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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

レトロな喫茶店の女・続

2021年03月29日(Mon) 08:05:35

薄い薄い黒のストッキングのつま先を、
おっかなびっくりたぐり寄せて、
自分のつま先に合わせると、
慎重にゆっくりと、上へ上へと引き伸ばしてゆく。

ストッキングの片脚を太ももの高さまでひきあげると、
もう片方の脚にも、同じように通してゆく。

襟足だけが白い黒一色のブラウスに、
真っ白なエプロン付きのミニスカート姿。
仕上げに紅をすこし濃いめに刷いて鏡に向かい、
すこしだけ出し惜しみに微笑んで見せる。
なん度か表情を変えてみてから、やっと得心がいったらしく、
よし!と心のなかで気合を籠めて、店に通じるドアを開いた。

「よっ、待ってました」
二、三人いるお客はそれぞれ、すでに淹れられたコーヒーを片手に、
ウェイトレスのご入来を待ちかねていたらしい。
こちらにいっせいに視線を向けると、ちいさく拍手せんばかりにして、
ミニスカートの下の美脚に、視線を集中させた。
「捨てがたいねぇ、ミスター・華子」
とっさの揶揄にウェイトレス姿が固まると、べつの客が助け舟を出した。
「よせやい、華子姐ぇの留守中に、一生けんめいやってくれているんだから」
そう、きょうのウェイトレスは、マスター自らが、勤めていた。

「ミスター・華子でいいですよ、良い呼び名だと思います」
穏やかでクールなマスターは、ウェイトレスの身なりのままカウンターの中に立ち、
追加のコーヒーを淹れはじめる。
慣れた作業をしていると、身なりのことは忘れるらしい。
黒のストッキングに包まれた、男にしてはきれいな脚を、
惜しげもなくお客たちの眼の前にさらけ出していた。

店の出入り口のドアが開き、華子が戻ってきた。
「いらっしゃいませ~」
お客たちに通りいっぺんの挨拶を投げると、華子はつかつかとマスターのほうに歩み寄って、
「代わろうか?」
といった。
マスターは、
「いや、このままでいいよ」
とむぞうさに言って、淹れたてのコーヒーを
「皆さんにサービス」
と、妻に引き継いだ。


「あ、クリーニング店の善八郎ですが」
かかってきた電話をとると、受話器の向こうから聞き慣れた声がした。
「さっきは奥さんを、どうも」
「いえいえ、こちらこそ」
マスターはよどみなく応える。
じつは内心は、ドキドキである。
何しろ相手は、さっきまで妻を犯していた男なのだから。
けれどもマスターは、生来の血なのだろう、どこまでもクールで穏やかだった。
むしろ善八郎氏のほうが決まり悪げにもじもじしているので、
マスターのほうが、落ち着きを取り戻して、にんまりとしてしまった。
どちらが妻を犯されているのか、わかったものではない。


喫茶店”昭和”は、午後六時が閉店である。
マスターの妻兼ウェイトレスの華子は、きょうも「準備中」の札を玄関に出した。
「もうじき来るわね」
「そうだね」
「血を吸われるの、怖くない?」
「きみと同じ経験がしたいんだ」
亭主の応えに満足した華子は、ウフフ、と、笑った。

閉店後の店内に現れたのは、善八郎氏と、その妻の情夫だった。
吸血鬼は自分の正体を隠して、なん度かこの店の客になっている。
客の顔を覚えることに長けていた華子は、吸血鬼の顔を見ると「あら」といった。
電話をかけてきた善八郎氏の言い草は、こうだった。
――お宅のお店の風情が気に入った。それで、その、なんというか、
   失礼でなければ、お店のなかで奥さんを頂戴したいんですが・・・
おかしいわね、クリーニングのだんなはうちに来たことないんじゃない?
情交帰りの妻に指摘され、マスターもそれはそうだと思った。
小さな謎は、吸血鬼の来訪とともに、すぐに解けた。
喫茶店の風情を気に入ったのは、吸血鬼のほうだったのだ。

はぁ、はぁ・・・
ふぅ、ふぅ・・・
テーブルが取り払われた向かい合わせのソファに一人ずつ、
二人のウェイトレスは、ミニのスカートをたくし上げられた格好で、
招かざる客たちに、押し倒されていた。
マスターの穿いているミニスカートから伸びた黒ストッキングの脚に目を留めた吸血鬼が、
「わしはこちらのご婦人がよい」
と告げた。
「ご婦人」といわれて、マスターも悪い気はしなかった。
この吸血鬼が、善八郎氏とぐるになって、妻を代わる代わる犯していると知りながら、
すべてを許す気になってしまっていた。
「すべてを許す」証しが、そのあとの情交だった。
吸血鬼の剛(かた)い一物を股間に突き込まれながら、
マスターは、妻が堕ちたのは無理もない、と思い、
傍らの妻が夫婦の営み以上に萌えている姿を横目にしながら、
自らもまた、昂奮のるつぼに堕ちていった。

――お話に登場する人物、店舗は、実在のものとは関係ありません。念のため――

レトロな喫茶店の女

2021年03月29日(Mon) 07:26:33

喫茶店”昭和”は、午後六時が閉店である。
マスターが淹れるコーヒーを目当ての客は、
だいたいそれくらいまでには退散して、
心は晩ご飯に移るからである。

マスターの妻兼ウェイトレスの華子は、きょうも「準備中」の札を玄関に出して、
恰好の良い脚を投げ出すようにして亭主のいるカウンターまで戻ってきた。
齢には若作り過ぎるエプロンつきの黒のミニスカートからは、
黒のストッキングに包まれた脚をひざ上10センチまで、
惜しげもなく人目にさらしている。
常連客の半分はマスターの淹れるコーヒーを、
残り半分は華子の脚を目当てに店に来ているというほどだ。

「クリーニング行ってくるわね~」
華子は先日出しそびれたウェイトレスのユニフォームを袋に詰めながら、
くわえ煙草の亭主にそういった。
「ん」
亭主は返事をを返すともなく返し、妻のほうは片手間で、道具の手入れに余念がない。

ジーンズに着替えてから行こうかと思ったが、
きょうのクリーニング店の閉店時間が押せているのに気がついた。
きょうは常連客のひとりがなかなか帰らなかったので、閉店が少し遅くなったのだ。
「じゃ、行ってくる」
華子は亭主に背を向けて、ウェイトレスのユニフォームのミニスカートをひるがえして、店のドアを開けた。

クリーニング店の親父である善八郎氏は、亭主と似た肌合いの律儀な職人だった。
行きつけのクリーニング店だったので、始終顔を合わせていたけれど、
喫茶店に行く習慣を持たなかった善八郎氏は、
いつも洗濯ものを持ち込む華子のユニフォーム姿を見たことが無かった。

「きゃあ~」
クリーニング店の店先で、女の叫び声があがった。
初めて見る華子のウェイトレス姿に、親父が熱をあげたのだ。
周囲の家々は事情をよく心得ていたので、「またか」と思ったらしく、
だれもが店に近づこうとはしなかった。

