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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

母交換。

2022年09月29日(Thu) 23:15:15

親友のカズユキくんのお母さんは、とても清楚だ。
都会育ちの名門校出身で、知的で奥ゆかしい感じがした。
路子さんというお名前で、主婦としてもその名のとおり、道を踏み外さない堅実そうなひとだった。
彼女はボクの通う中学で、教師をしていた。
いつかあの女(ひと)のパンストを、むしり取ってやろう――ボクは物騒な想いを、彼女に対して寄せていた。

彼女が以外にも派手な下着を好んでいることも、毎日脚に通しているパンストが、妖しい光沢を秘めていることも、
洗濯ものあさりで得た成果から、ボクはつぶさに知っている。
案外――淫乱な牝ではないだろうか・・・?
身に着ける下着が性格の裏付けにならないことなど、大人になればふつうにわかるはずのことさえも、
10代のボクらはあまりにも、無知すぎていた。


「3人でさ。うちの母さんを、犯してみない?」
校舎の裏で集合した、いつもの仲良し3人組みは、ヒロシくん、カズユキくん、そしてボク。
3人とも、クラスの学級委員で優等生。
表向きは模範的な生徒だった。
その学級委員たちのきょうの議題は、そんなふうにとても不穏なテーマだった。
「賛成!」
いの一番に、ヒロシくんが挙手をした。
控えめなカズユキくんは、その勢いに圧されるように、
「いいの・・・?ほんとに・・・?」
と念を押すようにボクに訊きながら、続いて手を挙げた。

場所はカズくん家(ち)。
うちだと父さんいるし、ヒロシのとこも親がうるさいんだよね?
カズくんのところなら、お母さん平日の日中は学校だから、人目がなくて良いと思う――
自分の母親の肉体を提供するのだから、話はボクが主導権を握っていた。
ヒロシくんはいちいち、「賛成」「賛成」と、ボクの案に賛意を表してくれた。
けれどもカズユキくんは、あくまで慎重路線だ。
「でも――だいじょうぶだろうか、あと始末とかさ・・・」
けれどもけれども、カズユキくんの慎重路線は、決して生真面目な倫理観からくるものではない。
その証拠に、彼の発言は終始、「してはならないことをすることへのためらい」ではなくて、
「バレたら困るし、逃げ道がほしい」という懸念にそったものだったから。
「大丈夫、母さんも観念したら暴れたりしない人だし、愉しんだ後は片付けも手伝ってくれると思うよ」
ボクはあっけらかんと、ふたりにいった。
「じゃあ――賛成」
さいごにはカズユキくんも、おずおずと手を挙げてくれた。


翌日。
ボクは母さんを家から連れ出して、カズユキくんの家に向かった。
母さんはボクの気に入りの紅色のスーツを、この日も身に着けていた。

栗色の巻き髪は、きのうセットしたばかりのもので、
なまめかしいウェーブを風になびかせていて、
胸もとのボタンをくつろげたピンク色のブラウスの襟首からは、
黒のブラジャーの吊り紐が、チラチラと覗いていた。
脚に通した肌色のストッキングのテカり具合も、
10代の男の子たちの目を眩ませるには、じゅうぶん過ぎるほどのものだった。

連れて歩く女が、イケてる女だということは、
男にとってもっとも、誇らしいことだとボクは思う。
まして同伴する女が、悪友たちの飢えた性欲の餌食になるのであればなおさら、
その獲物は美しく気高いものでなければならなかった。

ボクは自分の情婦(おんな)を、彼らと分け合おうとしていた。
母さんにはむろん、ボクの意図を、隅から隅まで話している。
それでも母さんは、父さんがぼくにくれた母さんの貞操を、父さんに無断でまた貸ししてしまうことに、異論を唱えたりはしなかった。

出がけに母さんは、中学校に電話を入れている。
ちょうど休み時間に合わせてのことだった。
母さんは路子を呼び出してもらうと、いった。
「息子さん、具合悪そうに歩いていらっしゃいましたよ。お家に帰ってひと休みするんですって。
 放課後の課外活動はほかの先生にお任せになって、早く帰ってあげたほうが良いのではありませんか?」
相手は学校の先生だから、母さんもしぜんと改まった敬語口調になっていたけれど、
ボクはそれさえも、ゾクゾクと興奮しながら聞き耳を立てていた。

そう――母さんがカズユキくんの家で犯されている真っ最中に、路子先生には戻ってきてもらわなくちゃならないのだ。
女学校では素行のわるい生徒だった母さんは、先生という行いすました人たちに反感を持っていたから、
ボクの悪だくみにも、ひと肌脱いでくれたのだった。
そう――まずは文字通り、ひと肌脱いでもらわなくっちゃ。


「あら、カズユキさんこんにちは、きょうは学校早かったのね。ヒロくんもいたの?
 うちの子もそうだけど、3人とも学校さぼっちゃ、ダメよ」
あくまで母親然として、ボクたち悪ガキをたしなめようとする母さんに、
「タヅくんママ・・・タヅくんママ・・・ぼくはもうたまらない!」
いきなり母さんにすり寄ったのは、ヒロシくんだった。
「あっ、何するの!?いけないわよお、まだ子供なんだから――」
笑って受け流そうとする母さんを、ヒロシくんはしっかりと羽交い絞めにつかまえて、首すじにディープなキッスをする。
あ!ボクの母さんになんてことを――!
ボクが思わず声をあげたのは・・・きっと本音だったに違いない。

「駄目、駄目、駄目ですったらっ!」
母さんの声色は、いつもベッドのうえで聞かせてくれる嬌声に近くって、
その甲高い声がまた、ボクたちの股間をいっそう、逆立ててゆく。
「ほら、ほら、カズユキ――触れっ」
母さんの両腕を後ろ手に絞めつけながら、ヒロシくんはカズユキくんに言った。
「え・・・え・・・エ。。。いいの?ホントにいいの?」
真面目ぶっているカズユキくんだって、本音は女の身体に触りたくって触りたくって、しょうがないのだ。
「あ・・・あっ、うぅん・・・っ」
ヒロシくんに羽交い絞めにされた母さんは、苦痛げに柳眉を逆立てる。
細い眉がピーンと逆立ち、ヒクヒクと慄(ふる)えるありさまに、カズユキくんも我を忘れた。

稚拙な掌が母さんのブラウスをまさぐり、波立てて、しまいにくしゃくしゃにして、
ブチッ・・・
と、音をたてて裂けた。
「あっ、何すんのよっ」
母さんは本気で口を尖らせたけれど、もはやカズユキくんの勢いは止まらなかった。
黒のブラジャーをたくし上げられ、格好の良い乳房をぷるんとブラウスのすき間からはじけさせると、
二人の少年は息遣いを変えた。
「ちょ、ちょっと・・・っ、タヅくん、やめさせなさいよっ」
制止を求める母親の声が、平穏な日常ではボクたちの圧制者だったはずの大人と立場が逆転したことを感じさせた――

「あっ、いけない。だめ。駄目ですったら・・・っ・・・」
母さんの声は、2対の猿臂と汗ばんだ背中とに圧しつぶされていって、
しまいには、息せき切ったカズユキくんの手で、パンストを引きずり降ろされてしまっている。


「ただいまァ・・・」
なにも知らないのどかな声が、玄関先に流れた。
けれども、母さんとファックしまくっているカズユキくんの耳には届かないらしい。
「俺が手を抑えててやるから、ほら、そこだ、そう――」
ヒロシくんが母さんの腕をねじ伏せながらカズユキくんに囁いて、
カズユキくんはそれにいちいちばかみたいにうなずき返しながら、母さんのブラウスを引き剥いでゆく。
「あ――」
背後からした驚きの声が、時を停めた――

「そうれ、一丁あがり――」
きょうのМVPは、間違いなくヒロシくんだった。
カズユキくんが母さんを、そしてボクが路子先生を犯すのの手伝いを、いちから十までやってのけてくれたのだから。
あとで母さんが言っていた。
カズくんたら、おかしいわあ。
お母さんがヒロくんに抑えつけられて、パンストをタヅくんにびりびり破かれちゃったときに、一番強く射精したのよ――

路子先生の見慣れた服装。
それがボクを強姦魔に変えていた。
高嶺の花な空色のブラウスを、びりびり破いて。
手の届かないはずの紺のタイトスカートを、これ見よがしにたくし上げて。
ボクの母さんのパンストを引き破かれたお返しに、路子先生のパンストもブチブチッ・・・と剥ぎ堕として。
破壊欲に燃えて逆立ったぺ〇スを、太ももにぬるーっと這わせていって。
さいごにズブズブと、埋め込んでいった。
目が飛び出さんばかりにボクを睨むカズユキくんのまえ、
ボクは路子先生を、征服していった。
乱暴なだけね――って母さんに呆れられている太ももの躍動に、路子さんの脚の動きが重なって、
知らず知らず、同調し始めてゆくのを感じて、ボクの興奮はマックスになった。


自分の母親を犯されるのって、どうしてこんなに燃えるんだろう?
自分で母さんを犯すのも楽しいけれど。
父さんのまえで母さんのスカートを精液まみれにするのも楽しいけれど。
「ヒロくん、カズユキくんも、元気ねえ・・・ッ」
なんてのたまいながら、よそ行きのスーツ姿をよその子たちの精液まみれにされてゆく母さんを視るのも、とてつもなく興奮する。

そしてなによりも、
きょうの成果は、路子。
何年も前から、ずうっと狙っていた、路子。(もう呼び捨て)
その路子を、学校教師をしているときそのままの服装で、
薄いブルーのブラウスに濃紺のタイトスカート、肌色のストッキングという、知的で清楚なスタイルで、
人もあろうに息子の前で、「路」にはずれた行為を強要されて。
女教師としてはあるまじきことに、夫以外の年端も行かない少年たち――それも息子の親友の餌食になって。

それなのに路子は、
白昼のもと、ほしいままに貞操を汚されたうえ、「あぁ~ん」なんて、口走ってしまって。
パンストの手触り舌触りを楽しむボクのために、脚をくねらせてさえくれたのだから。
あのとき路子の脚から抜き取ったパンストは、いまでもボクの戦利品として、手許にある。


何よりも良かったのは、犯され抜いた路子がボクたちと犬ころのようにじゃれ合うのを目にしたカズユキくんが、
自分の母親の痴態を見て、勃起してしまったこと。
そしてさいごには、「カズくんやめなさい」とお母さんが制止するのも構わず強引にまたがっていって、
お母さんのスカートが精液まみれになってしまうほど、射精してしまったことだった。

きょう大活躍だった、ヒロシくんは。
もともとボクに、自分のママを襲わせてくれていた。
そう――ヒロシくんもまた、自分のお母さんを襲われることに興奮を覚える、いけない男の子だったのだ。

男子三人の欲望がはじける下で。
堅実な主婦と規律正しい中学教師は、ふたり肩を並べて、息をはずませて。
息子たちの奴隷へと、堕ちていったのだ。
3人が3人とも、互いの母親を共有する仲になったのは、それから間もなくのことだった。

母さんとのデート。

2022年09月29日(Thu) 22:01:51

ボクの青春時代の話をしよう。
高校入学まえに、ボクは初めて女の身体を識った。
相手は母さんだった。
母さんは、ボクを最初に欲情に誘った女――

まだ小学校高学年のころ。
急に気分が悪くなって学校を早引けしたときに。
父さんと母さんの部屋から、妙なうなり声が漏れてきた。
二人が部屋のなかで、子供たちに決して見せないようにして、仲良くしているのは。
子ども心に知っていたけれど。
そのときの相手は、父さんじゃなかった。
母さんが嫁入り前に伯父さんに犯されて純潔を捧げてしまってから、ずうっと伯父さんの情婦(おんな)だということを、
ボクはまだ知らなかったのだ。

