淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
娘のことも、咬んでしまう。
2019年05月30日(Thu) 07:40:15
部屋に敷かれた布団のうえで、昭代さんは顔色を土気色に変えて、横たわっていた。
自分の部屋に戻った、というよりは、俺に担ぎ込まれた、といったほうが正しかった。
つい度を過ごしてしまった俺は、吸い取った血液のいくばくかを昭代さんの体内に戻してやり、
とうの昔に閉じられた瞼とおでこにキッスをしてから放してやった。
それでも俺は抜かりなく、彼女の身体からスリップと剥ぎ取り、ストッキングを脚から抜き取ってせしめることだけは、忘れなかった。
ふすまの向こうに気配を感じてふり返ると、あわてた様子の忍び足がリビングに向かって退却するのが伝わってきた。
昭代さんを寝かしつけた俺は、もういちどだけ昭代さんの頭をなぜると、立ち去ろうとする足音を追いかけた。
リビングのドアを開けると、ソファに腰かけた加代子さんの白いカーディガン姿が、こちらに背中を向けていた。
テレビを観ているようなそぶりをしていたけれど、テレビはついていなかった。
開かれたドアの音にびくっとしてふり返る加代子さんが目にしたのは、俺の口許だったに違いない。
唇の周りといいあごといい、そこには自分の母親の身体から吸い取られた血液が、まだぬらぬらと光っていた。
彼女の鋭い目線で、そのことに初めて気づいた俺は、せしめた昭代さんのハンカチで、口許をゆっくりと拭った。
わずかにうろたえた加代子さんは、「あの、母は・・・」と、そこは娘らしく母親を気遣う姿勢をみせた。
「だいじょうぶ、よくお寝(やす)みだ」
たっぷり血を吸い取ったあとに俺がみせた昭代さんに対する鄭重な態度で、「この人はこの人なりに、母さんのことを大切にしている」と感じた――と加代子さんが言ってくれたのは、すこし後のことだった。
「まだ血が付いています」
加代子さんはハンカチを取り出して、俺のあごの輪郭をなぞるようにして、丁寧に拭いた。
散らされた母親の血をいとおしむように、たんねんにたんねんに、拭きとっていった。
俺は彼女のするがままに任せて、じっとしていた。
母親を襲った吸血鬼のあごに付いた血のりを拭うという行為で、彼女が俺の行為を受け入れようとしていることを感じたからだ。
俺は加代子さんに礼を言うと、昭代さんの血の付いた加代子さんのハンカチを受け取って、滲んだ紅いシミに深々とキスをした。
「本当に、母のことが好きなんですね」
加代子さんはいった。
「母を死なせないでくださいね」
「もちろんですよ」
「一途なひとですから、心配なんです」
娘は母親の気性を、よく心得ていた。
「ですから、母の具合がよくなくてまだ血が欲しいときには、私お相手します」
最後のひと言に力を込めたのは、怯える自分自身をふるいたたせようとしたからだ。
「まだ喉が渇いていると、俺が言ったら・・・?」
俺はあくまでも、たちの悪い男だった。
囁きと同時にギュッと抱きすくめた腕に、かすかな抗いを感じ取りながら、
俺はさらに力を込めて、若い身体に猿臂を巻いてゆく。
少女のなかで、身体の芯がしゃんとふるいたつのを、はっきりと感じた。
「もちろん、お相手します」
びっくりするほど、はっきりとした口調だった。
彼女の楷書体な発声に、俺は好感を持った。
きっと学校でも、とびきりに元気がよくて、学級委員とかをしているような活発な優等生なのだと思った。
「きみを初めて咬むのは日を改めてからにしようかと思っていたが――やはりきょう、いただこう」
「母を自分の女にした、記念すべき日だから・・・?」
加代子さんは挑戦的に輝く瞳を、俺に向けた。
「そうだね」
俺がみじかくこたえると、彼女は意外なくらい素直に、うなずき返してくる。
冷静で毅然とし過ぎる彼女をちょっとうろたえさせてやりたくなった。
「俺は脚を咬むのが好きでね」
「知っています」
彼女は言葉で、はね返してくる。
「いつもそうなさっているみたいですね、先日も、きょうも――」
俺は黙って、昭代さんの足許から抜き取ったばかりの黒のストッキングをポケットから取り出し、彼女のまえにぶら下げた。
「きゃっ」
ちいさく声をあげて口許を両手で覆う彼女に、やり過ぎたか?と思ったが。
彼女はあちこち破れ血濡れた母親のストッキングをまじまじと見つめ、手に取って、咬み痕の破れ目を確かめるように丹念に拡げていった。
「きみが今履いているハイソックスも、こんなふうにしてみたい」
両腕を後ろからつかまえて、ムードたっぷりにひっそりと囁く――
獲物のお嬢さんに対して、いちどはしてみたい行為だった。
彼女はおずおずと、頷き返してきた・・・
差し伸べられたふくらはぎはすんなりとした肉づきをしていて、
少したっぷりすぎると本人が羞じらう足許は、血を獲たいと願う俺にはむしろ、ひどく魅力的に映った。
俺はそろそろと彼女の足許にかがみ込み、彼女はちょっとだけ怯えを見せて脚をすくめた。
「あの――」
少し震えた声を頭上に受け止めると、俺はふり返り、彼女の顔を見上げた。
怯えていることを悟られまいとして、母親譲りの薄い唇を強く引き結んだ顔が、すぐ間近にあった。
「テレビつけてもいいですか?」
「もちろん、どうぞ」
俺はこたえた。
彼女がしたかったのは時間稼ぎではなくて、気分を紛らすためなのだと、すぐにわかった。
雑駁なコマーシャルの声が、空虚な部屋に満ちた。
彼女はテレビから離れると元通りソファに腰を下ろして、「どうぞ」とだけ、いった。
俺はもういちど、彼女の足許にそろそろと唇を近寄せた。
自室で気絶しているはずの昭代さんも、気配を消したはずのご主人の魂も、いまのたいせつな瞬間を息をつめて見守っているのを、俺はかんじた。
擦りつけた唇の下、加代子さんの履いている白のハイソックスに、泡交じりの唾液がじょじょにしみこんでゆく。
厚手のナイロン生地のしっかりとした舌触りを愉しみながら、
俺は牙の疼きをこらえ切れなくなって、
加代子さんのふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたりに、ずぶりと牙を埋めていった――
あとがき
未亡人の看護婦と制服姿の娘は、同じ日に犯され初咬みを受けてしまいます。
おとーさんの霊、哀れ。
いや、案外愉しんでいるのかも。^^
喪服の人妻、初めて堕ちる。
2019年05月30日(Thu) 07:34:38
人妻との行為はかなり経験があるはずなのに、
昂りすぎて何をどうしたのやら、細かいことが思い出せない。
ブラウスのボタンをひとつふたつ外したのは、彼女のほうからだったはず。
喪服のボタンはいわゆる「くるみボタン」といって、慣れていないと外しにくいのだ。
俺が手こずっていると、彼女のほうからうなずき返してきて、ひとつひとつ器用に外していった。
姦通の手助けを自分からするのははしたないと思っていたようだが、ボタンを飛ばされたくなかったという現実的な事情もあったらしい。
俺は昭代さんの首すじにキスをくり返しながら、着衣越しに彼女の腰周りに手をかけて、むっちりとしたくびれをなぞりつづけていた。
うなじを咬み、胸元を牙で侵して、
スカート越しにお尻を責めて、
もちろんふくらはぎも、黒のストッキングをブチブチと咬み破りながら愉しんだ。
ストッキングを片方脱がせると、ショーツは昭代さん自身が引き裂いていた。
そこからはもう、昭代さんも息を弾ませ始めて、いつもの昭代さんではなくなっていった。
物静かな奥ゆかしさと入れ替わりに、大胆な娼婦のように、はだけた胸を見せびらかすようにして身体を擦りつけてくる。
羞じらいながらも欲求もあらわにしてくる昭代さんがひたすらいとおしく、
俺はなん度もなん度も彼女の背中をさすり、お尻に掌をすべらせて、
熱い口づけを交わしつづけた。
いよいよ昭代さんの股間に突き入れる――というときに俺の昂奮は絶頂を迎えた。
彼女は俺を昂らせようと、「あなた・・・あなた・・・」とご主人の名を呼びつづけた。
初歩的なそそのかしにまんまとひっかかって、気がつくと俺は彼女のなかで射精していて、
彼女の身体の裏側を、しとどに濡れそぼらせていた。
こと果てると昭代さんはちょっとだけわれにかえって、
傍らのテーブルに置かれた夫の写真に初めて気づいたようにうろたえて、
きまり悪そうに目をそらしつづけていたけれど。
「ここにも主人はいるのね、だったら同じことか」
と呟くと、俺をお仏壇の前に誘っていった。
「どうせなら、主人にも視せてあげようよ」
と、大胆なことを口走って、お仏壇のまえにためらいもなく、
着崩れさせた喪服のまま大胆に下肢を広げた。
ふしだらにずりおちた黒のストッキングをひざ下にたるませた太ももが、俺をいっそう熱く誘っていた。
娘は座をはずし、俺たちは部屋を変えた。
2019年05月30日(Thu) 07:31:41
――ところで、あなたは加代子の血も狙っていますね?
