淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
彼氏にバラした、処女喪失。
2023年02月19日(Sun) 01:33:10
浩美には、彼氏がいる。
同じクラスのけんじは、自他ともに認める関係だった。
お互い初体験がまだなのが、不思議なくらいだった。
原因はどちらかというと、けんじの側にある。
浩美がなん度も大胆になるたびごとに、彼は尻込みしてしまうのだ。
まだそこまでの責任は取れないし。
それが彼の言い草だった。
身体の奥深くの疼きを覚えはじめた若い肉体をもて多少あましながらも、それでほ浩美は満足だった。
けんじが浩美のことを大切に考えている証しだと思ったからだ。
周りの女子たちは、経験者がちらほらしていた。
それ以上に、街に横行し始めた吸血鬼の毒牙にかかるものが増えてきた。
身体を許した彼氏の影響力もさることながら、
吸血鬼の支配力は、それを軽く上回った。
浩美の親友の環(たまき)は、彼氏がいるのに、吸血鬼を相手に処女を捨てていた。
おかげで、彼氏とヤルときには大胆に振る舞うことができたと、あとから聞かされた。
相手が吸血鬼じゃ、どうしようもないな。
恋人の初めての男になり損ねた彼氏は、かなり残念がっていたけれど。
環の身体を自由にできる特権を与えられたことに、より夢中になっていて。
彼女のしたことを裏切り行為とは受け取っていないようすだった。
でもねぇ、と!環は声をひそめる。
あいつに、ヘンなこと、頼まれちゃっと。
なに?
気乗りしない口調で相槌のように返すと、環は聞いて頂戴よ度言わんばかりに、なおも声をひそめてくる。
お前の処女をもらえないのなら、せめてお前がなくすところを視たかった。
今度、再現してくれよ。
ええ〜!?
冷めた性格の浩美もさすがに声をあげてしまい、
シッ!と親友にたしなめられる始末だった。
それで、、、まさかリクエストに応じたの??
環は少しのあいだ口ごもっていたが、ためらいながらも頷き返してくる。
えー!あり得ない!!
あのときは、あわてて口を抑えたものだが。。
その浩美が、公然の彼氏を差し置いて、貴之とヤッてしまった――
血を吸われていたという特殊な状況――とは言いながら。
あのとき浩美は冷静だったし、相手のことを叱ったり詰ったりさえしていた。
そのいっぽうで、相手の好みに合わせて、脛までのハイソックスをキッチリと引き伸ばして、くまなく舐め尽くさせさえしてしまっていた。
いちど咬まれた首すじにキスも許したし、自分の血の着いた唇と唇を重ね合わせて、血の香りを嗅ぎながらのディープ・キッスにまで応じてしまった。
ショーツを脱いで意思表示をしたのも、自分のほうからだった。
たかがハイソックスの丈に目をつけてきただけの男にそこまでさせて、
さいごにはキッチリと、火照りを帯びて逆立った一物を、自分でも届かない秘奥まで刺し込まれてしまったのだ。
けんじがいうように、「責任」の問題をうんぬんするのなら、
彼女は越えてはいけない一線を、あっさり飛び越えてしまったことになる。
もしもけんじのお嫁さんになるとしたら――これはやばいわよね、、、?
ちょっと付き合って。
放課後貴之をつかまえて、浩美はぶっきら棒にいった。
けじめ、つけてくれるわよね?
