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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

結納のあと、ラブホテルの隣室で。

2019年04月28日(Sun) 07:22:05

雅恵さんとの結納がすんだあと。
まず雅恵さんのご両親が退出し、しばらく残っていた雅恵さんも、そろそろ帰りたそうな顔を泛べた。
父さんは、私が雅恵さんを駅まで送っていくから、きょうはここで解散にしようといった。
雅恵さんをお前の嫁にどうかと勧めたのは、ほかでもない父さんだった。
取引先の娘さんだということで、終始縁談を主導したのは父さんだった。
うちはいろんな意味で、父さん主導の家だった。
母さんもぼくも、父さんの言うなりに、ではきょうはこれでお開き・・・ということにした。

父さんが雅恵さんを連れて出ていくと、母さんが表情を改めて、ぼくにいった。
「雅恵さん、父さんとできているからね」
母さんの言いぐさは、結婚を控えた息子にとってはただならぬものだったけれど、
ぼくは表情も変えずにこたえた。
「知ってるよ。でも、今さらそれを言っても、仕方ないよね」
「そうじゃなくてさ」
母さんは、ぼくと2人きりのときにだけ泛べるイタズラっぽい表情になって、いった。
「あとを尾(つ)けてみない?面白いかも」
ぼくもくすぐったそうな顔になって、肯いていた。

ふたりはぼくたちよりも100mほど前を連れだって歩いていた。
駅とは反対方向だった。
「Mホテルのほうだよね」
ぼくが母さんにいうと、
「・・・ったく、しょうのないひとね」
と、母さんもぼくに応じた。
息子の嫁になる女が、夫と浮気をしている――
そんな事実が、母の女の部分を刺激しているのを、なんとなく感じた。

雅恵さんは、恰好よく着こなしたよそ行きのスーツのスカートをさばいて、大またに闊歩していた。
肌色のストッキングに包まれた健康そうな肉づきのよいふくらはぎが、初々しくも、淫らにも、ぼくの目に映った。
父さんは、雅恵さんのパンストを、どんなふうに脱がすんだろう?
ふと浮かんだ妄想が、ぼくのことを苦しめるどころか・・・むしろ昂らせてしまっていた。
そう、ぼくは昔から、母さんの浮気現場をひっそり覗き込んで、昂奮してしまうような子だった。
父さんはぼくのそんな性癖を知ったうえで、自分の愛人を息子の嫁にと仕向けたのだろうか?
「あんたのこと、父さんにもバレバレなんじゃない?」
母さんも傍らで、ぼくの心のなかを読み取ったようなことを囁いて、白い歯を見せて笑った。
ぼくも照れくさそうに、白い歯をみせて笑い返した。

Mホテルに入る直前、雅恵さんは後ろを振り返り、ちょっとだけ警戒の視線を周囲に投げた。
眉間を止せた険しい表情をした雅恵さんを、ぼくは初めて目にした。
女が後ろめたいことをするときには、こんな険しい顔をするのだ――ぼくは改めて、思い知った。
父さんがぼくの未来の花嫁を伴ってラブホテルにしけ込んでいくところを、
ぼくは恥知らずにも、ドキドキと胸をときめかせて、見守っていた。

母さんが、傍らからぼくのわき腹を小突いて、いった――
「あたしたちの入ろうよ、あのホテル」
え?と見返る間もなく、母さんはぼくのわきの下に腕をすべらせた。
にわかカップルでも、母さんは見た目が若かったから、周囲には愛人同士で通るかもしれないと、ぼくはおもった。
もっとも・・・
ほんとうは、にわかカップルでもなんでもない。
ぼくと母さんの関係は、父さんさえも認める仲だった。
「母さん、きょうは魅力的だね」
30代独身のキャリアウーマンといっても通りそうな、さっそうとしたいでたちの母さんを、ぼくは今更のように褒めた。
「きょう”も”でしょ?」
にこやかにやり込める母さんの顔つきは、もう年上の愛人のそれに変貌している。
女のひとが良からぬことをするときは、決して険しい顔つきばかりをするものではない、と、ぼくはおもった。

息遣いをはずませての交接は、ひどく長く、そしてしつように、ベッドのシーツを乱しながらつづいていた。
「隣の部屋で父さんが雅恵さんを抱いていたとしても、ぼくはなんとも思わない」
強がるぼくを、「嘘おっしゃい」とからかいながら、
母さんはストッキングを片方だけ脱いだ太ももを見せつけてくる。
「今ごろ雅恵さんも、父さんにこんなふうにさせられていると思うわ」
かんたんな挑発にひっかかって、ぼくはなん度めか、母さんのうえに馬乗りになってゆく。

結婚した後も、きっとぼくは、雅恵さんが父さんと外で密会することを黙認するだろう。
父さんも、そういう留守宅にぼくがあがりこんで、自分の妻を抱かれてしまうのを、きっと黙認してくれるだろう。
こんな関係を、雅恵さんはどこまで知っているのだろう?
「だいじょうぶ、あのひと、なにもかも知ったうえで、うちに嫁いでくるから」
母さんはまたもや、ぼくの心のなかを見抜いて、いった。
不覚にもほとばしらせてしまった粘液がストッキングを濡らすのに顔をしかめながらも、
「雅恵さんのことも愉しませてあげて」
と、ぼくのペ〇スをいとおしげに撫でさすった。

前3作。

2019年04月28日(Sun) 07:21:08

なんとなく同じ構想で、短文を三つ、描いてみました。
さいしょの一編は、昨日の朝思い浮かんだものです。

シチュエーションは重なっているような、微妙に食い違っているような。
そんなお話を連続して描くことが、よくあります。

同じ家族の身に起こったことかもしれない。
べつべつの家族の話かもしれない。
解釈はどちらでもよいと思います。

身代わり。

2019年04月28日(Sun) 06:32:30

学校帰りのハイソックスを狙われて、吸血鬼に襲われた。
彼はぼくのことを、女のように愛した。
そして妹を愛し、母さんを愛し、父さんのことまで服従させたうえ、愛してしまった。
家族全員が、お互いに、彼に愛されるところを見つめ合った。

母さんが愛されているときは、妹やぼくが、父さんの前で母さんの代わりを務めるようになった。
男に抱かれることにはもう、なんの抵抗もなくなっていて、
相手がだれであれ、寂しい刻を慰めるには、こうするのが良いのだと感じるようになっていた。

家長の責任。

2019年04月28日(Sun) 06:28:34

息子が吸血鬼に狙われて、血を吸われた。
息子の血が気に入った吸血鬼は、息子に妹を紹介させた。
仲良くなった吸血鬼になにかしてあげたくなっていた息子は、悦んでそれに応じた。
わたしは知らないうちに、子供たちの生き血を彼に愉しまれてしまっていた。

もう少し喉の渇きをなんとかしたいと思った吸血鬼は、ほかにだれかいないかと息子に尋ねた。
息子に心当たりのあるきれいな女のひとといったら、自分の母親しかいなかった。
けしからぬことに――
その吸血鬼は、既婚の婦人を襲うとき、血を吸ったあと恋に落ちてしまう習性をもっていた。

恋人になった女は決して殺さないのだと、変な理屈に納得してしまったのは、
わたし自身まで血を狙われて、家族と同じ咬み痕を、首すじにつけられた後のことだった。
家族全員がのぞき見していると知りながら、
わたしなんかの血まで美味しく飲んでもらえるのは嬉しいですと呟きながら、
わたしまで女のように、愛されていった。

ほんとうは、あんたのほうから家族の血を吸ってほしいと願ったんだよな?
俺はあんたの好意を断り切れずに、仕方なくみんなを襲ったんだったよな?
彼はいけない誘惑を、わたしの鼓膜にたらし込んだ。
わたしは懸命に、それを否定した。
けれども態度は言葉を裏切っていた。
金曜の夜になるとわたしは、家族全員に、真夜中になったら出かけると告げて、
妻はよそ行きのスーツに着かえ、子供たちは制服姿。
正装した男女を襲うのが好きなのだから。
親しい家でも訪問するときには礼を尽くすものだから。
そんな言いぐさで、
ブラウスに吸い取った生き血を滴らせたり、
ふくらはぎを咬んでハイソックスやストッキングをびりびりと破ったり。
そんないけない愉しみを果たさせるため、
みんなできみの喉を癒しに来たのだと言って、訪問を続けてしまうのだった。

男の責任。

2019年04月28日(Sun) 06:16:42

さいしょにボクが、吸血鬼に狙われて生き血を吸い取られた。
彼と仲良くなったボクは、妹を紹介した。
妹もウットリしながら、うら若い生き血を吸い取られた。
それからママを紹介した。
ママもウットリしながら、熟れた生き血を吸い取られた。
おばさんでも女の人の血は美味しいのかな?と思ったら。
熟女の生き血は格別なのだと諭された。
ママはお父さんがいるのに恥ずかしいといって照れていたが、
数日たったら、パパを紹介していた。

なん度か吸われているうちに、妹は吸血鬼に犯されてしまった。
責任取って!と責められて、けっきょく妹と結婚した。
はからずも、ボクは自分の花嫁の純潔を、彼に捧げたことになった。
ママは、責任取ってとはいわなかった。
もう結婚しているから、それはいいのよと言っていた。
納得できるような、納得できないような説明だった。
でも――ママに責任取ってと迫られたら。
ママとも結婚してあげるつもりになっている。

男子生徒がハイソックスを履く学校で。

2019年04月28日(Sun) 06:09:41

脚好きな吸血鬼に、学校帰りのハイソックスを狙われた。

さいしょの3足は、学校の名誉を汚される罪悪感に震えた。
つぎの3足は、汚されても良いから愉しませてあげなきゃとおもった。
そのあとの3足は、汚される歓びを自覚しながら破らせていた。

