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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

白いハイソックスの保健部員

2021年06月24日(Thu) 08:11:19

保健部員の彼女は、制服のスカートの下、
白のハイソックスを看護婦さんの白タイツのように履きこなしている。
赤縁メガネに、そばかす顔。
肩先までの黒髪を地味に流して、スタイルは良くもなく悪くもなく、
ごく目立たない少女だった。
ハイソックスは、ふつうの真面目な女の子が脚に通す、無地のもの。
そんな控えめなたたずまいに、吸血鬼が欲情した。

彼は想いのままに学校に出没して、
女教師や女子生徒、それに女の事務員をさらっては、空き教室に連れ込んで、
想いの限りを尽くすのだった。

戸惑う保健部員のまえ、吸血鬼は内心舌なめずりをしながら少女を見つめた。
すまないが保健部員さん、わしを渇きから救っていただけまいか?
こたえはひとつしかないのだと、頭の悪くない保健部員は承知した。
そう、嫌といっても咬まれるし、いいわといってももちろん咬まれる。
彼女の皮膚の下をめぐる14歳の血液は、もはや吸血鬼の絶好の好餌となる運命だった。
「わかりました。お相手しますから、乱暴しないでくださいね」
少女は気丈にも吸血鬼をまともに見返し、
自分から先に立って、手近な空き教室へと入っていく。

こんな地味な私が?という想いもあった。
ヒロイン向きの柄ではない、と自覚していた。
期せずしてめぐってきたヒロインの役柄は、吸血鬼に襲われる役。
学芸会で吸血鬼の寸劇を演じたとき、冒頭に襲われる第一の犠牲者役の子も、
彼女よりはさえた美貌の持ち主だった。
それでも保健部員は、自分の役目を思い出して、
具合の悪くなった人の介護に専念しようと、心を決めた。

教室に入ると吸血鬼は、少女を後ろから羽交い絞めにして、
首すじを咬んで血を吸った。
「あっ・・・」
眩暈を起こして倒れかかる少女を、吸血鬼は支えてやり、
支えてやりながらなおも血を啜りつづけた。
「輸血だと思ってくだされよ」
引導を渡すような囁きに、少女は目を瞑り、恐怖をこらえながらもかすかに頷いた。
随喜のうめき声をあげて、男がのしかかってくるのを制服姿で受け止めながら、
少女は白い歯をむき出しにして、痛みと恐怖に耐えた。

男は保健部員の丈長なスカートをたくし上げると、
白のハイソックスを履いたふくらはぎも、咬んでいった。
「それだけはやめて」と、少女はちいさく叫んだけれど、
見境のつかなくなった吸血鬼の耳には入らない。
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
ハイソックスを血で濡らしながら、盛んに音を立てて、少女の生き血を吸い上げてゆく。

「満足なさいましたか」
蒼ざめた顔に恨めしそうな色を泛べながらも、保健部員は患者の容態を気遣うのを忘れない。
「ありがたかった」
吸血鬼は彼女を抱きしめてお礼を言うと、教室から立ち去っていった。
恐怖が去ると、緊張から解放された少女は、ハンカチを取り出して、少し泣いた。
けれども、芯の強い彼女は、泣き顔を人に見られるのをきらって、
教室から出てきたときには、いつもどおりの彼女だった。
ふくらはぎがまっ赤に濡れた、ハイソックスを除いては――

少女が再び吸血鬼と出遭ったのは、一週間後の学校からの帰り道。
顔色ひとつで、自分のまえに立ちふさがった男が、なにを求めているのかを察した。
「喉が渇いているんですよね」
保健部員は呟くようにそういうと、
「未経験の子をびっくりさせるくらいなら、私が相手になるか」
と、さらに低い声で呟いた。
「ここでは嫌です。人のいないところで」
吸血鬼をまともに見返す目には、怜悧な輝きが宿っていた。

