハル兄さんのお母さん)も、何もかも知っているけれど――
マサハルはどうかな?
いっしょに研究してみようね。
「ウン、そうするね」
思わず答えてしまっていた、私――
うふふふふふっ。
母の白い顔が、悪戯っぽく笑う。
私も母の笑いに応えて、母譲りの白い頬を、楽しげにゆるめていた。
あとがき
登場人物や団体名等はすべてフィクションです。
バレンタインのプレゼント K学院中学校2年E組 兼古順子の場合
2018年02月26日(Mon) 07:37:48
とうとうやって来た、この季節。
女の子たちはだれもが、お友だちにも言わないナイショの店で、
とっておきのチョコレートを買い込んでくる。
あたしもそんな中の1人。
お小遣いをはたいて、とびきり上等のチョコレートを買った。
でも、他の子みたいにラッピングをしてもらわないで、家に持って帰る。
自分の手でラッピングをして、中にお手紙なんか入れる子もいるから、
お店の人もべつだん不思議がらないで、あたしにチョコレートを手渡してくれた。
ラッピングしてもらわない理由は、ほかのふつうの女の子とは、ちょっと違う。
家に持って帰ったチョコレートは、あたし自身が食べちゃうのだから。
チョコレートは好きだけど、バレンタインのチョコをわざわざ自分用に買ってまでたべるほどではない。
でも、きょうのチョコレートは、とびっきりのやつじゃないとだめ。
だって、だって・・・
きょうがあたしにとって大切な日なのは、ほかの女の子たちと、変わりないんだもの――
チョコレートを食べ終わったあたしは、ママに隠れるようにこそこそと、
「ちょっと出てくる」
とだけ言って、お家を出る。
こんどここに戻って来るときにはもう、あたしは“女”になっている。
ママは何食わぬ顔をして、
「気をつけてね」
とだけ言って、玄関で見送ってくれた。
ドアを閉める間際、ママと目が合った。
気のせいか、心の中を見透かされているような気がした。
「がんばって」
ママの唇がそんなふうに囁いたような気がした。
あたしの制服は、セーラー服。
昔ながらの名門校だから、K学院の子は自分の制服を好きな子が多い。
あたしもその1人――
だから学校から帰ってきた後、ちょっと改まったところに行く時は、
ほかの女の子たちと同じように、制服で出ることが多い。
でも、きょうあたしが行くのは、塾でもバイオリンのお教室でもなく、
親にも言えないような場所。
そう、街はずれに棲む吸血鬼の小父さまのお邸なのだ。
出かける間際。
セーラー服のリボンを新しいものに締め直して、
白のソックスを、肌の透ける黒のストッキングに穿き替える。
玄関で見送られたとき、薄黒く染まったあたしの足許を、ママにしっかり視られていた。
><
まぁいいや。
きっとママも、通り抜けてきた道だろうから。
この街に棲む男の子たちは、みんな割を食っていて、
いちばんおいしところを、吸血鬼の小父さまに持っていかれちゃうのだから。
「きょうは、なんの日だか知っているよね?」
あたしのことを背中で迎えた小父さまに、あたしは精いっぱいの声でそういった。
「この国ほど、盛んではないけどな」
きょうの小父さまは、いつになく言葉が少ない。
いつもなら、あたしがお邸にお招(よ)ばれすると、
はぁはぁと息荒く迫って来て、
小父さまのためにわざわざ履き替えていった真っ白なハイソックスのうえから足を咬んで、
真っ白なハイソックスが真っ赤になるまで、
あたしの血を吸うのをやめようとはしないのに――
「バレンタインのチョコ、持ってきた」
「それは嬉しいね」
小父さまはまだ、あたしに背中を見せている。
あたしはためらいもなく、数歩進んで小父さまのすぐ後ろに立つ。
さいしょに逢ったときは、校長室だった。
校長先生をお待ちしているものとばかり思い込んでいたあたしの真後ろに、
この人は音もなく忍び寄って、
あたしの首すじを咬んで、あたしの人生を塗り替えた。
こんどはあたしが自分の手で、あたしの運命を塗り替える番――
「チョコレート、あたし食べちゃった」
「・・・?」
「とびっきり高い、最高級なやつ。あたしチョコ好きだから、先に食べちゃった♪」
そこで初めておじ様は、あたしのほうを振り向いた。
小父さま、ほんとうはチョコレートも食べたかったの?
そう思ったらふだんみたいな明るい顔に、しぜんになれた。
「いいよ。受け取って。あたしのバレンタインのプレゼント」
大胆にキメるはずのキメ科白――ちょっとだけ声がかすれてしまったのが、残念!
小父さまはビクッと身体を震わせると、こんどこそあたしめがけて、本気で迫って来た!
そう、吸血鬼の目ではなくて、男の目になって。
そのままストレートに、壁ぎわに抑えつけられたあたし。
囚われのお嬢様はそのまま首すじを咬まれ、唇を奪われて、
小父さまの手はいつの間にか、濃紺のプリーツスカートのなかに忍び込んで、
黒のストッキングの太ももを、それはいやらしくまさぐり始めた。
折り目正しいスカートのひだを、くしゃくしゃにかき乱されながら、
あたしはもぅ声も出なくなって、ひたすら小父さまの両肩に、しがみついていた。
押し倒されたじゅうたんのうえ。
突き刺された太い筋肉の塊に、違和感をありありと覚えながら、
じわじわとこぼれ出てくる処女喪失の証しのしずくが、
スカートの裏地にしみ込まないかと、そればっかりを気にかけていた。
暗くなってから帰ったあたしを、ママは何も気づいていないような顔つきで出迎える。
「シャワーと晩御飯、どっちが先?」
いつも通りののどやかな声色も、なにも変わりがなかった。
ママ、ほんとに気づいてないかな?
そんなとき、ママが何気なくあたしに言った。
「制服のスカート、新しいの買っといたから」
え?
小首をかしげるあたしに、ママはイタズラっぽく笑みかけてきて、
「ママからの、バレンタインのプレゼント」
スカート汚したでしょ?おなじ女の目が、そう言っていた。
それに、「おめでとう」って。
あたしは照れ隠しに、「シャワー浴びるね」とだけ言って、ママに背中を向けた。
15歳のバレンタイン。
その日、あたしはちょっとだけ早い成人式を、ママに祝ってもらった。
あとがき
登場人物や団体名等はすべてフィクションです。
惑い。
2018年02月22日(Thu) 06:42:22
夫が、セーラー服姿で帰宅した。
女装趣味をもつ夫は、このところ帰りが遅い。
夫の正体を知ったのはごく最近のことだったが、
内心戸惑いを覚えつつも、賢明な彼女は夫の感情を逆なですることはなく、
「周りに迷惑はかけないで」とだけ告げて、ほぼ黙認状態で表向きは平穏な日常を過ごしている
夫の帰宅を気配で感じた彼女は、ちょっとだけため息をついて、
そしていつものように黙って夫を迎えるために、座を起った。
彼女は、夫が帰宅するまでの間いつも、よそ行きのスーツを身に着けていた。
木内夫人は玄関まで夫を出迎えて、その背後にひかえる黒い影をも同時に見た。
それが、木内夫人と吸血鬼との初めての出逢いだった。
黒影の持ち主は、夫よりもずっと年上の初老の男だった。
表情の少ない彼の顔だちからは、初めて木内の妻を目にしたことによる感情の動きを、全く読み取ることができなかったし、
女装の夫と2人連れだった真夜中の散歩がどんな雰囲気だったのかすら、みじんも感じられなかったけれど。
どちらかというと陰性な夫の表情はいつになく晴れやかで、長時間の散歩が睦まじい会話で充たされていたことは容易に読み取ることができた。
木内夫人はそんな夫の顔を見て、かすかな嫉妬を覚えた。
男は木内の妻を見て、無表情に目礼しただけだったけれど。
目が合った瞬間、木内夫人は、着ていたよそ行きのスーツを突き刺すように、胸の奥にずきりとするものを覚えた。
男は木内の妻を、獲物としては見ていなかった。
夫の友人としての控えめな好意だけを表に出して、「ああこの人は・・・」と夫が彼を紹介するのさえ拒むように、夫妻の視線に背を向けて、つと立ち去ろうとしたのだった。
「あの・・・」
木内夫人は、思い切ってその背中に声を投げた。
歩み去ろうとした黒い影は夫人の声に足をとめたが、振り向きはしなかった。
「今夜は、主人がお世話になりました」
夫人は瞳を伏せて、折り目正しく頭を下げた。
吸血鬼は木内の妻をふり返ると、いんぎんな黙礼だけを与えて、去っていった。
相手が異形のものと知りながら、夫の友人として遇してくれた感謝がそこにあったように、木内夫人は感じた。
「着替え?それから、お風呂?」
男が去ると、彼女は夫に必要最小限な言葉を投げて、
木内はそんな妻にちょっとはにかんだ微笑で応えて、素直にその指図に従った。
夫の女装姿は、いまだに木内夫人の目になじみ切ってはいない。
男にしてはなで肩の夫だったが、それでもセーラー服には不似合いな肩幅だったし、
ウィッグの下にあるまぎれもない夫の顔も、女子生徒の初々しさとは異質なものを持っていた。
けれどもふだんの姿の夫にはない華やぎのようなものが、身にまとう女の服と違和感なくとけ込んでいることもまた、認めないわけにはいかなかった。
浴室からシャワーの流れる音が洩れてくる。
その音を聞きながらも、木内夫人はまだ、胸のドキドキを抑えることができなかった。
夫の女装姿に、いまさらうろたえたわけでは、むろんない。
生れて初めて目にする吸血鬼の姿に、恐怖を覚えたのか?
