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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

上位の者があとから酔わされる。

2019年01月31日(Thu) 08:14:52

ものの順序として。
上位の者があとから酔わされるお話が、かなり好きです。

さきに娘や息子が襲われて、あとから母親が襲われる。
吸血されることに夢中になった娘や息子が、ハイソックスを咬み破らせてしまうのを目の当たりにして、
潔癖なお母さんは激怒します。
けれどもさすがのお母さんも、吸血鬼にはかないません。
たちまちねじ伏せられてしまい、
長い靴下を好む吸血鬼の卑猥な唇を、ストッキングを穿いた脚に吸いつけられてしまいます。
息子や娘のまえで、ストッキングをびりびり破かれながら吸血されるお母さん。
ある意味、お手本を見せてしまいます。

さらに上位が、お父さんです。
男女は平等ですから、上下というよりは吸血鬼との距離感かもしれません。
でも、たいがいのご家庭ではいまなお、一家の長といえばお父さんの役割のようですね。
このごろはほとんど見かけなくなりましたが、かつてビジネスマンの間では、ストッキング地のハイソックスが流行していました。
ただのおっさんでは芸がないので、ちょっとユニセックスなものを身に着けさせてみたくなります。
かくして、お父さんまでもが働き盛りの血を吸い取られ、めでたく?陥落してしまいます。
もう少し発展家のお父さんですと、体調を崩した奥さんの身代わりに、女装して吸血鬼の相手をします。
妻の服を身に着けて、自分も女になり切って犯されてしまいます。
妻が犯される想像と二重写しになって、得も言われぬ快楽に身を浸すことになります。
ある意味、幸せな出逢いかもしれません。(笑)

若夫婦の場合だと、お姑さんも絶好の餌食です。
嫁の不倫をやめさせようとして、あべこべに犯されてしまったりします。
あげくの果ては、永年連れ添ったお舅さんにも知られてしまうのですが、
お舅さんは意外にも温厚な紳士で、息子の嫁や自分の妻の情夫にも、寛大に接します。
お姑さんも、嬉し恥かしの五十路の浮気に耽るようになりますが、夫婦の関係は続きますし、むしろ深まります。
吸血鬼が、人妻のまま、彼女たちを愛そうとするからです。
いかがわしいことをやめさせようとしながら、ミイラ取りがミイラになる。
そんなところに萌えのポイントがあるのかもしれないですね。

ハイソックス好きな少年とその家族

2019年01月31日(Thu) 08:04:56

ハイソックス好きな少年がいた。
その時分はハイソックスの流行は終わっていて、男の子たちはだれもハイソックスを履かなくなっていたが、少年は毎日ハイソックスを履いて通学していた。
ある晩帰りが遅くなった少年は、公園のベンチで、ひと休みしていた。
そこを喉をカラカラにした吸血鬼が通りかかったのが、運の尽きだった。
吸血鬼は少年のことを女の子と間違え、首すじを噛んで血を吸った。
少年が貧血を起こしてベンチにたおれこんでしまうと、足許にはいよってハイソックスのふくらはぎをきまなく舐めた。
少年は、この人はハイソックスが好きなんだと直感して、内心いやらしいなと思いながらも、男の気の済むまで舐めさせてしまった。
大人しくしていれば生命は取らないという吸血鬼の囁きを信じた少年は、彼の好意を受け容れた。
吸血鬼は少年の履いているハイソックスを咬み破り、吸血を続けた。

次の日、少年は再び吸血鬼に出会った。
待ち伏せていたのだ。
吸血鬼の期待どおり、その日も少年はハイソックスを履いていた。
少年は、きょうのハイソックスは気に入っているのてま、破くのはやめてほしいと願った。
吸血鬼はハイソックスを舐めて舌触りを楽しむだけで許してやった。
それ以来少年は、吸血鬼を信用するようになった。
数日に一度は彼と待ち合わせて、ハイソックスの脚を咬ませてやるようになっていった。
少年は、吸血鬼が自分と同じくハイソックスが好きなことに気づいたので、彼に親近感を持った。
吸血鬼のほうも、少年が彼の嗜好に理解を示し若い血液を気前よく振る舞ってくれることに感謝していて、少年の体調をに配慮を示して吸血の量を加減してやることもあった。
同じ趣味の二人は、少年はハイソックスを履いて吸血鬼を愉しませることで、吸血鬼は少年のハイソックスをいたぶり咬み破ることで、愉しみを共有するようになった。

少年の母親は、息子が時々素足で北口することに疑念を抱いた。
そして、少年の帰りが遅いある晩、様子を見に出かけて行って、少年が吸血鬼に血を吸われているところを目撃してしまった。
彼女はすぐに吸血鬼に捕まえられて、首すじを咬まれ血を吸われたうえ、犯されてしまった。
少年は失血のあまり朦朧となっていたが、
母親が自分の血を吸っている男に捕まえられて、穿いていたストッキングをめちゃくちゃに咬み破られて犯されてゆくのを、ただうっとりと見守っていた。
長い靴下を履いていると、見境なく咬みつくんだね、と少年はいうと、今夜のことは内緒にするかわり、母さんと交代で逢いにくると吸血鬼に約束をした。
母親は、息子が覚え込んでしまったけしからぬ習慣をやめさせることができなかったばかりか、自分自身も巻き込まれて、不倫を犯してしまったことを悔いた。
けれどももう、後戻りをすることはできなかった。
彼女は息子の留守中や、貧血で倒れた息子を迎えに行ったときに、息子ともども生き血を啜り取られるようになった。
出かけていく時彼女は、吸血鬼に言い含められるままに、薄手のストッキングを脚に通していった。
無体に弄ばれて咬み破られると知りながら、彼女は吸血鬼の意向に従っていた。
客人のまえで正装するのは、礼儀正しい婦人として当然の行いだと思ったからである。
そして、欲情もあらわにのしかかって来る吸血鬼に、自分は貴男を愉しませるために正装しているわけではないと主張しつづけた。
そしてもちろん、彼女の正装は吸血鬼をぞんぶんに、愉しませてしまうのだった。

少年の父親は、かつて吸血された体験を持っていた。
彼は妻と息子が代わる代わる吸血鬼に逢いに出かけてその欲望を満たしているのを知ると、自分も出かけて行った。
彼はその頃流行っていた濃紺のストッキング地のハイソックスを履いていた。
それが吸血鬼の好みに合うことを知っていたからである。
獣性もあらわに咬みついてくる吸血鬼をまえに、スラックスを引き上げると、なまめかしい薄地の長靴下に透ける脛に、吸血鬼は目を輝かせた。
貴方は良いご主人であり父親だと彼を称賛すると、父親の長靴下をくまなく舐め尽して、
その息子や妻に対してそうしたように、靴下を咬み破って血を啜った。
こうして少年の父親も、働き盛りの血を吸い取られてしまった。
少年の父親は、妻や息子の生き血が彼の好みに合ったことを嬉しく思っていたので、自身の血をむさぼり尽されてしまうことに、喜びを感じていた。
こうして一家はめでたく、吸血鬼の支配を受け容れたのだった。

生き返らされた夫

2019年01月31日(Thu) 07:51:34

ある男が吸血鬼に襲われ、血を吸われて死んだ。
男は死後も意識があって、その後のことを見聞きすることができた。
男の妻は通夜の席で襲われて、吸血鬼の餌食となった。
親族の者たちは怖れて逃げ散ってしまい、だれも妻を救おうとはしなかった。
男の妻は喪服姿のままその場で犯され、吸血鬼の言いなりに振る舞ってしまった。
男は悔しがったものの、どうすることもかなわなかった。
しかし、妻が吸血鬼と接し続けるうちに、徐々にほだされてしまい、やがて打ち解けあってまぐわいを深めてしまうのを、男は不覚にも、淫らな気持ちで見届けてしまった。

妻はひとしきり吸血鬼に血を与え、身体でも悦ばせてやると、どうにかして夫を生き返らせることはできないかと懇願した。
妻は夫を愛していたし、同時に頼りにしていたのである。
吸血鬼は男と意思を交わしあうことが、できたので、男に生き返りたいかと尋ねてみた。
男は即座に、生き返って再び妻と暮らしたいと願った。
吸血鬼は男と出会った夜に、だれかの血を吸わないと灰になるところだったので、男に恩義を感じていた。
そこで、吸血鬼は男とその妻の希望を容れて、男の身体に血を戻して生き返らせた。
夫婦は、吸血鬼に身体中の血を舐め尽くされながらも、元通りに暮らすことができるようになった。

吸血鬼は、人の生き血を欲していたが、相手を死なせるほどの血の量は必要としていなかった。
だから吸血鬼は、この街に留まるあいだは夫婦から血をもらえないかと持ちかけた。
男が吸血鬼に血を与えたのは、もとより本人の意思とはかかわりのないことであったが、男も吸血鬼の事情を聞かされると、いくらかの同情を覚えた。
そこで、妻と相談して、交代で吸血鬼に血を与えることにした。
妻は夫の通夜の席で吸血鬼に犯されたことを忘れられなかった。
話の通じる相手であることは、夫を生き返らせてくれたことでそれと分かったが、
もしもこれからも夫婦ながら献血行為に応じるとしたら、性交は避けられないのではないかと気がかりだった。
けれども、羞恥心から、そうしたことを夫と相談することができなかった。

まず夫が血を吸われ、いよいよ妻の番になると、果たして吸血鬼は血を吸うだけではなく、身体の関係を求めた。
最初のときは、夫の知らないところで関係を結んでしまった。
妻は思い悩んだ挙げ句、夫に真実を告げずに関係を続けることにした。
誰も悲しませたくなかったからである。
夫は一度死んだときに吸血鬼が妻を襲って犯したところを視ていたので、
妻を吸血鬼に逢わせることに同意したときすでに、二人が肉体関係を結ぶことを予想していた。
吸血鬼はもとより、妻もまた自分の情夫との営みに惑溺を感じていたので、関係を絶つことはできなかった。
夫はふたりの関係を、しばらく見守ることにした。
妻は吸血鬼に身体を求められると、夫への貞節を思い吸血鬼を拒もうとしていたが、
やがて回を重ねるたびにほだされてしまい、大胆な逢瀬を重ねるようになっていった。
一方で夫のほうはといえば、ふたりの密会の有り様を覗き見することに、淫らな昂りを覚えるようになっていった。
妻はやがて、夫が自分たちの逢瀬を覗き見していることに気がついた。
初めは戸惑い、夫のしていることを恥ずかしく感じたが、もはや成り行きにゆだねるしかなくなっていた。
夫婦は吸血鬼を家庭内に受け入れて、長く満ち足りた関係を続けた。

絵を好む吸血鬼

2019年01月20日(Sun) 08:26:35

絵画の鑑賞を好む吸血鬼がいた。
還暦近くの吸血鬼だった。
彼の棲む街には美術館がなかったので、隣接する都会の美術館に、よく出かけていた。
そこであるとき、一組の夫婦と知り合いになった。
お互い好みが合い、会話はとんとん拍子にはずんだ。
晩ご飯はいかがですか?と問うご主人に、吸血鬼は思い切ってこういった。

実は私、吸血鬼なんです。隣の街に棲んでいて、ガールフレンドがなん人もいるんです。と。

そうだったんですね。ご夫婦はそう言って驚いたが、すでに吸血鬼の人柄が分かりかけていたので、いった。

家内に急に咬みついたりは、なさいませんよね?そういう方だとお見受けします。
そうだったら、べつに吸血鬼だろうが人間だろうが、関係ないのではありませんか?

