淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
貞操公開の夜。
2022年11月15日(Tue) 21:25:11
今夜の貞操公開は、安岡さん宅と永村さん宅が当番です。
安岡さん宅は、奥さん、お母さん、長女のルミ子さん。次女の初音さんはまだ年端がいかないので勘弁してほしいということです。
永村さん宅は、奥さん、長女の小春さん――それに次女の深雪さんが今回からOKをもらえました。
おぉ・・・という声にならないどよめきが、一座のあいだから洩れた。
説明は淡々と、続けられる。
永村さん宅では、長男の嫁の奈加子さんも、前回に引き続きOKです。
ご両家とも、着衣のままでの応接もご諒解が取れています。
ご家族全員、お相手の男性の精液でスカートのすそを浸したいとご希望です。
ひと晩ごゆっくり、楽しまれますように。
自分の苗字を「永村さん」とわざわざ他人行儀に読み流し、感情を殺してすべてを棒読みにしたわたしは、
みるからに好色そうな、自分よりもずっと年配の男たちの面々の間からかもし出される猥雑な雰囲気を、耳で目で確かめながら、
彼らの都合に沿ったわたしの言葉の影響が彼らの間に好もしく拡がるのを、忌まわしくも妖しい気持ちで眺めていた。
好奇の囁きがひと言、ふた言洩らされるのが、敏感になった鼓膜に、刺激的に突き刺さる。
安岡さんのご主人には地酒のご用意を――と言いかけたわたしの前に立ちはだかった凌蔵さんは、
「わかってるって」とこたえながら、わたしの目の前に一升瓶をどかんと置いた。
都会育ちのよそ者たちが、この村にとけ込むために――
自分の妻を、母親を、娘を、村の顔役たちを満足させるために差し出す苦痛を和らげるため、紛らわせるため、
彼らは当地のいちばん佳い酒を用意して、自分たちの性欲を満たすために尽力してくれた善意の持ち主に振る舞うのが習慣となっている。
さいしょは車座になって、いっしょに飲んでいる者たちは、やがて一人抜け二人抜けて、目ざす家へと足を向ける。
許された歓びを予期するあまり、自分の脚が三本になったような錯覚に囚われながら。
妻子を汚される夫たちが、酒を喉に流し込む間に、
妻や娘や母親たちは、順ぐりに。
彼らの濁った精液を、その身体の奥底にまで、注ぎ込まれてゆく。
そしてやがて、夫たちが酔いにその身を傾け、泥酔に堕ちてゆくうちに、
彼女たちまた、白い脛を放恣に開き切って、屈辱を愉悦へと塗り替えられて、堕ちてゆく――
淫らな風習を持ったこの村では昔から、妻を取り替え娘を取り替えては犯すことで、狭い世界での懇親を深めつづけていた。
そのうちの一人がにわかに都会で会社を興し、成功して。
格別の昇進を果たしたいもの、事情があって都会に住みつづけることができなくなったものを対象に、
自らの出身地に作った事務所への転勤を奨励するようになった。
過疎地である彼の出身地では、若い女がまれになったから、
社員の妻や母親、娘たちを、いまなお故郷に住みつづける男たちの欲求のために、還元しようとしたのだった。
かつて母親を相手に筆おろしを果たし、姉妹や妻たちを分け合い、娘たちまで犯し合ってきた昔馴染みたちのため、
若い女を供給することを、隠れた事業のひとつに据えこんだのだった。
出世を目当てに妻子を提供すると割り切った男たちは、
「ここでしばらく我慢すれば、あとはずっと贅沢できるのだから」とそそのかし、
都会に住まうことを憚らなければならずに流れてきた者たちは、
「ここで暮らすには、そうするしかないのだから」と言い含めていた。
酔いが回ってきたころに。
同僚の安岡の家に向けて、真っ先に駆け出していった男が戻ってきた。
白髪頭を振り乱して、昂った名残りに、まだ顔を火照らせて。
はだけたワイシャツも、着崩れしたズボンもそのままに、裸足でずかずかとあがり込んできた。
安岡宅に乗り込んだときにも、そうしたように。
「安岡の女房をいただいてきた。ええ女だ。娘も母親似だ。下の娘もいずれ、楽しみじゃのー」
こんなふうに責めたら、ああなりよった――と、ひとしきり自慢話が続き、
そのあとに随うように、どっとはやす声があがった。
一座の関心は、禁忌になっている下の娘に集中した。
「下の娘はなんつった?いくつだぃ?」
「初音っつうたな。14歳じゃそうな」
「エエ年ごろぢゃわい。食べごろぢゃわい」
「まったくぢゃ。安岡のやつも、出し惜しみしおつて」
彼らの舌鋒は、口々に安岡への攻撃を集中させた。
「それに引き換え、永村さんは気前がエエのう。わしらのことをちゃんとわかって下さっていらっしゃる」
彼らが妙にわたしに対して礼儀正しいのは、きっと目いっぱいの振る舞いを許容しているからだろう。
振る舞われる酒も、当地の一級の酒だった。
いまごろ、妻の美奈(48)は、長女の小春(22)は、今ごろなん人めの男に組み敷かれているのだろうか。
今夜が初めての「公開」となる下の娘の深雪(17)は、どんなふうに犯されているのか。
昨晩村の長老相手に処女を喪ったばかりの初々しい身体も、一人前に苛まれているのだろうか。
息子は――いまごろ家でどうしているのだろう?
