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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

わしの家内は、身持ちがよろしい。

2022年02月12日(Sat) 03:21:51

自慢じゃないが・・・
わしの通夜に来た女どもは皆、いちどはわしにスカートをめくられ、パンストを引きずり降ろされておる。
なかにはガーターストッキングを穿いていた女もおった。あんな地味な女が、と思うようなのが、むしろそうじゃった。
だれがそうだか、ちょっと見にはわからないところが、女というものの面白いところだ。

さいしょにパンストを引きずり降ろしたのは、他でもない妹だ。
学校帰りのセーラー服姿にムラムラッときて、のしかかってしまったのだ。
妹は歯を食いしばり、泣きべそを掻きながら俺の一物を挿(い)れられていった。
処女破りとはきゅうくつなものだと思ったが、あれはわしも初めてだったのだから、仕方がない。
その後、処女はなん人いただいたか、わからない。
けれども、息子の嫁をモノにしたときの愉快な思い出は、とうぶん忘れないじゃろう。

そんなわしに、家内はよく仕えてくれたものだ。
おぼこのままで嫁に来て、身持ちもそれなりによかったはずだが、
妹が結婚してからも関係が途絶えなかったのが妹婿にばれたとき、
やつはわしにではなく、家内に言い寄って来おった。
「どうしてくれるんですか?お義姉さん・・・わかってますよね?お義姉さん・・・」
そう、やつはわしの家内に気があったのだ。
あのとき、押し寄せる罪悪感に目がくらんだようになった家内は、
震える瞼を瞑ったまま、紫のワンピースを着た細身の躯(身体)を押し倒されていったのだ。
わしはそれを物陰から見ていたが、留め立てはせなんだのだ。
妹の件はわしが悪いのじゃし、妹婿の恋路も、なぜか遂げさせてやりたくなってしまったのだよ。
初めて操を破られる時。
なにかに怯えるようにしながら悶え始める家内が、ひどく可愛く思えたものだ。

妹婿と家内との関係は、かなり長く続いた。
なにしろ、下の息子と娘とは、妹婿の種なのだ。
わしが妹を愛し抜いたのと同じくらい、妹婿は家内のことを愛し抜いていた。
お互いにお互いの妻を、心の底から愛していたのだ。

やがて息子が色気づくと、家内に目の色を変えるようになった。
ある日の法事の帰りだった。
わしだけが遅れて家に戻ると、奥の部屋からうめき声がする。
妹婿か?と思ったら、そうではなかった。
家内の穿いている、薄黒いストッキングに欲情しやがった息子は、
初体験のぶきっちょな熱情をはじけ散らして、
家内が腰に巻いている、あの重たい真っ黒なスカートを、精液でべっとりと濡らしちまっていた。
そのときもわしは、物陰から、息子が男としての刀の切れ味を母親に試してゆくのを、じいっと見届けていたものだ。
そのときも家内は、なにかに怯えたような顔をして、
躯(からだ)をガチガチにこわばらせて、震えつづけておったものじゃった。

息子の嫁は、都会育ちの娘だった。
妙に男あしらいに長けているところがあったから、てっきり処女ではあるまいと踏んでいた。
なので、当家の嫁になる娘の身持ちを確かめてやろうと、わしは息子に言い含めたのじゃ。
お前の嫁の処女を愉しませろ。親孝行じゃ。

なかなか大胆な娘じゃった。
きっと、いつぞやのわしのように物陰に隠れた息子の目線を、ちゃんと意識しておったのじゃろう。
びっくりするほど大胆に身体を開くと、
ピンクのスーツに秘めて隠し抱いていた、ダイナマイトみたいなふたつの乳房を思い切りよくさらけ出して、
白い肌に血の気をありありとよぎらせて、磨き抜かれたようなその肌を、惜しげもなくさらして来おったのじゃ。
娘の気風の良さにほだされて、たんまりと気を入れて、ピンクのタイトスカートが台無しになるほど濡らしてやった。
あのときあの女の脚から抜き取った、ねずみ色のガーターストッキングを、
わしゃ今でもたいせつに隠し持っておるし、
うちに遊びに来るときあの娘は、
スカートのすそから白いシミが消えやらぬ、あのときのピンクのスーツをこれ見よがしに身にまとっては、
わしに思わせぶりな目配せをするのじゃった。