吸血鬼は分け隔てをしない夫婦の態度に目を見張り、慇懃に頭を垂れて、いった。
できれば長く、おつきあいをしたいものですな、と。

それから彼はその夫婦と連れだって、月に2回は絵画鑑賞に出かけた。
夜は食事を共にして、気分良く別れていった。
もちろん、彼が奥さんを襲うことはなかった。
彼の棲んでいる街には、そういうけしからぬ欲求に応えてくれるガールフレンドが、なん人もいたからである。

それからしばらく経って、街にいた彼のガールフレンドが2人、同時に街を出ていった。
2人は転勤族の妻と娘で、ふたりながら彼の餌食になっていた。
娘の進学の関係で、避けられない転居だった。
ご主人は妻の浮気相手である吸血鬼に理解のある男で、
時折妻の服を着て女装して、逢ってあげましょうと約束してくれたけれど、
彼の欲求を満たすためのローテーションに、狂いが生まれた。
吸血鬼は献血してくれるガールフレンドたち――そこには好意的なご主人も含まれていた――が健康を損ねないように、綿密なスケジュールを組もうとしたが、どうしても一人足りないことに変わりはなかった。
彼は都会の夫婦に連絡を取って、しばらく会うのをやめましょうといった。

一か月後、吸血鬼の邸に、都会の夫婦が訪ねてきた。
驚きつつも夫婦を出迎えた吸血鬼は、邸のなかに入れるわけにはいかないから、そこのお店でお茶でもしましょうといった。
「あなたがいないと会話がはずまないものですからね」と、ご主人が笑っていった。
それ以来、人目のある喫茶店やホテルのロビーで短時間会話を共にすることで、彼らの交際は復活した。
そんな会合のなん度目かのこと。
街でいちばん大きなホテルのロビーで会合したときに、ご主人がちょっとだけ席を外した。
不運にも、突然の訪問と吸血鬼の渇きの刻とが、重なってしまっていた。
吸血鬼は欲求をこらえ切れなくなって、テーブルの向こう側にまわり込み、さっきまで夫の腰かけていたソファに腰を下ろすと、
戸惑う夫人を引き寄せて、首すじを咬んでしまった。
アアーッ!
奥さんがひと声叫ぶと、ご主人が慌てて駆け戻って来た。
吸血鬼は、好ましい交際が終わったと観念した。
せっかく彼らは分け隔てなくかかわってくれたのに・・・
ところがご主人の対応は違っていた。
奥さんにひと声、「だいじょうぶか?」と声をかけた。
奥さんが、「私はだいじょうぶ」と応えると、ご主人は、このホテルで部屋を取りましょうと言った。
幸い、空き部屋はすぐに見つかった。
そのあいだ吸血鬼は、奥さんを鄭重に介抱して、首すじにつけた咬み痕に滲む血が、服につかないよう気を配っていた。


ホテルの部屋に移った吸血鬼は、なおも奥さんの介抱を続けた。
ご主人はいった。

貴男はいつも紳士的で、喉が渇いているときも我慢をして、家内に接してくれていましたね?
だからわたしたち、相談したんです。
もしも貴男がどうしても我慢できなくなった時には、家内の血を吸わせてあげよう・・・と。
子供たちは独立しましたし、わたしに関するかぎりたいがいのことはお許ししますよ。

健全な清遊が、夫婦と吸血鬼とのあいだを、知らないうちに近いものにしていた。
吸血鬼はご主人に深く感謝をして、奥さんの首すじを咬み、うっとりとして血を吸われる妻の様子を見守るご主人に、
あなたに恥をかかせるわけにはいきませんからな・・・と告げると、ご主人の首すじにも咬みついた。
そして、酔い酔いになったご主人を隣のベッドに寝かせると、奥さんを組み敷いたまま、男女の愛を注いでいった。


月に2度の美術館通いは、その後も続いた。
そういうときには、いままでどおりの清遊だった。
吸血鬼はどこまでも紳士的に振る舞い、夫婦は思いやり深く接した。
そして、それ以外の逢瀬が週に1度、つけ加えられた。
時にはご主人も同席して、夫婦ながらの献血に応じていった。
血を吸い取られて仰向けになった奥さんにのしかかって、吸血鬼はけだもののように荒々しく彼女を愛したが、
ご主人は朦朧となりながらも妻のあで姿を見届けて、絵のように綺麗だよと告げるのを忘れなかった。

三つの鐘 ~祝・ご入学~

2019年01月19日(Sat) 07:08:55

不思議な風景に、貴志は胸をときめかせていた。
ひと月ほど前だったら、とても想像さえできない光景だった。
そのころはまだ、ゆう紀とは婚約をしたてのころだった。
親たちのすすめで、父親の同僚の娘さんという人とお見合いをさせられて。
十代の婚約は決して早くない、街のためにはとても良いことなのだと聞かされていた。
両親はまだ、その街に赴任したことはなかったけれど。
父親の勤務先の創業者が、不採算を承知のうえで設置したその街の営業所に勤めることは、エリートコースのひとつだとさえ、いわれていた。
「父さんもその街に赴任することがあるの?」
と訊く貴志に、
「さあ、どうだろうね?」
と、父親はちょっとだけ困った顔をしてなま返事をしたものだったが、
そのときにどうして父さんの返事がはっきりしないものだったのかは、いまの貴志にはよくわかる。

高校受験の時期が、近づいていた。
進路を母親に聞かれたときに、貴志が口にした学校名は、その街に所在する私立校だった。
大きく目を見開いた母親の美晴をまえに、「ぼくひとりでもあの街に行きたいんだ」と、貴志は告げた。
中3という若さで父親の同僚に処女を捧げた婚約者のゆう紀も、その学校に進学する予定だと、親たちも聞かされていたらしい。
「反対しにくいわね」と、貴志のいないところで美晴は夫の継田にいった。
継田家がその街のしきたりにまみれてしまう日もそう遠くないと、継田も予感せざるを得なかった。

合格通知が届くと、貴志はすぐにでも街に移りたがった。
「嘉藤の小父さんの家から通ってもいいって、言ってくれてるんだ」
息子がどうして同僚とそんな関係を結んだのか、継田にはわからなかったが、新たに費用を出して息子のためのアパートを借りるよりは安上がりだな、と、安直に思った。
まさかその嘉藤に、まな娘が日常的に汚されていることなど、そのときの継田にはまだ、思いもよらぬことだった。

貴志はいまの学校の卒業式も、セーラー服を着用して出席した。
「恥かしくないから。いまのクラスメイトとは、もう会わない関係だから」
貴志はそう言い張って、背広姿の父親と、スーツ姿の母親とともに、白のラインが三本入ったセーラー服姿で肩を並べて歩いた。
「良い時代になったってことなんだろうね」
継田は自分の気持ちを整理しかねながらも、自分自身に言い生かせるように美晴にいった。
美晴は継田よりもすこし前から、貴志が妹の制服を着て学校に行きたがっているのを知っていたし、
夫には内緒で一度ならず、女子の制服を着用して通学することを息子に許してしまっていた。
もちろんそんな彼女も、まな娘や息子の許嫁が、嘉藤に日常的に汚されつづけていることなど、思いもよらぬことだった。

その両親がいま、この街をいっしょに、歩いている。
街の学校はブレザーだったが、
貴志は同じクラスの男子生徒とはボタンのつき方が正反対のブレザーを着、
グレーのプリーツスカートのすそをひざの周りにそよがせて、
濃紺のハイソックスに包んだふくらはぎを見せびらかすように、大またで闊歩していく。
この街への転勤を希望した父親が、母親を伴ってこの街に来た時、貴志は父親の首すじに赤黒い痕がふたつついているのを発見した。
たぶんそれは、自分が嘉藤につけられた首すじの痕と、同じ間隔のはず。
父親は母親よりもひと足早く、同僚と和解をしたらしい。
嘉藤がまな娘と息子の嫁になる少女と契り、息子までも女として愛し抜いていることを、受け容れていたのだった。
そしていま父親は、まだなにも知らない母親の美晴を伴って、嘉藤の家を訪問しようとしている。
入学式の帰り道のことだったから、いつも質素な美晴も、小ぎれいなグリーン系のスーツで着飾っている。
けれども、この日のためにきちんとセットされた、ゆるいウェーブの黒髪も、
たんねんに化粧を刷かれた色白の豊かな頬も、
純白のブラウスの胸もとで清楚に結わえられたリボンも、
折り目正しく穿きこなされたベーズリ柄のスカートも、
脚に通した真新しい肌色のストッキングも、
ぴかぴかと光る黒のエナメルのハイヒールさえも、
あと10分と経たないうちに、夫よりもはるかに年上の暴漢の手にかかって、
持ち主の血潮を点々と散らされながら、弄ばれ嬲り抜かれてしまうのを、
貴志も、父親の継田さえもが、予感していた。

けれども美晴はきっと、快楽の淵に堕ちてしまうだろう。
娘や息子の血の味を通して、彼女もまた、貞淑妻の裏側にマゾヒズムを秘めていることを、読み取られてしまっているから。
折り目正しい正装に不似合いなあしらいを受けてうろたえた母さんが、
服を破かれ肌を露出させながら狂わされてゆく――
そんな光景を、父親とともに歓んでしまおうとしている自分が、呪わしくもほほ笑ましかった。
そして、堅実な良家の主婦を堕落させることを嗜好のひとつとしている嘉藤に、
永年連れ添った自分の愛妻を気前よく添わせようとしている父親の気前の良さも、呪わしくてほほ笑ましかった。
両親から受け継いだマゾの血が、いまでも貴志の全身に育まれ、脈打っている。
女子の制服を身に着けたその身に廻るぬくもりを抱きしめるように、貴志はひそかに自分の胸を抱いていた。

ボ~ン。
この街に持ち込まれた岩瀬家の古時計が、嘉藤の邸の奥で刻を告げた。
午後一時。
それは、継田夫人の貞操が喪失されると予告された時刻だった。
放恣に伸び切った白い脚には、裂かれた肌色のストッキングが、まだ切れ切れに残っていた。
自分を組み敷いている獣の欲情に応えはじめてしめてしまっている自分を呪いながらも、
美晴は夫と息子の見つめる視線を痛痒く受け止めながら、男に迫られた熟女としての役目を果たしはじめようとしている。



あとがき
「谷間に三つの鐘が鳴る」という歌があります。
ひとりの人間の人生を、生れたとき、結婚したとき、この世を去るときと、三つの鐘で表現した歌です。
素晴らしい歌とは似ても似つかない、どうにも罪深い鐘の音が、この街では絶えず聞かれるようですね。

美姉妹の葛藤を描いた前作を受けて、この三部作では妹娘の婚約者の変貌を描いてみました。
第一話では貴志の妹が添え物のように犯され、
第二話では貴志が女子生徒として犯され、
第三話では貴志の母が入学式のスーツ姿で犯されていきます。
母や妹、婚約者を寝取られてしまうことは、自身の初体験と同じくらい、深い意味をもっていると思われます。