いつもの見慣れた花柄のワンピースのすそから覗いた太ももは、
肌色のストッキングの光沢を、毒々しいほどつややかによぎらせていて。
ボクは具合が悪くなったのさえ忘れて、いちぶしじゅうを見守ってしまっていた。
それ以来。
愛する人を直接愛することはもちろんのこととして、
愛する人が別のだれかに愛されるのを視て欲情する歓びを、
網膜の隅々にまで、覚え込んでしまっていた。

ボクが初めて女の身体を識ったのは、それからそう遠くない時期のことだった。
父さんの目を盗んでは、父さんと母さんの部屋のなかで、
息をはずませ合って、太ももを擦り合わせ合って、
片や愛液を力まかせに注ぎ込み、
片やまき散らされる愛液を、恥を忘れて口に含んだ。

父さんにバレたのは、とうぜんのなりゆきだった。
もちろん叱られたし、監視の目も厳しくなったけど。
人目を忍んで逢いつづける男女のことを、防ぐ手立てがないことがわかると、
父さんは潔く自分の負けを認めて、
高校の入学祝にと、母さんとの付き合いを認めてくれるようになっていた。
ボクはその晩、父さんに平身低頭してお礼をいって、
そのまま母さんをわが物顔に横抱きにすると、
勉強部屋へと引きずり込んでしまっていた。
その晩初めて母さんは、ボクの部屋で夜を明かしたのだった。

青春だった。
無軌道きわまりない、青春だった。

きょうも母さんは、家から抜け出してきて、
学校をさぼったボクとの待ち合わせの公園に姿を現した。
「タヅくん(ボクの名前は田鶴夫)、待った?」
母さんはボクの気に入りの紅色のスーツに身を包んで、ふっくらとした笑みを投げかけてきた。
「待ったよ――あそこがパンパン」
ボクの言い草に母さんは華やかに笑うと、
「じゃあ、早く行こう、ホテル」
と、ボクを促した。
「なんなら、ここでも良いんだよ?」
ボクが意地悪く笑うと、母さんはさすがにうろたえて、
「駄目、駄目、皆さんにバレちゃうでしょ」
と、いった。
もうとっくに――ボクたち母子の仲は、周りのものも、いや街じゅうでうわさになってしまっているのを、
母さんはまだわかっていないのだろうか?

「さっ、行きましょ」
スックと立った立ち姿は凛としていて、惚れ惚れするほど美しい。
紅色のタイトスカートのすそから覗く太ももが、肌色のパンストを淡くテカらせていた。
ボクは欲情を我慢できずに、母さんの手首を邪険につかんだ。
「アッ、何するの!?」
いなやはなかった。
ボクは母さんを公園の植え込みの向こうへと引きずり込んで、
煽情的に揺らぐひざ上丈のタイトスカートを強引にたくし上げていた。

・・・・・・っ。
・・・・・・っ!

「ガーターストッキング、いいよね・・・」
放心して大の字になった芝生のうえ。
軽々とした真っ白な雲が、深い青空のうえにぽっかりと浮いていた。
「穿いたままできるからね」
母さんがこたえた。
股ぐらからむしり取った黒のショーツが、まだ指先に絡みついている。
ショーツには、女の湿り気で、しとどに濡れていた。
口許に持って行って、臭いを嗅ぎ、ゆっくりと口に含む。
「こら、やめなさいよ」
口をとがらせる母さんをけだるげにあしらって、ボクはしばしの間、その行為に熱中した。

「帰るわよ、父さんももうじき帰ってくるし」
「じゃあ、急いで帰らないと」
ボクは聞き分けよく起き上がると、いっしょに起き上がった母さんのスーツに着いた枯れ草を、払ってやった。
「案外物分かりが良いのね」
とうそぶく母さんに、ボクはこたえた――
「父さんだって、母さんの穿いているパンストを他の男に破かれるの視たがると思うから・・・さ」

叔父の愛妻と恋をする(相姦日記)

2022年09月18日(Sun) 16:04:22

田鶴夫さん、着てきてあげたわよ♡ゆう子のスーツ。あなた狙ってたでしょ?
栗色のセミロングの髪を揺らして現れたのは、兄の由貴夫だった。
兄は、兄嫁のゆう子のスーツで女装している。
千鳥格子のジャケットの襟首から覗く純白のブラウスは、ふんわりとした百合の花のようなボウタイが器用に結わえられていて、
白のタイトスカートのすそからは、ツヤツヤとした光沢を帯びた、これも純白のストッキングが、血色の良い足許を輝くように染めている。
兄の女装癖は中学校いらいのことだったから、メイクもさまになっていたし、ちょっと見にはふつうの既婚女性に見えた。
もっとも――兄の場合は淫乱な三十路妻という雰囲気がありありだったが。
そう、兄はボクに抱かれに来たのだ。

激しく飛び散る精液で、ゆう子のスカートをびしょびしょに濡らしてしまうと、
ボクの腕の中で兄さんは、白い歯をみせて笑った。
すけべ。
ほんとうは、ゆう子のことも犯したがっているのでしょ?
良く輝く瞳が、そういっていた。
妻が犯されないために、妻の服を着て女装して、ボクに抱かれに来る兄も。
同性同士のセックスは楽しいらしく、きょうもノリノリで相手をしてくれた。

ボクたち兄弟は、時には兄が男、ボクが女になり、時には兄が女、ボクが男になる。そんな濃い間柄だった。
それは出生のときから運命づけられていて、兄が生まれた時も、ボクが生まれた時も、
父や伯父は、「この子たちは男にも女にもなるだろうから」と、わざと女でも通るような風変わりな名前を名付けられたのだった。


ゆう子とボクとの関係は、兄との結婚前からだった。
その日は母さんの結婚式だった。
母さんは、父さんとの結婚前に父さんのお兄さんである伯父に襲われて、処女を奪われてしまっていた。
花嫁の純潔を兄に奪われるのは、ふつうに考えて不本意なはずだったけれど――
父さんの場合は、ちょっと違っていた。
昔から。
父さんは姉のセーラー服を着せられて、兄のセックスの相手をさせられていた。
股間に一物を挿入されることで、爆(は)ぜるほどの快感が全身を痺れさせてしまうことを、
父は伯父から身をもって教わっていた。
だから許婚を犯されてしまった時も、「兄さんらしいなぁ」と、兄の凄腕ぶりに脱帽しただけだったという。
その伯父が母さんに、正式にプロポーズした。伯母が健在であるにも関わらず、である。
もちろんプロポーズと言っても、正式に夫婦となるわけではない。同居するわけでもない。
実際には、情夫・情婦の関係を公にするだけのことだった。
それでも父さんは母さんを伯父と結婚させるために離婚届に判を捺し、
伯父は母さんとの婚姻届を町役場に出して、披露宴まで挙げたのだ。
そこが、兄さんとの結婚を控えたゆう子との、なれ初めになった。

ゆう子はその日の華燭の典を、ただ「身内の祝い事」としか、兄から聞かされていなかった。
婚約者の母親が夫の兄と結婚前から不倫していて、その不倫の仲を正式に認める宴だということを、宴席で初めて知ったのだった。
招かれた宴のあまりの不道徳な趣旨に、生真面目だったゆう子は少し顔色を変えていた。
その日着てきた淡いピンク色のスーツは、ゆう子のことを華やいだ雰囲気で包んでいたけれど、
彼女の顔つきは初々しい装いとは裏腹なくらい、尖っていた。
彼女の生真面目なしかめ面が、ボクの劣情を逆なでにして、ボク自身を鬼に変えていた。
ボクは兄さんを廊下に呼び出すと、「ゆう子さんはボクが犯すから」と宣言した。
ちょうどその昔、伯父が父に向って、お前の嫁の純潔を奪うと言い渡した時と同じように。
人の好い兄さんは、「ウン、お前なら安心だ。よろしくな」と、拍子抜けするほどあっさりと、婚約者の純潔を譲り渡してくれた。

「少し空気がよどんでいますね。出ましょう」
ボクはそういってゆう子を誘い出すと、言葉巧みに宴席の隣室に連れ込んだ。
丸テーブルが一脚と、椅子が4つしつらえただけの、狭い部屋だった。
「出ましょう、ここ」
不穏な何かを感じてゆう子が出ようとするのをボクは強いて引き留めて、
「ゆう子さんのことは、ボクが女にしてあげる」
と、囁いた。
雷鳴に打たれたようにビクッと顔をあげたゆう子の表情は、恐怖に包まれていた。
それがなおさら、ボクの嗜虐心に、火をつけた。

ぞうさもないことだった。
立ち尽くすゆう子を羽交い絞めにすると、無理強いに椅子に押し伏せて、白いパンストをビリビリと引き破ってしまった。
むざんに引き裂かれた薄地の礼装から素足が露出する惨状は、若い女を黙らせるのにじゅうぶんだった。
「これ以上騒ぐと、お洋服が汚れますよ」
冷ややかな脅し文句をゆう子の耳に吹き込むと、
迫ってくるボクの身体を隔てようと気丈にも突っ張っていた腕から、力が抜けた。
ボクはゆう子の首すじに、吸血鬼のように首すじに唇を這わせた。
柔らかな体温が、しっとりと潤いを帯びた皮膚から伝わってくる。
突っ張っていたところで、そこはまだ、はたちそこそこの小娘だった。
とはいえ、ボクはまだそのころ、高校生だったけれど――
でも、その道にかけてははるかに場数を踏んでいたボクは、なんなくゆう子のタイトスカートをたくし上げ、
慣れた手つきでショーツを足首へと、すべらせていった。
ゆう子が兄さんとの結婚を破談にしなかったのは、
ボクとのセックスを不覚にも、しんそこ愉しみ抜いてしまったからだと、ボクは確信している。


ボクの一族がこんなにフクザツなことになっていたのは、地域の風習も影響していたのだと思う。
過疎化が進んでいたこの街では、どこの家も恒常的な「女ひでり」の状態だった。
だから――嫁を貰い遅れた男たちは、友人の嫁と媾合(こうごう)することを許されていたし、
兄と妹、姉と弟、母と息子、父と娘――身近な異性に手を伸ばすことには、だれもが暗黙の了解をしていたのだ。
妻を奪われた格好の父さんは、親族席の最上席にちんまりと腰かけて、終始人の好い笑いを浮かべていた。
こよない愛妻家である父さんにとって、美人で陽気な母さんはなによりの自慢であったけれど、
その母さんが嫁入り前に、偉大な兄の心を射抜き、少々強引な形にせよロマンスを体験したことも、
その後も伯父の最もお気に入りの女として、数ある伯父の愛人たちのなかでナンバー・1であり続けたことも、
いまこうして兄から正式のプロポーズを受けて、役所に婚姻届けまで提出して披露宴の主役となったことも、
すべて誇らしく悦ばしいことだったのだ。
風変わりといえば風変わりだったが、父さんは父さんなりに兄を尊敬し、母さんのことを愛していた。

母さんの披露宴の日以来、ゆう子はボクのところにひっそりと、通ってくるようになった。
そうして、まだ兄にもいちども開いたことのない身体を惜しげもなく開いて、
嫁入り前の潔(きよ)く守り抜かねばならないはずの処を、淫らな精液にまみれさせていったのだった。


兄さんと長い口づけを交わすと、ボクは義姉さんの服が似合うねと言った。
スレンダーな兄の身体に、ゆう子のよそ行きのスーツはぴったりとフィットしていて、兄を見映えの良い女にしていた。
「こんどはこのお洋服――ゆう子に着せて送り届けるわね」
女の姿をしているときの兄さんは、ずっと女言葉で、あくまで女として振舞っていた。

