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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

少年の独白

2019年10月28日(Mon) 05:05:17

小父さん、ロリコンなんだろ?
制服のコを犯したいんだろ?
だったらぼくが、紹介してあげる。
うちの妹だけど、良いかな?
その代わり、条件があるよ。
小母さんをぼくに、襲わせてほしいんだ。
あらかじめちゃんと、話はしておいてね。
本気で抵抗されて、騒ぎになったらまずいから。

目印にね、白のハイソックス履かせてくるから。
小父さん、そういうの好きそうだから。
それが、姦っちゃってOKの合図ね。
小母さんのほうは・・・そうだな、肌色のストッキングがいいや。
うちの母さんが、よく穿いているようなやつ。
家で肌色のストッキングのときは、姦っちゃっていいことになってるんだ。
父さんがいても、平気だよ。
あのひと、視て歓ぶ人だから
・・・あっ、それは小父さんも、よく知っているんだったよね?

香奈子のこと?もちろん親には内緒だよ。
そんなこといいっていう親、さすがにいないよ。
でも本人にはよく言っておくからね。
ちょっぴり抵抗して、恥ずかしそうに目を瞑って、あとは股をゆっくり開いて、
小父さんの言うなりになればいいんだよね?
うん、うん、よく言っとく。


玄関を出るときは、何食わぬ顔だった。
兄妹で示し合わせてのお出かけ。
なにも知らない母さんは、
アラ、兄妹で珍しいわね、気をつけて行ってらっしゃい、なんて、のんきなことを言っている。
でも、あの小父さんのペ〇スって、母さんのスカートの奥にもうなん度ももぐり込んでいるんだよね?
欲張りだから。ロリコンといっても、願望だけで、専科じゃないから。
きょうは香奈子の制服のスカートの奥に、母さんのと同じペ〇スがもぐり込む日――

あらかじめ夕べのうちに話を着けたら、
でもちょっとだけ怖いっていうから、
処女なの?って聞いたら、処女だっていうから、
じゃあお兄ちゃんが先にしてやろうか?っていったら、
うん、お願い、そうして・・・っていうものだから、
初めてのキスにドキドキしながら、
ハイソックスのずり落ちた脚に毛脛の脚を絡みつけながら、
息はずませて、ドキドキしながら、
実の妹の股間を、破っていった。

後から考えたら、これが葉は娘丼ってことなの?って思ったけど。
擦り合わせた肌のすべっこさだけがやけに記憶に残って、
そっちのほうはどうでもいいやと、あまり深く考えないことにした。

玄関に佇む香奈子は、いつものセーラー服姿。
ひざ丈の濃紺のプリーツスカートの下、真っ白な真新しいハイソックスが、
ひざ小僧のすぐ下まで、ぴっちりと引き伸ばされている。
こうしてみると、まだ処女って感じだよな?って囁いたら。
うもう!やだっ!と、軽くひじ鉄を食ってしまった。

小父さんの家のピンポンを鳴らすとき、
さすがに隣の家だったから、母さんに聞かれなかったかな?って、すこし気にした。
開かれたドアの向こうには、小父さんの待ちかねたような顔があった。
さあさあと通されたリビングのソファには、
こぎれいなブラウスにスカート姿の小母さんが微笑んでいて、
いつもよりちょっとだけ濃い化粧に、早くも股間がドクドクと昂りはじめる。

こんなに若いのに、もう経験しちゃって良いの?
って小母さんに聞かれた香奈子は、
ちょっと早いかな・・・って思うけど。いいです。
と、初々しさを繕いながらもハキハキと応えている。

では――
と、どちらからともなく目で合図して。
ぼくは夫婦の寝室へ。
香奈子は小父様とふたり、そのままリビングで。
ふすまを閉ざしたのを合図に、ぼくは息荒く小母さんのブラウスの襟首を、押し広げにかかっていた。


母さんも妹も、未来の花嫁まで、小父さんに食われちゃったけど。
この満足感は何だろう?
この刺激って何だろう?

ロリコン親父とマザコン少年

2019年10月28日(Mon) 04:59:12

きみは、マザコンなんだね?
小父さんは、ロリコンなんだね?

お互い認め合った、お隣同士のご主人と少年。
少年は制服姿の妹を隣家に伴い、迎えるご主人は奥さんに言い含める。

隣同士の部屋で。
少年は人妻を、
ご主人は女子中学生を、
思い思いにねじ伏せてゆく。

少年の暴発は、奥さんのスカートの裏地とストッキングを濡らして、
ご主人の放散は、妹娘の制服のスカートとハイソックスを濡らした。

ご両親にもばれてしまったけれど。
母親はもともと、隣家のご主人と不倫の仲。
父親ももともと、妻の浮気を視て愉しむ夫。
娘の秘密さえ守ってくれればかまわないと、
初めての歓びに目ざめてしまった少女を、野放しにした。

やがて娘は成長して、何食わぬ顔で嫁に行き、
身代わりにその母親が、隣家のご主人との交際を復活させた。
そのあいだに、
人妻の味を覚えた少年は、とうとう隣家の奥さんのおなかを大きくさせてしまい、
ロリコンのご主人は願望を果たさせてもらった見返りに、なさぬ仲の子を大切に育てた。
自分の愉しみのつけを払わせてしまったことで、ちょっぴり後ろめたかった少年は、
やがて成人して、生娘と婚約したが、
大人になった女性の方がやはりよいと思ったので、
結納の帰りに隣家に立ち寄り、長いなじみとなったご主人に、婚約者の処女を進呈した。
少年と気が合ったという婚約者も、なかなかの性格で。
あなたほんとにおかしいわね、と言いながら。
未来の花婿の見守る目のまえで、こぎれいな桜色のスーツ姿を組み敷かれていって。
姑さえも狂わせたという一物に、いやというほど飼い慣らされていった。

嫁に行った娘も時おり実家に戻ってきて、
娘ができたら小父様に犯してもらうの・・・と言いながら、
旧交を温めて主婦のストレスを解消していった。

”被害者”は、少女の嫁ぎ先を含めてだれもいない。
男女はそれぞれの立場で自らの欲望を満たし、パートナーの浮気さえ愉しみつづけて暮らした。

親友の妻を襲った吸血鬼

2019年10月21日(Mon) 07:51:44

誤って親友の妻を襲った吸血鬼がいた。
暗がりで襲ったので、彼女の素性を知ったときにはすでに、首すじを咬んで血を啜ったあとだった。
彼女は吸血鬼の術中に落ちていて、その腕のなかでぐったりとなっていた。
ふつうであれば、あとは吸い放題に血を吸い取って、気のすむまで吸血したあとは性的関係まで結んでしまうのがつねだった。
けれども吸血鬼は、彼女の夫に対して友情を感じていたので、
そこまで果たすことをためらい、彼女の貞操を奪おうとはしなかった。
緩やかな夜風が通り過ぎるなか。
吸血鬼は、自分の腕のなかで眠る夫人が目覚めるまで抱きかかえ、介抱しつづけていた。

われに返った夫人は、自分の身になにが起きたのかを咄嗟にさとった。
そして、夫の親友が夫への厚誼を重んじて、彼女に辱めを加えなかったことに、素直に感謝した。
どうしようもなく飢えてしまった時以外彼が紳士であることを、夫からつねづね聞かされていたし、
もしも切実に求められてしまったなら、彼に血を与えるようにと言い含められていたのである。
夫の親友が自分に対して血を吸う以上の危害を加えないと覚った夫人は、
まだ血を欲している彼のために、すすんで首すじをゆだねた。
以前彼が、急病に倒れた夫のことを救い、すんでのことで喪うかもしれなかった生命を取り留めてくれたことを知っていたからである。
吸血鬼はストッキングを穿いたご婦人の脚に好んで噛みつくという、いけない嗜好を持っていた。
夫人は彼の願望を好意的に満たしてやることにした。
そして、良識のある婦人にとっては許容できない侮辱であるはずの振舞いを、自らの装いにたいして許していった。

彼女が自分から許しはじめると、吸血鬼は本能のおもむくままに夫人の生き血を啜り取り、ストッキングの舌触りを恥知らずに愉しんだ。
夫人は彼のあからさまな欲望にうろたえ、辟易したけれど、後悔はこのさい忘れて、渇いた要望を満たしてやった。
そして、しわくちゃになるまでいたぶられた薄いナイロン生地が、自分の足許からみるかげもなく咬み剥がれてゆくのを、ぼう然となって見届けていた。

彼は親友の自宅まで彼女を送り届けると、合わせる顔がないといいながらも、言い訳ひとつせずに謝罪の言葉を告げた。
吸血鬼の親友は、ことの次第に驚きながらも愛妻をいたわり迎え入れると、
親友の過ちを必要以上に責めようとはせずに、妻の帰り道を守ってくれた礼だけを伝えた。

吸血鬼が言い訳ひとつしなかったので、夫は妻が吸血鬼によって犯されたと思い込んだ。
けれども、妻にも対しても吸血鬼に対しても、いちどの過ちを咎めるには、彼はあまりにも寛大すぎる性格の持ち主だった。
彼はむしろ、妻を襲って血を吸い犯したのが、親友の吸血鬼でよかったとさえ感じていた。
そして、妻が犯されたことについて苦情を言うまいと心に決めた。

吸血鬼が玄関先から姿を消すと、夫人は夫に打ち明けた。
彼はそれと知らずに自分を襲ったが、血を啜っているさなかに私の素性に気がついたので、婦人としての名誉を奪おうとはしなかったと。
そして、これからも彼の誘いを受けたら、吸血を受け入れるつもりだといった。
彼は紳士だから、私を襲っても犯したりはしないだろうからと。
善意の献血なら、応じても良いと考えたのだ。
けれども夫のほうは、親友の正体を知っていたから、妻を相手に吸血に耽るとき、これ以上彼女の貞操を奪うのを我慢させるのは良くないと感じていた。
だから妻が彼に抱いている少しおめでたいイメージをさりげなく訂正するのを忘れなかった。
彼がきみを襲ったのに犯さなかったのは、きみの血を吸っている途中で、きみがぼくの妻だと気づいたからだ。
そうでなければ血を吸った後、きみのことを躊躇なく犯していたはずだ。
彼がなにも弁解しないで謝るものだから、てっきりきみのことをそれと気つかずに犯してしまったのだとばかり思っていた。
ぼくはきみが犯されていたと思い込んでいたのに、彼を許した。どういうことかわかるね?
それに彼は本来、人妻の貞操をこともなげに辱しめてしまう性癖の持ち主だから、
こんどきみが彼に遭遇したら、容赦なく犯されても文句をいえないだろう。
もしも今度、きみが彼に生き血を望まれて、それに応じるつもりなら、
きみは彼の抱く本来の願望を遂げられてしまうつもりで、彼に逢うと良い。
でも。
きみが吸血鬼に襲われてしまうことを必ずしも望んではいないけれども、
もしもそういうことになってしまうのだとしたら、きみの相手として彼なら許すことができると思う――と、心優しく賢明な夫はつけ加えた。
すでに血管のなかに吸血鬼の牙から分泌された毒液を流し込まれてしまった夫人は、守り抜かれたはずの自身の貞操をみすみす親友に譲ってしまおうという夫の言に、苦情を言いたてることはなかった。

2日後。
夫は夫人に親友の家を訪問させた。
病気のお見舞いという名目だった。
彼は夫人を吸血鬼の邸に送り届けると、邸の近くに停めた車の中で、夫人の帰りを待つことにした。
夫人は吸血鬼にあてた親友の手紙を携えていた。
そこにはこう書かれてあった。

先日は気分の悪くなった妻を送り届けてくれてありがとう。
きみは我慢してくれたけれど、そういう遠慮はしないでくれ給え。
この街で人妻が吸血鬼に襲われて凌辱を受けることは珍しくないことだし、
相手がきみであれば許容できると感じているから。
きみが守り抜いてくれた妻の貞操を、ぼくから好意を込めて進呈する。
どうか愉しい一夜を過ごしてほしい。
妻がきみの恋人の一人に加えてもらえれば、親友としてこれほど嬉しいことはない。

追伸
きみなら襲ったのがぼくの妻だと気がついても、
ためらいなく妻のブラウスを剥ぎ取って思う存分犯し、
妻を送り届けたときにあっけらかんと、きみの奥さんは良い身体をしているねと言い出すのかと思っていたよ。
こんどはぜひ、そんなふうにしてくれ給え。


あとがき
親友の妻をそれとは知らず襲ってしまった吸血鬼。
妻の貞操を守ってくれた吸血鬼のフェアプレーに感謝して、改めて妻を差し出す夫。
お互いファインプレーということで。^^

ぼくの彼女だけが、彼になん回も逢われてしまったわけ。

2019年10月21日(Mon) 07:19:07

学校時代の同窓生のなかに、吸血鬼になった男がいた。
ぼくたちの住む街は吸血鬼と共存していたので、ぼくの周りの友人たちは、
彼が自分の母親や姉妹を襲って血を吸うのを、とめだてしたりはしなかった。
彼は処女の生き血を好んだので、結婚の決まった同級生のなん人かは、
許嫁を彼に紹介して血を吸わせ、花嫁の身持ちを占ってもらっていた。
けれども彼は、幼なじみに許嫁を紹介されると、たいがい1度か2度生き血を吸っただけで、それ以上深入りすることはほとんどなかった。

ぼくの場合も、結婚が決まると母に勧められるまま、彼に許嫁を紹介することにした。
母はごく若いうちから彼に血を与えていて、もちろん身体の関係もあった。
セックス経験のある女性を餌食にするときには必ず犯すといういけない習性を、ほかの吸血鬼同様彼も持っていたのだ。
周囲でも母親や結婚した姉や兄嫁を吸われた友達はなん人もいたし、
かなり以前から母がスカートのすそを乱しながら彼の相手をしているところをのぞき見していたので、
それはごく当然のことだと思っていた。