ミニスカートのエプロンに血を滴らせたままのホラーななりで、
華子は店に戻ってきた。
ちょうど道具の手入れを終えた亭主は、びっくりして妻をみた。
「姦られちゃった~」
華子は投げやりにそういうと、店のボックス席に脚を放り出すようにして腰かけた。
亭主は穏やかな男だった。
華子が常連客相手に浮気するのを、なんども見てみぬふりをしてきたので、
これまた「またか」という想いもあったのだろう。
それでも、首すじから血を滴らせて戻ってきた妻の様子を気遣って、
「だいじょうぶか」
と、近寄ってきた。
見ると、黒のストッキングには幾筋もの伝線が、ブチブチと走っている。
咬まれた痕は楕円の裂け目になって、そこを起点に上下に伝線が走っているのだ。
「なんだかセクシーだぞ、おい」
「いつもはそうじゃないみたいじゃない」
華子はからむように言った。
「いつもセクシーだけどさ」
そういいながら亭主もまた、情事を済ませたほやほやの状態の妻が放つ毒気に鼻白んでしまっていた。

「こっちのクリーニング代は、ただにしてくれるって。そりゃそうよね。
 で、店開けて待っててくれるっていうから、出直すね」
華子は今度こそジーンズに着替えて、もういちど出かけていった。
「行かせていいの?」
店を出ぎわにふり返った妻に、亭主は「気をつけてな」とだけ、いった。
態度はちょっと見には冷淡だったけれど、瞳の奥に渦巻くものを察して、華子は納得したような顔をすると、
「じゃ」
とそっけなくひと言発して、ドアを閉めた。

華子が店に戻るのに、三時間かかった。


――お話に登場する人物、店舗は、実在のものとは関係ありません。念のため――

クリーニング店シリーズ(紹介)

2021年03月28日(Sun) 22:29:15

「喪服の女」以降は、予想外にさくさく描けてしまった連作です。
さいしょは単発もののつもりだったのですが、
不景気な顔つきをしたクリーニング店の奥さんが、舞台回しをしてくれました。

このシリーズには、三人の吸血鬼が登場します。
一人は、喪服の女とその娘のピンクのスーツの若妻を吸った吸血鬼。
もう一人は、クリーニング店の奥さんを吸った吸血鬼。
さいごの一人は、クリーニング店の店主。
この人は、自分の奥さんを吸った吸血鬼によって、半吸血鬼にされてしまった という設定です。

吸血鬼たちの人物設定はあまり濃くなかったような気がします。
どちらかというと、同じ吸血鬼でも人間から半吸血鬼になったクリーニング店の親父さんが、一番濃いかな。

吸われる側はいちように、濃いかもしれませんね。
娘の身代わりにと吸血鬼の相手を務めながら、欲望に溺れてしまう未亡人。
母親の負担を減らそうとして街に戻ってくる娘夫婦は、どちらが主導していたのでしょうか。
案外ご主人のほうも、奥さんを襲われることをよしとしているような気がします。(直接的には登場しませんが)
クリーニング店の奥さんは、舞台回しを務める一方で、自分自身も襲われてしまいます。
そして、木島母娘をこの世界に引きずり込む片棒もかついでいます。
木島夫人は、なに不自由ない良いとこの奥さん。
娘も賢くて、たぶん可愛い。
なのに、一人でクリーニング店にお使いに行く大胆さももってしまう。
大人の入口を覗き込みたい少女が、闇の世界に引きずり込まれて、いっぺんに大人になってしまいます。
木島氏は少し、一話と二話に出てくる若いご主人と、キャラがかぶるかもしれません。
さいごに登場するクリーニング店の坊やも、父親が処女をゲットした少女を嫁に欲しがるという、
かなりМな性格の持ち主です。

このシリーズは、吸血鬼がむしろ黒子で、襲われる側のほうが濃いという意味で、描いている本人も楽しめるシリーズでした。
・・・というか、被害者が濃いのはいつものこと??

続きが浮かべば、また描きますので、期待しないでお待ちください。

クリーニング店の息子。

2021年03月28日(Sun) 15:53:50

くちゃ、くちゃ・・・
キュウ、キュウ・・・
よそ行きのスーツにいつものように血を撥ねかして仰向けになった木島彩子のうえに、
生々しい吸血の音がふた色、おおいかぶさっていた。
相手の吸血鬼は、二人。
このクリーニング店の店主と、店主の妻を襲った吸血鬼である。
妻の情夫である吸血鬼のまえでは、クリーニング店の店主である善八郎氏は、しもべ同然。
なので、妻以外にも餌食にした客のほとんどは、吸血鬼にも引き合わされていた。
店主にとって最初の獲物であった彩子も、その娘である真由美も、例外ではなかった。

真由美は店主の女になってから襲われたので、
まだうら若い体で、すでにふたりの男を体験したことになる。

隣の部屋には、ついさっきまで、
善八郎氏の妻が、着ていたワンピースを血に染めて、
やはり大の字になって、ひっくり返っていた。
さいしょは善八郎氏の細君が目当てでクリーニング店にあがりこんだのだが、
そこに彩子が来合わせたのだ。
ちょうど、吸血した後の勢いで、善八郎氏の細君を輪姦し終わったところだった。
彩子は有無を言わさずクリーニング店の奥に引き込まれ、首すじを咬まれ、脚を吸われた。
いまはふすま一枚隔てた向こう側、
善八郎氏の細君は、いつものようにカウンターに不景気な顔つきで佇んでいる。
自分の身代わりに吸血を受ける、生々しい音を聴きながら、
あくまで無表情に、佇んでいる。

その表情が、ふと動いた。
店頭に人影がよぎり、ガラス戸を開けて中に入ってきたのだ。
相手の姿をみとめて、細君は、あら、と、珍しく表情を動かした。

木島さんのご主人ですよ、と、ふすまの向こうの細君が告げた。
「入っていただけ」
吸血鬼は顔色も変えずに、善八郎氏にいった。
「どうぞぉ」
少し勢いのよすぎる声で、善八郎氏は新来の客に、ふすま越しに声をあげた。

ふすまを開けて入ってきた木島氏は、思わず立ちすくんだ。
そこでは妻の彩子が、ストッキングをずり降ろされたあられもない姿で、男二人の吸血相手をしていたからだ。
「視るのは初めてでしたな」
善八郎氏はそういって、さすがに彩子から身を放したが、
吸血鬼はなおも彩子の頭を掴まえて、首すじにがぶりと咬みついていた。

ブラウスに撥ねた血の生々しさにドキドキしながら、木島氏は来意を告げた。
妻とのことを内聞にしていただき、すまないことだった。
卑怯にも自分は、自分の体面が汚れることだけを気にしていた。
だから、妻や娘が貴兄の餌食になっても、ことが洩れさえしなければよしとしていた。
けれども、それでは一家のあるじとして責任を取ったことにはならないと感じた。
これからはきれいごとではなく、妻や娘の痴態を、夫として父として、きちんと見届けたいと思う。
当地には、「奥さまの貞操公開」という行事があるそうですね。
私も、家内の貞操を公開しようと考えています。
家内も承知してくれました。
ただ、いまの家内の所有者はあなた方であるので、
あなた方の賛成を取り付けることができれば、と家内は申します。
なので、きょうはこうしてお伺いしたのです――