公園のいちばん奥まったベンチに腰かけて、
首すじに血潮をあやした少女は、それがブラウスの襟首を汚さないかと気にかけながら、
看護婦の白タイツのように履きこなしたハイソックスを、吸血鬼の舌にゆだねていた。
自分の履いているハイソックスを、意地汚くなぶり抜く吸血鬼を、
「迷惑がられると思いますよ」
と、たしなめながらも。
保健部員は、けっきょくは、患者の気の済むように、させてやった。
いたぶり抜かれたハイソックスが、くしゃくしゃに波打って、いびつによじれ、
血潮に濡れながらずり降ろされてしまうまで。

数年後。
「若田さん、13号室の患者さんよろしくね」
婦長に声をかけられた若田看護婦は一礼すると、
地味な赤縁メガネを光らせて、指示された病室へと足を向けた。
白衣のすそから覗く脛は、肌の透ける白のストッキング。
奉職してから、なん足愉しませてしまったことだろう。
まだ男を識らない身体は、吸血鬼の患者を対象に、処女の生き血を供給しつづけていた。
「蛭村さぁん」
入院したばかりの患者の名を呼びながら病室のドアを開いて、
若田看護婦は足をすくませる。
かつて中学校で何度も彼女の血に執着した、あの吸血鬼だった。
「あのときの保健部員さんか」
「相変わらず、人さまを困らせているのですね」
若田看護婦は、まともに吸血鬼を見返した。
「そういうことだ」
息荒くのしかかってくる吸血鬼の猿臂を、さりげなくかわしながら、
それでも若田看護婦は自分の勤めを忘れてはいない。
「ハイソックスのほうがよろしかったですか」
と問う看護婦に、「いいや、これが良い」と、
吸血鬼は舌なめずりをしながら、白のストッキングの足許へとかがみ込む。
「ほんとうに、看護婦になったのだな」
「エエ、ほんとうになりました。貴男のようないけないひとを癒すために」
吸血鬼は感謝するように目を瞑り、彼女を拝むように手を合わせると、
もはや欲望に忠実になって、看護婦の足許に唇を吸いつけた。
なよなよとした薄地のナイロンが男の唇になぶり抜かれ、
チリチリに咬み剥がれてゆくのを、看護婦は苦笑しながら見おろしていた。

女の姿で、妻の情夫と真夜中のデート。

2021年06月19日(Sat) 09:27:10

さいしょに襲われたあの晩の記憶が、ひどく怪しいものになっている。
あの晩芙美夫は勤め帰りに立ちふさがった吸血鬼に一方的に血を吸われ、
自宅に招ぶことを強要されて、
上がり込まれた自宅で、妻の静江は濡れ場を演じる羽目になったはず。
それが、じつはそうではなくて、
血に飢えて苦しんでいた吸血鬼に、芙美夫のほうから声をかけて血を吸わせてやり、
家内のことも紹介するよと自宅に誘い、
初対面の静江は吸血鬼にひと目惚れしてしまい、
夫のい合わせるその場で、気前よく生き血を振る舞ったばかりか、
芙美夫の妻であることを忘れ、女として抱かれることを択んだ――というのだ。

嘘の記憶に決まっている、と、わかっていながら。
その嘘の記憶こそが真実なのだと、信じたがっている自分がいるのを感じていた。
妻に話して聞かせると、
あなたの言っているほうが、きっと事実よ、と、夫の妄想のほうに、賛意を表した。
わたくしは、貴方のご希望にそって、身体を許しただけですものといいつつも、
夫公認のデート以外にも、しばしば夫に内緒で情婦と逢瀬を遂げてもいる静江だった。

いま芙美夫は、真夜中のファミレスで、
妻の用意した女もののワンピース姿で、妻の情夫と逢っている。
いつもなら、家から抜け出した静江がここで情夫と落ち合い、近場の公園で想いを遂げられて帰宅するところなのだが。
静江が血を吸われ過ぎたときにはいつも、夫である芙美夫が代役を務めているのだった。