≪エエ、大好物の処女の生き血ですからね≫
ご主人がこの問いに対する答えをじつは恐れているのを知りながら、俺は臆面もなくそう言い放った。
傍らで加代子さんが息をのむのを、気配で感じながら。
――そうですか、やっぱり。
声色に、父親としての寂しさがありありと響いている。
すこし萎えかけた俺の気分に、ご主人は却って気を使い、とりなすようにつけ加えた。
――家内が貴男を家に連れてきた時点で、娘の運命も定まったのです。
家内も承知のうえでそうしたことですし、わたしは家内の考えに反対をしません。
貴男は遠慮なく、貴男の獲物をお取りなさい。
≪ご不満でしょうね?奥さんだけで満足せずに、娘にまで手を伸ばすなど≫
――いえ、必ずしもそうではありません。
ご主人は、不思議なことを口にした。
――むしろ、家内を満足させた同じ身体が娘を大人の女に変えることは、
そんなに悪いことではないと思っている。いつかは娘も大人の女になるのです。
≪物わかりのよいご主人ですね≫
――さぁ、はたしてどうでしょうか。
けれどもやはり、娘の行く末は心配なのです。
できればふつうに結婚して、子供を作り、齢を重ねて行ってもらいたい。
俺は昭代さんと顔を見合わせた。
「それはあたしもそう思う」
昭代さんは、まじめな母親の顔に戻っていた。
俺も、娘を想う彼らの前では、神妙にならざるを得なかった。
――加代子がだれを初体験の相手に選ぶかは、本人が決めることだけれども、
どうか選択の自由は与えてやってもらいたい。
お婿さんができるまで処女を守り通すのか、それ以外のだれかと契るのか。
それともあなたにたぶらかされるまま、女になってゆくのか・・・
「きっと、たぶらかされちゃうわよ。このひと、初めからそのつもりなんだから」
”お母さんたら!”
加代子さんは初めて、顔を赤くした。
――あまり顔を赤らめていると、血を吸い取られてしまうよ。
ご主人は、父親らしい気づかいをみせた。
――そろそろ加代子は、はずしなさい。嫁入り前の娘が目にするものではない。
”ハイ、そうします!”
加代子さんは、ご両親のまえでは礼儀正しい娘で通しているようだった。
けれどもその横顔にありありと、言葉とは裏腹な意思がよぎっているのを、三人の大人たちはだれひとり、見逃してはいなかった。
きっと彼女は、これから母親がすることをお手本にするつもりなのだろう。
――加代子は加代子。好きにすれば良い。
ご主人が、わたしだけに聞こえる声で告げた。
加代子さんが部屋を出、ご主人の気配が消えると、昭代さんはもういちど、お仏壇に手を合わせた。
わたしも昭代さんにならって、ならんでご主人のお仏壇に向かって、手を合わせた。
ひとしきり神妙に頭を垂れた後、「いただきます」といったら、昭代さんにひっぱたかれた。
「ここではさすがにちょっと」としり込みする昭代さん。
もっともだと思い、彼女の居室に移動した。
昭代さんは喪服を着ていた。
夫を弔うための装いだった。
夫を弔うための装いのまま自分の情夫を愉しませることが、なにを意味しているのか知っている様子だった。
彼女は夫に忠実な未亡人の表向きのまま、俺の奴隷に堕ちる気なのだ。
ふとためらいの色を泛べた横顔に、俺はどす黒い衝動を覚えた。
漆黒のスカートのうえに行儀よく重ねられた掌を押し包むようにひっつかまえて、
横抱きに抱きすくめ仰のけられたおとがいに引き込まれるようにして、
俺は唇に唇を、重ねていった。
横目で見たご主人の遺影は、イタズラっぽく笑っているように見えた。
心まで許してしまったのは、いつ?
2019年05月27日(Mon) 07:49:51
――ところで、彼に心を許したのは、いつのことだったのかね?
「そんなこと訊いて、どうなさるの?」
――少しは嫉妬してみたくなったのでね。
「変わったひと」と笑いながらも、昭代さんは夫の求めに応じていった。
それは俺にとっても、彼女の心中を知ることのできる、得難い話だった。
「さいしょのときからです。出勤の途中でヘンなこと言われて、とても気になって。
でもだんだん心配になってきちゃって。
看護婦の職業柄ですね。そこまでは、私も正常だったんですよ。
でもこの人の待っている公園に脚を向けたときには、もう、少しはおかしくなっていたのかもしれない。
首すじを咬まれて血を吸われて、そこまでは気持ちを強く持っていました。
死んでしまうかもしれないと思っていたし。
でもしばらく吸われつづけているうちに、このひとのしていることは愛情のこもった行為なのだと気がついて。
それからは、夢中になって吸わせていたの。
セックスもしたがっているって、わかっていたけれど。
そこまで許す気はなかったんです。
まだ明るいうちから、路上に等しい場所でなんて、あまりに非常識でしょう?
でも、ストッキングを破らせてしまった時にはもう、もうだめだと思いましたわ。
――だいぶ、恥ずかしがりながら破らせていたね。
「視ていらしたの?助けてくださればよいのに」
――ぼくはぼくなりに、きみが出逢った男がきみにふさわしいパートナーかどうか、気にしていたのだ。
そう、たしかに昭代さんを襲っているときは、だれかに視られているという感覚が、常に付きまとっていた。
「もちろん、さいしょは厭々でしたよ。勤め帰りの装いを辱められるわけですから。
このひとは私を侮辱するのが楽しいのか?って思いました。
でもどういうわけか、応じてしまった。
厭々応じることがこのひとを愉しませるというのなら、
お相手すると決めた以上は愉しませてあげるのが務めだと思ってしまいましたの。
だから、つぎに逢うときからは、ストッキングの穿き替えを携えるようにしました。
伝線したストッキングのまま街を歩くのは、公衆の面前で恥を掻くようなものでしょう?
もっとも――穿き替えは一足では足りなくて、2~3足用意しておくべきだとわかりました。
このひと、助平ですから」
――ははは・・・
愛人のことをはにかみながら助平だと口にしたとき、ご主人は愉快そうに笑った。
――貴男のおかげで、わたしにも出番ができて、想いの丈を家内につたえることができた。
感謝します。
お礼に貴男には、最愛の家内の貞操をプレゼントしましょう。
貴男がご自分の力で獲たものを、わたしから差し上げる――というのは僭越でしょうか?
≪イイエ、そんなことはありません。ありがたく頂戴します≫
俺は神妙な顔つきになって、ご主人に頭を下げた。
「あなた、ありがとう。背中を押してくださって、妻として感謝します♪」
――未亡人には、引導を渡してやらないとね。
すでにこの世のものではないご主人にそういわれて、俺たちは声をあげて笑った。
傍らで聞き入っていた加代子さんまで、笑っていた。
降霊術
2019年05月27日(Mon) 07:47:10
お仏壇での逢瀬のとき、さいごにしたのが初めて唇を交し合うことだった。
まるで初体験を迎える女学生のように、彼女は目をつむって唇を軽く突き出し、待ちの姿勢を形作った。
俺は引き入れられるように、彼女の唇に唇を重ね、ゆっくりと抱きすくめながら唇を吸った。
女の匂いが、俺の鼻腔の奥までも、生暖かく浸していった。
軽度の昂奮が彼女の息をはずませて、
吸い始めた生き血が俺の体内に満ちるときと同じように、
俺のなかを女の匂いで満たしていった。
これがまぐわうということなのか。
俺たち男にとっては、挿入行為こそが女をモノにすることであるのに。
その前段階であるはずの接吻を受け入れることで、女はすでに心を移してきているのだ。
お仏壇の主は、すでにそのことに気づいているのだろうか?
降霊術、してみないか?
俺は彼女に問いかけた。
お父さんを呼び出すっていうこと?
振り向いた彼女は、真顔になっていた。
夫のことをわざと「お父さん」と、かつて家庭で与えていた役割で呼びながらも、
内心では「夫」であることをありありと意識していた。
そう。
お仏壇のまえでさっき彼女がしたことは、取りようによっては明らかに――
夫を裏切る行為、辱める行為だった。
「そう」と応える俺に、「ちょっとだけ怖いな」と呟きながら。
「でもそれはしとかなくちゃね」と、すぐに納得してくれた。
そんなことができるのか?という顔を彼女はしなかったし、
俺も彼女をだましたりごまかしたりするつもりなど毛頭なかった。
ある一定の範囲内で、俺にはそうしたことが可能なのだ。
その霊が比較的近くにいて、心を通わすことができる場合に限られるのだが――彼女の夫とは、そうしたことが可能だった。
彼は俺の周りを、ある種の親近感を抱きながら、付きまとっているような気がしたし、
俺自身、彼の存在は邪魔でも不快でもなく、むしろ相談相手、見せつける相手として尊重していた。
見せつけるのに尊重するのかって?
そういう愉しみを愉しみあうことのできる夫がいることを、俺は数多くの経験のなかから知っている。
「ああ、いるわね」
お仏間で始めたすぐの段階で、彼女は夫の存在を察知したようだった。
ずっと目を瞑っていること――といった俺の言に従って、彼女は正座して目を瞑り、お仏壇のほうへと掌を合わせて心から手向けつづけていた。
「あたし、好きなひとができたの。変わったひとだけど、いいひとなの。
吸血鬼との恋って、命がけの恋なの。
逢うたびに、血を吸われるのよ。
最初のうちは、目を白黒させながらお相手していたけれど、
いまではもう、慣れちゃった。
彼があたしの血をむさぼってくれるのが、むしょうに嬉しいの。
彼、あたしの血を気に入ってくれているのよ。
あなたがいなくなってから、毎日の生活が白黒写真になっちゃったけど、
彼のおかげでまた色が戻ってきたの。いまはあなたがいたときと変わらないわ。
だから――もう独りを守らなくって、良いわよね?」
彼女が俺にも聞かせようとしているのは、明白だった。
彼女の声にこたえるように、部屋の隅から、ひっそりとした声が返ってきた。
その声はたしかに、
――おめでとう、昭代
と、彼女の名を呼んだ。
――仲良く愛し合っているのなら、吸血鬼も人間も変わらないのではないかね?
「ウフフ、視られちゃった?」
――いやでも見えるさ。きみはぼくに見せたくて、あえてそうしたんだろう?