下の息子とその娘との婚礼は、ここ最近にないほどの盛会じゃった。
引出物は、花嫁と、新郎新婦の母親じゃった。
三人の女たちは、大広間のあちこちにばらばらに転がされて、
この佳き日のためにきちんとセットした髪を振り乱し、
あるいは黒留袖のすそを、あるいは黒のスーツのスカートを、あるいは純白のタイトスカートを、
パンストとショーツにくるまれたお尻が見えるほどたくし上げられて、
列席した殿方全員を相手に、けんめいに腰を振りつづけたのだ。
良家のお内儀が娼婦のように殿方をもてなす――
それが当家の縁組でなされる、外には絶対秘密の通過儀礼なのじゃった。

わしの家内は、身持ちのよい女じゃった。
妹婿に迫られて、
実の息子に迫られて、
婚礼の席では娼婦のように悶え抜いて。
それでも身持ちのよい女じゃった。

いまはこうして、わしの棺のまえ、黒一色のスーツに身を固め、しゃちこばったように正座して控えておる。
わしは気が確かで、棺の中とはいえ、周囲の様子もあまさず見通せることを、家内はよく心得とる。
じゃから、しゃちこばっているのじゃ。
この街に流れてきた吸血鬼は、地元の実力者の家を片端から征服していった。
わしの家も、真っ先に狙われた。
まず息子が血を吸い取られ、それからわしが餌食になった。
こんな年配の男の血などが目当てのはずはない。
とうにわしは、気づいておった。
やつらは、女どもが狙いなのじゃ。
わが家に巣食う、淫らな血潮を総身にたっぷりと脈打たせた女どもが。
そのためにまず、女どもを支配している男どもを征服しようとしているのじゃ。

息子は、女のなりをして夜歩きしているところに吸血鬼と出くわして、
女のようにのぼせ上がりながら、血を吸い取られていった。
息子の血を吸ったその男は、わしの前に堂々と姿を現した。

あんたの家を狙っている。
あんたの奥さんも、息子の嫁も、あんたの情婦(いろ)である妹も、狙っている。
都会に出ている長男一家も、里帰りするのが楽しみだ――
もちろん、見返りは用意している。
あんたは人間のままでも、われらと変わらぬ働きをしているようだが・・・

やつらの狙いはすぐに分かった。
わしを仲間に引き入れたいのだ。
わしは気前よく、うんと頷いてやった。
そして気前よく、身体じゅうの血液を、振る舞い尽くしてやった。

今夜家内は、忍んで来る吸血鬼の餌食になる。
それがやつの、狙いだったから。
その身をめぐる熟れた血潮を啜り取られてしまうと知りながら、
黒一色の礼服に、清楚に身を固め、
ふくらはぎを染める薄墨色の靴下に、言いようもないほど不埒なあしらいを受けると知りながら、
わざわざ真新しく、舌触りのよさげな一足を脚に通して、正座をしてしゃちこばっておる。

残念無念だが、すでに多くの男と分かち合った家内の身体――やつらにも家内の女ぶりを、自慢してやろう。
華代よ、華代・・・
お前は亭主の仇敵に組み敷かれて、亭主と同じように、生き血をしたたかに、吸い取られるのじゃ。
淫らに熟れたお前の血潮の味を、今こそ誇るがよい。
そして、いいようにあしらわれ、夫の棺の前で、辱め抜かれてしまうがよい。
わしはそれを、視て愉しんでやる。
お前もわしに視られていると知りながら、悶え抜いて見せるがよい――

善良な、クリーム色のストッキング

2022年02月12日(Sat) 03:09:58

しなやかなサポートタイプのストッキングがぴっちりと脚を包む感触に、われ知らずうっとりとなっていた。
外気に触れた薄々のナイロン生地を通して、そよ風がさらりと足許を優しく撫でてゆく。

きょうは、クリーム色のストッキング。
めったに穿かない色だった。
でも、白と黒の千鳥格子のスカートに、薄茶のパンプスには、むしろ色の薄いストッキングのほうが似合うと思った。
妻と張り合っているのかもしれない――と、ふと思った。