貴之は、頷くしかなかった。
けんじは彼にとっても、仲の良いクラスメートだったから。
貴之を伴ってきた恋人にふしんそうな目を向けるいとまもなく――
あたし、この人に血を吸われてるから。
貴之に対してぶっきら棒な彼女は、どうやら恋人に向かってもそうらしい。
「う・・・!?」
なんと返事をして良いのか見当がつかなかったらしく、けんじは喉にものでも詰まらせたようななま返事をした。
「だれかに噛まれたのは、わかるって」
睨むように迫ってくる浩美にたじたじとなったのか、窮したように彼はいった。
たしかに、お気に入りのハイソックスは丈足らずで、咬まれた痕のふたつの赤黒い斑点は、まる見えになっていた。
それを浩美は臆面もなく、だれの目にも明らかに、くっきりと外気に曝していた。
まるで見なさいよと誇示するばかりに――
「でも、相手が貴之とはな・・・」
男ふたりは困ったように顔を見合わせる。
「なん度も咬まれてるのは見て分かったし、気の強い浩美のことだから自分の意思でそうさせてるのは察しがついたけどさ。。」
浩美はなおも、挑発するように告りつづける。
「咬まれたさいしょの晩にさ、もう犯されちゃった。
抵抗しても逃れられないはずだけど。
この人ったら意気地なしだから、本気で嫌がったらきっと、逃げ出せたと思う。
でも、あたしのほうからパンツ脱いだの。
なぜだかわかる?
あんなミステリアスな迫りかたをされて、そのまま何もなしに終わるなんて、つまらないと思ったの。
生き血をたっぷりと啜り取られて、あたしの本音や心の底のことまで、見通されたような気分になって。
生命の欠片を口に含まれるって、とても濃いつながりだって思えちゃって。
けんじには、悪いことしたと思ってる。
でもね、したことはあんまり、後悔してないかな・・・」
浩美の一方的な告白に、けんじは彫像のように立ち尽くしていた。
「あの・・・その・・・」
ヘドモドしている彼を引き立てるように、浩美はいった。
「訊きたいことわかってるんだ。
感じちゃったのか?イカサレちゃったのか?っていうんだよね??」
「あ・・・うん」
けんじはみっともなく頭を垂れながら、肯定している。
「さいしょは血も出たし、痛かっただけ。
ヤれて満足としか、思えなかった。
でもね、なん度も咬まれて、なんどもヤられているあいだに、キモチよくなった。
イッちゃうようになった」
自慢たっぷりの自分の彼女から目を離すと、けんじは貴之を見た。
「最近オレと目を合わせないのは、そのせいか?」
「そのせいだ」
棒読み口調で、貴之はこたえる。
「さすがに悪りぃなと思ってさ――でもやめられないんだ」
「お前も、浩美が好いってことだな?」
「浩美の身体に惚れちまった」
貴之はいった。
どちらもボソボソと、暗くて低い声色だった。浩美が噴き出してしまうくらいに。
気勢をそがれたふたりは、起こった事実を確かめ合うばかり。
「で・・・?」
「で・・・」
果ては重たい沈黙で、会話さえ途切れてしまった。
「これじゃ喧嘩にならないわね」
がっかりしたように、まず浩美が重たい沈黙を破った。
「喧嘩させる気だったのかよ??」
男ふたりは、口を揃えて声をあげた。
「たしかに――もしも浩美をオレから奪うつもりなら、相手になるけど。。」
けんじが初めて、しっかりとした顔つきになった。
「いや、そんなつもりはない」
「つもりはないって――」
「浩美が嫁に行くのは、俺のところじゃなくてお前のところだろ?」
「それはそうだけど――それでいいのか?」
「俺はそれが良いと思ってる」
「オレの女に手を出すなって言うべきなんだろうな、ここは一応」
いかにも気乗りのしない口調でけんじが口を開くと、
「俺がいさぎよく手を引くよって、言うべきなんだろうけどな、ここはやっぱり」
貴之も気の抜けたようなあいさつを返すばかり。
「手を出しても構わないって言ってくれないか」