初めて嫁を抱かれたとき、そして、自分の母親まですぐ傍らで犯されたとき、
がんじがらめに縛られて、怒りに顔を赤らめながらも、ズボンの奥の怒張を、こらえかねているのだろうか。
「ま、一杯飲みなせぇ」
傍らの男に注がれた酒を苦々しく口に含みながら。
覗きたい。その勇気がない。それでも気になる――
そんな自問自答を、今夜もくり返しながら、夜が更けてゆく。
あとがき
比較的短いですが、どうにも不徹底です。
自分の妻子の運命を決める言葉を吐く主人公の気持ちを、もっと深彫りする必要がありそうですな。
^^;
う――ん。(近況)
2022年11月05日(Sat) 15:42:03
どうもこのところ、低調ですね。。。 (-_-;)
構想はあっても、途中で力尽きちゃうんですよ。。 ^^;
先ほど長い長い3連作をあっぷしたのですが、
「長いのはすべて駄作?」と思いたくなるような出来栄えです。。
描きたいことはいろいろなきにしもあらずだったのですが。。。
ヒロインさんはかなり、お気に入りなんです。
こういう質素系な乙女は好みです。
そんな人がチラとだけでも艶や色気をかもし出してくれるといいな・・・という想いで取り組んだのですが。。。
どうぞ長い目で見てくださいませ。 m(__)m
みずきの結婚
2022年11月05日(Sat) 12:11:06
上背の乏しい、ずんぐりとした背格好のOLだった。
遠藤みずきという名のその彼女は、OL2年生。
いつも気難しそうなしかめ面をして、机に向き合っている。
仕事はできるのだが、とにかく地味。質素。
千鳥格子のベストにボウタイつきの白のブラウス、黒のスカートという制服を地味に着こなして、
他の多くのОLたちが、うっすらと光沢を帯びたストッキングで競うように脚を彩るなかにいて、
いつも見映えのしない野暮ったい肌色のパンストに脚を通していた。
お洒落な女のあいだでは、映画女優が身に着けるようなガーターストッキングを穿く子もいるときいている。
だがきっと、遠藤みずきの履いているのは間違いなく、国産の量産型の安価なパンストに違いなかった。
その彼女の、太くてむっちりとした脚周りを、薄地のパンストが張りつめたように包んでいるのを、
同期入社になる笹森隆一は、われ知らずうっとりとした目で追っているときがある。
太っちょな女は男にモテない――遠藤はそう思い込んでいるのだろうか?
彼の母親は恰幅が良く、そのせいか隆一には豊かな肢体の持ち主に対する憧憬こそあれ、偏見はまったくない。
もしかしたら安産型かもしれない――と、時折彼女のしっかりとした足許を、密かに盗み見てしまうのだった。
老舗と言われる会社ではあったが、大株主である本家は、途方もない田舎に暮らしているという。
隆一の入社したその会社には、本家である創業者の地元の出身者が、多く採用されていた。
とはいえ、なんの変哲もない一般企業であったから、都会生まれの隆一には創業者の出身地など、たいした意味を持ってはいない。
けれども――気になるあの遠藤もまた創業者と同郷だと聞くと、やはり関心を持たないわけにはいかなかった。
うわさでは、その街は遠い以前からずっと、吸血鬼が棲んでいるという。
たいがいの住民たちは、吸血鬼に妻や娘を逢わせてうら若い生き血を吸わせ、
なかには吸血鬼を家庭に受け容れて妻や娘を犯すことを許容しているものすらいるという。
夢のように現実味のない話なので、隆一はそんなうわさは無視していた。
けれども、遠藤みずきに対する関心が日を追って深まるにつれ、そうしたうわさにも無関心ではいられなくなっていた。
はたして遠藤みずきは、吸血鬼に遭っているのか?
遭っているとしたら、それはいつからのことなのか?
聞けば、彼らは上品に装われた女たちの脚に目がないという。
だとすると――遠藤みずきもまた、通学用のハイソックスやストッキングを、吸い取られた血潮に濡らした過去もあったのだろうか?
あの太めの脚にとおした質素な肌色のストッキングを、彼女はふしだらに剥ぎ堕とされたりしているというのだろうか?