木内夫人は自分の異常な昂ぶりに戸惑いながらも、その理由を反芻する。
わからない。
男の投げたまなざしに、獲物を見るものの獰猛さはかけらもなく、彼女に恐怖を与えるなにものも帯びてはいなかった。
夫を送ってくれた妻からの感謝の言葉にこたえ、ただたんに、礼儀正しく黙礼して、去っていっただけ――
夫の友人としてのごく控えめな好意を滲ませたほんの一瞬の行動からは、
彼女に対するどんな思惑も、感じ取ることはできなかった。
少なくとも、相手は彼女を、獲物とはみなしていない。それは女の直感でそうとわかった。
しいて言えば、夫の散歩相手が吸血鬼であることに彼女が露骨な恐怖をみせないという賢明な態度に対する敬意を、ほんの少しだけ滲ませただけだった。
――やだ。どうしてこんなにドキドキしているの。
夫がシャワーを浴びている間、木内の妻は、答えのない反芻をくり返しつづけた。
きっと今夜は夫を優しく責めながら、自分が主導でベッドのうえでの営みを遂げてしまうはず。
それもおそらくは、いつになく熱っぽく――
得体のしれない胸の昂ぶりをなかばいぶかしみ、半ば怯えながらも、木内夫人はそんなことを思い描き、つい顔を赤らめた。
木内夫人は、心の奥底でわかっている。
胸が昂り血が騒いだのは、
今夜迎えた男が、いずれ彼女の血潮を啜り取ることを予感したから。
カサカサに干からびた年配男の唇が、彼女の誇るみずみずしい柔肌をナメクジのように這いまわり、
豊かに熟れた女ざかりの熱い血潮で唇の渇きをうるおしながら、喉を鳴らして酔い痴れるだろうことを。
彼女はそれを女の本能で直感し、啜り取られる運命を察した血液を人知れずたぎらせてしまったのだと。
「きみも良かったら」
貧血に悩む夫がそれを妻に打ち明けて、彼が自分の親友に愛妻の血液を提供することを望んでいると告げたとき、
木内夫人はためらいのない同意を与えたのだった。
――あのひとと2人きりで逢うのは心細いから、そこにはあなたもいて。
自分の願いに二つ返事の承諾を受け取りながら、木内夫人は自分の受け答えに慄きを感じる。
夫が意図した結末を、じかに夫の目のまえにさらしたい。
そんな悪魔的な意図を、わざと心細げな声色で伝えた自分のささやかな復讐心を、初めて自覚することで。
あとがき
女の心裡は、ときにエロいです。
でも同時に、ちょっぴり怖いかも・・・です。^^;

※挿絵は手持ちのものを、ちょっと加工しました。^^
≪りんく≫
★前作
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3570.html★イラストPart1
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3575.html★イラストPart2
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3578.html
【ビジュアル版】交わりが拡がってゆく。 by霧夜様 Part2
2018年02月22日(Thu) 05:46:59
またまた!
前作「交わりが拡がってゆく。」のイラストを、霧夜さまから頂戴することができました!
木内の妻が夫に誘われるまま、吸血の場に臨もうとする場面までです。
「イメージ化したい人物の順位は娘>婚約者>妻の順」と、霧夜さまの中では最下位であるはずの木内夫人ですが・・・
惚れました!(笑)
とくに、1枚目と3枚目の、眉をひそめてややしかめ面になっている木内夫人。
この人、結婚を控えた長男と、どうやらまだローティーンらしい長女の二児の母なのですが。
若干若づくりなのは、むしろOKなのではないでしょうか。
むしろ、これくらいのなまめかしさは必要ですよね?^^
読者にとっても、彼女の血を吸う吸血鬼にとっても。^^
さいごの場面。
ほんとに、いいトコロで切れていますね? ^^;
びっくり驚愕する木内夫人。
この芝居がかった大げさなポーズが、なんともご愛敬です。
昭和の恐怖まんがみたいで。^^
と、いうわけで――
それらしい画像 とかではなくて、自作の小説が絵詞になって展開される吸血絵巻。
とくとお愉しみあれ。^^
次回以降がつづくかどうかは、霧夜様しだいです。(^^)





★オリジナルの本文
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3570.html★前のイラスト
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バレンタインのプレゼント
2018年02月17日(Sat) 10:09:44
誰にも覚られない隠れ家の、高級ホテルの一室で。
独りワイングラスを手に窓辺に佇んでいると。
己はどこまでいっても独りきりなのだ・・・と――
思わずにはいられない。
はるか眼下を行き来する幸せな男女たち。不幸せな男女たち。
かれらはいちように、その身に血液をめぐらせて、
まっとうな日々を、あるいはまっとうではない日々を、暮らしている。
己だけが独り、その圏外にいる。
安全圏だと?
絶対的な支配力を持っているだと?
それは孤独であるということと、なんの変わりもありはしない。
そんなことを独り思って鬱していると。
コン、コン・・・
人を憚るような、ひそかなノックの音が、背後の扉に響いた。
いまさら怖れるものなど、なにもない。
ためらいもなくひと息にドアを開くと、
そこには絶世の美女――
翔子・・・
思わずその名を口の端から洩らすと、女はいった。
「お忘れじゃなかったようね」
「忘れるものか」
「なにを憶えていらっしゃるの」
女の問いにこたえずにいると、
女は用心深く扉をロックして、それからもういちど、こちらをかえりみる。
「憶えているのは・・・血の味だけじゃなくって?」
「そんなことはない」
こちらの強がりを封じるように、女はゆったりと腰をくねらせて、ひと足よけいにこちらにその身を近寄せた。
「きょうはなんの日だか、覚えているわね?」
目のまえに華やぐのは、高価そうなシルクのブラウスの胸元を引き締める、ふんわりとしたリボンタイ。
「プレゼントはね、リボンを結ぶことで、初めてプレゼントになるのよ」
得意げに半ば開いた朱唇から、イタズラっぽく輝く白い歯がのぞいた。
女の両肩を抱きとめて、背中に腕を回して、ギュッと掻き抱くと、
うっとりとする唇のはざまに舌を入れて、並びの良い前歯をその舌でなぞってゆく。
「アラ、いやだ。口紅が落ちちゃうじゃない」
わざと冷静を装う女は、小面憎いほどの手並みで、男の本能を逆なでした。
心の中がポジティブに切り替わると、女の耳たぶを熱い呼気で覆ってやる。
「じゃあ、リボンをほどいて、中身を頂戴しようか」
俺はプレゼントに巻かれたリボンに手をやると、さっと解いた。
スカートの周りに巻かれたリボンも器用に外して、じゅうたんの床に落とした。
揉みしだく掌のなか、いや掌からあふれるほどに、女の胸は豊かに張りつめていた。
圧しつけつづけた唇に、呼び合うように応えてくる唇が、熱いものを帯びていた。
ふつうの人間と化した俺は、女を人として愛し抜いて、満ちたりさせて。
それから力の抜けた女の身体から、生命の源泉をしたたかに抜き取ってやる。
女の熱情、心意気、ひたむきさ。澱んだ悩み、歪んだ悲しみ、どす黒い鬱屈を余さず受け止めて、
のどを鳴らしてしたたかに啜り尽し、女の身体を浄化する。
あくる朝。
女は出勤前のイデタチに戻って、俺にもう一度抱かれるだろう。
「出勤前のOLを、貴男にあげる」と、囁いて。
そして週末まで2日も休みを取ったのといって、
楽しい仕事をわたくしから奪った見返りに、たっぷり愉しませて頂戴と、
わがままなおねだりをくり返すのだろう。
女の名は、翔子――
こちらの気持ちが荒んだときに、忽然と現れて。
こちらが正気づいたときにはもう、赤の他人の顔になって、元の世界へと戻ってゆく。
どちらが吸血鬼?
そんな自嘲をしたときにはもう、俺は己を取り戻している。
あとがき
どういうわけか、一気に書き抜いてしまいました。
制服に黒タイツ。
2018年02月14日(Wed) 07:41:44
「じゃあ俺はここで」
吸血鬼仲間で連れだって歩く道すがら、中学校の校門にさしかかると、
俺は一方的に別れを告げた。
処女の血を獲るには、ここに限る。
もう何年も通い詰めている、採血スポット。
それがこの、名門と言われた女子中学校だ。
「お前ぇも好きだな」
「ロリコン」
彼らは親しみを込めた揶揄を投げて道を分かれると、
それぞれの愛する人妻や恋人や姪っ子の待つ家へと、足を向けてゆく。
制服を着た真面目な少女たちのふくらはぎに咬みついて、黒タイツを咬み破りながら血を啜る。
乙女たちにしてみればおぞましい限りのそんな行為を、俺はこの学校で日常的に続けていた。
校長は俺たちと気脈を通じていて、担任の教師に受け持ちの生徒たちを調達させて、
出席番号順に生徒を呼び出しては、飢えた吸血鬼にあてがってくれる。
おとといは午前中に1人、午後に1人。きのうは1人。きょうは3人まとめて――
あしたはなん人の生徒の首すじに、牙を埋めようか?
連れてこられた生徒たちは、みんな真面目なおぼこ娘。
両親に愛され、手塩にかけて育てられて、
がんばって受験勉強をしてこの学校に合格をして、
献血という博愛行為を実践する学校という美名に惑わされた親たちの了解のもと、
校内に出没する賓客たちに、うら若い血液を啜り取られる。
娘の身の上を心配した母親たちが、俺にあてがわれた控室に姿を見せることもある。
娘を同伴してお手本を強いられた人妻たちは、真っ先に娘の前でうなじを咥えられ、
貧血を起こして姿勢を崩し、あげくの果てによそ行きのスーツの裾をたくし上げられて、
ストッキングをむしり取られながら辱めを受ける。
もっとも本番は、娘が気絶した後だ。
母親の受難を目の当たりに立ちすくむ黒タイツの足許に、卑猥な唇を這わせると、
生真面目な彼女たちは卒倒せんばかりにうろたえて、ずぶずぶと牙を埋め放題にされるまま、
体内をめぐる若い血液を啜り取られて絶息する。
発育のよいピチピチとした生気を帯びたふくらはぎは、俺の絶好の餌食――
黒タイツを破り放題に破りながら、俺は若い血潮に酔い痴れる。
娘が気絶してしまうと、こんどはもういちど、お母さんの番。
そう、いよいよ本番だ。
「服は破らないで、お願い」
そう懇願する従順なお母さんには、無用な恥は掻かせない。
ブラウスの釦をひとつひとつ丁寧に外し、
「嫁入り前の娘に、良い手本をみせなくちゃな」とか耳もとに囁いて、
ブラの上からおっぱいを撫で撫でしながら、まな娘のまえでお寝んねいただく。
身持ちの良いはずの良家の主婦は、いくつも若返ったように顔を輝かせ、娘のころに戻って、
昂ぶりに頬を染めながら、禁じられたはずの行為を夢中になって受け容れる。
名門とうたわれたこの女子中学校は、俺のパラダイス。
きょうもロリコンと笑われながら、俺は処女の生き血を漁りに校門をくぐる。
あとがき
連れだって歩く当校の道すがら。
黒タイツに包まれた脚たちを目のあたりによぎる、妖しい妄想は何故?