女の姿で吸血鬼に接し、女として扱われている夫をみて、
妻の真紗湖が敵愾心に似た嫉妬を募らせているのは、容易に察しがついていた。
けれどもそれは、わたしにしても同じことだった。
わたしがその日、クリーム色のストッキングを穿いたのは、
真紗湖が吸血鬼に迫られて、クリーム色のパンストを咬み剥がれてゆくのを目の当たりにしたためだった。

妻に成り代わってみたい。
妻に影を寄り添わせてみたい。
うり二つの装いをして、妻を浸蝕している者に、非礼な仕打ちを受けてみたい。
妻があしらわれるのと同じ手口で辱められて、歓びに咽(むせ)んでみたい。
夫を裏切って家名に泥を塗る妻とうり二つに、女として辱め抜かれてみたい。

邸のまえに佇むと、ひとりでのように鉄製のゲートが開いた。
そしてわたしは、吸い込まれるように、女の装いに包んだ身を、閉ざされていたドアの向こう側へと、
娼婦のようにすべり込ませていた。

迎え入れてくれた獣は、まだ口許に紅いしずくを滴らせていた。
妻の身体から吸い取った血液に違いない。
趣味の良い薄茶のスーツ、白のブラウスに包んだその身に巡っていた、うら若い血液。
まだお嬢さんっぽさの残る二十代の若妻の色香の名残りが、妖しく立ち騒ぐ。
「さっき、真紗湖を襲ってきた」
獣は、臆面もなくそういった。
「家内の生き血、お気に召したようね」
「あんたの血は、さらに佳い」
獣は、あくまでもこちらを立ててくれようとする。
佳い、という字はこう書くのだ・・・と、掌のうえをくすぐるように、なぞって描いてくれたことがある。
わたしはその形容句が、とても気に入った。

「初めて襲われたときから、ふたりは似合いだと思っていた。
 家内を気に入ってくれて、嬉しいですよ」
わたしはこたえた。
言葉に嘘はなかった。
獣はさっきから、クリーム色のストッキングに包まれたわたしの脚に見入っていた。
「すまないが、愉しませていただくぞ」
彼はわたしの足首を掴まえて、おもむろに舌を這わせてきた。

薄地のナイロン生地のうえから、なまの唇があてがわれて、
生温かい唾液がしみ込んでくるのを感じた。
妻の穿いていたストッキングも、こんなふうにあしらわれたのか。

善良なクリーム色のストッキングが、いやらしくヌメる舌に、唇に、辱められてゆく。
脛やふくらはぎの輪郭をすべるように這いまわる舌が、唇が。
貴婦人の装いを娼婦のそれに変えて、
ナイロン繊維のざらついた感触を淫らに増幅させて、
わたしの理性を、いびつに歪めてゆく。
妻も、同じようにされたのか。されたのだ。
そして、善良なクリーム色のストッキングを淫らに堕とされて、娼婦になり下がっていったのだ。
わたしは、わたしなのか。それとも、妻なのか――
わからなくなってゆく。

婚約者の初体験。 ~組み敷かれたピンクのスーツ~

2022年02月06日(Sun) 03:36:50

親孝行なのだ、と、言い聞かされた。
花嫁を娶るとき、最初のセックスを父親に譲ることが。
今にして思えば、少しだけ惜しかった。
ピンクのスーツとチャコールグレーのストッキングに包まれた、初々しい許婚の肢体――
お前は視ていろ。視ることで花嫁の初体験をともに分かつのだ――
父の言い草は、どこまでが言い訳でどこまでが訓えだったのか。
たんに見せつけたかっただけではなかったのか。
では、見せつけられることで昂りを覚えてしまった自分は、なんなのか・・・

唐突に強いられ望まれる真紗湖が不憫だとおもったが、じっさいはそんな想いは見事に裏切られた。
これから嫁に行く娘としての、義父となる男性への礼儀作法は、
両家育ちの娘にしては濃すぎるものだったのを、目の当たりにする羽目になった。