三つの鐘 ~セーラー服の初体験~

2019年01月19日(Sat) 06:30:03

ボーン。

岩瀬家の古びた柱時計が、一時を告げた。
稚ない唇が、昂ぶりを帯びた股間の茎を、いっしんに咥え込んでいた。
たどたどしい舐めかたが、貴志を陶酔のるつぼに導いている。
その目線の先で、制服姿の遥希が、嘉藤に抱きすくめられていた。
遥希の制服は、都会らしいブレザータイプ。
薄茶のジャケットに赤のチェック柄のプリーツスカートをミニ丈に穿きこなして、
品行方正な白のハイソックスが、淫らな足摺りに翻弄されて半ばずり落ちたままふくらはぎを包んでいた。

「姉さんのときと、どっちが昂奮するの?」
自分の股間から顔をあげた上目遣いに、かすかな嫉妬が込められている。
結婚を約束した二人の間に、セックスの関係はまだない。
それはまだ、父親の同僚である嘉藤の特権であり続けていた。
フェラチオを覚えて間もないゆう紀の唇は柔らかで、生真面目なたんねんさで、恋人の一物をくまなくしゃぶり抜いてゆく。
同じ行為でも、姉の遥希とはだいぶ違っていた。
ゆう紀が抱かれている隣の部屋で遥希が貴志を慰めるときは、もっと挑発的な、なれたやり口だった。

自分の家にやってくる嘉藤は、出迎えた父親とはごくふつうに接していた。
そのなに食わぬ態度にむしろ、悪らつさを感じ取った貴志は、彼の態度に敏感になっていて、
父親が座をはずしたときに嘉藤が、母や妹をいやらしい目で盗み見るのを見逃さなかった。
まるで身体の輪郭を撫でまわすような目つきだと、貴志はおもった。
そのうち妹はすでに、両親の知らないところで、嘉藤の奴隷になり下がっている。
婚約者のゆう紀と交代でその嘉藤の家に妹を伴うという屈辱的な義務を、
それでも貴志は自分でも訝るほどの従順さで、果たしていった。
いびつな嫉妬が、この青年の感性を、鋭く育て上げようとしていた。

ソファに腰かけた貴志の前、ゆう紀はセーラー服姿のまま、姉との情事に見入る未来の夫を、唇で慰めつづける。
じゅうたんの上に拡がった、丈の長い濃紺のプリーツスカートに、貴志の目線が注がれた。
腰周りにまといつくスカートの、折り目正しい直線的なひだが、複雑に折れ曲がっているのを、薄ぼんやりと眺めていた。
「ぼくも穿いてみたいな」
「え・・・?」
顔をあげるゆう紀に、貴志がいった。
「ぼく、そのうちあのひとに、血を吸われるんだろ?」

そうね。吸われると思うわ。
嘉藤の小父さまは、父の血も吸っているの。
男の血はあまり関心がないって、口では言っているけれど。
奥さんや彼女を自分に捧げた男性の血は尊いって、いつか言っていたわ。
あなたの血にも、きっと興味あるはず。

「あなたの血にも、きっと興味がある」
ゆう紀の言いぐさに貴志はゾクッとした昂ぶりを覚え、その昂ぶりは股間を口に含んだゆう紀に直接伝わった。
「吸われてみたい?嘉藤の小父さまに」
「うん、それも、いいかも・・・」
「貴志くんも、やらしいね」
ゆう紀はクスッと笑った。
白い歯をみせて笑う白い顔はどこまでも無邪気で、まだなにも識らない十代の少女にしかみえない。
「ぼくも穿いてみたいって、なにを穿いてみたいの?」
「制服のスカート」
口にしてしまった言葉の異常さに、さすがに貴志は顔を赤らめたけど、
ゆう紀はまじめな顔をして、貴志を見つめつづける。
「ねえ、それって、私の制服?それとも、姉の着てるほう?」
はるちゃんの制服、かっこいいものね・・・と言いかけた言葉の裏にかすかに秘められた嫉妬に、貴志はうかつにも気づかなかったけれど。
彼は呼気をはやめながら、思ったままを口にしていた。
「きみの制服を、着てみたい」

貴志よりも少しばかり小柄だったゆう紀のセーラー服は、サイズがちょっとだけきつめだった。
それでも白のラインが三本走った袖は、貴志の手首を何とか隠していたし、
腰周りにギュッと食い込むスカートのウエストは、かえって少年の昂ぶりを高めた。
「制服は拘束具」だというけれど、貴志は別の意味でそうなのだと納得した。
腰の周りをユサユサと揺れる重たい濃紺のプリーツスカートは、ひざの下から入り込んでくる外気の空々しさには無防備で、
スカートの下でむき出しになった太ももを、ひんやりと撫でつける。
ひざ下までぴっちりと引き伸ばした真っ白なハイソックスの締めつける感覚にも、青年の皮膚を敏感になっていた。

「あの・・・」
女子生徒のかっこうになって嘉藤のまえに改めて立ったとき、貴志は心のなかが入れ替わるのを感じた。
身に着けたセーラー服が、彼を少女へと、塗り替えてゆく。
「恥ずかしい」
伏し目になった顔だちすらが、女の子の翳を帯びていた。
「似合っているよ、きみ」
嘉藤はそういうと、じゅうたんのうえにあお向けになった貴志の上に、荒い息でのしかかった。
セーラー服の肩をつかまれ、上衣の裾をまくり上げられ、胸を指でまさぐられる。
ゆう紀や遥希の胸をなん度もさ迷った手つきの巧みさに、貴志はわななきをおぼえた。
むき出しになった嘉藤の筋肉質で毛むくじゃらの脚が、重たい丈長のプリーツスカートを、じょじょにたくし上げてゆく。
嘉藤の荒い息に、貴志のはずんだ息遣いが重なった。
ふたりは、唇を重ね合わせていた。
ゆう紀や遥希、それに妹の彩音の素肌を這った唇――
その事実に慄然としながらも、貴志は行為をやめることができなくなった。
初体験のキスの相手が男だなどとは夢想もしていなかったけれど。
しつこく重ねられてくる爛れた唇のせめぎ合いに、なん度もなん度も、応えてしまっていた。

首すじに喰いついた牙が、自分の血を啜り上げるのを聞きながら。
股間から伸びたもうひとつの牙が、自分の股間を抉るのを感じた。
ゆう紀さんが夢中になってしまったのも、無理はない――貴志は思った。
これからもきっと末永く、ゆう紀さんはこの一物に、自分の操を蹂躙されつづけてしまうのだろう。
そして自分も、ゆう紀さんの結婚前の身体を、この男の劣情を慰めるために、悦んで与えつづけてしまうのだろう。
そして自分自身さえも、この男の情婦に堕とされて・・・女として犯されつづけてしまうのだろう。
両親がいまのこの光景を視たらどう思うのか?それは怖かったので、考えないことにした。
いまはただ、婚約者やその姉、そして彼の妹までも呑み込んだこの男の唇に、酔い痴れ続けてしまいたかった。

「母がいまいる街ではね、男子もセーラー服で通学できるんだよ」
ゆう紀がいけないことを、ささやいていた。
「ね。あたしたちも、あの街へ行こう。そして貴志くんも、女子生徒になっていっしょに学校に行こうよ」
ゆう紀のいけない囁きに、貴志は強く頷いていた。
「そうだね、ぼくもきみと同じ制服を着て、学校に行きたい」
「嬉しい!たまには気分を変えて、お姉ちゃんの制服を着ても良いからね」
いろんなことを見透かしてしまった悧巧すぎる少女の目は、それでも無邪気な輝きを失わなかった。

三つの鐘 ~少女たちの愉悦~

2019年01月19日(Sat) 05:45:16

ボーン。
岩瀬家の古めかしい柱時計が、一時を告げた。
貴志は蒼ざめた目線を、一瞬柱時計に注いだが、すぐに目線を元に戻した。
半開きになったふすまの向こう。
まだ稚ない婚約者のゆう紀が、セーラー服姿で、嘉藤に侵されていた。
これでもう、なん回目になるだろう?
すでにゆう紀は、貴志が覗いて昂っていることも、識っている。
それだというのに今は、結婚前にしてはならないことをしているところを、
未来の花婿に見せつけることに、快感を覚え始めてしまっている。

ねえ、貴志くんが見やすいように、ふすま開けておこうよ♪
そう提案したのは、ゆう紀の姉の遥希(はるき)だった。
初めて視られていると気づいたとき、さすがにゆう紀はハッと息をのんで、
両手に口を当てて貴志をまともに見つめていた。
「たっ・・・貴志くん?視ていたのっ!?」
震えて引きつった声が貴志を突き刺したとき、
まるで悪いことをしているのは自分のような気がして、貴志は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「いいじゃない、いいじゃない。貴志くんも愉しんでいるんだから――ふたり、お似合いのカップルよ」
貴志と自分との仲を姉が内心嫉妬していることに気づいていた妹は、
姉の言葉の真意をはかりかねて、それ以上に自分の過ちが招いてしまった状況のきわどさにうろたえてしまって、
なにをどう言っていいのか、わからないようすだった。
「ねえ、もう少しだけ、続けてみましょうよ。もうじき、煙草を買いに行った小父さまが戻っていらっしゃるから。
 そうしたらゆうちゃんは、小父さまをもういちど、満足させて差し上げるのよ」
貴志がゆう紀に向かって、ヘドモドと意味不明なお辞儀だけ残して隣室に戻ったのを見はからうと、姉はつづけた。
「貴志くん、けっこう愉しんでいるわよ。だから――ゆうちゃんも、もっと愉しんじゃおうよ」
状況を愉しんでしまっているらしい姉に、自分に対する揶揄が込められていないのを感じ取ったゆう紀は、
「そうするのがあなたの義務でしょ?」
と促す姉に、こんどはしっかりと頷きかえしていた。

再び戻って来た吸血鬼がゆう紀にのしかかるところをかいま見ながら、貴志は不覚にも股間を昂らせてしまい、
その昂った股間に、遥希の掌が、なだめるようにあてがわれた。
さいしょはズボンのうえからの愛撫だったのが、じょじょに大胆になって、
荒々しくジッパーをおろすとパンツのすき間から覗いた一物を揉みしだき、
さいごには唇を覆いかぶせて、噴き出す熱情のほとびを、慣れた口づかいで呑み込んでいった。

柱時計が真っ昼間の一時を告げたとき。
遥希はいつもそうするように、妹が犯されるのを視て昂っている貴志の股間を弄んでいた。
いつもとちょっとだけ状況が違うのは、傍らに少女がもう一人、あお向けに横たわっていることだった。
おさげ髪をじゅうたんの上に振り乱して、天井を仰いだ目は生気を失い、
それでもまだ意識がかすかに残っているのは、セイセイとせわしなく上下する細い肩からそれとわかった。
貴志の妹だった。
ゆう紀とは同級生で、なにも知らずに岩瀬家を訪れて、兄の目のまえで襲われて血を吸い取られた後だった。
おさげ髪を揺らしながらうろたえる少女の頭をつかまえて、嘉藤は獣じみた荒々しさで、そのうなじにガブリと喰いついた。
ふだん顔を合わせている同僚の娘に対する態度とはかけ離れたやり口に、
貴志の妹は目を回し、われを忘れた。
ゴクゴクと喉を鳴らしてうら若い血液を貪る男の意のままに、胸を揉まれ、股間をまさぐられながら、失神していったのだ。