【ビジュアル版】交わりが拡がってゆく。 by霧夜様
2018年02月12日(Mon) 13:22:50
弊ブログを愛読してくださっている”霧夜”さまから、嬉しいプレゼントを頂戴しました。
先日こちらにあっぷした小説「交わりが拡がってゆく」の冒頭部分を、なんとビジュアル化してくれたのです。
せっかくなのでなにかひとひねりを・・・と考えはしてみたものの、そんなことよりも早く皆様にお見せしたいという衝動のほうが上回りましたので公開しちゃます!
(もちろん、ご本人の承諾つきです)
”霧夜”さまは数年前、柏木がたまに投稿しているpixivで知り合いました。
テイスト的に相通ずるものを感じてお声をかけてみたところ、なんと私のブログを時々見てくれていると知りまして・・・
以来、よきおつきあいを願っております。
しかし、自分の描いた妄想話をこうやって人さまにビジュアル化してもらえるのって、すごく嬉しいものですね。
”霧夜”さま、ありがとうございました☆




★原作はコチラ↓
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3570.html★画像集Part2をあっぷ↓
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3578.html
OLたちと吸血鬼 ~妹とその親友~
2018年02月12日(Mon) 13:18:30
勤め帰りのOLを狙う凶悪事件が、続発していた。
そのほとんどは闇に葬られたが、数人のOLが被害を届け出たことから発覚し、
オフィス街ではOLの残業を禁止する企業まで出るほどだった。
襲われたOLは深夜、ビルの警備員に発見された。
帰宅途中現れた男にいきなり首を咬まれ、そのあとのことは憶えていないという。
気絶して間もなかったらしく、幸い着衣の乱れはなかったものの、
咬まれたのは首すじだけではなく、両脚も咬まれていた。
被害は貧血とストッキングが破けただけで、本人の希望もあって大事には至らなかった。
そのような事件がすでに、知られているだけでも三度、発生していた――
夜10時。
銀行員の中平直子は勤め帰りの道を急いでいた。グレーのスーツ姿が、明るい街灯の下に照らし出される。
ひざ丈のスカートのすそから覗くふくらはぎはうっとりするほど絶妙な曲線を誇っていて、
本人の意思とはかかわりなく、なにかを引き寄せてしまいそうだった。
事実――
「ひっ」
直子はひと声悲鳴を呑み込んで、前に立ちはだかった黒い影を凝視する。
「あなた・・・だれ・・・?」
「怖がらないでください」
「私、怖がらないわ」
勝気な直子はそう答えた。
だが、そのあとのことはもう、まったく憶えていない。
気がついたら首を咬まれ、倒れたところをベンチのうえに抱きあげられて、こんどは脚を咬まれていた。
ストッキングのうえをすべる舌がもの欲しげに這いまわり、唾液で濡らされるのをわずかに自覚した。
こいつ、いやらしい。
直子は直感的に相手の卑猥な意図を察知し、脚をばたつかせようとしたが、強い力で抑えつけられてびくともしなかった。
彼女は悔しげに歯噛みをしたが、失血で頭が痺れ、身体に思うように力が入らない。
そうこうするうちに、抵抗できないままにストッキングを咬み破られて血を吸われた。
男はご丁寧にも両方の脚にかわるがわるそのけしからぬ悪戯をくり返すと、やっと直子を放した。
身体から力の抜けてしまった直子は、男の思うままに吸血行為を許してしまった。
「それがね、そいつったら私のこと、タクシーに乗せて家の近くまで送ってくれたの。ずっとこうやって手を握ってね、すまなかった、ありがとう、助かったよって、しつこいくらい何度もくり返すのよ。私、もう、うるさくなっちゃって、“少し黙って。運転手さんに聞こえるわ”って言っちゃった。そしたらさ、そいつおっかしいくらいにぴたりと黙るの。私は貧血でふらふらだったけど、そうじゃなかったら笑ってたと思う。家まで突き止められるのはマズイと思ったから、近くでおろしてくれって言ったら、大人しく言うことを聞いてくれたわ。案外義理堅くて親切なやつだった。事件が表ざたにならないのは、そのせいかもね」
親友で同期の本条沙代里が出勤してくると、直子は待ってましたとばかり沙代里を給湯室まで引っ張っていって、吸血鬼に襲われてから解放されるまでのてんまつを、一気にまくしたてた。
「え~、怖くなかったの?」
賢明で慎重な性格の沙代里は、嫌悪と恐怖に口許に手を当てながら直子の話を聞き、夕べは貧血だったという親友を気づかった。
「で、銀行には届けたの?」
「まさかぁ、そんなのやだよ。首すじを吸われただの、ストッキング穿いた脚をイタズラされただの、そんなこと男の上司に言える?ましてあたしが言うとしたらあのドスケベ中松だからね!」
「そっか」
沙代里はそういって、直子の言い分に半分賛成した。
沙代里は勤め帰りのスーツ姿のまま、いっしょに暮している兄の氷唆志(ひさし)を待っていた。
田舎から出てきた兄妹は、同じアパートに住んでいる。
氷唆志にも沙代里にも恋人はいなかったので、どうやら成り立っている共同生活だった。
いずれはどちらかが先に結婚してここから出ていくとしても、沙代里には兄との生活が楽しかったので、いまの生活が一日でも長く続くと良いと考えていた。
このごろ兄は帰りが遅い。
勤めを終えて帰宅した沙代里が作ったせっかくの心づくしの夕食も、手をつけずじまいの日が何日か続いていた。
ちょうどオフィス街で吸血事件が相次ぎ始めたころだったので、帰宅の遅い兄のことを沙代里は本気で心配し始めていた。
玄関先でドアを開ける音がした。
さよりはちゃぶ台の前から起って、兄を迎えた。
氷唆志の顔色は、真っ蒼だった。
「どうしたの?お兄ちゃん」
気づかう沙代里の声も耳に入らないように、氷唆志はその場にうずくまると、「ちょっと離れていてくれ」とだけ、いった。
そうはいわれても・・・心配じゃないの。
沙代里は苦しむ兄のそばを立ち去りかねて、ちょっとのあいだ逡巡した。
それがいけなかった。
ふと顔をあげようとした氷唆志の目のまえに、ストッキングを穿いた沙代里の脚が佇んでいた。
気分の悪い兄を気づかう妹の、頼りなげな足許――
しかし、氷唆志の目はすでに、鬼の様相を帯びていた。
肌色のストッキングに包まれたふくらはぎは、若々しい生気に満ちていて、飢えた男の目にはジューシーな血色を感じさせた。
氷唆志は素早く妹の足許ににじり寄ると、足首を抑えつけ、ふくらはぎに唇を吸いつけてしまった。
本人の意思を越えたなにかが氷唆志を動かしているような、ひどく敏捷な動きだった。
「エッ?お兄ちゃんッ!?」
沙代里は目を丸くして立ちすくみ、不覚にも兄の望むままにふくらはぎを吸わせてしまっていた。
両方の脚を代わる代わる、いとおしむようにその唇で撫でさするように舐められて、
「ちょっと・・・お兄ちゃん、なにイタズラしてるの?やらしいよ」
沙代里は兄がふざけているのだと思って、兄の大人げない行為をたしなめた。
まるで子供のころに戻ったみたい――遠い昔兄妹で吸血鬼ごっこに興じたことを沙代里は思い出した。
――じゃ、お兄ちゃんが吸血鬼になるから、沙代里は逃げるんだよ。でも最後にはつかまえられて、お兄ちゃんに血を吸われちゃうんだ。
足許に唇を這わせてくる兄の行為をさえぎろうとして、沙代里は身をかがめる。
肩までかかる黒髪がユサッと揺れて、二の腕に流れた。
遠い記憶をたぐる沙代里の想いとは裏腹に、スーツ姿のまま黒髪を揺らすOLは、なまめかしい大人の体臭を滲ませてゆく。
「ちょっと・・・ちょっと・・・やめなさいよ・・・」
兄の悪戯を制止しようとした沙代里の声が、とぎれた。
氷唆志の唇から覗いた牙が、ストッキングを破り沙代里のふくらはぎに深々と刺し込まれたのだ。
ちゅ~っ・・・
ちゅ~っ・・・
素肌から抜き取られてゆく血液が、兄の唇に経口的に含まれてゆくのを目の当たりに、
沙代里は正気を失い白目になって、身体のバランスを崩した。
アパートのほの暗い照明の下、不気味な吸血の音が、間歇的につづいた。
「ねえ聞いて。総務のサトコなんだけど、ご執心なんだって」
「・・・え?」
耳よりの話を持ちかけてきた直子に、沙代里は眠そうな声でこたえた。
「あらー、寝不足?沙代里にしては珍しいわね。夕べ彼氏とデートだったとか?」
「そ、そんなんじゃないよ」
「あつ、そうか。沙代里はお兄さんとラブラブなんだもんねー」
直子はもちろん、沙代里が兄と暮らしていることを知っていたし、どうやら沙代里に彼氏ができないのは、お兄ちゃんのことが好きだかららしいことも、おおよそ察しをつけている。
「で、サトコがどうしたのよ」
沙代里は直子の挑発をやり過ごして、話の先を促した。
「例の吸血鬼事件、サトコも被害者だったのよ。でもサトコったら銀行にも届け出ないで、それ以来定期的に相手の吸血鬼と逢っているらしいの。こないだ私、まだ残業になっちゃって、通りかかった公園でサトコがあいつに咬まれているの見ちゃったんだ」
「えー、そうなの?」
“じゃあどうしてそのとき教えてくれなかったのよ“という沙代里の表情を察して、ナオコが続けた。
「そのときはサトコが彼氏と抱き合ってるのかなって思ったんだけど、ちょっと気になったからそのへんでちょっと時間をつぶして待っていたの。そうしたらサトコのやつひとりで公園のほうからやってきて、あたし声かけたのに無視してすーっと地下鉄のほうに行っちゃったの。聞こえないわけないと思ったんだけどな。で、そのときね・・・」
直子はちょっとだけ声を潜めて、いった。
「サトコのストッキングが、破けてたの。それも両脚」
「それだけじゃ吸血鬼かどうか、わからないじゃない」
「ストッキングが破けて、血が滲んでいたんだよ。あと、ブラウスの襟首もちょっと、汚れていたな」
「あなたも観察魔ねぇ」
「それからね、あの子ったら毎日、光沢入りのストッキング穿いてくるようになったの。こないだ帰りの更衣室で一緒になって、別々に着替えていたんだけど、ロッカーの向こう側でストッキング穿き替えてるのがなんとなくわかって、私知らん顔していたんだけど、出ていく後ろ姿だけ見たら、ほら、このごろよくあるじゃない、テカテカに光る光沢タイプのストッキング。あれ穿いてるのよ――きのうは違ったけど――彼氏がいるって話も聞かないし、もしかして・・・あいつに愉しませるために穿き替えたの~?って」
直子は整った目鼻をひん曲げて、小意地が悪そうにもうクスクス笑っている。
「もう・・・吸血鬼なんてばかばかしい」
沙代里はそういって話を打ち切った。
直子に言われるまでもなく、吸血鬼に襲われながら銀行に届けを出さなかったOLが数人いることは、うわさで聞いている。
彼女たちは相性がよかったのかもしれない。
だから自分が襲われたことは表ざたにしないで、その後も“彼”と逢いつづけて、血液を与え、ストッキングを破らせているのだろう。
そんなOLが、このオフィス街に何人いるのだろう?