「で・・・こんどはだれを、引きずり込むの?」
兄さんは共犯者の含み笑いで、じっとボクを視る。
「佐奈子叔母さん」
ボクが応えると、兄さんはなるほどねと言った。
佐奈子叔母さんは、父の弟の妻で、夫婦で中学校の教師をして、倹(つま)しく暮らしていた。
身なりはいつも質素だったが、教師らしくきちんと折り目正しくしていたので、そこはかとない気品を漂わせていた。
「あんたの大好物なストッキングも、愛用しているんだものね」
兄さんに図星を突かれて、ボクは苦笑いした。
ストッキングフェチは、中学に上がる前、母さんの情事をぐうぜん目にしてしまって以来のものだった。
空色のスカートのすそをまくり上げられた母さんは、
伯父の手で肌色のストッキングをひざまでずり降ろされて、太ももを眩しく輝かせていた。
それがいまでも、目に灼(や)きついて、離れないのだ。


乱倫の嵐が吹き荒れるこの街で、佐奈子叔母さんの貞操が無事だったのは、ほとんど奇跡のようなものだった。
一家の最高権力者である伯父は、うちの母さんにぞっこんだったし、父さんも母さんにしか目のいかない男だった。
ボクたち兄弟の筆おろしは、父さんのいない夜に母さんが、
「困ったものねぇ」と言いながら、ワンピースの襟首をはだけてくれて豊かな乳房をもろ出しにしてくれて果たすことができたし、
生真面目な佐奈子叔母さんをわざわざ巻き込まないでも、帳尻が合っていたのだった。

「佐奈子叔母さま、きっと叔父さま以外の男を識らなくてよ。だったらゆう子を撃沈したあんたのぺ〇スで、きっといちころだわよ」
兄さんはそういって、ボクを力づけてくれた。
叔母を犯す算段をする弟に、うまくいくよと励ます兄。
それがボクたちだった。
思えば、とんでもない兄弟だった。

狙われた佐奈子叔母こそ、いい迷惑だっただろう。
けれどもボクは容赦なく、彼女に迫った。
子どものころから可愛がってくれたり、勉強を見てくれた叔父への斟酌も、まるきりなかった。
ボクは叔母さんが欲しい。ボクのぺ〇スも、叔母さんを汚したがってそそり立っている。
だから叔母さんを狙うんだ。
すごく明快でしょ?


善良な叔母を引きずり込むのは、たやすいことだった。
その日はたまたま叔母にとって不幸にも、叔父は教育委員会の用事で遠出していた。
父さんが話があるって呼んでいる――というボクからの誘いを、叔母はまるで疑わなかった。
ボクたちの淫らな関係もつぶさに知っているはずなのに、自分だけは無縁で済むのだと思い込んでいたのだろうか?
けれども淫らな渦の吸引力は、叔母を飲み込むことを欲していた。
それくらい。
叔母は高雅で気高くて、穢すのにもっともそそられる獲物だったのだ。

招かれた自宅に、父さんも母さんもいなかった。
母さんは伯父さんに誘われてラブホテルに行っていたし、
父さんは尊敬する兄に母さんが愛されるところを視たいといって、いっしょに出かけていったのだ。
母さん好みの派手な洋服をふしだらにはだけていって、伯父が母さんを征服してしまうことを。
逞しい兄の男ぶりを見せつけられることを。
父さんはとても、悦んでいた。

そういうわけで、叔母は一人、客間に通された。
モスグリーンのカーディガンに、グレーのスカート、足許を彩るのは、濃いめの肌色のストッキング。
素朴な装いであればあるほど、ボクの目は好奇に輝き、胸の奥底に滾る嗜虐心を募らせていった。
几帳面な叔母が、つま先とかかとの補強部がぴったりと合うように穿きこなしているのを、ボクはつぶさに見て取った。
きちんとした服装に、すみずみまで意を用いている叔母に、好感を持った。
これからモノにする女は、淑女だ。
思う存分、辱めてやろう――

「兄さんはいらっしゃらないの?」
かすかに不審の色を泛べる叔母に、ボクは告げた。
「きょうはボク、年配の女のひとが欲しいんだ。さしあたってだれもいないから、叔母さんに相手をしてほしいんだ」
えっ・・・?
戸惑い腰を浮かしかける叔母を、ボクはあっという間に組み伏せていた。
「カーディガン破かなければ、あとはいいよね?」
そういうと、モスグリーンのカーディガンの下に着ていた黒のブラウスに手をかけて、力任せに引き裂いていた。
あっ!!
年長者の優位は、苦もなく消し飛んだ。
思いのほか白い叔母の胸が、黒のブラジャーの吊り紐一本に区切られていた。
ボクはその釣り紐も、力任せに引きちぎった。
「田鶴夫さん、いけないわ!そんなこと・・・」
叔母の顔には懇願の色があった。
「お嫁さんをもらったらどうするか、ボクに教えてくださいよ、先生」
生真面目な女教師の面ざしに小便をひきかけるような気分でからかうと、
「・・・っ」
叔母は声にならない悲鳴をこらえて、抗おうとした。
やはり母さんのほうが、こういう場に場慣れしている――ボクは素直に、そう感じた。
レ〇プどうぜんに犯されるのを好んでいた母さんに、なん人の男がまたがっていただろう?
母さんは手加減をよく心得ていて、頑強に抵抗して、徐々に力を抜いて、さいごに屈服してゆく手振り、顔つき、声色が、男どもを魅了してやまかなったのだ。
対する叔母は、ただぶきっちょにめくら滅法腕を突っ張って防戦するばかり。
気の毒なくらいのつたなさだった。

ブラジャーをむしり取り、指に吸い尽くような肌の触感をたしかめながら、乳首を唇で強く吸う。
「ああっ・・・」
夫に対して顔向けができない。家の名誉を守り抜かなければならない。
きっとこの女の頭のなかでは、そんなことがめまぐるしくぐるぐると廻っているに違いない。
ボクは彼女の思惑は一切無視して、ただ胸の柔らかさ、張りの良さを手触り、舌触りで楽しんでゆく。
豊かすぎも貧しすぎもしない、まずまずのおっぱいだと診たてていた。
ボクの掌はまるで掌じたいに意思が宿っているかのように、
もうなにも考えないでも、女を煽情するためのもっとも効果的なやり方で、叔母の素肌を手繰っていた。
首すじにキスをしたときは、ゆう子にもこんなキスをお見舞いしたっけ・・・と、なぜか義姉のことを思い浮かべていた。
ひとりの女を獲物にするのに、ほかの女のことを思い浮かべるのは失礼だ――ボクはすぐに、ゆう子の幻影を追っ払った。
凌辱という恥ずべき行為にも、礼儀もあれば、作法もあるのだ。

口づけは、濃く長く、相手の息が詰まるほどに味わった。
キスを許すと人妻はかなりの確率で堕ちる――そんなことを教えてくれたの、誰だったっけ?
でもたしかに、それを境に叔母の動きは、目だって緩慢になり、活発さを欠いていった。
お目当ての肌色のストッキングをいたぶってやろうとグレーのスカートを荒々しくたくし上げた時にも無抵抗だったし、
脂ぎった唾液にまみれた唇を太ももに圧しつけて、淡いナイロン生地をくしゃくしゃに波打たせていったときには、すすり泣きの声さえ洩らしていた。
薄紫色のショーツは、薄い生地で、唇でまさぐると意外に濃い茂みの剛毛が、チクチクとした。
叔父もこんなふうに、自分の妻の身体を愉しんでいるのか――
すでに叔母の誇り高い貞操をガードしているのは、この薄いショーツがわずかに一枚。
それもボクのエッチなよだれにまみれて、突き出した舌は、股間の秘奥の起伏さえも、つぶさになぞり尽くしてしまっている。

いまごろ妻が貞操の危機に直面しているなど夢にも思わずに、律義に執務しているであろう叔父を思い浮かべると、
なにやらくすぐったくなってきた。
待っててね。もうじき叔父さんの愛妻を、地獄に堕としてあげるからね――
謹厳な教育者である叔父の指導の甲斐もなく、ボクはしんそこ悪い子に育ってしまっていた。

「叔母さん、ごめんね、すぐ済ませるからね」
叔母の希望とは正反対のことを、引導を渡すようにして囁くと、叔母は身体の動きを止めた。
すでにパンストを片脚だけ脱がせて、ショーツは足首まですべり降ろしてしまっていた。
「どうしても、なさるというの?」
なおも言い募る叔母に、ボクは言った。
「ずっと前から、叔母さんを犯したかったんだ」
ほんとうは・・・生真面目で影の薄いこの叔母は長いこと、凌辱の対象ではなかった。
たまたまきのうきょうの思いつきで、犯すことに決めたのだった。
けれどもじつは、心の奥底ではずっと昔から、叔母を犯したかったのかも・・・と、ふと思った。
すでに主人の意思を離れてたけり狂ったボクの股間が、叔母の太ももの奥へと迷い込んでいた。
「だったら、だったら――せめて叔父さんのことをばかにしたりしないでね。あの人を悲しませるようなことはしないでね」
ボクの一物が叔母自身をえぐり抜く瞬間まで、叔母は夫のことばかり、気にかけ続けていた――


夕方。
部屋の隅で叔母は、呆然となりつつも、身づくろいを始めていた。
剥ぎ取られたブラウスは、モスグリーンのカーディガンの奥へとしっかりと押し込まれ、
吊り紐の着れたブラジャーは、ボクに戦利品としてせしめられていた。
ストッキングは幸い、少し伝線しただけだったが、これもボクにせしめられてしまっていた。
蛇のように伸びたナイロンの薄衣をボクがこれ見よがしに見せつけて、舌で意地汚く舐め抜くのを、叔母は悔しそうに視ていたけれど、
もうそれ以上怒りも泣きもしなかった。
「時々、逢って」
それは、叔母が内心もっとも恐れていた願いだったに違いない。
いちどきりのことなら、過ちで済まされる。
夫にも告げずに、墓場まで持っていこう。
きっと叔母は、そう思ったはず。
けれども、日常的な関係まで迫られてしまっては、夫に露顕するのは時間の問題だったから。
「いや!」
叔母は叫ぶようにこたえた。
反射的に、
ぱしぃん!
頬に平手打ちをくれていた。
「逆らう権利はないんだよ」
ボクは叔母にもう一度にじり寄ると、ブラウスの破れを抑える掌を取り除けて、カーディガンの襟首を強引に押し広げ、
あらわになった胸を吸った。
「聞き分けがわるいようだから、もう少し付き合ってもらうね」

ごめんなさい、あなた。ちょっと立ち眩みがしてしまって・・・きょうは祐介さんのところでお泊りさせていただきますね。
明日もお仕事早いんでしょう?きょうも――ご出張お疲れさまでした。

叔母の声色はいつもの静けさと穏やかさをたたえていて、なによりも叔父に対するいたわりに満ちていた。
こういう奥さんをもらうご主人は、きっと幸せなんだろうと、ボクは思った。
「せめて叔父さんをばかにしないでね。悲しませたりしないでね」
犯される直前の叔母の懇願が、鼓膜によみがえった。
叔母との関係をこれきりにしようとまでは思わなかったが、せめてこの生真面目な夫婦に余計な亀裂は招きたくないな、と、ふと思った。


佐奈子との関係は、週1のペースで続けられた。
いちど喪われた貞操は、元には戻らない。
佐奈子もそこは、観念したようだった。
グレーのスカートを精液まみれにしてしまったあの日を境に、ボクは叔母のことを佐奈子と呼び捨てすることにした。
だからここでも、ここからは佐奈子と名前で書く。