「それは素晴らしい」
吸血鬼が真っ先にいった。
「貴兄が言い出さなければ、わしらが奥方や娘ごを、よそにまた貸ししてしまうところであった」
店主もいった。
では、さっそくだ。
二人の吸血鬼は目くばせをし合って、同時に木島氏に近寄った。

あっという間のことだった。
木島氏は後ろ手に縛られて、両足首も別の縄で結わえられてしまった。
立っていることができずに、部屋のすみに転がった。
「そうしてその場で、見ていなされ。わしらの男ぶりをのう」
善八郎氏は、フフフ、と、小気味よげに笑った。
「当日のリハーサルだと、思いなされ」
吸血鬼もそういって、人のわるい笑みを泛べた。

1時間ほど経って、木島家の娘の真由美がクリーニング店に来た。
帰りの遅い両親を心配したのだ。
「あなた、お客さまヨ」
カウンターに無表情に佇んでいた細君が、再びほくそ笑んで、娘をカウンターのこちら側に引き入れた。
開かれたふすまの向こうの風景に絶句した娘は、悲鳴を消して引きずり込まれた。

ことが果てて親子三人が辞去すると、奥の部屋から息子の善一がおずおずと姿を見せた。
吸血鬼と同性のあいだの関係を結んでしまった彼は、その日もスカートを穿いていた。
「あの、いいかな」
「なんじゃ、なんなりと、言うてみい」
無口な息子が珍しく口をはさんできたので、善八郎氏は意外に感じた。
息子は、さらに意外なことを口にした。
「奥さまの貞操公開、ぼくも行っていいかな」
「女としていくのかね?」
吸血鬼が念のために訊いた。
「ううん、男として出る」
善一は、意外にもはっきりとした口調だった。
「真由美ちゃんと、仲良くなりたい」
ほほう、と、ふたりは声を洩らした。
「お前、真由美に気があったのか」

卒業式帰りのハイソックスに血を撥ねかせながら父親の相手をしていた時には、もう気になっていたという。
親父が真由美の処女を奪ったときも隣の部屋にいて、すべてを視て聞いてしまって、
好きな子が父親の手でむざむざと犯される有様に、言いようのない昂奮を覚えたのだという。
「それならお前、あちらさんさえ良かったら、真由美を嫁にもらえ」
父親の言い草に「まだ早いよ」と言いながらも、善一はまんざらでもない様子だった。

もしも将来そうなったら、父さんにも親孝行させるからね――
善一はそういって、はにかんだ。

大人になろうとした少女。

2021年03月28日(Sun) 09:26:29

すこし背伸びして、黒のストッキングを穿いていった。
空色のブラウスに白のカーディガン、その下は赤のチェック柄のプリーツスカートだった。
スカート丈が短めなのを母親は時おり気にするが、
いまさらそれが何だというのだろう?
吸血鬼の毒牙に無防備な肌をさらしてしまった少女は、
人の良いクリーニング店主のまえでだけは、大胆になれるようになっていた。

黒のストッキングを穿いてきたのは、初めてではない。
あがった中学は、入学式と卒業式のときだけ、黒のストッキングを穿く学校だった。
その入学式帰りのストッキングを、母親同伴で愉しませにきたのが、最初だった。
母親の穿いている肌色のストッキングのすぐ隣で、
大人びた色に染まった自分の脚が大人の扱いを受けることに、
少女はドキドキと昂りつづけていた。

卒業式のときにも、クリーニング店への寄り道を忘れなかった。
このときも、母親同伴だった。
卒業式帰りのハイソックスを、善八郎氏が切望したためだった。
自分のハイソックス姿が大人の目をそそることに、
女の子として悪い気はしなかった。
それだけ大人に見られていることだと、少女はおもった。
真っ赤に濡れたハイソックスは、いちおうクリーニングされたけれど。
少女の手許に戻ってくることはなかった。
さいしょのときのハイソックスと同じように、親父のコレクションにされてしまったのだ。・
そのこともまた、少女をいたく満足させた。
自分が脚に通した装いをせしめられることに、
ふつうの少女なら嫌悪感を催すかもしれなかったが、
体内に脈打つ血潮を舐め尽くされてしまった少女にとってはむしろ、誇らしいことに思えたのだ。

きょうの真由美は、ひとりでクリーニング店を訪れた。
以前にも何度となく、ひとりで来ることはあった。
お使いで、わざわざ真新しいハイソックスを履いて、洗濯ものを出しに来たのだ。
帰り道の少女は、真っ白なハイソックスに映えたバラ色のシミを、あえてひと目に曝しながら帰宅していった。
きょうもきっとそうなる――と、真由美はおもった。

善八郎氏は、いつものようににこやかに、真由美を迎え入れた。
「クリーニングだね?一人できたご褒美に、きょうはおまけしておくよ」
そういっていつものように、料金を少しだけ負けてくれるのだった。
少女の足許に露骨に目を這わせた善八郎氏の目の色が変わった。
薄黒いナイロン生地の濃淡が縁どる少女の脚の線に欲情を覚えたのだ。
「はやくあがって」
店主は手短にそういった。

ちゅうっ・・・
大人びて上品なストッキングごしに、親父の唇がいやらしくヌメった。
入学式のときも、そうだった。
あのときは、横に肌色のストッキングを穿いた母親がいた。
きょうは、ひとりだった。
ふたりきりの密会に、少女は背伸びした初々しい昂りを覚えていた。

――――
――――

「破けたストッキング、このまま穿いて帰るから」
ちょっぴり口を尖らせた少女の意図を、善八郎氏は妨げなかった。
「入学して一週間で、大人になっちゃった」
少女は白い歯をみせて笑った。
どこか母親のそれと似通った笑いかたにみえた。
股間に突き込まれたヒリヒリとした痛みにぎごちなく起きあがりながら、
少女はそれでもしっかりと、自分の足で歩いていた。
「きょうのストッキングも、あとで小父様にあげるわね」
帰りぎわ少女はふりかえって、そういった。
親父は「待ってる」と、若い青年のように目を輝かせてこたえた。

クリーニング店の母娘

2021年03月28日(Sun) 09:22:00

木島彩子は寝乱れた髪を手櫛で整えると、
けだるそうに畳のうえから起きあがった。

隣室からはすでに機材がうなり声をあげていて、
男が仕事に戻ったことを告げていた。
彩子は、自分が全裸であることに気がついた。
面倒見の良い親父のことだから、
血に濡れたスリップもきっと、クリーニングしてくれるつもりなのだろう。
枕元には、クリーニングに出すつもりで持ってきた衣類一式が、
持参したままの手提げバックに入ったまま、置かれていた。
とりあえずは、これを着て帰れということなのだ。
クリーニングに出すつもりの服は、ほんとうは着てこなければならないのか。
彩子はひとり、白い歯をみせて、声をたてずに笑った。

カウンターにはおかみさんが、いつもの不景気な顔つきで立っていた。
「毎度お世話様」
いつになく愛想が良いのは、良家の主婦が凌辱される有様を小気味よく眺めていた余韻なのだが、
彩子はそこまでは気が回らなかった。
いいえ、どういたしまして――
その場を上手に取り繕えたのかどうか、われながら自信がなかったが、
ともかく彼女はその場をあとにした。