「そういえば夕べはノー残業デーだったからね、被害を受けた女の子もいなかったんじゃないかな」
立ち去りぎわ直子はそういってバイバイ・・・と沙代里に小手をかざして、自分の課のミーティングルームへと向かっていった。
閉店の業務が一段落した後は、4時からまた気の重いミーティングだ。
そろそろボーナス商戦が始まるから、話題はきっとそれだろう。
今夜は帰りが遅くなるかも――沙代里はふと、氷唆志のことを想った。
「な、なによいきなり急にっ」
背後にひっそりと佇んだ沙代里に気がついて、直子はびっくりして飛び上がった。
「また吸血鬼が出たかと思ったじゃない!」
「あ・・・ゴメン」
うっかり気配を消してしまっていたことに気がついて、沙代里は素直にわびた。
「いいんだけどさあ、きょうはあなた、ちょっと元気ないんじゃない?早く帰ったほうが良いわよ」
元気のないときに吸血鬼に狙われたら、貧血じゃすまなくなるじゃない・・・と続けたときにはもう、ジョークのきついふだんの直子に戻っていた。
「それでさ、よかったら明日、うちに来ない?兄を紹介してあげる」
「エッ!?ほんと?それはラッキー」
直子が快活な笑いをはじけさせた。
「明日はノー残業デーだから、直子も早く終わるよね」
沙代里は念押しをした。
賢明で慎重な同期の親友の、いつになく蒼ざめた目鼻立ちに、冷ややかな笑みがよぎるのを、いつも目ざといはずの直子はうっかり見逃していた。
翌日の夜――
ちゃぶ台には沙代里の作った手料理が、乗り切らないほどに並べられていた。
でもまだだれもそれらの食事には見向きもせず、もちろん手もつけられていない。
その料理の山を横目に見ながら、直子は氷唆志の寝室でうつ伏せに横たわり、氷唆志に脚を吸われていた。
ふつうの若い娘らしく、ちょっとだけ改まってしおらしい感じで「お邪魔します」と玄関をあがると、顔色がいちだんとわるくなった沙代里が「兄を紹介するわ」と、奥の部屋に案内をした。
だれもいない部屋の半ばまで入った時、直子の後を追うようにして入って来た男を視て、直子は絶句した。
「やっぱり知っていたのね、兄さんのこと」
沙代里は顔にわずかに嫉妬の色を泛べて、動揺の走る直子の横顔を冷ややかに見た。
回りくどい逢わせ方をしたのは退路を断つためだったのだということを、直子はすぐに自覚した。
男は無言で立ちすくむ直子に迫り、ブラウスの襟首から覗く白い首すじに牙を突き立てていった。
「ゴメン直子、あまり大声立てないで。近所迷惑だから」
直子はなぜか沙代里の言いぐさに義理堅く応じて、貧血になってひざを崩してしまうまで、ひと声も立てずに血を吸い取られていった。
あとから直子は思ったのだ。
たぶん、あのぶきっちょで誠実な男になら、もう一度血をあげてもいい――心のなかでそう思っていたに違いなかったと。
姿勢を崩して畳のうえに倒れたとき、直子はストッキングを穿いた脚を狙われると自覚した。
血を喪う恐怖よりも、真新しいストッキングをおろしてきてよかった――などと思うことができたのは、沙代里の兄が自分のことを死なさずに血を愉しむつもりにちがいないと踏んだからだ。
果たして氷唆志は、その冷え切った唇を直子のふくらはぎにあてがって、初めてのときにそうしたように、念入りになぶり始めた。
氷唆志の口許から洩れてくる唾液は足許のナイロン生地をいやらしく濡らしたが、いやらしくぬめりつけられる舌に、かすかな好意が込められているのを直子は感じた。
その好意にすがるような気持ちで直子は男の卑猥ないたぶりを許し、彼がご丁寧に両脚とも唇を吸いつけて、ストッキングを破ってしまうのを、唯々諾々と許してしまった。
趣味のスポーツで鍛えた若い血が、ヒルのようにぬめりつく男の唇に吸い上げられてゆく。
直子はうっとりとした目つきになって、自分の血が吸い取られてゆくチュウチュウという音に、聞き入っていた。
「ありがとう。失礼なことをしてしまって、すまなかった」
貧血を起こして畳のうえに転がった直子のまえで、氷唆志は正座をして頭を垂れた。
卑屈そうな様子に、自分のしていることへの後ろめたさがにじみ出ていた。
「これからも兄に逢ってくれる?」
いつになく真剣な表情でひたと見すえてくる沙代里の目が、ちょっとだけ怖いなと思ったけれど――
直子は起き上がるとすぐに、いった。
「やだお兄さん!そんなにしゃちこばらなくたっていいじゃないですか!」
ほっとした兄妹が顔を見合わせるのをみて、直子はやっぱり兄妹って顔だちが似ているんだと思った。
「新しいストッキング穿いてきてよかったー、お兄さんの前で恥をかくとこだったわよ」
直子は沙代里にそういった。
お出かけ先のおしゃれに気を使い合う同性同士の口調だった。
「さっ、御飯にしよ。せっかくのお料理冷めちゃう」
直子は貧血をこらえて起ちあがると、率先してちゃぶ台についた。
兄はね、べつの吸血鬼に襲われて吸血鬼になったの。
その吸血鬼は私たち兄妹と同じ村の出身で、都会に出てきて吸う血にこと欠いて、兄を襲ったの。
今でも都会のあちこちを徘徊しているんだけど、あのオフィス街は兄のものって認めたらしいわ。
自分の血を全部与えることで、その権利を獲得したの。
兄は私がほかの吸血鬼に襲われて死んでしまうことを心配したらしいの。
でも、いまの生活を安穏に送るにはもうひとつ条件があって――今度その吸血鬼が戻ってきたときに、処女を二人捧げなければならないの。
それが、私とあなた――そう指さされても、直子は動じなかった。
「最愛の女性ふたりをモノにしてしまって、お兄さんを完全に支配してしまおうというわけね」
頭の良い直子は、呑み込みも早かった。
「お兄さんはそれでもいいの?妹と恋人が吸血鬼に抱かれてしまっても」
女ふたりは同時に氷唆志を見た。
「奪られてしまうのは嫌だけど・・・直子さんや沙代里が血を吸われるのを見たらちょっとゾクゾクしちゃいそうだな」
「その感覚、わかんない~」
女ふたりは声を合わせて、氷唆志に反論した。
「あなたが・・・兄を襲った吸血鬼・・・?」
勤め帰りの沙代里は息を詰めて、相手の男を見あげる。
その視線は催眠術にかけられたかのように虚ろで、本人の意思も吸い取られてしまったかのようだ。
「安心しなさい。死なせはしない。あんたはわしの親愛なる氷唆志の最愛の妹ごぢゃ。ほんの少ぅし、辱めを体験していただくことになるがな」
「わかりました。辱め、OKです」
沙代里は従順に目を瞑る。
真っ白なブラウスの襟首に、飢えた吸血鬼の牙が迫った。
妹に迫る危難を、氷唆志はただぼう然と見守っている。
氷唆志首すじからは血が流れ、さっきまで咬まれていた痕はジンジンと痺れるような疼きを帯びていた。
その疼きが、氷唆志の動きを封じてしまっていた。
吸血鬼はスーツ姿の沙代里の首すじを咬んで、沙代里は立ったまま相手への吸血に応じつづける。
ブラウスの胸元を結ぶ百合のようにふんわりとしたタイにぼたぼたと血潮がしたたって、
そのまま姿勢を崩して尻もちをついてしまった足許に、飢えた唇をなすりつけられて、
自宅のアパートで初めてそうしたときと同じように、勤め帰りのストッキングをチリチリになるまで咬み破られて・・・
沙代里が堕ちてゆくのを目の当たりに、氷唆志はそれでも、彼女の受難から視線をそらすことができなくなっている。
自分がしたときよりも、上手に破くんだな・・・やっぱり慣れてるヤツは、違うよな・・・
理性を失った氷唆志は、薄ぼんやりとそう感じた。
沙代里はブラウスをはだけられ、ブラジャーをはぎ取られ、あらわになった乳首を貪欲な唇に含まれむさぼられていった。
そして、兄の前で羞ずかしいことにスカートをたくし上げられてゆく。
肌色のストッキングの腰の部分の切り替えまでは、氷唆志も目にしたことがなかった。
もう1ダース以上も、妹のストッキングを咬み破って来たというのに。
いちど吸血鬼の腰を股間にうずめられてしまうと、沙代里は従順に相手の欲望に従いはじめてゆく。
戸惑いながら、ためらいながらも、身体を合わせ、ひとつになってゆくのだった。
そんなまぐわいが何度も何度もくり返されたが、男の振る舞いはどこか愛情に満ちていて、沙代里の身体をいつくしむようにして撫でつけ、まさぐり、舐めまわしてゆく。
氷唆志は激しい嫉妬とともに、沙代里の肉体を自らが属する吸血鬼に捧げたことや、愛する妹の肉体に吸血鬼が満足を覚えているようすであることに、えもいわれない充足感を感じていた。
すべてが果たされてしまった後、吸血鬼はいった。
明日はもういちど、お前の妹を凌辱する。そしてその翌日は、お前の恋人を抱かせるのだ――と。
氷唆志は口許をわなわなとさせながら、呟きで応じた。
「ハイ、あさって、直子を連れてきます。どうぞ直子の貞操も、心ゆくまでご賞味ください。未来の花嫁を、貴男と共有したいのです・・・」
痺れた唇がひとりでに動いているようだった。
直子は目を見開いて、吸血鬼と向かい合った。
黒い瞳もそうだが、白目も清らかに見える――氷唆志はそう思った。
その瞳はまるで催眠術にかかったように、意思が感じられなかった。
いつものあの勝気さも、饒舌さまでも失って、いま虚ろな目をしてわれとわが身をめぐる血潮を、吸血鬼の餌食にされようとしている。
未来の花嫁は、今や吸血鬼の腕のなか――けれども後悔はない。
自分の持っているすべてをあの人に捧げるのだ。そう氷唆志は思った。
「お兄ちゃんはそれでいいの?」
妹の沙代里はいった。
傍らの女二人は、自分の味方。いまもこれからも、無私の愛情を期待できる存在。
その二人を、吸血鬼の毒牙にかける。
それも、かつて自分の血を吸い尽した者の欲望のために。
氷唆志は身体じゅうの血管が震えるほどの昂奮を覚えていた。
「氷唆志さん、許してっ。許してねッ・・・」
いよいよ組み敷かれるとき、直子はそう叫んでこちらを見た。
だいじょうぶだから――という想いを込めて、氷唆志もその声に応じた。