逢瀬はいつも、自宅の勉強部屋だった。
母さんは見て見ぬふりをしてくれていた。
むしろ――自分が相手をしなければ消し止められない息子の劣情を、
義妹が身代わりになって火消しをしてくれていることに、感謝しているふうだった。
いつも学校に着ていく、生真面目なスーツ姿がいいな。佐奈子には良く似合っていると思うよ。
すると佐奈子は、ボクの希望を容れて、スーツ持参で訪いを入れてくれるようになっていた。
そう、さいしょのときにブラウスを引き裂かれたことで懲りていたのだろう。
家を出るときと違う服装で帰るわけにはいかなかったから、
ボクと交接するために、佐奈子はわざわざ別の服を用意して、着替えてくれたのだった。

パンストを片脚だけ脱がせて、
ショーツをつま先まですべらせて、
スカートを着けたまま、秘奥をまさぐり、貫き、精液まみれに濡らしてゆく。
ボクが愛用しているハイソックスと同じ丈まで、ストッキングをずり降ろされて。
佐奈子はすすり泣きながら、ボクの欲求に応えてくれた。
けれどもそれが擬態にすぎないものになりつつあることを、ボクは知っている。佐奈子ももちろん、自覚している。
夫とはかけ離れて若々しい怒張を迎え入れた彼女の関門は熱く濡れぼそり、
怒張を押し返すように、ギュッと締めつけてくる。
こちらも負けずにと意気込んで、ぐりぐり、ざりざりと、関門を激しく往き来させてゆく。
佐奈子は身を仰け反らせて、感じていることを身体で白状してしまっている。


そんなことが、ふた月ほども続いただろうか。
佐奈子の脚から抜き取った戦利品のパンストが、もう数え切れなくなったころのことだった。
ボクが学校から戻ると、母さんがちょっと厳しい顔つきで、ボクのことをリビングに招き入れた。
そこには真っ黒な洋装の喪服を着けた佐奈子がうなだれて、黙りこくっていた。
「バレちゃったんだってさあ」
母さんはあけすけに、変事を告げた。
いつかはそうなることだった。
どこでだれがどう伝えたのかは、問題ではない。
ボクと佐奈子との仲は、叔父の知るところになってしまったのだ。

潔癖な教育者である叔父は、理由はどうあれ不貞を犯した妻を家に置くわけにはいかないと告げたという。
お前も教師として教壇に立つ資格はないから、当面休職したほうがよい、とまで、いったという。
物静かな叔父だけに、その言葉は重く、徹頭徹尾罪悪感とは無縁で過ごしてきたボクですら、冷や水を浴びせられた気分だった。
「どうするのよう」
母さんは蓮っ葉に、父さんに尋ねかけた。
ボクの不始末は、うちの不始末だった。そこはさすがに、両親だった。

「佐奈子さんのために、アパートを借りましょう。もちろん費用はうちで持ちますからね」
母さんは気前よく、佐奈子の住まいについての費用を受け持ってくれた。
もちろんボクには、こう囁くのを忘れなかった。
「あんた、わかってるんだろうね?あんたのために叔父さん、佐奈子さんを離婚してくれるんだよ。そういうことだろ?
 チャンスだよ。いまのうちにあの女(ひと)を、あんたの色に染め変えちゃいなさいな」

その晩佐奈子は、わが家の客となった。
改まった重々しい喪服姿にひき立った白い肌に、欲情を覚えずにはいられなかった。
母さんに言われるまでもなく、ボクは佐奈子の寝所を襲って、喪服姿のままひと晩じゅう、いたぶり抜いてしまっていた。
黒のスケスケのストッキングにブチチッと裂け目を走らせたまま、
厳粛な場でのみ装われるべき漆黒のスーツを、佐奈子はふしだらに着崩れさせた。
その夜は、佐奈子が自ら、学校教諭夫人の貞操の喪を弔う夜となった。

叔父は佐奈子とは顔を合わせたくないそうで、代わりに母さんが叔父宅に出向いて、佐奈子の服や身の回りの品を受け取ってきた。
調度も含めるとそれなりの量になったので、引越業者を依頼することになった。
受け取りを済ませると、母さんはボクに耳打ちをした。
「叔父さんのこと誘ってみたのよ、それとなく。でもね、やっぱり佐奈子さんがいいんだって。
 それに、わたしの場合佐奈子は処女で嫁に来たから、見返りは欲しくないんですって」
奪(と)られるいっぽうの立場に甘んじることを選んだ叔父を、ボクは偉いとおもった。
それにしても――そういうときに叔父のことを誘惑しようとする母さんもまた、凄いとおもった。

佐奈子のアパートは、寂しいくらいに空き間が目についた。
ぼくはその空き間を埋めるようにして、佐奈子のアパートに居座ることにした。

離婚届なるものを目にするのは、母さんのときに次いで二度目のことだった。
兄さんとの結婚を控えていたゆう子を犯したあの宴のとき、父さんと母さんとは、ご丁寧にも法的に離婚をしていた。
離婚届という書類の名前の重みに佐奈子はたじろいだようだったけれど、
ボクはさっさとペンをとると、妻の欄に佐奈子の名前を書き込んだ。
「ボクが出してきてあげるよ」というと、さすがに佐奈子はかたくなにかぶりを振って、自分で出してきますとこたえた。
結局、二人で町役場に出向いて、離婚届を出した。
「夫」の欄は、叔父の小さくまとまった整然とした字体で名前が記され、
その隣の「妻」の欄は、ボクの大ざっぱな字で、佐奈子の名前が記入されていた。

こいつを出してしまえば、佐奈子は叔父の妻ではなくなるのだ。
佐奈子は晴れて、自由になる。
その日以来ボクは公然と、佐奈子のことを自分の女として扱った。
佐奈子のアパートには毎晩寝泊まりをして、夜遅くまで元教諭夫人を苛んだ。
覚えたての縄の扱い方を試すために、佐奈子は叔父が仕立ててくれた黒留袖の上から、荒々しく縄を巻かれていった。
ギュッと縛った瞬間、「ウッ」とちいさいうめきをあげるのが、たまらなくいとおしく、可愛らしかった。
二十近くも齢が離れているなどとは、ついぞ思ったことさえなかった。
ボクは毎晩のように佐奈子を抱いたし、佐奈子もじょじょに、応えてくれるようになった。
もはや逃げ道は、どこにも用意されていなかったから――ぼくに身を任せるしかなかったわけだし、
いちど身を任せてしまった女を夢中にするすべを、ボクは十分すぎるほど、心得ていた。
佐奈子は、堕ちた。

道行く人がうわさするほどに、ボクと佐奈子が同居を始めたことは、街に知られていった。
佐奈子がボクの女であることを世間に見せびらかしてやりたくなって、
時には道端の草むらや、深夜の路上で、佐奈子の装いを剥ぎ取って、まぐわい抜くことさえした。
だれもがオシドリ夫婦だった教諭夫妻の離婚を知ったし、
妻のほうが教師を辞めてまで、恥知らずにも20も齢の若い甥に春をひさぐようになったことも知られていった。


それでもボクは、時折叔父のことが思い出されてならなかった。
生真面目な叔父は、相変わらず律義に中学に通い、生徒の指導に当たっているという。
教師のなかには教え子の男女に手を出して、体育館の裏や空き教室で、蒼い性をはじけさせる者もいたが、
叔父にかぎってそれはなかった。
このままだと、叔父の人生は彩がまったくないものになってしまう――と、ボクはおもった。

「叔父さんとこに、謝りに行かない?」
その夜も八回ほど佐奈子を貫いたあと、ボクは佐奈子に切り出した。
叔父の誂えた黒留袖に撥ねた精液を気にかけていた佐奈子は、ハッと目を見開いて、みるみる涙をあふれさせた。
「ほんとう?ほんとうにそうしてくださるの?」
佐奈子が意味のある言葉を発するのを、もしかするとここに来て初めて耳にしたような気がした。
そう――ボクはここにいる間は始終獣になっていたから、
彼女は服従の短い相槌や、苦痛に耐えかねたうめき声以外、ほとんど口にすることがなかったのだ。
「やっぱり佐奈子は、叔父さんのところに戻ってあげたほうが良い――ボクはそう思う」
でもね、と、ボクはつづける。
きみをあきらめたつもりはないからね。
きみが叔父さんと復縁することができたとしても、ボクはあくまできみのことを、ボクの女として扱うつもりだ。
ボクが強く肩を抱き寄せると、佐奈子は心もとなげに頷き、それからもう一度、強く頷きかえしてきた。


しばらく見ない間に、叔父は10歳ほども老け込んでしまったかのようだった。
小学生の息子と娘のめんどうは、長年住み込んでいる婆やが見てくれていたので、身の回りに困ることはなかったようだが、
やはりいつも寄り添っていた控えめで倹(つま)しいつれ合いが傍らにいないのは、寂しい限りだったのだろう。
「きょうお伺いしたのは――佐奈子さんを犯してしまったことをお詫びするのと、
 お二人が元通り復縁することをボクが希望していることをお伝えするためです」
ボクがそういうと、叔父は目をしばたたいてボクを見返し、「それはありがとう」と、いった。
安堵を交えた穏やかな声色だった。
意外にも。
「でもきみは、それで良いのかね?佐奈子に飽きてしまったというのかね?」
むしろボクを気遣うような口ぶりに、しんそこ済まないことをした気持ちになったのだけれど――
ボクが佐奈子をあきらめるつもりがまったくなさそうなのを顔つきで見て取ると、彼は穏やかに口を開いた。
彼の言い草は、さすがのボクにとっても、意外なものだった。

「佐奈子のことはよろこんで、家に迎えよう。きみの好意に感謝する。
 復縁のことも承知した。遠慮なくそうさせていただくよ。
 でも、もしもきみがまだ佐奈子に欲情を感じているのだとしたら、どうか自分自身に正直になりなさい。
 若いうちは女を欲しいと誰でも思うものだし、きみが佐奈子を欲しいと思ったり、
 生真面目な佐奈子を辱め抜いてみたいという気持ちも、わからないわけではない。若気の至りということだからね。
 もちろんわたしも、かなりの迷惑は感じたけれど――」
叔父は穏やかに笑いながら、つづけた。
「でも、そこは叔父甥の仲だから、水に流そうじゃないか。
 そして、きみさえ望むのなら――きみを佐奈子の愛人として、わたしの家庭に迎え入れようと思っている」
え?
ボクと佐奈子は、顔を見合わせた。
ほとぼりが冷めたころにまた佐奈子を誘い、思う存分交わろう――そんな不埒なことを思ってはいたのだけれど。
叔父がまさか、そこまでボクのことを理解してくれているとは、夢にも思わなかった。

「きみに佐奈子を望まれて、本心をいうとわたしは嬉しかった。
 あれは地味な女だが、所帯持ちがよくてしっかり者で、質素だけれど上品なひとなのだ。
 きみのような若い男性が佐奈子を見初めてくれて、わたしはとても誇らしく感じていたのだ。
 だから、きみが佐奈子を汚したと聞いた時、きっと一度では済まないだろうとすぐにわかった。
 そして――きみに佐奈子を独り占めさせてやるために、わざと佐奈子を離婚したのだ。
 佐奈子はわたしの妻という拘束から離れて、ひとりの女としてきみに仕込まれ、きみの色に染まるだろう。
 妻がきみの奴隷になるのに、それは必要なことだと思ったんだ。
 わたしたちが離婚したことは、学校にも知られたし、狭い世間だから、知らないものはいないだろう。
 そして、きみの情婦として無軌道に愛され抜いていることも、誰一人知らないものはいないだろう。
 うちの名誉はすっかり、汚れてしまった。でも、それで良いのだ。
 自分から進んでそう仕向けたのだし、汚されて却ってこざっぱりするということも、あるものなんだね。
 きみはわたしのことを、佐奈子の夫として認めてくれたのだから、
 ぼくはその見返りに、わたしの最愛のひとの貞操を、真心こめてプレゼントしよう。
 女が欲しくなったら、いつでも来なさい。妻も、きみのことをきっと、歓迎するだろう」