10足めを愉しませてあげた後。
半ズボンを脱がされ、女として愛された。

ある老夫婦の礼儀

2019年04月23日(Tue) 07:36:46

老夫婦が吸血鬼に襲われた。
姪の結婚式の席でのことだった。
別室に招き入れられた夫婦は、それと知らないままに吸血鬼に咬まれていった。
先に咬まれた夫は身動きできないほどの貧血になって、妻の受難を見守る羽目に――
そして、着飾った妻は衣装もろとも辱められて、
永年守り抜いて来た貞操を、スーツの裏地や裂けたストッキングもろとも濡らされていった。

いつもここに出没なさっているのですか?
後日妻を伴って結婚式場を訪れた夫が訊ねた。
そうだ、と、吸血鬼はこたえた。
妻を呼び出したのは、どいういうわけですか?血が欲しいだけですか?彼女の名誉を辱めたいのですか?
夫が訊いた。
あんたの奥さんが気に入った――吸血鬼は渋々認めた。
こんなおばあちゃんを?
夫人は明るさを取り繕って、そう訊ねた。
ご婦人の魅力は、齢でそこなわれるものではないからな。
吸血鬼はますます渋々と、認めた。
真面目な交際を望んでいる、ということだね?
夫が訊いた。まじめな顔つきに引き込まれるように、
ぜひそう願いたいものだ。
吸血鬼も真面目に答えた。
永年連れ添った家内だが、あんたの女になってしまったことはもう、取り消すことができない。
そういうことであれば、家内との交際を認めよう。
婚礼の場で犯されてしまう、お気の毒なご婦人を1人でも少なくしたいのでね。

以来夫婦は連れだって結婚式場を訪れて、
着飾った夫人が犯されるのを目の当たりにし続けた。
吸血鬼が去ったあとは、熱い抱擁が待っていた。
齢を経た夫婦が、かつての熱情を取り戻す瞬間だった。

再来。

2019年04月23日(Tue) 07:26:46

やあ、こんばんは。
声をかけられた顔をあげた吸血鬼は、驚きと戸惑いをうかべた。
目のまえで無邪気に笑っているのは、半ズボン少年――つい先月まで日常的に血を吸っていた相手だった。

夕暮れ刻の公園で独りで遊んでいたところをつかまえて、首すじを吸い、失神させると、
ふくらはぎを咬んでハイソックスを咬み破りながらの吸血を愉しんだ。
彼が半ズボンの下に履いていた、紺地に白のラインが入ったハイソックスに、目を惹かれたからだった。
以来、2,3日に一度は念波で抗いがたく呼び寄せて、
首すじを咬んだりハイソックスの舌触りを愉しみながらの吸血に耽る日々がつづいた。
ハイソックスのふくらはぎに唇をなすりつけてくる吸血鬼に、
少年は「なんだかやらしいネ」と、彼の意図を見抜いたことを言ったけれど、
彼は少年の足許にいやらしく舌をぬめらせて、ハイソックスをふしだらにずり降ろすことに熱中した。
やがて彼らの関係は、母親の知るところになった。
帰宅してくる少年が、ハイソックスに血をつけていたり、素足のまま戻ってきたりすることに疑念を抱いた彼女は、
夕刻の公園に少年を迎えに行き、吸血の現場を目撃し、自身も難に遭った。
首すじを咬まれた彼女は、息子の前で失神した。
ひざ下丈のスカートの下に穿いていた肌色のストッキングは、
息子のハイソックスと同じあしらいを受けていたぶり抜かれ、ふしだらに剥ぎ降ろされていった。
そして、息子がすでに股間に受け容れてしまっていた一物を、スカートの奥に突き入れられて、
良家の主婦は一瞬にして吸血鬼の奴隷に堕ちていった。

事態を変えたのは、少年の兄だった。
正義の味方のスーパーマンのように現れた彼は、弄ばれる母親と弟のありさまに顔をしかめて、
一撃のもとに吸血鬼をやっつけた。
重い傷を負わされた吸血鬼は追い払われて、もう二度と彼の家族の前に姿を見せぬと誓わされた。

まじめな母と子とをたぶらかしたのは、確かによくなかったと、吸血鬼は恥じた。
彼にしては、珍しいことだった。
この街を離れるか、いっそこのまま飢え死にしてしまおうかと思い詰めたとき、
あの母子が不良の青年たちに道を阻まれているのを見た。
もともと、ひどく治安の悪い街だった。
吸血鬼は最後の力を振り絞って、”気”を投げた。
”気”は青年たちの乗るオートバイのタンクに命中し、誘爆を起こし、燃えあがった。
あわて騒ぐ彼らに襲いかかると、ひとりひとり首すじを咬んで、血を吸った。
心底から悪いやつの血はまずかったが、エネルギーにはなった。
吸血した後、どす黒い液体を吐き散らす吸血鬼を見て、駆け寄って来た少年が訊いた。
「なにをしているの」
こいつらの体にたまった毒を吸い取って、吐き出しているのだと吸血鬼はこたえた。
どうしようもないくらい悪いやつは、体内にこういうどす黒い粘液をため込んでいる。
それをすべて吸い出してしまえば、いちおうの真人間には戻ることができるのだと。

一か月後には彼らのだれもが改心して仕事を持ち、吸血鬼のところにお礼のあいさつに訪れた。
自分の彼女や妹、それに母親といった、”手土産”を持って――
彼らの血を片っ端から吸い取りながら、吸血鬼は、この街にもう少し長居するのも悪くない、と思った。
ほかの街に行っても、どうせ人を襲うわけだし、
相手が真面目な人間だったら、またぞろあの少年と母親のようなことになりかねないのだから――と。

この日もそうした手土産に、ありつくつもりだった。
相手は、かつての不良青年の一人の妹だった。
この種の若い女たちのなかでは、数少ない処女だったから、きょうも彼は舌なめずりをして、彼女の訪れを待ちかねていた。
あらわれた女をしゃぶりつくようにして抱きすくめて、いよいよ首すじに唇を吸いつけようとしたとき、女が苦しげにいった。
――逢うのはこれきりにして。好きな人ができたんです。彼に悪いから、もうここには来たくないんです。
以前なら、四の五の言われようが耳も買わずに、ずぶりと牙を埋め込んで、いうことを聞かせてしまうところだった。
けれども吸血鬼は脱力してしまって、昂ぶりを込めた牙をおずおずと引っ込めていた。
女はごめんなさい!と最敬礼をして、足早に立ち去っていった。

やあ、こんばんは。
あの少年が声をかけてきたのは、そんな失意の時だった。
あたりはそろそろ、闇に包まれようとしていた。
そっちこそ、どうしたんだ?もう遅いんだから、帰んなさい。
ご近所の口うるさい小父さんのようだと思いながら、吸血鬼はいった。
少年はいつものように半ズボン姿で、ねずみ色のハイソックスをひざ小僧のすぐ下まで引き伸ばして履いている。
肉づきのよいふくらはぎが描くなだらかなカーブに、吸血鬼は視線だけを吸いつけた。
「いいんだよ、咬んでも」
え?と、吸血鬼は訊き返した。
「ボクそのために、履いてきてあげたんだから」
このごろは、半ズボンもハイソックスも、流行りではないのだという。
だから学校にも履いて行く機会がないので、小父さんに会いに来るのに久しぶりに履いてきたのだと。
しかし・・・と、吸血鬼はおもった。
俺が少年の脚に唇を吸いつけるときには、欲情にまみれたよだれをたっぷりとしみ込ませてしまうときなのだと。
「わかっているよ、小父さん、やらしいものね」
少年はくすりと笑った。
「ほら、母さんも連れてきたよ」
たしかに――少年の背後には、あのときのご婦人が、奥ゆかしげな物腰で佇んでいる。

すでに彼らの体内から、吸血鬼の毒は抜けきったはずだ。
彼の唾液のもつたぶらかす力は、せいぜい一週間しか、もたないはずだった。
「だいじょうぶですよ、お気遣いなさらなくても――主人にも話してきましたから」
母親もまた、ほほ笑んでいった。
セックスの経験のあるご婦人を襲うとき、人間の男女と同じ交わりを結ぶのがつねだった。
そうすることが、相手のご婦人に対する礼儀なのだと、思い込んでいた。
吸血鬼に襲われていた当時、彼女は自分の夫に自分が受けた不名誉、自分が繰り返した裏切り行為を告げることをためらい、唇をかんでいたはずだった。
どうしても小父さんに血をあげたい――そんな言い張る少年の主張を容れざるを得ないと感じたとき、
彼女の背後にいた夫がいった。
「この子ひとりでは心配だから、きみもついていっておやりなさい。無事に戻ってこれるのなら、それだけで良いから」と。
そして、吸血鬼に逢っているあいだは、この家の主婦だということは忘れていてもかまわないから、と、つけ加えた。

「ほら、遠慮するなって」
少年親しげに笑いかけると、ねずみ色のハイソックスを引き伸ばして、吸血鬼の目のまえに片脚を差し出した。
真新しいハイソックスに流れる太めのリブが、街灯の光を受けてくっきりと浮き上がっている。
なまめかしい妖しさに魅かれるように、吸血鬼は少年の足許にひれ伏すようにしてかがみ込み、唇を塗りつけた。
「やっぱ、やらしいね」
少年が白い歯をみせたときには、ねずみ色のハイソックスは、吸血鬼の淫らな唾液でぐしょ濡れに濡れそぼり、
ふくらはぎにキリッと流れた太めのリブは、ふしだらによじれ、折れ曲がっていた。
街灯に輝く白い太ももや、首すじにまで牙を埋めて、吸血鬼は少年の血をしんそこ美味そうに味わった。

息子が夢見心地な顔つきになってベンチに寝そべってしまうと、こんどは母親の番だった。
「さ、どうぞ、お気の済むように」
そっと差し伸べられたふくらはぎは、ひざ下丈のスカートの下に慎み深く隠されていたが、
肌色のストッキングの丈の長さが、すくなくとも少年のハイソックスよりもあることを示していた。
ご婦人の足許に接吻をするときには、ちょっとだけ控えめに唇を吸いつけたつもりだったが――
吸着させるときに不覚にも洩らしたチュッという音は、間違いなく彼女の耳にも届いていた。
うろたえて戸惑っているのが、唇を通して伝わる彼女の身じろぎでそれと知れたから。
ストッキングの上から這わされた魔性の唇からは、淫らな唾液が分泌されて、
良家の人妻の無防備な素肌を、侵蝕してゆく――
夫人は限りなくうろたえ、恥じらった。
少年が薄眼をあけて見つめる前で押し倒されて、スカートをまくり上げられるときも、
行儀悪く半脱ぎになったストッキングをまだ足許に残しながらのセックスに、
彼女はうろたえ、恥じらいつづけた。

