以下は、ある絵画作品のオマージュとして描き始めたものです。
描き始めてかれこれ数日になるうちに、前振りだけが恐ろしく長くなってしまいました。
いちおう、ストーリーのヒロインは、「有馬由梨」という童顔の少女です。
けれどもお話は、彼女が登場する以前、その同級生が吸血されたり、
由梨を狙う吸血鬼に母親が血液の提供を申し出たり、
なかなかヒロインにたどり着きません。^^;
いつものパターンといえば、いえなくもないのですが・・・
かなり長いお話になりましたので、おひまなときにどうぞ。
ほんとうは、「◆」の箇所で一話一話区切ろうかとおもったのですが、
それでは紙面の構成上かえって見づらくなるため、あえて一篇で描き通しました。
◆姪娘への吸血を、その親たちから希まれる ―有馬由梨の場合―前編
「うちの由梨の血を吸うつもりはないですか?」
妻の弟である有馬から、そんな申し出を受けたのは、
わたしが吸血鬼になってだいぶ経ったころだった。
有馬の娘は、この春中学にあがっていて、五月に十三歳になったばかりだった。
娘の香織が初めて吸血鬼に襲われたのよりも、まだ四つも若かった。
若い、というよりは、稚ない――そんなイメージを持ったのは、
由梨がまだ小さいころから見知っていて、
生まれついての童顔が、ますますわたしのなかで彼女を稚なくみせていたためだった。
親戚の娘を襲って生き血を吸う。
それも、当の娘の父親に誘われて。
そんな趣向に胸をゾクリと騒がせたのは、わたしのいけない習性だった。
変わった少女だった。
まだ小学校四年生の頃から、そら怖ろしいことを口にしていた。
「あたし、吸血鬼に血を吸われてみたい♪」
などと、こともなげに語るのだ。
両親はただ、苦笑しているだけだった。
けれどもすでに、娘をひそかに吸血鬼に嫁入らせてしまったわたしは、
堅く結んだ唇の裏に押し隠した牙を、グググっと昂らせてしまったのだった。
この娘の生き血を勝ち得るのはいったい、だれなのだろう?
わたしたち家族の血を吸い尽くした、あの赤鬼なのだろうか?
――と、そのころはまだ、そう思っていた。
◆赤鬼は、譲ってくれた。
赤鬼は、わたしの娘ばかりか、妻の生き血まで愛飲していた。
ふつうなら一滴余さず吸い尽くしてしまうはずの血液を、
彼女たちの身体のなかに少しずつ留めておいて、
そのために妻も娘も生前と変わらぬ活き活きとした血色を保っていて、
求められるたびに、惜しげもなく、残された生き血を愉しませているのだった。
その妻の弟の娘――
ふたりの血をことのほか愛飲する赤鬼が、由梨に目をつけないはずはない。そう感じていた。
「姪御さんの生き血は、あんたが愉しめばよい」
赤鬼にそういわれたのは、GWが明けたころ、勤めから帰宅したある晩のことだった。
妻は夫婦の寝室で、血を吸い取られて気絶していた。
娘は冬物のセーラー服姿のまま、リビングに大の字になって、伸びていた。
重たい紺のプリーツスカートがめくれ上がって、
父親の目にも眩しい太ももを、さらけ出していた。
こんな恰好をママに見られたら、お行儀悪いと叱られちゃうぞ。
赤鬼がわたしの妻と娘とを、二人ながら餌食にするのを見慣れていたわたしは、
そんなのんきなことを、呟いていた。
娘は首すじから滴る血潮で、セーラー服の襟首を走る、白のラインを染めていた。
もうなん着、汚したことだろう?