「お兄ちゃん、ママと何してるの?」
まだ幼い従弟の陽太は、ふすまを細目にあけて、目だけをこちらに向けてくる。
幼い目線の先には、よそ行きのスーツを着崩れさせ、セットした髪を淫らに波打たせた母親と、その母親を支配している従兄がいた。
「覗いていいよ」
とは、約束していた。
けれどもボクが佐奈子を犯しに行くと、彼は必ずと言っていいほど、母親の情事を覗き見していた。
もちろん彼の父親も、時折様子を窺いに来た。
無軌道な甥の欲求をまえに曝してしまった妻の身を案じて――というのも、むろんあったに違いない。
けれども、それとは別種の、好奇で好色な色合いが、あの謹厳な眼鏡の奥から射し込んでくるのを、
ボクも佐奈子も気づかずにはいられなかった。

彼は妻を奪われ、そして復縁を果たした。
夫婦仲は、以前にも増して濃やかだという。
そしてボクはこの家の堅実な主婦を凌辱する権利を、目いっぱい行使しつづける。
きっとそのことは――思春期の萌芽をみせはじめた従弟にも、色濃く投影されてゆくのだろう。
彼は白い歯をみせて、ボクに約束してくれたのだ。
「ボクがお嫁さんをもらうときには、お兄ちゃんに逢わせてあげる。
 ママと同じくらい、仲良くしてほしいんだ」

夫婦で。。

2022年09月10日(Sat) 02:54:37

妻が吸血鬼に犯された。
公園の片隅に連れ込まれ、勤め帰りのパンストを脱がされて、ひーひー言わされてしまっていた。
29歳のうら若い血潮は、吸血鬼の牙を満足させたけれど――量が足りなかった。
足りない量を満足させるため、彼女はわたしの血を吸うようそそのかした。
勤め帰りの靴下を咬み破かれながら、わたしは全身の血を漁り取られていった。
その次の夜から――わたしは妻の服を着て、吸血鬼の相手をするようになった。
それ以来。
わたしたちは夫婦で、吸血鬼の寵を競っている。

嫁、妹、そして姑

2022年09月10日(Sat) 01:54:26

若い女の生き血を求めて、吸血鬼が訪ねてきた。
妻の華絵がお目当てだった。
呼び出された華絵は、含羞を帯びた表情で、自分の情夫を迎え入れる。
結婚間近のころに、二人ながら襲われて。
先に血を抜かれたわたしの前で、華絵は全身の血を舐め尽くされた挙句、処女を散らしていった。
初めて識った男には、女は特別な感情を抱くという。
華絵と彼との関係が、まさにそうだった。
婚約者を守り切ることのできなかったわたしは、自分の未来の花嫁が吸血鬼に求愛されるのを受け容れて、
ふたりの関係を認めさせられ、そして悦んで認めてしまっていた。
新居に通ってくるこの不埒な年配男のために、新妻の貞操を汚される日常に、わたしは満足を覚え始めてしまっている――

黒衣の肩をそびやかす彼の背後に隠れるようにしているのは、伴われてきた妹の佳代だった。
華絵は佳代と目線を合わせると、ふたりはちょっとだけ顔つきに妍を浮かべた。
嫁入り前の身体を捧げたという点で、ふたりは同じ体験を共有していたけれど、
そのことはふたりを、意図せず競争相手にしてしまっていた。

きょうは母のことを欲しがっているの。私たちは添え物よ。
佳代の言葉に、華絵はちょっとだけ失望の色を泛べた。
「すまないね。奥さんと妹さんを借りるよ」という吸血鬼に、わたしはどういうことなのですかと訊いた。
「奥さんと妹さんには、女ひでりの男たちを慰めてもらおうと思っているよ」
彼は臆面もなくこたえた。

この街に吸血鬼が侵入してきて、すでに3年が経過していた。
人妻たちのほとんどは血を吸われ、彼らの奴隷にされていた。
そうした人妻の夫たちは、妻の情夫を家庭に受け容れることを条件に、好きな女を抱くことができる――
「奥さんにはそうした旦那衆が、3人。妹さんには5人」
ほくそ笑む吸血鬼に、妻は不満げにいった。
「アラ、わたくしのほうが少ないのですか?」
「その分、ひどくご執心でね――」と、彼が告げたのは、わたしの同僚たちの名前だった。
「彼らだったら仕方がない。満足させてやってくれないか」
同僚との不貞行為をあっさりと許したわたしに、妻もまたサバサバと返してくる。
「今夜は戻りませんからね」

情婦ふたりを「供出」してしまった吸血鬼の今夜の目当ては――母の規美香だった。

華絵が新居で情夫と乱れあっているところを偶然目撃してしまった母は、その場で吸血され、犯された。
30年近く連れ添った父以外の男を識らない身体を、手ごめにされてしまったのだ。
まだ若さを秘めた血液に、牙に含まれた毒液を混入されて、
無防備な股間に淫らな粘液を注ぎ込まれてしまうと、
賢夫人とうたわれた母が娼婦に化してしまうのに、半日とかからなかった。
着乱れた服のすき間から素肌を露わにした華絵は、そのいちぶしじゅうを見届けていた。
代わる代わる犯された嫁と姑は、その日のうちに共犯者同士になっていた。

「父がかわいそうだ」と主張するわたしの言を容れた吸血鬼は、その日のうちに父を訪ねて、母との交際を認めさせてしまっていた。
情夫とともに帰宅した妻を晴れやかな顔つきで迎えた父の首すじには、赤黒い咬み痕がふたつ、綺麗に刻印されていた。
「そういうことを望んだのではない」と主張するわたしのことを、吸血鬼は楽しそうな顔つきで見返してくる。
そう――わたしもまた、首すじに咬み痕をふたつ綺麗につけられて、
婚約者の純潔を嬉々として献上してしまっていたのだから。。

女ふたりが、若い女に飢えた男どもを満たすために立ち去ると、
わたしは吸血鬼を連れて実家に向かう。
出迎えた父は、年来の親友を迎えるように目を細めて吸血鬼に会釈をした。
「華絵さんは良いのかね?」
むしろ嫁の嫉妬を気遣う父に、「華絵はほうぼうでモテモテですから」とこたえていた。
父の引き取った書斎の隣室で。
母は奥ゆかしく着こなした和服の襟首を寛(くつろ)げられて、胸もとを露わに引き剝かれていった。
首のつけ根の一角に、赤黒く欲情した唇を這わされて。
きちんと結い上げられた黒髪の生え際を撫でつけられながら、じょじょに姿勢を崩してゆく――
父が隣室で聞き耳を立てていると知りながら、あなた、あなた許して頂戴――と声をあげて、
母は着物の下前を割られていった。

父は知っている。
乱れ抜いた母はやがて、息子であるわたしのことさえ受け容れて、
輪姦の坩堝(るつぼ)に巻き込まれ、ひときわ声をあげてしまうのを――

通勤用の靴下に魅せられた吸血鬼

2022年09月10日(Sat) 01:09:53

はじめに
煮詰まりの第三弾です。^^;


門春貴美也は、うつ伏せに組み敷かれていた。
相手の男は貴美也のスラックスを引き上げて、ふくらはぎに咬みついている。
昨日息子を襲っていた吸血鬼だった。
この街では吸血鬼が出没するとはきいていたが――まさか自分の身に降りかかる災難だとは、うかつにも思ってもみないでいた。
夕べ吸血鬼は、半ズボン姿の息子を抑えつけて、ハイソックスのうえからふくらはぎに咬みついて、血を啜り取っていた。
相手が自分の血を吸い終えると息子は人目を避けるように足早に立ち去ったが、
貴美也はそんな息子に声をかけることができなかった。
あのときの息子の、ウットリとした表情が忘れられなかった。

勤め帰りの貴美也は、丈が長めの靴下を履いていた。
黒地に赤のストライプの入った、凝ったデザインだったが、
吸血鬼はきのう息子にしたのと同じように、
貴美也の履いている靴下を咬み破りながら吸血していた。

ゴク、ゴク、ゴク・・・
男は喉を鳴らして、貴美也の血を旨そうに飲み味わっている。
同時に、貴美也の靴下を破るのも愉しんでいるらしく、
さっきからあちこちと角度を変えてくり返し咬みついては、
赤のストライブ柄の靴下を、持ち主の血で濡らしてゆく。

「あんたは、靴下が好きなのか?」
貴美也は思わず、訊いていた。
男が無言で強くうなずくのが、気配でわかった。
「息子のときも――ハイソックスを咬み破っていたな?」
「すまなかった」
男ははじめて、口をひらいた。
「こういうことが好きなものでね・・・」
ひっそりとそうつぶやき返しながらもう一度、男は貴美也の脚を咬んだ。
血がジュッと撥ねて、またも靴下を濡らした。
「どうしてこんなひどいことをするんだ!?」
貴美也は訊いた。
このままでは死んでしまう――とは、なぜか思わなかった。
相手の男は貴美也の血を愉しんではいたが、殺意は感じなかった。
「俺は人間の血が要りようなのだ。気の済むまで飲ませてくれたら、ありがとうを言ってお別れしたい」
勝手な言い草だ――貴美也は毒づいた。
「ごもっともだ。弁解の余地はない」
男は貴美也の靴下を舐めた。舌触りを愉しんでいるかのような、しつような舐めかただった。
――生命のあるうちに放してもらえるのなら、お礼に別の靴下を履いてきてやろうか?と、ふと思った。
むろんそんな歪んだ想像は、すぐに打ち消したけれど――
男はなおも、靴下を舐めている。
靴下に着いた血を舐め取って、舌触りを愉しみながら味わっているらしい。
いじましいことをするやつだ。 貴美也はおもった。
けれどもどうやらそれは、貴美也の生命を危ぶむ気持ちからそうしているらしい――と、ふと察した。
男は純粋に、貴美也の血を飲み味わい、履いている靴下を舌で愉しみたがっているだけのようだった。
しばらくの間、吸うものと吸われるものとは互いに葛藤しながら、
それでも吸わせることを、吸うことを、無言の押し問答のようにつづけていた。

せめて、息子のことを襲うのはもうやめてほしい、と、貴美也は懇願した。
――お気持ちはごもっともだ。
吸血鬼の声色には、同情がこもっていた。
どうやらそれは、本音らしい。
わしも人間だったころ、息子の血をほかのやつに吸われたからな。
吸血鬼は、ひっそりといった。
そうなのか?
そうなんだ。
息子さんは・・・?
親子ながら、吸血鬼となっている。
「俺も吸血鬼にするつもりなのか?」貴美也は訊いた。
「わしにそこまでする力はない。だが、あんたや息子さんを死なすつもりもない。
 ただ、くり返し恵んでいただきたいだけだ」
男はまたも、貴美也の靴下を舐めた。
しつようないたぶりに弛みを帯びたナイロン生地に、濡れた生温かい舌が愛でるようになすりつけられる。