ずぶり――
吸血鬼の牙が、直子の首すじを襲った。
あふれる血――うら若い熱情を秘めた血潮が直子のブラウスを浸し、男の唇を悦ばせる。
それがどんなに美味であるのか、体験し尽してしまった氷唆志だからこそ、相手の満足感も肌を接するほどに伝わってくる。
沙代里のとき以上の激しい歓びに、氷唆志は昂りにむせんだ。
貧血を起こした直子はその場に倒れ臥し、男は直子のふくらはぎにも、唇を吸いつける。
穿いていた肌色のストッキングが、パチパチとかすかな音を立ててはじけた。
やっぱり上手だ――氷唆志は胸を震わせて、恋人に加えられる凌辱を見守った。
妹のストッキングを咬み散らした牙が、いまは直子のストッキングまでもむざんに咬み剥いでゆく。
くたり、と首を垂れた直子が、四つん這いになり、やがてその姿勢を支えることもままらならず、うつ伏せになってゆく。
吸血鬼は直子のふくらはぎにもういちど取りつくと、チュウチュウと得意げな音を立てて、直子の血を吸いあげた。
じょじょにブラウスを脱がされてゆく直子の胸が、薄闇のなかであらわになった。
一昨夜の妹と、まったく同じ経緯だった。
吸血鬼は息荒く直子に迫り、まるでレイプのような荒々しさで、勤め帰りの直子のタイトスカートをめくりあげる。
直子が穿いていたのは、ガーターストッキングだった。
「あの晩のために、奮発したんだから」
あとで直子は沙代里に、妙な自慢をしたものだった。
ショーツをむしり取られた直子は、謝罪するように氷唆志を見、氷唆志はそれを受け容れるように、ゆっくりと肯きかえす。
むき出しになった浅黒い臀部が、開かれた白い太もものはざまに、ずず・・・っと、沈み込んだ。
ああ・・・
直子の顔が苦痛に歪み、口紅を鮮やかに刷いた小ぶりな唇から、白い歯が覗いた。
歯並びのよい歯だと、氷唆志は思った。
健全に育ってきた善意の若い女性が、いまやむざんに辱めを受けてゆく。
そんなありさまを、将来を誓いながらも許し、ただの男として愉しんでしまっている、もっと恥ずかしい自分――
けれども恥ずかしい歓びに目ざめてしまった氷唆志も、未来の夫のまえであられもない痴態をさらけ出してしまっている直子にも、後悔はなかった。
瞬間、吸血鬼は「え?」という顔で、直子のことをまともに見た。
「ウン、私――処女じゃない」
直子もまた、ぱっちりと目を見開いて、吸血鬼をまともに見た。
「貴様――」
吸血鬼の怒りは氷唆志に向いたが、本気で怒っているわけではなさそうだった。
「無理もないな、許す」
と、あっさり二人の関係を許していた。
「それでも、わしに花嫁を抱かれるのは、さぞやつらかっただろうな」
「とても悔しかったけれど・・・貴男はわたしよりも上手だし――でも、ちょっとだけ愉しんじゃいました」
エヘヘと笑う氷唆志は、沙代里の好きないままでの快活さを取り戻している。
「もう、エッチ!」
そういって恋人の背中をどやしつける直子もまた、自分を取り戻していた。
「時々なら、妹を抱きに来てくれていいんですよ。彼女はたぶん、結婚しませんから」
「それに、今度お目にかかるときには直子はぼくの妻となっていますが、好きな時に誘惑に来てくださいね。直子もきっと、ドキドキしながら貴男に抱かれるでしょうから」
「でもそういう夜にはきっと、沙代里がぼくのところに忍んできます。だからぼくは、寂しくはない」
「ひとつだけ果たされていない約束があるな――処女は2人」
吸血鬼はなおも貪欲だった。
「しつこいわね」
直子は白い歯をみせて、笑った。
「じゃ、私の妹を紹介してあげる。あの子独身主義なんだ。でも女が独りで生きていくのは、やっぱり大変だと思う。だからあなた、守ってあげて」
直子はどこまでも明るく、身勝手だった。
【付記】
このお話は5日の朝に、ほとんど完成していましたが、ちょっと直したかったのですぐにはあっぷしないでいました。
きょう、ようやく少し時間が取れたので見直しをして、あっぷしました。
細部は多少いじりましたが、おおすじはほとんど変わっていません。
モチーフとしては、バブル期のOLさんをイメージして描いてみました。
あのころのOLさんは、テカテカのパンストをよく穿いていましたっけ。
ビジネスな女性たちとオフィスな女性たちとが、装いひとつでは区別がつかなくなったのも、このころだったと思います。
「結婚するまで純潔を守る」という倫理観がおおっぴらにすたれてしまい、
女性たちが躊躇なく処女を捨てるようになったのも、このころだったかもしれません。
吸血鬼の子供の日記
2018年02月11日(Sun) 07:39:08
きょうは、生れて初めて学校に行きました。
吸血鬼の子でも学校に行けるよう、父さんが校長先生に話をしてくれたのです。
教職員会議や生徒会でもその問題が話し合われて、けっきょくぼくは学校に行けることになりました。
父さんはそのあいだに、ずいぶんおいしい思いをしたって言っていましたが、どういう意味だかよくわかりません。
授業中はふつうに勉強をしました。
でも途中で喉が渇いて気分が悪くなったので、手をあげて保健室に連れて行ってもらいました。
保健室には若い女の先生がいたので、すきをみて襲って、血を吸ってひと休みしました。
先生は具合が悪くなって床に転がっていましたが、ぼくは元気になったので、先生のことはほっといて教室に戻りました。
そのあと、担任の和佳奈先生に血を吸いたいってねだったのですが、拒否されてしまいました。
放課後は、新しくできた友だちのマサヤくんとハルタくんとハナヨちゃんといっしょに遊びました。
3人とも、ぼくに一方的に血を吸われて、ノビてしまいました。
ぼくは大人の吸血鬼に手伝ってもらって、3人を吸血鬼の村に運び入れました。
3人が正気づく前に、ぼくは吸血鬼の子供たちを5、6人集めておいて、3人に紹介してあげました。
それから吸血鬼の子供たちで、人間の子供たち3人の血を、代わりばんこに吸い取りました。
とくにハナヨちゃんはかわいかったので、大人気でした。
さいしょのうちは貧血を起こしてべそをかいていましたが、そのうちに慣れてくると仲良くなって、
お姫様ごっこをして遊びました。
きれいなお姫さまがおおぜいの吸血鬼に襲われて血を吸われてしまうという遊びです。
とても楽しかったです。
そのうち、人間の子供のお母さんたちが、心配して迎えに来ました。
吸血鬼の村からは、大人の人も出てきて、お母さんたちを出迎えると、「子どもは来るな」といって、
お母さんたちを家のなかに閉じ込めて、列を作って血を吸いはじめました。
あとでお母さんたちになにをしたのって聞いたら、「仲良くしただけだよ」って言っていました。
みんな、ほんとうは、人間と仲良く暮らしたいのです。
夕方、仕事から帰って来たお父さんたちが怒って村にやってきましたが、
大人の吸血鬼たちとすぐに仲直りをして、お母さんたちが献血に来るときには夫婦で来るって約束していました。
夜になると、担任の和佳奈先生が家庭訪問に来ました。
父さんの運転する車に乗って来た和佳奈先生は、ぐるぐる巻きに縛られていて、さるぐつわまでされていました。
ちょっと変わった家庭訪問でした。
人間の先生は、こんなふうに家庭訪問をするのかな?って思って、ちょっとふしぎな気がしました。
付き添いの教頭先生は、
「きょうは和佳奈先生がわがままを言って、血を吸わせてくれなかったんだってね。ごめんね」
といって、
「和佳奈先生はおわびをしたがっているから、気が済むまで吸うんだよ。
若い女の生き血ををたっぷり採って、きみも早く大きくなるんだよ」
と、和佳奈先生を縛っているロープをぼくに手渡してくれました。
教頭先生に取り残された和佳奈先生は目に涙をためていやいやをしていたので、
「死んだりしないから大丈夫」といって、安心させてあげました。
和佳奈先生は、教室にいたときと同じく、水色のきれいなワンピースを着ていて、ストッキングをはいていました。
ストッキングは子供や高校生のお姉さんが履いているハイソックスと同じくらい、ぼくの好物です。
ぼくは、さっそく和佳奈先生の脚に咬みついて、肌色のストッキングをブチブチッと破きながら、
和佳奈先生の生き血をたっぷり吸い取ってしまいました。
それからぐったりとなった先生を組み伏せて、こんどは首すじを咬んで、ごくごくのどを鳴らして先生の血を吸いました。
きれいな水色のワンピースの襟首が真っ赤になるのを、先生は困った顔をして見つめていました。
先生にはまだ恋人がいないみたいなので、明日からぼくが恋人になってあげると言ったら、いやそうにしていたので、
そんな顔をするとみんなの前で咬んじゃうぞっていったら、恋人になるって約束してくれました。
明日からは、和佳奈先生はぼくの恋人です。指切りげんまんをして約束したので、まちがいありません。
和佳奈先生は、「担任としてのぎむを果たした」って教頭先生に認めてもらえて、
ふらふらになりながら家に帰っていきました。
学校は居心地が良くて、とても楽しかったです。
あしたは、だれの血を吸おうかな。
夏休みの自由研究
2018年02月11日(Sun) 06:42:10
ぼくたちは、青木先生からもらったヒントをもとに約一か月、吸血鬼に関する自由研究に取り組みました。
メンバーはAくん、Bくん、それにぼくCの3名です。
ぼくたちはまず、街に棲みついているという吸血鬼と接触を図るために、濃紺の半ズボンお制服を着用して夜の街を歩きました。
(Aくん)娼婦になったみたいな気分になって、ちょっとドキドキしました。(笑)
その晩襲われたのは、ぼくとAくんでした。
Bくんだけは、ハイソックスを履いていませんでした。
それで、次はBくんもハイソックスを履いてみたところ、ぼくたちを襲ったのとは別の吸血鬼が洗われて、脚を咬まれて血を吸われました。