卒業してからも時おりセーラー服姿を求められ、その都度娘は女学生の姿に戻り、
そのつどわたしたちは苦笑いをしながら、着替えの制服を求めに、制服店に赴くのだった。
血を吸い終えた母娘をこともなげに足許に転がした赤鬼は、
わたしに姪娘の血を吸えという。
「え?わたしが・・・ですか?」
赤鬼の言を意外に感じて、わたしはいった。
「貴美香と香織の血は、わしのものだ。ぢゃから姪御の血は、山分けにすればよい」
なるほど、そういうことか。
赤鬼に呼び捨てにされた妻も娘も、いまや赤鬼が、独り占めしてしまっていて、
わたしは二人の血を吸うことを、許されていないのだ。
「少しは温情もある――というわけですね?」
少しばかりの皮肉を込めたわたしの応えに、
「あんたにはつくづく、感謝しているよ」
赤鬼はひっそりと嗤うと、意外にもそんな応えをかえしてきた。
◆姪のクラスメイトを、襲ってみた。~由梨の番はもうすぐ~
由梨のクラスメイトである西崎弥生を襲ったのは、その翌月――
由梨が中学にあがった年の6月だった。
「うちの由梨を、入学祝いのしるしに襲って欲しい」
さすがにそのころの義弟はまだ、そんなことは夢にも思わずにいたし、
わたしもまた、一般人としての日常をすごすなか、あえて禁欲していた。
そう、妻と娘の生き血を日常的に餌食にされるだけの、
彼の恥知らずな情欲を埋め合わすため、妻の貞操と娘の純潔を無償で提供するだけの、
一般人の夫・父親として――
セーラー服を着るようになって、少し大人びた由梨のことを、
身近な少女のひとりとして、将来の吸血の対象として、
意識しないわけではなかったけれど、
かりにそんなことになるとしても、せめて夏服になるまでは、ふつうの女の子としての青春を、楽しませてあげたかったのだ。
ちょうど娘が、高2の秋まで、そうしていたように。
西崎弥生は、見ず知らずの少女だった。
たまたま通りかかっただけ、それも娘と同じ学校の制服を着ていただけの理由で、
彼女はわたしの牙を埋められて、うら若い血をむさぼられてしまったのだ。
中高一貫性の私立校であるこの女学校では、だれもが同じ制服を身に帯びていて、
かつて娘の白い夏服姿を、ひそかに眩しく横目で盗み見ていたころのことを、つい思い出してしまったのだった。
そして弥生のことも、娘と同じ夏服の白のセーラー服にそそられて、つい襲ってしまったのだ。
若い娘は、美しい順、若い順に吸血鬼に襲われるといわれるこの街で、
弥生は評判の優等生だった。
吸い尽くすのが惜しかったので、妻と娘のあるじとなったあいつと同じやり口で、
わたしは弥生の体内に彼女の血を少しだけ、留めておいた。
そして時折気が向くと弥生を呼び出して、残りの血を少しずつ、愉しむことにした。
その弥生が由梨と、姉妹のように仲が良いと知ったのは、すこし経ってからのことだった。

「あたし、弥生ちゃんを襲った吸血鬼に逢ってみたい♪」
由梨がそんな言葉を口にするようになったのを、父親の有馬はさいしょ、苦々しく思い、
けれども由梨の決意が変わらないと知って、
同時にこの街では美しい順、若い順に娘たちが襲われていくことを思い出していた。
ミス〇中であった弥生が襲われたとすると、
自分の娘に順番が回って来るのに、なん回も経たないことだろう。
どうせ襲われてしまうのなら、気心の知れたわたしに――そう思いつめたものらしかった。
彼がまな娘を吸血させることをわたしに持ちかけてきたのは、そんなころのことだった。・
もとよりわたしに、否やはない。
13歳の若い血を、両親公認のうえで吸えるのだ。
またとない機会ではないか。
そしてたしかに、由梨の番は、あと数人というところに迫っていたのも事実だった。
◆吸血鬼の家族は侵蝕されていた――
イヤですわっ。あなたは・・・あなたはっ・・・主人の仇敵ではないですかっ・・・
夫婦の寝室から洩れてくるのは、妻の悲鳴。
これ見よがしに開け放たれたドアの向こう、
妻が黒のストッキングを片脚だけ脱がされて、犯されていた。
いや、すでに・・・
「犯されていた」という表現は、無意味かも知れない。
香織が生き血を吸われ犯された数日後、
香織を淫らに染めた男と対決しようとした妻はみごとに返り討ちにあって、
自らもまた、生き血をたっぷりと提供し、淫らに染め抜かれてしまっていた。
そして、娘が受け容れさせられた股間の一物をも、
潔(きよ)く保ちぬいていた秘奥の処に、ずぶずぶと奥深く、侵入を許してしまっていた。
母親の不倫を横目に見ていた香織は、わたしの傍らで、
すでに聞き慣れてしまった母親のあえぎ声に、フフンと鼻を鳴らして、いった。
「ママったら、パパの命日に限って、黒のストッキングを穿いて遊ぶのよね~」
イタズラっぽく上目遣いでわたしを見つめる彼女の首すじにもまた、
母親につけられたのと同じ歯形が、くっきりと刻印されていた。
そんな香織ももはや、女子大生。
吸血鬼となった正体を隠しながら大学に通い、すでにクラスメイトを何人も、自分の情夫に奪わせていた。
香織の血をよほど気に入った赤鬼は、わたしの血を吸い尽くした後、わたしにこう囁いた。
「母娘ともに気に入った。末永く楽しむことにした」
そのときに総身を走ったマゾヒスティックな歓びを、いまでも忘れることができない。

わたしはそんな香織の血を、吸ったことがない。
同じ部族となった掟のなかでは、
わが娘であるとしても、血を獲たものに断りなく、手を出すわけにはいかないのだった。
しぜん、わたしの関心は、かつて娘が着ていたのと同じ制服を着た少女たちへと向かっていた。
◆娘のまえに、わたくしを・・・
―役所勤めの夫を持つ倹しい人妻の初不倫・有馬茉莉恵の場合―
その日は由梨の通う中学の近くで、少女をひとり襲ったばかりだった。
下校中の少女は、曲がり角で待ち伏せたわたしに驚いてひと声叫んだけれど、
その叫び声が終わるころにはもう、好色なうめきをもらしていたのだった。
きつめの目許はなぜか愛嬌も帯びていて、少女がそそっかし屋であることを告げていた。
そそっかしい少女は、
自分が吸血のヒロインに選ばれたことを悦ぶことも悲しむこともできぬまま、
ただ泡を食ってわたしに咬まれ、若い血を啜り取られていったのだ。
この娘は娼婦になれる――
わたしは少女の首すじに食いついて、あふれる血潮をむさぼりながら、
初めて牙にかけた獲物のずっしりとした重みを、嬉しく心地よく抱きとめていた。

満足して立ち去ろうとしたとき。
あの――
と、背後から呼び止められた。
襲った娘の母親に呼び止められたのか?