「そうね、見せたくはないつもりでいたけれど、見せたかったのかも。
そうすることで、あなたの妻でいることを、卒業しようとしたわけではなくて、
あなたに視られても恥ずかしくないって思えるくらい、
彼とのお付き合いがまじめなものだということを、確かめてみたかったの。」
なるほど、そういうことだったのか。
俺ははたと納得した。
女というのは、とてもしっかりしていると、改めておもった。
なよなよと頼りなく、俺の魔術にたぶらかされているようにみえて、
彼女は彼女なりに自分の心を推し量り、
たぶんまだ身辺にとどまっているであろう夫の存在を認識しながら、
夫とのけじめをつけないと前に進めないということを自覚していたのだろう。
――ずっと、わたしの妻でいつづけてくれるということか?彼といっしょになっても。
「そうね、あなたの妻でいてあげる。この世に一人くらい、あなたのことを覚えているひとがいないと、あなた寂しがるでしょう?」
――しかし、いまの彼氏さんがそれではご不快ではないかね?
「そうかもしれない。そうではないかもしれない。でもあなたがそう思うなら、彼と話してみてくださる?」
≪不愉快などではないですよ。≫
問われるまえに俺はいった。
≪人妻とのセックスを、旦那に見せつけながら愉しむのが、俺のいけない好みなので。
むしろあなたがそばにいるほうが、燃えると思います。≫
「いけないひとね」彼女はいった。「こういうやつなのよ」
俺の頬を手ひどくつねりながらも、彼女の頬は少しだけ、笑み崩れていた。
≪俺は貴方のことを、昭代のご主人として尊重します。
奥さんをモノにしているところを見せつけながら尊重されても迷惑だろうけど、
俺は俺なりに貴方を尊重するし、尊敬もしつづけるでしょう。
貴方の奥さんは、俺の女です。天国で、せいぜい悔しがってください≫
ふふっ・・・と俺が笑うと、相手は間違いなく笑い返してきていた。
「このふたり、どうやら気が合いそうね」傍らで彼女がいった。
「私のことを呼び捨てにされても、悔しくないの?」
――それくらい、親しまれているということだろう?
お前はそこできまり悪そうに照れていれば、それで良い。
「ウフフ、遠慮なくそうするわ」
そういう彼女は、ほんとうに照れくさそうな顔になった。
彼は俺にも語りかけてきた。
――良いでしょう。わたしは貴男のことを、わたしの家庭に歓迎します。
幸い貴男も、わたしのことを昭代の夫として認め続けてくれるようだから、
わたしも貴男に礼を尽くすことにしましょう。
最愛の家内の貞操を、貴男にプレゼントします。
どうぞわたしの前で、家内を愛し抜いていただきたい。
どうやら生前から、わたしにはそういうところがあったらしい。
こんなふうになってから、願望が叶うとは、恐れ入ったことですね。
――ふたりのなれそめは、家内から聞きました。
なんでも、駅前の広場でいきなり血を吸いたいとねだられて、
勤め帰りならといわれたのを真に受けて本当に公園で待っていらしたとか。
多分その律義さが、家内に受けたのでしょう。
そうでなければ、会ってすぐの殿方に、ストッキングを破らせるような無作法を、
許すような女ではないのです。
≪性格きついですよね?^^;≫
俺がそういうと、ご主人も応じた。
――ええ、かなりきついほうですよ、覚悟してくださいね。
ご主人も応じた。
――でも、かわいいやつです。いちど結ばれたら、心で裏切ることはまずないでしょう。
身体では、じつはだいぶ裏切られていたようですが。
こんどは昭代が、あわてる番だった。
むしろ諭したのは、ご主人のほうだった。
――生前からわかっていたよ、〇〇さんや△△さん。どちらもわたしの仕事関係の方だったね?
「〇〇さんは主人の勤め先の同僚のかた、△△さんは、取引先のかただったのです」
思わず羞ずかしそうに目を伏せる昭代さんに、ご主人はどこまでも優しかった。
――わたしの仕事がうまくいくようにと、迫られたときに拒まなかったのです。
もっともおふたりとも、セックスの相性はかなりよくて、
家内のほうもだいぶ楽しんだようですが。
さいしょは心ならずものはずが、何年もつづいたのは、そのせいだよね?
「なにもかも見通して、ひどいんだから、もう」
さすがの昭代さんも、娘をまえに情事を暴露されて、口をとがらせるしかなかった。
――わたしもむしろ、昭代の不倫を愉しんでいたのです。ですから同罪ですよ。
ヘンな両親で、すまないね加代子。
賢明な加代子さんは、何も言わないでただかぶりを振るばかりだった。
見せたあと。
2019年05月27日(Mon) 05:11:46
「ドキドキしちゃった」
娘がいった。
「のぞき見したの?しょうがない子ね」
母親がたしなめた。
「だって・・・気になるもの」
「手当をしてくれる気だったのね」
ちゃぶ台のすみに控えめに置かれた包帯やばんそうこうを、彼女は淡々と見やっていた。
「こういうときには、タオルも余計に用意しておくものよ」
冷静な言葉の響きに、彼女の娘――加代子さんは確かに、圧倒されていた。
彼女のほうが一枚も二枚も、役者が上なのだと、娘である加代子さんはすぐに、納得したに違いない。
「でもありがとう、気にしてくれて」
彼女は頬を和らげて娘をねぎらうと、それでも続けていった。
「だいじょうぶよ、あのひと、私を死なせるつもりなんてないから」
ゆったりとした声色は、謡うようになおもつづいた。
「私のことを死なせずに、私の血をずうっと、愉しみ続けたいのだから」
加代子さんはまじまじと、母親を視た。
人に恋するというのは、こういうことなのか――
見開かれた瞳に、そう書かれているかのようだった。
加代子さんは母親の後ろに回り込み、甘えるように両肩を抱きしめて身を持たれかけると、いった。
「母さんおめでと。父さんもきっと、よろこんでいるよね」
加代子さんは自分の母親に、女の先輩を見ているのだろう。
それは賢明で正しい見方だった。
「でもきっと、あの人、あなたの血も吸うわよ」
母親の言葉は、娘の胸に射込まれるように、静かで鋭かった。
「そう・・・」
娘は薄ぼんやりとこたえた。
「あたしそれでも、かまわない」
「そうなの?」
「うん、かまわない。母さんの貧血の埋め合わせになるのなら――」
きっと加代子さんには想う男性はまだいないのだろう。
彼女はまだどこまでも娘であって、女ではなかった。
娘は母親の身体を気遣い、自身の身に及ぶ純潔の危機には気が回っていないようだった。
「お気をつけなさい、男のひとは怖いから」
女の先輩は、娘を訓える姿勢を、どこまでも崩そうとはしなかった。
つい数刻ほど前のこと――
仏間に引きこもった彼女と俺とは、吸血鬼のやり方で睦みあっていた。
凛とした彼女の首すじを、せわしなく這いまわる唇を。
上品に装われたストッキングにふるいつけられ、卑猥なよだれで濡れそぼらせる舌を。
切なげに肩を揺らしながらの息遣いを。
乱されたブラウスの襟首から覗くスリップのレエス飾りを。
乱れあうふつうの男女と変わらない、悩ましく絡み合う手足を。
もっと、もっと・・・とうわごとのようにくり返す囁きを。
ふすまのすき間から、彼女の娘はどんな想いで見つめつづけていたのだろう?
それでも彼女は、俺が自分の母親に加える行為に、邪魔だてをしなかった。
吸血される母親を目の当たりに怯える娘としてではなく、
愛情の込められた腕のなかに安住する彼女のことを、同じ女として肯定したのだろう。
背後から注がれるまなざしに敵意も嫌悪も込められていなかったことを背中で感じながら、
逆立つほどに勃っていた股間を露骨に押し付けることをかろうじて回避した自分の理性に、俺は心からの安堵を覚えていた。
母親は娘に、わざと見せたに違いない。
お仏壇の前で乱れることも。
けれどもそのまえに、いまの恋人が、お仏壇に敬意を示すことも。
そして亡夫のために守り通してきた女の操を、遠からず俺に捧げようと思っていることまでも。
娘を紹介される。
2019年05月27日(Mon) 05:08:26
母「母さんに恋人ができたといったら、あなたどう思う?」
娘「えー、良いんじゃない?どんな人?」
母「・・・人の血を吸うのよ。」
娘「どういうこと?」
母「言ったとおりの意味よりその人、母さんの血を吸うの。」
娘「・・・母さんそんな人が相手で、平気なの??」
母「大丈夫よ、その人、母さんのこと愛してるから。」
娘「母さんが良ければ、あたしはいいよ。で、もうエッチしたの?(興味津々)」
母「ばかねぇ、そんなこと親に訊くもんじゃないわよ。」
娘「えっ、でも気になるよ。キスはしたでしょ?」
母「キスもまだよ、そういうことしたら、離れられなくなっちゃうでしょ?