美しい妹をきょうのご馳走の添え物のようにあしらわれたことに、貴志はマゾの血をよけいに昂らせてしまった。
「彩音ちゃん、だったよね?」
吸い取ったばかりの妹の血を口許からしたたらせながら、父親の同僚である嘉藤さんがかけた声に素直に肯くと、
「彩音です、よろしくお願いします」
と、神妙に頭を下げていた。

「良いのかしら?あんなに熱っぽくやっちゃって」
冷ややかに透きとおる遥希の声に、貴志はゾクッとした。
目のまえでは婚約者が、姦りまくられている。
そして、同じ危難に、妹までが巻き込まれようとしている。
もう少し大人になれば、もっと素敵な同年代の彼氏に恵まれるかもしれないか細い身体が、
父親よりも年上の男に汚されてしまうと知りながら、もうどうすることもできずにいたし、
妹の純潔が嫌らしい親父のひとときの性欲を解消するために蹂躙されてしまうという状況に、
身体じゅうの血管をズキズキとはずませながら昂りはじめてしまっている。

「よかったの?お兄さん?」
男の猿臂から解放されたゆう紀は、イタズラっぽい上目遣いで、恋人を見あげた。
「あ、ああ・・・うん・・・」
貴志の受け答えは相変わらずはっきりとしなかったが、真意は明確なのを、ゆう紀は見抜いてしまっている。

目のまえで、白いハイソックスを履いた妹のふくらはぎに、淫らな唇が吸いつけられる。
ふたたびの出血に真っ白なハイソックスを真っ赤に濡らしながら喘ぎはじめた妹の目が愉悦に狂い始めているのを、兄は見逃さなかった。

ゆう紀の手でズボンを脱がされるままに脱がされて、なん度めかの絶頂に近づいた股間の昂ぶりを、稚ない唇が包み込んでゆく。
姉を見習って、まだ不慣れな手つきがもどかしそうに、恋人の股間をつかまえた。
その手つきのもどかしさが、貴志をいっそう深い惑溺へと導いていった――

征服された妹娘

2019年01月17日(Thu) 07:18:21

お母さまはね、前に住んでいた街で恋をしたの。
お父さまは優しい人だから、お母さまがそのひとの恋人になるのを承知なさったの。
男の人がほんとうに女のひとを好きになると――
そのひとの裏切りすら、愛することができるようになるんだって。
信じるか信じないかは・・・・・・あなた次第ね。

姉の遥希(はるき)の口許からつむぎ出される、まるで呪文のようなひとり言。
妹のゆう紀は、聞くともなしに聞き入っていた。


お母さま、行っちゃったわよ。あたしたちを置いて。好きな人の棲む街に。
突き放すようにうそぶく姉の横顔を、ゆう紀はじっと見つめていた。
広いおでこの生え際を見せびらかすように、思いきりよく引っ詰めたロングヘア。
さらりと背中に流したその黒髪のすき間から、白い首すじが、これまた見せびらかすようにあらわになっていて、
その肌の白さの真ん中に、赤黒いシミのようなものがふたつ、数センチのへだたりをもって、肌の白さを翳らせていた。
「お怪我をしたの、お姉さま?」
ゆう紀の問いに遥希は薄っすらとほほ笑んでこたえた。
「怪我?・・・そうね、女の子は大人になるとき、怪我をするものなのよ」
あなたはまだ、なにも知らないのね・・・?
姉にそう指摘されたような気がして、ゆう紀はきまり悪そうに黙りこくった。

お母さまに手を出した人ね、お母さまの本命になれなかったの。
その人に悪いことをしたわ、つぐないたいのって、お母さまが仰るものだから。
だからあたしはその人に、初めての経験を差し上げたの。
あなた、あたしを悪いお姉ちゃんだと思う?
それともあなたも、あたしと同じ経験をしたいと思う?
え・・・いいの?
だってあなた、あなたには貴志くんって人がいるんでしょう?

長女の遥希には、まだ結婚を意識した相手はいなかった。
惣領娘(男兄弟のいない長女のこと)なのだから、お前は少し待ちなさい、と、父親からはいわれていた。
そして、次女のゆう紀のほうが先に、結婚相手が決まっていた。
まだ十代同士の婚約に、周囲はあまりの若さに驚いたけれど。
あの街ではこれがふつうなんですよという娘の父親の言いぐさに、同じ勤め先を持つ者たちは、無言の納得を示していた。

さいしょのときはね、お姉ちゃんが手を握っててあげる。
少しばかり痛いけど、声を出すのはガマンするんだよ。
あの人ったらね、痛そうに顔をしかめる女の子が、白い歯をみせるのが好きなの。


結婚してから夫となった人とだけすると聞いていた、あの行為。
恋人同士なら、ほかの人としてもかまわないのよ、とお母さまが囁いた、あの行為。
それをあたしは、結婚前に遂げようとしている。
相手の男が家に姿をみせたそのときになって、ゆう紀は初めて、身震いを覚えた。
いけないことをしてしまうという罪悪感と。
お母さまとお姉さまだけが知っていて、自分だけがまだ知らない未知の領域に足を踏み入れることへの好奇心と。
いったいどちらが、まさっていたのだろう?
そして意図的に顔をそむけた側には、婚約者である貴志への後ろめたさもまた、意識するまいとしても意識してしまっている。

「いいのかな?ほんとうに、いいのかな?」
姉に対する問いは、自分に対する問いでもあった。
けれどももはや、ゆう紀の純潔の行き先は、姉によって決められてしまっていた。
「もうここまできて、そんなことは言いっこなしよ。あたしが体験した男の人を、あなたも体験するの。
 お嫌?」
そこまで言われてしまっては、大人しい性格のゆう紀はもう、がんじがらめになってしまうのだった。

怖がらないでいいのよ。
お姉ちゃんが、手を握っててあげるから。
少しばかり痛くても、声をあげちゃダメ。
ご近所に、筒抜けになってしまうわ。あの家の娘はだらしがないって。
だから、あなたが声をあげないことは、家の名誉を守ることになるの。
――いいわね・・・?がまん。ガ、マ、ン。

のしかかってくる、自分の父親よりも年上の男をまえに、ゆう紀は悲壮な顔つきで、その刻を迎えた。
握り返してくる掌の力が痛いほどギュッとこもるのを感じて、姉娘は白い歯をみせる。
同級生のたか子ちゃんやみずきちゃんのときも、こんなだった。
あたし、痛いのって、好き・・・。
父親の上司だというその男が、目のまえで妹を汚すのを。
そしてその男の思惑どおり、妹が痛さのあまり白い歯をみせるのを。
姉娘は満足そうに見届けた。


どお?よかった?
いいのよあたしは。さいしょの刻だもの。ふたりきりにしてあげなくちゃ。
遥希の白い目線の先にいる少年は、
隣室で自分の父親よりも年上の男と息をはずませ合っている婚約者の横顔に、
目線をくぎ付けにしてしまってしている。
その頬が紅潮して、昂ぶりを見せていることに、遥希は自分の見通しが正しかったことへの満足感をおぼえていた。

ほんとうなんだね。男の人が女の子をほんとうに好きになると、その子の裏切りまで悦んじゃうって。
ふつうの女の子は、結婚前にこういうことをするのを、自分の結婚相手には見せたりしないものよ。
でもあなたは特別。
だから、きょうのパーティーに、あの子には内緒で、招待してあげたの。
あの子の処女喪失、あなたも祝ってくださるわよね?
うんうん、もう夢中で、彼女のお姉さんの声なんて聞こえてないっていうことね?

代わりにあたしのことを抱く・・・?って訊こうとして。
少女はそれを思いとどまる。こたえが想像できてしまったから。
どこまでいっても、私はわき役?
自分よりも先に結婚相手を得た妹への嫉妬を認めるのが怖くて、少女は口をつぐみ、目を背けそうになる。
その場を離れようとした遥希の掌を、強い力がギュッと抑えた。
貴志の掌だった。

ほら、お姉さん、視て御覧。せっかくの妹のあで姿なんだから。
示された指先のむこう、通学用のハイソックスだけを身に着けて全裸に剥かれたゆう紀が、
男と抱き合ったまま激しく腰を振って、息せき切ってその吶喊を受け容れている。
自分自身の初めての刻を思い出し、姉は顔を赤らめた。
ゆう紀さん、とってもきれいだね。ぼくはゆう紀さんのこと、惚れ直した。
ぼくが視に来たことは、ゆう紀さんには内緒にしておいてくださいね。
よかったらこれからも、パーティーに招待してくださいね。もちろん、時々でかまわないから。
ぼく・・・ゆう紀さんと結婚してからも、こういうパーティーを許してしまうかもしれないですね。
男として恥ずかしいけれど。

恍惚とした少年の横顔に引き込まれるように、遥希は少年の掌に、自分の掌を重ね合わせて、ささやき返す。
――ほんとう、ゆう紀の晴れ姿、とってもきれいだね。かわいいね。


あとがき
前作はあれでおしまいのつもりだったのですが、愛読者のゆいさんのリクエストを受けて初めて、インスピレーションが湧きました。
父親の上司を相手に処女を喪った姉が、妹も同じ運命に巻き込もうとするお話です。
自分よりも先に婚約者を得た妹や、自分たちを置いて恋人の元に走った母親への複雑な気持ちを描いてみました。
妹の初体験を一緒に目にした妹の彼氏に、彼女は父親をみていたのかもしれませんね。

ブログ拍手♪

2019年01月16日(Wed) 23:56:56

ちょっとこちらから目を話しているあいだに、ちょっと前に14もの拍手を頂戴しました。
とても嬉しかったです。(#^^#)
たぶん、以前から目を通しておられたものに、まとめて印をつけられたのかな?と想像していますが、
テーマ的にかなりはっきりとした共通性がみられ、少しずきッときました。
カテゴリは「少年のころ」が多いのですが、ほとんどがハイソックスのお話なんです。
私のなかでもいくつか気に入っているお話がありますので、少しだけ紹介してみます。

「スポーツハイソの時代」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3015.html
同じクラブに所属する男子数名が、色とりどりのライン入りハイソックスの脚を並べて、
学校に出没する吸血鬼に咬ませてゆくお話です。
個人的に気に入っているのは、キャプテンが堕ちてからその風潮が部員たちの間により素早く浸透するようになったというくだり。

さいごに大人になってからの主人公が、若い声たちが行き交う体育館を眺めて回想にふけるシーンがあります。
何気なく描いたのですが、いまでも記憶に残っています。


「デニムの半ズボンに、スポーツ用ストッキング」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2505.html
自宅に侵入してきた吸血鬼に、「あいにくだけどこの家には女の子がいないんだ」と言いながら、すすんで血を吸わせようとする少年。
強いられているはずの吸血を、むしろ自分を襲っているやつよりも愉しんじゃっている感じが漂います。
このお話、拍手の少ない当サイトにありながら、じつに11もの拍手をいただいています。