それなら、返り討ちにするだけだ。
かつてのわたしの娘と妻のように――とおもったら、
背後の声の主は、有馬の妻、茉莉恵だった。
義妹とはいえ、妻の弟の嫁である茉莉恵とは、血縁関係はない。
法事の席でたまに、顔を合わせるだけの、遠い関係だった。
けれどもそのたびに目にする彼女の質素な喪服のすそから伸びた豊かな脛は、
黒のストッキングに艶めかしく蒼白く透けていて、
退屈な法事の席を楽しいものに変えてくれていた。
有馬夫人は、自分のいいたいことを、性急な口調で、矢継ぎ早に口走った。
「いまのお嬢さんの血を、お吸いになりましたね?」
「うちの由梨も、同じようにされてしまうのでしょうか?」
「ならその前に、お願いがあります。
主人の希望ですのでもはや異存は申しませんが、
そのまえにわたくしの血を、召し上がってください。
たいせつな娘の生き血をむざむざと吸われてしまうのです。
その前に娘に、手本を見せてあげたいの!」
娘も不思議なら、その母親も不思議だった。
むろんわたしに、否やはなかった。
彼女は真っ白なブラウスに、ついぞ見ない緋色のスカートを腰に巻き、
ひざ丈のそのスカートの下の脛は、
わたしが日頃から卑猥な視線を絡みつかせていた、黒のストッキングを穿いていた。
勝負服なのだな――と、わたしは思った。
茉莉恵は一通の書付を差し出した。
それは、吸血鬼になった義兄に娘ばかりか妻までも差し出そうとする義弟からのものだった。
山名の義兄様へ
近々、最愛の娘、由梨の血を愉しんでいただくことになると思います。
わたしが義兄さんに由梨の血を吸わせたいと告げたところ、
家内から、「その前に私の血を吸ってもらうようにしたい」と言われました。
娘の身代わりになって自分の血を与え、それでも足りないとなって初めて、娘に相手をさせたい――というのです。
自分が無傷なまま、むざむざと由梨の血を吸わせたくないのでしょう。
既婚の婦人の血を吸った後、
義兄さんが吸血した女性になにをするのかわたしは知っているし、
家内も薄々察しはつけているはずです。
けれどもどうぞ、わが家の女たちの血は母娘とも、義兄さんに進呈ようと思います。
家内の貞操の危機を思いつつも、いずれどこかの吸血鬼に襲われるなら、
見ず知らずの者などではなく、
他でもない義兄さんに獲させてあげたいという想いは変わりません。
どうぞ家内のことを、よろしくお願いいたします。
できれば犯すのだけは見逃して欲しい――そうも読み取れる文面だった。
けれどもわたしは、吸血鬼としての特権を、
義理の妹である有馬の妻に対して、遠慮なく行使することに決めていた。
なによりも。
法事のたびにわたしが視線を吸いつけると知りながら、
あえて黒のストッキングを脚に通してきた茉莉恵の覚悟が、
義弟の妻を犯したいというわたしの欲求を助長させていた。
茉莉恵は、目のまえでわたしが餌食にした娘の若さを気にしていた。
「若いひとのあとでは、気後れしちゃうけど・・・」
一瞬茉莉恵がみせた逡巡が、わたしの衝動に火をつけた。
妻と娘を同じ吸血鬼に所有される――
そんな境遇が決して悪いものではないことを、義弟に訓えたくなっていた。
わたしは茉莉恵の手を強引に引いた。
茉莉恵はちょっとだけ身体をこわばらせて抵抗したが、それはわたしの衝動をさらに燃え広がらせただけだった。
わたしは茉莉恵を、手近なホテルへと連れ込んでいた。
この街に住む人妻たちが、自分の生き血を求める情夫とひと時を共にする、
そんな淫らなスポットとして、有名なホテルだった。
うらぶれたホテルのロビーの入口を見あげて、
そこがどこなのかを知った茉莉恵は、
再度しり込みをしたけれど、
わたしは強引に彼女を促して、なかに連れ込んだ。
そしてフロントの男性にちらと目配せをすると、
男性は余計な手続きを一切省略して、201号室が空いています、とだけ、いった。
201号室。
そこが茉莉恵を堅実な主婦の世界から、一歩逸脱させる場となった。
有馬は市役所の職員で、妻の茉莉恵、一人娘の由梨との三人暮らしで、
倹(つま)しく暮らしていた。
茉莉恵の両親は、教師だった。
そんなもの堅い家庭にそだったはずなのに、茉莉恵は結婚前に二人の男を体験していた。
「義兄さんは良いですね。姉は男を識らずに処女のまま嫁に行きましたが、
ぼくのばあいはそうはいきませんでした――」
過去にいちどだけ、有馬はそんなことを囁いてきた。
