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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

このところ。

2020年02月11日(Tue) 09:21:27

ずうっと、同性ものが続いています。
年明けころからだったでしょうか?
いままでもそうした話は皆無ではなかったのですが、このところびっくりするほど構想が湧いてきました。
特に柏木の嗜好が変わったというわけでもなく。ちょっと不思議な気がしているのですが。
構想が湧き上がる限り、そのおもむくままに描くことにしていますので、
いましばらく、お付き合いください。

あまり意識したことはないのですが。
吸血鬼であるか人間であるか。
夫婦であるか否か。
そうした枠組みを超えるというのが、もしかするとひとつのテーマになっているのかもしれないですね。

もっとも、このテの話が苦手 というかたは、
カテゴリで「少年のころ」というのがそのテの話を含んでおりますので、避けて通っていただければ幸いです。

ああもっとも――
このカテゴリには、同性ではない話も多々含まれます。
ややこしくて、すみませぬ。。

月光奏鳴曲  ――ムーンライト・ソナタ――

2020年02月11日(Tue) 06:24:58

開け放しになった窓の向こうには。
闇になりたての空に、銀色の月が済んだ光を放っている。
ステレオのスピーカーが呟く低音のチェロの唸りが、
淡い闇のわだかまる畳の部屋に、ひっそりとわだかまっている。

ふたりの少年は、むき出しの胸を合わせて、互いに抱きすくめ合って、
互いに互いの体温を確かめるように、皮膚をこすり合わせている。
時おり重ね合わせる唇は熱く、周囲の冷気を忘れさせて、
はぜる呼気を呼び合うように重ねて、すれ違う乳首をじんじんと疼かせていた。
前を大きく開いた半ズボンに、ひざ下までぴっちりと引き伸ばされたハイソックス。
暑苦しく火照った足許から、少年たちは制服の片割れを取り去ろうとはしない。
唯一全き形で身体にとどめた衣類をいとおしむように、
それこそが最後に残された礼儀だと心得ているかのように脚を絡み合わせて、
互いに互いの、しなやかなナイロンの感触を確かめ合っている。

合わせた身体を放すと、少年たちは互いに相手の脚を吸った。
逞しいほうの少年は、女のような餅肌を持つ少年のなまめかしさを恋い慕い、
たおやかなほうの少年は、スポーツで鍛えられたしなやかな鎧のような筋肉に圧倒された。

逞しい少年がたおやかな少年の足許を吸うときは、
ハイソックスのうえから犬歯を埋め込んで、うら若い血液を喫った。
たおやかな少年は、相手の非礼を咎めることなくその行為を受け容れて、
制服の一部にじんわりと滲む血潮の生温かさに心を浸した。

たおやかな少年が、お返しの行為に耽るときには、
ハイソックスの足許からしなやかな太もも、それにその奥の股間までをも、
器用に慣れた唇で、くまなく舐めた。
逞しい少年は、自分のほうが犯されているかのように背すじを仰け反らせ、
促されるままに思うさま、半透明の熱情を、同性の恋人の喉の奥へと吐き散らしていった。

たおやかな少年は血を啜られることに、相手に尽くす歓びを覚えて胸を弾ませ、
いいよ・・・もっと吸ってとせがみつづけて、
逞しい少年は心優しい恋人のかいがいしい振舞いに胸震わせて、
きみが好きだと熱く囁く。

性別を同じくする者同士の性愛は、どこの世界でも忌まれることが多い。
けれども、子供をなすだけが性愛のすべてなのか。
不器用に交わされる気遣いと気遣いは、ふたりを照らす月の光と同じくらい、澄み透っていた。


オフィスの窓越しに覗く月は、フロアの住人たちに省みられる機会をほとんど持たない。
けれども、とり澄ました希薄な人間関係がお疲れさまの声を交えて立ち去ってしまい、
人影がふたつになり、照明までもが消え去ると。
窓に射し込む淡い輝きは、にわかにその存在感を増す。

「待ってたぜ、来ると思ったよ」
生き血に飢えた大人になりたての吸血鬼と、男盛りの血液に充ちた働き盛りのビジネスマン。
奇妙な取り合わせは当人同士も意外なくらいしっくりと組み合って、
ぶきっちょな手がネクタイをほどき、アンダーシャツを引き裂くと、
手練手管を帯びた腕が、むき出しの太ももに巻きつけられてゆく。