母親と弟が自分の意思で再び吸血鬼の友だちとなったことは、少年の兄を再び激昂させることにはつながらなかった。
むしろ彼は、逆の行動をとった。
彼は弟が血を吸われた翌日の夕暮れ刻に、吸血鬼のいる公園を訪れて、いった。

さいきん、この街から悪いやつがいなくなった。
俺は悪いやつをこらしめることしか考えていなかったが、あんたは自分の能力を善用して、悪いやつをふつうのやつに変えてしまったんだな。
紹介するよ、俺の恋人だ。将来結婚することになっている。
時々連れてきてやるけれど、あんまり失礼な態度を取らないでくれよな。
なにかあったら、彼女から聞いて、ぶん殴りに来るからな。
彼女が気に入ったら、自分で来ることもあるだろう。
忙しい仕事をしているひとだから、貧血にならない程度で手かげんしてくれよ――

そう、正義の味方のスーパーマンは、吸血鬼に自分の恋人を紹介してしまったのだ。
少年の兄の”手土産”に、吸血鬼が満足したのはいうまでもない。
彼の恋人は真面目な女性で、まだ処女だった。
ふたりは結婚前に結ばれたけれど、それからも恋人は自分の意思で、夕暮れの公園にやって来た。
セックス経験のあるご婦人と時間を共にするときに彼がどういうことをするのかを、スーパーマンは知っていたはずなのだが、
どうやら吸血鬼がスーパーマンにぶん殴られたといううわさは聞こえてこなかった。
彼女が黙っていたのか、彼氏が許していたのか――
たぶんその、両方だったのだろう。


あとがき

最初は抵抗しながらも吸血鬼の意のままにされてしまった人たちが、
呪縛が解けたはずの時期になって、もう襲われなくてもよいいはずなのに、
自分を襲っていい思いをしていた相手のことを気づかって、ふたたび訪れて意のままにされてゆく。
こんどはお互いに、気づかい合い、愉しみ合いながら――

どういうわけか、惹かれるプロットです。

強奪される妻。

2019年04月21日(Sun) 06:12:06

喉がカラカラだった。
吸血鬼に襲われて、夫婦ながら血を吸われるようになって、半月が過ぎていた。
妻の目を盗んで訪れた吸血鬼の屋敷のなか。
いいように吸い尽されてしまったわたしは、吸血鬼と同じ渇きを体験している。
あんたは相性が良い。半吸血鬼になる素質はあるな。
男はうそぶいた。
半吸血鬼とは、どういうことです・・・?
眩暈にあえぎながら、わたしはやっとの思いで訊いた。
人間として生き、人間として我らに血を吸われるが、時には吸血鬼のように人の生き血を口に含みたくなる。
そういうことさ、と、やつはいった。

インターホンが鳴った。
待ってろ、と、男はいって、足早に玄関に近寄った。
おもむろにドアを開くと、ドアの向こうから叫び声があがった。
聞き覚えのある声だった。
「ど、どうしてっ!?」
ドアの向こうで妻がうろたえている理由が、なんとなく想像がつく。
いちど誘いを受けてしまうと、あらゆる理性を乗り越えて足が向いて、ここにたどり着いてしまう。
先刻わたしが受けた念波を、妻も受信したというに過ぎなかった。
――わたしの血だけでは、飽き足らなかったのだ。

「キャー」
ひと声叫んで、ドアの向こうの喧騒が止んだ。
チュチュ・・・ッ、じゅるうっ。
露骨な吸血の音にわたしは慄然とした――けれども、ドキドキしながら聞き入ってしまった。
わたしはすでに、半吸血鬼だったから。
やつが妻のことを羽交い絞めにして、脂の乗りきった生き血にありついていることを、悦ばしくさえ感じていた。
その場に倒れ込んだ妻にのしかかって、やつは容赦なく生き血をむしり取ると、
両手で妻のことをお姫さま抱っこして、部屋のなかへと引き込んでいた。

両目を瞑った妻は土気色の顔色で、それでも肩で息をはずませていた。
吸い尽さなかったのだな――わたしは少しだけ、ほっとした。
衝動のままに血をむさぼって、いちどは絶息しかかったこともある。
わたしの懇願を容れて、やつはせっかく獲た血を妻の身体に戻し、ことなきを得たが、
ことなきを得た代償として、わたしは妻の貞操を差し出す羽目になった。
着衣をはだけ素肌をあらわにしながら犯される妻の身体は、明らかに本能的な愉悦に喘ぎつづけていた。

すこしほっておけば、顔色もよくなるだろう。
やつはうそぶいた。
そのこともよく、知っている。
ものの30分もすれば、妻はわれにかえることだろう。
どうして彼が手かげんをしたか?
もちろん、べつのお愉しみを期待してのことだった。
わたしの同意を得ようとするような無粋は、さすがにかれは慎んでくれた。

差し出されたコップは、赤黒い液体で満たされていた。
渇きのままに口をつけると、生温かいぬるっとした感触が、唇を心地よく浸す。
妻の身体から獲られた血だ。
そうと知りながらも、わたしはコップを口から離さずに、そのままひと息にコップの中身を飲み干した。
旨いか?
すぐ傍らに、ほくそ笑んだやつの顔がある。
共犯者の笑みだった。
ああ・・・
わたしは虚ろに応えると、やつは満足そうに笑い返してきた。
蔑みや嘲りの感情は、そこにはなかった。
おなじものを旨いと感じるどうしの連帯感が、そこにはあった。

じゃあ、愉しませてもらうぜ。
やつは妻のほうに顎をしゃくって、わたしの同意を求めた。
ベッドのうえに投げ込まれた妻の顔色は、じょじょに血色を取り戻しつつある。
肌色のストッキングを穿いた両脚は、放恣に開かれていた。
男ふたりの視線が、淡い光沢を帯びた薄いナイロン生地に包まれた太ももに、それぞれの想いをこめて絡みつく。
好きにするさ、と、わたしはいった。
男は、もうひと声、と、せがんだ。
仕方なしに、わたしはいった。
家内を目のまえで犯してほしい。あんたの言うなりになった家内を視て、征服されたことを実感したいので・・・

それから一時間。
妻はたっぷりと、弄ばれた。
薄々は、わたしに視られながらの行為と、感づいているようだった。
恥じらい拒みながらも、侵入を受け容れざるを得なくなった股間の怒張に理性を狂わされて、
妻は目の前で、堕ちてゆく――
そしてわたしも、そんな妻を目のまえに、堕ちてゆく。


あとがき
誘い出された妻が、心ならずも吸血鬼の毒牙に屈して、生き血を吸い取られてゆく。
同じ吸血鬼の本能を植えつけられた夫は、
むしり取られてゆく妻を助けることもかなわず、
妻の仇敵と共有してしまった本能のまま、
男が妻を相手に好餌にありついている様子に昂奮してしまう。
強奪される妻を悦ぶ夫――
不謹慎です。あまりにも、不謹慎です・・・

譲歩。

2019年04月19日(Fri) 07:22:09

吸血鬼に襲われても、吸い尽されてしまうことはない――ときかされた。
だから譲歩がたいせつなのだと。

最初に望まれたのは、素肌に直接口をつけない採血だった。
妻もわたしも、注射針で採血をされ、
わたしたちを狙っていた吸血鬼は、ビニールパックに入った赤黒い液体を摂取した。
彼の生命をつなぎとめるためだけだったら、それでじゅうぶんのはずだった。

採血は、なん度となくつづけられた。
わたしたちはその都度譲歩して、注射針に腕をさらした。
むやみに襲われるよりは、はるかにましだと思っていた。

「仕方ないから、直接咬まれてくる。一度だけだと言われたから」
釈明を擦る妻は、わたしと目を合わせなかった。
そしてよそ行きのスーツ姿でひっそりと出かけていった妻は、ひと晩じゅう戻らなかった。
明け方になって髪を振り乱して帰宅した妻を、わたしは強く抱きしめた。
なにが起こったのかは、言わせなかった。
人の素肌に直接口をつけて吸血する場合、
相手が人妻だったら必ずそういうことをするのだと、なん度も聞かされていたはずだった。

彼はわたしの血も、肌に口をつけて直接吸いたがった。
むしろ文句を言ってやりたい気分で、わたしは彼の求めに応じた。
玄関まで見送ってくれた妻は、終始気づかわしそうにしていたけれど、
なぜか少しだけ、安堵しているようにみえた。
妻がどうして堕ちてしまったのか――身をもって思い知る羽目になった。
それ以来。
「直接咬まれてくるわ」と言って出かけようとする妻のことを、引き留めようとは思わなくなった。
妻はなん度も彼と逢い、逢瀬を重ねるようになった。

血が欲しかったら、わたしから先に咬んでくれ。
あるときわたしは、そう願った。
妻を守り切れないまでも、せめて身代わりになるべきだ――そう思ったからだ。
なにもしないで妻の帰りを待つことは、心に悪いと感じていた。
せめてその時は、失血で動けなくなっていて、彼女を守る力は残されていなかったのだと、そんな言い訳がほしかった。
願いはすぐに、聞き入れられた。
結果的に、吸い取られたわたしの血は、彼が妻を征服するときのエネルギーに振り替えられた。
わたしは彼と妻との逢瀬を、間接的に手助けしたに過ぎなかった。

時にはご主人のまえで、奥さんを犯したい。
男は無遠慮にも、そんな願いを口走るようになった。
「いちどくらい、かなえてあげましょうよ」
そう囁いたのは、妻のほうだった。