「それはさすがに、言えないな」
「でも俺はたぶん、ガマンできないぜ?」
「できる限り、ガマンしてくれないか?」
「できる限りはもちろん、ガマンするつもりだけどな」
「できない場合もあると・・・?」
「それはお互い、聞きっこなし・・・」
あ、駄目!と、浩美が割って入った。
「あたしがだれとどう付き合うかは、あたしが決めるから」
ふたりは、げっそりとした顔つきになった。
「けんじのための純潔――奪(と)られちゃったときのこと再現してあげようか?」
「あ、ウン」
思わず答えてしまったあとで、いくら両手で口をふさいでも、もう遅い。
あっという間に貴之に、がんじがらめに縛られてしまった。
くしくもそこは、彼女が初体験を遂げた教室だった。
そう――二人は自分のクラスの教室で結ばれたのだ。
「こうだったよね?」
「こんなふうだったな」
浩美が不意打ちに教室の壁に抑えつけられるところ。
目も止まらぬ速さで首すじを咥えられ、咬まれてしまったところ。
ブラウスにほとばしった血が、バラの花が咲くように拡がるところまで、けんじの前で忠実に再現される。
腕を突っ張って抵抗したけれども、失血でだんだんと力が抜けて、とうとうもう一度うなじを咬まれ、ゴクゴクとやられてしまったところ。
ハイソックスの口ゴムの少し上あたりを、すはだに唇を直接あてて咬みついて、
静かに喉を鳴らして啜り取ってゆくところ。
ふたりが折り重なって、勁(つよ)く逆立ったぺ〇スが制服のスカートの奥に忍び込んでいって、
迫ってくる逞しい胸をわが身から隔てようと、彼女は腕を突っ張り、唾を吐きかけてまで抗いつづけて、
そしてさいごに、
ずぶり――と突き刺されてしまって、声も出ないほど感じていって――。
こんなふうだったんだ・・・
こんなふうだったのよ・・・
にんまりと笑んだ浩美の唇を、貴之のそれがふたたび塞いだ。
狎れあったディープ・キッスに熱中するふたりを、けんじはいつまでも見守りつづけて、
そしてその夜ひと晩、彼の未来の花嫁がよがり声をあげつづけるのを、聞き通していた。
披露宴の最上段に。
しゃちこばったけんじと取り澄ました浩美とが、肩を並べている。
「ほんとうは。未練があったんじゃないの?」
背後からヒカルが、毒を含んだ囁きを注いできた。
「いや、これで良かったんだ」
貴之は、振り返りもせずにこたえた。
あの純白のウェディングドレスの裏側を、自分の淫らな粘液でなん度も染めたことも、
いまでは楽しい、一コマの夢――。
「落ち着いたらまた、連絡するわね」
とりあえずは彼女の、そんなささやきをアテにしてみよう。
そんなときにはたぶん、けんじはわざと出張に出てしまうのだろう。
それとも案外、あの夜みたいに、どこかの物陰から、二人が熱い吐息を交わし合うところを、のぞき見してしまうのだろうか・・・?
あとがき
いちおう前作とともに、連作ものです。
発想のきっかけは・・・
たまたま行きずりに、3人連れの女子高生を見かけましてね。
うち2人はタイツ、でも真ん中の子がこの季節に、ブラウス1枚、ミニの紺のスカートの下、黒のオーバーニーソックスを履いていたんです。
インパクトありましたね・・・
餌食になった、3人の女子生徒。
2023年02月19日(Sun) 00:54:24
紺のスカートに白のブラウスの制服を着た女子生徒が3人、うつ伏せになって気絶している。
それぞれの足許には1人ずつ、吸血鬼の男がとりついていて、彼女たちのふくらはぎに咬みつき血を吸っていた。
まん中の男が真っ先に頭を上げて、隣の男を見下ろしている。
「ホントに、オーバーニーソックスが好きなんだなお前」
声をかけたのは、抑えつけた脚の主たちとさほど変わらない年ごろの青年だった。
吸い取ったばかりの血を、まだ口許にあやしている。
揶揄を受けた男もまた、顔をあげた。
「うるせェな、放っといてくれよ」