どうやら母は、息子以上に親密になった彼のために、息子の嫁までプレゼントする気になったらしい。
ぼくは母のせかされるまま、彼女に事情を告げて同意を得ると、結婚することになったから彼女を紹介したいと、彼に電話をかけていた。
場所は彼の家が選ばれた。
初めての訪問に緊張した彼女が、真新しいストッキングのつま先を彼の家の廊下の古びた床にすべらせたとき、
なぜかゾクッとした昂りを覚えた。

彼は女性の脚に執着が強く、
首すじを咬んだ後は決まって、ストッキングを咬み破ってふくらはぎから吸血する習慣をもっていた。
彼はぼくの未来の花嫁に対しても、作法通り首すじを咬んで、
貧血でくらくらとした彼女のためにソファを進めると、腰かけた足許に唇を吸いつけていった。

あなたがいっしょだったから、血を吸われるのは怖くはなかったけど。
人前でストッキングを破られるほうが恥ずかしかった――
初めての体験にちょっと涙ぐみながらも、彼女は気丈に声を張って、ぼくにそんな苦情を言いたてた。
けれどもそのうちに、「なんだか身体がじんじんしてきた」と呟くと、
もしもあちらのご希望があるようなら、もう一度くらいならストッキングを破らせてあげても良い――と、言ってくれた。

意外だったのは、彼女がいちどで済まなかったことだった。
ほかの友人たちの彼女は、たいがいいちど招ばれただけで終わったのに。
彼女は3日にいちどは呼び出されて――それが健康を損ねることなく献血を続けるための限界だった――時にはぼくにも黙って彼との逢瀬を重ねるようになった。
彼とは学校時代いちばん仲の良いほうだったので、ぼくの嫁だからことさら仲良くしたがっているのか?と自分を言い聞かせようとしたけれど。
どうやらそういうことだけではなくて(それももちろんあったと彼は後で話してくれたけど)、
彼女そのものが気に入ったらしかった。
ぼくもまた、のんきなもので、彼がぼくの未来の花嫁を気に入ってくれたことを嬉しく思っていたし、
ふたりが仲良くすることをむしろ歓迎していた。

てっきり彼女の純潔もヨコドリされてしまったのでは?と思いながら――
ぼくはそんな状況さえも、マゾヒスティックな気分で愉しんでしまっていた。
むしろぼくのほうから、許嫁の純潔を捧げてしまおうかかとさえ思ったし、
さすがにそんなことは彼女の手前口に出すことも遠慮したけれど、
ぼくにナイショの逢瀬を遂げてきたと感じたある日などは、彼女の純潔をプレゼントやったつもりにさえなっていた。

挙式を数日後に控えたある日、彼はぼくを呼び出して言った。
今までゆう子さんの処女の生き血を愉しませてくれてありがとう。
じつは、みんなが紹介してくれた許嫁たちのなかで、彼女だけが処女だった。
だから、ついつい美味しい血をせがみ続けてしまったんだ。

きみもよく知っているだろう?
セックスの経験のある子に当たると、相手が友だちの彼女でも、ぼくは犯してしまうんだ。
だから、ほかの女の子たちは1度か2度しか逢わなかった。
なん度も常習的に犯してしまうのは、せっかく嫁さんを紹介してくれた彼らにに悪いからね。
でもきみの彼女は違った。
だから彼女のことはまだ犯してはいないし、きょうまでずっと、処女の生き血を愉しませてもらっていたんだ。
でも、もうじきお二人は結婚するんだね?
僕はきみの花嫁を処女のままお返しするよ。
どれだけ、我が物にしてしまおうかと思ったけど・・・
そこまでしたらだれのお嫁さんだかわからなくなりそうって彼女に言われたからね。
でも・・・結婚してからも、彼女に逢ってかまわないかい?
・・・・・・かまわないよね?・・・・・・

ぼくはゆっくりと大きく、頷き返していた。
きっと彼女も別の機会に同じことを告げられて、結婚してからも逢う約束をしているはず。
いまのぼくがそうしているように、ゆっくりと大きく頷き返して・・・
ふたたび彼と目線を合わせたとき。
マゾヒスティックな歓びが、どす黒い稲妻のように、ぼくの胸を小気味よく切り裂いていた。

身代わりになった姑

2019年10月21日(Mon) 06:50:03

あなたももう、気が済んだでしょう?
息子をたぶらかして、息子の彼女に手を出して。
お前の恋人の身持ちを確かめてやる、とかいって、処女の生き血をたっぷりと愉しんで。
お式の直前に美香さんの処女まで奪ってしまったのは、どうかと思うわ。
息子はあなたに、処女の生き血を一滴でも多く吸わせてあげようとして、ガマンしていたんですもの・・・

あなたもあなたよ?
美香さんが犯されるの、指をくわえて視ていたんですって?
自分の識らない処で奪われるよりも、いっしょにいながら見届けたから、まだ満足だなんて。
あなたやっぱり、おかしいわ。
でも夫婦のことですから、そこまで口は出しません。
でもね、ひとつだけお願いがあるの。
一人で良いから、あなたたち夫婦の子どもを作って頂戴。
その代わり――そのあいだはわたくしが、この方のお相手をしますから。

そんなに自信はないのよ。
だって母さん、お父さんのことしか識らないんですもの。
ただ、こちらのかたは身持ちの堅いご婦人の血を好まれるとか。
それなら母さん、好みに添えると思うわ。
お父さんには母さんから話しておきます。
嫁の身代わりということだったら、長年連れ添った妻を犯されても、我慢できると思うから――

このご年配の礼儀正しいご婦人ならば、いちいち頼まずとも脚に通してきてくれると思っていたよ。
吸血鬼は満足そうに、まだ若さを宿した姑の顔を覗き込んだ。
今夜の”新婦”はちょっと羞ずかしそうに、目を背ける。
ひざ下丈のスーツのすそから控えめに覗いたふくらはぎは、真新しい肌色のナイロンストッキングに、優雅に包まれていた。


婦人のたしなみとして姑が脚に通してきたストッキングは、ふるいつけられた舌にいたぶり抜かれ、唾液にまみれた。
そして、20年以上守り抜かれた貞操は、恥知らずな性欲に蹂躙されて、汚辱にまみれた。
身持ちの堅い人妻だった女は、新床のうえ、思ってもみなかった歓びを覚え込まされていた。


十数年後。
若妻は三十半ばの、熟れた女になっていた。


母さん、もう二人の仲を邪魔したりしないわ。
お好きなようにお付き合いすると良いわ。
ケンイチだって、それを望んでいるのだから。
せいぜい火遊びを楽しんでくださいね。
そして、この●●家の名誉を泥まみれにして頂戴ね。

でも母さんも、引き続きこの方のお相手することにしたわ。
父さんが言ってくれたの。
少しでも若いうちに、血を愉しんでもらうといいだろうって。
これからは若い嫁の身代わりではなくて、恋人の一人として愛してもらえることを、ぼくの望んでいるからって。
あのひとも。
私が抱かれているのをのぞき見して、すこし若返ったみたいだから・・・

吸血マンション ~弐号室~ 住人 丹川優一 めぐみ 優香(4)

2019年10月21日(Mon) 06:33:36

自室の居間で、丹川優一は失血で薄ぼんやりとなった頭を抱えて、あお向け大の字になっていた。
隣室では、さっきまで優一の身体から血を吸い取っていた吸血鬼が、妻を抑えつけている。
自室に招ぶようになってからも、妻のめぐみはよそ行きのスーツ姿で装っていた。
きちんとした服装をしたご婦人を玩ぶのが、あのひと好きなの。
臆面もなくそう告げる妻に、別の女の顔を見た思いだったが、優一は妻の企てを制止しようとはしなかった。
きょうめぐみが情夫のために身に着けた服は、去年の結婚記念日に買い与えた、濃い紫のスーツだった。
この服を着て、あのひとの娼婦になりたい。
夕べそう告げた妻のことを、優一はひと晩じゅう愛し抜いてしまっていた。
あのひととデキちゃってから、貴方強くなったわね。
自分の腕の中で妻がそう呟くのを、優一はセックスを愉しみ抜いた後の静かな充足感のなかで聞いていた。
セックスが強くなっただけではない、メンタルも強くなったのね。
言外に妻がそういっているのを、聞いたような気がした。

いつまでも人さまの家を、妻の情事のために使わせてもらうわけにはいかないとおもった彼は、吸血鬼を自宅に招いた。
勤務時間を抜け出して愉しむ、つかの間のひと刻。
そこで彼は自分の妻が別の男に辱め抜かれる姿に耽溺し、独り愉しみながら自室のじゅうたんを濡らしていった。

娘が毒牙にかかったのも、彼の知る前のころからだった。
「ほんとうはこのかたのために、私の処女も捧げたい気分だったの。
 でももう、あなたと結婚した後でしょう?捧げたくても捧げられないから、優香に代役を頼んだの。
あの子、二つ返事で引き受けてくれたわ――

めぐみがそう告げたとおり、優香はいま、優一の傍らで気絶している。
ひざ小僧まで引き伸ばして履いた、真っ白なハイソックスのふくらはぎを紅く染めて――
全裸の優一は、通勤用のハイソックスだけを身に着けていた。
濃紺のストッキング地の薄いハイソックスは、妻のストッキングと同じようにくまなく咬まれ破かれて、
半ばずり落ちたまま、脛に残っている。
男のハイソックス。妙jに色っぽいんだよな――
吸血鬼はそういいながら、薄地のハイソックスの舌触りを愉しみながら、唇をねっとりと這わせてきた。
妻のめぐみが、乞われるままにストッキングを脚に通して逢いに行く理由が、わかったような気がした。

バランスが良いね、と、吸血鬼がいった。
奥さんのストッキング。娘さんのハイソックス。あんたの薄手の長靴下。
奥さんの熟れた人妻の生き血。娘さんのきれいな処女の生き血。
寝取られ亭主殿の働き盛りの血も、捨てたもんではないからね。

ふたたび覆いかぶさってきた吸血鬼が、優一の頭を撫でまわし、首すじにつけた傷口をさらに深々と抉ってゆく。
ちゅうっ・・・と吸い上げられる感触に、優一は随喜の慄(ふる)えをおぼえた。
さっきまで妻の素肌を這いまわった唇が、ひどくなまめかしく感じられた。

吸血マンション ~弐号室~ 住人 丹川優一 めぐみ 優香(3)

2019年10月21日(Mon) 06:11:14

あしたの午後。
勤務中にちょっとだけ時間を作って、小生の宅にお越しください。
玄関に鍵はかけないでおきますから、ご自由にお入りください。
家内もろくろく、応対はできないと思いますが――
あとはお二人で、話をされると良いと思いますよ。
もちろん無理にはおすすめしませんが。

市間々の言う通りに、丹川は勤務先を抜け出して、自宅の隣家である彼の家の前にいた。
なかに入るのに、ちょっとだけ勇気が要った。
けれども、意外なくらいにすんなりとドアノブをまわし、中に入ってしまっていた。



初めて貞操を奪われた日のことは、いまでも鮮明に憶えている。
市間々夫人はちょっぴり意地悪そうなほほ笑みを浮かべて、彼のことを引き合わせた。
――こちら、わたくしの愛人ですの。吸血鬼で、若い人妻の生き血を欲しいと仰るので、それであなたのこと招んだのよ。
あわてふためく間もなく、だしぬけに抱きすくめられ、首すじを咬まれてしまっていた。
「あァーッ!」と思いきり叫んでしまった後、しばらくのあいだの記憶が飛んでいる。
われに返ったとき、さっき自分を咬んだ吸血鬼は、市間々夫人を抱いていた。
夫の初七日に装った喪服を着崩れさせて、露わになった乳首を口に含ませて、市間々夫人は悦に入っていた。
首すじからは吸い残された血潮がしたたり、ブラウスの襟首を汚していた。
丹川の家とさして変わらない俸給で質素な生活をしていたはずの夫人は、
値の張りそうなブラウスを汚されても、まるで顧みていないようすだった。
ひざ小僧の下までずり降ろされた、破けた黒のストッキングが、ふしだらな皴を寄せていて、
夫人がとうの昔に堕落しきってしまっていることを物語っている。
自分の穿いているストッキングも、同じようにあしらわれる――めぐみはそう直感して、身を固くした。
市間々夫人を抱きすくめていた吸血鬼がコチラを振り向くのが、同時だった。

ああっ、やめて、やめてえっ!
めぐみは泣きじゃくりながら喪服のブラウスのボタンをはずされ、
ブラウスをそぎ落とすようにして胸元から取り去られていった。
ふくらはぎに咬みつかれ、市間々夫人のストッキングと同じようにむざんに咬み破かれながら、引きずりおろされて、
ショーツを脱がされた股間にまさぐりを入れられたときにはもう、理性を喪失していた。
わが身をめぐる熟れた女の生き血が、相手の男の喉をゴクゴクと鳴らすのを耳にしながら、めぐみは犯された。

それから数日は、放心状態のまま過ぎた。
夫はなにも気づいていない様子だった。
夫婦の営みは、その間ずっとなかった。
年頃になりかけた娘の目を気にして、そういう機会を意図的に避けていたのだ。
むしろそのことが、身体に刻印された秘密を探り当てられる危険から遠ざけてくれたことを、めぐみはひそかに感謝した。
そして勤めに出てゆく夫と、登校していく娘を送り出して自由の身になると、
気がつくといそいそとおめかしをして、隣家のドアをたたいていた。
そこではすでに先客が、その家の主婦を押し倒していて、
めぐみはその次に待っている凌辱を、ためらいもなく受け容れていた。
市間々夫人と二人肩を並べて、代わる代わるよそ行きの衣装を堕とされ、ストッキングを穿いた脚をいたぶられるのが、日課となっていた。