寝物語に話してみた。
――処女の血はお好き?
そう水を向けてみたら、男はいちど収めた獣じみた目つきもあらわにして、
――あてがあるのか?
と、訊いてきた。
ひとり、心当たりがあるの。
彩子はそういって、こんど連れてきてあげる、と、いった。
心当たり――というのは、ほかでもない彩子自身の娘、真由美のことだった。
もうじき、中学にあがるんです。
どうみても三十前後にしかみえない彩子は、朱を刷いた唇をゆるませて告げた。
自慢のまな娘らしい。
母親の口ぶりから、男はそう予感した。


三日後、彩子は再び洗濯物を携えて、真由美を伴ってクリーニング店を訪れた。
「いい?これからは時々、お使いにくるのよ」
母親の顔になって娘に言い聞かせるようすを、
善八郎氏は肚の中でほくそ笑みながら窺っていた。

「いいのか?おい」
善八郎氏は少女に聞こえないように母親に囁き、小脇を小突いた。
「教え子を吸血鬼に差し出そうとする塾の先生よりかましではなくて?」
いちど、そういう形で娘が毒牙にかかりそうになった。
誘われるままに出かけようとする娘を止めて、貴男のためにとっておいたのだ。
どうせだれかに血を吸われてしまうのなら、貴男のほうが信用がおけるから――
彩子は手短にそう告げた。

娘にはもう、話してある、そういった。
さっきから娘は、聞こえないふりをしながらも、大人たちの会話に耳を傾けていた。
どうやら賢い子らしい、と、親父はおもった。
少女は真っ白なハイソックスを履いていた。
まだストッキングを穿く年頃ではない――と、母親はいっていた。
ハイソックスでも良いかしら?
女性の靴下を咬み剥いで愉しむ情夫の性癖をよくわきまえた女は、
そういって情夫の関心をそそり立てていた。

善八郎氏は、べつの意味でもほくそ笑んでいた。
ほかでもない、彩子が話した「塾の先生」のことである。
彼女もまた、この店の客だったのだ。
どのみちこの少女は、彼の手に堕ちる運命だったのだ。

「よろしくお願いします」
母親に真由美と呼ばれた少女は作りつけたように礼儀正しく、男にお辞儀をした。
「いえいえ、こちらこそ」
男もまた、人の良いクリーニング店の親父の顔つきになって、あいそよくお辞儀を返した。
「ママがついているから安心よ」
彩子はそういうと、客間に置かれた古びたソファに腰かけて、
娘を自分の脇へと呼び寄せた。
「きょうの主役はこの子よ」
先に自分の足許にすべらせてきた物欲しげな舌と唇を、
彩子はちょっとだけよけるそぶりをしながらも、許していた。
男はすぐに、真由美の足許にかがみ込んだ。

おっかなびっくり、見おろす視線がくすぐったかった。
男は真由美の足首と足の甲を抑えつけると、
ハイソックスのうえからふくらはぎに唇を吸いつけた。
しなやかなナイロン生地のしっかりとした舌触りが、男をすぐに夢中にさせた。

ぺちゃっ・・・くちゅっ・・・
ハイソックスを舐めるいやらしい音が洩れるのを耳にしながら、
少女は目を見張って男の意地汚いやり口を見おろしていた。
お気に入りのハイソックスがよじれ、ずり落ちてゆくことで、
自分が吸血鬼の奴隷に堕ちてゆくのを実感しようとしているようだった。
皴を波立てたハイソックス越しに、男は少女のふくらはぎに牙を圧しつけて、力を込めた。
じゅわっ。
生温かい血潮の生硬な味わいが、男の喉を充たした。

自分の体内をめぐる血液がむさぼられるキュウキュウという音を耳にしながら、
貧血を起こした真由美はぼう然となって母の腕のなかにもたれかかった。
ハイソックスのうえをうごめく唇は、明らかに真由美の血を愉しんでいた。
喉をカラカラにしていた半吸血鬼は少女の頭がひっくり返るほどの性急さで血を求めたが、
同時に愛人のまな娘に対する気遣いを忘れなかった。
娘がへばりそうになると、その都度唇を傷口から放し、具合を窺いながらもまた吸った。
少女の意識も、自分の愉しみも、少しでも長保ちさせようとしたのである。

「ママの愛人・・・って、どういう意味?」
朦朧となりながらも少女は、訊きにくかったことを母親にたずねた。
「パパの次に好きな人ということよ」
母親は娘の髪を撫でながら、柔らかい声でそういった。

娘が意識を失ってソファからずり落ちてしまうと、
男はじゅうたんの上に真由美を組み伏せて、
はじめて首すじを噛んだ。
柔らかな咬み応えが、男をいたく満足させた。
「こたえられねぇ」
下卑た声色で呟く情夫に、母親は誇らしげにいった。
「自慢の娘ですのよ」

クリーニング店の女。

2021年03月27日(Sat) 09:14:04

善八郎氏は、腕のよいクリーニング店主である。
得意はシミ抜き。たいがいのシミは取ってのけるという。

その善八郎氏が腕を磨いたのは、おかみさんの服のおかげである。
三年前、息子が吸血鬼に襲われて血を吸われた。
吸血鬼と、餌食となった少年とのあいだには、しばしばホモセクシュアルな関係が生まれる。
善八郎氏の令息の場合も、例外ではなかった。
それ以来令息は、血を吸われる歓びに目ざめてしまい、
みずみずしい首すじや、ハイソックスの脚をなん度も咬ませ、服を汚されていった。
もちろん、母親にはすぐにばれた。
吸血鬼は、その母親をも襲った。

善八郎氏の夫人は、ふつうのクリーニング店のおかみさんである。
けれども、おかみさんにだって亭主に操を立てるつもりもあれば、意地もある。
徹底的に抗った。
けれどもその態度は、吸血鬼のおかみさんに対する尊敬を増しただけのことだった。
尊敬したご婦人とは必ず関係を結ぶ――それが吸血鬼氏のモットーだったので、
結局のところおかみさんは、吸血鬼に血を吸われ、モノにされてしまった。
なん度もの熱情あふれる吶喊を無防備な股間で受け止めながら、
さすがに気丈なおかみさんもじょじょにほだされてゆき、
さいごにはご主人の眼の前でもっと!もっとォ!と、せがんでしまっていた。

いつもカウンターの陰で見えないけれど、
おかみさんはいつも派手な柄のスカートを穿いていて、
てかてか光るストッキングを脚に通していた。
そのテのストッキングが、彼女を襲った吸血鬼の好みだったから。

居合わせた善八郎氏も夫婦ながら血を吸われ、こちらは洗脳されてしまった。
気がつくと、吸血鬼のまえで手を合わせて、
わしがいるときでもかまわないから、女房を襲ってほしいと懇願していた。
吸血鬼が喉をカラカラにしてクリーニング店に来た時には、令息かおかみさんが相手をすること。
血に濡れたふたりの服で、善八郎氏は職人としての腕をみがくこと。
善八郎氏はそう書かれた証文に、律儀に判を押したのだった。

以来善八郎氏は、情事の痕跡にまみれた女房の服で、染み抜きが得意なクリーニング店主になっていった。


その日はたまたま、おかみさんの血を目当てに、吸血鬼がクリーニング店にあがりこんでいた。
そういうとき、善八郎氏は奥から出てきて、おかみさんの代わりにカウンターに立つことにしていた。
カウンターに立っている間は、女房が吸血鬼に抱きすくめられ、犯されている刻。
自分の背後でなにが行われているのか想像しただけで、
善八郎氏は妖しい昂りを抑えきれなくなるのだった。