身体の関係というのは、慎重にするものなのよ。」
あの人、まだ母さんの手も握らないのよ。――あっ、でも抑えつけられたことはあるわね。」
娘「やだっ(真っ赤)その人、家に招ばないの?」
母「あなたが良ければ・・・ね。」
娘「ねぇ、招んで招んで♪」
母「家にあげたらね、あなたも血を吸われちゃうかもしれないでしょ?だから招ばないのよ。」
娘「母さんがダメって言っても?」
母「招んだらダメとは言わないわ。だって、私のたいせつなカコちゃんの血を、吸ってもらいたいと思うもの。この家にあの人を招んだら、私カコちゃんのこと紹介しちゃうわよ。だからあの人、加代子ちゃんの血も吸うわ、きっと。」
母娘のあいだできっと、そんなやり取りがあったに違いない。
看護婦であるその人は、娘が貧血を起こしたくらいでは動じないし、賢明な人だからすぐ適切な処置を施すだろう。
俺を家に招ぶということがどういうことなのか、きちんとわきまえているのだから。
きっとあの人のなかで、娘を売る――みたいな感覚はまったくないはずだ。
自分と同じことを体験させようとするのなら、そこには親としての前向きな意思しか存在しないはず。
そしてなによりも彼女は、一人娘をだれよりも愛していた。
もちろん、俺なんかよりも。
いつもよりほんのすこしだけ他人行儀に俺を迎え入れたそのひとは、
隣の部屋から開いたドア越しにこちらを窺う娘に、
「お母さんの好きな人」
とだけ、目で促しながら俺のことを引き合わせた。
俺とはじゅうぶんすぎるほどの距離をとって、恐る恐るお辞儀をした少女に、
俺もぎこちないあいさつを返すのを、
彼女は面白そうに眺め、俺と娘とを見比べた。
制服のスカートの下から覗く白のハイソックスのふくらはぎが、ひどく眩しく俺の目を射た。
彼女は俺の視線の意図を正確に察したに違いなかったが、あえてなにと言おうとはしなかった。
獲物でも、ちゃんと礼儀は忘れないのね?
彼女はそう言って、イタズラっぽく笑った。
あんたのお嬢さんじゃないか。
気がつけば、相手をたしなめているのは、俺のほうだった。
いつものようにして構わないのよ。
芝生の上だと、芝だらけ。
お砂場だと、砂だらけ。
腕白少年じゃないのだから、そんなに毎回、お洋服を汚すわけにはいかないわ。
彼女はゆったりとほほ笑んで、いつもよりかなり余裕たっぷりに、俺を受け入れた。
チン、ちぃーん・・・
お仏壇にお線香をあげ、鉦を鳴らし、背すじを伸ばして掌を合わせる彼女の後ろで、
俺も神妙に掌を合わせた。
あら、お参りしてくださるの、うれしいわね。主人もたぶん、よろこぶわ――
果たしてご主人はほんとうに、よろこぶのだろうか?
自分の妻を犯そうとする男を、妻自身が自宅に引き入れてしまったことを?
よろこぶわよ。
彼女がいった。
だってあのひと、変態だったんだもの。
近くに娘がいないことを見計らったうえで矢のように射込んだ囁きが、俺の鼓膜をじんわりと貫いた。
あとがき
前作がまだ続きそうなので、ちょっとだけ続けてみます。
礼節と露骨
2019年05月23日(Thu) 07:59:42
なん度となく、公園でのアポイントメントを重ねていくうちに。
彼女が迷っているのを俺は感じた。
吸い取った血液は、彼女の思惑を余すところなく、伝えてくる。
彼女は思ったよりずっと年上で、娘がひとりいた。
夫はかなり以前にいなくなっていて、以後は彼女の看護婦としての収入が、母娘の日常を支えていた。
通りがかりの吸血鬼に献血をするという破格の好意を、彼女がどうして示してくれたのかまではわからなかったが、
彼女は自分の選択を悔いてはおらず、俺のふるまいにも満足していた。
ストッキングを破かれながら脚から吸血されるのは、
さすがにさいしょは厭々だったけれど。
そうすることが俺の満足度を深めると知ると、
同じく血液を喪うのなら、相手の満足のいくようにして、少しでも有効度を高めようと、
職業意識を奮い立たせて、応じてくれた。
俺が性交渉をした衝動をこらえているのも、察してくれていた。
いますぐ許すつもりはないにしても、俺のふるまいに彼女は、つねづね敬服してくれているようだった。
そうとわかるとなおさら、彼女を抱く猿臂に、いやらしさを込めるわけにはいかなくなった。
それくらい、彼女の好意と信頼とは、俺のなかで貴重なものになっていた。
うちにいらっしゃい。
そう誘いかけるのを、彼女はずっと、ためらっていた。
家に吸血鬼を招くことで、娘に岐南が及ぶことを、じゅうぶんに察していたからだ。
彼女が俺を招待すると決めるまでに、ストッキングを1ダースも破らせる羽目になっていた。
そんな生真面目な人の勤め帰りをつかまえて、ストッキングを破りながら吸血する。
一定のルールを守りながらも、俺は不埒な遊戯をやめられなくなっていて、
いつも脚に通している地味目なストッキングに、きょうもいやらしいよだれを塗りこめていった。
ナースストッキング、穿いてきてあげたわよ。興味あるんでしょう?
彼女は冷やかすようにニッと笑って、白ストッキングに透けた脚を見せびらかした。
そして、俺が目の色を変えてむしゃぶりつくのを、
勤務先で立ち働くときの装いをふしだらに乱されてゆくのを、
しまいに見る影もなくチリチリにされて、ひざ小僧がむき出しになっていくのを、
面白そうに見おろしていた。
礼節をもって。
けれども露骨に。
俺は彼女に迫り、彼女も毅然と胸をそらして、それを受け入れた。
物腰の落ち着いたご婦人だった。
2019年05月23日(Thu) 07:48:49
20代にしては、しっかりしていると思った。
たぶん結婚しているだろうとは、もちろん思った。
そういう物腰と落ち着き、貫録を漂わせたひとだった。
彼女は朝すれ違った時と同じ、白の半そでのブラウスに紫のスカート姿。
裾の長い紫のスカートを、ゆっくりとした大またでさわさわとさばきながら、歩み寄ってきた。
ほんとにいらしたのですね。
彼女はいった。
ほんとに来てくださったのですね。
俺はこたえた。
患者さんの症状を診るのが仕事ですからね。
まともに目線を合わせてくる彼女は、ちょっと得意そうだった。
脱帽です。
俺はほんとうの患者になったみたいな気分になって、頭を垂れた。
これではだめなのですか?と、彼女が差し出したのは、輸血パックだった。
残念ながら・・・と、俺はこたえた。
女のひとの素肌を咬んで、人肌の血液を摂らなければ、干からびた血管が満ちることはないのだと。
面倒なひとですね。
女は顔をしかめた。
ご迷惑ですみません・・・といいながら、我ながらムシの良い願いごとなのだと実感した。
では、どうぞ。
女のひとはベンチに腰かけて、目をつむる。
俺は定番通り、彼女の腰かけたベンチの後ろに回り込んで、両肩を抱いて、唇を首筋に近寄せた。
つかんだ両肩は意外に肉づきがしっかりとしていて、相手が鍛えられた人なのだと改めて実感した。
恐る恐る這わせた唇は、自分の意図を裏切って反応が早く、あっという間に食いついていた。
じゅわっ・・・とあふれ出る血を、一滴余さず口に含んでいく。
いつもの馴れた行為――それなのになぜか、初めて血を吸うようになったころと同じように、胸震わせながら、含んでいった。
あっ・・・
女のひとが声をあげ、額を指で抑えた。
しまった。少し吸いすぎた。
俺は慌てて首筋から唇を離し、それでもこぼれ落ちたさいごの一滴を、余さず舌で舐め取ってゆく。
彼女はしばらくのあいだ、ベンチの上でうずくまるようにしていたが、
やがて気を取り直すとハンドバッグから手鏡を取り出して、自分の顔色をみた。
そして、看護婦が患者を診るような目で手鏡を念入りに覗き込み、
取り乱してごめんなさいと、俺にいった。
俺はどうこたえて良いかわからなくて、ただだまってもじもじしていた。
恐縮する気持ちはあるのね・・・言葉には出さないけれど、彼女はそう言いたげに、白い歯をみせて笑った。
ちょっとだけ、小休止。
彼女の宣言に俺は素直に従って、同じベンチにちょっとだけ離れて腰かけた。
ご不自由なお身体ですね。
他人行儀に声をかけてきたそのひとは、まだきっと、俺とは距離を置きながらコミュニケーションをとりたいようだった。
なによりも、彼女の体から吸い取った血液が、そうした彼女の慎重さと潔癖さとを俺に伝えてくれていた。
そうですね、不自由なものです。
俺は正直に、そういった。
どれくらいの血液が必要なの?
彼女の口調は、親身な女医さんのようだった。
人がふたりいれば、なんとかなるくらいの血の量です。
大雑把な俺のこたえに、彼女はちょっと考え深い顔つきをした。
それからしばらく、俺たちは当たり障りのない会話を交わした。
自分の血を吸い取った相手がどんなやつなのか、彼女が知りたがっているのだと感じて、
俺は正直に、問われるままにこたえていった。
吸血鬼になったのは、十年近くまえのことだと。
家族全員が咬まれて、俺だけが吸血鬼になって、
両親と妹は、一人の吸血鬼への献血にかかりきりで、たまに母や妹が、空いた身体を預けてくれて。
でもいつまでも、頼り切るわけにはいかなくて、
相手を求めるともなく求めて、街をさまよっていたのだと。
会話が尽きると、彼女はいった。
もう少しなら、お相手してもよさそうです。明日は非番ですから――と。
好意を辞退する余裕は、そのときの俺にはなかった――
ふたたび吸いつけた唇は、彼女の足許を狙っていた。
本能のままに、ふくらはぎを吸いはじめていた。
あの・・・彼女は控えめな声色で、いった。
ストッキング脱ぎましょうか?