女装願望は、遠い昔から抱いていた。
妻にそれがばれたのは、いつのことだろう?
おおっぴらになったのは、妻が初めて吸血鬼に抱かれた、あの晩のことだったはず。
夫婦ながら抱かれてしまったその翌日。
情夫が朝日にも耐えられることがわかると、彼は妻の用意した服を着て、
夫婦のベッドでいまいちど、女として抱かれたのだった。
それ以来、芙美夫は「芙美江」となって、女の姿で妻の情夫と逢うようになっていた。

妻はこんな時分に誘い出されて、
こんなふうに手を引かれ、店を出て、真夜中の公園に、忍び入るようにして入っていって、
街灯がこうこうと照らす芝生の上、背の高い生垣に守られながら、
こんなふうに衣裳をはだけられ、
こんなふうに素肌に唇を這わされて、
髪振り乱して、狂わされていくのだ――と。
芙美夫は自分の身体で、覚え込まされていったのだ。

擦り寄せられてくる素肌を通して、吸血鬼が妻ばかりではなく、自分にまで、執着的な情愛を注いでいるのを自覚した。
その情愛が伝染するように、芙美夫自身にものり移って。
ストッキングを脱がされた下肢を支配されながら、
ワンピースのなかにほとび散らされる粘液の熱さを悦びながら、
腰を振って応えていった。
ちょうど妻が夫を裏切るときと、同じくらい熱心に――

夫と間男とのあいだに、恋が成立するとき。

2021年06月19日(Sat) 09:03:09

芙美夫は、男に犯されていた。
妻を犯した男だった。
男は、吸血鬼だった。
男はまず芙美夫を襲って血を吸い、
酔い酔いになった芙美夫に自宅を案内させて、
芙美夫の家でその妻、静江の血に酔い痴れた。

男は、モノにした人妻を、女として愛する習性を持っていた。
首から血を流した芙美夫は、自分に意識が残っていることを呪った。
妻が犯されるのを、目の当たりにする羽目になったからだ。
けれども視線はもつれ合いまぐあい合うふたりの様子に集中して、
あなた、視ないで!と叫ぶ妻が知らず知らず飼いならされてゆく光景に、
妖しい昂りを感じはじめていった。
吸血鬼に愛妻を隷属させられる歓びに、目覚めてしまったのだ。
芙美夫は自分の感情を押し隠そうとしたが、むだだった。
逆立つ股間が熱い粘液を勢いよくはじけ散らせるのを、二人に視られてしまったのだ。

その夜、勤め帰りの芙美夫を待っていたのは、静江だけではなかった。
夕食はちゃぶ台にきちんと並べられていたが、静江の姿はそこにはなく、
夫婦の寝室で吸血鬼に組み敷かれて、
肌色のストッキングを片方だけ脱がされ、
花柄のスカートの奥に、精液をびゅうびゅうと注ぎ込まれてしまっていたのだ。
夫の帰宅をすると、静江はあわてて吸血鬼を押しのけたが、
振り乱した髪も、着崩れしたブラウスやスカートも、取りつくろういとまを持たなかった。
「おかえりなさい」
仕方なしに静江は呟いた。
「ただいま」
芙美夫の声色も、虚ろだった。
「お食事、用意してありますから」
そう言い終える間もなく、静江はふたたび吸血鬼に押し倒されていった。

風呂からあがった芙美夫を、吸血鬼が呼び止めた。
そして、さっきまで静江を犯していた夫婦の寝室に芙美夫を引き込むと、
寝乱れたままの布団の上に押し倒し、股間を無理強いに開いていった。
女のように犯されるのは、もちろん初めてだった。
芙美夫は理不尽な痛みに耐えていたが、
なん度も突き込まれる魔性の肉が芙美夫の股間を淫らに昂らせるのに、
さほど時間はかからなかった。
妻を犯した男に、女のように弄ばれる。
情けないという思いは、すぐに消えた。
ふたりは無言のうちにせめぎ合い、肌を擦り合わせていった。