(Bくん)あくまで実験だったので、条件を変えてみたのです。AくんとCくんが吸われた時点で、ぼくだけが無事でした。もしかしてぼくだけ真人間で帰れるかも・・・って正直思いましたが、ぼくだけ仲間外れになっちゃうのがやはり怖くて、すぐに血をあげました。数人でいるところを吸血鬼に襲われた場合全員咬まれてしまうというのは、そういう仲間意識が影響しているかもしれないと、あとで3人で話し合いました。
こうしてぼくたちは3名とも、さいしょの夜に吸血体験を遂げたのです。
3名全員が咬まれてしまうと、彼らは獲物を取り替え合って、ぼくたちの血を吸いました。
あとで吸血鬼の人たちに直接ヒアリングしたところ、血の味には個体差があるので、もっとも好ましい血を択ぶための作業だということでした。
でも、その後も彼らは分け隔てなくぼくたちを取り替え合って血を吸っていたので、嗜好にかかわりなく血液の摂取は行われることがわかりました。
全員が均等に吸血を受けるもうひとつの理由としては、血液の喪失量を同じにするためで、1人に負担が片寄らないための生活の知恵ではないかという意見が出ました。
でもそういう状態はさいしょの一週間だけでした。
初めのうち彼らがぼくたちを均等に分け合っていたのは、喉がカラカラの状態だったからでした。
ある程度飢えを満たされると、彼らはそれぞれにパートナーを決め合いました。
それはぼくたちの意思とは関係のないところで決められていて、
いつの間にかそれぞれの男子のところには決まって同じ人が来るようになりました。
次にぼくたちは、彼らに女子の血を吸わせてみることにしました。
実験に協力してくれたのは、Aくんの彼女のαさんと、ぼくの彼女のγさんでした。
Bくんにはまだ彼女がいないので、βさんを誘って自由研究の仲間になってもらいました。
彼らと相談したところ、ぼくたちみたいに3人同時にではなく、思い思いに襲いたいということでした。
あくまで実験なので、襲うときには事前にぼくたちに連絡をするようにお願いをしました。
彼らもぼくたちの自由研究には協力的で、αさんたちを襲うときには必ず教えると約束してくれました。
さいしょに咬まれたのは、γさんでした。
彼女は学年が三つ下で、女子たちのなかでは最年少でした。
襲った吸血鬼は、おもにCくんの血を吸っていた男でした。
彼がぼくをパートナーに選んだとき、すでにぼくがγさんと付き合っていることを知っていたそうです。
さいしょからγさんを目あてに、ぼくを選んだことになります。
γさんを襲った吸血鬼は、仲間の吸血鬼から、「こいつ、ロリコンなんだよ」って笑われていましたが、彼は苦笑いするだけで怒ることはありませんでした。
3人の間柄は、ぼくたちと同じように、円満だったのです。
彼がγさんを狙ったのは、彼自身が吸血鬼に家族ともども血を吸われたとき、娘さんがいまのγさんと同じ年頃だったことを聞かされました。
γさんが襲われた直後ぼくが介抱をしている間、彼女の感想を聞くと、「さいしょは怖かったけど、血を吸い取られていくうちにぼーっとなって、しまいには夢中になってしまった」ということでした。
異性のパートナーのいる女子の場合、パートナーに対する軽い罪悪感が芽生えることもわかりました。
次の日に襲われたAくんの彼女のαさんの場合も、ほとんど同じ感想を得ることができました。
罪悪感を持った理由は、「血を吸われているときに、キスしているときみたいな昂奮を感じてしまったから」であることを、二人の女子から聞き出すことができました。
(「お前ら、もうそこまでイッているんだな」との野次が、しきりにあがる)
興味深いのは、彼女ではないβさんも、Bくんに対して同じような感情を抱いたということです。
状況を遠くから観察していたBくんは、公園の草むらでβさんが血を吸われながら、「Bくん、ゴメン」と口走るのを聞いています。
βさんを介抱している最中にBくんがそのことについてβさんに訊くと、
さいしょのうち彼女は自分の発言を思い出せなかったようですが、やがて記憶が回復すると、
「なんとなくBくんに悪いような気がした」ということでした。
女子たちには全員ハイソックスを着用してもらいましたが、男子のときと同じように両脚とも咬まれていました。
女子たちの履いていた真っ白なハイソックスが血でべっとり濡れているのを見て、なぜかぼくたちもドキドキしてしまったのを憶えています。
興味深いのは、それまでつき合っていなかったBくんとβさんが、自由研究の期間中からつき合い始めたことです。
βさんはメンバーに加わった最初から、「Bくんのために自分の血をだれかにあげている」という意識を持っていました。
一方Bくんのほうは、さいしょはβさんに特別な感情は特になかったそうですが、
βさんが初めて咬まれるのを見て昂奮を感じてしまったそうです。
「責任取らなきゃっていうマイナスな感覚よりも、もっと彼女が咬まれるところを見たいという恥ずかしい感情のほうが大きかった」そうですが、βさんはそういうBくんの感情にも寛大で、お互いの気持ちを打ち明け合うことで、距離が縮まったと話しています。
さいごの実験は、1人の吸血鬼がひとつの家族を征服するのにどれくらいの時間がかかるか?というものです。
Aくんの家の家族構成は、Aくんとお父さん・お母さん・妹さんの4人家族。
Bくんの家は、両親のほか、離れに独立したお兄さんが半年前に結婚したお嫁さんと同居していて、さらに隣には叔父夫婦と従妹が住んでいます。
ぼくの家は両親と、近所に叔母夫婦が住んでいます。ちなみにγさんは叔母夫婦の娘です。
このように、それぞれの家族の人数は、Aくんが本人を含めずに3人、Bくんが同じく2人、近所の親類まで含めると7人、ぼくのところが2人もしくは4人です。
それぞれの家庭で頭数は違ったのですが、家族全員が吸血されるのに要した期間は、ほとんど同じでした。
従って、1人あたりの襲われた回数はAくんのところがもっとも頻度が高く、Bくんのところが低いという結果になりました。
いちど咬まれてしまうと気持ちの上でほぼ征服されてしまうことが経験上分かっているので、家族全員を支配下に置くにはそれでじゅうぶんだということが、両親の行動をみてもわかりました。
セックス経験のある女性が襲われた場合、性的関係を結ぶと言われていますが、この点の確認は取れませんでした。
親たちがいちように口を閉ざして、教えてくれなかったためです。
でもそれは、学校の課題よりは重要度の濃い話題であることだけは、確認することができたように思います。
3人の家庭を侵食している吸血鬼と父親たちとの関係性は必ずしも悪くなく、Aくんのお父さんは吸血鬼をゴルフに誘っています。父親が吸血鬼を伴って帰宅した際、履いて行ったロングホース(長靴下)に赤いシミが付着しているのを、Aくん自身が確認しています。
Bくんのお父さんも、自宅に居ついてしまった吸血鬼とBくんのお母さんとの交際には寛大で、2人でドライブに出かけたり、ホテルで待ち合わせをして2人きりで献血を行なうことにも、不機嫌になった様子はないということです。
ぼくの家でも吸血鬼が母とひとつ部屋で2人きりでいるときには、
「2人のじゃまをしないで、親子で将棋を指す」ことが習慣になっています。
A家、B家、C家のどの家庭でも、両親は吸血鬼の侵蝕を受ける以前よりも仲良くなったように感じられ、父子の関係も円満な形で経過しています。
状況証拠としては、日常的に吸血を体験している家庭の主婦は、吸血鬼と恋愛関係になっている可能性が大であると推測していますが、お互いの母親の名誉に関する部分でもあり、深く踏み込むことができなかったというのが今回の実験結果です。
吸血鬼が人妻とどんな関係を結んでいるかについての解明は、今後の課題です。
ぼくたちにとっても、自分や彼女の血を吸った吸血鬼によって、母親の貞操がどんな扱いを知るのはたいせつなことだと思うので、今後も観察を継続していくことで3人の意見が一致しました。
これで発表を終わります。
その晩生徒A・B・C3名の担任の教師(男性、43歳)が自宅でまとめたレポートの一部――
吸血鬼による家庭侵蝕の実態を探るため、良家の子弟であり身許の信頼できる生徒3名を抽出、吸血鬼に関する研究を夏休みの課題とするアドバイスを与えることに成功した。
彼らとその家族を被験者として実験を開始して1か月が経過し、このほど彼らの手による研究成果がクラスで発表された。
結果、生徒3名の家族を含む全員が吸血行為を体験するに至ったが、死亡した例は皆無である。
3名の吸血鬼はそれぞれの被験者の自宅に棲みついて、家族全員を対象に血液を日常的に摂取するようになった。
被験者の自宅に棲みついた時点で、彼らの吸血対象はほぼ固定化したと考えられる。
しかし、例外は非常にしばしば発生している。
その1は、生徒Aと交際しているαが塾からの帰り道に生徒Cと同居している吸血鬼(丙)に襲われたケース、
その2は生徒Bと同性愛関係に至った吸血鬼(乙)が、吸血鬼(甲)と共謀して、甲が自分の棲みついている生徒Aの自宅からその母親を誘い出し、街はずれの公園で輪姦に及んだケースである。
彼らの間では独占欲といったものはあまり存在せず、むしろ楽しみを共有することに意義を見出しているという印象を受ける。
もともとは彼らも人間であり、自分たちを襲った吸血鬼に妻を与えた経験もあり、そうした過去から仲間との強い共有意識が醸成されているのかもしれない。
3家庭及びその近在に住居する叔父・叔母夫婦や兄夫婦もまた、家族ぐるみで吸血の対象とされ、献血に応じている。
生徒Bの自宅近くに居住する叔父夫婦には娘がいる。
当初のうち両親は娘を吸血鬼にゆだねることに拒否反応を示していたが、
やがて母親のほうから「早めに体験させたい」という意思を持つようになり、
最終的には夫婦で相談をしたうえで娘の初体験の相手を選んでいる。
両親が自分の意思で選んだ相手は、生徒Aの血を吸っている吸血鬼であった。