よだれで濡らしたり、咬み破るのが好きなんです。下品でごめんなさい。
そう。
彼女はちょっとばかり不平そうに鼻を鳴らして、
それでもよだれの浮いた唇を足許に擦りつけられてくるのを、止めさせようとはしなかった。
俺は彼女の穿いている肌色のストッキングを下品にいたぶり抜いて、
いびつによじれさせ、よだれをしみこませた挙句、ブチブチと咬み破りながら、吸血を始めた。
結婚している女のひとを襲うとき、犯すのが礼儀なのだと教わっていた。
けれどもそのときはどういうわけか、この場で彼女を犯してはいけないと思った。
彼女もまた、自分が犯される危機に立っていることを直感したようだった。
そして、俺がどうにか自制するのまで、見通したようだった。
さいごまで紳士的に振る舞おうとしたたことを、彼女がどうやら評価しようとしてくれている様子なのを感じて、
俺は心から良かったと思った。
彼女は翌々日の勤め帰りにここを通ると、次のアポイントをくれた。
看護婦ですから。
2019年05月23日(Thu) 07:24:06
気の強そうな色白の丸顔の頬に、肩までかかる女らしい栗色の髪をなびかせて。
その女のひとは、横断歩道を渡ってきた。
ふと目が合ったそのときに、そのひとはいぶかしそうに俺を見返し、俺は恋に落ちていた。
あの・・・
思わず声をかけた俺は、自分のしたことにびっくりしていた。
相手もやはり、びっくりしていた。
あの、何か。
足を止めて向き合った視線は強く、警戒心に満ちていた。
じつは俺、吸血鬼なんです。貴女の血が欲しいんです。
あらいざらい白状するということは心が軽くなることだと、初めて思い知った。
女の反応は、とうぜんとがったものだった。
え?どういうことですか!?
言ったとおりの意味です。
ちょっと・・・
女の顔色はかすかに怒りの色を帯びてきて、なにをばかげたことを・・・と言いたげになったが、
すぐにその色を収めると、いった。
差し迫っているのですか?
はい、差し迫っています。
どのくらい?
きょうじゅうにだれかの血を吸わないと、やばいです。
そう。
女のひとは、意外なくらい冷静な目で、俺を見た。
たしかに顔色よくないわね。
彼女は独りそう呟くと、いった。
これから仕事なんです。
ですから今すぐ応じるわけにはいきません。ごめんなさい。
どうしてもというなら、あそこの公園で待っててください。夕刻6時に通りますから。
彼女の言い草にびっくりして、口をぽかんと開けていると、彼女はいった。
わたし、看護婦ですから。
女装して訪問。
2019年05月23日(Thu) 07:16:40
「ヨウくん、ありがとうね。あのひとによろしく」
蒼白い顔をした母は申し訳なさそうに、ぼくにやさしく微笑んだ。
少し悲しげに見えたけど、反面うらやましそうでもあった。
「うん、だいじょうぶ」
そう答える声色がいつもより柔らかくなったのは。
きっと身に着けている母のよそ行きスーツのおかげだろう。
ふわりとしたブラウスの胸リボン。
キリっとしたジャケットのスーツにタイトスカート。
太ももや腰回り、足許に、ゆるりとまとわりつくパンティストッキング。
そう、ぼくは母の洋服を着て、母の代わりに吸血鬼に逢いに行く。
父がいなくなってから。
母が蒼白い顔をして勤務先から戻るようになって、
やがて仕事を辞めて、どこかに入り浸るように出かけて行って、
やがて妹を、いっしょに連れ出すようになった。
母親同様蒼白い顔で帰宅するようになった妹も、
まんざらイヤそうではなく母に連れられて出かけて行って、
やがて一人でも、ひっそりと訪問をつづけるようになった。
制服に合わせて履いていた白のハイソックスに、赤黒いシミをつけて家に戻るようになったのは。
母がパンストを伝線させたまま帰宅するようになったのと同じ経緯だった。
ああ、我が家の血は気に入られているんだな――薄ぼんやりとそう思っていた時に、
ぼくにもお招(よ)びがかかってきた。
母子三人、連れ立って歩くとき。
首すじにつけられた等間隔の咬み痕に、お互いさりげなく目線を交し合う。
それは、咬まれたものにしか目に入らない、魔性の刻印・・・
訪問先のお屋敷は、とても広い敷地の奥にうずくまっていて、
ぼくたち母子を飲み込むように、引き入れていく。
なん度か逢瀬を重ねたあと、いつもひとりの、同じ年ごろの女子と同じ待ち合わせ場所に居合わせるようになった。
呼び入れられる順番は、それぞれで、
お互い目線を交わし、黙礼しあって部屋に入っていく。
そして、ドア越しにかすかに漏れてくる吸血の音に、つぎはわが身と胸を震わせる。
着ている制服から、ぼくの学校の生徒だとはわかっていたけれど。
初めて校内で声を掛けられたのは、顔を合わせるようになってからひと月ほども経った頃のことだった。
「ヨウくん、ですよね・・・?」
声をかけてきた彼女の首すじには、鮮やかな咬み痕。
くっきり浮いた赤黒い痕に、日常のストレスが頭から離れた。
それ以来。ぼくたちは付き合うようになった。
お互い連れだってお屋敷に足を向け、
お互いドア越しに、もうひとりが吸血される気配に心を震わせて。
お互い吸血の名残につけられた首筋の咬み痕や、ハイソックスのシミに目を向けあって。
お互い、やがて恋しあうようになっていた。
ぼくたちはわかっている。
処女の生き血の吸い収めになるときに、吸血鬼は自分の犠牲者の純潔を手ずから散らすということを。
そして、セックス経験のあるご婦人を相手にするときには、男女の契りを交し合うことを礼儀だと思い込んでいることを。
ぼくたちはきっと、彼の意思に従いつづける。
そして、
結婚を控えた花嫁は、未来の花婿のまえで痴態をさらけ出し、
結婚を控えた花婿は、未来の花嫁の痴態に心震わせる。
おそろいのライン入りハイソックス。
2019年05月19日(Sun) 06:46:13
ライン入りのスポーツハイソックスが、中高生の間で流行っていたころ。
僕は毎日のように、黒や赤のラインが鮮やかなハイソックスを履いて、学校に通っていた。
彼女の理香も、僕と好みがいっしょだった。
時には示し合わせて同じ柄のハイソックスを履いてきて、
合同の体育の時間には、お互いの短パンの下に履いた同じ柄のハイソックスを見せ合うように、目配せしあって楽しんでいた。
さいしょに咬まれたのは、ぼくのほうだった。
体育会の帰り道、短パン姿のまま下校したのがまずかった。
学校の周囲に出没している吸血鬼のことは、知らないわけじゃなかったけれど――
どこかで、「襲われてもいい」という想いが、もしかすると根差していたのかも。
道端の草むらに引きずり込まれた僕は、ふくらはぎを咬まれて血を吸われ、
お気に入りの赤と黒のラインが入った白のハイソックスを真っ赤に濡らしながら、吸血される快感を埋め込まれていった。
ハイソックスを3足咬み破らせてしまったころにはもう、その行為に夢中になっていて、
同じ経験を理香にも、ぜひさせてあげたいと願っていた。
ぼくの呼び出しにこたえて、放課後校舎の屋上にあがってきた理香は、
さきに吸血された僕が咬み破られたのとおそろいの、紺のラインのハイソックスを履いてきていた。
理香は僕を置き去りにして逃げ去ろうとしたが、校舎の屋上でくり広げられた鬼ごっこは、あっという間に終わっていた。
首すじを咬まれキャーと叫んだ彼女は、白のブラウスにバラ色の飛沫を撥ねかせながら、初めての吸血を受け入れていた。
白のハイソックスを赤黒いまだら模様で濡らした僕をみとめると、
「同じようにしたいのね」と、ちょっとだけ肩を落とした。
成績の良い理香は、察しも良いほうだったのだ。
理香のふくらはぎの一番たっぷりしたあたりに、吸血鬼が咬みついて、
紺のラインのうえに赤黒いシミを広げていくありさまを、僕はただドキドキとしながら、見届けてしまっていた――
それ以来。
僕と理香とはそれまで以上に仲睦まじく、連れ立って学校を行き来するようになった。
周りも認めるカップルは、時折吸血鬼の家に招かれて、ふたりながらの献血を果たした。
おしゃれな理香は、時折ストッキング地のハイソックスを履いてきて、
僕の目の前で臆面もなく咬み破らせて、状況のあまりのなまめかしさに、僕が目の色を変えるのを、面白そうに窺っていた。
やがて理香はハイソックスを履く世代を卒業して、通勤用のスーツの下にストッキングを穿くようになった。
それでも吸血鬼宅への連れ立っての訪問は続いていて、
華燭の点を挙げる前の晩、理香は咬み破かれたストッキングを脱がされて、僕の目の前で大人の女性にさせられた。
未来の花婿の目の前での初体験に、さすがに半べを掻いた理香だったが、
彼の好物だった処女の生き血を10年以上も、目いっぱい与えたことに満足そうだった。
――これからは、奥さんの不倫も愉しもうね。
ニッと笑った白い歯にドキドキしながら、僕は思わず強く肯いてしまっていた。
あとがき
さわやかな青春の記憶は、いつか妖しい大人の恋の日常に埋没していくのかも知れません。
ライン入りのハイソックスが流行したのは、相当昔のことですが、
男女同じような柄のハイソックスを履いての体育の時間に、ユニセックスな妖しさを覚えたのは、柏木だけではなかったはず。^^
妻の喪服を着るとき。
2019年05月19日(Sun) 06:28:08
妻の不倫相手は、喪服フェチ。
さいしょのなれ初めも法事の席で、薄手の黒のストッキングに透けたむっちりとしたふくらはぎに魅かれたそうだ。
なんて不謹慎なやつ・・・と思いつつ、ふたりの関係をずるずるとみて見ぬふりをつづけてしまっているわたし――
いまは半ばおおっぴらに彼に逢いに行く妻のことを、素知らぬ顔で送り出すまでになっている。
時には派手なスーツを身に着けて、不倫に出かけていく妻の留守中に。
思い切って妻の喪服を取り出して、自分で身に着けてみた。
硬質なかんじのする厚手のスカートの下、薄黒いストッキングに包まれてにょっきりと覗く自分の脚が、
自分の脚ではないように、なまめかしく映えた。
太ももにじんわりとしみ込むナイロン生地の肌触りが、わたしの血液を淫らに染めた。
妻の不倫相手は、吸血鬼――
密会のあと帰宅した妻は、いつも蒼白い顔で息を苦しげにはずませている。
それでも密会をやめないのは、彼とのセックスがよほど良いからなのか?