どういうわけか。
ズキズキとした嫉妬心に似たものが、まるで雷をはらんだ黒雲のようにむくむくと、隆一の脳裏に広がっていった。
ある飲み会の帰り、隆一は普段は付き合わない三次会にまで合流していた。
すでに、同僚の若手社員たちは三々五々散ってしまって、周囲にいるのは古参の年配社員ばかりだった。
けれども彼らは、そんな隆一の存在を苦にするでもなく、隔てなく杯を酌み饒舌な世間話に興じていた。
やがてその一座からも、一人また一人と人が減っていき、
いつの間にか隆一の隣には、古崎という50年配の社員が一人、まだ未練がましく最後の一合瓶をかざしていた。
「そろそろあがりますかな」
古崎がそういうと、隆一はふと、彼が創業者一族と同郷だということを思い出した。
ふと、思いもしない言葉が、口を突いて出た。
「遠藤みずきって、どういう子なんですか?」
「みずきちゃん?」
酔眼を少しだけ見開いて、古崎は応じた。
「あー、地味だけどいい子だよね。嫁にもらうには向いたおなごだと思うよ」
古崎はざっくばらんにそういうと、
「なんだ、みずきちゃんに気があるのか?なんなら橋渡ししてやろうか?」
と水を向けてきた。
渡りに船だった。
「あの人、付き合っている男の人とか知っていますか?もう決まった人がいるのかな――って」
「うぅーん・・・」
古崎は、遠くを見るような目になった。
「そりゃ、本人に聞くのが一番よかよ」
どこの方言かわからない言葉を口にすると、ほんとうに酔いが回ってきたのか、古崎は黙りこくってしまった。
「みずきちゃん、ちょっと悪いがな、笹森くんといっしょに、深山壮(みやまそう)さんまで使いに行ってくれんかね」
古崎がきのうのことはまるで忘れたような顔をしながら、
いつものように仏頂面を決め込んで机に向かうみずきに不意の依頼を投げたのは、果たして偶然だったのか。
隆一の運転する社用車にみずきが同乗し、ふたりはお得意先である深山壮へとむかった。
ただし、その深山壮というお得意先との取引内容は、隆一もよく聞いてはいなかった。
助手席に座ったみずきに、いつものソツのない口調で「なにか聞いてる?」と問いかけたが、
「行けばわかるそうです」と、いつもの無色透明な声色が返ってきただけだった。
ふつうなら。
社の女の子との車の出張なんて、軽口をたたいて楽しいはずなのに。
みずきは怖い顔をしてじいっと押し黙っているし、隆一も彼女のことをヘンに意識して、いつもの軽口が上ずってしまうのだった。
深山壮は、都会からは車で半日もかかる、かなりの郊外にあった。
名前の通り、背後に山林を抱え、ツタの絡みついた古い洋館は、どれほどの年月を経てきたものかというくらい厳めしく映った。
「きみは来たことがあるの」
隆一が聞くと、みずきはなん度かあるとこたえた。
大きな扉がきしみながら開かれると、扉の向こうには八束と名乗る初老の男が佇んで、丁寧に二人を招き入れた。
八束は隆一をキラリと光る瞳で見つめたが、隆一は彼の視線に気づかなかった。
結局その日は、深山壮で昼食をとっただけでおわった。
しかし、しきりと会話に水を向ける隆一の熱意が伝わってか、寡黙なみずきもぽつりぽつりと自分のことを話し始めて、
彼はその夜にみずきを彼女の行きたいというバーに誘うことに成功した。
みずきにバーなどおよそ似つかわしくなかったが、隆一はあえて理由を尋ねず、彼女の言に随うことにした。
「きみは結婚したいと思う相手はいるの?」
単刀直入な隆一の問いに、みずきは相変わらずのポーカーフェイスだった。
聞こえていないのか?と思うほどの無反応に隆一が少しうろたえると、みずきはいった。
「言おうかどうしようかと思ったんだけど――」
実は、付き合っている彼氏がいる――そういわれたらおしまいだ。
隆一の脳裏にそんな不吉な予想がよぎったとき。
みずきは意外なことを口にした。
「笹森くん、吸血鬼の存在って信じますか?」
「え・・・?」
「いるんです。じっさいに」
「・・・」
「あたし、そのうちのひとりに、高校生のころから血を吸われています」
「え・・・」
「死ぬほど吸い取られることはないけれど、なん度か気絶したことがあります」
「・・・」
「信じられないですか」
「いや・・・そんなことはない。みずきさんの言うことなら信じます」
それはやはり、あなたが処女だから・・・?と言おうとした刹那、みずきは裏腹なことを口走っていた。
「その方にあたし、処女を差し上げました」
「えっ」
隆一は仰天した。
少なくとも彼の知るみずきはごく控えめで物堅い娘なので、自分からそのようなことをあからさまに言い出すタイプではなかったから。
「これからもきっと、抱かれつづけるし、あたしもお慰めしたいと思っています――たとえだれかと結婚したとしても」
さいごのひと言は、声色は低かったが、その分固い決意が感じられた。
「八束さんだね」
隆一は、単刀直入にいった。
みずきの瞳に、驚きの色が広がった。
遠藤と書かれた表札は、さいしょのころに比べるとかなり古びてはいたものの、
まだ誇らしげに高々と、門柱にいかめしく掲げられていた。
その家名が汚辱にまみれたものになっているなど――とても信じられないくらいに、それは立派なお屋敷だった。
品の良い初老の紳士である遠藤氏は、自分の娘の婿になりたいという隆一を、丁寧に邸内へと導き入れてくれた。
「でも、先客がおりますでな。貴方のお相手はそのあと――ということになりますでの」
淡々と語るその口ぶりからは、これから妻を犯される男の悲哀は、なにひとつ感じられない。
「様子が気になるときは、いつもここからこうやって、のぞき見することにしておるのです。
でも二人とも、たいそう機嫌よくお相手を務めては、たんと悦ばされてしまいますでな。
わたくしなどはもう慣れましたが、それでも家内をあのように愛し抜いていただけるのは、
夫として嬉しいことだと思うようにしておるのです」
遠藤氏が指さしたふすまのすき間からは、隣室のようすが手に取るように見て取れた。
地味な薄茶のスーツを着込んだみずきの母親に、
同じくらい地味な会社の制服であるねずみ色のジャケットを身に着けたみずき。
ふたりとも、神妙な顔つきで正座をしていて。背後にまわった八束のために気持ちを集中させているようだった。
八束はまず、みずきの母親の背後に近寄ると、彼女のうなじをつかまえた。
そして口の両端から牙をむき出しにすると、がりりと咬んだ。
黄ばんだ犬歯が象牙色の皮膚に食い込んで、赤黒い血潮がビュッ・・・と潤び出る。
「真緒や・・・」
遠藤氏が、妻の名を呼んだ。
真緒夫人は、肩先に撥ねた血潮には目もくれず、ひたすらに目を瞑り、強欲な吸血に耐えている。
「まず母親が、手本を見せることになっておりますでな。なので、家内のほうがいつも先なのです」
遠藤氏は、なおも淡々とした口調を崩そうとはしない。
自分の愛妻の体内をめぐる血液が、チュルチュルと人をこばかにしたような音を洩らして渇いた喉に吸い込まれてゆくのを、
じいっと凝視するばかりだった。
「つぎは、娘の番ですじゃ」
遠藤氏の枯れ切った声色の矛先が、自分の恋人に向けられたのに、隆一はゾクッとする。
みずきもやられてしまうのか?