恥じらって拒もうとする妻は、
さきに血を吸われて身じろぎひとつたいぎになったわたしの前で抑えつけられて、
強引な吸血に声をあげ、
よそ行きのスーツ姿のまま犯されていった。
恥じらいながらも夢中になってゆく妻を見せつけられて、
わたしまでもが、かつて体験したことのない昂ぶりのるつぼに放り込まれた――

それ以来。
夫婦連れだっての献血を、なん度もなん度もくり返している。
わたしの家の名誉はそこなわれてしまったけれど――もう、後悔はしていない。

若妻の母の訪問。

2019年04月18日(Thu) 07:58:57

おばあちゃんになる前に、抱かれに来ました。
そういってにこやかにほほ笑むのは、あの若妻さんのお母さん。
傍らで肩をすくめる若妻さんと、同じ色合いのほほ笑みだった。
血は争えない、母娘なのだとだれもが思った。
そして、娘の魅力は母親譲りなのだと、だれもが認めないわけにはいかなかった。

「うば桜でごめんね」という娘に、「こら」と軽く咎めると、お母さんはこちらのほうをふり返って、いった。
もうあと少しで、還暦なのですよ。
この齢で主人以外の殿方とお付き合いするなんて、思ってもいませんでした。
お母さんの意図は、だれもが承知している。
妊娠した若妻さんの身代わりを、これから勤めてくれるというのだった。

わざわざ選んで着込んできたという純白のスーツは、とても奥ゆかしく、男どもの目に映えた。
しとやかにまとわれたストッキングに、だれもが目を輝かせた。
行儀よく正座をしたひざ小僧は、きめ細かく織りなすナイロン生地の、淡い光沢に包まれていた。
正座をしたときひざ小僧が覗く丈のスカートを、このご婦人は一着だけ持ち合わせていて、
わざわざそのために、きょうの装いを択んだのだった。

2時間後。
乱れ髪になり、よそ行きのスーツを着崩れさせながらも、
お母さんは鶴のようにしゃんと背すじを伸ばして、お気が済みましたか?と訊いて来た。
そしてだれもがまちまちな顔で肯くと、「ふつつかでした」と丁寧に頭をさげた。

主人には、だまっていてくださいね。
傷つくとかわいそうだから――
娘の手伝いという名目で、時折当地に伺います。
もちろんそのためもあるものですから、二六時中というわけにはまいりませんけれど、
出来る限りのお相手をいたしますから、そのあいだ娘は見逃してあげてくださいね。

だれもが表情を改め、少年のように神妙に頷き返していた。
どこまでも奥ゆかしい、心優しいお母さんだった。

若妻の訪問。

2019年04月18日(Thu) 07:41:56

こんにちは。
門の向こうに佇んだのは、二十代後半の若妻だった。
ロングの黒髪を風にたなびかせ、
真っ白なカーディガンをゆるやかに着こなして、
胸もとを包むのは淡いグリーンのブラウス、
腰から下は、純白のひざ下丈のフレアスカート。
白のサンダルの脚はいまどき流行りの素足ではなく、ちゃんとストッキングまで穿いている。
なによりも。
面長で彫りの深い面差しに、白い歯をみせてにこやかに笑んだ唇が、彼女の訪問の意図を疑わせるほどに健全だった。

ここは「輪姦(まわ)され小屋」と呼ばれる古びた住居。
もとのあるじは妻を輪姦されて、ショックのあまり家を出た。
妻はそのままこの家に留まって、輪姦まみれの日常を、むしろ愉しみながら暮らしていた。
やがて夫も戻ってきて、べつの家で暮らすようになった。
もちろん妻を目あてに夜這いを掛けてくる者たちを出入り禁止にするような、無粋なまねはしなかった。
あとは自由に使ってほしいということで気前よく提供されたこの家で、
いったいなん人の女が、犯され抜いたことだろう。
メンバーの誰もが、互いに互いの妻の肉体を知っていた。
性欲の対象は、まず自前の女たちでまかなったのだ。
妻を犯してほしいという変わった願望を持つ夫というのは、意外に絶えないものだった。
だからこの家には、納得づくで訪れる女たち、夫婦者が、あとを絶たない。

わけてもきょうの若妻は、絶品だった。
都会育ちの洗練した身のこなし。
愛想の良い、上品で伸びやかな受け答え。
そして押し開いた太ももの奥の締まり具合。
なにからなにまで、最高だった。
ご主人のまえで初めて犯したあの晩は、いまだかつてないほど盛り上がった。
すっかり目ざめてしまったご主人は、度重なる交接にさすがに頬を蒼ざめさせた奥さんをいちどは連れ出したものの、
その夜のうちには改めて訪問してきて、
居合わせた男たちは、若妻の身にまとうよそ行きのワンピースを、自分たちの精液にまみれさせたのだった。

えっ?えっ?着たままするんですか!?
こちらの流儀はよくわかっているくせに、奥さんはわざと戸惑った声をあげ、
伸びてくる猿臂を払いのけようとしたけれど。
淡いグリーンのブラウスを破かれると、すぐにおとなしくなった。
大の男が三人、なかには彼女の父親よりも年配の男さえ交えて、
奥さんは無抵抗で、息をはずませて迫って来る男たちの交接を受け容れつづけた。
「セイジさん、セイジさん」
夫の名を呼びつづけたのは、本当に夫に対する謝罪だったのか、それともたんに周りの男たちの気をそそるためだったのか。

2時間後。
破けたブラウスの胸を、ボタンを締めたカーディガンの奥深く押し隠して、
それでも奥さんは何事もなかったかのように、帰っていった。
あのにこやかな笑みも、ここの玄関先に立った時のままだった。
さらさらとしたロングヘアをそよ風にたなびかせ、
ショルダーバッグを優雅に肩から提げて、
ストッキングを剥ぎ取られた生足を眩しく輝かせた歩みはよどみなく、家路をたどっていった。

主人の名誉は守って。
そう口にしたときだけは、しんけんだった。
そして、男どもが約束するとこたえると、わが身を獣たちの肉薄から隔てようとして突っ張った腕から、力を抜いた。
都会妻はこうして、村の男衆の性欲を満足させるために、わが身をゆだねていった。

いちど、亭主どのにお礼を言いに行かなくちゃな。
だれ言うともなくそう言って、俺たちは顔を見合わせ、ウフフと笑い合って、
互いの胸に泛んだいけない想いをまぎらせていった。

妻の脚も、捨てたものではない。

2019年04月18日(Thu) 07:24:12

法事に招ばれるようになってから。
村の人たちとの交際は、いやがうえにも深まった。
週末はいつも夫婦連れだって、村の法事に参列するのが、習慣になっていた。

見慣れた妻の太い脚が、黒のストッキングに包まれて、わたしの半歩まえ、歩みを進めていく。
妻の脚も、捨てたものではない。
そんなふうに思えるようになったのは、この村の法事に参列するようになってからのことだった。

あのう。
遠慮がちに声をかけてきた年配の男に、妻はにこやかに振り返る。
なにか御用でしょうか。
問う妻に、男はもじもじとしながら、いった。

おみ脚をちょっとだけ、拝ませてもらいてぇんだが。
旦那さんも、ええかね?

ええですよ、と、わたしは応え、妻をかえりみた。
妻もまた、どうぞとひと言囁いて、黒のストッキングの脚を半歩まえに差し伸べてゆく。
男の意地汚い唇が、ストッキングのうえからなすりつけられるのを、妻は面白そうに見おろしていて、
そんな妻のことをわたしもまた、魅入られたように見守ってゆく。

妻は足許を染める礼装を、惜しげもなくむしり取らせていった。
陽の光があからさまに照らす寺の庭先で、妻は犯された。
ストッキングを剥ぎおろされた太ももを、眩しくさらけ出しながら。

劣情を満足させた年配男は、しまりのない笑みを満面にたたえ、とても嬉しそうに寺を後にした。
庭先で犯されるのは、いちばん最低のあしらいなんだって。
妻は愉しげに、村のしきたりをわたしに語る
その妻と歩調を合わせ、わたしも愉しげに、
夫婦でするときよりも色っぽかったね、あたりまえじゃない、と、
おバカなやり取りを愉しみながら、寺を後にする。

あなたが来るほうが、盛り上がるんだって。

2019年04月18日(Thu) 07:14:15

こんどの土曜、空いてる?

妻がわたしに訊いた。
とくに予定はないけど・・・とこたえると、
妻は恐ろしいことを口にした。

法事に招ばれてるの。あなたも来ない?

どういう法事なのかは、とっくに経験済みだった。
田野倉家の名誉が地に堕ちた、屈辱の日。
そしてそんな未曽有の屈辱を、悦んでしまった魔性の刻。
そんな先週末の記憶が、ありありとよみがえる。

妻は追い打ちをかけるように、いった。

あなたが来るほうが、盛り上がるんだって。

亭主の目のまえで、その妻を犯す。
そんなけしからぬ企てを、彼らはしばしば愉しんできたという。
互いの妻を交代で輪姦し合う仲だという。
他所の土地から来た夫婦者で、もっぱら交接の対象とされるのは妻の側だけ。
亭主にそんな権利は、認めてもらえない。
権利があるとすると、自分の妻が代わる代わる凌辱されるところを見せつけられる権利だけ。
けれどもわたしは、妻の恥ずべき提案に、恥を忘れて頷いている。

土曜日は晴だった。
村はずれの寺の本堂の奥深い一室で、妻が張り裂けるような叫びをあげている。

おやめになって、およしになって。
田野倉家の名誉を、これ以上泥まみれにするわけにはいきません。
お願い、放して、ダメ、ダメですったら・・・
あなた、あなたあっ・・・

その傍らでわたしまでもが、あらぬことを口走っている。

家内になにをするんです!?
止めてください、家内を放してください。
うちの妻は売春婦ではないんです、みんなで乱暴するなんてあんまりです・・・っ

互いに言葉で夫婦の名誉を守ろうとしても、
彼らが汚そうとするものの価値を高めるだけの意味しかない。
けれども場を盛り上げるため、
わたしたちは犯される妻と、妻を犯される夫の役を、それは熱心に演じ抜いている。