「よその息子さんに、不埒なことを教え込んでも良いのかな」
少年が男をからかうと、
「きみこそ、親友の父親を誘惑してるんだぜ?」
と、相手は恋人に交ぜ返した。

少年は制服のハイソックスの足許をツヤツヤと輝かせ、
男はスラックスの下に隠したストッキング地の靴下にくるぶしを透き通らせていた。
互いに互いのために装った足許に、うっとりと目を向けあって。
男女の交わりがシックスナインの姿勢を描くように、
互いに互いの足許に、唇を吸いつけ合ってゆく。

「小父さんの靴下、色っぽいね」
と、少年がビジネス用のハイソックスを舌でずり降ろすと、
「きみこそ、こんななりをして勉強がはかどるの?」
と、男は学生用のハイソックスをくしゃくしゃに波打たせてゆく。

セックスに長けた大人は、少年を難なく陶酔の淵に引きずり込んだ。
熱情に優る少年は、ひと足先にむき出しにした裸体をオフィスの床のうえに仰け反らせ、悶えながら応えてゆく。

似通った面差しが、血の近さを感じさせる。
少年は男とその息子とを、羨ましいと思った。
生気に満ちた血潮を慢心に湛えて、ふたりは父子ながら少年の渇いた喉を、惜しげもなく潤した。
自身のなかで織り交ざる父と子の血潮を、干からびた血管に漲らせることが。
いまは少年の生命力の源となっている。

手練手管に長けた四十男は、しばしば息子と同い年の少年を圧倒した。
吸血鬼が人間を支配するという単純な方程式は、ここでは成り立たない。
股間に擦り合わされてくる舌は、まだその種の営みの経験が浅い少年に、
淫らで奥深い技を教え込んでゆく。
彼の息子の不器用な振る舞いが、血に飢えた恋人に甲斐甲斐しくかしづくのとは、裏腹な振る舞いだった。
父親は技を教え込み、息子は真心を尽くした。
どちらがより尊いというものではない、と、少年はおもった。
そして少年は、父親には真心を伝え、その息子には技を教え込んでゆく。
中和されることの無い不均衡が、むしろ三人を三様に愉しませ悦ばせる。

行為を尽くして恋人たちの胸から身を放した少年は、
放心した父親の足許から薄い靴下を抜き取り、
気絶したその息子の足許から、自分のとお揃いのハイソックスを抜き取って、
意地汚くポケットにねじ込んでゆく。
彼らの衣類を几帳面に整えたその妻と母親とは、まだ夫婦の寝室に留まっていて、
数百年鍛えたといわれる牙を祖の柔肌に試され、熟れた血潮を愉しまれている時分だろうか。

すべての営みを、月だけが視ていた。


あとがき
夕べは”スノームーン”だったそうですね。
透き通る満月の冷たい輝きが、むしろ優しく思えるこのごろです。

朝帰りの母。女子の制服をねだる息子。

2020年02月02日(Sun) 09:57:54

「やっぱり朝帰りはまずいよ、母さん」
翌朝、父が出勤していったあとまで家に残っていた保嗣は、
9時をまわったころにけだるそうな顔をして戻ってきた和江に、そういった。

夕べ。
息子から女子の制服をねだられた和江は、息子の帰宅直前まで耽っていた吸血鬼との情事を思い出して、
股間を再び疼かせながらエプロンをはずした。
主婦を辞めて娼婦を始める――はた目には、そんな宣言のようにもとれるしぐさに、
息子の保嗣が胸を「ずきん!」と弾ませていたことに、和江は気がつかないでいた。
きっと母さんは朝帰りになる。
そうなると見越して、近所のおばさんの相談に乗っているとかなんとか・・・うまく口裏を合わせたとは言いながら、保嗣は母親をからかい半分にたしなめた。
「父さんと母さん、いつまでたっても、行き違いだよね。
 早く父さんに、ぼくに女子の制服を買ってくれる件を相談してほしいんだけど」

昨晩。
保嗣の父(和江の夫)である由紀也が、保嗣の親友である達也を相手に勤務先の無人のオフィスで情事に耽っていたころ。
母の和江は和江で、吸血鬼の誘いを受けていた。
半吸血鬼となった達也は、「ヤスくんとの交際をお父さんにも認めてもらう」と言い捨てて、保嗣の血を喫ったその足で由紀也のオフィスを訪れて、
保嗣の父を黙らせるため、そしてそれ以上に彼と睦み合うのを愉しむために、一夜を過ごしていた。
そして、保嗣の父の帰宅を遅らせることで、達也の大好きな吸血鬼の小父さんと和江との逢瀬に邪魔が入らないようにも画策したのだ。
オフィスでの情事には、さまざまな意味があったのだ。