木島夫人がクリーニング店に立ち寄ったのは、ちょうどそんなときだった。
「はい、こちら。お願いします」
上品なワンピース姿が、
楚々とした立ち居振る舞いが、
髪を掻き上げてすっきりと露出した首すじが、
善八郎氏の犬歯を疼かせた。
気がついた時にはカウンターを乗り越えて、悲鳴をあげる木島夫人を店先で抑えつけていた。
幸か不幸か、人は誰も来なかった。

どんなふうにかぶりついたのか、よく憶えていない。
なにしろ、初めてのことだったから。
けれども、バラ色のしずくに頬を濡らした木島夫人は善八郎氏の腕のなかで絶息し、
引きずり込まれた居間で脚を大きく開いて、
微かに残った意識をたぐりながら、いけません、いけませんと、囁きつづけていた。
嵐が過ぎ去った後、ワンピース姿は落花狼藉の痕跡にまみれ、
荒々しくずり降ろされたストッキングには、善八郎氏の欲情の残滓が白く濁ってへばりつけられていた。
夫人の着ていた花柄のワンピースの肩先は、血に濡れていた。
首すじには、みごとな咬み痕が、吸い残された血潮をあやしてテラテラと光らせていた。

「これは、とんだことをしたね」
情事を終えて出てきた吸血鬼をみて、善八郎氏はむしろ救いの手を見出した気分だった。
「だいじょうぶ、なんとでもなる」
吸血鬼はそういうと、奥さんに気付け薬を嗅がせ、正気づけてやった。
それから、クリーニングするために持ってきた服に着替えさせて、いま着ていた服を逆にクリーニングするよう善八郎氏に指示した。
「この服をクリーニングしてもらいたかったら、ワンピースを受け取りに来たときに着てくることだな」
吸血鬼は奥さんをやんわりと脅迫した。

その晩、木島夫人は夫に伴われて、クリーニング店を訪れた。
吸血鬼はそんなこともあるだろうと、家に居座り続けていた。
もちろんそのあいだは、素っ裸にされたおかみさんが、吸血鬼に始終付き添っていた。

木島氏は、ものわかりのよいご主人だった。
「家内のことはどうぞご内聞に。その代り今夜はこちらに泊まらせてやってください。
 明日の朝、着替えを持参して迎えに参りますので」
クリーニング代をただにするという申し出を丁重に断って、ご主人は一人で帰っていった。
「家内の操はクリーニング代ほど安くはありませんよ」と、笑いながら。


「木島さん、お見えですよ~」
木島夫人が洗濯物を携えてクリーニング店を訪れると、おかみさんの声をいつになく弾みを帯びる。
きちんとした身なりのいいとこの奥さんが、禿げ頭でゆでダコのような頭をした自分のダンナにもてあそばれるのが、いっそ小気味よかったのだ。
ダンナが浮気をする――といっても、自分のことを考えればおあいこではないか。

木島家のクリーニング店の来店頻度は、見る間にあがっていた。
この日も木島夫人は、紅をいつもより濃いめに刷いて、夫婦のまえであでやかに笑う。
健康そうな白い歯が、笑うおとがいのみずみずしさが、自分たちにはもうない若さを感じさせた。
夫人の着てきたスーツは、紺のよそ行きのものだった。
「この格好のまま、クリーニングお願いしますね」
奥の部屋であおむけになると、夫人はそう言って、目を瞑る。
首のつけ根に突き立てられた牙が皮膚の奥深く刺し込まれ、ジュッと撥ねた血がジャケットの肩先を濡らすのを、むしろ小気味よく受け止めた。


吸血鬼が自分の女房に目を留めたことを、いまでは善八郎氏は誇りに思っている。
だから、それまでは冴えない身なりをしていたおかみさんが、
カウンターに隠れて派手なスカートやてかてか光るストッキングを穿くのを、
むしろ好ましいことだと思っている。
無造作に奪われた操だったが、善八郎氏にとっては、最愛の妻のものだった。
仮に料理の前菜や間食のお芋代わりに過ぎなかったとしても、
その瞬間だけは吸血鬼を夢中にさせていることを、好ましくさえ感じている。

ピンクのスーツの女。

2021年03月26日(Fri) 07:09:33

深い昼寝の後の寝起きのような、すっきりとした気分だった。
眠りから覚めた志摩子は起きあがると、娘の佳菜恵をさがした。
自分が吸血鬼に犯されたとき、娘は二階にいたはずだ。
軽い貧血を覚えながら階段を伝いのぼると、
佳菜恵は二階の和室に、来た時のピンクのスーツを身に着けたまま、うつ伏せに倒れていた。
ふくらはぎに赤黒い咬み痕が二つ、吸い残した血をあやしてくっきりと付けられ、
半ばずり降ろされたグレーのストッキングが、咬み痕をから縦縞模様のように鮮やかな伝線を描いていた。
首すじにも咬み痕がついていたが、ジャケットもブラウスも汚れていなかった。
噛むときにも必要以上に着衣を汚さない手際の良さを自慢する情夫の笑みが、心のなかで交錯した。

志摩子の穿いている黒のストッキングも、形を成さないほどに裂け目を拡げている。
一婦人としては侮辱であっても、それが深い寵愛のしるしだというのなら受け入れよう――と、志摩子はおもっていた。
着衣に汚れはないといっても、スカートの裏地までは保証のかぎりではなかった。
白くべっとりと濁った粘液が股間の奥まで浸しているのは、さすがに母親であっても確かめかねた。
自分自身がスカートの裏地を濡らされていたので、娘がどうされたのかを確かめる必要はなかったのだ。


「いらっしゃい」
クリーニング屋のおかみさんは、いつも通りの不景気な声と顔つきで、客を迎えた。
客は若い奥さんだった。
「これ、お願いします」
奥さんはよどみない声で、大きな手提げ付きの紙袋に入れた洗濯物を取り出した。
若向けのピンク色のスーツだった。
おかみさんはいつものように、慣れた手つきで服を点検した。
「この汚れは――」
思わず口にした後、そうしたことを少し後悔したけれど。
若い奥さんのほうが、一枚上手だった。
「ああこれ」と彼女は呟くとすぐに、
「男の人の・・・アレですワ」
と、ぞんざいに言った。
最近の若いひとは・・・と内心思いながらもおかみさんはスーツを拡げ、ほかのところも点検すると、
染み抜き300円追加になりますがと、いつものようにそういった。
若い客の立ち去り際におかみさんは、男の人というのはご主人ではないのではないかしらんとおもった。
その若い奥さんの首すじには、彼女が首すじにつけられたのと同じ痕が、やはりくっきりと泛んでいたから。