その日も夫を送り出してしばらくすると、めぐみはよそ行きのスーツに着かえて、市間々の部屋のドアを開いていた。
市間々夫人は夫婦の床のうえでへらへらと笑いこけながら、吸血鬼とまぐわっていた。
もはやなにも隠し立てをする必要のない関係になっていた。
めぐみは、市間々夫人の血に濡れた唇で自分の唇を覆われるのを感じた。
いつものように積極的に吸い返してやると、市間々夫人の血潮の芳香が、甘酸っぱく鼻腔に満ちた。


玄関をノックしようとした手を引っ込めて、丹川はそのままドアノブをまわした。
ドアはすんなりと開いた。
玄関の向こう側は、外気とは別の種類の空気が、饐えた匂いを漂わせている。
リビングのじゅうたんのうえに、市間々夫人が長々と寝そべっていた。
首すじから流れた血が、見慣れた地味なカーディガンにも点々と散っていた。
ひざ丈のえび茶色のスカートは腰周りまでまくり上げられていて、
引き破かれた肌色のストッキングはひざ下までずり降ろされている。
目のやり場に困った丹川は、ふと奥の部屋に視線を転じた。
市間々夫人は正気を喪っていたが、外部からの侵入者の気配を感じるとふと目線をあげて、丹川を見た。
夫人は白い歯をみせてニッと笑い、アラ丹川さんの旦那様ようこそ、と、呟いた。
そして悪戯を見つけられた悪童のような、照れくさそうな笑いを浮かべて目を瞑った。

動かなくなった夫人の姿に促されるように、丹川は隣室を覗き込んだ。
視てはならないものを視た――
そう思った。
妻のめぐみの肢体が、市間々夫妻の床のうえで、自分以外の男の肉体と戯れていた。
迫られた挙句の情事であることは明白だったけれども、
その情事を重ねた末に、妻もまた愉しみはじめてしまっていることも、同じくらい明白だった。
手足をからめ合い、息を弾ませあって、唇と唇を熱っぽく重ね合わせていた。
妻はふとこちらを見、あわてたような顔になって一瞬身を固くしたが、
それでも止まらない男の動きに、自分の腰の動きを重ね合わせてゆく。
もう視られても構わない――そんな態度だった。
とっさに怒りに腹が冷えたが、つぎの瞬間股間が熱く昂るのを覚えた。
十年以上連れ添ったはずの女は、それくらいに卑猥極まりない振舞いを、ひとの家の床のうえで果たし抜いてしまっている。


十数分後。
すこしだけ待ってほしい。
妻を犯している男はちょっとだけふり返って、そういった。
身づくろいをする間くらいは、待ってやろうと思った。
同時に、情事を済ませて身づくろいをする妻の様子を目にするのも憚られた。
いったん身を引きはしたものの、女も男もなかなか部屋から出てこようとはしなかった。
ばかね。
背後で市間々夫人の声があがった。
冷ややかそうで、同情のこもった声色をしていた。
も少しだけ、見逃しておあげなさいよ。奥さんまだ若いんだから。
ふふふ・・・
市間々夫人は、意地悪そうに笑った。
ふすまの向こうからは、不貞をはたらく男女がふたたび、組んづほぐれつしている気配が伝わってきた。
丹川はふたりが満足するのを待った。股間がどうしようもなく熱くなっているのを、ひた隠しにしながら。


奥さんをお借りしています。
吸血鬼は悪びれずに、そういった。
娘さんに聞こえないように楽しみましょうよ――そういったら奥さんは同意してくれました。
賢いご婦人ですね。
娘さんがお年頃になると、ご夫婦の営みもしづらいことでしょうな、お察しします。
けれどもね、奥さんも女ですから――ご不自由なぶん、私が場を作って差し上げました。
時おり貴方も、お勤めから抜け出して見えられると良い。
いっしょに愉しみましょう。
こちらのお宅のご主人も、時おりそうしていらっしゃいますからね・・・

あなた、ごめんなさい。
妻のめぐみは、さすがに蒼ざめながら、謝罪の言葉を口にした。
けれどもしおらしく造られたその表情の裏側に、確固とした意思があるのを、丹川は直感した。
許してくれなくてもいい。それなら離婚してでも、私はこの人と添い遂げる。
でも今なら、私も妥協してあげる、貴方の顔を立てて、私の浮気を許すチャンスを与えてあげる――妻の顔にはそう書いてあった。
妻の顔に書かれた、自分のために用意された科白を棒読みするように、丹川は呟いていた。

家内がお世話になっています。
息抜きのひと刻を与えてくださっているようで――
わたしも目が覚めるような気分です。
お申し出には賛成です。
といいますか、改めてわたしのほうから、お願いさせて下さい。
知らないうちに奪られてしまった・・・というよりも、そのほうが納得がいきますので。
家内の貞操を、貴方様に無償でお譲りいたします・・・

吸血マンション ~弐号室~ 住人 丹川優一 めぐみ 優香(2)

2019年10月21日(Mon) 04:17:34

秘書室は美人ぞろいでしたからね、もともと彼に狙われていた子も多かったんです。
それで、役目柄ぼくが、彼女たちとの仲を取り持ってやったんです。
けっきょく、秘書室の子は全員、血を吸われちゃいました。
それがぼくの業績といえば、言えなくもないんですが・・・
でも基本的には彼女たちが美人だったからお目にとまっただけで、ぼくはちょっとお手伝いをしただけ――
それが今度は、家内の血も吸いたいって言われたんです。
いわば家内も秘書さんたちと同列に視てくれたわけで・・・それで、その時もお手伝いをすることにしました。
応援してあげたくなっちゃったんですね、家内に対する彼の恋を。
もちろん、単なる性欲を満足させるためだけだったのかもしれないけれど、ぼくにとっては大切な家内ですから――
他人事にはしていられませんでした。
それで、ぼくの血を全部吸い取ってもらって、いちどお墓に入ることにしたんです。
家内もぼくがいたら、吸血鬼との恋なんてしづらいだろうって思ったんですよ。

ですから、家内が初めて犯された”決定的瞬間”なるものは、視ていません。
視ないほうが良いのだって、言われました。
だって、吸血鬼に血を狙われてるんですよ。
さいしょのときは、悲鳴をあげて逃げまどったり、泣きじゃくりながらねじ伏せられて服を剥ぎ取られたりするんです。かわいそうじゃないですか。
もちろん今では、そうはいってもぼくのために定説を必死で守り抜こうとしているところを、見守ってやるべきだったかも・・・って思うことはありますが。
それはすべてがめでたく成就した後だから、そう思えるものなのかもしれないですね・・・

奥さんのことは、うちの家内が取り持ったんです。どうもすみません。
でも家内も、悪気があったわけではないんですよ。
自分の身に起こった愉しいこと、嬉しいことを、親しくしていただいている奥さまに、素直に伝えたかっただけだと思うんです。
貴方にも――吸血鬼に奥さんを寝取られたことを、誇りに感じてもらえると嬉しいんですがねえ。

市間々さんは、そのときのことをよどみなく語った。
それにしても。
市間々さんの場合は、かりにもご主人がなくなった後という”自由の身”という立場が、奥さんの背中を押したのかもしれない。
けれどもめぐみの場合、わたしという夫がいながら不貞を働いたのである。
さいしょは強いられた行為だったかもしれないが、二回目以降は自分の意思で逢っている。
そこがどうにも、不当な仕打ちを受けたという気がしてならなかった。

奥さんを責めてはいけません。

市間々さんは、わたしの心のなかを見とおすようなことをいった。
いっそ、かれにぶつけてみたらどうですか・・・?と。

吸血マンション ~弐号室~ 住人 丹川優一 めぐみ 優香

2019年10月19日(Sat) 16:35:50

勤め先で打ち合わせをしている最中に、法事帰りの妻は隣家で吸血鬼に犯されていた――

マンションでお隣のご一家は、吸血鬼とトラブって家族が崩壊したと聞く。
妻のめぐみが、そういっていた。
まさかそれを口にした本人を発端に、我が家も似たり寄ったりの運命をたどろうとは、
そのうわさ話を横っ面できいていたわたしはもちろんのこと、
うわさ話をしかけてきためぐみ自身さえも、夢にも思わないことだった。

手引きをしたのは、お隣の奥さんだった。
奥さんはご主人を吸血鬼に吸い殺されて、
まさか吸い殺した本人とは知らずに接近してきた吸血鬼と、良い仲になっていた。
未亡人なのだから、だれもとやかく口出しはするまい。
そこまでの黙契さえ、なかったように思う。
だれもがだれもに対して無関心なプライベート空間。
それがマンションと呼ばれる住居の本質なのだから。

めぐみは血を吸われることにすぐに耽溺してしまい――彼らにしてみれば相性が良いという言い方になるらしい――たったの数日後には、娘の優香を引き合わせてしまっていた。
そんなわけで、わたしが妻の様子をおかしいと感じるようになった時には、妻と娘のすべてを奪われてしまったあとのことだった。

家に電話をしても、すぐに電話口に出なくなった。
休みの日でも外出をくり返し、隣家にお邪魔している時間が特に長い。
周囲からの情報との本人の言うこととが、いちいち食い違う。
街で男に伴われて歩いているところを見かけたと人に言われ問い質しても、その日は一日家にいたと言い張るばかり。
そのくせ、勤務時間中に少なくとも5回は鳴らした電話に、彼女は一度として出なかった。
なによりも。
服装がどことなく、派手になった。
化粧もほんのりと、濃くなった。
タンスの引き出しの奥に隠し持っている真っ赤なスリップは、わたしにはまるで見覚えがなかったし、
休みの日に独りいそいそと出かけていったときには、一見地味な肌色のストッキングに、つややかな光沢がよぎっていた。

きょう切り出そうか、明日にしようか・・・と思いまどっているときに。
隣家のご主人に誘われた。
いちどは吸血鬼に吸い殺されたといううわさだったのに、彼はいつの間にか家に戻っていて、
なにごともなかったかのように勤務に戻っていた。
ちょっと、面白いものを観に行きませんか?
部屋が隣で出勤時間が似通っていたとはいえ、部署も違い接点も少ない彼とは、顔を合わせれば会釈する程度の間柄。
まさかお互いの妻が共通の愛人を抱えているなどとはつゆ知らず、
わたしはなんとなく気づまりを覚えながらも、気の乗らない彼の誘いを断る勇気を持たなかった。

連れていかれたのは街はずれの、古い洋館だった。
なにかの資料館なのだろうか。表の表札は夕やみにまぎれてつい見落としてしまったけれど。
施錠もされておらず広いエントランスを持ったこの洋館は意外に気分のよい空気を持っていて、
訪問客を歓迎していることをその空気が語っているようだった。
「ほら、御覧なさい。200年前に実用されたドレスだそうですよ」
お隣のご主人――市間々さんは、古いものに対する意外なくらい深い造詣を披露しながら、ゆったりと広間や廊下をめぐって、展示されている調度について語ってくれた。
見てくれは謹厳そのもの、それは帰宅してからとそれ以前とでも、まったく変わりはなかった。
いたって無趣味にみえる彼は、いったいどこでこれほどの知識を身に着けたのだろう?
訝しいと思う遑もなく、彼は一つのガラスケースにかがみ込んで、目を細めた。

「御覧なさい。裂け方がなんとも言えず、粋でしょう?」
指さしたガラスの向こう側には、婦人用の様相の喪服が引き裂かれた状態で一着分、飾ってあった。
元の持ち主の姿をなぞったかのように、大の字に伸びた姿勢を取っていて、
チリチリに裂けた黒のストッキングまでもが、脚の位置をなぞるように配置されていた。
「これは・・・なんとも悪趣味ですね」
わたしが顔をしかめると、彼はおだやかに微笑みながら、いった。
「そんな風におっしゃらないでください。じつはこれ、家内の持ち物なんですよ」
え?と訊き返すわたしにこたえずに、彼は流れるような調子で、低く落ち着いた声色であとをつづけた。
「家内のものなんです。わたしを土葬にした後本堂に呼ばれて、そこで襲われたんですよ。
 前から狙っていたんだそうです、家内のことを。
 それに、ストッキングを穿いた脚に咬みつくのが好きで、
 わざわざ家内に黒のストッキングを穿かせるだけのために、わたしの血を全部吸い取ったんですからね」
信じがたいことを淡々と語りつづける彼は、それでも彼に対して怒ってはいない、とわたしに告げた。
むしろ、いままで体験したことのない歓びを、彼は与えてくれました。
血を吸われる歓び。血を吸う愉しみ。わたしはそのどちらも味わうことができているのです。
それともうひとつ。
妻が犯されるところを覗く愉しみ――
これ、覚え込んでしまうともう、抜け出すことができなくなるんですヨ。
ふふふ・・・といかにも愉しそうに、彼は哂った。
そして、隣のガラスケースに歩みを進めると、ケースの陳列物を指さして、言ったのだ。
「御覧なさい。こちらは、貴方の奥さまの持ち物です。一式綺麗に飾られていますね。
 裂かれ方が、粋でしょう?」
自分の妻のものを紹介したのと同じくらい、乾いた声色だった。

前作のかいせつというか独り言というか。

2019年10月18日(Fri) 11:41:45

人さまの作品に触発されて描くことは、めったにありません。
作品というものにはそれぞれ強烈な主張や個性があるので、
真似ようとすればそれに引きずられるか、それ以下のものにしかならないケースが多いと思います。
二次創作で成功している人って、本当にすごいと思います。

またそもそもが、柏木ワールドと似たような空間を描いている作品というのは、私の知る限りでは皆無だと思います。
(pixivにいらっしゃる霧夜さまは、時おり柏木ワールドを二次元世界にしてくださいます。まあなんとありがたい♪)