保嗣は、達也が父と逢っていることも聞かされていたし、達也の意図も大体は理解していた。
和江がやすやすと吸血鬼にモノにされてしまったことに、
さいしょは控えめながら不満を鳴らした保嗣だったが、
いまでは自分の血を初めて喫った吸血鬼が、
母親の血を気に入ってくれていることに満足を覚えるようになっている。

初めて自分の血を喫った吸血鬼が、母と。
同性の恋人になった同級生が、父と。
生き血を吸い吸われて仲良く交わっていることが。
保嗣にえもいわれない幸福感をもたらしていた。

「一体夕べはどこにいたの?」
そう訊かれて和江は、少女のようにもじもじとしながら、言いにくそうに告白した。
家の様子が気になるからと、庭の隣に停めてあるマイカーの中で過ごしたという。
「匂いでばれない?」
息子のツッコミに、和江はさすがに慌てた顔をした。
「あとできれいにしておくわ」

昨晩父親の由紀也が帰宅してきたのは,真夜中過ぎのことだった。
父親の勤め先でなにが起きているのかを保嗣は知っていたし、
保嗣がなにかを察しているだろうことを、由紀也も薄々勘づいていた。
さすがに息子と顔を合わせるのは後ろめたかったらしく、
「母さんお友達が相談があるからって出かけた、今夜は戻らないかも」
という曖昧な説明にも気もそぞろに受けて、そそくさと独りの寝室に向かっていた。

そんな由紀也も、まさか自宅のすぐ裏手で自分の妻がほかの男に精液まみれにされているとはつゆ知らずだっただろう。
別々の場所で吸血鬼との情事に耽った夫婦は、別々の場所で一夜を過ごした。

朝帰りの母親と学校をさぼっている息子とが会話をやめたのは。
時ならぬインタホンの音のためだった。
玄関の扉を開くと、そこには由紀也がいた。
話を聞かれた?と一瞬思いぎくりとした和江だったが、すぐに自分を取り戻して、どうなすったんですか?と夫に訊いた。
「具合がよくないので会社を休むことにした」
という夫を安江は本気で気遣いながら――彼女もまた、夫の身になにが起きているのかを薄々知っていた――かいがいしく床の用意をし始める。
床の用意ができるまでのあいだ、由紀也はぐったりとなって、ソファにもたれかかるように身を沈めていた。
リビングに戻ってきた安江は、床の用意ができましたよ、と夫に告げると、盗み見るように息子のほうを見た。
「お父さんに、話したの?」

いざとなると保嗣は、年端も行かない幼な児のようにもじもじしていた。
都会で暮らしていたころには、厳しい父親だった。
両親ともに厳しいプライドの高い家庭で育てられた保嗣は、気弱な少年として成長した。

保嗣の様子をみた安江は、仕方ないわね、というように、ちょっとだけ顔をしかめ、それから言葉を改めて由紀也に言った。
「保嗣が明日から、女子の制服で登校したいというんです。あなたどう思います?」
失血で力の失せた父親の反応は、もどかしいくらいに鈍かった。
由紀也はちょっとだけ顔をあげ、訝しそうに息子のほうを窺った。
安江は保嗣を促すように、つづけた。
「お友達の達也くんと、おつきあいを始めたのよ、ね?」
保嗣はちょっとの間唇を噛んでいたが、首すじの疼きをこらえかねるようにして、思い切って口を開いた――。
「ぼくに、女子の制服買ってくれないかな。ぼく、同級生の達也くんの彼女になることにしたんだ」

口走ってしまうことで、自分を束縛しているなにかが破れたような気がした。
自分をさらけ出す小気味よさが、ふさぎ切っていた彼の心を解放したのだ。

「うん、まあ・・・いいだろう」
意外なくらいあっさりと、父親は息子の願いをかなえる言葉を口にした。
曖昧な返事は、息子の親友と契ってしまったことへの後ろめたさからくるものだったが、それは母子どちらも、まだあずかり知らないことだった。
保嗣はむしろ、父の「まあ・・・いいだろう。」は、吸血鬼と母との逢瀬に対しての感想のようにも受け取れて、仕方がなかった。
もしそうだったらいいのにな・・・保嗣はどうしようもない妄想にとり憑かれて、ひとりごちた。
「何か言ったか?」
「ううん、何も」
それが父と息子との会話のすべてだった。

「では、きょうにも制服店に行って、採寸してもらいますね」
安江はたたみかけるように、言った。
夫が黙って頷く姿に、なにかを赦されるような錯覚を安江はおぼえた。
頷いた夫は、同時に吸血鬼と自分との不倫の関係までも許してくれたように感じたのだ。
母と息子の願望が、どこまで由紀也に届いたのか――
けれどもまず家族で解決しなければならないのは、保嗣と達也の関係についてだった。