日帰りで実家に戻った妻が、違う服を着て戻ってきたのを見て、夫のタカシは軽い昂りを覚えた。
ピンクのスーツは水玉もようのワンピースに、グレーのストッキングは肌色に化けていた。
「お義母さん、元気だった?」
「元気よ~、頼もしくなるくらい」
タカシは佳菜恵がなにを形容しているのかを、正確に悟った。
ふたりの母娘が同じ吸血鬼を相手に、若々しい血潮を気前よくあてがい、そのあと犯されたことを。
「あッ!やだ!何するの!?」
後ろから巻きつけられた夫の腕に、佳菜恵は形だけの抗いを見せた。
「あいつには許すのに、オレはだめなのか?」
切羽詰まった夫の声に、「自信持ちなさいよお」と、妻はのんびりとこたえた。
夫はしかし、妻を台所に生かせようとはしないで、その場に押し倒した。
「あっ、もう!」
畳で膝を擦ったはずみにストッキングが破れた。
恨めしそうな上目遣いが、さらに夫をそそった。
夫は両手で、妻の穿いている肌色のストッキングを引き裂いた。
すったもんだが、始まった。

「今子供出来たら、どっちの子どもか分からなくなっちゃうよ」
白い歯を見せて無邪気に笑う佳菜恵に、
「どっちでも大事に育てる」
タカシはそう誓いながら、自分の言葉に興奮をして、
もう一度、佳菜恵のワンピースのすそを生温かく濡らしていった。

喪服の女。

2021年03月21日(Sun) 08:57:19

雨の日だった。
クリーニング店の軒先をくぐると、おかみさんがいつものように不景気な顔つきで、カウンターの前所在無げに佇んでいた。
志摩子の姿に気づくと「あら、いらっしゃい」と、急に愛想笑いを浮かべ「クリーニングですね」と、言わずもがなの問いを発した。
おずおずと差し出された風呂包みを丁寧にほどくと、きちんと折りたたまれた喪服が一式、行儀よくうずくまっている。
洗濯もののかごに放り込む前に、喪服にシミや汚れがないかを申し訳のように点検すると、
スカートの裏地に薄ら白いシミが拡がっているのが見て取れた。
おかみさんは、志摩子の顔をふと盗み見た。
志摩子はそれに敏感に気がついて、さりげなく目を逸らす。
おかみさんは何もみなかったような顔をして、染み抜き300円追加になりますが、とだけ、言った。

代わりに受け取った洗濯物も、喪服だった。
こちらは、夫を弔うときに着ていたものだった。
クリーニングに出した方は、そのあとに新調したもの――いまつき合っている男の趣味だった。

貞操堅固な未亡人でいるつもりだった。
けれども、状況がそれを許さなかった。
娘夫婦に吸血鬼がとりついたのだ。
不覚にも娘はあっという間に血を吸い取られ、あまつさえ吸血鬼の愛人にされてしまっていた。
まだ、子供のできる前の身体だった。
志摩子未亡人は、身代わりを申し出た。
それでは婿があまりにもかわいそうだからと。
吸血鬼は、意外にも情のある男だった。
血液さえ確保できれば、相手は若妻でなくても良い、と考えていた。
私は未亡人ですから、どこにも迷惑は掛からない――志摩子はそういって、娘の身代わりを引き受けた。
間もなく、娘の夫は転勤になって、この土地を離れた。
どちらにしてもよかったのだ――と、志摩子はおもった。

いつも情事を行うのは、床の間のある部屋だった。
男は、仏間での交接を望んだ。
人妻をものにするとき、夫に見せつけたがるという、よろしくない趣味をもっていたのだ。
もっとも夫の苦痛を軽減するために、まず夫の血を吸ってたぶらかしてしまうことも忘れなかったのだが。
志摩子は未亡人だったから、そんな気遣いさえも、無用だった。

その夜の床の間には、盆栽がしつらえられていた。
夫が生前、丹精していたものだった。
その前は、蔵書だった。
そのまたまえは――やはり夫が自分自身とおなじくらい大事にしていたものだったはずである。

自分は人妻なのだと片時も忘れたくなかったのだ。
つい夢中になってしまいそうな自分が、怖かった。

その夜も、吸血鬼はひっそりと、忍んできた。
未亡人は、黒一色の喪服姿に身を包んでいた。
男が喪服を好んでいたとは、襲われた後に知ったことだった。
自分自身の喪に服する気持ちで、初めての逢瀬で喪服を身につけて行ったのは、誤算だったのだ。
今は、そうと知りながら、かれの好みに合わせて喪服を装っている。
男は、薄黒いストッキングに包まれたつま先を、チロチロと舐めた。
情事の始まる合図だった。

その晩、未亡人はいつにない昂奮を覚えた。
もうがまんできないと、はっきりと悟った。
そして、吸血鬼に告げていた。
わたくしを、貴男の愛人のひとりにお加え下さいと。
吸血鬼はいった。
とっくに加えておる――と。
二人は初めて、心からの接吻を交し合った。

息子夫婦が、再び転勤になって、街に戻ってくるという。
子どもを作るのはもう少し待つから、お義母さんにこれ以上負担をかけたくないというのだ。
新妻がどういうあしらいを受けているのかを薄々察しているくせに、寛容な婿だと思った。
母娘で愛人になりましょう――志摩子はそう返事を書き送っていた。

可愛い淫乱女装妻

2021年03月17日(Wed) 21:17:38

まえがき
たいとるは「女装妻」ですが、ほとんど純女の人妻の話として読めるようなお話に仕上がりました。
なので、女装に関心の薄い方も、読んでみてください。^^


妻のゆいを伴って、吸血鬼の悪友宅を訪問した。
うら若い人妻の生き血を啜りたいという欲求に、応えてやるためだった。

ぼくたち夫婦と彼との間に妖しい三角関係が生じたのは、去年のことだった。
そのときやはり彼は飢えていて、灰になる寸前になって相談を持ち掛けてきたのだ。
ゆいひとすじのぼくにとって、うら若い人妻、といえば、ゆいしか思い当たらなかった。
彼もそれを見越して、ぼくをターゲットに選んだのだと、あとでいった。
親友が灰になるのはどうしても避けたかったぼくは、
相手が吸血鬼ときいて怯えるゆいに説明した。
彼はぼくの親友だから、ぼくの愛するひとの血を吸い尽くして死なせることは決してないこと。
すでにぼくの母や妹も経験者で、いまでも時々つき合っているけれど、
ふたりとも旅行に出てしまっているので、急場に間に合うわけにはいかないこと。
人妻の血を啜った後の吸血鬼は、ひどくエッチな気分となって、
ゆいとセックスをしたがると思うけど、
そこは目をつぶって許してやってほしいこと、など、など。

ゆいを抱かれてしまうことには、さすがのぼくも抵抗があった。
けれども、気丈な母やおぼこだった妹が抱かれてゆくところをのぞき見する愉しみを経験してしまったぼくにとって、
ゆいが犯されるところを覗く ということに、耐え難いほどの誘惑を感じてしまったのも事実だった。


ゆいは、「気分は喪中♪」と称して、ブラックフォーマルを着込んで、
ぼくに連れられて初めて、吸血鬼と顔を合わせた。
「案外ふつうなんですね」
ゆいは拍子抜けしたように、いった。
自分の父親くらいの年恰好の、風采のあがらない初老の男をまえに、
むしろ安心したようだった。
楚々とした装いの、黒のストッキングの足許に、唇を吸いつけられるまでは。