「少年少女のハイソックス」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2472.html
吸血鬼を歓迎する学校に行った主人公が、あてがわれた教室にいた男女の生徒たちの色とりどりのハイソックスの脚を狙うお話です。
男の子が女子と同じようにハイソックスを履いていたのは、じっさいには1970年代ころのことですから、いまとなっては大昔のことですね。
時折ネットを見ていると、ごくまれにですが当時の画像に出くわします。
男の子たちが、女子が履くようなライン入りのハイソックスを堂々と履きこなしている時代。
ついこの間のようでありながら、遠い昔の別世界です。


「素っ裸に、ハイソックス」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2342.html
生き血を吸い取られ、妻や娘までモノにされてしまった男が、吸血鬼になって、別の家に侵入して、
その家の夫をたぶらかし、妻や娘も餌食にする・・・限りなく続いてゆく食物連鎖。


「少女の履く、白のハイソックス~入学式帰り~」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2295.html
「もしもママの血で、足りなかったら。真由香の血を吸っても、いいからね。」
目のまえで母親の生き血を吸っている吸血鬼にそんなふうに声をかけてしまう、心優しい少女のお話。


「初体験のハイソックス 初体験の黒ストッキング」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2266.html
十三夜かけて、家族全員の生き血を吸い取ってしまうという残忍な吸血鬼。
けれどもその家の少女は彼に心優しく接して、家族はだれひとり血が尽きることがなかった――そんなお話です。


14のお話は、古いものでは2010年のものまであります。
ほとんどがハイソックスもの、カテゴリでいうと「少年のころ」にあたります。
いずれもが、昭和の香りがほんのり漂うお話です。
おひまなかたは、ひととき御覧になっていってくださいね。
(^_-)-☆

「逆」単身赴任――街の体験を再現する夫たち

2019年01月06日(Sun) 09:26:25

「オ、岩瀬くんか。久しぶりだね」
E市の事務所に着任すると、真っ先に声をかけてきたのは嘉藤だった。
「あ、どうもお久しぶりです。お元気そうですね」
ありきたりの返事を返す岩瀬に、嘉藤は周囲に聞こえないように耳打ちをした。
「前任地での出来事を会社で話すのは、ご法度だからな」
わかってますよ・・・と、岩瀬は苦笑いしながら応じた。

お互いにとって前任地は、夫婦の歴史を塗り替える場所だった。
吸血鬼の棲む街に赴任させられたものたちは、夫人の帯同が義務づけられていた。
当地での業務はほとんどなく、夫たちは労せずして高給を手にすることができた。
その代わり、同伴した妻や娘たちは、その地に棲む吸血鬼の毒牙にかかり、彼らの愛人に加えられていったのだ。

岩瀬の赴任は、嘉藤よりだいぶあとだった。
都会で借財を重ね、その追求から逃れるためにこの会社に入社し、吸血村への赴任を希望した。
妻も同意の上だった。
妻を吸血鬼に襲われて犯されてしまうのは、もちろん歓迎すべからざる境遇であったけれど、
もはや岩瀬にそれ以外の選択肢は残されていなかったのだ。
先輩にあたる嘉藤もきっと、なにか都会にいられない事情を抱えた立場だったのだろう。
借金は会社が肩代わりして返済してくれたので、このほど晴れて都会住まいを再開することのできた岩瀬だったが、
はたして嘉藤はどうなのだろうか。

嘉藤はその美しい熟妻を、あの街に残してきていた。
7人もいるという愛人たちが、嘉藤夫人との別離を惜しみ、嘉藤が彼らの思いに好意的に応えた――ときいていた。
いまでも嘉藤は週末ごとにあの街に戻っていたが、「2回に1回は見守り係さ」と、苦笑いしながら告白した。
帰宅した夫は、吸血鬼どもが自分に代わり妻とくり広げる熱々のラブ・シーンをたっぷり見せつけられてひと晩を過ごすのだという。
「いい齢をして男を7人も作りやがって」
嘉藤は心許した岩瀬にそう毒づいたが、
「俺の女房は魅力的だから、男が7人もいるんだぜ」
と、自慢しているようにさえ岩瀬の耳に響いた。

岩瀬の妻、紗栄子もまた、街に棲みついてすぐ、吸血鬼の来訪を受けていた。
出勤していった後の岩瀬家は、ほかの都会住まいだったサラリーマンの家庭同様、吸血鬼のハーレムと化していた。
ひとりの吸血鬼だけに奉仕することが決まった人妻以外は、月に1回、「ご開帳」と呼ばれる儀式を体験した。
その晩は、どこのだれが通ってきても受け容れるという儀式で、それをきっかけに愛人を増やす人妻も多かった。
すでに吸血鬼に妻を寝取られた夫たちにも、「ご開帳」への参加は許されていたから、
そういう夜に夫たちは、来訪する男どもの行列のなかに、勤め先の同僚の姿を見出すことも珍しくなかった。
「あいつ、うちの女房に関心あったんだな」
そんな新たな”発見”が、翌日からの夫たちの関係を変えた。
それまで高飛車な態度だった上役が、妻を抱いた若い部下に和やかに接するようになったり。
同僚どうしで公然と妻を交換し合ったり。
いちど抱いた若い部下の奥さんが忘れられなくなって、そんな上司の想いを察した部下が家に夕食に誘ったり。
奇妙なことに、妻を共有した経験をきっかけに、関係が良くなるのがつねだった。
岩瀬の妻である紗栄子と嘉藤の関係もそうだった。
自室で仰のけられた妻の裸体に覆いかぶさろうとする嘉藤は、岩瀬と目が合うときまり悪げに笑った。
けれども、そのあとの行為はどの男のそれよりも激しかった。
愛妻のうえにのしかかる上司。息をはずませてそれに応じる紗栄子。
ふたりの組み合わせに、岩瀬は不覚にも射精をこらえきることができなかった。
以来嘉藤は、岩瀬家に足しげく通うようになった。
「うちにお客が来ていてね」
それが嘉藤の口癖だった。
年輩だったが評判の美人だった嘉藤の妻のもとには吸血鬼たちが足しげく通いつめて、
夫の嘉藤は彼らに遠慮をして帰宅を遅らせるのが常だったのだ。
吸血鬼に妻を犯されているあいだ、嘉藤は部下の家に招かれて、その若妻を抱きすくめる――
「まるで食物連鎖ですね」という岩瀬に、「そう言うなヨ」と嘉藤は満足げに目を細めていた。


「嘉藤さん、今夜いっしょに夕食いかがですか?妻も会いたがっていますし」
岩瀬が嘉藤にそう持ちかけたのは、再会の翌日のことだった。
「まだ引越しで落ち着かないんじゃないのか?」という嘉藤に、
「お逢いした方が気分が落ち着くと、紗栄子が言っていました」と伝えた。
嘉藤はもちろん、よろこんで応じた。
「酔いつぶそうか?それとも、ロープでぐるぐる巻きか?」
嘉藤の問いに、「ロープ、用意してあります」と応えながら、岩瀬は以前と同じ呟きを口にした――まるで食物連鎖ですよね?と。

久々に顔を合わせた岩瀬夫人の歓待に、嘉藤はしたたかに満足した。
部下を縛ってしまうと、エプロンを着けたままの紗栄子を後ろから羽交い絞めにして、吸血鬼みたいに首すじを吸った。
「あぁあ・・・っ」
紗栄子が柳眉を逆立てて、嘉藤に応じた。
初めて咬まれて以来、首すじを吸われると感じてしまうのが、紗栄子の習性になっていた。
目のまえでは、縛られた岩瀬が目を充血させてこちらを見ている。
「亭主の前で感じちゃっていいのか?」
と、紗栄子を責めながら、スカートのなかに手を入れて、秘所をグイグイとまさぐり続けた。
紗栄子の身体から力が抜けて、たたみの上にひざを突いてしまうと、力まかせに押し倒した。
パンストを半脱ぎにしたまま犯すと、岩瀬が特に昂奮するのを、嘉藤はよく心得ていた。
嘉藤の虐げるように激しいセックスに、岩瀬夫人も、岩瀬じしんも、したたかに感じつづけてしまっていた。
ここは吸血鬼のいない都会の一隅だったが、マンションの室内では、あの街と同じ光景が再現されていった。


それ以来、岩瀬夫妻と嘉藤の交流が再開した。
「今夜どう?」と嘉藤が誘うと、岩瀬は必ず応じた。
紗栄子は専業主婦だったので、いつでも都合を合せることができた。
初めての夜は娘2人の寝静まった深夜だったが、
「もう娘たちも年ごろなので、夜よりは昼間のほうが気を使わなくて良いです」
と、紗栄子は母親らしい気遣いをみせた。
嘉藤と岩瀬は業務上もコンビを組んでいたので、出張・直帰の名目で、事務所をそうそうにあとにすると、岩瀬のマンションへと直行した。
どうしても夜になるときは、あらかじめ指定したホテルに紗栄子が待っていた。
よそ行きのスーツ姿に息荒くのしかかってゆく嘉藤の背中を、岩瀬はいつも昂った眼で見つめつづけていた。


「紗栄子が、街に帰ります」
岩瀬の告白に、嘉藤は眉をあげた。
以前から紗栄子に執心だった吸血鬼が、どうしても戻ってきてほしいとラブ・コールを送って来たというのだ。
愛人の意向が夫のそれに優先するのは、つねのことだった。
そして紗栄子が一番気にかけたのは、夫のことではなく嘉藤のことだと、岩瀬は告げた。
「そう・・・それは寂しくなるね」
しんみりとなった嘉藤を慰めるように、岩瀬がいった。
「娘たちは当面、こちらに残ります。学校がありますからね。急には移れないんですよ」
街での赴任期間中、図らずも手にした高給で裕福になった岩瀬は、このマンションも持ち家になっていたし、娘たちは名門校に入学させていた。
姉妹はそれぞれ別の学校に通っていた。
上の娘はブレザーで、下の娘はセーラー服だという。
そう言えば、真昼に岩瀬のマンションで情事の真っ最中に、下の娘が急に帰ってきたことがあったのを、嘉藤は思い出した。
白と紺のセーラー服の夏服に、白のハイソックスの足許が眩しかった。
嘉藤の表情が動くのを読み取るように、岩瀬がいった。
「紗栄子の留守中は、娘たちに相手をさせます。紗栄子もそのつもりです」