未来の婚家に一人招び出された真紗湖は、そこに義父しかいないのを見て取って、すこし怪訝そうな顔をした。
けれども、父が臆面もなく――物陰から息子が覗いているということさえ知りながら――真紗湖に迫っていくと、
彼女はすぐにすべてを察したらしく、無理やりこじ開けるように重ね合わされてくる唇を、受け口をして受け止めて、
むしろ自分のほうから貪欲に、むさぼるように吸い返していた。
処女ではないのか――と思った。
父はわたしにそういって苦笑いしたけれど。
でも・・・あのキスは良い味だった。
と、下品に舌なめずりをしたときには、ゾクリとするものを覚えてしまった。


そんな舌なめずりを目にしたさいしょの生々しい記憶は、中学のころのことだった。
「二学期からは女子の制服を着て、学校に行きなさい」
旧家である父親の命令が絶対だったとはいえ、
母も、もちろんわたし自身も、その指示には驚いて、思わず見返してしまっていた。

学校の女子の制服は、ブレザーだった。
指定のグレーのハイソックスを脛にツヤツヤさせている同級生の足許が眩しくて――
けれども彼女たちとお揃いのハイソックスを脚に通して通学するなど、思いもよらぬことだった。
わたしは――思わず勃起していた。

父の舌なめずりを目にしたのは、女子の制服を着けて通学を始めて、一週間経ったころだった。

学校帰りに、畳の上で仰向けにされていた。
穿きなれてきたグレーのスカートは腰までたくし上げられて、同じグレーのハイソックスは片方だけずり落ちていた。
脱がされたパンツは、部屋の隅に放り投げられていて、
強引に突き込まれた衝撃が、股間を抉るように、ジンジンとした疼痛になって残っていた。
初めての時には、血が出るものだ。
父は嬉し気にそういって、自分の息子の”処女”を勝ち得たことを、目を細めて悦んでいた・・・


あのときと、同じだった。
結婚を控えた生娘に向けられた強引なキスに、真紗湖は大胆に応えていって、
お互いヒルが生き血を吸うような貪欲さで、むさぼり合っていた。
初々しいピンクのスーツの下には、淫欲みなぎる牝の発育しきった四肢が隠されていた。

父は息子の婚約者のスカートの奥に手を入れて、ショーツを荒々しく引きずりおろした。
たくし上げられたスカートのすそから覗いたのは、白い太ももを鮮やかに横切るガーターだった。
この娘はガーターストッキングなんぞを穿いている。
まるで娼婦のような女だな・・・父がそう呟くと、
そんなことないです、と、真紗湖は、初めて娘らしい抗弁をした。
けれども、それが彼女がみせた嫁入り前の娘らしい唯一のそぶりだった。
男は女の股ぐらを嗅ぐように顔を突っ込み、舌であそこを舐めた。
ピチャピチャ・・・クチャクチャ・・・
生々しい音に、わたしは戦慄を覚えた。
いま、わたしの婚約者の純潔は、危機にさらされている。
紙一重のところで、水際で、かろうじて踏みとどまっている。
けれど、もはや劣情にとり憑かれた獣を遮ることは、もはやできない――

父は悪魔に違いない、とおもった。
そして、お見合いの席であれほど上品に構えていたあの女も、やはり魔女だとおもった。
さらに、そのありさまを目にしながらいっさい咎めだてをしないわたし自身も、きっと悪魔なのだと感じていた。


短剣で刺し貫くようにして、父は豪快に、真紗湖の純潔を抉り抜いた。
度重なる吶喊に、さすがの真紗湖も少しだけ、涙ぐんだようにみえた。
けれどもそれもひとときのこと――
男と女は、上になり、下になり、組んづほぐれつ、腕を、脚をからめ合って、
息をはずませ、髪を振り乱し、なん度も姿勢を変えながら、むさぼり合った。

初めてだったんだな。初めてのときには、血が出るもんな。
いつかどこかで耳にした呟きを、父はその時も口にした。

真紗湖は肩で息をしながら、なにも応えなかった。
はだけたブラウスから覗いた乳首は、飽きるほど舐めさせてしまっていたし、
恥知らずな唇から分泌された唾液は、あぶくになっていた。
肩に上品に流れていたセミロングの黒髪は、流れる汗に濡れぼそり、首すじに貼りついてしまっていたし、
足許を気高く染めていたグレーのストッキングハ、ふしだらに弛み破れ堕ちていた。