こと果てたあとの愉快なお別れのころには、不思議にも、
スポーツを楽しんだあとのような爽快感が、漂っていた。

自信。

2019年04月18日(Thu) 06:14:27

すこし自信がついた。私って案外、モテるんだね。

法事の帰り道で、妻がいった。
きちんとセットした黒髪を乱れ髪にふり乱し、
身にまとう喪服は着崩れをして、ブラウスはボタンが飛んでいた。
大胆な裂け目を走らせた黒のストッキングは半ばずり落ち、
ふやけたようにたるんでいた。

この村に来て初めて招かれた、法事の席で。
妻に目をつけた村の男衆が三人がかりで、
引きずり込まれた別室で、代わる代わる犯したのだ。

法事とは名ばかりで、裏では「女の品評会」と呼ばれた席。
土地の者と仲良く暮らすには、必ずたどらなければならない通過儀礼と聞かされて、
気の進まない外出だったが、
永年連れ添った妻が、礼装を剥ぎ取られ痴態に堕ちてゆく光景に、わたしは不覚にも勃起を覚えた。

ねえ、戻らない?まだ終わってないんだよね?
妻の囁きが毒液のように、わたしの鼓膜を浸した。
そしてちょっとだけ恨めし気に、助けてくれなかったよね?といい、
それからちょっとだけイタズラっぽく、あなたも愉しんでいたみたいだし、と、つけ加えた。

一見シンと静まり返った本堂は、猥雑な空気を漂わせていた。
山門をくぐるとすれ違った男が、「あ」と声をあげた。
「さっきはどうも」
男は軽く会釈した。妻をさいしょに抱いた男だった。
「家内がお世話になりました」
わたしはいった。
「忘れもんですか」
男は間抜けなことを訊いた。
「イエ、もうちょっとしてもらおうか?って話し合いまして」
「ありがてえ、歓迎です」
男は妻を引き立てるようにして、本堂に取って返した。

結婚して二十年連れ添った妻は、
おおぜいの男に愛されて、自身を取り戻した。
その晩ひと晩じゅう、妻は土地の男衆と仲良く過ごし、
わたしは見せつけられる歓びに目ざめていった。

今週末にも、法事がある。
妻は新調した喪服をいそいそと試着し、真新しいストッキングを嬉し気に脚に通していく。

2時間もかかってしまいました。

2019年04月17日(Wed) 07:57:18

2時間もかかってしまいました。あなたの奥さんを犯すのに。
部屋から出てくると、男はそう言って頭を掻いた。
奥さんの抵抗はすごかった。ご主人も見ておくべでした。
きっと、ご主人しか識らないお身体だったのでしょうね。
女の操を守ろうとするお姿は、気高くてご立派でした。
でも、3人がかりでしたからね。^^
結論的には、たっぷり頂戴してしまいました。
奥さんも、さいごはノリノリでいらっしゃいました。
それに、また逢ってくれる約束をしてくれました。
ですんで私たち、また奥さんとエッチしちゃいます。
いいですよね?2時間もかかったんです。苦労しました。
ご褒美に奥さんの肉体を頂戴する資格があると思います。
けんかしないで、みんなで仲良く分け合いますから。^^
それにしても、奥さんいい身体してますね。ご主人が羨ましいです。
これからは、わたし達も愉しませてもらいます。
悦びは分かち合わないと・・・ね。
エエもちろん、秘密は厳守します。ご主人の名誉にも配慮します。鉄則ですから.
でもその代わり週2か3くらいは、お借りしますよ.^-^
だって、お勤めのあいだは、良いでしょう?わからないから。
でもたまには、ご在宅のときにも伺います。
きっとご夫婦のセックスの、刺激になります。
ではこれからも、よろしくお付き合いいただきますね。
それから2時間に、もう少し時間延長させてもらえませんか?
ありがとう、ご主人気前良いですね。
長年守り抜いて来た貞操を惜しげもなく振る舞って下さった奥さんと同じくらい、気前良いです。
ありがとう、ありがとう♪
では、もういちど、いただきま~す♪♪♪


あとがき
前記事のたいとるに刺激されて、口走ってしまいました。(^^ゞ

2時間もかかってしまいました。

2019年04月17日(Wed) 07:48:40

前二作は、起き抜けにひらめいたものです。
さいしょはS夫人がヒロインのはずだったのですが、
婚約者である怜子が他の男とのセックスに耽る光景に主人公が昂るシーンにはまってしまい、
ふたつのお話になりました。

上品な婚約者が裏の顔を見せて、未来の花婿のまえで情事に耽る。
それも、結納のときの礼装姿のまま男に弄ばれる。
そんなシーンに、なぜかひどく惹かれてしまったからです。

いつものパターンで?婚約者と情夫との関係を許し、むしろ理解と協力を惜しまない寛大な夫。
けれども彼にも、いいことがあったようです。
義母となったS夫人が娘の不倫を知ったことをきっかけに、
プラトニックに終わりそうだったS夫人との関係が燃えあがり、
かつてS夫人とヒロシとの不倫をかげながら許した夫の無言の承諾のうちにふたりは結ばれます。

夫ふたりは、妻の不倫に昂って。
ヒロシは近親相姦に近い関係を、母娘との間に愉しみつづけて、
妻たちも、それぞれ婚外交渉の歓びに身を浸す。
だれもが不幸せにならない結論です。

婚約者の情事・後日譚

2019年04月17日(Wed) 07:43:25

S夫人とわたしとの交際は、結婚後もつづいた。
勤め帰りに立ち寄る趣味のサークルがひけるのは夜遅くであったし、
わたしは頼もしいエスコート役として、S夫人の夫である義父にも重宝がられた。
彼は体が弱く、家から出ることはめったになかった。
夫人との深夜の「お茶」が、いつか「お酒」を交えるようになっていたのは、
すでにわたしが夫人の娘むことなっていたから、その種の警戒心から夫人が自由になったためだろう。
むろんだからどうということもなく、わたしは夫人を自宅まで送り届けると、
義父に礼儀正しく挨拶をして、家路をたどるのだった。

怜子はそういう夜は、彼と過ごすことにしていたから、夫婦の間にもなんの問題も起こらなかった。
時には新居に彼氏を招ぶこともあったから、むしろ気を利かせて帰宅を遅らせているという部分も、わたしのなかにはあった。
いちどだけ、彼氏とはち合わせてし合ったことがあった。
男同士、お互いきまり悪そうに会釈をし合って、そのようすを怜子は腕組みをして、ふたりを面白そうに見比べていた。
わたしがシャワーを浴びている間、ふたりが夫婦のベッドを使うのを許してしまった。
ふたりのための時間を少しでも長くしてやろうとして、シャワーが風呂になり、湯気にあがってしまい、
気がつくと彼氏に介抱されていた。
あがるのが遅いと心配して風呂場をのぞき込んだのは、彼氏のほうだった。

体格も風采も、彼氏のほうが上だった。
けれども怜子はわたしのことも夫として十分尊重していたし、彼氏もふつうに親しい同性としてわたしを遇したから、
わたしの劣等感が無用に刺激されることはなかった。
ときにはふたりのセックスのことを、夫として問いただすこともあった。
「この間の出張で留守をしたときには、ひと晩じゅうだったの?」
「そうね、明け方までずっといたわね」怜子が悪びれずにそうこたえると、
「こいつ、けっこう上手になりましたね、もしかして優志さんのしつけかな?」
彼氏も笑いながら応じた。
そんなはずはないとわたしがいうと、
「じゃあ、別に男ができたのか?」
彼氏はおどけて怜子を問い詰める。
「じつはちょっとだけ付き合い始めた人がいて・・・」
と決まり悪げに怜子が告白するのを、夫と情夫は顔を並べて、面白そうに聞き入っていた。

S夫人が、まな娘の”乱行”を知ったのは結婚して半年ほど経ったころのことだった。
「ヒロシから聞いたわ、あの子浮気しつづけているんですって?」
いつもの「お茶」が「お酒」に変わってしばらくして、いきなり切り出した彼女の言葉を、かわすいとまはなかった。
「エエ・・・はい・・・」
「ご迷惑な縁談だったかしら」と、S夫人は自分の娘よりもわたしのほうを気づかった。
「イイエ、そんなことはありません」
わたしはふたりのために弁護をした。
夫として、新妻とその浮気相手とを弁護するなどあってはならない・・・はずだった。
けれどもわたしは憑かれたように、三人の奇妙な関係を、夫人に告白しないわけにはいかなかった。
結納帰りにふたりの情事を視てしまったこと。
それは、ヒロシとの関係を続けたがっていた怜子さんが、わたしの気持ちを確かめるために仕組んだものだったこと。
わたしは2人の関係を受け容れ、むしろ昂ったり愉しんだりしてしまっていること。
「男として、夫として恥ずべきことですが」
そうつけ加えたわたしに、S夫人はどこまでも同情的だった。
「自分を責めることはないですよ、貴方は優しい男性です。
 怜子のことを愛して下すっているからこそ、あの子の過ちも受け止めて下すっているのでしょう。
 妻が他の男に抱かれることで昂奮を覚える夫がいることは、知っています。
 女の私にはよく理解できないけれど、どなたも無類の愛妻家のようですね」
とまで、いってくれた。
怜子と彼氏とは従兄妹どうしだったから、S夫人にとって彼氏は甥にあたる。
ヒロシがS夫人と仲が良かったことが、怜子とヒロシとの関係を長引かせてしまったのかも――
そう呟いて悔やんだS夫人は、いつになく酔っていた。
今夜はもう帰りましょうというわたしに、S夫人は素直にしたがった。

玄関先で別れようとすると、夫人はいった。
「あの子は今、ヒロシと逢っているんでしょう?」
「エエ、たぶんそうだと思います」
「ご自宅で?」
「さあ、今夜はどうでしょう、映画を見て帰ると言っていましたから、ホテルかもしれません」
「まあ、どっちでもいいわ」
夫人は少し蓮っ葉な口調でひとりごちると、いった。
「あがっていきなさい、お宅のお母さまにも私、申し訳ないから」
唐突に母の名が出たためか、わたしは素直に夫人の言に随った。