ふと疑問に思ったわたしは、彼からの誘いの電話を受けたとき、
貧血を起こしていた妻の身代わりに、わたしが喪服を着て伺うとこたえていた。
喪服を着てくるのなら――とこたえた彼に、わたしは同好のものとしての共感を覚えていた。
妻の不倫現場となっている、吸血鬼の邸の一室で。
黒のパンストをくしゃくしゃにずり下ろされながら咬み破られる快感に目覚めたわたしは、
ぜひまたお逢いしたいと願っていた。
それ以来。
わたしたち夫婦はかわるがわる呼び出され、吸血を受けるようになった。
夫婦ながら服属していることが、新たな快感を呼び起こしていた。
あとがき
前作の「が」を、「の」に変えてみました。
たった一文字の変化で、意味ががらりと変わります。
それも、かなり妖しい方向に・・・。^^
妻が喪服を着るとき。
2019年05月19日(Sun) 06:16:32
妻は日常でも、時々喪服を身に着ける。
わたしがいちど、吸血鬼に襲われて、血を吸いつくされて死んだとき。
お通夜の席で黒のストッキングの足許を狙われて、喪服のまま吸血されて犯されて以来、くせになったのだという。
妻を犯されたとき、わたしはひつぎのなかにいたはずなのに。
なぜかそのときの状況を、鮮明に記憶している。
そして、忌まわしいはずのその記憶を呼びさましては、昂りを覚えてしまういけない自分がそこにいる。
妻が喪服を着ているときは、犯されても良いという意思表示。
もちろん夫のわたしが抱いてもよいし、案外吸血鬼の訪問を受ける下準備のときもある。
わたしが挑もうとして拒まれたときは、
1時間以内にわたしは、妻の不倫現場をのぞき見して、別の形で性欲を満足させている。
妻が応じてくれた時には、
この見事な肉体を彼にも自慢したくなって、
妻を派手なスーツに着かえさせ、吸血鬼の邸に連れてゆく。
家族の権利と義務
2019年05月19日(Sun) 05:57:47
次男(17)
義務・・・
登下校の際ハイソックスを着用し、献血の時に吸血鬼の娯楽に供すること
(現在は血液を全量喪失、吸血鬼化したため免除)
彼女を紹介し、処女の生き血の提供に協力すること
同じ部活のクラスメイトを誘い、ハイソックスを着用した男子の供給に協力すること
(ただし、誘引に成功したクラスメイトは吸血して良い)
母親や妹を吸血し(優先順位は吸血鬼に劣後)、吸い取った血液を自身の身体から提供すること
彼女や妹の制服を着用して献血すること
権利・・・
生存に必要な血液を、クラスメートや家族から得ること
母親の肉体を性的愉悦の対象とすること
長男(26)
義務・・・
自身の血液を提供すること
婚約者を紹介し、処女の生き血を提供すること
吸血鬼の住処まで婚約者を送迎すること
望まれた場合には、婚約者が衣装を凌辱されながら吸血され愉悦に堕ちる状況を見せつけられてしまうこと
婚約中は禁欲し、パートナーの純潔を維持すること
挙式直前に婚約者の純潔を提供すること
婚約者が貧血症になった場合には、その衣装を着用し身代わり献血を行うこと
権利・・・
婚姻前に婚約者が処女を喪失する際、一部始終を見届けること(ある意味義務??)
長女(14)
義務・・・
登下校の途中、制服姿で献血すること
吸血鬼化した次兄に血液を提供すること
処女の生き血を提供するため、禁欲して純潔を維持すること
性的関係を伴わない彼氏を作り、その家族もろとも吸血の対象者に加わらせること
権利・・・
私服で献血訪問をする場合、母親の所持するストッキングを着用すること
母親(47)
義務・・・
自身の血液を提供すること
貞操を提供すること
つねに正装し、吸血鬼の来訪を受けたときには衣装もろとも辱めを享受すること
吸血鬼化した次男と近親姦の関係を結ぶこと
週に最低1回、夫に隠れて密会を遂げること
週に最低2回、夫に同伴されて献血・情交すること
権利・・・
吸血鬼に求められて血液を提供するとき、同時に不倫を愉しむこと
次男との近親姦を愉しむこと(当初は義務だったが本人たちの意向から権利化)
父親(49)
義務・・・
勤務中に血液提供を望まれたときは、勤務を放棄して献血に応じること
妻子に対する吸血を容認すること
妻の貞操を無償で提供すること
妻が献血及びそれに伴う不倫を遂げる時、自家用車で送迎すること
次男と妻との近親姦の関係を容認すること
部下の女性を紹介し、献血を勧めること
権利・・・
吸血鬼を相手に不倫をしている妻の様子をのぞき見すること
(時と場合によっては義務)
最初の襲撃を受けた際血液を一時的に全量喪失(現在は家族から得た血液によって回復)した副作用として渇血状態となったとき、妻や娘、息子の婚約者の血液を摂取すること
(優先順位は吸血鬼に劣後。また、娘との近親姦は許容されない)
息子の結婚後、その新妻と性的関係を結ぶこと(息子には許容の義務が生じる)
あとがき
おカタい表現は、ときに微妙にエロさをかもし出すことがあります。^^
あなたはどの人物になりたいですか?^^
男性の場合は全員、パートナーを侵されちゃうんですけどね。。^^;
視る(見せつけられる?)権利は付随しますが。(笑)
結納を迎える。
2019年05月15日(Wed) 07:43:24
ふつう、結納まえにいちばんもめるのは、花嫁の父親のほうだという。
でも、わたしたちの結婚の場合には、逆だった――
彼女は少女のころから吸血鬼に血を吸われていた。
処女の生き血をたっぷり吸い取られた身体は、彼の牙に反応するようになっていて、
たとえ結婚した後でも、別離ということはあり得なかった。
「あのひとに血液を供給する手だてを、減らすわけにはいかないのです」
彼女のお父さんも、そういった。
そして彼自身も、自分の妻――彼女の母親――を、同じ吸血鬼に”進呈”していた。
彼女を家庭に迎えることは、わたしの実家を含め、吸血鬼の”ファミリー”となることを意味していた。
「そういうことなら、理解のある貴方を歓迎します」
お父さんは、そういった。
花婿としての権利は、侵害されないという。
その代わり、新婚初夜にはわたしの母が花嫁の身代わりになって血を吸われ、ひと晩愛され続けるという。
そして、ひと月の猶予期間を”蜜月”として許されたあとは、
わたしの新妻もまた、吸血鬼の情婦に加えられることになる。
わたしも、父も、自分の妻の貞操を彼に捧げなければならなかった。
わたしにいなやはなかったけれど、父が渋るのはとうぜんだった。
母は思い切ったことに、自分のほうから彼を訪ねて、咬まれてしまった。
吸血鬼に襲われた既婚の女性はほぼ例外なく、その場で貞操を奪われることになるはずが、
「お父さんと相談してからにしてくださいね」のひと言で、彼女はスカートの中を視られることなく帰宅した。
それからあとは、夫婦の会話――
「あの子の幸せのために、私は淫乱女房になりますから」と、さいごにそういわれたそうだ・・・
結納の席には、彼女とご両親は、一時間もまえに現れていた。
ふた組の家族は数時間歓談し、そのあいだ二人の母親は交代で、奥の間に呼び込まれていった。
ふすまの向こうでどういうことが行われているか、だれもが察していたけれど。
着物の襟を掻き合わせ、ほつれた髪を繕いながら戻ってくるお内儀たちを目で迎え入れると、
そのまま何事もなかったかのように、歓談をつづけるのだった。
「サービスレディ」。
2019年05月15日(Wed) 07:29:43
社内恋愛の彼女が、サービスレディに抜擢された。
オフィスに現れる吸血鬼の来客に、生き血をサービスする役割なのだ。
数か月後。
こんどはわたしが、未来の花嫁の純潔を、”サービス”する立場に立っていた・・・
≪画像紹介≫ストッキングの脚に咬みついて吸血。
2019年05月15日(Wed) 07:23:17
喪服のおばさん。
2019年05月13日(Mon) 07:55:00
白髪頭の吸血鬼が、太っちょのおばさんを捕まえて、首すじに咬みついた。
おばさんは恐怖の色を浮かべて抵抗しようとしたけれど、
そのまま、ごくごく、ごくごくと、生き血を飲まれていった。
おばさんは、黒一色の喪服姿だった。
わざわざ喪服を着て男に逢いに来たのだと、あとから知った。
女のほうも同意済みの、吸血行為だった。
どうして抵抗したかって?