妻が非処女であったことに、有馬は暗い影を感じていたが、それも娘の成長とともに、忘れ去られた古傷のようなものになっていた。
いままたこの古傷が、酷いかたちで開くことを、わたしは気にかけていた。
どうせなら、心地よい疼きにしてやりたい――
偽善かも知れないが、
罪滅ぼしにならない罪滅ぼしに過ぎないかもしれないが、
わたしは有馬のために、そんなことを考えていた。
この女は教師の娘として育ちながら、結婚前に男のまえでストッキングを脱いだのか。
だからといって茉莉恵を、粗末に扱うつもりはなかった。
結婚後は品行方正な専業主婦として暮らしてきた女だった。
けれども、この親戚の女性に対する礼譲を、
わたしは欠片もとどめず忘れ果てしまうことになる。
ホテルの部屋に入るとわたしは、茉莉恵を突き飛ばすようにして部屋の奥へと追い込んで、
後ろ手でドアのカギを締めると、立ちすくむ茉莉恵に向って、ゆっくりと距離を縮めていった。
壁ぎわまで茉莉恵を追い詰めると、わたしは彼女の首すじに掌をあてがって、
脂の乗り切った素肌をなぞるように撫でまわしながら、いった。
「血を吸ってください――と言いなさい」
茉莉恵は上目遣いでわたしを見た。
瞳には、恐怖の色をありありと帯びている。
けれども彼女はその瞳に力を籠めて、いった。
「わたくしの血を、どうぞお召し上がりになってください」
義務的な口調ではあったが、ハッキリそう言い切ると、目を瞑っておとがいを仰のける。
引きつった白い頬には、十代のころの茉莉恵に惹かれた男も目にしたであろう、女学生のような初々しさが、かすかに輪郭をとどめている。
考えてみれば茉莉恵は、まだ三十代の若さだった。
由梨の素朴な童顔は、この母親譲りなのだと、ふと思った。
わたしは躊躇なく、義弟の嫁の首すじに、牙をズブズブと埋め込んでいった――
茉莉恵は、拍子抜けするほど咬みごたえのない、柔らかな皮膚をしていた。
その滑らかな皮膚の下に脈打つ太い血管を食い破ると、
純白のブラウスを血浸しにしながら、むせぶようにして、女の生き血を飲み耽った。
大人しやかな横顔や、倹(つま)しげな装いに似ず、
茉莉恵の血潮は淫らに甘く、香(かぐわ)しかった。
育ってきた環境や、地味な外見を裏切って、
この女の肉体をめぐる血は淫蕩なのだと、わたしは知った。
辟易するほどの強い芳香が、鼻腔を充たした。
深々と埋めた牙を思い切りよく引き抜くと、
吸い残した血潮をわざと、女の着ているブラウスにほとび散らせた。
そして、手近なところに置かれてあった姿見に向き返らせて、
首すじにつけた咬み痕を、見せつけてやった。
純白のブラウスが真紅の血潮に浸されている惨状に茉莉恵は打ちのめされたように目をそむけたが、
わたしは許さずに、彼女のおとがいを捉えて、姿見のほうへと捻(ね)じ向けた。
「ひどい――」
茉莉恵は静かに呟いた。
ぼう然としているようでもあり、案外冷静でいるような感じでもあった。
「きょうからあんたは、わたしの奴隷だ」
わたしがそう宣言すると、茉莉恵は観念したように目を瞑り、
どうぞ末永くお願いしますと、囁き返していた。
服従を誓った彼女の神妙な面持ちが、
どす黒い衝動を、勁(つよ)く勃起した一物のように、猛り立たせた。
わたしは茉莉恵をベッドに押し倒し、ブラウスを引き剥ぐようにして脱がせると、
スリップとブラジャーの吊り紐を長い爪で断ち切って胸をあらわにし、
乳房を口に含み、乳首を舌で弄び、ひたすら股間を逆立てていく。
茉莉恵は、有馬夫人としてのさいごの義務を果たすかのように、
弱々しい抵抗を放棄していなかった。
けれども、その細い腕はへし折られるようにしてねじ伏せられ、
胸もとやわき腹までも咬まれていくうちに、じょじょに気力を喪っていった。
黒のパンストに包まれた脛や太ももを愉しみ始めたころにはもう、
ベッドの上の相手を満足させるために、
唇を這わせやすいように脚をくねらせてわたしに吸わせ、辱めさせ、咬み破らせて、
さいごには蜘蛛の巣のように破かれて、チリチリに剥ぎ堕とされてしまうのだった。
妻と娘の血液を提供してくれた義弟の密かな願いも虚しく、
わたしは茉莉恵を、自分の情婦に染め変えていた。
「わたしの血、美味しかったですか?」
おっかなびっくり、というていで、彼女が問いを発したときにはすでに、
股間の関門を6回も、貫通してしまったころだった。
彼女の股ぐらは熱く、
猛り立った一物をくるみ込むように迎え入れた膣は、