最も縁の深い生徒Bのパートナーを択ばなかったのは、彼が生徒Bが実験を通して得た恋人の血を日常的に摂取していることと関係があるようだ。
3人の生徒が選んだ女子のパートナーもいずれも、自分の意思で相手を選んではおらず、男子の指示に従って吸血鬼との関係を結んでいる。
未婚の女子については、本人の意思よりも周りの意思によって吸血相手が選ばれる傾向が感じられる。
各々の家庭を構成する主婦たちは全員、最初に咬まれた段階で貞操を喪失し、
なおかつ1か月以内に3人の吸血鬼すべてと性的関係を結んでいることが確認されている。
夫たちが不平を鳴らさないのは、吸血鬼が彼らと主婦たちとの結婚生活を維持したまま自らの欲望を遂げ続けているためと推察される。
夫婦間も吸血鬼との距離感も円満裡に経過しているのは、従来よりも濃厚な夫婦生活に満足を感じた夫たちが、妻たちの不倫行為についてとやかくいわないことを決め、見て見ぬふりを決め込んでいるためであると思われる。
これらのレポートをまとめるにあたり、妻・華恵の献身的協力に謝意を示すことを許されたい。
生徒たちがさぐり得なかった夫婦の事情を本人たちから聞き出すことに成功したのは、ひとえに彼女の功績である。
生徒及びその家族を被験者として抽出する以前に、わたしは吸血鬼に妻を紹介し血液の摂取を許した。
そうすることで研究成果の実が深まると確信していたためである。
妻は当初、常識的な日常を送る健全な女性としての羞恥心から、吸血鬼と関係を取り結ぶことに躊躇していたが、
わたしが自宅に3人を連れてくると、「私はどうなってもあなたの妻です」と言って、求められるままに首すじをゆだね、
その晩のうちに3人の吸血鬼全員と交合を遂げた。
いまでも彼女はわたしの最愛の妻であり、吸血鬼の欲求の良きはけ口として振る舞いつづけている。
今後の研究に彼女の協力は不可欠であるし、妻を汚された経験を持つ夫として、同様の運命をたどる人妻を1人でも多く増やしたいと熱望しているところである。
あとがき
生徒たちが自分自身を始め、彼女や家族まで巻き込んで行う吸血鬼研究。
それがじつは教師の陰謀であったというオチでまとめてみました。
淫らな関係を客観的で乾いた文体で表現すると、不思議な妖しさを帯びるように感じます。
前作のあとがき。
2018年02月07日(Wed) 08:05:59
先日、ひどく体調を崩してしまったのですが、前作はそのときの夜、出張先で携帯で打ったお話です。
若干の加筆はしましたが、意外にお話のつじつまが合っていたので、ほとんどは打ったままを載せました。
布団の中でかなり症状に苦しみながら過ごした夜だったのですが、そのいっぽうでこんなことができてしまうのは不思議です。
お話作りは、苦痛からほかに注意をそらせるには、役に立ったような気がします。
交わりが拡がってゆく。
2018年02月07日(Wed) 08:00:52
木内には、女装趣味があった。
そして、長年の親友に吸血鬼がいた。
初めての出逢いは、真夜中の散歩のときだった。
吸血鬼は木内のことを女性として接し、生き血を求めた。
木内は自分を女装者と知りながら自分に分け隔てなのない態度で接してくる吸血鬼に好意を感じて、
求められるまま首筋を咬ませた。
その時木内が着ていたのは、セーラー服だった。
彼は血を吸い取られることよりも、大事にしていたセーラー服かを汚されないかを気にかけていた。
そして、それと察した吸血鬼が襟首を汚さずに吸ってくれたことに、さらに好意を覚えた。
木内には妻がいた。
彼女は夫の嗜好に、常識的な婦人としてはまことに当然な嫌悪感を抱いていた。
血液を吸い取る代償に、女装をしての深夜の散歩のエスコートをするというふたりの関係にも、
女性としての直感から、胡散臭さを感じていた。
けれども彼女は人並みに夫を愛していたし、
ふだんは紳士的な物腰である夫の親友にたいして、会釈を交わす程度の間柄にはなっていた。
賢明な彼女は、相手が吸血鬼だというだけでむやみと相手に垣根を作ろうとはせずに、
実害の及ばない範囲では夫の親友に対する礼儀を忘れなかったのだ。
3人の間にあった均衡が破れたのは、木内が妻に、
「きみも良かったら」と、自分の親友のための血液の提供をもちかけたときだった。
木内夫人はいずれ自分の番がまわってくる予感をかねてから抱いていたので、
自分でも意外なくらいあっさりと、夫の提案を承知した。
夫と親友との親しすぎる関係が、やや過度すぎる献血を夫に課するようになっていて、
彼女は妻として、夫の健康に気遣いを感じるようになっていたからだ。
あるいは、ふたりの男性の関係に、ある種の嫉妬を感じ始めていたのかも知れない。
夫人は夫の親友と二人きりで逢うのは心細いと訴え、そのような折りには夫にも同席してほしいと懇願した。
木内は親友の意向を訊いたが、もとより無理をお願いしたのは私であるから、奥方のもっともなご意向に沿いたいと応えた。
木内はある種の予感を胸に、罪悪感とえもいわれぬ歓びとにゾクゾクしながら、当日に臨んだ。
彼はまず夫人に手本を見せるため、女性の姿で夫人の前にたち、自らの首筋を咬ませた。
木内は洋装の喪服姿だった。
やがてそれが、夫人の貞操を弔う衣裳となることを、彼はすでに十分予感していたのだ。
貧血を起こして昏倒した木内の傍らで、吸血鬼は木内夫人の首すじに噛みつき、血を吸った。
彼にとっては念願の、熟れた人妻の生き血だった。
吸血鬼の親友が最愛の妻を相手に嬉しそうに血を啜るのを、木内もまた嬉しげに見守った。
夫人は気丈にも、恐怖の念を押し隠して夫の親友の相手をつとめ、
白い素肌に夫ならぬ身の唇を這わされながら、40代の人妻の血潮をふんだんにあてがったのである。
木内夫妻の心尽くしを悦んだ吸血鬼は、その場で木内夫人を犯した。
夫人は唐突な求愛に戸惑いながらも、夫の目の前での行為を受け入れた。
夫がそうすることを望んでいると、直感したからである。
初めての交わりは夜明けまで続き、男ふたりはひとりの女を代わる代わる愛し抜いた。
一見すると輪姦でしかなかったかもしれないその行為を受け容れながら、夫人は、
いま自分の身に行われていることが、ひとりの女を二人の男が共有するための儀式なのだと直感した。
そして、その直感は正しかった。
木内夫人もまた、日ごろの賢夫人としての振る舞いを取り戻して、
予期していなかった関係をためらいなく受け入れていた。
賢明な彼女は、今後は夫の親友のために、自らの生き血を過不足なく提供することを約束し、
寛大な夫はその際必然的に生じる男女の関係を許容すると誓った。
親友が望んでいるのは、彼の妻を木内夫人のまま犯し続けることだと、熟知していたからである。
ひとつの関係はさらに別の関係の糸口となり、それはさらに新たな関係の契機となる。
吸血鬼と木内夫妻との関係が、まさにそれであった。
木内夫人は子をもつ母親としてのたしなみと遠慮を持っていた。
夫に対してもそうであった。
木内は妻の身代わりの献血行為を率先することで妻の身を庇おうとし、
夫人は夫の親友に接するときには、自分が希望しているのはあくまでも夫への貞節を守ることであり、
いまは心ならずも彼の欲望に従っているという態度を取り続けた。
それでも内心まで偽ることのできなかった彼女は、自分でも不思議に感じるある願望を抱くようになった。
時を遡って処女の頃に吸血鬼と出逢って、自らの純潔さえ捧げたかったと熱望するようになったのだ。
その願いは夫である木内の知るところにさえなったが、
親友である吸血鬼に進んで最愛の妻を与えた彼は、妻が吸血鬼に抱いた気持ちをむしろ尊重さえしているのだった。
実現不可能にみえた夫妻の願望を、別の意味でかなえたのは、彼らの一人娘だった。
夫妻は自分たちの大人同志としての関係を子供たちと分かち合うことを避けていた。
人並みな親として、息子や娘の将来に、人並みの幸福を期待していたのだ。
均衡が破れたのは、ある冬の日のことだった。
○学校の卒業を控えた娘が帰宅したとき、幸か不幸か親たちは家を留守にしていた。
待ち受けていたのは、喉をからからにしていた父親の親友だった。
彼女は彼の正体を親から聞かされていて、あまり近寄らないようにと注意さえ受けていた。
しかし彼女は苦しんでいる年上の親しいおじ様の苦境に同情して、自分のことを咬んでも良いと告げた。
少女は吸血鬼のもてなしかたを、かねてから垣間見ていた母親の振る舞いから、よく心得ていたのだ。
透き通るストッキングを穿いて脚を差し伸べる母親に倣って、その場にうつ伏せになると、
よそ行きのときだけに履く真っ白なハイソックスのふくらはぎに、唇を吸いつけられていった。
少女は自分の生き血をおいしそうに吸い上げられるチュウチュウという音にうっとりと聞き惚れながら、
真新しいハイソックスの生地になま暖かい血潮をしみ込まされてしまうのを、ドキドキしながら感じ取っていた。
親たちが帰宅したときにはもう、すべてが終わっていた。
少女はパパのお友だちでママのナイショの恋人でもある小父さまに、処女の生き血をプレゼントすることを、
指切りげんまんをしてお約束してしまっていた。
木内夫妻の長男は都会の大学を出て、就職先も都会の会社だった。
重役の娘に見初められて、結婚間近だった。
血は争えないもので、彼もまた父親と同じく婦人の装いを嗜んでいた。
そして、そのことを未来の花嫁に知られることを、ひそかに恐れていた。
彼は両親の口から意外な近況を聞かされると、その週の週末には恋人を伴って、実家に姿をみせた。
将来を誓いあった男性の実家に招かれて、重役令嬢はなんの疑いもなく、婚約者に帯同されてこのひなびた街へと脚を踏み入れた。
透き通った白のストッキングに包まれた初々しいふくらはぎが、垣間見る者を魅了したなどとはつゆ知らず。
その日、都会育ちの善良なお嬢様は、桜色のスカートスーツのすそを深紅に染めて、