それは、視られているのがわかっていたから。
他人行儀におばさんと書いたけど・・・じつは、襲われているのはぼくの母親。
息子の手前、すこしは抗ってみせたんだ。
そのほうが、父さんにも言い訳がつくだろうから・・・
五十台の人妻の生き血がなまめかしくって美味しいなんて、咬まれる前には思ってもみなかったけれど。
母さんが襲われて、黒のストッキングのふくらはぎを吸われているのを見て、納得した。
薄黒いストッキングに透けた青白い肌はなまめかしくって、吸血鬼がしゃぶりつきたくなる気分が、よくわかった。
チュウチュウ、チュウチュウ、音を鳴らして母さんの脚をいたぶり抜いて、
さいごにパリパリとストッキングを咬み破りながら、血を吸い取ってゆく。
はだけた喪服の隙間から、白い肌を滲ませて。
母さんがそのまま無事に帰されるわけはなかったけれど。
ぼくは母さんの名誉を守ろうとは思わない。
むしろ、同じ男として、吸血鬼が母さん相手の欲望を成就させるほうを望んでいた。
父さんもたぶん・・・ぼくと同じ気分のはず。
だって母さんに喪服を着せて差し向けたのは、ほかでもない父さんなのだから――
≪長編≫ 吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる ~月田家の場合~ 番外編 まゆみの花婿候補
2019年05月13日(Mon) 07:30:47
「お兄ちゃん、ハイソックス似合うね」
青田優治がふり返ると、そこには一人の少女が小首をかしげたかっこうで佇んでいた。
栗色の髪をツインテールを長く長く伸ばした少女は、両手を後ろ手に組み、いたずらっぽい笑みを口許に滲ませて、優治の顔を上目遣いに窺っている。
齢のころは、まだ小学校低学年くらいだろうか。
これ見よがしにわざとらしいポーズに、あからさまなからかいが込められているのは、優治にもよくわかる。
へたをしたら父娘くらい齢の離れた少女の嘲りに、優治はそれでも苦笑しながらこたえていく。
「ありがと、この齢でハイソックスなんて変だよね」
「うぅん、そんなことない。似合ってる」
少女は、今度は真面目に目を輝かせていた。
「いつもハイソックスに半ズボンなんだ」
汗ばむほどの陽気だった。
優治はしま模様のTシャツに白の短パン、それに真っ白なハイソックスを履いていた。
「小学生みたいなカッコ、好きなんだね。でも似合ってるよ。お兄さんが幼稚とかそういうじゃなくて」
少女は少女なりに、気を使っているらしい。
舌足らずな甘え声にそれを感じた。
優治はちょっとだけ、少女に心を動かしかけた。
けれども、「いやまだ早い、もう5~6年は大きくならないと」
と、自分の心にしぜんと制動がかかった。
少女の齢のころは、まだS学校の3年生くらい。そこから5,6歳年上といっても、中学かせいぜい高校どまりである。
そう、優治はロリコンだった。
「ねえ、脚にキスしてもいい?」
「え?」
少女の意外な申し出に、優治は怪訝そうに首を傾げた。
「そうしたいの。似合うから」
優治は、少女のいちずな目に射すくめられたようになって、「うん、いいよ」とこたえた。
こたえた――というよりは、口がしぜんと動いたという感じがした。
「じゃ、するね」
少女は齢に不似合いなくらいだらしなく口許を弛めて、優治のふくらはぎにハイソックスの上から唇を吸いつけた。
自分の足許をしなやかに締めつけるハイソックスの生地に、なま温かい唾液がしみこむ感触に、優治ははぜかぞくっとしたが、
つぎの瞬間だしぬけに、「あああッ!」と悲鳴をあげた。
少女がハイソックスの上から、優治の脚に咬みついたのだ。
優治は、またがっていた自転車もろとも、その場にひっくり返った。
尻もちをついたまま顔をあげた優治の前で、少女は無邪気に笑っていた。
口の周りは、吸い取ったばかりの優治の生き血で、べっとりと濡れている。
足腰立たないほど慌てた優治は、そのまま後じさりしようとしたが、少女は構わず優治の足首を捕まえて、
ふくらはぎにもう一度、唇を吸いつけた。
「ああああッ!」
体内の血液が急速に逆流して、吸いつけられた少女の唇に含まれてゆくのを、どうすることもできなかった。
優治はただ茫然としたまま、自分の履いている真っ白なハイソックスが赤黒い血のりに浸されてゆくのを、薄ぼんやりと見つめていた。
キュッ、キュッ、キュッ・・・
小気味よい音を立てて、少女は自分よりも20歳も年上の男を組み敷いて、血液を摂りつづけた。
少女の名前は、ナギ。
労務者の父親ともども吸血鬼に血を吸われ、齢がとまったまま自らも血を吸う身になった、吸血少女だった。
「ただいま」
蒼ざめた顔を俯けて家に戻ってきた息子を、父親は黙って迎え入れた。
息子の身になにが起きたのか、彼はじゅうぶん把握していた。
この村に来たら、だれしもそうなることが、息子の身にも例外なく降りかかっただけのことだった。
「母さんは今忙しいよ」
奥の部屋にいる母親の気配を求めた息子の背中に、父親は声をかけた。
ふすまの向こうから、母親のうめき声がした。
なにをされているのか、なんとなく察しがついた。
よく見ると、父親も蒼い顔をしていた。
スラックスの下に履いているストッキングのように薄い黒沓下が縦に裂けて、くるぶしを半周しているのに、優治は気づいた。
「ハイソックスはよく洗って、咬まれた相手に渡しなさい」
父親は手短かにそういった。
優治は黙ってあてがわれた自室にひきあげたが、
その前に風呂場の前の洗濯機に、脱いだハイソックスを放り込むことを忘れなかった。
大の男のハイソックスに欲情するような連中にとって、お袋の穿いているパンストはさらに美味だろうということは、容易に察しがついた。
優治は、さっきの少女との語らいを反芻した。
ハイソックスを真っ赤に濡らした大人の男と、彼から吸い取った血で口の周りを真っ赤に濡らした少女との、和やかな語らいを。
「お兄さん、どこから来たの」
「都会でね、先生をやっていたんだ。こんどこっちの学校で空きができたからって、先生をやりにきたんだよ」
「なあんだ、スケべー春田の後釜か」
少女の投げやりな言い方に、優治は噴き出した。
「そうだったの?」
「うん、あたしのお友達のまゆみちゃんが初めて襲われたときにね、まゆみちゃんが落としたブラジャーせしめようとしてナギに怒られたの」
「ははは、教え娘のブラジャーにいたずらするなんて、それはあんまりだね」
「お兄さんは、そういうことしないの」
「うーん、どうかな。ぼくも似たり寄ったりかな」
「じゃあスケベーなの」
「男は大概そうだよ」
話しながら優治は、目の前にいる少女が少女ではなく、対等な大人と話しているような気がした。
「都会の学校でね、女子生徒と問題起こして、いられなくなっちゃったんだ。親がここの学校を紹介してくれて、校長先生がそんなぼくを拾ってくれてね。でも、ロリコンの先生が中学教師じゃ、具合悪いよね」
「そんなことないよ、楽園じゃん」
優治には、ちょっとだけ気になることがあった。
「ところでさ、きみ、さっき、前の担任の春田先生って人が、まゆみちゃんという生徒のブラジャーをいたずらしようとしたって言ってたよね」
「ウン、言った」
「その子って、月田まゆみっていう子のことかい?」
「そうだよ、あたしの大好きなお姉ちゃん」
「お姉ちゃん?」
「血を吸わせてくれる女の子のことをね、ナギ、そう呼んでるの。空いている教室に呼び出して、父ちゃんといっしょに襲って血を吸ったんだ」
「ええっ!?」
顔色をかえた優治に構わず、ナギは言い放った。
「楽しかったなー、よく思い出すけど、あわてるまゆみちゃんのこと思い出すたび、元気が湧いてくるの」
「そういう関係だったんだね」
「そう、そういう関係」
優治は、ナギがすべてを見通していると直感した。
「まゆみちゃんは、おとなしく血を吸わせてくれたの」
「そんなわけないじゃん、あたしのことを叱りつけたり、ものを投げたりして、さんざん抵抗したの。手こずったなー」
「それはそうだよね、まゆみちゃんも、ナギちゃんのことが怖かったんじゃないかな」
「さいごにね、学校の外まで追いかけっこして、転んで死んだふりをしてまゆみちゃんをだまして、駆け寄ってきたところを咬んだの」
「ええっ、それは卑怯だな」
「さんざん血を吸い取ってあげたら、やっとまゆみちゃんもわかってくれて、それからは仲良し。だから卑怯でもなんでもないよ。うまくいったからいいじゃん」
ナギの無茶苦茶な理屈に、優治は真面目に頷きかえしてしまっている。
「まゆみちゃん、白のハイソックス大好きだよ。こんどお兄さんと二人で、おそろいで履いてうちに遊びにおいでよね」
そういうとナギは愛くるしく笑って、手を振って駈け去っていった。
吸血少女とのやり取りを思い出しながら優治は、さっき咬み破られたハイソックスを、もう少し履いていてもよかったと感じた。
三か月ほどあとのこと。
優治は月田まゆみと肩を並べて、蛭川ナギの家へと歩みを進めていた。
白の短パンと紺のプリーツスカートの下は、おそろいの白のハイソックス。
いつもは、最初にナギに咬ませたライン入りのスポーツ用のハイソックスだったが、
きょうはまゆみの通学用のハイソックスを借りて脚に通している。
優治が呼び寄せられたのは、まゆみとの縁談のせいだった。
「自分の教え娘を姦っちゃうのって、おしゃれだよね」
ナギはそういって優治をからかっていた。
赴任した時校長先生は、授業中だった月田まゆみをわざわざ呼び出して、優治に引き合わせた。
「この子が月田くん。きみの花嫁候補」
あからさまな紹介にまゆみは顔を真っ赤にして照れて、もじもじとあいさつするのが精いっぱいだった。
その初々しさに、優治がどきん!と胸をはずませたのは、いうまでもない。
受け持ちのクラスに月田まゆみが含まれていると知ると、もう授業どころではなかった。
もっとも優治のクラスはすでに崩壊してしまっていて、生徒たちは勉強やスポーツに励むよりも、