ぬるりとしたうわぐすりのような粘液にしっとりとコーティングされているようで、
わたしの一物と密着するように締めつけてきた。
彼女の腕はまだ抵抗を止めていなかったし、顔は背け目は瞑られたままだったけれども、
熱く爛れた秘所はむしろ、侵入してきた熱い鎌首を、積極的に迎え入れてくるのだった。
やはりこの女は、淫乱なのだ。
夫を持っても、ほかの男を求めてやまないのだ。
わたしはそう、確信した。
「有馬一人では、足りなかったんじゃないのか」
彼女の問いに応えず、わたしはいった。
茉莉恵は応えを避けるように目をそむけたが、
こちらに向けた横顔は、無言の肯定を伝えてきた。
「あんたの血は、美味しかった」
わたしの答えに、茉莉恵はほっとしたように身体の力を抜いた。
「では、きっと、由梨の血も美味しく召し上げるんでしょうね?」
娘の名を口にしたときだけ、茉莉恵の顔は母親のそれに戻っていた。
「娘さんからも、たっぷり頂戴するからね」
わたしはいった。
どうぞお願いします――と、茉莉恵はこたえた。
自分を征服した吸血鬼に、まな娘の血を与える。
そんなおぞましいはずの約束を、彼女はあえて誓ってくれたのだった。
「口では吸われてみたいとか申しておりますけれど、娘は怖がりなんです。
あまり苛めないであげてくださいね」
そういう茉莉恵もまた、少しだけ涙ぐんでいる。
やはり怖かったのだろう。
そういえば娘も、さいしょに咬まれた夜は泣いたという。
妻もまた、娘の不義を咎めに行った返り討ちに初めて吸われたとき、
やはり涙ぐんだという。
初体験のときの涙というものは、女には共通のものなのだろうか。
「吸血鬼に血を吸われてみたい」
そんな異常な願望を告げる由梨も、初めてわたしに求められたら、やはり泣くのだろうか。
「乗りかかった舟です。あとはどうぞ、お好きなだけなさってください。
――仲良くいたしましょう」
有馬の妻は、このあとのしつような情事を、明らかに予期していた。
愛妻を襲わせてくれた有馬が、妻の貞操喪失を予期し、いくらかの逡巡を文面にあらわしていたのとは対照的に、
妻のほうは意外なくらい、つきつけられた運命に対して前向きに向き合っていた。
「ああもちろんだ、このままでは帰さない。というか、明日の朝まで帰さない」
わたしはそういって茉莉恵を抱き寄せると、茉莉恵は自分のほうからキスをねだった。
四十前の人妻の活き活きと生温かい呼気は、
冷えて干からびた唇には、眩暈のするほどの刺激だった。
「有馬を裏切っちゃって、いいのか?それともこれからは、好んで裏切るのか?」
そんな訊かずもがなのことを問うたわたしに、茉莉恵は囁き返してくる。
「“毒を食らわば皿まで”って、言いますでしょ?」
義弟の妻は、わたしの腕のなかで、ひっそりと笑っている。
◆不倫の交わりを結ぶために出かけた妻を、迎え入れて
6月の朝風は、一年のなかでもっとも清々しい。
けれども陽のあがらない刻限には、まだ外の冷気は服を通してしみ込んでくるほどで、
まだまだ油断のならない鋭さを帯びている。
その薄暗がりのなか、妻の茉莉恵はホテルから戻ってきた。
初めて体験する吸血鬼との不倫から、無事生還したのだ。
もとより、妻の生命を心配する必要はなかった。
妻の生き血を提供した相手の吸血鬼は、ほかならぬ姉の夫である山名なのだから。
有馬家は、山名家とどうよう、この街では知られた名家だった。
なので、その家の子女の恥は、あまり公にすることは好ましくなかった。
わたしはしがない市役所の一職員に過ぎなかったけれども、
その程度の節度は、やはり親戚一同からも、厳しく求められていたのだった。
茉莉恵は、一人ではなかった。
なんと、自分を犯した義兄に伴われての帰宅だった。
「茉莉恵への想いを成就させていただいた。
お礼をひと言言いたくて、奥さんを送りがてら来たのだよ」
わたしにそう告げる義兄は、晴れ晴れとした表情をしていた。
憎たらしいほど、スッキリとした顔をしていた。
晴れ晴れと笑う義兄の傍らで小さくなっている茉莉恵は、気の毒な有様になっていた。
家から着て行った純白のブラウスはべっとりとした血に浸されていたし、
緋色のひざ丈スカートから覗く脛を包む黒のストッキングは、
みるかげもなく剥ぎ堕とされて、むざんな裂け目をいく筋も走らせている。
吸血鬼との逢瀬がいかに激しかったのかを見せつけられて、
わたしは胸の高鳴りを抑えかねていた。
「家内にはご満足いただいたようですね」
わたしがいうと、山名は、