まあそういう意味では良くも悪くも弊ブログのオリジナリティは高いのですが、
それでもやっぱり、なにかに触発されて描くということが、まったくないわけではありません。
それはふと耳にした、たった一言の言い回しだったり、ふと目にしたドラマのワンシーンである という意味では、
やはり創作というものが何物かからの影響力から全く自由であるとは言えないと思います。
もちろん、すべてを換骨奪胎してしまって、まったくの柏木ワールドに作り替えちゃうのは、いつものことですが。


先ほどあっぷをした下記のお話は、比較的人さまの作品に触発された度合いが大きいかもしれません。
それは、先日初めて目にした、↓のドラマです。

「中央流沙」
https://www.youtube.com/watch?v=RDAU2JuSnu4&t=66s
(この大作と私の描いたヘンなお話とは本来なんの関係もございませんので、原作者のお名前等詳細はリンク先をたどってみてください)

以下は多少のネタバレを含みますが、
官庁の汚職にまつわる疑惑を黒々しく描いた、この作家さんとしては珍しくバッド・エンドに近いストーリーです。
ドラマだけがそうなのか?と思ったら、どうやら原作もそうらしい。ちょっと意外でした。

特に巨悪に巻き込まれ自殺に見せかけて殺害された役人の妻のひょう変ぶりには、ちょっとぞくっと来るものを感じます。
いかにも質素な暮らしぶりの嘆きの未亡人が一転して、
自分の夫を罠にかけたかもしれない、年老いた巨悪の親玉と、おそらくそれとは知らず寄り添うようにして官庁に現れるというシーン。
身に着けた真っ赤なスーツに、セットしなおした艶々した黒髪に、
二人の関係を連想させる何かがあると感じるのは、決して読み過ぎではないはず。
未亡人の暮らし向きも、息子の成績もよくなり、そこだけは遺影の中の人の希望どおりには、いちおうなっている。
先ほどバッド・エンドと描きましたが、見方によっては不思議にハッピーエンドにもなっている。
巨悪が一人の人間の人生を呑み込んだあともまた、今までと同じ日常が、なにもなかったかのようにくり返されてゆく というあたりは、柏木としてもツボでした。

私のお話のほうはというと、このドラマの社会性というものには一切目をつぶり、ひたすら未亡人の行く末だけに狙いを定めています。
まあいつものパターンといえばそうなのですが、夫が一時的にしても吸い殺されてしまうというのは、柏木ワールドでは異色かもしれません。
ここは、「夫を殺したかもしれない男と萌えちゃう♪」というプロットを、しっかり頂戴しました。^^

ドラマでは、くだんの未亡人は、一連の疑惑がもみ消されたことを、
「でも容疑は晴れたんでしょう?捜査は中止なんだから」
と、他人ごとのようにたったひと言で片づけてしまっています。
亡き夫を軽んじているわけでは決してないのですが、完全にアチラ側に取り込まれてしまっている。
ゾクッと来るくらい不気味なものを感じさせる場面です。
この辺りは、実際には彼女は事件の真相を知らないわけですから、
ある程度状況を理解したうえで吸血鬼の愛人となってゆく市間々和代とは似て非なる展開というべきでしょうか。

柏木オリジナルとしては、
ヒロインである人妻に黒のストッキングを穿かせる(喪服をまとわせる)というそれだけのためにダンナを殺める――という、
本末転倒過ぎるやり口にも、吸血鬼のフェチぶりを込めてみました。
物堅いご夫婦は、妻の、ないし自身の浮気を現実なものとして考えることができません。
そんな彼らを夫婦ながら堕とすには、ご主人にはいったん消えてもらい、奥さんを未亡人にしたうえでイタダいて、
あきらめがついた?ないし納得がいった?時点でご主人を生き返らせて、
不倫女房と寝取られ亭主のカップルに作り直す・・・というストーリーです。
情事の時に裂かれた服をお布施がわりにする という上流婦人たちのくだりも、ちょっとこだわって挿入してみました。

隣室の奥さんを巻き込んでしまうお話もまた、柏木ワールドならでは?のオリジナルです。
この奥さんも、実はドラマに登場しています。
やはり質素で物堅いこちらのご夫婦の名誉のために言い添えると、ドラマではもちろんこんなことにはなりません。
ただしドラマでは、ご主人も一連の疑獄事件に巻き込まれかかるので、
へたをすれば殺害された隣室のあるじの二の舞い、
奥さんも巨悪の二号か三号にされてしまう危険性を孕んでいたのは確かだと思いますが。

ドラマの話と柏木ワールドと、話題が行ったり来たりの読みづらい文章になってしまいましたが、
さいごにひと言言い添えると、柏木が視たドラマは、昭和版です。
家のなかでもスカートを着けている主婦、ハイソックスをひざ小僧まで伸ばして履いている女の子、
そんな端々の情景が、それ以降のものとは比べものにならないくらいの奥深い風情を添えているように感じます。

吸血マンション ~壱号室~ 住人・市間々茂樹 和代 栄樹

2019年10月18日(Fri) 09:43:28

「きみの奥さんに、黒のストッキングを穿かせたい」

男はそういって、ニッと笑った。
たちのよくない笑みだった。
「今夜かあす、黒のストッキングを穿いた脚を咬みたいのでね」
そういって笑んだ口許からは、人間離れして尖った犬歯が覗く。
彼はこの街にいくたりも棲息する吸血鬼のひとりだった。

吸血鬼と差し向かいになっているのは、背広姿の中年男性。
いかにも物堅い勤め人という身なりだった。
じつは吸血鬼もまた、まったく同じくサラリーマンの格好をしている。
この街の怖いところは、そうした吸血鬼が、一般人と見分けのつかない状態で、日常生活にまぎれ込んでいることだった。

「エ・・・黒のストッキング・・・ですか。それに・・・咬みたい・・・と?」
中年男性は、困惑しているようだった。
傍らにある彼のデスクは、ほかの者とは別格に、部屋の中央に前向きにしつらえてあって、
部下たちの横顔を見おろしながら指図する位置にあった。
デスクのうえには昔の事務所らしく、横長の名前入りのネームプレートがおかれてあって、
「秘書室 審査役 市間々茂樹」
と、肩書と名前とが二行に分かれて書かれてある。
この事務所ではナンバー・2の地位を帯びたその市間々氏が、いまはだれもいない真夜中の事務室で、吸血鬼相手に当惑している。

「きみには若い女の部下をなん人も紹介してもらって、ずいぶん面倒をみてもらっている。感謝しているよ」
吸血鬼はもの柔らかにいった。
「おかげできみの部下は一人残らず、血を吸わせてもらった。
 けれどもまだ、きみの紹介できる女で、まだその首すじにわしの牙を試しておらぬおなごがいる。
 ほかならぬ、きみの奥さんだ。わかってくれるね?」
「あ・・・はい、家内をお望みでいらっしゃいますか・・・」
「そう、それも黒のストッキングを穿かせたい」
「わたしから、よく言い含めておきます」
「それだけでは足らぬ」
「と、おっしゃいますと・・・?」
「あすの夜は、きみの通夜だ。奥さんには、本物の未亡人になっていただく」
「えっ」

自業自得といえばそうだった。
彼は職場での立場を良いことに、役目柄懇意になった吸血鬼のために、部下の女性を引き合わせ、
一人また一人と、その毒牙にかけていったからだ。
彼女たちはいまでも健在で、ただし以前よりは少しばかり顔色を悪くして、感情を消した顔つきで勤務を続けている。
市は、先年から、吸血鬼と人間との共存をうたい、両者の和合を求める政策を打ち出していた。
どこの会社も一定数の吸血鬼を引き受けて、女性社員や社員の家族の血液を、定期的に提供するようになっていた。
管理職としてはかなりグレードの高い市間々は、むしろその役割を積極的に引き受けて、
社員が退勤した事務所に独り残された女性社員が襲われる光景を愉しむのを日課としていた。
彼女たちは例外なく、声もなく追い詰められて首すじを咬まれ、
眉をピリピリとひそめながら、制服のブラウスを朱に染めてゆき、
床に倒れ伏してしまうと今度は、色とりどりのストッキングを咬み破かれながら、ふくらはぎから吸血を受けるのが常だった。
吸血鬼は、ストッキングを穿いた女性の脚に咬みついて吸血することを好んだのである。

それが、とうとうこんどは、妻の番である。
あるていど覚悟はしていたし、妻にも言い含めてはあった。
妻もまた、仕方のないことですから、なにも感じたりはいたしませんから、と、夫に応えていた。
なにも感じない――
有夫の婦人(ないしはセックス経験のある女性)が吸血されるとき、決まって性交渉を伴うことを言外に秘めていた。
すでにもうじき中学という息子がいる齢の妻であったが、まだまだ若さも色香も秘めており、
年頃になりかけた息子の目のないところでの夫婦の営みも、まだ週に1、2回は遂げられていた。
無意識にか意図的にか、市間々は職場に出没する吸血鬼の注意を自分の家族から遠ざけて、
もっぱら若い女性社員にのみ注がせるように仕向けていた。
しかしそれももう、むなしい努力におわった。
「わしのために、いちばん美味しいねたをさいごまで取っておいてくれたのだろう」
どうやら目の前の吸血鬼は本気でそう思っているらしく、良く輝くその瞳は、感謝と好意に満ち溢れていた。
もはや、逃れるすべはなかった。

けれどもーー
かれの言った「本物の未亡人」という言葉に、市間々は引っかかりを感じた。
「そろそろ交代の時期だということだよ、市間々くん」
吸血鬼はまるで、市間々の上司のような口調になって、市間々との距離をさりげなく縮めた。
市間々は吸血鬼ににじり寄られたぶんだけ無意識に身を引くと、
「いったい、どういうことなのですか!?」
と、やっとの思いで訊いた。
「言ったとおりの意味だ。きみには死んでもらう。そして明日からはわしが、きみの奥さん―和代さんだったな――
 その、和代のあるじとなるのだ」
人の妻を呼び捨てにしておごそかにそう宣言すると、吸血鬼はさらに市間々との距離を縮めた。
市間々は吸血鬼が、女だけではなく男の部下までも襲い、その妻や娘、婚約者を次々とモノにしていることを知っていた。
男の血も吸うけれど、あくまでも養分の摂取としての意味しか持たない。
そうして獲られた養分は、その妻や娘を襲ってねじ伏せるときのパワーとなって還元される。
追い詰められた壁際にギュッと抑えつけられて、この力はいったいどこから由来するのかと、市間々はふと考えた。
昨日襲われた桜井さゆり君からか。彼女はまだ新人だった。
そういえば今朝、事務所にふらっと現れたとき、ベテラン女性の鷺沼加代子もまた、別室に連れ込まれていた。
お局様でとおった鷺沼加代子が昼前に早退したくらいだ。かなりの血液を摂取されたに違いない。
やり手でっ通った加代子の、自信に満ちた日頃の笑みが、市間々の脳裏を刺す。
目のまえに迫った牙の持ち主が吸血鬼なのか、加代子なのか、ふとわからなくなった。

「お願いです、命はお助けを。いままでだれの命もお取りにはならなかったはず。
 家内との関係ですか?わたしはかまいません。家内を貴男に犯されても我慢します。黙認します。
 家内にもよく言い聞かせてあるんです。
言い募る市間々の様子を、吸血鬼は明らかに愉しんでいた。
「さすがに根回しの良いことだね、審査役殿」
吸血鬼は市間々をからかいながら、むき出した牙を市間々の首すじに深々と埋めた。
「ぎゃあっ」
背骨が折れるほどの抱擁と、牙の痛みとが、同時に市間々を襲った。

寄り目になってぶっ倒れた市間々の死に顔は、どこかユーモラスでさえあった。
吸血鬼はせせら笑いながら、呟いた。
「真面目なきみに、自分の妻を抱かれる苦痛など、与えたくなかったのだよ。
 それに奥さんだって、きみがいながらわしに抱かれるなどという芸当のできるタマではなかろうに」

――――――

慌ただしいまる一日が、やっと過ぎた。
きのうの朝は、夫の死体が事務所で発見されたという一報に驚かされて、
そのあと遺体との対面、吸血行為による失血症という診断書を見せられた。
弔いの支度一切は、夫の勤め先がめんどうをみてくれた。
「わが社で死人が出たのは初めてですな」
だれもがそんなふうに、まるきり他人ごとのようにそう言い交わしているのが、
麻痺しかかった鼓膜にも響いてきた。
一連の弔いは慌ただしく過ぎていって、夫は当地での最近の習わしとして、土葬に付された。
「そのうち、地面の下から奥さんに逢いに、起き上がってくるかもしれませんよ」
夫の上司の秘書室長は、穏やかな口調で和代にそういった。
慰めているのか、世間話をしているのか、単なる冗談なのか、よくわからない口調だった。
そして、本堂で貴女に話のある人がいると、室長は告げた。
息子さんは疲れているだろうから、先に帰らせておやりなさい、と、室長は忘れずにつけ加えた。

息子の栄樹を先に帰らせると、和代はさっきまで弔いが行われていた本堂に戻っていった。
すでにすべては片づけられたあとで、がらんどうの本堂がそこにあった。
相方が待っているというのは、本堂そのものではなく、そのわきの小部屋のようだった。
そのひとつのふすまが、和代を誘い込むように、半開きに開かれている。
その半開きのふすまの間から、黒の紋付を着た婦人が一人現れ、
悩まし気な顔つきをしながら襟足を整えると、足早に立ち去っていった。
住職の奥さんかな、と、和代はおもった。
入れ違いになるのもなんとなく憚られて、和代はひと呼吸おいてから、ふすまの向こうへと、黒のストッキングの脚を踏み入れた。
和代が気づかいしたほんのひと呼吸のあいだ。
小部屋にいた吸血鬼は、相手をしてくれた住職夫人から吸い取った血液を、
彼女からせしめたハンカチで綺麗に拭い取り、なに食わぬ顔つきに立ち戻っていた。