岩瀬の上の娘を犯したのは、紗栄子が街に戻ったわずか一週間後のことだった。
下の娘を父親が連れ出した後、勉強を教えるという名目で姉娘の勉強部屋に入るとき、嘉藤はさすがに胸が震えた。
なにも知らない姉娘はにこやかに嘉藤を迎え入れ、机に向かう少女の傍ら、嘉藤はベッドに腰かけてよいと言われた。
折り返しのある深緑のハイソックスが、嘉藤の目を眩しく射た。
約束どおり、数学の問題を三問、解いてやった。
理系だった嘉藤には、ぞうさのないことだった。
少女は健康そうな白い歯をみせて、嘉藤にいった。
「教えてくれたお礼をしなくちゃいけませんよね?」
え?と首をかしげる嘉藤に、少女はちょっとだけ羞じらいをみせた。
「教えてくれたお礼が教えてもらうことになるって、母から聞いています」
回りくどい表現を、なんとか舌を噛まずに伝えようとする少女の口ぶりは、意図を裏切ってたどたどしかった。
「聞いているのか?」
「嘉藤の小父さんを悦ばせてあげてって・・・」
口ごもる少女を、これ以上しゃべらせるべきではないと嘉藤は感じた。
少女の手を引くと、思いのほか素直に立ち上がり、ベッドに座る嘉藤の隣に腰を下ろした。
力を込めてシーツの上に押し倒した少女の胸を、制服のブラウスの上から揉みはじめると、
彼女は、唇から生暖かい吐息を洩らした。
ピリピリと神経質にまつ毛を震わせる横顔が、紗栄子に似ていると思った。
嘉藤は少女の横顔に顔を近寄せていって、唇を奪った。
ピンク色をした唇をこじ開けて吸った少女の吐息は、唇の色と同じ色をしていると思った。
脱がされたパンツをハイソックスを履いたままの足首に絡みつかせながら、少女は初めての痛みに耐えた。
きちんとひざ下まで引き伸ばされたハイソックスが、切なげな足摺りとともに、弛んでずり落ちていった。

知っていたんです。
お父さまが小父さまを連れて帰ると夜は、いつも早くに寝かされるけど。
部屋まで聞こえてくるお母さまの声がふつうじゃなくって、怖くなって覗いちゃったんです。
お父さまが縛られているのを見て、小父さまはほんとうは強盗なの?って思いました。
仲良しの小父さまにだまされて、お父さまは縛られお母さまは襲われているのかな?って思いました。
でも小父さまとお母さまとは、息がすごく合っているような気がしました。
それからお母さまにお父さまから電話がかかって来て、どこかに呼ばれていくのを何度も見ました。
そのたびにお母さまは綺麗なお洋服でおめかしをして、あたしたちを残してウキウキと出かけていきました。
なにか楽しいことがあるのだろうか?と思っていたら、夜遅く帰って来たお母さまのストッキングが破けていました。
よく見ると、髪もちょっと乱れていて、ブラウスは着崩れていました。
あれはぜんぶ、小父さまの仕業だったんですね?

妹にも手を出すんですか?
良いですよ、あたしお姉さんだから、妹が怖がらないよう手引きしてあげます。
出来るお手伝いがあったら、いつでも申しつけてくださいね・・・

たどたどしく洩れる声色のすべてを聞き取ると、嘉藤は再び欲情を覚えて、
制服のスカートの奥にもういちど、強く逆立った一物を突き立てていった。
少女は目をキュッと瞑り、のけぞりながら歯を食いしばった。
声を洩らすまいとしているのがわかったから、声をあげるまで犯しつづけた。
「ァ・・・」
思わず洩らした小声に悔しそうな顔をする少女に、「声、あげたね?」と囁くと、
「イヤだ、小父さま・・・」と目をむいた。
抗議をしようとする口許を、唇を圧しつけて塞いでやると、少女は初めて、応えてきた。

岩瀬が再び街への転勤の辞令をもらったとき、嘉藤も同時に街に戻っていた。
嘉藤の妻の和香子は、すでに特定の彼氏を作っていたが、
今後も彼氏の来訪を自由に認めるという条件で、夫との同居を受け容れた。
なん人もの男たちとの交流を経て、性格もセックスもいちばん相性の良い一人を決めたのだ。
もっとも浮気性な和香子は、かつての恋人たちとも、時折夜を共にするので、
嘉藤は妻の多忙な日常に、再び振り回されるようになっていた。
和香子が自宅で彼氏といっしょに過ごす日は、嘉藤は自宅を明け渡して、岩瀬の家を訪ねた。
岩瀬の妻の紗栄子も多忙な日常を再開させていたので、いつも逢えるとは限らなかったが、
姉娘につづいて妹娘も犯していた嘉藤が、女に不自由することはなかった。
岩瀬はいつも、妻の情事に同行をさせられていた。
送り迎えはもちろん、吸血鬼の毒牙にかかる妻のありさまを見せつけられるという大任を仰せつかることもしばしばだった。

街を経験した夫たちは、他所の土地に赴任しても街の世界を再現してお互いの妻をむさぼり合い、
街に戻って来たあともまた、犯し犯される日常を愉しみつづけていった。

「逆」単身赴任。

2019年01月06日(Sun) 08:06:46

夫が出勤の用意をしているすぐそばで、嘉藤和香子は受話器を片手に自慢のロングヘアをブラッシングしていた。
「ええいいわ。9時にホテル松ね?間に合うように行く。
 あっ、でも喉渇いてる?吸血のほうは手かげんしてほしいの。
 夕方ね、べつの方と先約があるから・・・」
和香子が受話器を置くと、入れ違いのように嘉藤がネクタイをいじりながらリビングに戻って来た。
「うまく締められない」
和香子は「はいはい」と言って夫に寄り添うと、器用な手つきでネクタイを直してやった。
ネクタイを直されながら嘉藤は、
「おれ、今夜は帰り遅いほうがいいの?」
と、訊いた。
「貴方さえ気にならないのなら、いつ戻って来てもいいわ」
「ん、わかった」

午後2時――
「これでよしと。じゃあねえ♪」
和香子はまだベッドにいる愛人に向かって小手をかざし、おどけた様子でその手を振った。
身づくろいはきっちりできていたが、首すじを咬まれた痕は淡い血潮をまだあやしていたし、
男の手で脱がされたストッキングはふやけたようになって、ベッドの端からじゅうたんに垂れていた。
「ストッキングはおみや(お土産)。好きにしてね」
犯した女の脚からストッキングを脱がしてせしめるのが、この情夫のくせだった。
部屋を出る間際、和香子の携帯が鳴った。
「はい?」と応える和香子の声と入れ違いに、嘉藤の声がひびいた。
「あ・・・だいじょうぶかな・・・と思って」
和香子は内心チッと舌打ちをすると、いった。
「お洋服は平気。ストッキング破られただけ。ホテルのベッドで、8回したわよ」
サバサバと言い捨てると、一方的に携帯を切った。

午後4時。
家のインターホンが鳴った。
「早いわねぇ・・・」
和香子はぶつぶつ言いながら、出た。
そして、玄関の前に立った男がだれなのかを確認すると、
「はーい、もうちょっと待ってぇ。あなたのために目下、絶賛お着替え中♪」
そういって、一方的にインターホンを切った。
約束は、5時だった。
でも女は表に待つべつの情夫を、インターホンの鳴った20分後には入れてやった。

午後7時半。
近くのパチンコ屋で時間をつぶすつもりが、玉の出が悪くて中途半端な帰宅になってしまった。
この刻限だと、妻のいる家にはまだ、男がいるかもしれない。もういないかもしれない。
約束は5時だと言っていたから、2時間もあれば妻の生き血も身体も、侵入者はじゅうぶんにたんのうした後だろう。
この街で、吸血鬼が人妻のもとに通うということは珍しい出来事ではなかったし、
それを承知で当地に赴任を決めたのは嘉藤自身だったから、
ふたりきりでいる時間を長くしてやるのも夫の務めだと考えていた。

都会妻は特に人気があって、同じ事務所に赴任してきた同僚のほとんどすべては、妻を吸血鬼に寝取られていた。
吸血行為を伴う逢瀬だから、毎日というわけにはいかなかった。
多い人で週2か週3が限度だった。
ひとりの相手に忠実に尽す人妻もいれば、なん人もの吸血鬼を情夫にもつツワモノもいた。
和香子の場合は後者だった。
そもそものなれ初めが、赴任直後に開かれた歓迎会が、そのまま乱交パーティーに移行したのだ。
目のまえで輪姦される妻が随喜の声をあげるのを、嘉藤は半ば絶望を感じ、半ば安堵を覚えながら見守りつづけた。

浮気妻に気を使って帰宅を遅らす自分を卑屈だと、年老いた母にはよく詰られた。
しかし、息子夫婦を詰問に訪れた母は嫁の情夫のひとりと出くわし、返り討ちに遭うように血を吸われた。
人妻の血を吸うと例外なく濡れ場をともにするのが彼らのしきたりだったから、
嘉藤の母も例外なく、そのようにあしらわれた。
以来母は嫁の不倫を憤ることをやめて、どうやって父を説得したものか、息子の赴任先に着飾って訪れるようになった。

恐る恐るドアを開けた自宅は、真っ暗だった。
嘉藤はああやっぱり、と、ため息をついた。
まだ帰って来るべきではなかったと思った。
それでも玄関を施錠し、靴を脱ぎ、身体が意思を喪って動くかのように、夫婦の寝室の前にたどり着いた。
「あぅあぅあぅあぅ・・・」
部屋のなかからは、妻があげる露骨なうめき声が洩れてきた。
昼間に咬まれたのとは反対側の首すじから血をしたたらせ、それを夫婦のベッドのシーツにぽたぽたと散らしながら。
真っ赤なスリップ一枚に剥かれた妻は、血色のわるい皮膚をした男と抱き合っていた。
むっちりとした太ももが、かすかな灯りを受けて白く輝き、夫の目にもなまめかしい。
吊り紐が外れかかってしわくちゃになった真っ赤なスリップが、妻がふしだらに堕ちていったことを物語っていた。

午後10時半。
「すこし、弱くなったんじゃない?」
ベッドから身を起こして、和香子がいった。
シーツを取り替えた後、やっと自分のものになった夫婦のベッドに身を横たえると、
嘉藤は獣のように妻を襲っていた。
妻の情事を目にすると、不覚にも劣情がむらむらと沸き起こり、情夫がベッドを離れると、つかみかかるように妻を押し倒すのがつねだった。
さいしょのうちはねちねちと妻を責めながら、軽く数時間は行為を続け、「まるで新婚のころみたい」と妻に言わしめた嘉藤だったが、
さすがに五十の坂を越えると、あちらのほうもさほどお盛んではなくなったらしい。
そのことと妻への愛情とは、また別次元の問題だったが――

先刻、部屋を出てくる情夫とはち合わせになると、
「ゥ・・・お邪魔しました」「いえ・・・どうも」と、男ふたりはきまり悪げにあいさつを交わし、
そのようすを和香子は面白そうに見ていた。
この情夫と夫とは同年輩のせいか、気が合いそうだと思った。
いちど三人でお酒を飲みましょうよという和香子の提案は、いまのところまだ一日伸ばしになっている。

「寝たばこはだめよ」
そういって和香子に取り上げられた洋モクを残り惜し気に見送りながら、嘉藤はいった。
「転勤が決まった」
「あ・・・やっぱり」
和香子はそうひとりごちると、夫にいった。
「私、この街に残るわ。お相手さんたちが悲しむもの」
「やっぱりな、そういうと思った」
「あなた単身赴任して下さい。もちろん、いつ戻って来てもいいわ。
 もともと私、平日は”アルバイト”で忙しいし、貴方も帰り遅いでしょう?
 平日にあまり会えない夫婦が、平日は全然会えなくなるだけじゃない」
「今つき合ってる人は、なん人いるの?」
夫の問いに、和香子は3人・・・4人・・・と、指折り数えて、いった。「7人よ」
一本一本折られてゆく和香子の指に嘉藤の目が吸いついてくるのを、和香子は感じた。
「7人も悲しませるわけには、いかないよなぁ・・・」
嘉藤はどこまでも、お人好しな亭主だった。