真紗湖がよろめきながら起きあがると、父が女の足首を掴んで、いった。
「こいつを俺にくれ」
片方だけ脱がせたグレーのストッキングが、ごつごつと節くれだった掌を、薄っすらと染めていた。
女はちょっとだけ姸のある顔つきになり、目つきを尖らせたが、いやとは言わなかった。
そして、ちょっと不平そうに口を尖らせると、脚に残っていたもう片方のストッキングもしゅるしゅると足首にずり降ろして、
男の掌に圧しつけるように、手渡した。
真紗湖が口を尖らせたようすは、情婦の不埒な戯れに本気で怒っているようには見えず、
むしろ甘えて拗ねるようなそぶりがあった。すくなくとも、わたしにはそう見えた。

花嫁の純潔を父親に与える――
ふつうの体験では、もちろんない。
けれども、初めて性体験を共にした男性が妻を抱くことに、わたしは不快感を覚えなかった。
あとで父は、真紗湖はいい女だったといってくれた。
それがいまでは、くすぐったいほど誇らしい記憶になって、長く残っている。


あとがき
婚約者の純潔を他の男性に散らされた体験が、青春の小気味よい記憶となっている――
屈辱にまみれただけかもしれない出来事を、このように昇華させる男性もいるのでしょうか――

ハイソックスのフリルに血を撥ねかして ~ある生娘の親孝行~

2022年02月01日(Tue) 08:15:31

結婚を間近に控えたころ、花嫁は幼なじみの従弟を相手に、処女を喪失。
婚礼のさ中に、妹たちは従弟の父親に襲われて、齢の順に犯される。
十年あまりを経て妻は、かつて処女を捧げた従弟との関係を”復活”。
ふたりの現場を抑えたものの、従弟やその妻の情夫という吸血鬼のために、ふたりの仲を認める羽目に――

踏んだり蹴ったりの境遇だった。
けれども不思議に、腹立たしくない。
むしろ、不思議な誇らしささえ、感じている。
過去にさかのぼって妻と従弟との関係を許し、
婚約者が不義を犯したのは、わたしのほうから彼に、花嫁の純潔をプレゼントしたかったから・・・ということにしてもらったのは、
いまでも小気味よく、胸の奥底に響いている。
血を吸われたときに注入された毒液が、潔癖な理性を奪ってしまったのか。たぶんきっと、そうなのだろう。
気が付くと、妻とその従弟との濡れ場を横目に、致死量近い血液を、吸血鬼相手に与え抜いてしまっていた。

妻の伯父という遠い縁戚の法事のために、なぜか妹たちも母までもが参列したのは、
故人が妹たちに迫って処女を奪い、見返りに女の歓びを教え込んでしまったから。
そして、故人は恥知らずにも、わたしの母にまで迫って関係を遂げ、ふたりの関係を父に認めさせてさえしてしまっていた。

因縁の親子の間には、血のつながりは実はないという。
けれどもそんなことは、もうどうでもよい。
雅恵という妻をもたらしてくれたあの一族は、忌むべき血を宿している――


今夜も雅恵は、黒の喪服に身を包んで、ひっそりと出かけていった。
法事の手伝いといっていたが、することはもう、わかってしまっている。
いったい今夜は、なん人の男を相手にしてくるのか。

自分の妻が男の目を惹くのは、好ましいことだ。
夫として誇りに思うべきことだ。

妻の従弟は、そういった。
事実、彼自身も自分の妻を吸血鬼に襲わせて、愛人のひとりにしてもらったのだと悦んでいた。
妻との現場を抑えたのに、これからも敬意をこめて雅恵を犯す、と、臆面もなく宣言された。
ふたりが真摯に愛し合うところを目の当たりにしてしまったわたしは、ふたりの交際を許すことにした・・・


お父さま?
だしぬけにあがった声に振り向くと、娘の佳世がそこにいた。
ピンクのブラウスに真っ赤なスカートは、娘のお気に入りだと、妻から聞いている。
こんな夜遅く、彼女はどうしておめかしなどをしているのだろう。
もしや・・・
不吉な予感を打ち消しながら、わたしは何だね?と、目をクリクリさせている佳世に、応じていた。

お母さま、どこに行ったのかしら?
佳世は、なにもかも識っているような顔つきをしている。
さあね、と、しらばくれると、佳世はひたとナイフを突きつけるような言葉つきで、いった。
今ごろ――吸血鬼のおじ様と、仲良くなっちゃっているのかな??