彼女の母親と同じように、あのうら若い身体から、血潮を抜き取られてしまうのか?
いや、そんなはずはない。そんなこと、あってはならない――
隆一の想いは、虚しかった。
母親と同じ経緯でみずきもまた首すじを噛まれ、ブラウスに赤黒い斑点を拡げてゆく。
ふたりが失血のあまりまろび伏すと、八束は容赦なく、二人の足許を狙った。
さいしょに真緒夫人の足許が狙われた。
男は好色な唇を、ストッキングのうえから真緒夫人の脛に這わせてゆく。
こげ茶のスカートにはあまり合わないねずみ色のストッキングがねじれて引きつりながら、チリチリと引き剥がれてゆく。
娘と同様倹しげで、見映えのしないながらも気品をたたえた目鼻立ちが、悩ましい翳をよぎらせた。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
リズミカルな音を立てて、真緒夫人の血潮がふたたび吸い上げられてゆく。
彼女の顔色は明らかに貧血の症状を呈していたが、夫である遠藤氏は制止する気振りすら見せず、
真緒夫人もまた、その色褪せかけた頬に、自分の吸血相手に少しでも豊かにわが身をめぐる血潮を与えたい――という意思をありありと滲ませていた。
「みずきの足許はよう狙われたもんです。
あの子も健気に尽くしよるので、八束殿にはたいそう愛おしがられておるのです」
見慣れた野暮ったい肌色のパンストが張りつめるふくらはぎに、八束は母親の血に染まった唇を圧しあてる。
ぬるり・・・ぬるり・・・
卑猥な舌が、みずきの足許をヌメヌメと這いまわる。
がちがちと歯の根が合わなくなる心地に耐えながら、隆一はみずきの受難の光景に目を凝らした。
喉がからからになっている。
なんという不埒なやり口だろう。なんという恥知らずな仕打ちだろう。
けれどもみずきは、父親の言うとおり、眉を軽くひそめたまま、
ストッキングに装う足許を、恥知らずな凌辱にゆだねてしまっている。
しっかりとした肉づきのふくらはぎの周りに張りつめた薄地のナイロン生地がブチブチとはじけ散ってゆく有様に、隆一は思わず失禁した。
「ああ・・・」
遠藤氏がしんそこ悲し気な声色になったのは。
女ふたりの生き血を吸い取って精を増した男が、彼の愛妻のうえに欲情もあらわにのしかかったためだった。
「真緒・・・真緒や・・・えぇのぅ、似合いの殿方じゃ。
可愛がってもらうがええ、誰が何と言おうと、お前は三国一の嫁御じゃ。
長年わしに尽くしてくれた褒美に、ときめく恋に身をゆだねるのじゃ・・・」
老人の切れ切れな声色に応えるかのように、真緒夫人はのしかかってくる逞しい肩に細腕をまわし、
力づくで圧しつけられてくる唇に、薄い唇で精いっぱい応えようとしていた。
こげ茶色のスカートを揺らしながら、真緒夫人は三度も果てた。
引き抜かれた一物から滴る粘液が、ボトボトと畳のうえに滴り落ちた。
妻を犯した淫らな粘液を、このあと老人はくまなくふき取るのだという。
それがこの家のあるじの役目なのだと――
「あなたに、それがよう勤まりますかの」
遠藤氏は穏やかに目を細め隆一のほうを窺った。
無理なさらんでええのですよ――と、その眼は語っているようだった。
次はいうまでもなく、みずきの番だった。
グレーのジャケットを脱がされて、千鳥格子のベストと黒のスカート姿をあお向けにされて
あの太い脛を、自宅の畳のうえに横たえている。
男はもういちど、みずきの脛を愛おしげに舐めた。
脛だけではなく、内ももも、太ももも、ひざ小僧も。
脚の輪郭をなぞるようにくまなく、好色な唇や舌を、破れ果てたパンストの舌触りをなおも愉しむように、なぶり抜いてゆく。
男の唇が、みずきの首すじを吸った。
ああ――
みずきが犯される。みずきが汚される。
丸顔に団子鼻、薄い眉に細くて楚々とした目じり。
あまり美しくない容貌に、それでも初々しい翳をよぎらせて、
かつては野暮ったく厚ぼったい黒のタイツに包んでいた足許に、
嬲り抜かれ剥がれ落ちた肌色のストッキングをまだからみつかせて、
静かに足摺りをくり返してゆく。
切なげにくり返される足摺りは、婚約者のまえで犯される悲哀を示すのか。
それとも、未来の花婿が受け容れた情事を、ひとりの女として悦び抜くためなのか。
かりに後者でもかまわない――と、隆一はおもった。
俺はこのさして美しくない、太い脚と質素な装いをたしなむ女を、妻にする。
彼女の純潔ははるか以前に奪われて、婚礼を控えたいまもまた、その身を淫戯にゆだねようとしているけれど。
俺はこの人を妻にする。
笹森夫人のまま犯され辱め抜かれる彼女を、愛し抜く。
さいしょのうちはひたすら忌まわしく、早く過ぎてほしい刻だったはずなのに。