「このたびはまくとに・・・」
型通りのあいさつを、和代は虚ろな気分で受けた。
ご主人とは日頃から懇意にして頂いていたと称する目のまえの男とは、面識がなかった。
だから、彼の発する紋切りで長々とした挨拶から早く解放されたいという想いしか、湧いてこなかった。
男のほうでは、まるで真逆の気分だった。
たまには熟した女も悪くはない。
きのうまで女の部下をあっせんしてくれていた便利な相方の女房は、
彼の無慈悲な瞳には、ただの獲物としてしか映らなかった。
直前に住職夫人の血を味わったのも、知人の妻であるきょうの獲物を、余裕をもって長時間いたぶりたいがためだった。
決して、性急な食欲を見せつけて、初めての相手をうろたえさせまい・・・などという気づかいから来るものではなかったのである。

「ところで、ご主人から聞いていなさるとは思うが、わしは吸血鬼だ」
えっ・・・?
女がうろたえたのを、吸血鬼は敏感に察した。
そしてこの女が、自分のことをあまり亭主から聞かされていなかったのを悟った。
ゆくゆくは自分の妻の番がまわってくる・・・とは理解していながらも、まだまだ先のことだと思い込んでいたのだろう。
哀れなやつ。
土の下に埋められた男を思いながら、吸血鬼はほくそ笑んだ。
「そういうわけで、きょうはあんたの血を愉しませていただく」
女がうろたえて座布団のうえで後じさりするのと、男が腰を浮かすのとが、同時だった。

ああーッ!
半開きになったふすまの奥から、悲痛な叫びが本堂にこだました。
けれども、住職夫妻をはじめ、寺に残っているであろうだれもが、哀れな犠牲者に応じることはなかった。

初めて咬まれた首のつけ根が、じんじんと疼く。
その痺れるような疼きは、理性までをも痺れさせてゆくようだと、和代はおもった。
撥ねた血がかろうじて、喪服のワンピースの襟首を浸す一歩手前でとどまっていた。
和代は傍らに転がったハンドバッグを開けて、なかからハンカチを取り出すと、
吸い残された血潮をせわしなく拭き取った。
そのあいだに、男は和代の足許にかがみ込んでいた。
なにをされるのか。
考えている余裕を、相手は与えてくれなかった。
ぬるっとした生温かい唇が、ストッキングのうえから吸いつけられるのを感じた。
あ・・・!嫌ッ!
潔癖に吊り上げた眉がピリピリと震えるのを、やつは面白がって視ている。
それが、ありありとわかった。
男はいったん離した唇を、ふたたび足許に這わせてきた。
今度は、これ見よがしに、ねっちりと、まるでストッキングの生地の舌触りでも愉しむかのように、なすりつけられてくる。
な・・・なんてことを・・・
和代はうろたえた。
まさか、主人を襲ったのも、このひと・・・?
かすかな疑念が鎌首をもたげた。
それを封じるかのように、こんどは上体に覆いかぶさってきた男の呼気が、和代の唇をふさいだ。
うっ・・・
むせ返るような男の匂いに、嫌悪の情が電流のように身体の芯を貫いた。
「はは、そう嫌がるものではない」
男は余裕たっぷりに、きょうの獲物をたしなめた。
「おやめになってください!夫を亡くしたばかりですの」
「存じておる。ご主人とは懇意の仲であった。わしも残念でならぬ」
「まさか・・・まさか・・・主人を殺めたのは貴男様では!?」
「だとしたらどうする」
「そんな・・・そんな・・・」
「安心せよ」
男は和代の疑念を否定も肯定もせず、ただひたすらに、女の唇を賞玩した。
「おやめになってください!」
和代は唇を振り放すようにして、叫んだ。
助けは、どこからも現れなかった。
どうしても、自分ひとりの力で、この男と話をつけるしかない――そう自覚すると和代はいった。
「どうすればお気が済まれるのですか」
「いましばらく、愉しませていただく」
男はみじかくそう告げて、なおも和代の唇をいたぶり、喪服のワンピースをこともなげに裂き散らすと、
あらわになった胸元を隠そうとする手を払いのけて、乳房をもてあそび、乳首を口に含んだ。
「嫌!嫌!嫌!」
和代はあくまでも、抗った。
夫と自分自身の名誉を、なんとしても守り抜かなればならないと思った。
けれども、それを独力で?圧倒的な吸血鬼の本気のアタックを、しのぎ切れるとでも思って?
自問自答しながらのせめぎあいが、しばらくつづいた。
「ご夫人はなかなか手ごわい、貞操堅固でいらっしゃるのだな」
男は、和代を抑えつけながら、いった。
「お許しください、主人のお友達なら、主人に恥を掻かせるようなことを・・・よりにもよってこのようなところで・・・」
歯を食いしばりながらも、涙ひとつ見せない和代を、吸血鬼は立派だと思った。
たぶん、夫と同じくらい生真面目で、責任感の強い女なのだろう。
やはり、夫が存命のまま襲うわけにはいかなかったのだ。わしのしたことは正しかったのだ。
吸血鬼は独り合点でそう思い、和代を力づくでねじ伏せつづけた。
再び首すじに刺し込んだ牙が、皮膚を破り、奥深く埋め込まれ、さらに強いほとびを帯びた血潮を、どす黒く噴き上げさせる。
ごくっ、ごくっ。ごくっ・・・
40前の主婦の血液が、貪婪に摂取されていき、和代の控えめな目鼻立ちに、死相が漂いはじめた。

和代は先に家に帰した息子のことを思った。
来年は、私立の中学を受験させようとしていた。
田舎町としては名門で、そこの学校に子どもを通わせることは、当地の上流階級の親たちにとっては、ひとつのステータスになっていたからだ。
夫はその姿を見ることはできない。ことによると私も、夫と同じ目に遭わされる。
そんなわけにはゆかない――妻であることは喪ってしまったとしても、母親であることだけは・・・
和代はあお向けに抑えつけられた格好のまま、涙にぬれた瞳を見開き、目のまえに息荒く迫った男をまともに視た。
「御意に従います。ですから、無事に家に帰してください」

――――――

家に帰りついた時には、疲れ切っていた。
幸い息子の栄樹は勉強部屋にこもっているらしく、玄関にも居間にも、姿を現さなかった。
住職夫人が喪服の着替えを用意してくれた。
きちんと畳まれた洋装の喪服を両手で捧げるように携えてきた夫人は、表情を消して、
「このたびはお目出度うございます」
と、堅い口調で和代に告げた。
なにがめでたいものか、と、和代は思い、住職夫人を睨みつけた。
けれども彼女はまったくどこ吹く風で、和代に睨まれていることさえ、気づいていないふうだった。
つい先刻、和代が犠牲となる直前までの赤裸々な情事の痕跡など、さらに押し隠してしまっていた。
このひとはわたしに、吸血鬼との情事のあとのあり方を無言で訓えようとしている――
和代はなんとなく、そう感じた。
引き裂かれた喪服は、吸血鬼が戦利品としてせしめていった。
襲った女性の衣類を戦利品にして、コレクションにするのだという。
和代はその嗜好に言い知れぬいやらしさを覚えたが、住職夫人のまえでそれをあらわにすることはなかった。
無言のまま立ち去ろうとする和代に、住職夫人はいった。
「その喪服は、差し上げます」
和代がびっくりして目を見開いていると、さらにたたみかけるように、いった。
「今度お越しになる時も、着替えは用意しておきます。お代はお受けするわけにはまいりませんので、お気遣いなく」
市長夫人や院長夫人といった名流の夫人たちがこの寺を訪れるときには、
着衣は自前で用意して、お布施と称して気前よく裂き取らせている――
そんなうわさを聞いたのは、この出来事が起きてからしばらく経ってからのことである。

夫婦の寝室の畳に腰を下ろすと、疲れがどっと出た。
吸い取られた血液の量も、ふつうではなかった。
それでも気丈に、鶴のように気高く顔をあげて帰途をがんばり通したのは、女の意地でもあったのかもしれない。
けれどももう、それも底をついた。
夕餉はすでに息子といっしょにお寺で澄ませてきたので、きょうのことはもう何の気づかいも要らない――
そう感じるともう、立ち直ることができなかった。
和代はほんの少しだけ泣き、それから身づくろいを済ませて、そうそうに布団に身を横たえた。


―――

2日後。
和代の姿は、ふたたび寺にあった。
息子には、初七日の打ち合わせだと言い置いて出てきた。
夕食の用意はしてきたので、きっと息子は自分とはろくろく口も利かずに、夜更かしをするか寝てしまうかするのだろう。
気難しい年頃となった息子はもう、母親とは距離を置きたがっていた。
それはいまの自分にとっても、好都合だ・・・そう思いかけて、自分の想いのはしたなさに、和代は人知れず赤面した。
これから、吸血鬼に抱かれるというのに。
夫が亡くなった、すぐあとだというのに。

脚にまとう黒のストッキングが、どのようなあしらいを受けるのか、もはや彼女にはよくわかっていた。
あのとき舌でくまなくいたぶられて、いびつによじれ、ふしだらに波打ち、他愛なく引き剥がされていった。
その行為ひとつひとつに滲んだあの執拗な情念が、いまとなっては、いとおしく感じられる。
体内に脈打つ血液に、牙から分泌された毒をまぎれ込まされたから――
そうとはわかっていても、いまはこの「いとおしさ」を大切に考えよう。
和代はそう割り切ることにした。

「お調べが済んだそうですね」
「ああ、まったくの濡れ衣だった」
吸血鬼はおうむ返しにこたえた。
まるで夫のような口ぶりだと、和代はおもった。
「お調べ」とは、夫に対する殺害の容疑である。
身近にいた吸血鬼として一応疑われ、取り調べを受けたのだ。
取り調べそのものは簡略で、彼の言はすべて受け入れられたという。
「嫌疑が晴れて、ほっとしている。あんたも、相手が夫の仇敵では、気まずいだろうからな」
吸血鬼はにんまりと笑った。
「だいじょうぶですよ」
和代もまた、にこやかに応じていた。
夫の生前のころの快活さを、早くも取り戻していた。
「かりに貴男が犯人でも――」
和代はいった。
「私、証拠を隠滅してでもあなたのことを庇いますから。あなたのものになれて、本当に嬉しい」
和代はそう口走りながら、いまのは自分の本心なのだと感じた。
男が一昨日と同じように足許にかがみ込んできて、黒のストッキングの脚をいたぶり始めても、むしろ積極的に応じていった。
もはやそれは、夫を弔うための装いではなく、新しい情夫に媚びるための衣装になり果てていた。
夫のための喪服は、すでに一昨日引き裂かれて、情夫のコレクションに加えられてしまった。
同じように彼の情婦にされていった女たちの服と、同じように。
私はしょせん、ワン・オブ・オール。
けれどもそうだとしても、後悔はない。
いまこのときだけでも、私は娼婦として、彼の腕の中で生きる。
仮に彼が、夫の仇敵でも構わない。
あなた許して。
こんないけない私を、許してくださいね。
でも今の私は、この人に辱められることが歓び。
貴方の家の名誉を汚すことが、無性に嬉しいの――

――――――

三か月ほど経ったとき。
人々はあの日弔いがあった事実を忘れた。
和代の夫である市間々茂樹が、ひっそりと帰宅したからである。
どこから戻ってきたのか、質そうとするものはいなかった。

未亡人になって吹っ切れた妻の和代は、すでに吸血鬼の愛人となっていた。
生真面目な彼女にとってみれば、夫のいる身であるうちには、不貞など思いもよらぬことだったが、
夫の生前に忠実な妻であったこの女は、今までと同じくらい熱意を込めて情夫に仕え、献身的に尽くすようになった。
再び生きることを許された夫は、以前と同じように勤務に戻った。
表向きは謹厳な勤め人だったが、
そのいっぽうで、自分が公務のなかで懇意にしている人が妻を気に入っていることを誇りに感じていた。
夫を迎えた和代は許しを請い、夫は妻の過去の不貞を受け容れ、明日からの交際までも認めたのだ。
いまでは彼は、息子ともども、妻の情事を盗み見ることに愉悦を憶えている。

夫を一時的に死なせることで、吸血鬼は一家を従順なしもべとして作り変えたのである。

――――――

初七日のあと。
和代は参列してくれた夫の同僚の妻である丹川めぐみを家に招んでいた。
丹川家は和代の住むマンションの二号室の住人でもあった。

法事に出る前の朝。
和代は夫婦の寝室で、吸血鬼と共にしていた床から起きあがると、
恋人同士のように抱き合ってから喪服に着替えた。
「いけない、これからお式だというのに――」
制止する和代のしぐさにむしろそそられた吸血鬼は、彼女の腰に巻いている漆黒のスカートの奥を、粘液で濡らしてしまっていた。
「住職の奥さまとも、まだこんな関係を?」
やんわりとした和代の責めには乗らず、吸血鬼は訊いた。
「なにかたくらんでいるな」
「エエ、熟女の血はお好きでしょう?」
「よくわかっているだろう?」
「ではもうひとり、ご紹介しますわ。私に心当たりがありますの。お隣の奥さんです。
 きょうのお式では、私のすぐ後ろに座っていますから、お分かりになりますわ」