迷惑だ――貴美也はいった。
男はかまわず貴美也のふくらはぎを吸い、なおも靴下に唾液をなすりつけた。
良い趣味だな。と、吸血鬼はいった。
なにが・・・?と訝しむ貴美也に、
いまどき珍しい、お洒落なタイプだと、男はほめた。
靴下の柄をほめているのだと、やっとわかった。
からかうな――貴美也はやり返した。
そうむきになりなさんな。わしは本気で、ほめている。
這いまわる舌が、薄地の紳士用靴下を、みるみるうちに皺くちゃに弛ませ、ずり降ろしてゆく。

男が貴美也の履いている靴下を気に入っているのは、どうやら本音らしい。
舐めかたにも、咬み破るときの牙の使い方にも、靴下を愉しんでいる気配をありありと感じた。
おぞましい――と、貴美也はおもった。
しかし――たしかにおぞましくはあるのだが・・・と貴美也は反すうした。
反すうの先にある闇の深さを初めて自覚して、意識がくらくらとなった。
失血のせいで、理性が変調をきたしている――貴美也はそう思い込もうとした。

もう少しだけ、愉しませてもらいたい。
好きにしろ――貴美也は自棄になったようにつぶやき返した。
ご厚意に感謝する。
男はにこりともせずに、こたえた。
厚意じゃない――決して厚意などではない。
貴美也はおもった。あくまでもこれは、強いられたことなのだ。
自分の履いている靴下に目の色を変えて、男が物欲しげに唇を、舌をふるいつけてくるのを、
貴美也はだまって耐えた。
丈の長めの靴下は、舌のいたぶりに耐えるように、しばらくの間はピンと張りつめていたが、
やがて淫らを帯びた舌なめずりに蕩かされるようにして弛んでずり落ちて、
吸血鬼の舌が分泌するよだれと持ち主である貴美也の血潮とで、濡れそぼっていった。

もう気が済んだだろう――?
貧血にくらつく頭を抱えながら貴美也が苛立たしげに囁くと、吸血鬼はやっと彼の足許から顔をあげた。
初めて目を合わせたその男は、蒼白な頬をゆるめて、ゆるやかにほほ笑んだ。
険しい顔だちには不似合いな目つきの穏やかさと、口許から滴る鮮血とが、ひどく不似合いにみえた。
「この靴下を譲ってほしい」
「好きにしろ」
投げやりにこたえた貴美也の足許から、片方、もう片方と、靴下が抜き取られていった。
吸血鬼はわざわざ、履き替えを用意してくれていた。
落ち着いたらこれを履いて、家に帰るとよい。
そう言い残すと、吸血鬼は煙のように夜の闇に溶けた――

貴美也の手に残された履き替えの靴下は、ひどく生地が薄かった。
まるで女の穿く黒のストッキングのようだ――と、彼はおもった。


終わりを告げようとする夏の夕風が、一抹の涼しさを過らせて吹き抜けた。
オフィスから出てきた貴美也を待ちかねたように、男がぬっと立ちはだかり、その行く手を阻んだ。
また来たのか――貴美也は内心、あきれている。

あれ以来。
男は三日にあげず貴美也の勤め帰りを襲って、血を啜るようになった。
息子に手を出すのをやめてくれるのなら――と、せがまれる吸血に渋々応じるようになって、
きょうでもうなん度めになるだろう?

幸い貴美也は自分の服の始末は自分ですることにしていたので、
通勤用の靴下の減り具合に、妻の美津代は気づかずにいた。
器用な男だった。
貴美也が抵抗さえしなければ、ワイシャツの襟首を汚すことなしに、首すじからの吸血をし遂げることができるのだった。
夜道で行き会うとふたりは数秒だけ目を合わせ、
貴美也がもう逃れられないと観念して目を反らすと、プレイが始まった。
男は貴美也の背後に回り込み、首すじを咬んで、ワイシャツの襟首を濡らすことなく吸血を遂げる。
手近なベンチに貴美也を腰かけさせると、スラックスのすそを引き上げて、
貴美也の履いている通勤用の靴下を、舌をふるって愉しむのだった。

きょうの貴美也のくるぶしを染めていたのは、さいしょの夜に逢った時手渡された、ストッキング地の長靴下だった。
脚に通すのが恥ずかしいほど薄い靴下は、やがて貴美也を魅了した。
いままで気に入りだったストライプ地の靴下と半々に履くほど愛用するようになっていた。
じんわりとした光沢を帯びたストッキング地の靴下は、貴美也の足許を、蒼白くなまめかしく染める。
濃紺のストッキングなど、女性でもなかなか脚に通さないだろう。
しいて言えば、夜の街の娼婦たちが、派手すぎるロングスカートの裾から、
抜身の刀を抜くように、青黒く装った脚線美をぬるりとさらけ出す――そんなときくらいしか、頭に浮かばなかった。
男に咬まれるのを予期しながら濃紺の靴下を脚に通すたびに、
貴美也は自分がまるで女のように、彼のために尽くし始めているのを自覚した。

その夜貴美也が穿いていたのは、黒の薄地の靴下だった。
男はずっと、貴美也の血を求めて、事務所の間近を徘徊していたらしい。
同僚の視線を気にしながらも、貴美也は手近な公園の手近なベンチへと、すすんで腰を下ろしていった。

「どうやら、息子の血はあきらめてくれないらしいな」
貴美也はいった。
男はこたえずに、引き上げられたスラックスのすそからのぞく薄黒く染まった貴美也の脛に、執着しつづけている。
靴下もろとも脚を辱める――そんな“前戯”ともいうべき行為を、男はひどく好んでいた。
貴美也はお洒落な靴下を好んでいたが、男は貴美也の履く靴下をいたぶることを好んでいた。
劣情にまみれた舌をふるいつけられながらも、プライドだけは失うまい――そんなふうに感じていた。
その半面で。
貴美也の履いてくる靴下の柄を趣味がよいと褒めながら舌をふるいつけてくる男のために、
せっかくだから愉しませてやれ。
そんな気持ちもわき始めていた。

薄地の靴下を咬み剥がれてゆきながら、貴美也はふと思う。
きっとこいつは、女好きだ。
そして貴美也のストライプ柄の靴下をよだれに濡らしながら咬み破ってゆくときと同じくらい愉し気に、
きっと近々、学校教師をしている貴美也の妻にも挑みかかっていって、
タイトスカートのすそから伸びたふくらはぎに取りついて、
あの肌色の薄地のストッキングを咬み破ってしまうのだろう――と、想像した。
それでも良い。
失血のあまり意識が揺らぐのを心地よく感じながら、貴美也はおもった。

そう感じ始めてから、一週間と経たぬうちに。
すっかり血を抜かれた貴美也の傍らで。
あわてふためくスーツ姿の足許ににじり寄った吸血鬼は、
肌色のストッキングに包まれたふくらはぎの一角に唇を吸いつけて、
淑やかな装いの主の悲鳴を、くすぐったげに受け流していった。
息子は今ごろ子供部屋で、真っ白なハイソックスに血をあやして、気絶しているに違いない。
いや、案外と――
意識を薄らげてゆく父親の目を盗んで、自分の母の受難を目にすることで、思春期に目ざめ始めようとしているのかもしれなかった。

白いハイソックスの同級生

2022年09月10日(Sat) 00:58:09

はじめに
これも、煮詰まってしまったお話です。^^;
やはり、そのまま捨ててしまうのももったいないので、あっぷしてみます。
おひまなときにどうぞ。^^


京子さんが真っ白なハイソックスに包まれた脛を大またに、こちらに向かって駈けてくる。
背後からは吸血鬼が迫っていた。
夕べ、ボクの血を吸い取った男だった。
一夜にして身体じゅうの血を舐め尽くされてしまったボクは半吸血鬼となって、いまは隠れて徘徊する身。
でも、京子はボクのそんな境遇を、まだ知らなかった――

セーラー服の両肩に、吸血鬼の掌が伸び、やつの体重が等分にかかった。
ボクの時と同じだった。
そのあとすぐに引き倒されて首すじを咬まれ、あとはされたい放題にされてしまった――
京子さんもきっと、同じ目に遭ってしまうのだ。

なのになぜか、ボクはドキドキと、乏しくなった血液を身体じゅうに駆け巡らせて――昂奮をおぼえている。
恥ずべき昂奮だった。
ボクの血を吸い尽くした吸血鬼は、ボクを家まで案内させて、迎えに出てきた母さんのことまで、咬んでしまった。
半ズボンの下に履いていたハイソックスをぞんぶんにいたぶったその男は、
それだけでは飽き足らずに、母さんの穿いているパンティ・ストッキングまでも愉しみたいとせがんだのだ。

肌色のパンストを咬み破られながら吸血される母さんの姿に、ボクはやはり昂奮を覚えて、
穿いていた半ズボンのなか、勢いよく射精してしまっていた。
やつはきっと、京子さんの履いている真っ白なハイソックスにも欲情して、おなじ狼藉をはたらく魂胆に違いない。
なのにボクはもう、自分の彼女がセーラー服姿を泥まみれにされながら辱められてゆく光景を想像して、
すでに半ズボンのなかが窮屈になるくらい、怒張をエスカレートさせてしまっている。
恥ずべき昂奮だ。忌むべき昂ぶりだ――
ボクはそう呟きながらも、いま現実に校庭の泥のうえに引き倒されてゆく京子さんの姿に、目をくぎ付けにしてしまっていた。

「やめてっ!ああッ!」
魂ぎるような悲鳴があがったが、周囲にはだれもいなかった。
男は構わず、京子さんを抱き寄せて、首すじを咬んだ。
強烈な一撃だった。
セーラー服の肩先に赤いしずくが撥ねて、真っ白な半そでと、紺色の襟に走る白のラインをまだらにした。
やつは京子さんのショートカットの黒髪を慣れた手つきで掻きのけると、
飢えた唇を健康そうに陽灼けした首すじにぴったりと吸いつける。

ちゅうっ。

折り目正しく着こなされたセーラー服姿から、十四歳の処女の血潮が啜り取られる――
ここまで音が、響いてきた。それがぼくの鼓膜を、淫らにくすぐった。

ちゅちゅちゅっ・・・

そそられる音だった。
ボクの彼女が生命の源泉をむしり取られ、14歳の健康な血液を奪い取られてゆく光景なのに――
空っぽになった血管をただズキズキと昂らせ、胸を妖しくわななかせてしまっていた。
美味しそうな血――
そんな想いが激しく去来して、ボクはわれ知らず起ちあがっていた。

植え込みから身を起して憑かれたように突き進んできたボクを見上げると、吸血鬼はいった。
「お前の彼女の血は、旨い」と。
「そう言ってもらえて、嬉しいよ」
目を丸くしている京子さんをまえに、ボクは嬉し気に、そう答えてしまっている。
うふふふふふっ。
吸血鬼は満足そうに目を細めると、ふたたび京子さんの首すじにつけた傷口を吸った。
「ああッ――」
彼女は白目を剥いて、仰け反った。

ムズムズと疼く唇をこらえかねたように開くと、ボクは自分でも予想しない言葉を口走っていた。
「ボクにも・・・分けて・・・」
「良いだろう」
吸血鬼は気前よく、京子さんの身体をボクのほうへともたれかけさせた。
ショートの黒髪がユサッと揺れて、汗ばんだ体温がずっしりとした手ごたえといっしょになだれ込んできた。
首すじには、むざんな咬み痕がふたつ、並んでつけられていた。
恋人に対するむざんな仕打ちを呪うゆとりもないままに、
血がたらたらと流れ出る咬み痕に、わななく唇を圧しつけていった――
恥ずべき渇きが、ボクを支配してしまっていた。