どうしてそれを!?
思わずあげそうになった声を、素早くにじり寄ってきた佳世は手で制した。
口許にあてがわれた柔らかい掌が、初々しい温もりを帯びている。
干からびた血管が疼き、そのなかに充たされるべき暖かい血潮を求めて身体じゅうを震わせた。

佳世はなにも識らない生娘の顔をして、あとをつづける。
でもお父さまは、お母さまが夜遊びするの、とがめないのね。優しいんだね。
それはきっと、お父さまも血を欲しがっているから、吸血鬼のおじ様の気持ちがわかるからなんだよね?
今夜は佳世が、相手してあげてもいいんだよ――

白々しく目をクリクリとさせながら、佳世は母親譲りの黒髪をむぞうさに首許から取り去った。
フリルのついた白のハイソックスは、もはや齢不相応になっていた。
どこから咬むの?ブラウスの襟を汚しても、ハイソックスを破っちゃっても、良いんだよ。
これから先は、お父さまとあたしとの、ナイショの世界――
押しあてた唇で娘の体温を感じながら、妻もこんなふうに情夫を誘っているのかと、ふと思った。

血のつながったひとの血のほうが、美味しいんでしょ?
処女の血を吸いたいって、ずっと思ってたんでしょ?
あたしなら――両方とも叶えてあげられるから。

娘は明らかに、吸血鬼の相手の仕方を識っていた。
わたしの欲求を逆なでするように、
ピチピチとはずむ伸びやかな肢体をいっぱいに拡げて、
その身をめぐる血液で、喉の奥にはぜる渇きを、満たそうとしてくれる。
剥ぎ取ったブラウスの裏に秘められた、まだなだらかな乳房のつけ根に、歯を食いこませると。
白い歯をみせて、くすぐったそうに笑った。
フリルのついた真っ白なハイソックスのうえからふくらはぎに食いついて、
しなやかなナイロン生地の舌触りを愉しみながら吸血をはじめると、
やらしい・・・と声を洩らして笑った。
ハイソックスを咬み破られるこの行為がなにに結びつくのかを、識っているようだった。

吸血鬼のおじ様に、襲われたの。
でも、お父さまのために処女でいたいって言ったら、いい子だねって許してくれた。
だからあたしは、おじ様からお父さまへのご褒美なの。
お母さまの初体験を譲ってくれたお礼に、あたしとしてイイって言っていたわ。
今夜は、素敵な夜にしようね――

スカートの裏側を血に浸しながら、
娘はなおも、わたしの飢えを満たそうとする。
なん度もつけられた咬み痕を手鏡に写しては、佳世、吸血鬼に襲われちゃったといってきゃあきゃあとはしゃぎ、
なん足めかに脚を通したストッキング地のハイソックスに血を撥ねかされながら、パパいやらしいよといって、またはしゃいだ。
はしゃぎきった小娘をきつく抱き寄せて、罪深い交尾を、夜が明けるまで愉しんでいた・・・

濡れ堕ちる喪服たち。~交わり合う淫らな影絵~

2022年02月01日(Tue) 00:15:44

視られてしまった。

泊まっていくと雅恵がいったとき、いやな予感がした。
夫が娘を寝かしつけているとき、彼女は風呂上がりの身体にわざと喪服をまとって、わたしのまえに現れた。
湯上りに火照った首すじは淫らなピンク色に輝き、黒のストッキングに透けた脛も、活き活きと輝いていた。

あたし、若返ったかもしれない。
雅恵がしずかに呟く。
たしかに、そうかもしれない。
だとするとそれは、吸血鬼に咬まれたあとのことだった。
主人にもこのごろ、よく需(もと)められるの。
夫婦生活まであけすけに語るほど、彼女との仲は近まっていた。
ひっそりやりましょ。
わたしの首に腕をまわしてそう囁く彼女の瞳が、ひたと見すえてくる。
牝豹のような輝きだと、わたしはおもった。