法事のあとの疲れをみせない和代のことを、二号室の主婦である丹川めぐみは訝しんだ。
このところの和代は、やつれを見せないばかりか、夫がいたときと変わりないくらい快活に振る舞うようになった。
決して無理をしているわけではないらしい。
けれどもその快活さの源泉がどこにあるのか、めぐみには見えていなかった。
和代の首すじにくっきりとつけられた、二つ綺麗に並んだ咬み痕は、
このごろお嬢さんみたいに肩に伸びやかに流された黒髪に、すっかり覆い隠されていたからである。

「このたびは主人のことですっかりおせわになってしまって・・・ですからきょうは貴女をねぎらいたかったの」
和代の口許に泛ぶ不吉な薄嗤いをそれと予感しないまま、めぐみはすすめられた座布団に腰を下ろした。
喪服のスカートのすそから覗くふくらはぎは、たっぷりとした肉づきを持っていた。
脛の白さが黒のストッキングの薄い生地に透けて、しなやかな筋肉の起伏を微妙な濃淡で彩っている。
――あのひと、満足できそう。
和代は親し気な笑みに隠して、ひそかにほくそ笑む。

十数分後。
「あ、あァーッ!!」
微かな悲鳴が和代の鼓膜を小気味よくつんざき、やがて語尾を弱めてかき消された。
そしてその声は、隣室で母親の帰りを待つ少女の耳には、届くことがなかった。

吸血鬼たちの”前世”

2019年10月06日(Sun) 08:04:34

自身も首すじから血を流している吸血鬼――見かけたことはありませんか?
そういうシーンを目にするとき、決まって想像するのは、
「彼(彼女)が人間だった時には、どんなふうに襲われたのだろう?」
という点です。

もともと彼(彼女)は人間だったはず。
そして喪われた血液を再びわが身にめぐらせるため、今度は夜な夜な血を求めて徘徊するように――

かつて人間だったとき、どんな想いで血を吸われたのか。
いま吸血鬼となって人間を襲っているとき、どんな想いで相手を愉しんでしまっているのか。
そしてそのとき襲われている彼(彼女)は、どんな想いで血を吸い取られていったのか。

”想い”と”想い”とが交錯する瞬間。
そういうものを描いてみたいと、非常にしばしば思います。
「これぞ!」と思えるものはまだ、描けておりませんが。。。

え?
襲うときには獣になっていて、相手のことなんか考えていない?
もちろん、そういうお話のほうが多いのです。
ココでは、襲うほうと襲われるほうとが、お互いコミュニケーションをとりながら、
襲ったり襲われたりしますので・・・(笑)

樹に縛りつけられた某夫人の伝説。

2019年10月06日(Sun) 07:44:39

「太さがちょうどいいのかなあ」
公園の樹の幹を抱きつくようにして抱えながら、ケイタはいった。
この樹は、近所では、

「結わえられたご婦人の樹」

と、意味ありげに呼ばれていた。

かつて某夫人がこの公園で吸血鬼に襲われて生き血を吸い取られたうえに、この樹に縛りつけられて犯されたのである。
それに――
ケイタの傍らにいる妻の美紀子が同じ目に遭ったのが、つい先週のことである。

先月引っ越してきたばかりだった。
ケイタの実家に同居したがらなかった妻との妥協点が、この街への移住だった。
街に住むこと自体には、美紀子は異を唱えなかったのだ。
「吸血鬼の棲んでいる街だよ?怖くはないの?」
夫にそう水を向けられても、
「だってあなたも此処で育ったんでしょ?」
というばかりだった。

移り住んでからひと月ほどの間は、なにごともなかった。
けれども、やっと落ち着いた今時分になって、ケイタの日課である夕方の散歩中、公園で吸血鬼に遭遇したのだった。
気絶寸前まで血を吸い取られたケイタは自宅に電話をかけさせられた。
「この身体じゃ家までたどり着けないだろう。奥さんを呼びなさい」
吸血鬼の言い草の裏の意味を知りながら、ケイタは家に電話をかけていた。
「少し時間がかかってもいいからさ・・・よそ行きのスカートにストッキング穿いてきて」
意味ありげに告げるケイタは、美紀子が危険を感じてこの場に姿を見せないことを半分願った。
けれども美紀子は落ち着いた物腰で公園に現れたし、
お約束通りに?夫の血を吸った牙を白い首すじに突き立てられて、うら若い血を吸い取られていった。
男はケイタに、
「すまないね、でもこれも何かのご縁だと思ってもらいたい」
といいながら、ケイタが昏倒しているのをいいことに、
失血でふらふらになった美紀子を目の前の樹に縛りつけて、スカートをたくし上げていった。
ひざ小僧の下までずり降ろされたストッキングのふしだらな引きつれが、いまでもケイタの網膜を狂おしく彩っている。

旧知の吸血鬼と再会したケイタは、久しぶりに血をごちそうした。
それから、妻を紹介したいといって自分から呼び出して、美紀子の血も吸い取らせた。
夫の幼なじみの牙にみせられた美紀子は自分から願って、ブラウスを剥ぎ取らせて、
夫の前での不倫のセックスに耽った。

いまでは、そういうことになっているらしい。
夫婦ともに嫌がっていないことに、それから毎日のように、逢瀬はくり返された。
貧血で体調が思わしくない日でも、不倫セックスだけは、夫の同席の上で続けられた。
「あいさつみたいなものだからネ」
吸血鬼はそううそぶいたが、ケイタもまた美紀子に「彼がきみにあいさつをしたがっている」といって、
妻を公園に連れ出していた。

「でも某夫人の話って、どうしてみんな知っているのかしら」
美紀子がいった。
意外な質問にケイタは小首を傾げながら、
「さあ・・・自然に広まったんじゃないかな?
 人の口には戸が立てられないものだからね。
 当人がひた隠しにしていても、広がってしまったんだろう。
 考えてみれば、その某夫人も気の毒なことだね」

ケイタはふと思った。
この樹に縛りつけられて犯されたという某夫人は、いまでもこの街にいるのだろうか?
悪い評判が経って好奇心の満ちた視線にさらされて、耐え切れずに人知れず街を去ったのではないだろうか?
たしかに、夫婦ながら吸血鬼に襲われた者は、この街にはとても多い。
奥さんと吸血鬼がそれをご縁につき合い始めて、それをご主人が黙認したりいっしょに愉しんだりしているケースも、とても多い。
けれども、樹に縛りつけられて・・・という”伝説”には、猟奇的な、背徳的な香りがぷんぷんと漂っている。
先週この樹に縛りつけられて犯されたばかりの妻をこの公園に連れてきて、しゃあしゃあと散歩などしていることを棚に上げて、
ケイタは恥じて姿を消したであろう某夫人のことを思ってひとしきり嘆いた。

ばかね。
傍らで美紀子がクスッと笑った。
「なんでもわかっているような顔しちゃって、やっぱりあなたは女の気持ちがわかっていないのだわ」
ケイタはあわてた。
美紀子がこういう含み笑いを浮かべて反論するときには、決まって言い負けてしまうからだ。
「そのひとね、きっと自慢したんだと思うの」
小づくりな赤い唇から洩れた囁きは、意外な説を唱えはじめた。

樹に縛りつけられて犯されちゃうなんて、それは羞ずかしいことよ。
お外で、だれが視てるかわからないでしょう?
それに、こっちのつごうも考えないで、力づくでモノにされちゃうわけだから。

ご主人だって、某夫人に求婚したときは、たいへんだったはずよ。
結婚の承諾をもらうまでには、映画に連れて行ったり、美術館にお誘いしたり、
高級レストランでごちそうしたり、色々だったと思うの。
でも、一生一度しかしないような努力を重ねてようやく勝ち得た奥さんの身体を、
行きずりの吸血鬼に自由にされちゃうわけですもの。
悔しかっただろうなー。
でも、自分のたいせつな奥さまを無償で提供しちゃえるというのは、ご主人とその吸血鬼とは、よほどの関係だったと思うの。

某夫人はそうしたこともすべてわきまえたうえで、その吸血鬼とお付き合いを始めたんじゃないかしら。
だから、浅はかに自慢したのではなくて、いろいろな意味が込められていると思うの。
もしかするとそれはご主人に対する怨みかもしれないし
――でも怨みだけだったら、離婚しちゃうかもしれないわね――きっとそうじゃない――
むしろ、結婚しながら浮気をつづけて、意趣返しをしようとしたのじゃないかしら。
ダンナの前でのセックスで、吸血鬼もダンナのことも満足させながら、ダンナに黙って秘密の逢瀬も愉しんだのじゃないかしら。
それをだれにも言わずに黙っているなんて、愉しすぎて考えられなくて。
そのうちに、あなただけに教えてあげるわねって、ごく親しい人にだけ打ち明けるようになって。
そのうちだんだん慣れてくると、「あなただけ」の「あなた」がどんどん拡大していって、
とうとう周りの人みんなが知るようになったんだわ。
だから公然の秘密みたいになって、「ご主人も嫌がっていないみたい」となって”事件性”が消えちゃうと、もうだれも話題にしなくなったのだと思うの。
きっと某夫人のご主人も含めて、みんな知っているのよ。
某夫人がだれなのか――
そう・・・たぶん知らないのは、あなただけ――

え?

ケイタは耳を疑った。
ぼくだけが知らない??
某夫人って、だれのことだ?
混乱するケイタをまえに、美紀子は無慈悲なまでによどみなく、話をつづけた。

あなたのお母さま。

ケイタは愕然とした。

初めてわたしが襲われて、ぼう然自失になって家に戻ったとき、たまたま家の近くにいらしてて、
ブラウスが破けたりスカートに泥が撥ねていたりしたのをご覧になって、すぐにお察しになったのね。
「あなただけには話しておくわ」って、ご自分が襲われたときの出来事を、こっそり聞かせてくださったの。
「ついでにあの子にも話しておいて頂戴」って、お願いされたわ。あなた知らなかったのね。
お母さま、ふつうに真面目な主婦だったから、さいしょに犯されたときにはうろたえていらしたけれど、
そのうち慣れて、お父さまの前でも平気でお相手できるようになって、
そのうちお父さまには内緒でお相手に逢うようになって。
ダンナを裏切るのって、楽しいわよって仰っていらしたわ。
どんなに仲の良い夫婦でも、お互いが嫌だって思うときってあるでしょう?
そういうときには、逢いに行くんですって。もちろんナイショで。
夫に秘密を作るとね、悪いかなって気になって、もとの献身的な主婦に戻れるのよ ですって。
私が献身的な主婦になるかどうかはわからないけれど・・・
でも、ダンナを裏切るのは、楽しいわ。

さいごのひと言を囁くとき、さすがに美紀子の瞳は張りつめたけれど。
夫の反応に安心したのが表情に出て、小づくりな口許から白い歯がこぼれた。

きのう私を犯した人のなかに、年増好きな人がいらっしゃったの。
うちの母も未亡人していて寂しそうだから、今度紹介してあげようと思ってるーー
そんな身の毛もよだつようなことをさりげなく口にすると、美紀子は夫に囁いた。

お母さま、仰っていらしたわ。
親子は似るものなのね――って。


あとがき
前々作「妻を縛りつけた樹」と、おなじ樹なのかもしれません。
一連のお話はもちろん、あくまでもフィクションです。
良い子は決して真似しないようにしてくださいね。
(^_-)-☆

犯すもの 犯されるもの

2019年10月05日(Sat) 21:34:05

6畳間の薄暗がりのなか。
切迫した声にならない声、うめきにならないうめきが立ち込めていた。
それらがいっしょくたになって、激しい息遣いのままセイセイという吐息ばかりが耳についた。

6畳間に7人は狭すぎる。そう思った。
わたしは長女を、相棒はその母親を畳の上に抑えつけていた。
腕づくで肩を抑えつけ、首すじにかじりつくようにして、まだ生え切らない牙でガブリと食いついていた。
じゅるじゅると汚い音を立てて啜りあげた血は、うどんみりとした温もりを帯びていて、持ち主の熱情を伝えてきた。
十代の少女の健康で清冽な血潮が、いまわたしの干からびた血管を廻りはじめている。
傍らでは相棒が、わたしと同じ経緯で(何しろやり方は彼が教えたものだから)、その母親のうなじを抉っていた。
ゴクゴクと大げさな音をたてて貪っているのは、「お前も遠慮なく飲(や)るが良い」と伝えたくて、わざと聞こえよがしにしているのだろう。
そんなことさえわかるほど、彼とわたしとは通じ合っていた。

娘の父親で母親の夫である男は、押し入ってきた招かれざる来客に不意を突かれて、真っ先に首すじを抉られていた。
相棒の仲間2人がかりだったから、かなうはずがなかった。
身じろぎひとつできないほどの失血に侵されながらも、まだまだとばかりに、緩慢に血を吸い取られつづけている。
この薄暗い6畳間で息を弾ませ合っているのは、
妻と彼女を犯しているわたしの相棒、
娘と彼女を愉しんでいるわたし自身、
それに夫と彼を襲う二人組。その7人だった。

彼が自分の負傷以上に、妻や娘の運命を気にしていることは間違いなかったし、
わたしも道場を覚えていた。
つい最近、彼の立場を体験したばかりだったから。
少し過激すぎるのでは・・・?
言いかけたわたしを察するように、相棒はいった。
「じきに慣れるって」
たしかに・・・現に慣れ切ってしまっている自分にしょうしょう赤面しながら、わたしはもう一口、少女の血潮を吸い上げていた。