「女性生徒として通学するには、学校で何か手続きが要るんじゃないのか?」
由紀也は初めて、息子の環境が変わることについて、父親らしい気遣いをした。
「エエ、だいじょうぶみたいです。ここの学校は理解があって、前の日に担任の先生に連絡を入れておくくらいですって」
母親がすかさず、適切な返しをしてくれた。

「女子生徒としての名前は、決まっているのか?」
意外なくらい物分かりよく、由紀也は保嗣に訊いた。
保嗣もいまは淡々と、父の質問に応えてゆく。
「ヤスエにしようと思います。母さんの字をもらって」
「保江と書くのか。ちょっと古くさくはないか?」
「でも、達也くんがその名前を気に入ってくれているんだ」
「なら、それで決まりだな」
由紀也は無表情に哂った。
そして傍らに控える和江に、「着替えも要るだろうから、二、三着買いそろえてやりなさい」と告げ、「寝るから」とひと言残して寝室へと姿を消した。

布団にくるまっても由紀也は、なかなか寝つかれなかった。
妻と息子が「よかったね」とひそめた声を交し合うのも、いそいそと外出の支度をして女子の制服を買いに出かけてゆくのも、表に出た二人の足音が遠ざかってゆくのも、耳にしていた。
都会で暮らしていたころは貞淑だった妻と、おとなしすぎてはいたものの健全だった息子――のはずが。
自分の家族は娼婦がふたりと化してしまった――
ほろ苦い従属感に痺れながら、失血に疲れた身体を布団にもたれかけさせて、由紀也は眠りに落ちていった。

勤め帰り。

2020年02月02日(Sun) 09:30:01

勤め帰りの真夜中の道を、独り歩く。
頬をよぎる風は意外に冷たかったが、身体のほてりがそれを程よく中和してくれている。

口の奥に残る精液の匂いが、ほろ苦い。
精液の持ち主は、息子の悪友――もとい、彼氏になる少年。
同性同士で結ばれた関係を認知してもらおうと願う少年の訪問を受けて、
オフィスを穢すようにして、乱れあった余韻が、軽くはぜる息遣いにまだ、残っている。
吸血癖を持つ彼にオフィスで襲われたのは、これが二度目のことだった。

同性愛など異常な営み――と、つい一週間前までは、おもっていた。
まさか自分がそのようなことの虜になるなど、夢想だにしていなかった。
けれども、吸血されてわれを忘れた後のこととはいえ、意識も、記憶も、鮮明に残っている。

熱っぽく求められたことも。
求められることで身体の奥に潜むなにかが燃えあがったことも。
われを忘れて夢中で求めてしまったことも。

相手が息子の同級生であることも忘れて、
半ズボンにハイソックスの制服姿に夢中でのしかかっていって、
相手の好みに合わせて履いた、ストッキング地のハイソックスを、思う存分舌でいたぶらせ咬み破らせて――

一体あの嵐は、なんだったのだろう?
身も心も空洞が空いたようになって、いまは鬱積したものが余さず抜き取られたあとの不思議な爽快感だけが、
四十を過ぎた四肢と脳裏とを、居心地よく浸している。

辿る家路に行きつく先で。
妻は吸血鬼に犯されているはず。
犯される、という言葉には、強制力があるけれど。
じつは妻も同意のうえの関係なのだということもわかってしまっている。
けれども、夫である由紀也の知らないところでなされている行為は、夫の身にとっては「犯されている」のと同じこと。
けれども「妻を日常的に犯される」ということに、奇妙な昂りを覚えてしまっていることもまた、たしかだった。

脚に通した薄い靴下を達也に咬み破られたように。
妻の脚に通されたストッキングもまた、情夫の舌を悦ばせ、剥ぎ堕ちていったのだろうか?
スラックスの下、破かれた靴下が脛の途中までずり落ちているのを、口ゴムの締めつけで感じながら、
ひたすら家までの歩みを進める。
「何食わぬ顔で、洗濯機に放り込んでいくといいよ。和江さんは洗って持たせてくれるから。
 そうしたら、小父さんの靴下、ぼくにくれないか?
 記念に、コレクションさせてもらうから」
餌食にされた靴下を、息子の悪友にコレクションされる――
そんなことにどうして、ドキドキしてしまうのだろう?

由紀也は、家人のだれもが就寝していることを願いながら、ゆっくりとした足取りで家路をたどった。