夜通し愛し抜かれる婚約者の姿から目を離すことができず、ひたすらに昂りつづけてしまっていた。
街で行われる婚礼に、礼装に身を包んだ笹森家の面々が、一列となって入場する。
隆一の母は、そのふくよかな身から、夫の目の前で生き血をたっぷりと引き抜かれ、三人もの吸血鬼の輪姦に身をゆだねていた。
隆一の父は、自分の妻を犯した吸血鬼と意気投合して、三人にそれぞれ、隆一の兄嫁、姉、妹を引き合わせてしまっていた。
隆一の兄は憤慨しながらも、自分の愛妻が辱められるあで姿から、弟と同じように目を離せなくなってしまい、
姉も妹も、それぞれの婚約者を目の前に、競うように純潔を散らしていった――
華やかな礼装のスカートの裏を、夫ならぬ身の粘液で濡らした女たちは、
いつこの街に移住しようか――と、そればかりを心待ちにしているのだった。
娘と妻を、吸血鬼に捧げて・・・
2022年11月05日(Sat) 04:33:25
濃い緑色のハイソックスに浮いた太めのリブが、豊かなふくらはぎをなぞるように流れていた。
はた目には太い脚としか映らないかもしれないが、八束にはなによりもセクシィに見える。
この制服を考案したデザイナーは、採用した名門校は。
折り目正しく着こなしたはずのこの制服がひとたび着崩されたとき、
こんなにふしだらな風情を醸し出すことを意識していただろうか。
制服の少女が出歩いてはいけない刻限の、夜更けの街灯を照り返すハイソックスのリブが、
こんなにも淫靡に照り輝くことを、知っているのだろうか――
たった今処女を喪失した少女は、薄目をあけて、悲鳴のひとつ、うめき声の欠片さえ口から洩らさずに、
スカートの内側を初めての血で濡らしている。
滴る血潮は太ももを伝い落ちて、ハイソックスのゴムにまでしみ込んでいた。
リブをくしゃくしゃに折り曲げながら、八束はみずきの足許から、ハイソックスを抜き取ってゆく。
今夜の記念、戦利品としてせしめるつもりなのだ。
片脚、もう片脚・・・と、手を緩めずに、容赦なく、制服の一部を剥ぎ取っていった。
それから少女の身体を仰のけると、ふたたび首すじに唇を這わせ、
這わせた唇を、おとがいから少女の唇へとすべらせてゆき、
自身の分厚い唇で覆い隠すように、小ぶりで控えめな少女の唇を呑み込んでいった。
かすかな吐息を洩らしながら、少女は初めて切なそうな顔をして、男の口づけに応じていった。
裸足になったつま先は、芝生のうえをなん度も足摺りをくり返して、
白い指先が掘り返した泥にまみれていった。
合格するまでは、駄目。
みずきの意思に八束はしたがい、合格発表の帰りを待ち伏せて結果を聞くと、
否応なく公園に引きずり込んだのだ。
いちどだけでは、嫌。
みずきの希(ねが)いを、八束はかなえた。
少女の下校途中を毎日のように襲い、ある時は公園に引き入れ、深夜になれば路上に制服姿を横たえて、犯し、愛し抜いた。
ぶあいそに閉ざされていた口許は、ときにほころびたように白い歯をのぞかせて、
その白い歯並びは、淫蕩なうわぐすりを塗られたように、なまめかしさを帯びて静かに輝いた。
少女のそんな変化に気づく大人は、担任を含めほとんどいなかった。
みずきが一度だけの関係を忌んだのは、
たんに処女を破る愉しみだけのために自分の肉体を供することをきらったのであって、決して淫蕩な意図ではなかった。
けれども回を重ねることで、18歳の少女の身体はじょじょに目ざめていった。
みずきの母親を含めなん人もの女を夢中にさせた八束のぺ〇スは、
この初心で頑なな少女の身体をも、淫らに染め抜いていたのだった。
無防備な素人娘の肉体は、手練手管に長けた八束の思うままであった。
八束は制服のブラウスに包まれた彼女の胸をまさぐり、ブラウスを引き裂いて、ブラジャーも引き剥いで、
ピンク色の初々しい乳房を、唇で蹂躙した。
派手やかな蹂躙に、少女は口を開き、なにか言おうとし、そして言葉のすべてを呑み込んで、制服姿をその蹂躙にゆだねた。
それでも彼女はかたくななまでに、いつも通学用に愛用している分厚いだけの野暮ったい黒タイツを脚に通しつづけた。
けれども八束にとって、彼女の不器量な装いはむしろ、どんなに艶やかなストッキングよりもそそられるものになっていた。
地味すぎるほど大味な黒タイツを咬み破りながら、彼はうら若い少女の生き血に酔いしれた。
彼女の母親は、学校指定の高価なハイソックスを娘とその情夫のために買いそろえた。
みずきは母校の制服の一部が黒タイツと同じくらい吸血鬼の劣情をそそり、目をくぎ付けにすることを知っていた。
機嫌が良いときの彼女は、しばしばハイソックスを脚に通して、深夜の路を制服姿で出歩いた。