「茉莉恵は気に入った。わたしの愛人第一号にしたいと思うが、よろしいかな」
とヌケヌケと訊いてきた。
わたしは茉莉恵を盗み見るように、見た。
茉莉恵は謝罪するような目で、わたしを見返した。
なにを懇願しているのか、痛いほど伝わってきた。
「エエ、もちろんです。第一号なんて、嬉しい名誉だと思います」
わたしには、茉莉恵の望む返事をするのが、精いっぱいだった。
そして一言、茉莉恵の足許を見つめながら、いった。
「由梨が学校に履いていくハイソックスも、こんなふうにされちゃうんですかね――」
茉莉恵は少しだけ母親の自覚を取り戻したものか、気づかわし気に情夫を見あげる。
「ああもちろんだ。
由梨ちゃんのハイソックスを咬み破るのが、いまから楽しみでならないよ」
山名はやはり、ヌケヌケとこたえた。
わたしも、応えるしかなかった。
「十三年間たいせつに育てたまな娘です。お手柔らかに頼みますよ・・・」
「すまないね」
蒼白い顔になり果てた義兄は、そのときだけ、生前のころの顔つきに戻っていた。
そう、彼もまた、娘と最愛の妻とを、吸血鬼に喰われた過去を持っている。
「あとから知らされてたいそう驚いたけれど、
いまではうちの娘と家内とを選んでくれたことを誇りに思っているのだ」
家族を襲われた夫としてそう伝えてきた山名はきっと、
わたしにも同じ応対を期待しているのだろう。
――家内と娘とを、末永くお願いします。
わたしがそういうと、山名も応じた。
茉莉恵もまた、山名に抱かれる直前、わたしとまったくおなじことを口にしたという。
夫婦は似るものか。
茉莉恵はいつの間にかわたしの傍らに座を移して、照れたように笑っている。
わたしも、照れくさく笑い返した。
犯された妻と、妻を犯された夫――
けれども、可愛い娘に恵まれた、幸せな夫婦でもあるし、
妻の情夫もわたしたち夫婦がそうありつづけるあることを望んでいる。
そういえば、妻が嫁入り前からほかの男を識っていると気づいたのは、新婚当初のことだった。
そのときは、心の奥に毒液を流し込まれたような嫌な気分にしかならなかったが、
心の奥底に澱んだ毒液は、年を経て確実に、豊かに熟成されていた。
わたしの妻が、有馬夫人のまま、義兄の愛人になろうとしているというのに。
わたしは妻の不義を認め、むしろ促そうとさえしてしまっている――
◆抵抗という名の礼儀作法 ―さいごまで“抵抗”した妻―
妻が吸血鬼に犯された。
相手は、わたしの姉婿だった。
わたしは姉と妻をふたりながら、同じ男に犯されたのだ。
義兄妹とはいえ、血のつながっていない関係だから、恋愛が成り立ってもおかしくなかった。
妻は終始、弱々しく抵抗を続けていたらしい。
そうすることで、わたしへの操を立てようとしたのだろう。
「抵抗したけれども犯されてしまった」
きっとそういう経緯を望んだに違いない。
夫以外の男性を自分から受け容れた――という汚名を被りたくなかったから。
姉婿に伴われて帰宅した妻の報告を受けたわたしは、
「よくがんばったね」
と言ってやった。
妻は報われたような顔をして、緊張が解けたのか、初めて涙ぐんだ。
「きょうのところは、お引き取り下さい」
とお願いをした姉婿のため、わたしは次の日、妻を姉婿のもとに送り出していた。
妻はわたしのための貞操を弔うため――と、黒のストッキングを穿いていた。
けれどもじっさいには、それは姉婿の好みに合わせたに過ぎなかった。
わたしもまた、
「親戚のよしみで、義兄さんに週一回は、お前の血を差し上げるように」
と、妻に告げた。
「週一回は、義兄さんとセックスしてきなさい」
とは、名家の当主として、口が裂けてもいえなかったが、
せめて茉莉恵をあまり後ろめたくない気分で送り出してやろうと思い、そう告げたのだ。
妻は弱々しく抵抗することで人妻としての体面を守り、
義兄の需(もと)めを受け容れることで、親戚としての義務を果たした。
(妻の生き血を提供することは、わが家にとってもはや、義務になっていたのだ)
わたしは妻に献血を命じることにより、夫としての体面を保ち、姉婿への義理を尽くした。
吸血鬼の親類にまな娘をゆだねて、うら若い血液を摂取させる。
◆大好きなおじ様に、うら若い血を捧げて ―有馬由梨の場合― 後編
私の夢 四年四組 有馬由梨
私の将来の夢は、吸血鬼にかまれて血を吸われることです。
首すじをかまれて、ブラウスやスカートをぬらしてしまいながら、
ごくごくと強く強く生き血を吸われる想像をしては、ドキドキしてしまっています。