翌週、嘉藤の送別会が地元の男衆たちによって、賑々しく開かれた。
情夫たちの間をお酌して回る和香子を見ながら、俺の選択は正解だったと、嘉藤は思い込もうとした。
振る舞われた高い酒が、あと1杯で尽くされる。
こちらが地酒を飲んだのと見返りに妻を抱かれてしまうのは、歓迎会の乱パ以来のすじ書きだった。
今夜もきっと、そうなるのだろう。
一座の間から女性の姿が一人ずつ消えていき、七人の男衆はお酌をして回る和香子の立ち居振る舞いに目線をくぎ付けにしていた。
「ご主人飲んだ?そろそろいいかな?」
部屋の照明のスイッチに手をやる男衆のひとりに嘉藤が頷くと、灯りが消えた。
きゃあっ・・・
女の叫びがひと声あがり、真っ暗になった部屋は獣たちの熱気のるつぼと化していった。

世を去ったはずなのに。

2019年01月04日(Fri) 10:39:28

貴方が世を去ったあとですね、とても面白いことになっているんですよ。
ふつうの人なら目くじら立てるような話なんですが、ほかでもない話好きの貴方なら、きっと面白がると思うんですよ。
ねえ、ちょっと耳を傾けてみませんか、ちょっとだけ、ご覧になってみるのもおススメですよ。

闇の彼方から聞こえてくる声に、わたしはふと目を覚ました。
おかしいな持病が高じて寿命が尽きたはずなのに、なぜ意識があるのだろう?
目を開けると、そこは真っ白な世界だった。
白い壁に包まれた狭い部屋。わたしが数年ぶりに生き返ったのは、そんな場所だった。
果たして実在する場所かどうかもわからない。
そこでは走馬灯のように、わたしがこの世からいなくなってからの映像が、映し出されていったのだった。

息子が大学を出て就職した。
かなりの大企業だったのに、すぐに退職して地方の街に移り住んだ。
いったいどうしたことかと思えば、上司の紹介でお見合いをした相手と結婚するためだということだった。
それならなおさら会社に残るべきだったのではないか?と思ったのだが、
傍らの声がそうでもなかったのです、と、教えてくれた。
その街はその企業の創業者の故郷で、若い人が少なくなっているから、移り住んでくれる人を社内で強く募集しているのだと。
いずれにしても、息子は若くてきれいな嫁をもらって、のどかな土地で自足した生活を得たようだった。

別の声が、さらに横から口を出した。
特ダネ情報です!奥さんが再婚されます。相手は吸血鬼です。
――えっ?それって、どういうこと?

その吸血鬼氏は、息子さんのお嫁さんの彼氏です。
結婚前から彼女やそのお母さんの血を吸っていて、どちらとも初体験をしているつわものです。
――そりゃ、たしかにつわものだね。。

吸血鬼氏は婚礼の席で、奥さんを見初めてしまいました。そして、つごうのよいことに未亡人だと知ってしまったのです。
息子さんが紹介したんです。
吸血鬼氏は、着飾って婚礼に出席された新郎の母親を、ホテルの室内で強姦しました。
黒留袖の帯をほどいて、まる裸にしてひと晩じゅうやりまくったのです。
――おお!なんということだ!

ふつうの奥さんなら、そのひと晩で、ご主人との思い出を一生ぶん、きれいに忘れてしまうほど強烈なのですが、
貴方の奥さんは気丈で意志の強い人です。婦徳を辱めたことについて謝罪を求められました。
吸血鬼氏は、紳士的に振る舞いました。潔く謝罪したのです。
奥さんはその謝罪を受け入れ、血液が不足しているのであれば献血に応じてもよいと仰いました。
――すこし寛大過ぎはしまいか?

そうですね、ちょっと謝っただけでOKしてしまうなんて、やっぱりご主人のことは忘れたのかもしれません。
ですが、何度も襲われるうちにほだされてきてしまいまして、とうとう吸血鬼氏の求婚をお受けになられたのです。
おめでとうございます。
――おめでとうと言われると悪い気はしないが、ちっと情けない気もするね。

吸血鬼氏は喪服が好きで、奥さんには逢瀬の時に喪服を着てくるようにとおねだりしました。
奥さんは彼の希望を好意的にかなえてあげました。
だから奥さんが毎日喪服を着ているのは、決して貴方を弔うためばかりではなく、彼氏を悦ばせるためでもあるのですよ。
――喪服姿はたしかにわたしもそそられる。わからん気もしないではないが・・・苦笑

きょう、奥さんはいままでのお宅を出て、吸血鬼氏の棲み処に移られます。
お!でも感心ですね。ちゃんとあなたのお仏壇に、手を合わせていらっしゃる。
――律儀でまじめな女なのだよ。

妻:とうとう貴方以外の男性のところに嫁ぐことになりました。
  けれども貴方の菩提を弔うことも忘れません。その条件で、あのひとのものになることにしました。
  貴方のことを思って喪服を身に着け、あのひとを悦ばせるために脱がされてゆきます。
  どうかこの愚かな未亡人のふしだらを、許してくださいね。
――許すとも!許すとも!

妻:アラ、貴方のお写真がちょっとだけ笑ったような。
  貴方もともと助平でいらっしゃいましたからね。
  わたしたちが愛し合うところを御覧になって、悦にいっていらっしゃるかもしれませんね。
  いやらしいひと。

密会する婚約者

2019年01月04日(Fri) 10:18:48

薄茶のスカートの後ろ姿が、背すじをしゃんと伸ばして、まっすぐ前へと歩みを進めてゆく。
スカートの裾から覗く、ちょっと肉づきのよい脚は、スカートと合わせたおなじ色のパンプスが、アスファルトの路面に硬質な足音を刻んでゆく。
まるでお見合いにでも行くように、改まった服装で、しかもウキウキと。
こちらに後ろ姿をみせる穂香さんは、わたしのお見合い相手。近々婚約しようというほど、話はとんとん拍子にすすんでいた。

その穂香さんがだれかと密会している――そんなうわさを拾ってきたのは、母だった。
穂香さんの棲む街とわたしの住む街とでは、駅が三つほど離れている。
うさわなど、伝わりそうな、伝わらなさそうな、そんな距離感。
けれども、相手の男は弟さんとは別人で、ずっと年上らしいのに、身内どうぜんに打ち解けている。
なんか怪しいっていう話だよ。
母は見てきたようないいかたで、未来の息子の嫁をくさした。
案外、母自身が見たのかもしれない、と、わたしは思った。

さっそくわたしの探偵がはじまった。
さりげなく訪問を断られた土曜日の朝。
わたしはさりげなく彼女の家の近くを徘徊し、彼女が家を出るのを目にした。
彼女が家を出たのはお昼前、両親が外出した後だった。
薄茶のジャケットに白のブラウス、ジャケットと同じ色のタイトスカートに、やはり同じ色のパンプス。
決して派手めではないけれども立ち姿がひきたつのは、穂香さんの気品のゆえだろう。
足音を忍ばせてあとをつけるわたしのほうを、彼女は一度としてふり返らなかった。

意外にも。
彼女が訪れたのは、地元のホテル――ふたりがお見合いをした場所だった。
そしてさらに意外にも、そこには先に家を出た両親が、待ち受けていた。
穂香さんを迎えたご両親は、さらに別の男性を席に迎え入れ、娘の隣に座らせる。
そこはわたしの場所のはずだ!
叫びたい気持ちを、かろうじてこらえた。
四人はしばらくのあいだ、談笑していた。
ごく打ち解けた相手のようだった。

ホテルのなかにも、表通りにも人影はほとんどなく、ガラス張りのレストランの店内のようすは、
ホテルの庭園にほどよくしつらえられたベンチに腰かけたままでも、手に取るようにつぶさにうかがえた。
男性はどうやら、お母さんといっしょにレストランに入ってきたようだった。
お父さんはひとりで先着して皆を待ち、お母さんと男性、それに娘の穂香さんのために席をとり続けていたらしい。
男性がやがて、奇妙にも、お母さんの足許に身をかがめた。
恥かしがるお母さんがすくめる足許に唇を吸いつけて、足首からふくらはぎをたんねんに吸いつづけている。
よく見ると。
お母さんの穿いているストッキングはむざんに咬み破られて伝線を拡げ、ふくらはぎの輪郭から剥がれ落ちていくのだった。
彼の行為は、それだけでは終わらなかった。
つぎは、並んで腰かけている穂香さんの足許にまで、唇を吸いつけていったのだ。
穂香さんは恥ずかしそうに顔を上気させながらも、どこかウキウキとしていて、イタズラっぽい笑みさえよぎらせている。
そして、彼が本当に咬みつくと、くすぐったそうに白い歯までみせたのだ。

お父さんはどこまでも、淡々としていた。
足許を卑猥なよだれに濡らされ、ストッキングを目のまえで咬み破られるというのは、ご婦人たちにとっては恥辱であるべきなのに、
母娘とも嬉々として男にストッキングを破らせ、お父さんまでもが妻や娘に対する非礼な仕打ちを、おだやかにやり過ごしている。
レストランのなかのウェイターやウェイトレスたちも、気づいていないはずはないのに、咎めようともしていない。
わたしは、室内でくり広げられる奇妙な儀式から、目が離せなくなっていた。

やがて男は、穂香さんが笑いをおさめるのを見はからって、彼女だけを促して席を起った。
そして、ご両親にちょっとだけ会釈をすると、
まるで恋人にそうするかのように穂香さんの肩に手をかけて、レストランの出口へとエスコートしてゆく。
ご両親は鄭重に礼を返して、ふたりを見送るばかり。

いったい、彼女の婚約者はだれなのか?
怒りと混乱とで、わたしは頭のなかが昏(くら)くなった。
そして、母娘の足許からストッキングが噛み剥がれてゆく有様が、網膜から離れなくなっていた。

われにかえったときには、レストランのなかにいた。
ご両親はまるで、わたしの出現を見越していたかのようにおちついていて、わたしをふたりが腰かけていた席に促した。

ご覧になりましたね?
あのひとは、穂香と結婚することはできません。吸血鬼だからです。
彼は家内と結婚前からのご縁があって、家内に生き写しの穂香にも、ご好意を持たれたのです。
でも、吸血鬼はなん人もの女性から血をもらわなければ生きていけません。
ですから多くの場合、彼らは独身を通すのです。
そして、彼らの愛した女性は人間の男性に嫁ぎ、新しい家庭をかげながら守ろうとします。
ええ、折々若いご夫婦から血をもらいながら・・・ですが。
家内の場合もそうです。
初体験のお相手は私ではなく、さきほどの彼とでした。
以来ずっと血を吸われつづけ、私と結婚してからも、関係を続けました。
私も、そうすることを望んだからです。
初めて家内が襲われて生き血を吸い取られるところを目の当たりにしたときに、不覚にも昂奮してしまいましてね。
そういう男性は、この地では歓迎されるのです。
うちは代々、そういう関係を続けていく家柄なのです。
この街では、こんなふうに選ばれた女から生まれた長子は必ず女で、そして美しく育つ――といわれています。
家内も評判の美人でしたし、幸い娘もそうでした。
そして幸か不幸か、あなたのおめがねにとまった――
でも、逃げ出すなら今のうちです。
一切合切、吸い取られてしまいますからね・・・