S家のリビングは、いつもながら落ち着いた雰囲気だった。
深夜に訪れたのは初めてだが、広い窓から陽の光がふんだんに注がれる日中とは違って、
暖色の照明だけが支配する空間だった。
「化粧直してくるわね」
夫人はそう言い残して、座を起った。
向かい合わせのソファに、長々と衣類がひとつ、掛けられていた。
よく見ると、黒のスリップだった。
夫人が日ごろ身に着けているものだろうか。
長々と伸びる優雅なレエス入りのスリップが夫人のしなやかな肢体を包むところを想像して、
わたしはちょっとのあいだかすかな陶酔をおぼえた。
夫人の化粧直しは、やけに時間がかかっていた。
十数分も待たされただろうか、ふたたび姿を現した夫人を見て、わたしは息をのんだ。
夫人は、いつもの黒のワンピースから濃い紫のスーツに着替えていた。
ひざ丈のスカートから覗く格好の良い脚は、薄地の黒のストッキングに艶めかしく縁どられていて、齢を忘れさせた。
「娘のおわびに、ひと晩私が貴方専属の娼婦をつとめます。お義父さんのことは気になさらないで」
間近に顔を近寄せた彼女の口許からは、刷きなおしたルージュの芳香が、ほのかに漂っていた。

どうやって振る舞ったものか、よく憶えていない。
けれども、わたしの意思に反して、わたしの掌は、
義母の着ていた漆黒のブラウスの胸を揉みしだき、
ストッキングに包まれたひざ小僧を撫でさすり、
豊かな太ももの肉感をたっぷりと感じながら、その掌をスカートの奥へとすべらせていった。
脂粉の芳香に包まれた濃密な接吻はすべてを忘れさせ、
目のまえにいる女性が夫人なのか怜子なのかさえ、定かではなくなっていった。
ふたりの身体はソファからすべり落ち、わたしはじゅうたんのうえにS夫人を組み敷いた。

あらわにしてしまった熱情に、夫人はよく応えてくれた。
「主人のことは気になさらないで」
くり返し言われるたびに、同じ屋根の下にいるはずの義父の存在を思い出したが、
却ってそのことが刺激を生み、わたしの股間を昂らせた。
「怜子も今ごろ、愉しんでるわね。あなたも愉しむ権利がある。それに私も・・・」
夫人はうわ言のように口走った。
「今夜は母娘で娼婦に堕ちるわ」とも、口走った。
なん度めかの吶喊を受け入れた後、夫人がふと口にした言葉に、わたしはぎくりとした。
「じつは主人も、愉しんでるの」
え?と身を起こしかけたわたしを夫人は制すると、
「いいの、あなたはあなたの役目を果たして」
夫人は巧みに腰をくねらせてわたしを誘い、さらなる吶喊を快感たっぷりに受け容れた。

血は繋がっていないけど、主人と貴方は似てるわ・・・
貴方と夜の帰りが遅くなると、よく言われたの――ホテルに寄ってくればよかったのにって。
怜子とヒロシができちゃったとき、私は母親として二人の関係を止めようとした。
でも二人きりでヒロシと会ったのがよくなかった。
その場で私はヒロシに犯されて、主人に隠れて関係を続けたの。
あの子とヒロシが離れることになるならと思ってしたことだけど、そうはならなかった。
ヒロシは母娘とも、自分の奴隷にしたのよ。
でも主人は、私を怒らなかった。別れなかった。
それで知ったの。妻をそんなふうに愛する男性がいることを。
あなたも主人と同類ね。あの子のためにも、ヒロシのためにもよかったわ。
お願いだから、これからもふたりが逢うのを許してあげてね。
そして、身の置き所がなくなったときには、私のところに来て頂戴ね。

以来、しげしげと義母のもとを訪れるようになったわたしを、怜子は怪しんだが、
ある時点からは納得したらしく、わたしが怜子の実家を訪れるのを歓迎するようになった。
義父もまた、わたしのことを歓迎するようになった。

婚約者の情事

2019年04月17日(Wed) 07:04:32

趣味のサークルで知り合ったS夫人が、自分の娘をお見合い相手にと紹介してくれた。
わたしはS夫人が好きで、時には夜遅くお茶をする間柄になっていた。
「お酒」とならなかったのは、一見派手な美人である夫人が、その実堅実な主婦で、夫を愛していたからである。
一緒に歩いていると、不倫カップルに見えませんか?
冗談ごかしに気づかうわたしに、夫人は面白そうに笑っただけだった。

夫人の一人娘は、彫りの深いエキゾチックな目鼻立ちが特徴の、母親譲りの美人だった。
夫人を溺愛していた夫は、「きみが選んだ人なら」と、さいしょからこの縁談に乗り気だった。
「世間知らずの娘です。ものの役に立ちますかどうか」
と謙遜してみせたが、娘のことを夫人と同じくらい溺愛しているのが、容易に見て取れた。
当の本人はというと、風采のあがらないわたしのことなど鼻もひっかけないかと思っていたが、
意外にも真面目に応接してくれた。
「わたくし、外見の良い男性のことを、あまり信用していませんの」
良家に育った彼女は、言葉遣いも礼節に満ちていて、わたしをうっとりとさせた。
小さい頃からちやほやされてきたことが、むしろ彼女を賢明にしていた。
ハンサムでやたらとかっこいい男が、その実下衆なやからであることが多いということも、知り尽くしているようだった。
「男の友だちはいたけれども、本気でつき合ったひとはいない」と、彼女はいった。
おそらくそれは、真実なのだと、わたしは感じた。

話はとんとん拍子に進み、やがてわたしは夫人の令嬢である怜子さんと結納を交わした。
視てはならなものを視てしまったのは、そのかえり道でのことだった。
両親と別れて買物をするために街に残ったわたしは、通りすがりに怜子さんを見かけた。
淡いピンクのスーツに黒のストッキングのいでたちは、遠目にも惹きたっていてとても目だっていた。
わたしに気がつけばきっと、「あら」と言って足をとめて、
「先ほどはふつつかでした」と、礼儀正しいお辞儀が帰って来るのを、わたしは予期した。
声をかけようかと歩みを急がせて彼女との距離を狭めたとき、わたしははっとした。
彼女はとつぜん足を止め、傍らの路地から姿を見せた人影と、ふた言三言ことばを交わすと、
申し合せたように路地の奥へと姿を消したのだ。
わたしは思わず足を速め、ふたりのあとを追った。

曲がりくねった路地を、どこまで進んだことだろう。
ふたりはわたしの追跡に全く気づかず、あとをふり返ろうともせずに一目散に歩みを進めて、
一軒のビルの入り口に吸い込まれるように身を沈めた。
雑居ビルのようなうらぶれたビルだった。
いつも小ぎれいで高雅な雰囲気の怜子さんには、まるで似つかわしくない建物だった。
そのビルの入口に佇んだ時、わたしはがく然とした。
ドアの上のけばけばしい色彩の看板には、こう書かれてあった。
「ご宿泊・ご休憩 ホテル ロマンス」

そのホテルにどうやって押し入ったのか、さだかな記憶がない。
フロントには、さっき入って来た二人組のカップルを追いかけている、隣の部屋を貸してほしい、といったような気がする。
フロントの年配の女性は無表情に応対して、即座に隣の部屋のキーを渡してくれた。
一時間3000円といわれた法外な料金に、1万円札を渡して釣りは要らないというと、機嫌よくわらって、
「いいこと教えますね、テレビをずらすと覗き穴があります」
と囁いた。
その言葉を頼りに、まるで押し入るようにして、怜子さんが男と消えた部屋の隣室へと入っていった。

フロントの女性がいう覗き穴は、すぐにみつかった。
わたしはくいいるようにして、隣室のようすをうかがった。
怜子さんはピンクのスーツをまだ着ていて、男と差し向いになっていた。
「・・・そうよ、緊張してくたびれちゃった、だって結納だよ?」
怜子さんの男に対する話しかけ方は、わたしに対する礼儀正しいそれとは違って、打ち解けたものだった。
「シャワー浴びるわね、そ・の・あ・と・で♪」
と彼女がいったとき、わたしは疑念が確信に変わるのを感じて、衝撃を受けた。
あの高雅な怜子さんが、こんな男とつるんでいたなんて!!
男は怜子さんの手を取り、いますぐに、と、小声でいった。
「だぁめよ、それはシャワーのあとまでオアズケよ」
怜子さんは男の不埒をとりあえず拒んだが、男の迫りかたはしつようだった。
「あ・・・ん・・・だめ、ダメだったら!お洋服がしわになるじゃないの」
男のふしだらな行為と等分に、自分の装いへの気遣いを忘れない――こういうときでも怜子さんは、良家の令嬢ぶりをさりげなく発揮していた。
ゆるやかに拒みつづける怜子さんに、男はなおも肉薄した。
彼は怜子さんを後ろから羽交い絞めにすると、ゆるやかにウェーブした栗色の長い髪をかきのけて、首すじを吸った。
吸い吸われるどうしのしぐさが、ふたりの親密さを示すようで、わたしは胸が締め付けられた。
少なくとも、隣室に押し入って男の狼藉を咎める権利は、自分にはないような気さえしてきた。
もしかすると、この時点で、わたしは婚約者の貞操を放棄してしまっていたのかもしれない。