深夜の通学路は、淫らな闇へとつながっていた。
街灯に照らされるハイソックスのしなやかなナイロン生地に浮き彫りとなるツヤツヤとしたリブを、見せびらかすようにして脚をくねらせると、
よだれまみれの好色な唇に惜しげもなくさらしてゆき、気前よく咬み破らせていった。
娘を愛してくれているのだね。
みずきがいつものように黒タイツを咬み剥がれ、淫辱のかぎりをつくした挙句、裸足に革靴を突っかけて立ち去ったあと。
彼の傍らに立ったのは、みずきの父親である遠藤だった。
「きみのおかげで、遠藤家の名誉は泥にまみれてしまった。きみは、娘だけではなくて、家内のためにも仇敵なのだ」
言葉は恨みに満ちていたが、言葉遣いは物柔らかだった。
娘のみならず妻までも凌辱されしまった夫・父親の苦痛を減じるには、手段はひとつしかなかった。
妻が凌辱されたとも知らずに家路をたどる遠藤を彼は待ち伏せて、否応なくその首すじに咬みついたのだ。
吸い上げた血潮には、かすかにみずきの血と似通った芳香が含まれていた。
八束は、みずきの父親の生き血を、ゴクゴクと嚥(の)んだ。
遠藤の理性が消えるまで、八束は彼に対する吸血行為をやめなかった。
致死量近い血液を抜き取ってしまったのは、遠藤の脳裏から常識と理性を奪い去るのに必要なことだったが、
同時に彼は、遠藤の血の味にも魅了されていた。
さすがはみずきちゃんのお父さん――そう念じながら、彼の妻を犯してきたばかりのぺ〇スをそそりたて、遠藤の血を吸いつづけた。
ふらふらと自宅にたどり着いた遠藤を迎えたのは、娘を寝かしつけた妻だった。
驚いたことに妻は、見慣れた花柄のブラウスを引き裂かれ、ラベンダー色のスカートにはだれのものとも知れぬ精液を滴らせていた。
ストッキングをむしり取られた素足にも、おなじ色の忌むべき粘液はまとわりついていた。
留守宅でなにが起こったのか、彼はひと目で覚っていた。
彼は妻をねぎらい、自分も同じ相手に血を吸われてしまったのだと告げた。
いまごろ、夫婦の血が仲良く、干からびていたあいつの血管をめぐって、こわ張った皮膚を温めているんだろうな――
そういいながら、互いに互いをいたわり合うように、身体を重ねていった。
遠藤夫人は、その後も八束と逢瀬を重ねた。
八束は遠藤の妻を犯すたびに、その事実を彼に告げつづけた。
遠藤は、自分に嘘をついてまで八束との時間を作ろうとする妻の心の裡に、すでに真面目な恋が芽生えているのを直感した。
どうか、妻の想いまでは踏みにじらないでもらいたい――遠藤はただ、八束にそう希(ねが)った。
八束は遠藤の志をありがたく受け取り、妻をきみの愛人の一人にして欲しいという彼の希(ねが)いにこたえることにした。
娘が襲われたことが縁となって結ばれたふたりは、夫である遠藤の理解のもと、愛をはぐくんでいった。
遠藤が、娘と生き写しの細い目であらぬ方を見やりながら、八束を前に独り言(ご)ちた。
血に飢えた貴男を娘が見かねて、自分の生き血を吸い取らせた。
初めての吸血体験を楽しみすぎた娘が貧血になったのを貴男は介抱して家に送り届けてくださり、
それに感謝した家内もまた、「娘の生き血がお口にあうようならば」といって、すすんで貴男に首すじをゆだねた。
そして二人は恋に落ちた。
わたしは長年連れ添った家内に裏切られはしたが、家内が実り豊かな恋を体験できたことを、わたしは夫として感謝したい。
そして、家内の恋を祝福したい。
遠藤家の名誉などは、よろこんで泥にまみれさせてしまおう。
最愛の妻である真緒(まお)の貞操を、改めて貴男にプレゼントしたい。
家内の貞操は、すでに貴殿が独力で勝ち得たものではあるけれど、改めてわたしから捧げたいのだ。ぜひ受け取ってほしい。
それに娘の未来も、きみが開いてくれた。
娘にとって、きみは大きな存在だ。そして、最初に識った男性だ。
今後娘はだれかと結婚するかもしれないが、きっときみのことを忘れないだろう。
もしも結婚した後の娘も欲しいというのなら、わたしは娘婿よりも、きみの側に立つと思う――
ありがたいことですね――奥さんも娘さんも、遠慮なく貴方から受け取りましょう。
八束はいった。
遠藤が、スラックスのすそをそろそろとたくし上げる。
淡い毛脛の浮いた脚を、黒光りする薄地のナイロンが、毒々しく輝いていた。
いま、家内の愛用しているストッキングを、黙って持ち出してしまいました。
貴男にぜひ、愉しんでいただきたくて、ね――
ちゅうっ――
遠藤の足許から、忍びやかな吸血のおとがあがった。
激しい食欲の発露に、この初老の紳士がみるみる顔を蒼ざめさせてゆくのを、ひとりの青年が息をつめて物陰から見守っていた。