わたしは躊躇なく、席を起った。
やはり行かれるのですか・・・お父さんの目が、悲しそうな色を宿したが、
わたしが穂香さんがいまいる部屋の番号を教えてほしいと告げると、表情を改めた。

さいしょの子供は、女の子がいいと思っていましたし・・・
新妻を寝取られる夫という立場も、愉しむことができるような気がしています。
お父さんと同じ立場を、引き継いでみたいと思います。
問題は、わたしの母です。
婚礼のおりにいちどだけ、彼に誘惑させてみませんか?
母も大人の女性です。それに未亡人です。
恋をしてもまだおかしくない年代だし、そうすることでどこにも迷惑は掛かりません。
父も――息子の嫁の浮気相手と母が交渉したと聞いたら、面白がるかもしれないですね・・・

母さんの帰り道

2019年01月04日(Fri) 09:42:07

あうぅぅ・・・

家の外から、うめき声がきこえた。
うめき声はどことなく陶酔を帯びていて、
しばらく切れ切れに聞こえた後、
「ひっ・・・」と声を引きつらせ、途切れてしまった。

こういうことは、この近所ではよくある。
吸血鬼の出没する森や公園やらがそこかしこにあって、
ぼくの家でも、家族全員が咬まれた経験を持っている。
それでもぼくは、声のしたほうをチラチラと落ち着きなく見やってしまった。
母さんの帰宅がまだだったからだ。
そんなぼくの様子を見た父さんは、「気にせんでええ」とみじかく言って、再び拡げていた新聞に目を落としてゆく。
ぼくはやはり落ち着かない気分を抑えることができなくなって、ジャケットを取りに部屋に戻った。

隣の部屋から姉が顔を出した。
「うめき声でしょ?」
図星を指されたぼくはちょっと悔しくなって、
「そうだけど」
と、わざとぶっきら棒にこたえた。
「行かないでいいんじゃない?」
姉はしかめ面を崩さずに、いった。
「やっぱ気になるじゃん」
「男の子ってやっぱりそうなのね」
いけすかない・・・という目でぼくを見る姉に、心外だという気持ちをこめて、こたえた。
「母さんがまだなんだ」
「知ってるわよ」
姉はどこまでも、ぼくの上手を行く。
「だから行かないほうがいいでしょって言ってるの」
無言でジャケットを羽織り背中を向けるぼくに、姉はとどめを刺すようにいった。
「行きたきゃ行ってもいいけど、もう少し間を置いてからにしなよ」
ふり返ると姉は相変わらず怖い顔をしていて、(親のそういうところを視るものじゃないでしょう)といいたげだった。
「とにかく・・・心配だから」
口ごもるぼくに、姉はいった。半ズボンの足許に目を止めたまま。
「ハイソックスくらい、履いて行ったら?」

けっきょく、家を出るのに30分近くかかった。
玄関のドアを開けるぼくのことを、父も姉も見送らなかった。
サンダルをつっかけて、声のした家の裏手のあたりに足を向ける。
声の主は、やはりそこにいた。

母さんは夕方、みんなの晩御飯を用意すると、ひっそりと出かけていった。
出かけるときに穿いていたこげ茶のパンプスが、歩道の隅っこに転がっている。
その数メートル奥の草むらに、パンプスの脱げたつま先だけが見えた。
母さんの脚は、かかととつま先のついた肌色のストッキングに包まれたまま、
泥まみれになりながら、じりじりと足摺りをくり返していた。

先に草むらから姿を現したのは、黒い翳だった。
翳の主はとても色褪せた肌をしていて、グロテスクな容貌をしていたけれど、
顔なじみのぼくを認めると、ちょっと会釈を返してきた。
人間らしい応対に、ぼくはにこりともせずに応じた。
「母さん、そろそろいいだろ?」
ぶっきら棒にぼくがいうと、男はにんまりと笑った。
口許を、吸い取ったばかりの母さんの血でヌラヌラと光らせたまま。

「来ないでいいから」
草むらの奥から声がした。
男が下腹部も濡らしているのをみて、草むらの影でなにが起きていたのかは察しがついた。
ほんとうは、もう十分以上まえに来るべきだった――と、けしからぬ考えがちらと頭をかすめた。
「もう少しつづけてやろうか?」
男がいった。
「いいよ、そこまでしなくて」
母雄あのヌードで昂奮する妄想にかられたぼくを見通したような言いぐさに、
ぼくは照れ隠しにそっぽを向いた。
「きみの父さんが迎えに来た時は、つづきをしたんだがな」
男はただならぬことを聞こえるように呟きながら、路上に落ちていたパンプスを拾い、草むらのほうへと投げてやった。
ぼくよりも、母さんを襲ったやつのほうが、よほど身づくろいの役に立っていると思った。
でも、よくよく考えてみれば、彼らは自分たちのしたことの後片付けをしたに過ぎないのだから、
ぼくが済まながる必要はないのだった。
「まだ喉渇いてるの?姉さん呼んでこようか?」
草むらのほうにも聞こえるように、ぼくは男にいった。
「姉さんのことはきのう吸った。なか三日は置かんと旨い血が吸えぬ」
身勝手なやつだと思った。
母と姉と――2人ながらこの男の誘惑に屈し、血を吸われていた。
「それに、せっかくきみが来たんだし・・・」
え?と思う間もなく、強い力のこもった猿臂に引き寄せられた。
生臭い息が耳たぶをかすめる。
身じろぎ一つできないほどきつく抱きすくめられたまま、首すじにチクリと鋭い痛みが走った。

母や姉が屈するのも、無理はない・・・
そんなふうに薄ぼんやりと思ったときにはもう、ぼくはすっかり貧血になって、草むらの傍らに長々と寝そべっていた。
男は、「靴下も愉しませてもらおう」といって、ぼくの了解も待たずに足許にかがみ込み、
履いていた白のハイソックスのうえからチロチロと舌を這わせ始めている。
母さんは身づくろいを終えて、薄ぼんやりと佇んでいた。
息子が自分と同じように血を吸われているというのに、助けもせずに、見守っていた。
もっともぼくだって、母さんが襲われるところをのぞき見して昂奮しようとしていたくらいだから、
母さんを責めることはできなかったけれど。
やがて男の牙がふくらはぎに食い入って、白のハイソックスに赤黒い飛沫が飛び散り、
生温かい血のりがじわじわとしみ込んでいった。

「ただいま戻りました」
疲れ切った母さんは、気の抜けた声で帰宅を告げた。
お茶の間からは「ああ」という父さんの、やはり力のこもらない相づちが返って来た。
こげ茶のスーツはどうにか身に着けていたけれど、
髪は振り乱しブラウスの襟首は大きくはだけ、破れたストッキングはくるぶしまでずり落ちて、皺くちゃになっている。
情事の名残りをありありととどめた姿をみたのは、ぼくだけだった。
「母さんシャワー浴びるから、あなたはもう上にあがって」
ぼくの顔をまともに見ないでそういう母さんの脇をすり抜けて、言われるままに階段に向かう。
すれ違いざま、生々しい女の気配が、ふわっとぼくを包みかけた。
なにか鋭いものに、ズキッと胸の奥を衝かれるような気がした。

「なか3日だってさ。すぐにお呼びがかかるんじゃない?」
二階に戻ったぼくは、隣の部屋から顔を出した姉に、憎まれ口をきいた。
姉は血に濡れたハイソックスを履いたぼくの足許を、じっと睨んだ。
吸血鬼は、丈の長い靴下のうえからふくらはぎに咬みつくのを好んでいた。
だから、母さんが着込んだスーツの下に穿いていたストッキングも、狙われたのだ。
運動部のユニフォームのストッキングを穿いて行ってもよかったけれど、
チームメイトを裏切るような気がして、わざと姉のタンスから一足おねだりをした。
自分のタンスを漁る弟の背中を、姉は白い目で睨んでいたけれど、自分のハイソックスを弟がせしめることには文句をいわなかった。
「代役ありがと。これお駄賃」
ご念の入ったことに100円玉を1枚掌に圧しつけようとしたのを、かろうじて突き返した。
「しょうもない」
姉弟同時に同じ言葉を口にして、お互い相手を見、初めてクスッと笑った。
「父さんによけいなこと、訊くんじゃないわよ」
姉はそういって、部屋の扉をぴしゃりと閉めた。
訊くな――ということは、よくお訊き、ということにちがいない。
あまのじゃくな姉らしかった。

靴下を履き替えて下に降りると、父さんがまだリビングにいて、テレビを見ていた。
見ているといっても、薄ぼんやり目をやっているだけで、そこで時間をつぶしているというていだった。
「きょうはテレビで徹夜しようかな」
父さんがいった。
「そこまで気を使うことないんじゃない?」
ぼくはいった。
「どこまで知ってるんだ?」
「いまのことならたいがい」
「昔のことは?」
「さあ・・・」
どちらの側も躊躇をしながらも、父さんはすべて語ってくれた――

この街には底知れぬ森がある。
そこには吸血鬼が住んでいて、若い娘や人妻をたぶらかしていた。
吸血鬼たちは、襲った人間を死なせない代わり、街に棲むものたちの血を自由に吸えることになっていた。
なにも知らずによその土地からやってきた父さんはそこで母さんを見初めた。
結婚生活は幸せだったが、ある日、家が吸血鬼の襲撃を受けて、ふたりながら血を吸われた。
ほんとうは、吸血鬼は、父さんのことは殺してしまってもよいつもりだった。
血を吸われ犯される母さんを見て不覚にも昂奮してしまったことが、父さんの命を救った。
じつは、母さんは代々母から娘へと血を提供しつづけてきていた家の一人娘だった。
父さんを愛していた母さんは掟を破って父さんと結婚したので、怒った吸血鬼が新居を襲ったのだ。

さいしょは母さんは、父さんに隠れて血を提供しつづけることで、うわべの幸せを守ろうとした。
年ごろになってすぐに、血を吸われ始めた母さんは、吸血鬼の寵愛を受けていたし、
女としての初体験も吸血鬼相手に済ませていた。
すべての過去を押し隠したままこの土地に住み続けることに、無理があったのだ。
自分の嫁がもともと吸血鬼の情婦だったと知っても、父さんは母さんと別れようとしなかった。
父さんは吸血鬼と逢瀬を続ける母さんを許し、母さんは父さんを愛しつづけ、ぼくたちが生まれたのだった。

姉さんはきっと、母さんを見習って、この土地の女として生きるのだろう。
そしてぼくも案外、父さんのように・・・もらった妻を吸血鬼に差し出してしまうのかも知れない。
そんなことを考えていると。
血を吸われてウットリしている母さんをのぞき見していた時に昂った不埒な股間が、
いままで以上に逆立って来るのを、抑えることができなくなっていた。