「いけない、いけないったら・・・ッ!結納帰りのお洋服なのよっ」
蓮っ葉な声で拒みつづける怜子さんの声が、やけに扇情的に響いた。
ブラウスのうえから胸をまさぐられ、スカートの奥に手を突っ込まれ、どちらのまさぐりも拒もうとはしないくせに、
怜子さんは口では婚約者への貞節を守ろうとしている。
けれどもわたしは、身じろぎひとつできなかった。
いくら鈍いわたしでも、怜子さんは本気で男を拒んでいるわけではないことを察していた。
そうでなければこんな密室で、ふたりきりになることはないだろうから。
男女のせめぎ合いは、半ば戯れを帯び、半ば本気を交え、長々とつづけられた。
男女の交わりを目にするのは、生れて初めてだった。
それがどうして自分の婚約者と別の男の情事である必要があるのか・・・息も詰まるような嫌悪感にむせびながらも、わたしは怜子さんの痴態から、目を離すことができずにいた。

男と揉み合いながら、怜子さんが思わず口走った。
「優志さんに悪いわ、私、もう結婚相手がいるのよ」
わたしの名前を怜子さんがとつぜん口にしたことに、わたしはずきり!と、胸をわななかせた。
どうしてこんな場違いなところで、わたしの名前が出てくるのか?
自分の名前が怜子さんの口で汚されたような気分がした。
それは嫌悪感であり、屈辱感であり、それ以外のなにかであった。
いったいなんなんだろう?この感情は!?
つきつめたわたしは、さらにがく然とした。
「私、もう優志さんと結婚するの、だからあなたにこんなところでお逢いするのはもう止さないと!」
怜子さんはさっきから、しきりとわたしの名前を口にするようになっていた。
彼女はわたしの援けを本気で求めはじめたのか?腰を浮かしかけたわたしを、彼女のひと言が制した。
「優志さんにばれちゃったら、ぜんぶおしまいなんだわ!」
そうだ、いま出て行ったら、すべてはおしまいになりかねない。
良家の令嬢との夢のような婚約も、高雅なほほ笑みに包まれた交際の日々も、瞬時に終わってしまうのだ――

圧しつけられた強引な唇に、怜子さんの唇が応えはじめたとき、わたしはわたしをわななかせているものの正体を知った。
それは、嫌悪感、屈辱感、敗北感、無力感に裏打ちされた、「歓び」だった――

「優志さん、ごめんなさい、ごめんなさい」
ベッドのうえに抑えつけられ、ブラウスをはだけられながら、怜子さんは目に涙を浮かべながらも男を拒みつづけた。
それがうわべだけの拒絶だったとしても、婚約者たるわたしは満足しなければいけないと思った。
怜子さんがわたしの名前を口にするのは、痴情の相手をそそるために過ぎないのだと、今や確信していたけれど、
その言葉にほんの少しの真情が存在することもまた、認めないわけにはいかなかった。
「私、淫らな女になっちゃう・・・」
涙声の怜子さんは、それでも男の侵入を拒みながらも許しつづける。
度重なる接吻を積極的に受け止め、
あらわになった乳房を吸われると身を仰け反らせて反応し、
ふくらはぎへのしつような口づけが黒のストッキングをくしゃくしゃにしてゆくのを、面白そうに見つめつづけた。
結納帰りの装いもろとも凌辱される婚約者を、わたしはただ息を詰めて見つめつづけた。
不覚にも、股間の昂ぶりを抑えることができなかった。

長いこと睦み合ったものの、狎れ合ったセックスだったに違いない。
けれどもわたしの目には、婚約者が純潔を散らしてゆく光景としか映らなかった。
それくらい、ふたりのまぐわいは色濃くわたしの網膜に灼(や)きついていったのだ。
狎れあったカップルのはずなのに。
怜子さんは終始、ぎこちない応対を続け、
身体を合わせてくる男を、うわべだけにせよ拒みつづけた。
まるで、わたしの視られているのを意識しているかのようだった。
わたしへの礼節を守ろうとしていたのか、
わたしを引き合いにして情夫をそそらせつづけるためだけだったのか、
いまでもよくわからない。



数日後、独りで盛り場を歩いていた時だった。
酒でも飲まないと、やっていられなかった。
周りの連中は、わたしの幸運な婚約をやっかみ半分にからかって、途中までは相手になってくれた。
けれども、もう一軒、もう一軒と帰宅を遅らせるわたしにあきれたように、周りからは誰もいなくなっていった。
「やあ」
親し気に声をかけてきた男に、わたしはぎくりとして立ちすくんだ。
あのときのホテルの男だった。
「視ちゃったよね?」
あけ広げな笑みに、わたしは隠すことを断念した。
「一杯飲もう、おごるよ」
男は気前よく、そういった。

怜子は俺の従妹でね、中学のころから俺とああいう関係になっていた。
けれども血の濃くなる結婚に、どちらの親も反対だった。
だが、怜子が結婚するまでの間、怜子が俺と付き合うのを、どちらの親も黙認してくれた。
血が濃い分、相性が近かったんだろうな。無理に引き離すのは良くないと思ったんだろう。
でもまさか、ここまで続くなんて、どちらの親も、俺たちさえも思っていなかった。
そこで景子夫人――怜子の母親――は、身近でみつけたあんたを花婿候補に選んだ。
怜子はあんたのことも、かなり好きだよ。そこは保証していい。
だからあんたは、予定通り怜子と結婚すればいい。
ところで相談なんだが――結婚した後も時々、怜子と逢わせてくれないか?
あんたもあの部屋でけっこうノッっていたみたいだし、
よかったら、逢うときを予告してもいい。
あんたはあとから隣の部屋に入って、気の済むまで見物していったら良いだろう。
それからね、怜子はあんたに視られていたのを知ってるから。
ふだんはもっと大胆なのに、さすがにあんたに視られていると意識していたからか、いつになくよそよそしかったな。
付き合い始めたころを思い出しちゃった。
あのころ怜子はまだ女学生だった。
紺色のセーラー服を押し倒して、黒のストッキングをずり降ろしてね・・・たまらなかったな、あのころは。
妻の浮気を視るのは恥ずべきことかもしれないけれど、そのときは俺に脅されたと思えばいい。
あんたの奥さんの過去をばらすといわれたら、たいがいのご亭主はいうことを聞くもんな。


男の言いぐさは勝手だと思ったけれど。
わたしは予定通り、怜子さんと挙式をあげた。
周囲に羨まれながらも、わたしは時折落ち着かない気分を味わう羽目になる。
彼は約束どおり、「その時」を予告してきた。
新妻となった怜子さんはそのたびに「ちょっと出てきます」と、言いにくそうに告げて、
礼装に着飾ってひっそりと新居をあとにする。
わたしは息も詰まる想いで、時をおいて彼女を追いかけ、
路地裏のあのうらぶれたラブホテルの隣室へとしけ込んでいく。
「優志さん、ごめんなさい、ごめんなさい」
うわべだけでも、怜子は男を拒みつづけて、わたしの名前を口にして謝罪をつづける。
それが怜子さんの貞節の証しなのだと、男はいった。
たぶんきっと、そうなのだろう。
それまでのふたりのあいだには、夫であるわたしという別の男性は存在しなかったのだから。

盛り場でいっしょに飲んだ時、わたしは男に告げた。
今夜はあなたの気前良さに敬意を表するけれど、口で言ったとおり、わたしの名誉にも敬意を表してほしい。
そうするならば、わたしは貴男の脅迫を受け入れて、怜子さんを差し出しましょう。
その代わり――
怜子さんの純潔は、新妻の貞節は、わたしから貴男へのプレゼントということにしてもらえまいか?
そして貴男はその返礼として、あの下品なラブホテルのベッドのうえで、わたしの名誉をいくらでも辱めていただけまいか?

男はにんまりと笑ってわたしの提案を容れ、
寝取る情夫と寝取られる夫とは、恥ずべき握手を密かに交し合った。

Love affair

2019年04月15日(Mon) 07:51:12

たんなる捕食や殺人として吸血するやつらも、もちろんいる。
だがわしが人を襲うとき、その行為はlove affair(情事)であるようにと思っている。
だからあんたの息子さんを襲ったときも、love affairだったのだ。
そして息子さんはわしの好意に応えてくれて、
長い靴下を履いた脚を咬みたがっているわしのために、
わしと逢うときはいつも、紺のハイソックスを履いてきてくれた。
これは立派な、love affairではないか?
恋するものはだれでも、相手の好みに合わせて装うものだからな。
同性だからと言って、恋愛が成立しないとは言い切れないだろう?

そ・・・それはたしかにそうかも・・・
わたしはこたえた。
ことの是非は別として、だ。!と、つけ加えることを忘れずに。

息子さんとわしとの仲を、賢明な奥方はすぐに感づいた。
当然だ。
息子が毎日のように、咬み痕のあるハイソックスを履いて帰って来るのだからな。
そしてわし達の逢瀬を、見つけてしまった。
脂の乗り切った人妻を、わしがどうしてそのまま見過ごしにするだろうか?
そう、その晩わしは、奥方の生き血もたっぷりと、おすそ分けに与った。
母親と息子の生き血が、親子ながら渇いたわしの喉を潤したのだ。。
もちろん奥方とは、その場でlove affairを遂げた。
魅力的なご婦人に迫らないのは、失礼に当たるからな。
そして奥方は、わしに恥を掻かせることなく、夫しか識らない身体を開いてくださった。
奥方の名誉のために言う――彼女は夫しか識らない貞女だった。
そしてその無防備な股間を奥底まで味わったあと、身体の隅々にまで、わしの毒液をしみ込ませてやった。
もちろんこれも、love affairといえるだろうな?