野暮ったい黒タイツ
2022年11月05日(Sat) 01:00:37
冷たく透きとおった風が吹き抜ける通りを、緑色の制服に身を包んだ女学生がこちらに向けて歩み寄ってくる。
背は寸詰まりで、ずんぐりとした身体つき。
血色のよいだけが取り柄のあまり美しくない丸顔には、赤茶けたにきびが浮いている。
真面目くさった赤い縁の眼鏡の奥には、ちょっと意固地そうな細い目が、不景気な視線をこちらに向けて、
早くも待ち伏せしている黒い影の思惑を見通していた。
濃いグリーンのブレザーに、同じ色調のチェック柄のスカート。
そんなお洒落な制服を、ほかの生徒とは別の学校のそれのように、野暮ったく着こなしている。
太ももを見せびらかすようにミニスカートをなびかせて歩く同級生たちよりも、ぐんと丈が長く、ひざ小僧が完全に隠れてしまっていた。
スカートのすそから覗く、黒タイツに包まれた脚は肉づきが豊かで、
そこだけが若い女の生き血を欲しがる性(さが)をじんわりと逆なでする。
いつものお定まりの、少女のあか抜けない佇まいに、八束はなぜか安らぎさえ感じていた。
少女が八束の前で、足を止めた。
血が欲しいんですね?
彼女はぶっきら棒に八束に話しかけ、自分よりも上背のある相手を、白い目で見あげた。
「ああ――喉が渇いている。ひどくね」
「じゃあ、すぐそこで」
感情を消した鈍い声色でこたえると、少女は傍らの公園へと革靴に縁どられた脚を向けた。
公園の奥まったあたりには、手ごろなベンチがあった。
入り口からの視界は人の背の高さほどの生垣に遮られて、閑静な住宅街の真ん中にありながら、
人の注意を惹かない死角となっている。
少女は重たそうな鞄を傍らに置くと、ベンチに腰かけて脚をくつろげた。
参考書がいっぱい詰まって変形しかかった鞄には名札が提げられていて、
「遠藤みずき」と、少女の名が整ったサインペンの筆跡で書かれていた。
「タイツ破きたいんでしょ?」
もの分かりのよい受け答えとは裏腹に、少女の声色はあくまでもぶあいそで、事務的でさえあった。
応えの代わりに八束は、少女の足許にかがみ込んで、
丈の長いスカートのすそからわずかに覗く黒タイツの脛に、唇を吸いつけた。
しつように這いまわる唇のあとを、飴色をした唾液が糸を引いてつづいた。
男が唇をなすりつけながら、自分の履いているタイツの舌触りを楽しみはじめているのを、
少女はしかめ面のまま受け止めている。
黒タイツ越しに、しっかりとした肉づきのひざ下をくまなく舐めまわすと、
八束はふくらはぎの一角を侵すように、ひときわ強く唇を圧しつけると、口の端に隠した犬歯で、おもむろにみずきの足許に食いついた。
「――っ!」
咬んだ瞬間、少女は声にならない叫びを洩らしたが、
声をあげることを恥じるかのように押し黙り、
男が吸血に耽るあいだ、じっと身を固くして、鋭い目線をあらぬ方へと投げている。
17歳の健康な血液が、吸血鬼の渇いた舌を潤して、喉に満ち、胃の腑に澱んだ。
二度三度と、男はみずきの左右の脚に代わる代わる咬みついたが、少女は頑ななまでに歯を噛みしめて、男の牙を受け容れつづける。
女学生の足許を覆うタイツやストッキング、ハイソックスを咬み破って愉しむという、
潔癖な少女には忌まわしいだけのはずの不埒な所作に、
明らかに嫌悪の情を交えながらも、彼女はひたすら沈黙を守り受け留めつづけてゆいった。
彼女の履いている黒のタイツは、艶も彩りもほど遠く、ただたんに分厚いだけの野暮ったい代物だった。
「あたしなんかを、どうして襲うの」
ある日少女は、八束に尋ねたことがある。
初めて襲われた、次の次くらいのころだった。
もっと可愛らしくて、靴下フェチな貴方が悦びそうなお洒落な靴下を履いている子がおおぜいいるのに――と言いかけたとき、
男はいった。
「あんたがクラスで一番知的な子だからだ」
少女は押し黙り、用意していた罵詈雑言を呑み込んだ。
そして、彼女の履いている野暮ったいタイツを舌でいたぶり咬み剥ぐことに熱中している男に求められるまま、
左右の脚を、ゆっくりと交互に差し出しつづけていった。
初めてのときはきっと、彼女の豊かな体形が目を引いただけだろうと、少女はおもっている。
きっとたくさん、血を獲れるから――
たしかにあの夜、男はひどく飢えていた。
塾帰りの彼女をこの公園に引きずり込むと、抗う制服姿を芝生のうえに抑えつけ、
無防備になった首すじに思い切り牙を降ろしてきた。
ジュッ!と鈍い音を立てて血が飛び散って、ブラウスの襟首を濡らすのを、彼女は感じた。
男は傷口に唇をあてがうと、ヒルのようなしつようさで彼女の血を吸い上げて、ゴクゴクと喉を鳴らして呑み込んでいった。