とても変な想像ですが、年頃になったら早く吸われてみたいって、思っています。
お相手の吸血鬼は、若くてハンサムな人とかではなくて、
むしろしわくちゃに老いさらばえたお年寄りだったりしていて、
若い女の生き血で干からびた身体をうるおしたがっていて、
私はそれにこたえてあげる。
そんなことを夢見ています。
できれば身近なおじ様で、由梨に優しくしてような人に、初めての血をあげたいです。
小学校の担任から返された娘の作文を見て、親たちはずいぶんびっくりした。
たしかにこの街では吸血鬼がはびこっていて、
大勢の住人たちが彼らの立場を理解して献血に協力している――
平穏な日常に潜んだそんな裏面もたしかにあるのだけれど、
小学校四年生にしてこんな作文を夢に綴る少女は、さすがにめったにいなかったのだ。
「由梨ちゃんは将来、心強いお嫁さん候補だね」
校長先生がそういって由梨を褒めたのは、
血を吸わせる生徒がさすがに少ない現状を反映したもので、
かれもまた、血液が不足がちのこの街を運営する立場にあって、
彼らを満足させるのに足りないぶんを、
妻や娘の血で補うことを余儀なくされていたりするのだった。

「学校の生徒さんのなかから、吸血鬼に血液を提供してくれる生徒さんを6~7人、ご紹介いただけませんか?生徒さんが少ないようなら、生徒さんのご家族や教職員さんでもお願いします」
いつもそんな要請をしてくる市役所職員のまえ、
街の名門校であるU女学校の校長は、あからさまに眉をひそめる。
それが新入生を迎えた後の、毎年の年中行事になっていた。
ところが今回は、要請された生徒の数が、5~6人、と、いつもの年より1人少なかった。
たった一人でも、それは掛け替えのない娘さんの運命である。
供血可能な生徒を募るため、校長や教職員は連れだって家庭訪問をくり返し、
まな娘を抱えた親たちに、若い血液を提供することへの理解を求めなければならないのだ。
きょう訪れた職員は有馬といい、街でも指折りの名家の出であった。
たしか一人娘が今年、本校に入学したはずである。
「おや、いつもより一名少ないのですね。吸血鬼が一人いなくなったのですか?」
校長は訊いた。
吸血鬼一人を養うのに、少なくとも数名の女子生徒が必要なはず。
彼らが一人減れば、もしかするとその年に学園の提供する女子生徒は、一人も要らなくなるくらいの出来事なのだ。
「イエ、吸血鬼は増えています。でも、良家の子女を預かる名門のU女学校さんにお願いする生徒さんの数を、安易に増やすわけには参りませんし・・・」
では、どうして?
重ねて問う校長に、有馬職員は告げた――
減った分の一名は、うちの娘が加わります と。
あとがき
うーん・・・
尻切れトンボですね。(^^ゞ
どういうわけか、ここで構想がぴたりと止まってしまったのです。(-_-;)
かんじんのヒロイン・有馬由梨がほとんど出てこない、「看板に偽りあり」のお話しでした。。(-_-;)
由梨が吸血される本編は、画像で構成することを検討しております。
それまでの間、今しばらくご猶予を。m(__)m
後記
このお話をあっぷした後、霧夜様がお話にマッチした画像をご提供くださいました。
西崎弥生が襲われている画、母親の不倫を揶揄する香織の画、吸血鬼に襲われる夢を語る由梨の画です。
香織の画像はあえて絵詞なしで頂戴したので、柏木が入れてみました。
あと、ちせつな血の痕をつけたのも、柏木です。^^;
あり得ない妄想のはずなのに、
りあるな画像があると、お話のイメージがいっそう、リアリティを増すようです。
霧夜さま、ありがとうございました☆
(2021.11.23)
盟友・霧夜さまから頂戴した画に絵詞を入れて、一篇のお話に仕立てました。
前作・「有馬由梨(14)を襲った吸血鬼のひとりごと」の前日譚(そんな言葉あるのか?)となります。
由梨嬢の受難についてはいずれ触れたいと思っていますが、
前作の主人公は、その由梨嬢を襲った吸血鬼です。
吸血鬼といっても、首すじに咬み痕があるということは、もとはふつうの人間だったということです。
いまは吸血鬼でも、かつては自身も吸血体験をもっている――ということになります。
いったい、どういう経緯で吸血鬼になったのだろう?という疑問が、柏木の場合常について回ります。
霧夜さまが描くこの吸血鬼、血の気の失せた青緑色の顔をしているので、柏木は勝手に「青鬼さん」と呼んでいるのですが、