渇いた唇を、ねっとりとした血潮が生温かく浸す。
黒い衝動のままに、ボクは京子さんの血を、喉を鳴らして飲みつづけた。

「タカシくん・・・?タカシ・・・!?」
京子さんはかすかに身じろぎをして、顔をあげた。
ほとんど同時にボクも、吸いつけていた首すじから顔をあげた。
「えっ・・・?えっ・・・?タカシくんまで、あたしの血を吸ってるのっ!?」
我にかえった京子さんは声を尖らせて、それから腕を突っ張って、傷口を吸おうとするボクを拒もうとした。
ボクは彼女の腕を取り除けて、なおも血を吸い、また吸った。
恋人同士のせめぎ合いを、やつはじいっと見ているだけで、どちらにも加勢しようとはしなかった。

立ち去ってゆく吸血鬼の背中を横目に、ボクは京子さんのことを強く抱きすくめて、
生前には果たせなかった接吻を、淫らに遂げてしまっている。
泥濘にまみれた制服姿のうえにのしかかって、真っ白なハイソックスのふくらはぎに唇を吸いつけて、
白のハイソックスが真っ赤に染まるまで、京子の生き血に酔いしれてしまっていた。
初恋の女を獲物にするチャンスを与えてくれた吸血鬼に、心の底から感謝をしながら、
生え初めた牙を恋人の血潮に染めて、生気にあふれたピンク色の素肌を、淫らに染め変えていったのだった。


一週間後。
ボクは吸血鬼の邸へと、京子さんを伴っていた。
並んで歩く制服姿のスカートの下。
きょうも真っ白なハイソックスのふくらはぎが、大またに歩みを進めてゆく。
先週母さんのパンティ・ストッキングを咬み破った、あの恥知らずな唇が。
京子さんのハイソックスを愉しみ尽くしてしまうありさまを想像して、ボクはズボンの中身を張りつめさせてしまっている。

これから訪問する年配の男が、自分の血液を得たいと願っていると知りながら。
「ぜひ、お連れして♪」と、彼女は手を合わせ、つま先立ちして、願っていた。
淡い嫉妬がボクの胸を刺し、いびつな焔(ほむら)をかきたてるけれど。
ボクの血液を存分に吸い取ってその身に脈打たせている彼のため、
たいせつな恋人の血を、もう一度愉しませてあげたくて、
ボクは京子さんを伴って、吸血鬼の邸を訪問する。

「どうぞ、お好きになさってくださいね」
ためらいもなく揃えて差し伸ばされたふくらはぎに、
やつは目の色を変えてむしゃぶりついていったけれど。
ボクは自分の生き血を吸い尽くされたときと同じように惜しげもなく、京子さんの脚を咬ませていった。
キリッと装われた白のハイソックスの足許に、恥知らずなよだれをなすりつけられて、
整然と流れる太目のリブをいびつによじれさせてゆきながら、ずり降ろされてゆくのを見せつけられて、
嫉妬と妖しい昂ぶりとで、干からびた血管をゾクゾクと慄(ふる)わせていた。

捧げ抜いた血潮の量が度を越して、気絶してしまった少女が、静かに瞼を閉ざした下で、
首すじにつけた傷口に舌をふるいつけてゆく吸血鬼が、
穢れを知らない彼女の血潮を淫らに変えてしまうのは、きっと時間の問題――
けれどもきっと、ボクは、彼の誘惑を妨げようとはしないだろう。
むしろ。
真っ白なハイソックスの両脚が放恣に開かれた、濃紺のプリーツスカートの奥、
未来の花嫁の純潔が汚辱にまみれてしまうのを、
目を見張って見届けてしまうだろう。

妻を喪服にするために。

2022年09月10日(Sat) 00:27:46

はじめに
だらだらと長く、煮詰まってしまいました。。
そのまま捨ててしまうのももったいないので、あっぷしてみます。
おひまなときにどうぞ。^^


夜風が虚しく、ひゅうひゅうと、吹いていた。
寒々とした気分を抱えて、空っぽもまっぽに待った身体を抱えて、わたしは夜道を歩いていた。
総身をめぐる血液を引き抜かれたあとの、虚しいような、小気味良いような記憶が、ひたひたと残っていた。
すこし前まで真人間だった記憶は、しっかり残っているけれど、。
そんなことをされては困る・・・と、たしかに訴えたつもりだったけれど。
首すじを咬まれ、暖かい血液を吸い出されてゆくうちに、気分がグッと昂ってきて。
さいごのさいごには、もっと吸ってくれ・・・全部吸い取ってくれ・・・と、懇願していた記憶も、ありありと残っている。

きょうがどういう日かも、今夜がどういう夜かも、しっかりと認識していた。
そう――今夜は自分の、お通夜だった。
勤め帰りの夜道に、吸血鬼に出くわして。
生き血を一滴余さず吸い取られたあとの、あと始末だった。

妻は今ごろ涙にくれて、自分の棺に寄り添ってくれているだろう。
けれどもその棺の中はじつは空っぽで、
わたしはこうして、渇いた喉を抱えながら、夜道を徘徊している・・・
今となっては、自分の生き血を残らず吸い取ったさえない年配男の気持ちが、わかるまでになっている。
きっとあの男は――わたしの生き血をそれは美味しく、吸い取っていったはずだから。

生き返ったようだな。
傍らで、話しかける声がした。
姿はみえなかったが、声の主がだれなのかは、すぐにわかった。
わたしの生き血を一滴余さず吸い取った、この街に徘徊する吸血鬼。
血のない身体と化したわたしは、数時間前の真人間の間隔よりも、よりいっそう彼の感覚に近いものをもっていた。
三十代の、まだ若さの宿った生き血を、たんねんに美味しそうに吸い取ってくれたことを、
今では感謝の気持ちすら抱き始めていた。
生き返ったようですね・・・
わたしは他人ごとのように、男の言い草をくり返していた。

どうだね?気分は。
男はいった。
悪くはないです。いや、普通かな・・・
わたしはこたえた。
そんなものなのだよ。
男は囁いた。
何故かその言葉に、ひどく納得してしまっていた。
そう。
普通なのだ。
生き血を一滴余さず吸い取られてしまったのに。
抜け殻どうぜんになったはずのこの身を抱えて、ふつうに夜道を歩いている。
わたしの生き血を吸い取った彼にしたって、数年前にはわたしと同じように、
その身に宿した生き血を、だれかに吸い取られていったのだろう。

むしろ――わたしの血液が、男を悦ばせたことを。
わたしは嬉しく感じ、誇りに思い始めていた。
なぜならわたしは、吸血鬼になりかけていて。
そのために、その身にじゅうぶんな血液を通わせていたころとはかけ離れて、
「彼ら」のほうへと、よりシンパシーを感じるようになってしまっていたから。

旨かったからね、全部いただいてしまったのだよ。
ヌケヌケと語る彼を相手に、
お口に合って何よりでした。
美味しく味わってもらえたなら、全部飲まれてしまっても、納得できますよ――
などと。
躊躇なく応えてしまっていた。

もう少しだけ、咬ませてくれないか。
もう・・・血は残ってないのですよね?
いや、そんなことはない。いつでも吸えるよう、少しだけ残しておいた。
それは・・・どうも・・・
吸われる歓びを感じる権利を、まだ有していることに。
ほのかに密やかな満足を感じていた。

立ち止まるわたしの両肩を、男は支えるように抱きすくめて、
あのときと同じように、もう一度わたしの首すじを咬んだ。
痛痒いような。くすぐったいような。
傷口を通して血液を抜かれる、あの無重力状態が。
ふたたびわたしの身によみがえった。

あのときのように。
すぅっ・・・と気が遠くなって、ふらふらとその場にくず折れると。
男はわたしのスラックスをたくし上げ、丈長な靴下をほんの少し引き伸ばして、
わざわざ靴下のうえから、咬みついてきた。
靴下を咬み破られる――
それはなんとも、屈辱的な仕打ちだったけれど。
わたしはむしろ嬉々として、わたしの生命を奪ったその男に、通勤用の靴下を咬み破らせていった。

ほんとはね。
わしの狙いは、あんたじゃなくて――奥さんのほうだったんだ。
わたしの血など取るに足らない――と本音を言われたような気がしたけれど。
それでもわが身をめぐる血潮をすべて捧げたことへの満足感は、損なわれなかった。

今夜――
妻は黒一色の、洋装のブラックフォーマルを装って、
スカートのすそからは、薄墨色の靴下に染まった脚を、弔問客のまえにさらけ出している。
ふしぎなものだね。
男はいった。
あれほどそそる眺めなのに、だれもあんたの奥さんにそそられたり、襲ったりしようとはしないのだから――
わしはあんたの奥さんに、黒のストッキングを穿かせて、
泣き叫ぶ喪服姿を抑えつけて、喪服のすき間から、あの白い素肌に咬みついて。
その身にめぐる麗しい生き血を、一滴余さず、吸い取ってやるつもりなんだ。
あんたはあんたの奥さんに対してそんな不埒なことをもくろんでいるわしに、力を与えるために。
かけがえのない生き血を、一滴余さず吸い取られたというわけだ。
邪まな想いにすぎないことは、じゅうじゅう承知している。
けれども、ここまでしてまでわしは、
奥さんに黒のストッキングを穿いてもらって、咬み破り辱めながら生き血を啜りたいという欲求を、こらえ切れなかったのだ。
あんたはわしに、わしがあんたの奥さんの血を吸い取ることに――同意してくれるだろうね?

どうしてわたしはその時に、
エエよろこんで・・・
などと言い添えて、
ためらいもなく頷いたりなどしてしまったのだろう?

けれどもわたしは、なんの抵抗もなく、不審感もなく、
ずいぶんと念の入ったことですね・・・などと、苦笑しつつも。
わたしの血液を飲み尽くしてしまったその男の恥知らずな喉を、なおも満足させるため。
最愛の妻の生き血を無償で提供することを、よろこんで約束してしまっていたのだった。

家内の生き血――わたしのとき以上に、美味しく味わっていただけるのですね?
わたしの問いに、彼がくすぐったそうな笑いで応えるのを。
すっかり吸血鬼の感覚になじんでしまったわたしは、ひどく好もしく感じてしまっている。


もはや真夜中近く。
弔問客はすべて、引き払ってしまっていた。
ふつうなら、夜通しの蠟燭を守るために、ひとりやふたり、代わりがいてもおかしくないのに。
だれもかれもが、引き払っていた。
その夜に訪問客がいて、
妻は、彼女の夫の生命を吸い取った男を相手に、
その喉の渇きを飽かしめるために、
われとわが身をめぐる血潮を捧げ抜いてしまうのだと――だれもがわかっていたのだから。
きっとあの男のために、みんな気をきかせたのだろう。
あの方のお愉しみを、じゃましてはいけない――
だれもがそう言い交わして、喪家をあとにしたのだった。
そう。
男の弔問客の半数は、自分の妻や娘の生き血を、彼のために提供してしまっていたのだし。
女の弔問客の全員は、自身の血液を吸い取られ、彼のための娼婦になり下がっていたのだから。

夫婦で赴任したこの街は、
古風なたたずまいの裏側に、ひどく変わった風習を押し隠している。
喉をからからに渇かせた吸血鬼のために、
この街の人たちは、自分自身や家族の血液を、無償で提供している。
ふつうは、生命まで断たれるほどには吸い取られないはずが。
わたしが一滴余さず血液を吸い取られてしまったのは、いったいどうしたことなのだろう?
その問いに、男はすぐにこたえてくれた。
旨かったのさ。
男のこたえは、単純明快だった。
わたしはなぜか、素直に納得してしまっていて。
――それは嬉しいですね。
とっさにそう、こたえてしまっていた。