この猿臂が静江を抑えつけたのか。
この皮膚が静江の肌に重ね合わされたのか。
この唇が、静江の唇を支配していったのか。
まるで自分が静江に成り代わったかのような錯覚をおぼえた。
吸血鬼の愛撫に酔わされながら、芙美夫は否応なく、状況を受け容れさせられていった。
そしてさいごには、重ね合わされた唇に、自分のほうから応えはじめていた。
なによりも。
股間に刺し込まれた肉傍の甘美な痛みが、
妻がすぐに堕ちた理由を、雄弁に語ってくれていた。
これなら妻が堕ちるのも、無理はない――芙美夫はおもった。
そして、自分もいっしょに堕ちてしまおう――心からそうおもった。
気がついたら自分から腰を振って、応えはじめてしまっていた。

同性カップルの新枕の傍らにいつの間にか、
女もののワンピースと下着がひとそろい、
きちんと折りたたまれて、ひっそりと置かれていた。
不倫の恋を認めてくれた夫に対する、静江の心遣いだった。


6月15日構想、本日脱稿。

真剣な間男と、不真面目な夫。

2021年06月19日(Sat) 08:51:06

妻の真依(まより)に、吸血鬼はいった。
「まじめな恋愛関係だよな?わし達は」
真依は棒読みのように、こたえた。
「まじめな恋愛関係です」
「そういうわけだ。きみの嫁は、わしの愛人の一人になりさがった。悪く思うな」
ククク・・・と邪悪に笑う彼はしかし、すぐに真顔になった。
「どうかこの恋を、かなえてもらいたい」
夫としての権利を、少しは尊重してくれるつもりらしい。
ぼくはいった。
「まじめな恋なら、仕方ないです」
真依がたんなる慰み物として、本人の意思に反して乱暴されるなら、夫として真依を守らなければならない。
けれども、彼女がきみといっしょにいて幸せだというのなら、ぼくは夫の座を去るか、夫のまま彼女の恋を許容するしかない――

理解のあるご主人だな、と、吸血鬼はにこりともせずに言い、奥さんをしんそこ愛しているのだな、とも言ってくれた。
彼はぼくの血を吸ってその場に昏倒させて、
ぼくはふたりが愛し合うありさまを、理性を忘れて薄ぼんやりとなってしまった脳裏に、しっかりと刻みつけた。

しんけんに愛し合うふたりより、
めろめろにされてしまった妻の痴態に昂ってしまったぼくのほうが、
はるかに不真面目なような気がして、ならなかった。

不倫の予行演習。

2021年06月19日(Sat) 08:38:38

結婚する慶びを吸血鬼の親友と分かち合うため、
未来の花嫁である貴美恵を伴って、彼の邸を訪問した。

持参したお菓子の包み紙を器用にほどくと、彼は中身を口にした。
大の甘党だったのだ。
そしてちょっとの間ぼくが座をはずしたその隙に、
同伴した貴美恵の洋服を器用に脱がせて、ベッド・インした。
大の女好きだったのだ。

邸を辞去した後、彼女はいった。
「ストッキング、取られちゃった」
「なんか、いやらしいね」
「結婚するまでにあと1ダース、あたしからせしめるんだって」
式は二カ月後だった。
「かなりハードだよね・・・」
貴美恵を寝取られる悔しさも忘れて、ぼくは彼女の身体を気遣った。
「花嫁修業だと思って、がんばるわ」
真面目な横顔に戻った貴美恵は、いつもの気丈さを取り戻していた。
不倫の予行演習――そういいかけたぼくは、その言葉をのみこんで、
「しっかりね」
とだけ、こたえた。


かいせつ
すでに身体の関係もあるカップルが、彼氏の親友と懇親を深めるお話です。^^