「血を摂れれば文句はない、死なせはしないから」
だんなを脅しつけている仲間が、こちらにも聞こえる声でそう告げた。
襲われている2人の女にも聞こえる声だった。
「代わるぞ」
相棒がいった。
「OK」
わたしもこたえた。
2人は同時に犠牲者の上から起きあがり、獲物を取り替えてのしかかった。
娘の絶望したようなうめきが、哀切に響いた。
「奥さん失礼、少しの辛抱です」
娘とは初対面だったが、妻のほうとは面識があった。
だって、襲った家は勤め先の同僚の家庭だったから。
奥さんはわたしの正体に気づくと、アッと声をあげた。
抗おうとした腕は重く、彼女の意思を反映しなかった。
着乱れたロングスカートを太ももまでせり上げて、むき出しの太ももを重ね合わせる。
もはや、血よりもそちらのほうが、目当てになりつつあった。
相棒も、同じことを考えているらしい。
娘の歯ぎしりが、悔し気に響いた。
逆立つほどに勃った一物が、奥さんの太ももをすべった。
ぬるりとした粘液が、奥さんの素肌に這っているのを感じた。
いちど男の一物を受け容れてしまった局部は濡れていて――奥さんの名誉のためにいえば、それは好色だからではない。意思に反して冒されるとき、不慮の負傷から守るための本能に過ぎない――猛り立ったわたしの一物も、すんなりと収まった。
突き入れたものが秘所の火照りに包まれるのを感じながら、わたしはぎごちなく妻以外の女との行為に入り込んだ。
擦れ合う太ももの間に、先着した相棒の粘液を感じた。
この粘液が一週間前、妻の秘所を犯した。
いまはわたしも、妻を犯した男と同じ愉悦を、愉しみ合ってしまっている――
サディスティックな振る舞いに、マゾヒスティックな歓びが重なり合って、わたしは激しく射精した。



いつもの家族のだんらんを踏みにじられた瞬間の記憶は、塗り替えられてしまったようにあいまいになっている。
そのときわたしは真っ先に襲われて、二人の吸血鬼に抑えつけられて、左右の首すじを咬まれていた。
ジュジュッとほとび出る血潮がシャツを生温かく濡らすのを、なんとなく憶えている。
その場に昏倒したわたしに、ほかの二人もズボンのうえから脚に食いついてきた。
じゅうたんの上で磔にされたようになって、わたしは体内をめぐる血液の大半を、この瞬間に摂取された。

下の娘は、お目当てにしていたやつがいたらしい。
いち早くリビングから連れ出されて、勉強部屋にあがっていく足音だけを残して娘の姿は消えた。
妻には年配の吸血鬼が、長女にはわたしと同じ年恰好のやつが、同時に首すじめがけて襲いかかった。
飢えた吸血鬼を前に、わたしたちは狩られる獲物に過ぎなかった。
灯りは消され、廊下から漏れる照明だけの薄暗さの中で、
わたしも、妻も、長女も、等しくねじ伏せられて、
三つの身体からは生き血を吸い上げられる音が、チュウチュウとあがった。

彼らは、獲物を取り替え合った。
妻を咬んだやつは長女のうえにまたがり、長女のうえにいたやつは妻を襲った。
わたしに取り付いて血を啜り取ったやつらは、やがて美味しいほうの獲物の分け前を主張しはじめて、
しまいには乱交の場のような息苦しいものになった。

「あんただったのか」
わたしはあきれた。
さいしょに長女を咬んだ、わたしと同じ年恰好のやつは、勤め先の同僚だった。
いつも半病人のように顔色がわるく、事務所の一番隅の机にうずくまるようにへばりついていた。
「息の合っていることだな」
わたしは精いっぱいの皮肉を口にした。
もちろん、妻と娘を取り替え合ったときのことである。
「同じ女を愛し合っていますので」
男のこたえに、わたしは絶句した。

彼が家族もろとも襲われたのは、先週のことだという。
彼の妻を最初に襲ったのは、いま目の前でわたしの妻を汚した男だった。
「あいつ、人妻が好みなんです。熟女の血はひと味違うというのが口ぐせで・・・
 もちろん家内を姦(や)られたときには、腹も立ったし悲しかったはずなのですが。
 いつの間にか記憶があいまいになってしまって、
 いまでは彼を家内の交際相手として受け容れています。
 気を利かせて座をはずしてやる時もありますが、
 わたしの目の前で見せつけたいみたいな願望があるらしく、そんなときには居合わせるようにしているんです。
 貴男も慣れれば、愉しめてしまいますよ」

まさか・・・
半信半疑のまなざしを向けると、男は白い歯をみせて笑った。
なんのてらいもない笑いだった。
妻や娘を汚されたわたしをあざ笑う嗤いではなかった。
むしろ、同じ経験をした連帯感を、わたしに対して感じているようだった。

ふと見ると、妻が腰を動かし始めていた。
正気を喪って、小娘みたいにはしゃぎながら、
「イヤですわ、主人のまえですわ・・・」
と、言葉では拒みながらも身体は受け容れはじめている。
その言葉すら――
淑女のたしなみとしてではなく、情夫をそそらせるために発していることが明らかだった。
わたしは思わず、妻の両肩を抑えつけていた。
「あ!」
わたしの振舞いに驚いた妻の目が、一瞬見開かれた。
けれども彼女の昂りは止まらなかった。
「イヤですわ、いけませんわ、あなた、いけないわよ・・・こんなこと・・・」
きちんとセットした髪を振り乱し、淑やかに腰にまとったロングスカートをふしだらにたくし上げ、
清楚に彩ったストッキングの脚を、下品な大またに開いて、
妻はどこまでも、堕ちていった。
わたしもどこまでも、堕ちていった。

目のまえで妻を犯したあいつの気持ちが、すこしだけ分かる。
ちく生、ひとの女房を愉しみやがって。
そう思いながらも、
ちく生、わたしよりも上手によがり狂わせやがって。
そんな思いも湧いてきて、
こんどはあいつと一緒に、だれかの家に忍び込んでみようか?
そんな気分にさえ、なってくる。
彼もまたきっと、かつて妻を襲われたときのことを思い出して、
自分が襲った家庭の世帯主のことを気遣いながら、その妻や娘を無遠慮にあしらっていくのだろう。
そしてわたしも、彼と同じ道を歩きはじめてしまうのだろう・・・


あとがき
衝動的にキーをたたいたら、珍しくバイオレンスなモノができあがってしまいました。
(^^ゞ
犯すほうは、犯されるほうの切なさを思いやり、
犯されるほうは、かつては彼もいまの自分と同じ立場だったことを思い出しながら、受難を受け容れていく。
しまいには、こんどは別のご家庭にお邪魔して、その家の妻や娘を並んで犯す。
うまく表現できないのですが、そんなイメージを描きたくてキーをたたきました。

女性の意思があまり表に現れていませんね。
ほんとうは、そこまで描き込まなければ、片手落ちというものです。反省。

妻を縛りつけた樹

2019年10月05日(Sat) 20:52:30

人間と吸血鬼の共存が可能になったとしても、
彼らに一方的に襲われて、片っ端から血を吸い取られるだけではないか――
ひそかにそう思っていたわたしだが、予想通り日ならずして、家族もろとも犠牲になる日がやってきた。

その日わたしは、早朝のランニングをしていた。
吸血鬼は夜訪れるもの、という先入観を捨てきれなかったわたしは、彼らがわたしの走路を遮るなど予想もしていなかった。
どうして彼らが真っ先にわたしを狙ったのか、さいしょはわからなかった。
彼らは、わたしの履いているハイソックスに目をつけたのだった。

手近な公園に連れ込まれたわたしは、三人の吸血鬼に組み伏せられた。
彼らのチーム・ワークは抜群だった。
わたしのことをベンチに抑えつけると、三人が三人とも、ほぼ同時に咬みついてきた。
ひとりは首すじに、ひとりは二の腕に、もうひとりはふくらはぎに。
チュウチュウと音を立てて生き血を吸い取られながら、わたしはしだいに陶然となっていった・・・

ふと気がつくと、彼らはいちように涙を流している。
意外な反応に思わず、どうしたのか?と、問いかけていた。
彼らは先週からわたしの自宅の隣家に棲みついていて、ふだんはあいさつ程度の言葉は交わしていたのだ。
彼らのひとりがいった。久しぶりに人の生き血にありついたので、と。
もうひとりがいった。ご主人の血が意外に若々しくて、予想以上に美味かったので、と。
さいごのひとりがいった。貴男の履いている靴下の舌触りが、ひどく気に入ったので、と。
律儀に応えをかえした彼らは、ふたたびわたしのうえにかがみ込んできて、生き血を貪りはじめた。
すでにベンチから転がり落ちていたわたしは、芋虫のように転がりながら、彼らのなすがままに血を吸い取らせてしまっていた。

奥さんと、年頃の娘さんが2人いますね?
たたみかけてくる彼らの目が、歓びに満ちていた。
家族には手を出さないでくれと懇願したが、受け容れてもらえなかった。
ひとりがわたしの家に走って、妻を呼んできた。
血の撥ねた芝生の上にわたしを見出した妻はびっくりして、その瞬間男たちの貪欲な猿臂に巻かれてしまっていた。
チュウチュウという音が、今度は妻に覆いかぶさった。
彼らが既婚女性を相手にするときには、性的関係を結ぶ習性があるときいていた。
失血にあえぎながらわたしは、妻が傍らの樹に縛りつけられて、
三人の男に代わる代わる愛されてしまうのを、目の当たりにするはめになった。
妻は、薄い黄色のカーディガンにえび茶色のスカートを着けていた。
日頃からきちんとした人で、肌色のストッキングを脚に通していた。
それが不幸にも、彼らの目を刺激してしまったのだ。
彼女の足許は男どもの舌にいたぶられ、淡いナイロン生地はみるみるうちに皴を拡げ、みるかげもなく咬み剥がれていった。

「さゆりと喜美香の血も、ご馳走してあげましょうよ~」
妻がわたし以上にイカレてしまったのも、無理はない。
夫の目の前で三人の男に凌辱されたのだから。
男の味を思い知らされてしまった妻は、さいしょのうちこそ抗っていたが、
やがて自分から気前よく身体を開いて、生き血を振る舞い始めて、
しまいには着慣れた洋服を皺くちゃに着崩れさせながら、夢中になって腰を使い始めてしまっていた。
破れ果てたストッキングをつま先から抜き取られながらきゃあきゃあとはしゃぐ妻の傍らで、
わたしは携帯で自宅に電話をかけていた。
たまたま出たのが長女だった。
いま父さんも母さんもお隣さんに襲われて、仲良くなったところだ。
これからうちに招待することにしたから、そのつもりでいなさい――
長女は結婚を控えていたが、感情を消した声で、待っているから気をつけて帰って来てね、と、こたえてくれた。

落花狼藉は、帰宅後が本番だった。
長女は22、次女は17.
3人の吸血鬼のうち2人は、処女の血を欲しがっていた。
お互い顔を見合わせると、それぞれの相手を決めたらしく、
わたしの二の腕を咬んだ男は長女を、わたしと妻の脚を咬んだやつは次女を追いかけまわした。
キャーっと相次いで娘ふたりの叫び声があがり、逃げ込んだ隣の部屋で2人とも咬まれてしまったのがいやでもわかった。
妻はうっとりとして、娘たちの叫び声に聞き入っていた。
「素敵・・・」と絶句しつつも、発育のよいふたつの若い身体から血液が旨そうに吸い出されていくのを気配で感じ取って、ひどくウキウキとはしゃいでいた。

次女はその場で犯された。
長女は結婚を控えているからと懇願して、凌辱を免れた。
案外と優しいやつだな、と、わたしは妻を振り返り、
妻は長女に、ほんとに良かったの?タカシさんには内緒にするから、あなたもして頂いたらあ?なんて、たしなめていた。
次女にも彼氏はいたのだが、有無を言わさず犯されてしまったので、お姉ちゃんずるいと口を尖らせた。
長女は口ごもりながらも、「だって喜美ちゃんかわいいけど、あたしはそんなことないから、せめて処女だけはタカシさんのためにとっておきたかったの」と、いった。
喜美香は「さゆりちゃんかわいい!」と姉を褒めて、「そんなら許す」といった。
そして、自分を犯した吸血鬼を上目遣いで睨んで、「彼には内緒だからね」といいつつも、血の流れた太ももを再び、開いていった。

娘たちを追いかけようとしなかったやつは、妻に執心だった。
夫婦ながら首すじを咬まれていたので、言うことを聞くしかなかった。
娘たちがそれぞれの勉強部屋にこもって、改めて相手を始めたとき、
彼は夫婦の床を我が物顔に占拠して妻の上におおいかぶさった。
妻は自分の情夫が女の洋服を引き裂くのを愉しむ習慣を持っていると知ると、
よそ行きのスーツに着替えて、荒々しくまさぐる掌に、ゆだねていった。
「主人の前です、お止し下さい」とかいいながら、わたしのほうをチラチラ盗み見しながら、襲われることを愉しみ始めていた。
制止する言葉やしぐさが、情夫をいっそう燃えたたせると思ったからだった。


3人はひと月というもの、我が家に入り浸った。
しかし、わたしたちが失血で身体の不調を訴え始めると、初めてしまった、という顔をして、
身体が治ったころにまた来ると言い置いて、家からも隣家からも姿を消した。


公園のベンチに腰かけながら、わたしは妻と、わたしが家で淹れてきたコーヒーを愉しんでいた。
2人が座るベンチは、わたしが最初に襲われたときに、正気を喪うまで生き血を吸い取られた場所。
目のまえにそびえる樹は、呼び出された妻が縛りつけられて、代わる代わる犯された証し。
夫婦の床を占拠されているあいだ、わたしはコーヒーを淹れるのを習慣にしていた。
彼らは血の愉悦からさめて正気にかえると、ふつうの人間と変わらず飲み食いし、知的な会話も通じることが分かったから。
妻や娘を襲っている吸血鬼のためにコーヒーを淹れる。
わたしは卑屈な気分になるよりもむしろ、そういう被虐的な気分を愉しむようになっていた。