!80479d.jpg

薄地のストッキングごしに、ヒルのような唇をヌメヌメと這わされて、
ゆいはさいしょ気持ち悪そうに相手を見おろしていたけれど、
吸血鬼はだまっているゆいと接して、
彼女が彼のために穿いてきたストッキングの舌触りを愉しんでいることを、
決して嫌がっていないのだと、自分に都合の良い誤解をした。
そしておもむろに牙をむき出すと、薄いナイロン生地をぱりぱりと破きながら、ゆいのふくらはぎに魔性の異物を埋め込んでいったのだった。
やわらかなふくらはぎから吸い出されたゆいの血液が、
ぼくの悪友の唇を浸し喉を潤してゆくのを、
ぼくは息をつめて見守るばかり。
ゆいもまた、両手で口許を羞ずかしそうに抑えながら、
咬み破られたストッキングがいびつに妖しくよじれてゆくありさまを、
ただひたすらに見つめおろしていた。


本物の女よりも、女らしかった。
口許に散った吸い残した血を丹念に舐め取りながら、吸血鬼はぼくにいった。
最高級のほめ言葉だった。
彼の言い草に、ぼくは満足を感じた。
そうなんだ。
ゆいはほんとうは男の子だけれども、性別の差を越えてぼくと結婚して、いまは女としての日常を穏やかに送っている。
そんな日常をぼくたちの日常を、彼は必要以上に乱そうとせず、妖しい色どりをつけ加えてくれた。

漆黒のブラウスを半ば剥ぎ取られ、半ばを腕に通して、
重たげなスカートを腰までたくし上げられて、
ゆいはショーツを引きずりおろされるままに引きずりおろされて、
股間にそそり立つ吸血鬼のペ〇スを、従順に挿入されていった。
根元まで埋め込まれたとき、彼女はなん度めか白い歯をみせて、
こみあげる昂りをぼくの視界から押し隠そうと、むなしい努力を重ねた。
ぼくは彼女に近寄って、なおも抗おうとする両腕を、優しくじゅうたんのうえに抑えつけながら、いった。
「愉しんでいいんだよ、ゆい」
男はぼくの囁きを耳にすると、くすぐったそうににんまりと笑みながら、ゆいとの距離を否応なく縮めていった。
息はずませた上下動の激しさが、抑えた腕を通して生々しく、伝わってきた。

ゆいはどこまでも優しく、可愛かった。
フェラチオを望まれれば、恥ずかしながらも応じていったし、
初夫よりも大きいわあと言え!と命じられると、
ぼくに許しを請うような目線をチラチラと送りながらも、唯々諾々とそれに従った。
脚から抜き取られた黒のストッキングを戦利品のようにせしめられて、
むぞうさにポケットに突っ込まれてゆくのを、眉を寄せて見つめていたが、
決してそれを取り返そうとはしなかった。
「お前のゆいは俺がストッキングフェチだと知りながら、薄黒いなまめかしいのを択んで穿いてきて、俺をしんそこ愉しませたのだ」
吸血鬼はぼくにそう囁いて、ああたんのうした、と聞こえよがしに言った。
身体の奥底に脈打つ血潮をしたたかに味わわれてしまったゆいは、恥ずかしさに真っ赤になって、うつむいた。


それからのゆいは、貞淑な人妻から、貞淑で淫乱な人妻にかわった。
京極夫人としての清楚な服装を、彼に愉しませるために装うようになっていた。
ゆいのファッションセンスを目のまえで褒められて、夫のぼくも悪い気はしなかった。
仮にそのすぐ後に、こぎれいな装いをしどけなく乱されてしまうのだとしても――
ゆいは、ときにはぼくの目を盗んで逢瀬を愉しみ、
あとから悪友からの見せびらかしですべてがばれて舌を出す、
そんなお茶目な不倫を愉しむようになったのだ。
ふつうの夫婦では、不貞は裏切りに直結する。
けれどもゆいの不貞はむしろ、ぼくたちの結婚生活に、新たな刺激をもたらしたのだ。


その日もゆいは、ぼくの誘いに応じてくれて、吸血鬼宅への訪問を拒まなかった。
情夫のために念入りに化粧をするゆいを横目に、ぼくは淡い嫉妬を覚え、
恥ずかしい隆起が股間を圧迫するのを感じた。

その日のゆいは、白のハイネックのセーターに、下も白系の花柄のひざ下丈のスカート姿。
軽やかな色と質感のスカートが、クリーム色のストッキングに包まれた足許にまといつく様子は、人妻というよりも良いとこのお嬢さんのようだった。
ウィッグは先日買ったばかりのナチュラルブラックのロング。
初めてのお試しだよ、と笑うゆいの目鼻が、優しく上品に輝いた。
ぼくのきれいなゆいを、あいつに見せびらかしてやりたい。
そんな気分になっていた。

ぼくはゆいを吸血鬼に見せびらかし、
吸血鬼は乱れるゆいをぼくに見せつける。
ゆいを挟んで裏表から楽しんでいる関係――
うまく言えないけれど、
同じひとりの女性を愛したもの同士の連帯感が、
彼とぼくとのあいだで生まれていた。

「ウフフ、きょうはいちだんと、かわいいね」
ぼくたち夫婦を迎え入れた吸血鬼は、舌なめずりせんばかりにゆいを見つめ、
ゆいもまたそれに応えて、胸を張って彼の好奇心たっぷりの視線を受け容れた。
さあ座り給え――吸血鬼がゆいのために用意してくれた椅子は、
きょうの衣裳に合わせたかのように、白の小じゃれたチェアだった。
ゆいはお行儀よくチェアに腰かけて、
クリーム色のストッキングに包んだ足許を、さりげなく見せつける。
それは結婚式のとき、ウェディングドレスの下にまとったものと、同じブランドだった。

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お行儀悪いことのできないお嬢さんのような楚々とした態度に、彼はいっぺんに参ってしまった。
「ああ、たまんねぇ」
珍しく下品に語尾を歪めながら、彼は息遣いも荒く、ゆいの足許にかがみ込んだ。

チュッとあがった性急な接吻の音に、ゆいはどぎまぎしながら、
「せっかく穿いてきたの、愉しんでくださいね・・・まだ心の用意ができてない」
と、しんそこ焦った表情になっている。
けれども吸血鬼は応えもせずに、いつも以上に下品に舌を這わせ、薄地のナイロン生地をいびつによじらせながら、ストッキングの舌触りを、彼女の心遣いを、野放図に愉しんでゆく。
「ああ、ああ、たまらない・・・たまらないわ・・・」
ゆいはそう呟くと、ちいさく叫んだ」
「破って、破って頂戴!」
声よりも早く、ストッキングはブチブチと音を立てて裂け散った。
ちゅうっ・・・
ひそやかにあがる、吸血の音。
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
それはとどまることを知らないように続き、
吸血がつづくにつれて、ゆいの身体から力が抜けていった。

吸血鬼はゆいの身体を這いあがると、首すじを狙った。
「お洋服汚してもいいけど、ウィッグは新調したばかりなの」
薄眼を開けて呟くゆいに、吸血鬼は頷くと、
ロングヘアを器用にかいくぐり、かりりと首すじを咬んでいった。