飢えている!とっさに彼女は直感した。殺されるのかと思った。
でもすぐに、吸血鬼との共存を受け容れているこの街では、吸血鬼に襲われても殺されることはないと教わったのを思い出していた。
この街に吸血鬼が出没するのも、
それと知りながら、窮乏した両親がこの街を選んだのも、
彼女はよくわかっていた。
だから――いずれはそうした者たちの毒牙にかかるとは、覚悟していた。
胸もとをまさぐる猿臂を拒みはしたものの、もはや逃れるすべはないと観念した彼女は、すぐに抵抗を諦めた。
結果的には、賢明な判断だった。
ひとしきり彼女の血を吸い取って落ち着きを取り戻した八束は、彼女に謝罪を告げて、彼女の生命を断つ意思はないと告げてきたのだ。
それでも、一定の凌辱行為は、忍ばなけれはならなかった。
その夜、歩みを進める彼女の足許を照らし出した街灯は、
スカートと同じ色調の濃いグリーンのハイソックスのリブを浮き彫りにしたように際だたせていて、
ハイソックスに包まれた豊かなふくらはぎは、吸血鬼をすっかり魅了してしまっていたのだ。
首すじからおびただしい血液を抜かれた彼女は、ほとんど意識もそぞろになりながら、
昼間のように明るい芝生のうえにうつ伏せにされて、
彼女の足許ををなぞるようにしつように舐めつけてくるる舌と唇で、
制服の一部であるハイソックスのしっかりとしたナイロン生地の舌触りを愉しませる羽目に陥ったのだった。
生気に満ちたみずきの血に、八束はしたたかに酔い痴れた。
豊かな肢体を脈打つ血液は飢えた吸血鬼の食欲をそそり、
食欲を満足させるとこんどは、みずきの着ている折り目正しい制服姿に劣情したのだ。
野暮ったい着こなしぶりに、吸血鬼はむしろ欲情していて、
濃い緑のハイソックスが真っ赤に染まるほど、みずきの足許に執着した。
その夜、飢えた吸血鬼を自らの血で存分に満足させた少女は、
自分の血を吸い取った男に付き添われて帰宅した。
不幸にして、父親は不在だった。
出迎えた母親は、貧血でもうろうとなった少女の傍らで抑えつけられて、
娘がハイソックスの脚を愉しませたのと同じように、薄地の肌色のストッキングを穿いた脚を弄ばれた。
みずきの野暮ったさはきっと、母親の質素な生活ぶりに影響されたに違いないと、
安ものらしいパンストを咬み剥ぐことに熱中しながら八束はおもった。
倹しい生活でもストッキングをたしなむ趣味のよさにも、好感をもった。
人肌恋しさに矢も盾もたまらなくなった八束は、みずきの傍らでその母親を犯した。
それ以来、母娘は代わる代わる吸血鬼に首すじをゆだね、血液を日常的に提供するようになっていた。
その日も下校途中のみずきを公園に引き込んで、野暮ったい黒タイツを咬み剥いでしまうと、
少女は恨めしそうな白い眼をして、あらわになった白い脛を見、タイツを破った男を見た。
「いつも思うけど、趣味よくないですよね」
ふつうなら。
吸血の愉悦に酔った少女たちや人妻たちは、こぞって彼に恍惚としたまなざしを向けるのに。
彼女には毒が効かないのか、血を吸われた後も、氷のように冷静だった。
まだ冬も浅いのに彼女が学校指定のハイソックスではなくてタイツを履いているのは、
手持ちのハイソックスをすべて、惜しげもなく咬み破らせてしまったからなのだと、八束はよく知っていた。
彼のためになん度もスカートのすそを汚すようになったみずきの母が、そう告げたのだ。
打ち解けない顔つきのまま、
それでも男に逢いつづけて、
望むほどに生き血を吸わせ、
好むほどにタイツを破らせ、
それが多分、彼女なりの心づくしなのだと――
八束は覚りはじめている。
もうじき卒業だよな。
八束はいった。
進学クラスに入ったこの娘はきっと、都会の大学を受験し、旅立ってしまうのだろう。
頼みがある――と、八束はみずきにいった。
何?
相変わらず、ぶっきら棒な相槌が返ってくる。
志望校に合格したら、いちどあんたを犯してもよいか。
男の予期に反して、少女はかたくなに、「だめ」といった。
そうか――
しんそこ残念そうに、八束はあらぬ方を見やった。
沈黙が流れた。
傍らの少女が珍しく、クスッと笑った。
がっかりしたみたいね。
求愛をこばまれたら、だれでもそうだ。
八束はこたえた。
求愛しつづけてるじゃない。
いつも求められて――そのたびにあげてるじゃない。
少女は恨めしそうに、いった。
やはり制服姿を辱められながら、うら若い血潮を吸い取られるのは、屈辱なのだろう。八束はおもった。
けれどもそれはちがった。
少女はいった。
いちどじゃ嫌。
え・・・?
何度も抱いてくれるというなら、愛されてもいい――少女はめずらしく羞じらいながら、告げている。