「青鬼さん」はもともと、妻と年頃の娘を持つ一般人の男性でした。
ところが、娘を吸血鬼に襲われ、吸血鬼化した娘が自分の血を吸った吸血鬼(赤鬼さん、と柏木は呼んでいます。赤ら顔をしているので)に母親―「青鬼さん」の妻―を引き合わせて、やはり血を吸い取らせてしまいます。
その一連のお話しの発端となる、「青鬼さん」令嬢と「赤鬼さん」との出逢いが、今回のお話です。
以下、霧夜さまから頂戴した画に絵詞を入れた形で、当時の状況を再現してみます。

ヒロインである山名香織さん、17歳の女子校生です。
クラシックな黒のセーラー服といい、恐怖に満ちた顔つきといい、
どことなく、映画館に飾られる、「昭和のスリラー映画」の宣伝の画のようなオモムキがあります。
右のほう、闇の彼方から伸びてくる手も、不気味ですね。。

画像では、咬まれるのは首すじだけですが、画の外で彼女は、短めのスカートから覗く太ももや、ハイソックスに包まれたふくらはぎも咬まれ愉しまれたとおもいます。
そんな彼女の運命を暗示させるような文章にしてみました。
「スカート丈が短いことを母親が注意した」という文面、さいごのシーンへの伏線となりますので、ご記憶ください。

少女の横顔を描いたこの画が、柏木をもっとも惹きつけました。
可憐でもの堅く、たぶん奥手な少女――そんな感じが伝わってきます。
昭和な雰囲気も満載です。
大人になったら、尽くすタイプの女性になりそうです。
さっそくに齢17にして、みずからの生き血を吸い「尽くさせる」ことで、吸血鬼に「尽くして」しまいます。

吸血鬼氏は、遠慮会釈なく、山名家令嬢の首すじに咬みつきます。
前の画から脈絡もないほどな、急展開です。
なので、「熱烈に咬んだ」と表現しました。
「熱烈に咬」まれたことをむしろ、香織嬢は嬉しく感じ、誇りに思っているようすさえ窺えます。
もしかすると、吸血され洗脳されたあと、吸血鬼のつごうの良いように記憶を塗り替えられたのかもしれませんが、
「咬まれ初め」が恐怖や屈辱の記憶として残るよりも、そのほうが幸せなのかもしれません。

「せっかく捧げた血ですもの。美味しいといわれるほうが嬉しいですわ――」
香織嬢がそういったかどうかはわかりませんが、吸われた血が相手を救うことにつながっているか、愉しんでもらっているかは、
「尽くす」タイプである香織嬢にとっては、重要だったようです。
たとえ彼女がいま、正気を失うほどの恐怖のなかに置かれていたとしても――

初体験を遂げた少女がしばしばそうであるように、彼女も快楽を感じつつも、涙を流します。
有頂天のるつぼにあってもやはり拭えないのは、母親に対する後ろめたさ というところでしょうか。
「パパとママからもらったこの若い血で、渇きを癒してあげたい」と念じた、健気(けなげ)な少女はこうして、
自らの吸血鬼化を予感し、喪われた血液は母親から補おうと密かに誓うのです。
香織嬢は吸血されるまえから、みずからの血のなかに両親とのつながりを意識しています。
自分が吸われることは、両親も吸われることに直結することをどこまで意識していたかは謎ですが、
空っぽになった血管を満たすのは、やはり母親の血でなければならないことは、明確に意識していたことになります。

身体をもつれ合わせるようにしながらも、香織嬢は気丈にも、立ち尽くしたまま生き血を吸い尽くされていきました。
このあと、短いスカートからむき出しになった太ももや、紺のハイソックスのふくらはぎにも牙を享(う)けたと思われます。
そしてさいごは、セーラー服姿のまま、犯されていったのでしょう。
正気の状態であれば、お嫁入するまでは慎むべきこと――と認識していたはずのこの古風な少女は、
血を抜かれることで、また抜き取られた血が吸血鬼の血管を浸すことで、みずからの血を男と共有する関係になることで、
ためらいもなく制服を剥ぎ取られ、
玉のように守り抜いてきた純潔を汚辱にまみれさせていったのです。
めでたし、めでたし――
さいごに、「あたしのスカート丈を咎めたママの警告は正しかった」で〆ました。
娘のスカート丈を気にするお母さんは、これまた保守的で、気丈な女性なのでしょう。
しつけの行き届いた娘に、良妻賢母の母親。似合いの母娘です。
けれども、娘が吸われたのと同じ経緯で、母親までもが同じ運命をたどることも、
この一行で示唆したつもりです。
山名家の一家のその後の運命については、前作をお読みください。^^