そういえば。
路上に抑えつけられてガブリと咬まれたそのときに。
ワイシャツに血を撥ねかせてしまいながらわたしは、男の貪欲さに辟易としていた。
チュウチュウ、キュウキュウと、あからさまな音をあげながら。
男はわたしの血を、さも旨そうに、啖(くら)い取っていった。
生命の危険をひしひしと感じながら。
男がわたしの首すじに咬みつき、スラックスを引き上げて靴下の上からふくらはぎに咬みついてくるのを、
拒みもせずに、むしろすすんで、靴下を咬み破らせてしまって、
三十代の働き盛りの血液で、やつの喉を潤すことに熱中しきってしまっていた。


喪家となったわたしの家は、
棺の置かれた部屋だけに灯りが点されていて、
妻は身体の線がぴったりと透ける漆黒のワンピースに身を包んでいて、
わたしの死を悲しんでいた。

妻の総身をめぐる血潮は――
彼に吸い取られるために、脈打っていた。

ごめんくださいね。
男はぞんざいに、妻に声をかけると、
妻はわたしの姿が目に入らないのか――そこでわたしは、自分が幽霊なのだと自覚した――、
目を見張って、自分の夫の仇敵を見つめていた。
相手の素性も、自分の夫の体内の血液を一滴余さず楽しんだことも、よくわかっている顔つきだった。

あの・・・あの・・・
妻は口ごもりながらも、夜更けの弔問客に応対しようとした。
けれども男の意図した応対は、彼女の予想よりもずっと、淫靡で露骨なものだった。
わかっていると思うが――
男はいった。
わしの身体のなかにだんなの生き血がめぐっているうちに、あんたの生き血も搾り取ろうというわけさ。
妻は立ちすくみ、蒼白になった。

そんな・・・なんてことを仰るんですか・・・
妻は怒りと恐怖で蒼白になって、立ちすくんでいた。
殺すつもりなどないよ。
男はいった。
ただ、あんたの熟れた総身にめぐる血潮を、舐め尽くしてしまいたいだけなのさ・・・
露骨な舌なめずりは、淑やかに装われた黒のストッキングの足許へと、向けられていた――

きゃあっ。
妻はわたしの棺のまえ、棒立ちに立ちすくんで、
早くも首すじを、咬まれていた。
わたしのときと、まったく同じ経緯だった。
漆黒の喪服のブラウスに、赤い血潮を撥ねかせながら。
ゴクゴクと喉を鳴らせて飲み味わわれていった――

夫の生命をいともむぞうさに断った男に、
有無を言わさず、つかまえられて。
夫の首すじを咬んだ牙に、潤いを帯びた熟れた素肌を食い破られて、
わたしの時と同じように、
チュウチュウ、キュウキュウとあからさまな音を立てながら、
妻の生き血は、貪られていった――

倒れてしまうと取り返しのつかないことになる。
それを察していたのだろう。
黒のストッキングの脚を、精いっぱい踏ん張りながら。
妻は無作法な吸血に、耐えつづける――
薄地のナイロンに艶めかしく透けるピンク色の血色が、余さず舐め尽くされてしまう危機に瀕していた。


飢えているんだね?
わたしはいった。心と心で、妻の耳には届かない会話が成り立っていた。
ああ、飢えている。
男はこたえた。
そう――きっと。
あの淫らな喉の渇きを潤すのには、わたしの血だけでは、足りなかったのだろう。
家内の生き血は、美味しいのかね?
わたしはいった。
旨い・・・しんそこ旨い・・・
男はこたえた。
それは良かった――
わたしは思わず、呟いていた。
どうせ飲み味わわれてしまうのなら、美味しい――そういってもらったほうが、はるかに嬉しい気がしていた。


はぁ、はぁ・・・
ふぅ、ふぅ・・・

失血のあまり、妻は肩で息をしていた。
華奢な身体を包む喪服を、めいっぱい仰け反らせて。
自分の夫の仇敵を相手に、
喉をカラカラにした吸血鬼を相手に、
それはけんめいに、かいがいしく。
好むと好まざるとにかかわらず。
妻は我とわが血潮を、無償で提供しつづけていった。
それがわたしの目にはなぜか、妻に対する同情を忘れさせて、
むしろ――自分の血を吸い取った男のために、
旨そうだな。
よかったな。
人妻の生き血にありつけて、ほんとうに良かった。
家内の血が口に合って、ほんとうに良かった。
忌むべきはずのそんな想いを、ごくしぜんに、ふくらませていた。

ひたすら眉を寄せ、迷惑そうに顔をしかめながら、
自らの血液を、無償で提供しつづける妻のことを、
がんばれ。がんばれ。
応援してしまっている自分がいた。
妻はけなげに振舞って。
夫の生命を奪った男の喉の渇きを飽かしめるために、
三十代の人妻の血潮を、くまなく舐め尽くされていった。

男は、妻の首すじだけでは、満足しなかった。
スカートのすそから覗く、黒のストッキングに染まったふくらはぎに、もの欲しげな視線を這わせたとき。
妻は男の欲求をすぐに察して、ひどく戸惑い、うろたえながら。
いけません、よしてください。恥ずかしいです。お願いですからと、懇願した。
もとより――男が妻を放すはずはない。
あわてふためく妻を、畳のうえに抑えつけて。
薄墨色に染まったふくらはぎに、欲情に滾る唇を吸いつけて。
ヌメヌメ、ネチネチと、いたぶっていった。

わたしを弔うために装った、黒のストッキングを、
ふしだらに波打たせ、皺くちゃにされながら。
妻は顔をしかめて、男の非礼を咎めつづけた。
むろん、男は妻の叱声に、いっそうそそられたかのように。
清楚な黒のストッキングの足許に欲情しながら、
よだれを帯びた唇と、劣情をみなぎらせた舌をなすりつけて、
わたしの靴下を濡らした時よりも、はるかにしつように、
ぬらぬら、ネトネトと、だらしのないよだれで、薄地のナイロン生地を、濡らしていった。

やがて、こらえかねたように――
ずぶり・・・。
男の牙は、妻のふくらはぎの、いちばん肉づきのよいあたりに突き立って。
黒のストッキングを咬み破りながら、
渇いた喉を、不埒な欲求を満たすために、
キュウキュウ、チュウチュウと、あからさまな音を洩らして、
妻の生き血を、貪婪な食欲もあらわに、啜り取っていった――

夜明けが近くなったころ。
失血のあまり肩を弾ませていた妻は、
あぁ・・・と、絶望のうめきを洩らす。
そう。
有夫の婦人が吸血鬼に襲われると。
ほぼ例外なく、凌辱を受けてしまうということを。
妻は身をもって、思い知らされてしまうのだ。

男がわたしの生命を奪ったのは、
妻に喪服を着せて、黒のストッキングを穿かせるため――
喪服姿の三十代の未亡人を、辱め抜いて征服するため――
たったそれだけのために、わたしは体内の血液を一滴余さず吸い取られてしまった。

わたしが襲われた夜。
総身をめぐる血潮を、ほとんど舐め尽くされかけたとき。
わたしは彼の、妻に対するけしからぬ意図を告白されて、
それでももはや、自分の生命を手中にされてしまったわたしは、
きみの奥さんを凌辱したい。
わたしの血潮で牙を染めながらそう言い募る男をまえに、
わたしは一も二もなく、賛同してしまっていた。
わたしの血がお気に召したようなら、嬉しいので全部吸い取ってくださいと、
懇願の言葉さえ、口走ってしまっていた。
お前は自分の妻を、わしに犯されたいのだな?
念を押すような囁きを、毒液のように鼓膜に吹き込まれながら、
わたしは強く、頷き返してしまっていた――
はい、家内のことを、あなたに辱めていただきたいと、本気でおもっています・・・


三十代の人妻の生き血で、
引き抜かれた牙を染めながら。
妻はいつしか、吸血される行為に、惑乱していた。

わたくしを欲しくって、主人を殺めたとおっしゃるのですね。
とても嬉しいわ。主人を殺してくれて。
そこまでして、わたくしを欲しがるなんて。
女冥利に尽きることですわ。
死ぬほど辱められたいわ。
わたくし、貴男の奴隷になるわ。
主人の遺影のまえで、主人のことを裏切り抜いてしまいたいの・・・


喪服のスカートの奥を、イヤらしくまさぐられながら。
妻はもう、淫らな昂ぶりを隠そうとはしていない。
咬み破られたパンストを、唯々諾々とずり降ろされて。
薄いショーツ一枚で隔てながらも、淫らな舌に股間を舐め尽くされて。
しまいにはそのショーツさえ、自分の手で引き裂いて。
妻はゆっくりと、脚を開いてゆく――
わたしのことを弔う気がまだあるかのように、
片脚だけ通した黒のストッキングは、ふしだらな皴を波打たせながら、
ひざ小僧から脛へ、脛から踝へと、じょじょに剥ぎ降ろされてゆく。
赤黒く逆立った一物が、
漆黒のスカートの奥に、もの欲しげに侵入していって。
咬まれたときと同じくらい、淫らに眉を翳らせながら。
荒々しい上下動に、腰の動きを合わせていった。
わたし以外の精液を、初めてその身に受け容れて。
淑やかな喪服姿を、好色な腕に撫でつけられて、堕とされてゆく。

慎ましやかで、淑やかだった妻。
そんな彼女は、もういない。
いまは、わたしの前と自覚しながら、身をおののかせつつ、辱めを悦ぶ女。
守り抜いてきた貞操を、惜しげもなく泥に塗(まみ)れさせ、
わたしの名誉を、ためらいもなく貶めてゆく。
それを見守るわたし自身も。
貞淑な妻が、娼婦に変えられてゆく有様を。
嬉々として、見守りつづけている――


あら、あなたいらしたの?
妻はふと我にかえって、わたしを見やる。
好色な腕の中に、囲われるように抱きすくめられた格好のまま。
わたしを裏切る行為に、腰の動きをひとつにしながら、
淫らな吐息に、息弾ませながら、
うわべだだとお互いにわかり抜いている、見え透いた謝罪を、くり返す。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
裏切っちゃって、ごめんなさい。
よりにもよって、あなたを弔うお通夜の席で、喪服を着崩れさせてしまって。
あなたの生命を奪った男の、わたくし愛人にしてもらえるなんて。
思いもよらなかったけれど――
いまはもう、この人の名字で呼ばれてみたい気分なの。

わたしはわれ知らず、唇をわななかせながら。
忌むべき祝福を、口にしてしまっている。
きみがぼくの親友に心を許してくれて、嬉しく思っている。
彼には、若い女の生き血にありつくことができたのが、自分のことのように嬉しいんだ。
最愛の妻の生き血が口に合うということが、半吸血鬼となったいまのわたしにとって、どれほど嬉しく誇らしいか、とても表現しきれない。
きみを奪(と)られてしまうのは、もちろん悔しいことだけれど――
当家の名誉を泥まみれにしてしまうことも、もちろん残念には違いないのだけれど――
それでもきみが彼に愛され抜いてしまうことが、ぼくにはとても、誇らしいんだ――


数か月が経った。
わたしは奇跡的に蘇生したとして、周囲によろこばれながら、自宅に復帰した。
夫婦の生き血を餌食にしたあの男は、わたしを生きながらコキュにして弄びたくて。
辱め抜かれる愉しみに目ざめたわたしも、
夫を侮辱する歓びに目ざめた妻も、
彼の恥知らずな意図に、賛同していた。
彼女はわたしの苗字を帯びたまま、不貞を悦ぶ妻として知られるようになっていた。

最愛の妻の貞操を無償でプレゼントした代償に、わたしは総身の血を抜かれて、今度こそ吸血鬼になって――
母や、妹や、兄嫁たちを手当たり次第に襲っては、その夫たちの好奇の視線を浴びながら、弄ぶ歓びに目ざめていた。