もちろん・・・そうだろう・・・
わたしはしかたなく、こたえた。
ことの是非は別としてだ、あくまでも・・・

ところで、だ。
いまわしは、あんたの血を吸っている。
目のくらむような貧血だろう?だいじょうぶか?あしたはなんの予定もないのだったな?
なに、週末はずっとぐったりしているんだと、奥方から聞いて知っておる。

たしかに男はわたしを組み伏せたうえでほくそ笑みながら獲物の自慢をつづけ、
時折これ見よがしにと、吸い取ったばかりのわたしの血をたらたらとしたたらせて、
わたしのワイシャツの胸に、ほとびを拡げていったのだった。

これも、love affairだとでも、いいたいのかね?
言葉を途切らせながら問うわたしに、
ああ、そうだ。もちろんそうだ。
男はそう言って、むき出しの股間をわたしの腰に圧しつけて、
妻と息子とを辱めた勁(つよ)い一物で、わたしの股間をこともなげに貫いた。
――妻と息子が堕ちた理由(わけ)を、わたしは一瞬で理解した。
わたしたちのlove affairを、二対の眼(まなこ)が、間近な物陰から息を詰めて見守っているのを感じながらも、
わたしは恥を忘れて呻き仰け反って、自分が快感の坩堝(るつぼ)に達してしまったことを、態度で示してしまっていた。
いままでの家長権が崩壊するのをありありと感じながら、
同性の魔物の誘惑に屈していく自分を、どうすることもできなくなっていた。

・・・・・・。
・・・・・・。

二日後のこと。
勤め帰りのわたしは、背後からひたひたと迫って来る足音を感じていた。
あの公園の前まで来ると、わたしは家路を外れて公園のなかに入っていった。
公園のいちばん奥にあるベンチに腰かけると、男は正体もあらわにわたしのまえに立ちはだかった。
奥方も息子さんも、家で寝(やす)んでいると彼は告げた。
ふたりを勤め先と学校に送り出したあと、奥方をエプロン姿のまま追いかけまわして首すじを咬んだのだと、
男は楽しそうにいった。
それからワンピースの裾を腰までたくし上げて、肌色のストッキングもろとも太ももをなん度も咬んで採血を愉しんで、
妻がぐったりとしてしまうとやおらワンピースを引き裂いて、お昼過ぎまで犯しつづけたのだと。
なにかを予感して、息子は学校をさぼって家に戻って来た。
そして、通学用の紺のハイソックスを履いた脚を差し伸べて、気の済むまで咬み破らせてやった。
母子を代わる代わる抱きながらlove affairをくり返して、わたしの帰宅を待っていた・・・というのだった。

わたしは、会社に三日間の休暇届を申請してきたと彼に伝えた。
そしておもむろに、スラックスをたくし上げてゆく――
出勤前の身づくろいのとき妻が出してくれた長い靴下に覆われた脛に、男は露骨に目を輝かせた。
真新しい長靴下が、見るかげもなく咬み破られながら徐々にずり落ちてゆくのを、わたしは面白そうに見つめつづけた。
失血で薄ぼんやりとなったわたしは、スラックスを脱がされて太ももがそらぞらしい外気に触れるのを覚え、
逞しい猿臂が蛇のように絡みつけられ、
どす黒く熱した股間の一物がわたしの腰の奥へと侵入するのを感じた。

妻や息子の股間を濡らした粘液が自分のなかに満ちるのを、どうして嬉しそうに反応してしまったのか?
もはやそんなことは、どうでもよかった。
彼らだっておなじことではなかったか?
公園を取り囲むご近所のカーテンのすき間から覗く好奇の視線を、感じずにはいられなかった。
彼らだって、同じ運命に身を浸しているではないか?
夜更けの公園で、わたしは随喜の声を洩らしながら、彼の征服を受け入れていった――

恋。

2019年04月10日(Wed) 06:54:43

どうしてうちの家内だけを襲うんだ!?
路上で襲われそうになった妻をかばいながら、照也はいった。
・・・あんたの奥さんの血が旨いからだ。
男は、ちょっと口ごもりながら、そうこたえた。

照れ隠しの強がりがみえみえだと、翠はおもった。
そして女の直感で、このひとは私のことが好きになったのだ、と、見抜いていた。
照也は照也で、同じ男として、目の前の吸血鬼が妻に恋していると感づいていた。
夫婦は顔を見合わせた。

私、恋をしてもいいかしら?
わざと独り言のように呟かれた言いぐさに、照也はあわてて聞こえないふりをした。
そして相手の男をにらみ返すと、「絶対死なせないでくれよ」と言い残して、近くの公園のほうへと立ち去っていった。
顔を見つめ合った一対の男女は、夫に少し遅れて、公園に入っていった。
そして、だれもいない公園の片隅で、むつみ合っていった。

嵐が過ぎ去ると、女はしずかに身づくろいをして、起ちあがった。
男は女に手を貸してやり、よろけた女を抱きとめて、優しく優しく腕に力を込めていった。
女は男のなすがままになっていた。
半脱ぎになったストッキングを男が欲しがると、女は脱がされるまま脱がされていき、
丁寧にたたんで男の掌のなかに収めてやった。

それ以来。
翠は誘われても良いというときにはストッキングを脚に通して男を待ちわびて、
照也はそんな妻のいちぶしじゅうを気づかわし気に見届けるようになった。

みすみす

2019年04月08日(Mon) 07:44:54

つきあっている人がいるんです。
まだ処女だけど、初めての体験はそのひとと済ませます。
私、こんな女ですけど・・・それでも結婚してくれるんですか?

そんな風変わりなことを告げたお見合い相手に、ぼくはすっかり虜になっていた。

彼女は予告どおり、交際していた男性と婚前交渉を済ませて、ぼくのところに嫁いできた。
そして時折実家に戻っては、実の父親にまで抱かれていた。
彼女の兄ふたりも、結婚前から妹の肉体を識っていた。
それでもそんなことはお互い口にせずに、ぼくたちは親戚づきあいをつづけていた。

妻が近親相姦を遂げている。
嫁入り前から自分の父親や兄を識っている。
そうと知りながらぼくは彼女と結婚して、
自分の新妻が公然と耽る近親相姦を黙認している――

どうしてそんなことを、口にすることができるだろう?
けれどもあるとき義兄さんが、ぼくにいった。

カズ子にはいつも、満足させてもらっているよ。
あいつ、いい身体しているだろう?

ぼくは思わず、こたえていた。

――ぼくの家内、いい身体をしているでしょう?

義兄さんはそれ以上なにも言わなかったが、くすぐったそうに笑った。
ぼくも、くすぐったそうに笑い返していた。

縁結びを好む娘

2019年04月08日(Mon) 07:37:13

娘は自分の友達を、息子に紹介した。
それからべつの友達を、わたしに紹介した。

ふた組のカップル(片方は不倫カップル♪)が成立したのを見届けると、
自分の処女を捧げた男に妻を紹介した。

わたしの恋人は次男の嫁になり、
我が家の嫁におさまってからも、夫の目を盗んで義父へのセックス奉仕を怠らなかった。

妻が愛人とデートに出かけるときは、
嫁いだ娘も実家に戻ってきて、
すっかり成長した若妻の肉体で、わたしを慰めた。

新妻の純潔を父親に捧げた次男は、
嫁と妹とがわたしを取り合うのを、胸をズキズキとわななかせつつ、覗いて愉しんでいた。

家族会議。

2019年04月08日(Mon) 07:33:40

街を徘徊する吸血鬼が、妻に求愛した。
彼を妻の情人として受け入れるかべきかどうか、家族会議が開かれた。
次男が言った。
――ぼく、母さんが犯されるところを観てみたい♪
長男も言った。
――母さんが犯されちゃうの、ぼくもちょっぴり悔しいけどさ、
――でも、いちどだけなら片目をつぶってあげようよ。
長女が言った。
――お父さんには気の毒だけど。
――お母さんの恋、かなえてあげようよ。
長女の言いぐさに、とどめを刺された。
妻はすでに吸血鬼に魅入られて、めろめろになってしまっているのを、認めないわけにはいかなかった。
子どもたちの意見が通り、妻の貞操は吸血鬼が勝ち得ることになった。

あとから知った。
子どもたちは3人とも、吸血鬼にたぶらかされていた。

真っ先に咬まれたのが次男。
つきあっていた彼女を吸血鬼に紹介して二人はつきあい始め、
花嫁はローブデコルテの裏を花婿ではない男の精液で濡らして華燭の典を挙げた。
新妻を共有することに、次男はとても満足していた。
それは、自身の妻が魅力的な女であることを、彼が認めたことになるからだった。

つぎに咬まれたのが、長女。
就活を途中であきらめて、リクルートスーツのすそを彼の精液で濡らしながら、吸血鬼に征服された。

さいごに咬まれたのが、長男。
――我が家の嫁になるひとは、いちどあのひとに咬まれないと。
妹の無茶苦茶な理屈に彼が屈したのは、
婚約者がいながら実の妹の色仕掛けに惑わされて、近親相姦の味を識ってしまったから。
いちどだけならという約束で、婚約者には善意の献血だからと言い含めて血を吸わせた。
彼女の身体をめぐる清冽な処女の生き血は、吸血鬼をいたく満足させた。
約束はもちろんまもられることはなく、
長男の嫁はなん度も吸血鬼に抱かれて、
己の身をめぐるうら若い血液で相手の唇を浸す行為に、夢中になって耽り抜いてしまった。

婚礼の前夜、二人で訪問した吸血鬼の屋敷のなかで、
我が家の跡継ぎ息子の花嫁は、花婿ではない男に処女を捧げた。
息子は自分の花嫁がむざむざと汚されるのを、むしろドキドキしながら見守った。
ズキズキとした嫉妬に胸を昂らせながら、花嫁の媚態から目が離せなくなっていたのだ。
彼らがつぎは母さんを、、、と思ったのには、もっともな謂われがあったのだ。
そして、自身で言い出した「いちどだけなら」という約束が守られないことも、身をもって理解していた。

娘や嫁たちのふしだらを咎める務めを放棄して、妻は四十路の身体を吸血鬼にゆだねていった。
高価なブラウスに包んだ胸をまさぐられ、
清楚なストッキングに染めた足許を辱しめられて、
楚楚とした装いもろとも汚されてゆく――

綺麗だったよ、お母さん。貞操喪失おめでとう。

子どもたちの不思議な祝福を受ける妻は、戸惑いながらも嬉しげに微笑んで、
これからは永年連れ添った夫を裏切り続けるのと誓っていた。
わたしは妻の裏切りを許し、これからは我が家のあるじとして、吸血鬼の忠実なしもべとなることを誓っていた。
わたしたち夫婦は、結婚式をもう一度挙げたような気分に浸っていた。
それは決して、間違いではなかった。