自らの体内に宿した、うら若く健康な血潮を、気前よく振る舞う羽目になった。
荒っぽい歓迎ぶりに、さすがに顔色をなくした彼女だったが、
しつように吸いつけられる卑猥な唇に素肌を馴染ませてしまうのに、さほどの時間はかからなかった。
吸血の因習を避けて都会暮らしを選んだはずの長男だったが、
いったんあきらめをつけてしまうと、すでに母と妹を堕落させてしまった吸血鬼と互いに打ち解けあって、
いまは婚約者に告げずに逢瀬をくりかえすようになった未来の花嫁のあられもないありさまを、
ワクワクしながら覗き見するようになっていた。
重役令嬢は、恋人の貧血を補うために身代わりになるという婚約者のために、彼が彼女の服をねだることを許した。
日ごろの悩みを解消することができた青年は、妖しい儀式の待ち受けるお邸に、
理解ある婚約者と2人肩を並べて出入りするようになった。
幼かった妹にも、彼氏ができた。
まだ年端もいかぬ少年でしかないはずの彼は、自分の恋人と吸血鬼の関係を受け入れることに同意して、
その証しに未亡人である母親を吸血鬼に紹介した。
吸血鬼が母親の首すじに唇を迫らせて、喪服を脱がしてゆくありさまのいちぶしじゅうを見届けてるはめになった彼は、
自慢の母親が堕ちるのを目の当たりに、未来の姑が嫁の不倫の頼もしい共犯者になると確信したのだった。
このようにして、ひとつの好意はいくつもの好意を呼び寄せた。
世間なみの幸福を子どもたちに望んだ親たちは、自分と同じ道に堕ちた彼らといままで以上に交わりを深め、
そうした交わりは妖しい歓びをともにできる者たちの間だけで拡がりつづけた。
おおぜいの人間から血液の提供を受けるようになった幸運な吸血鬼は、仲間に自慢したという。
俺は夫と妻、その息子と娘、その婚約者や恋人とその母親たち――合わせて8人もの女をモノにしているのだ、と。
【付記】
冒頭部分を、弊ブログの読者である”霧夜”さまがビジュアル化されています。
詳細はコチラ↓
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3575.html【付記2】
木内の妻が夫に伴われて吸血の場に臨むまでのシーンが、”霧夜”さまによってビジュアル化されています。
詳細はコチラ↓
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3578.html
異形の影
2018年02月04日(Sun) 06:36:48
秋の夕暮れの、週末のことだった。
息子は塾に行って帰りが遅く、わたしは暑さの残る昼間のけだるさに、つい午睡(うたたね)をしていた。
異変に気づいたのは、まどろみが目覚めにかわるころだった。
隣室で、クチャ・・・クチャ・・・と、妙に生々しい音が洩れてきたからだ。
ドラキュラものかゾンビの映画で生き血を啜っているシーンか、人肉を喰らっているシーンに出てきそうな音だった。
その部屋は和室の居間で、妻が寝ているはずだった。
わたしは恐る恐る部屋を出て、廊下にまわった。
居間へは直接に行けず、いちど廊下に出なければならない間取りだった。
ふらり、と、わたしの目のまえを、異形の影が横切った。
だれ・・・?と思う間もなく、そいつはこちらのほうをふり返った。
居間の前まで出て横目に見た妻はさいごに見たときと同じようにたたみのうえに自堕落に横たわり――
そして、首から血を流していた。
妻の身に起きた異変を見たか見ないかのうちに、異形の影はわたしに取りついて、無防備だった首を咬まれた。
咬まれた痛み以上に、万力で抑えつけるような猿臂の力に、わたしは思わず悲鳴をあげた。
異形の影はわたしの叫びに構わず、首すじに刺し込んだ牙でさらに皮膚を深くえぐり、
ドビュっとほとび出た血を、それは美味そうに啜り取っていった。
さっきまで妻が、同じ目に遭っていたのだ・・・と、こんどはすぐに察することができた。
わたしはたちまち貧血を起こし、その場にくたくたとへたり込んだ。
邪魔者が倒れたのを見て取ると、異形の影は思い直したように回れ右をして、ふたたび妻の入る居間へと戻った。
一瞬だけかいま見た妻の様子は、あきらかに日常と違っていた。
首すじから血を滴らせ、顔色は鉛色だった。
放恣に伸びた両脚は、スカートをまくり上げられて太ももまであらわになり、
その太ももには半透明の粘液が、ヌラヌラと忌まわしくまとわりついていたようだ。
妻はあのとき、息をしていたのだろうか?
昏倒したのは一瞬のことで、失血で不自由になった身体をいざり寄らせるようにして、わたしは居間をのぞき込んだ。
世の亭主ならふつうそうするように、妻を救わねばならない――と思ったからだ。
目のまえに、妻の両方の足の平が見えた。
片方はストッキングを脱がされていて、ふたつの足の平のあいだに、異形のものの腰が見えた。
腰は、スカートをたくし上げられた妻の臀部に深く食い入り、激しい上下動をくり返していた・・・
居間の入り口まで身を運ぶのがやっとで尽きてしまった自分の体力を、わたしは呪わずにはいられなかった。
わたしは居間の前の廊下で横倒しになったまま、妻が犯される様子から視線を放すことができなくなっていた。
彼が欲望を果たして、眠りこけた妻の頬に別れのキッスをしてしまうまで。
彼が身を起こしたとき、その下敷きになっていた妻の顔色は、まえよりも良くなっていた。
抜き取り過ぎた血を戻したのだ――と、わたしは直感した。
あとから親密になった彼から聞いたのだが、抜き取り過ぎたどころではなく、
いちどは一滴余さず吸い尽してしまっていたという。
たまたま通りかかったわたしの血で喉を潤して満足したので、
無用の殺生はしまいと思い直し、もういちど妻のうえにのしかかったのだという。
ちなみに、さいしょの吸血の段階で、すでに妻の貞操は喪われていた。
彼女は唐突な侵入者に生き血を吸われ、性の快楽におぼれながら、
彼が必要とする血液を唯々諾々と提供し続けてしまったのだ。
侵入者は、一家のあるじの肩を親し気に抱き、謝罪とも感謝ともとれる会釈を残し、音もなく立ち去った。
「黙っていて」
妻は必死のまなざしでわたしに訴えた。
そろそろ、息子が帰る刻限だった。
わたしたちはとりあえず、目のまえで起きてしまったことには目をつむり、
状況を隠ぺいするための共犯者同士として行動した。
息子が玄関のドアを開けたてする音が家の中に響いたとき、
妻はいつものように夕餉の支度に台所に立っていて、わたしは別の部屋で消えやらぬ懊悩にまだ悶々としていた。
異形の影の来訪は、その後も続いた。
わたしが居合わせたときにはまず、わたしのほうに現れた。
いつも唐突な現れ方をするので、無防備に首すじを噛まれて、血を抜き取られてしまうのがつねだった。
そのうちにわたしは、そうされる行為に快感を覚えるようになっていた。
思い切り刺し込まれる牙の強引さに。
生き血を激しく抜かれるときの、無重力状態のような頼りなさに。
わたしの血を呑み込む喉が心地よげに鳴る音で、相手の満足感が伝わってくることに――
その後決まって襲われる妻もまた、無抵抗だった。
異形の影が近づくとすすんで身を任せ、相手の欲望に自らをゆだねていった。
失血で身体の動きもままならないわたしは、妻の襲われている現場まではどうにかたどり着くことができたが、
侵入者により凌辱を妨げることができなかったばかりか、むしろいちぶしじゅうを見せつけられてしまうのがつねだった。
わたしは嫉妬のあまり激しく射精し、すべてが終わったあと妻は、廊下に広がった精液を表情を消してぬぐい取っていった。
異形の影の来訪は、決まって息子のいないときだった。
彼の来訪は、しぜんと予感することができるようになった。
妻がいつになく化粧を濃くし、身なりをこぎれいに改めるからだ。
そうすることで、妻が彼の侵入行為を断固拒絶しているわけではないことを、察せざるを得なかった。
出し抜けに背後から羽交い絞めにして、おとがいを仰のけて、首すじにがぶりと咬みついて、
こぼれた滴りが着衣を汚すまで続けられる。
貧血を起こした妻がうつ伏せに倒れ臥してしまうと、もの欲しげに頬を弛めてにじり寄って、
ストッキングを穿いたふくらはぎを舐めはじめるのが、行為の始まりだった。
先に失血したわたしは、横倒しに倒れた廊下からそのようすを、見せつけられるように覗きつづけた。
きちんと穿かれたストッキングの生地が、舌の誘惑に負けるように皺くちゃになり、
ヌラヌラとしたよだれをあやしながら引き破られてゆくのを、ジリジリしながら見守っていた。
「黙っていて」
すべてが終わると妻はきまり切ったようにそう囁いて、ふたりは情事の痕跡を消すことに熱中した。
だいぶあとになってから、聞かされた。
さいしょに咬まれたのは、じつは息子のほうからだったと。
半ズボンを脱がされた息子は、異形の影の腰の勁(つよ)さを一番さいしょに体験させられて、
お母さんにもこういう目に遭ってもらおうよと誘われて、つい気軽にOKしたのだという。
そして、塾には行かずに家にとどまり、わたしとはちがう部屋からいつものぞき見していたのだという。
はじめのころは、母さんが血を吸い尽されないかと心配していたけれど、
父さんが自分の血を吸わせるようになってホッとしたころからは、むしろ愉しんで視ていたという。
その彼は年ごろになると、親密になった異形の影に恋人を引き合わせて、処女の血を愉しませるようになった。
異形の影が自分の恋人に惚れ込んで、望まれてしまうのならかなえてあげようとさえ思っていたほどだったが、
影はむしろ、息子が恋人と順当に結婚するのを望んだ。
そして若い夫婦の同意のもと、わたしたち夫婦と同じ関係を取り結ぶことに成功した。
いまごろはきっと――相応の年齢になるふたりの息子が、親たちの密かな愉しみに魅せられ始めているかもしれない。