チェアからすべり落ちた若妻を待つ運命は、ひとつだった。
呪縛にかけられたように身じろぎひとつできなくなったぼくの前で、
ゆいは猥褻極まりない蹂躙を受けつづけ、
床のうえを転げまわりながら、淫靡な舞踏を踊りつづけた。
切ないため息、躊躇いがちに洩らすうめき声。
感じ切って敏感になり切った美肉が、
痴欲もあらわに覆いかぶさってくる男のまえに、さらけ出される。
股間から伸びた一物が、エレガントなロングスカートの奥にまで侵入して、
わずかながら持ちこたえていたゆいの理性は、完全に崩壊した。
もっと、もっとォ・・・
夫であるぼくのまえ、人妻としてのたしなみも忘れ果てて、
男の両肩にしがみつき、だだの牝として振る舞いつづけたのだ。
そんなゆいのエッチな可愛さに、
ぼくはズボンのなかで射精をしつづけてしまっていた。

文集

2021年03月12日(Fri) 08:00:15

春先に親友から、分厚い文集が送られてきた。
内容は、去年の夏旅先で知り合った吸血鬼と、親友夫妻との交情の記録だった。

迷い込んだ山中で、さいしょに親友が血を吸われ、
朦朧となった目の前で奥さんが草むらに組み敷かれ、首すじを咬まれながら犯されたのをなれ初めに、
やがて夫婦と吸血鬼とは打ち解けあって、親友は妻の不貞を許し、
愛妻の貞操喪失記念にと、ストッキング一枚に剥かれた妻が愛し抜かれるいちぶしじゅうを、
ひと晩がかりで目の当たりにするという体験をしたという。

そんな田舎にストッキングなどを持って行ったのは、
さらにそのまた知人の誘いで、当地の婚礼に出るためだった。
婚礼があるというのは、嘘ではなかった。
自分の妻と吸血鬼との婚礼であると気づくのに、そう時間はかからなかったから。

出会った吸血鬼は、ストッキングフェチだった。
喪服に黒のストッキングを身に着けていれば、年配のご婦人にまで言い寄るようなやつだった。
まして、まだ四十代の親友の奥さんの、ストッキングに透きとおる足許が狙われたのはむしろ当然だったのだと、親友は文集のなかで書いていた。
手持ちのストッキング二、三足では愉しませきれないと、奥さんは感じた。
家に帰ればこじゃれた洋服を、奥さんはなん着も持っているのにと、親友も感じた。
彼らが都会の自宅に吸血鬼を迎え入れたのは、これもとうぜんのなり行きだった。

こんな文集が送られてきた理由は、ひとつしかなかった。
文集を持ってきたのは、ほかならぬ吸血鬼当人だったから。
あまり度が過ぎると健康を損ねるから――という理由で、彼は夫妻といちど距離を置くことにしたのだ。
その間の血液の供給先として選ばれたのが、わたしの家だった。
わたしにはまだ三十代の妻、この春中学にあがる娘、それに還暦前の母がいた。

三人の女たちが、どんなふうにしてスカートをめくられたのか、わたしは文集に書いた。
妻や娘のフレッシュな生き血だけではなく、
ふだんでもストッキングを脚に通す習慣を持った母さえもが、すっかり吸血鬼のお気に召していた。
長年連れ添った妻がストッキングをひざまで降ろされて、じゅうたんのうえを転げまわるのを、父までもが好奇心を苦笑に押し隠してひっそりと覗き見していた。

この文集を、弟のところに送ってやろう。
彼はまだ、新婚だ。
吸血鬼はきっと、満足するだろう。

なぞなぞ ~大ぜい迫ってきた場合の対応~

2021年03月12日(Fri) 07:57:01

問い
若い女の生き血を欲しがる吸血鬼が、奥さんを狙って自宅に群がってきました。
適切な行動を思いつくだけ挙げてください。

答え(例)

交代で吸ってもらう

順番に並んでもらう

一晩三人までに制限する

自分も女装して仲間に加わる

娘が大きくなるまで待ってもらう

息子に彼女ができるまで待ってもらう

結婚式をやるからと言って、親族の女性を集める(嘘ではない)

学校を襲ってもらう

なぞなぞ ~数を合わせる方法~

2021年03月12日(Fri) 07:54:38

問い
一人の人妻は吸血鬼一人を満足させることができ、
一人の人妻が吸血鬼二人を相手にすると死んでしまうとした場合、
吸血鬼が二人いて人妻が一人しかいない場合、
どうするのが両者にとって最善の道か?


答え
人妻の旦那が女装して、もう一人の吸血鬼を満足させる。

二人の美しい人妻

2021年03月07日(Sun) 09:15:08

妻が吸血鬼に襲われたということは、
吸血鬼にとっては、貴重な生き血の供給先を得たということを意味する――
夫にとっては災難でも、彼らにとっては救いなのだ。

妻と母とが、吸血鬼の兄弟に狙われた。
最初に襲われたのは、妻だった。
相手の吸血鬼は、わたしの親友だった。
親友が獲物をゲットしたときいたら、きみは祝福してくれるかね?
そういわれてわたしは、とてもフクザツだった。
バーのカウンター席、彼の向こう側には妻が座り、
照れくさそうに申し訳なさそうに、こちらをみて笑っている。
その首すじにはくっきりと、ふたつの咬み痕が刻印されていた。
わたしはふたりの濃厚なキスを見せつけられて、
そのあとふたりがホテルへと足を向けるのを、咎めることさえ忘れてぼう然と見送った。

良き悪友である彼は、妻の血を吸い尽くすことはしなかった。
彼はわたしがするように、いやもっとしつように妻を愛し抜き、
気の強い妻はひと晩じゅうベッドのうえ、男の腕の中、
「奴隷になるわ、奴隷になるわ」
と、誓い続けていたという。
結局わたしは悪友の欲望成就を祝い、ふたりの関係を受け容れていた。


嫁の不貞を咎めだてしない姑はこの世にいない。
母の場合もそうだった。
けれども、たまたま不貞の現場を抑えた彼女を襲ったのは、
妻の不貞相手の兄だった。
兄貴は兄貴らしい貫録で母をあしらい、首すじに咬みついた。
無抵抗の婦人の悲痛なうめき声を、妻は楽しそうに聞き入っていたという。

母を襲った吸血鬼はストッキングフェチで、正装したご婦人を見かけると、
相手が五十六十であっても、つややかなストッキングで装われた足許に
好色な視線を投げかけてゆくという。
母は彼の期待通り、よそ行きのタイトスカートの下、薄地のストッキングを脚に通していた。
奥ゆかしく装った肌色のストッキングをチリチリと咬み破かれながら、
豊かなふくらはぎの肉づきを愉しまれながら、母は吸血されていった。

妻の不貞相手の兄貴は、兄貴らしい貫録で父と話をつけて、
父の名誉を守る代わりに母と交際する権利を勝ち得ていた。
彼の好みに合わせて黒のストッキングを脚に通すようになった母は、
神妙な顔つきで父に三つ指を突いて許しを請うと、
その目の前で情婦との濃厚なキスを交し合ったという。

理解のある夫ふたりは、ほろ苦い想いを胸に妻たちの服従の儀式を目の当たりにしながらも、
妻と情夫との交際を快く受け容れた。

こうして吸血鬼の兄弟は、二人の美しい人妻を、めでたくゲットしたのだった。