同じ屋根の下。
妻の真紗湖はきっといまごろ、吸血鬼に抱かれているはずだ。
昼間からそのつもりだったのだろう。
漆黒の重たげなスカートの下、地味に透けるはずのストッキングは、妖しい光沢をよぎらせていた。
わたしたちも・・・ね?
稚な児(ご)に言い聞かせるように顔を覗き込んで、彼女は唇を重ね合わせてきた。
熱い唇だった。
地獄の底まで引きずり込む力を持った唇だった。
潤いを帯びた肉厚の唇に見せられたように吸い返し、ヒルのように吸いつづけた。

そのときだった。
ふすまがしずかに、開かれたのは。
「やっぱり・・・」
妻に似て穏やかで静かな声が、降ってきた。
見返さなくてもわかった。
声の主は、雅恵の夫だった。

ふたりとも、洋装のブラックフォーマル。
わたしだけはスカートを取り、彼女はスカートを着けたままだった。
そして、わたしの体液は生温かく、雅恵のスカートを濡らしていた。

ふつうなら。
息を止め、動きをも止めるところだろう。
なにしろ、不倫の現場を夫に抑えられたのだから。
けれどもわたしたちは、どちらとも、行為を止めようとはしなかった。
もう少し待って欲しい。
そんなせつじつな願いさえ、はじけさせていた。
ちょうどわたしのペ〇スが、スカートの奥に秘められた茂みに触れたところだった。
ため息をする彼女の夫の前、わたしはためらいもなく、雅恵のなかに精液をはじけさせていた。

息せき切った上下動が、しばらくつづいた。
ものを投げられても、鈍器を振り下ろされても、除けようのない態勢だった。
なのに、雅恵の夫は、そうする資格を持ちながら、わたしを攻撃しようとはしなかった。
ひとしきり嵐が過ぎてからやっと、彼女の夫は妻に声をかけた。
「気が済んだの?」

「奥さんを借りてます」
わたしは臆面もなく、いった。
「わかっています」
彼女の夫は、冷静にこたえた。
「別れることはできそうにありませんか」
あくまでも紳士的な問いに、あくまでも礼儀正しくこたえた。
「たぶん、難しいと思います」
「ひと言、妻とは別れるとさえ言ってくれれば・・・」
「偽りのお約束をすることで、あなたを余計に侮辱することになるのを恐れます」
「そうですか」
男はあきらめたように、いった。
「私を侮辱したくてそういう関係を結ばれたとは、おもっていません」
「わたしも、あなたを侮辱したくて雅恵を抱いたつもりはありません」
むしろあなたを、雅恵のご主人として尊重したい気持ちです、と、わたしはいった。
雅恵の夫を尊重することと、雅恵を抱くこととは、矛盾しないと感じていた。
理屈に反しているはずのわたしの感情を、どうやら雅恵の夫は理解したらしい。
それならば、わたしも雅恵と貴男との交際を、尊重することにいたしましょうと、彼は言ってくれた。

「良い心がけですな」
別の方角から、声がきこえた。
三人がふり返ると、そこには吸血鬼がいた。
「きみの奥さんを借りていた」
わたしが雅恵の夫に言ったのとおなじことを、吸血鬼はわたしに向かって口にする。
あっけに取られる雅恵の夫に、手短に説明した。
ある法事の帰り道がご縁になって、このひとは妻の恋人になってくれたのだ――と。
自分の妻に恋人ができることを、あなたは忌まわしいと思わないのですか、と、雅恵の夫はいった。
思ったほど、忌まわしくはないのではないのですか?と、わたしは逆に彼に訊いた。
まだそこまでは、思い切れていません――と、彼は正直にわたしに告げた。
彼の嘆きは、もっともだった。