「いなくなると、寂しいもんだわね」
妻はコーヒーを口にしながら、つぶやいた。
コーヒー通の妻は、わたしの淹れたコーヒーを、味も香りも愉しみながら、ゆったりと口に含んでいく。
首すじにつけられた痣ふたつが、少しだけ薄くなっていた。
けれども色白の肌からは、まだまだくっきりとした情欲の痕跡は執拗に残っている。

長女は、吸血鬼に襲われたことを彼氏に打ち明けたという。
「振られるの覚悟ですべて話した」とあとで母親に告げたそうだが、彼氏もこの街の人間だった。
結婚の決まった彼に操を立てて処女を奪うのは見逃してもらったと聞かされると、彼女を優しく抱きとめたという。
「今夜、彼のところに泊ってくる」
と告げて、ひと晩家を留守にした長女。
翌日には彼氏と連れだって吸血鬼の家を訪問し、3人の吸血鬼に惜しみなく若い血を与えたという。
いちどモノにした彼女を提供する羽目になった彼氏は、吸血鬼たちに「気が進まなかったら座をはずしても良い」といわれたが、
ゆったりとほほ笑んで、最後まで見届けていきます、とこたえたという。
そして、未来の花嫁が吸血鬼3人に愛され尽くしてしまうと、「ふつつかでした」と頭を垂れる長女を抱き支えて、家までエスコートしたという。

次女の場合も、彼氏にばれてしまった。
処女を捧げることを強いた男が、次女の彼氏のところに出向いていって、「きみの恋人はいい身体をしている」と、無神経極まりないことを告げたのだった。
次女の彼氏からパンチを10発ほどももらった後、ふたりは不思議なことに、意気投合した。
「処女を奪られたのは許すとしても、そこは観たかった」という彼氏に、
「さいしょは視ないほうが良いのだ」ともっともらしくアドバイスする吸血鬼。
妻は隠れて聞きながら、笑いをこらえていた。

血液を抜かれて空っぽになった血管が、きょうも疼いている。
脱力した感じが居心地よくもあり、なにか飽き足らない予感も渦巻き始めている。
「あなたもほかの人を襲っていらっしゃいよ」
妻が傍らで、白い歯をみせた。
血を抜かれ過ぎて半吸血鬼になったわたし――
今は時おり、自分や家族の血を吸った彼らと連れだって、街の住人の家にお邪魔することもある。
聞けば彼らももとは普通の人間で、吸血鬼に妻や娘、母親を寝取らせることでいまの”特権”を得たという。
寝取られる愉しみを覚えてしまった男たちは、周囲にも同好のものを増やしながら、自らの欲望を満たしてゆく。


振り仰ぐと、目のまえの樹は赤く染まった葉に彩られている。
妻が縛りつけられたときには濃い緑色だったのに、「もう秋なんだな」と、ふと思う。
「あの樹の葉っぱの色は、きみの血の色かな」
と妻を振り返ると、
「あのとき真っ赤になって恥じらった、私の頬の色ですよ」
そんな返事が、かえってきた。

ハイソックス男子の呟き。

2019年10月01日(Tue) 06:48:43

初めて襲われたとき、ぼくは思わず口走っていた。
「死なさずに血を吸うことって、できないんですか!?」
どうしてそんなことを言ったのか、いまでもよくわからない。
けれどもぼくを追い詰めたその男は、それこそしんけんな顔つきで、
「もちろんそうするつもりだ」
といったのだった。
そして、答えの意外さにびっくりしているぼくをつかまえて、首すじを思い切り強く咬んだのだった。

初めての吸血に、うっとりとなってしまったぼくは、
そのままその場に倒れて、足許を舐められるのを心地よく感じながら、気絶した。
高校生にもなって、ぼくは半ズボンにハイソックスのスタイルを好んでいた。
ふとわれに返ったときには、気に入りのチャコールグレーのハイソックスは血に濡れて、あちこち咬み破られていた。
ぼくが露骨に迷惑そうな顔をすると、彼はすまないね、と言ってくれて、
それでもあつかましくも、もう片方の脚にまで、咬みついてきた。
ハイソックスが好きなんだ――そう直感したぼくは、
狙われたほうの足許からずり落ちかけていたハイソックスをとっさにひざ小僧の下まで引き上げて、
好きなだけ咬み破らせてしまっていた。

その日以来、ぼくはその公園で男と、待ち合わせるでもなく待ち合わせるようになった。
足許には、彼を悦ばせるために、色とりどりのハイソックスを、代わる代わる履いてきた。
彼はぼくのコレクションを誉めながら、一足一足、くまなく舐めて愉しんでから、咬み破っていった。
ぼくもまた、惜しげもなく脚をさらして、彼の欲望に応えていった。

彼女ができるとぼくは、まるで恋人同士のように定期的に逢っている吸血鬼のことを打ち明けた。
美奈子さんは面白そうに瞳を輝かせてぼくの話に聞き入って、
貧血になるといけないから、私も寄付しようかな・・・と、言ってくれた。
ふたりを引き合わせると彼は、似合いの彼女だね、といって、ぼくのために慶んでくれて、
それから脚を咬んでもいいという彼女の足許にかがみ込んで、彼女のふくらはぎに咬みついていった。
その日の彼女は、黒のダイヤ柄の、着圧ハイソックスを脚に通していた。
「痛くないように咬んでくれるんですね」
彼女が感心していると、
「礼儀ですから」
と、彼は奥ゆかしくこたえる。
「じゃあもう少し、良いですよ」
と、なおも吸血をすすめる彼女の足許から、
彼は無遠慮にびりびりと、着圧ハイソックスを破り取っていった。

こと果てて、「ごちそうさま」をしたあとに、
「いつもハイソックスなんですか」と問う彼に、
「イエ、ストッキングと半々ですね」と応える彼女。
そのやり取りを面白がって聞いているぼく。
この三人は、きっとうまくいく。ふとそんなふうに感じた。
「今度はストッキング穿いてきますね」
別れ際のひと言に、彼はとても嬉しげだった。

それからは二人連れだって彼のところに遊びに行って、
さいしょにぼく、それから彼女。
いつもその順番に、咬まれていって、
ウットリするほどもうろうとなった目線の先で、吸血鬼に襲われる彼女の姿に陶然となって見入っていた。
ただひとつだけ、気になったのは。
彼が、既婚女性を咬んだ時にはセックスまで遂げてしまうという習性を持っていること。
「結婚したら、ちょっと遠慮しますね」
思慮深い彼女はそういってくれたし、彼も引き留めたりはしなかった。
そして結婚後はぼくだけが、彼にハイソックスを咬み破らせてやる習慣をつづけるようになった。
少し習慣の中身が変わったとしたら、
半ズボンの下に穿いていく靴下が時おり、妻がいちど脚に通したストッキングに変わることだった。
「不倫するわけにいかないけど、気持ちはあるから」と告げた妻の、せめてもの心遣いだった。

その均衡が崩れる日が訪れた。
ぼくが長患いをして、彼のところに行けなくなった時のことだった。
「私行ってくる」
美奈子は意を決したように起ちあがり、
「その気のない人が襲われたらよくないでしょ」
といった。
ストレートな言い方に、言い訳がましさは微塵もなかった。
「彼によろしく」
ぼくはせめてものことと、明るくいって、彼女を見送っていった。

どうしても心配だったぼくがそのあと彼女を尾(つ)けて彼の邸に入り込み、
いちぶしじゅうを見届けてしまったことは、いうまでもなかった。
彼の腕の中、妻はちょっとだけ泣いて、涙を見せまいとしてすぐに指先で拭うと、
彼はその指を唇に持って行って、軽く含んだ。
そしてこんどはいとおしむように、しっかりと妻のことを抱きとめた。
その瞬間、ふたりは本当に結ばれたのだとぼくは感じて、
妻の貞操が喪われたことよりも、むしろ二人の心の絆を慶んでいた。

二人合わせたら、なん足の靴下を、彼に愉しまれてきたことだろう?
まだまだ愉しませてあげようね・・・
夫婦で交し合った笑みに、曇りはない。
ぼくがあとを尾(つ)けたことを咎めもせず、話題にも出さない妻――
二人の間では表向き、妻はいまでも貞淑だということになっている。
たぶんきっと、それが真実なのだと、いまでは思う。
ひとがきいたら、笑うかもしれないけれど。


あとがき
夫の親しい吸血鬼に理解を示す婚約者というのが思い浮かんで、キーをたたいてみましたが、少し散漫になってしまったかも。

「予言」数話

2019年10月01日(Tue) 04:46:30

「予言」をテーマに、いくつかのお話を小話ふうにまとめてみました。


第一話 ストッキングの丈が変わる。

「あんたの穿いているストッキングはきょうじゅうに、ひざから下までずり落ちる。」

なんて不吉な予言だろうかと、貴和子は思った。
けれども予言は現実となった。
他ならぬ、予言者の手によって。
引き裂かれたストッキングはひざ下丈までずり落ちて、犯される貴和子の足かせになった。
貴和子もまた、真新しいストッキングを破かれる行為に熱中した。

夫までもが、
妻のストッキングがハイソックスと同じ丈にまで破れてずり落ちて、
足許にふやけたようになってまとわりつくのを、昂りながら見届けた。

ストッキングとともに、自家の礼節まで喪われた。。
虚ろになった頭で貴和子は嘆いたが、かくべつ不幸だとは感じなかった。
貴和子の夫も、不幸だとは感じなかった。

あとがき
半脱ぎにされたり破かれたりしたストッキングをひざ下までずり降ろされながら、セックスに耽る女性。
見ごたえのあるアイテムだと思います。^^


第二話 婚前婚

「きみはぼくと結ばれるまえに、3回くらい結婚するんじゃないかな。」

レイジさんは私と婚約したのに、どうしてそんなことを言うのだろうかと、私は思った。
けれども、本当にレイジさんの言うとおりになった。
挙式の前夜、私は3人の男に犯されたのだ。
一人はレイジさんの親友、
一人はレイジさんのお兄さん、
そして最初に私を抑えつけて処女を奪ったのは、あろうことかレイジさんのお父さんだった。
そして、すべてはレイジさんの仕組んだことだった。
新婚そうそう、私は情夫を3人も抱える女になっていた。

あとがき
自分の花嫁を前もって身内の男と共有する風習というのが、土地によっては存在したみたいです。
実際の風習はもっと荒っぽくて女性の側の意思を無視したものもあり、近年禁止された――みたいな話も時々ききます。
そうそう、このお話はあくまでもフィクションですよ。^^;


第三話 ぼくの彼女を狙った男。

「きみの彼女を、きみの意思に反して犯したりなんかしないから。
 それに彼女は俺なんかより、きみを結婚相手に選ぶはすだから。」

彼のしてくれた約束は、意外な形で守られた。
その晩犯されたのは、ぼくのほうだった。
女として犯されたぼくはすっかり目覚めてしまい、
この凄い逸物を、彼女にも体験させてやりたくなっていた。
彼はぼくの手引きで彼女を犯し、彼女は彼の○ニスに夢中になった。
それでも彼女はぼくを選んだ。
そして、ぼくの妻のまま、彼との逢瀬を重ねていった。
(23:49 0:26 一部改訂)

あとがき
たしかに、意思に反してはいないようです。^^;
オチになったようであまりオチていないように感じるのは、
このオチがこの世界では、わりとありがちなパターンだからでしょうか。


第四話 おとこ妻。

幼なじみのケンイチが、ぼくのことを侮辱した。
お前は全く、女みたいなやつだなと。
きっと、一生オレの言うことを聞くんだろうなと。
その言葉は、現実になった。

ぼくは途中から女子生徒として学校に通うようになって、
そのケのあったケンイチは、ぼくを女として好きになり、二人は結婚した。
今夜もぼくは彼の言うなりになって、
高校生のころの女子の制服を着て、男言葉を使いながら愛し抜かれてゆく。
(23:57)

あとがき
いままで描いたなかで、いちばんオチたような気がします。(^^)



第五話 旧家の息子

「きみの嫁さんは、きっと僕の子を孕むよ。
 きみん家(ち)の子は、近親相姦しちゃうんじゃないかな?」

村いちばんの旧家に生まれた彼は、だれに向かってもそんなことをいった。
もちろんだれもが憤慨したり呆れたりした。
でも、憤慨した人も呆れたやつも、一人残らずおしなべて、精力絶倫な彼に、嫁を寝取られた。
しまいには、どこの家にもたいがい一人は彼の胤の子どもがいて、
その子が好きになった相手も、実の父親は彼だったりした。

知る知らないはともかくも。
兄妹婚や姉弟婚をするとのが、そこらじゅうにあふれ返った。
だれもが近親婚をしていたから、だれもが近しく交わり合った。
村じゅう和やかに、仲良く暮らした。
(0:12)


あとがき
かなり不公平な風習?
でもよく読むと、”彼”がすべてを得ることができたのは、旧家の生まれだからというよりは、その精力のほうに原因があったみたいです。


第六話 家族を狙われた男

きみのご家族を、犯したい。
妻や娘を見る彼の目つきは、ひどく物欲しげにみえた。
妻も娘も警戒して、わたしももちろん二人を彼から遠ざけた。
きみのご家族を犯したい。
そう言い続けて彼がモノにしたのは、五十を過ぎたわたしの母だった。
(0:16)

あとがき
あまりオチにはなっていないでしょうか?
いや、うまくオチてるはずなんですがねぇ。
母親を味方につけてしまえば、あとはなんでもアリとかに、なったりはしませんかねぇ?(笑)

お話のあとにところどころ入っている数字は、描き終えた時刻です。
あまりにも次から次へとお話が浮かぶので、頻度を記録しておきたくて入れてみました。
PCを閉じた後、寝床のなかでケータイで紡いでは、送信していました。
そして今、こんな時間に目が覚めちゃってます。
よく眠れない夜です・・・