学校に出没する吸血鬼たちを制服やブルマー姿で応接することに熱中していたから、
優治の授業など、どうでもよかったのだが。
まゆみもまた、訪ねてくるナギやその父親の蛭川に呼び出されるまま、制服姿のまま若い血をすすり取られるのが日常になっていた。
優治の役目は、まゆみの血を求めて学校に現れる父娘のために、教え娘を呼び出すことだった。
そんなおぞましいことはできないとしり込みをする優治に、ナギはいった。
「その代わり、お兄ちゃんのためにまゆみちゃんを連れてきてあげる。
まゆみちゃんがお兄ちゃんを気に入ればいいけど・・・じゃないとこの縁談は破談だからね。
うまくいったら、二人で仲良く過ごすといいよ。キス以上はだめだけど。
あっ、でも、ハイソックスの脚にイタズラするのは許してあげようねって、あたし言っといてあげるから」
半信半疑でいると、夕方には本当にまゆみが家まで訪ねてきた。
真っ白な夏用のセーラー服に濃紺のスカート姿。
この季節にはちょっと暑すぎるかもしれないのに、ハイソックスもちゃんと履いてきてくれていたのをみて、優治はずきり!と胸をはずませた。
その日は意気地なくどぎまぎしただけで、なにもできずに終わってしまったが、
二度三度と面会を重ねるたびに、少しずつ会話が増えていった。
まゆみがナギの奴隷になるまでの話も、聞かせてもらった。
そしれまゆみがいまの状況に納得していること、
将来は結婚を考えているが、結婚相手にはこれからもナギ父娘に血液を提供することを認めてもらおうと思っていること、
もしも優治さんがそうだったら、女学生の制服姿にイタズラされても我慢して受け入れること・・・
その話を聞いた優治が、その場でまゆみの制服姿に挑みかかったのは、いうまでもない。
「キスより先なんだね」
まゆみにからかわれながらも、優治は教え娘の発育のよいふくらはぎにしゃぶりついて、
真っ白なハイソックスによだれをなすりつける行為に、恥を忘れて熱中してしまった。
さいしょのうちは、露骨にまゆみの血を欲しがる父娘を忌まわしく思い、
彼らのためにまゆみを呼び出すことに躊躇を感じていたが、
(むろん優治がそういう態度をとることも、この父娘の愉しみのひとつになっていた)
やがてまゆみの血を啜りに来る異形のものたちのために、自ら未来の結婚相手を呼び出すという行為に、
マゾヒスティックな歓びを見出すようになっていた。
そして、彼らが嬉々として、制服姿のまゆみのうら若い血液にありつく有様を、隣室から覗き込むことに昂奮を覚えるようになっていた。
きょうは、そんな日々にひとつの区切りをつける日だった。
道々、ふたりは何度か立ち止まっては、お互いに顔を見合わせ微笑みあった。
どちらの顔にも、照れくさそうな笑みがあった。
処女の生き血を蛭川に捧げるさいごの機会。
まゆみの初体験は、ずっとまえからナギの父ちゃんが楽しむことになっていたが、
優治は彼の望みを好意的にかなえることに、やっと同意する決心をつけたのだ。
「ナギの父さんには、まゆみちゃんの純潔は、ぼくのほうからプレゼントしてあげることにしたい」
婚約者の純潔を汚させるための訪問――
けれどもきっと、ナギの父親はいうにちがいない。
「教師のくせに、教え娘に手ぇ出して。在学中に姦っちまうとは、エエ度胸しておるなあ」
そして、優治はきっと言うだろう。
「エエ、ぼくは教師失格です。ですから罰として、ぼくのまゆみさんを、目の前で汚してください」
と。
罰なんかどうでもエエ。きょうは祝いじゃ、宴じゃ・・・
そういって相好を崩した蛭川は、薄汚れた作業衣を着た図体をにじり寄らせて、セーラー服姿のまゆみに向き直るに違いない。
穿きなれない黒のストッキングに白い脛を滲ませて、大人びた色香を発しはじめたまゆみ――
濃紺のセーラー服の襟首から覗く白い首すじを舐められて、
せり上げられた上衣から覗くわき腹に、卑猥な牙を突き立てられて、
あらわにされたブラジャーをずらされて、覗いた乳首を好色な唇に含まれて、
未来の花婿の目の前で、「ああん・・・」とあられもないうめき声を漏らしながら、
つかまれた足首の周り、薄手のストッキングがよじれて皴を波打たせるのにも気づかずに、
あからさまに這わされたべろに、唇に、牙に、身に着けたばかりの礼装をいたぶり抜かれて、
ストッキングを片方脱がされたかっこうで、秘所を舌でなぶり抜かれる――
そうした行為のひとつひとつに、優治はきっと、恥ずかしい昂奮を覚えてしまうに違いない。
「やはりさいごは、あの真っ白なハイソックスがエエのお」
呼び出された両親からハイソックスを受け取って、
履き替えたハイソックスのうえから、なおも辱めの唇を吸いつけられて、
父、母、そして未来の花婿の目の前で、
知的な色合いをした濃紺のプリーツスカートを踏みしだかれて、
真っ白なハイソックスを半ば脛からずり下ろされた両脚をめいっぱい押し拡げられて、
まゆみは初めての歓びに貫かれる――
彼女の通う学校は、親よりも年上の男との不純異性交遊を認める学校だった。
あとがき
去年の10月に長期連載したシリーズの番外編が、とつぜん思い浮かびました。
大の男が吸血少女の征服を受けて、
その彼が教師で、教え娘を姦る権利と引き替えに、
未来の花嫁の血を啜りに学校にやってくる吸血父娘のため、手引きをする――
ちょっとコアなお話に仕上げてみました。
主人公の優治は「まさはる」と読みます。
その父親は、このシリーズの冒頭に登場します。
まゆみの父親の同僚で、薄手の黒沓下を履いた男です。
知らないうちに妻が法事の手伝いに呼び出されて、喪服姿を襲われて、黒のストッキングを咬み破られながら吸血されてしまいます。
そして、それに味をしめた吸血鬼が、今度は夫の勤務先にも表れて、
「奥さんのストッキングとはひと味違う」といって、犯した人妻の夫の血を啜るようになります。
黒沓下の男は、相手が妻を情婦のひとりに加えた男と知りながらも、吸血に応じていく――
そんなストーリーだったと思います。
詳しくは、第二話を読んでください。
今回のお話は、むしろ「嫁入り前」のカテゴリにすべきかもしれないのですが、
ほかの話に合わせて「家族で献血。」に入れました。
10足め。
2019年05月12日(Sun) 09:19:10
吸血鬼に、学校帰りのハイソックスを狙われた。
相手は中年の変態で、脚フェチだった。
彼は半ズボンにハイソックスを履いた少年たちの足許に見境なく咬みついて、
ハイソックスを咬み破りながら血を吸う行為を好んでいた。
走って逃げたけれど、あとを追いかけてきて、街はずれの公園でとうとうつかまえられてしまった。
ふくらはぎに咬みついた男は、ねずみ色のハイソックスを赤黒く血浸しにしながら血を吸い上げて、
貧血でめまいを起こすまで、放そうとはしなかった。
餌食にされた少年は、ハイソックスの脚を両方とも愉しまれてしまった。
そしてさいごには正気を失って、咬み剥がれずり下ろされてゆくハイソックスを、うすぼんやりと見つめていた。
いちど血の味を覚えられてしまうと、二度三度と学校帰りを襲われた。
さいしょの三足は、学校の名誉を汚されるような気がして、罪悪感におびえながら血を吸われた。
つぎの三足は、汚されても良いから愉しませてあげなきゃと思って、厭々ながら咬ませていった。
そのあとの三足は、汚される歓びに目覚めてしまって、自分から足を差し伸べて、破らせてしまっていた。
十足めを破かれたとき。
半ズボンを脱がされて、初めて女として愛された。
ふたりの少年
2019年05月12日(Sun) 08:07:32
学校の近くに吸血鬼が棲んでいて、
下校中の少年たちを襲っては、ハイソックスを履いた脚に咬みついて、血を吸っていた。
人を殺めることはなかったので、少年たちは戸惑いながらも脚を咬まれていったし、
親たちも見て見ぬふりをしていた。
この街は、吸血鬼と平和に暮らしていた。
幼馴染のタケシとヒロシは、一日ちがいで吸血鬼に襲われた。
後からヒロシが襲われた日、ふたりが塾で顔を合わせたとき、
お互いのハイソックスに咬まれた痕と赤黒いシミが浮いているのを確かめ合って、
照れくさそうに笑いあった。
それ以来、ふたりは咬み破らせたハイソックスの数で競争するようになっていた。
「もう、3足も咬み破られちゃった」
「ぼくはきのうで4足めだよ」
吸血鬼は二人を交代で襲ったので、抜きつ抜かれつしていたけれど、
数の少ないほうの少年は差を縮めようとして、
夜になるとわざわざハイソックスを履いて、吸血鬼の潜む公園に出かけて行った。
吸血鬼は「遅いのによく来たね」と少年の頭を撫でて、
貧血になりすぎないかと身体の様子を気にかけながら、
それでもハイソックスの足許にいやらしい舌なめずりをくり返していった。
脚の線に合わせてなだらかに流れるハイソックスのリブが、じょじょに歪められ、いびつに折り曲げられて、
血に濡れながらだらしなくずり落ちてゆくのを、少年たちは面白そうに見おろしていた。
やがて、タケシのほうが一方的に、破かれたハイソックスの数を伸ばした。
なぜなら、ヒロシは血を吸いつくされて、吸血鬼になってしまったから。
自分の血が尽きてしまって、もう血を吸ってもらえなくなったのを残念がるヒロシを、タケシが慰めた。
そして、今度からはぼくの血を吸えよと、親友を誘った。
学年があがると、吸血鬼はひとつ下の子たちを狙うようになった。
自由の身になったタケシは、上級生になってもハイソックスを履き続けて、
喉をからからにして自分の血を欲しがる級友のため、
きょうもハイソックスを濡らしながら、若い血潮をあてがっていった。
ちょっとご無沙汰になりました。
2019年05月10日(Fri) 06:43:53
ちょっとご無沙汰になりました。
かろうじて棲息はしているのですが、お話がなかなかまとまりません。
それにしても、元号が代わるまでつづくとは思っていませんでした。
これからも、どうぞよろしくお願いします。