「お察しします。わたしはあなたに、たいそうなご迷惑をおかけしていますね」
わたしは慰めるように、いった。
どうやら彼に、兇暴な意図はないようだった。
だから彼に対するわたしの態度も、余裕を取り戻したものになりつつあった。
「あなたはいつからそのように、女性の服装を嗜むようになられたのですか」
彼の疑問は、もっともだった。
女学生だったころの雅恵の服を身に着けて、淫らに戯れているところを抑えられ、
彼女の服を着たまま帰宅したのがきっかけかな・・・と告げたとき。
なんとなくジグソーパズルのピースが、居心地よくはまったような気がした。

なん着か、彼女の服をもらって自ら慰むときに身に着けたのだ。
でも彼女は、わたしと結婚するとは言ってくれなかった。
彼女の母は、わたしの父と契って彼女を生んだのだから――
「だから・・・雅恵は貴男に、純潔を捧げたのですね?」
どうしてそれを・・・?
雅恵の夫は微苦笑して、着けていたスラックスのすそを、引き上げた。
薄地の沓下のふくらはぎに、ふたつの咬み痕がくっきりと、つけられていた。
「そのひとに、咬まれたんですよ。奥さんを咬んだ後、あなたのことが気になって仕方なかった・・・とか言われましてね・・・」
彼が自分の妻の不倫に寛大だった理由が、よくわかった。

わたしは雅恵が純潔を捧げた相手が貴男で、よかったと思っている。
謝罪をしてくれれば貴男と雅恵の関係を受け容れて、あとは視て視ぬふりをしてあげようと思ったのですが――
貴男も強情なかたですね。
そういって、雅恵の夫はしずかに笑った。
夫婦で、笑うとき語るときの風情まで、似るものか。
ふたりは穏やかにほほ笑み、怜悧に己の身を淫らな渦巻きに浸した。

「ひとつだけ、いっておこう」
吸血鬼はいった。
「雅恵とあんたは、血は繋がっていない」
え?と訊き返すわたしに、雅恵はそういうことか、と、納得したような顔つきになった。
雅恵の顔色を読むように、吸血鬼は自分の情婦のことを、良い勘だね、と、ほめた。

わたしの父と雅恵の母は、兄妹の関係でありながら契りを交わし、雅恵を生んだ。
自分の妻が相姦を遂げていたことに冷静さを失った雅恵の父は、わたしの母に挑んで、意趣返しを果たした。
意趣返しのつもりが、ふたりは本気で愛し合い――そして生まれたのが、わたしだった。

雅恵が貴男に純潔を捧げて良かった――といったのは、わたしの傾いた考えからではありません。
ほんとうは、ふたりは結ばれても良かった関係だったのです。
わたしは彼女の夫という座を、あなたから奪ったのかもしれない。
ですが――

雅恵の夫の言葉を、わたしは手を挙げて制した。
自信を持ってください。
あなたは、雅恵とのあいだに娘までなした、立派な夫、父親です。
わたしはあなたを尊重しつつ、雅恵を犯す。
あなたの妻を、自分の妻どうぜんにあしらわせていただく。
でもそれは、あなたにたいする侮辱ではない。
雅恵という女性を妻としているあなたへの敬意をこめて、これからも雅恵を愛し抜くつもりです。

ぜひそうしてください――
雅恵の夫は、言い終えるまでもなく、吸血鬼に組み敷かれ、首すじを咬まれた。
ジュッ!と、あたりに熱い血潮がしぶいた。
畳を濡らした彼の血潮を、わたしは舌を這わせて舐め取った。

女どうしの関係ですぞ。あくまでも――
女の姿で乱れあうわたしと雅恵を見つつ、吸血鬼は雅恵の夫に囁いた。
そうですね・・・そういうことで理解しましょう・・・
白目を剥いて絶息した雅恵の夫の血を、吸血鬼はなおも啜りつづけた。

自分の妻を生贄に捧げた夫は、自らも妻の仇敵の餌食とされて、半吸血鬼となる。
彼もまた、わたしと同じ道を歩み始めようとしている。


あとがき

なにやら、どす黒い衝動が押し寄せてきて、わたわたと何作も書き綴ってしまいました。
かなり冗長に流れてしまいましたが、ここまで読んでくださった方がいらしたら、心から感謝します。
雅恵の夫の寛容さを描いていたら、きりが無くなりましたね。(^^ゞ

つづきの構想もなくはないのですが、結実するかどうかは、今後のお楽しみ・・・ということで。