言葉は尖っていたが、口調はそれに不似合いなくらい照れくさそうだ。
言い返すその口許も、女子生徒の血で染まっている。
ふたりとも旺盛な食欲を発揮したのだろうか、彼らの相手を強いられた少女は、とっくに白目を剝いている。
言い返した男の餌食になった女子生徒は、太ももを大胆にむき出したミニ丈の濃紺のプリーツスカートの下、
恰好の良い脚を黒のオーバーニーソックスで覆っている。
だらりと伸びた脚には、ひざのあたりまでずり落ちかけた黒のオーバーニーソックスが、ふしだらに弛んで皺くちゃになっていた。
ふくらはぎには咬み痕がふたつ、赤黒い血のりに濡れていた。
「香織のときも、そうだった。黒のオーバーニーソックスを履いていた」
さいしょに声をかけた青年は、そういって口をとがらせる。
「お前の妹だとわかりながら・・・ついムラムラ来ちまったんだ」
許せと言うように下げた相方の目線に軽く応えながら、青年は続けた。
「ま――俺も似たようなものだからな」
緩めた口許からしたたたる血が、持ち主の履いている紺のハイソックスを濡らした。
彼女のハイソックスは少し寸足らずで、脛の途中までの丈だった。
口ゴムの少し上のあたり、たっぷりとしたふくらはぎが覗いていて、そのまん中にはやはり咬み痕がふたつ、綺麗に付けられている。
「ご立派なキスマークじゃん」
オーバーニーソックスを咬み破った青年が、こんどは香織の兄を冷やかす番だった。
「お目当ての浩美ちゃんをモノにできて、よござんしたね。貴之くん」
貴之と呼ばれた青年は、照れくさそうに笑い返した。
それよりさ、と、彼は続けた。
「オイ、親父!まだやってんのかよ。ちっとは手かげんしろよな!?」
3人のなかでいちばん右側で黙りこくっていた男は、やり合う若者二人を横っ面で受け流したまま、自分の獲物のふくらはぎを吸い続けていた。
相手を強いられていた少女はもちろん、とうに白目を剝いている。
息子くらいの青年にぞんざいな言葉を投げつけられて、
さっきからしつように餌食を漁っていた男もようやく、白髪交じりの頭をあげた。
「すまねェこってす、ちいっと吸い過ぎた――」
男のおとがいの下、ひざ下までピッチリと引き伸ばされていた紺のハイソックスはわずかにずり落ち、咬み破られた一角がかすかに血のりを光らせている。
「ひとの妹つかまえて、よくやるよまったく!」
オーバーニーソックス好きな彼はどうやら、この男のために気前よく、自分の妹を襲わせたらしい。
「ヒカルお坊ちゃん、輝美子お嬢様を喰わせていただけるなんて、一生恩に着ますぜ」
そう言いながら、郷助と名乗るその年配の吸血鬼は、輝美子お嬢様から吸い取った血を拳で無造作に拭い取った。
「お前が妹に目をつけていたのは、だいぶ前から分かってた。
うまいことたらし込んじゃえよ?
あいつの気が向いたら、また高嶺の花の輝美子お嬢様の処女の生き血にありつけるかもね」
ヒカルは初めて、白い歯をみせた。
女子生徒を襲って生き血を漁り摂るという惨劇のあととは、思えないくらい、爽やかな笑みだった。
「血を吸う日常も、悪くないだろ?」
ヒカルは貴之に言った。
「そうだな、こういう身体にしてくれて、感謝するよ」
貴之は、素直にこたえた。
「最初はびっくりしたし、暴れたけどな」
しょうがないさ、と、ヒカルはいった。
「俺も、血を一滴残らず吸い取られたときは、死ぬほど暴れた」
ヒカルの血を吸った張本人は、どうやら彼の目線の向こうにいる年配男らしい。
「俺の血を旨かったって言うから、許してやったんだ」
ヒカルお坊ちゃまの独白を耳にして、郷助はくすぐったそうに微笑んだ。
ヒカルの父は、開業医だった。
郷助はヒカルの家の使用人で、ふとしたことから吸血鬼になって、主人の息子を襲ったらしい。
おあいこさ、と、ヒカルは苦笑いした。
その前に彼は、悪友の貴之と語らって郷助の妻を襲い、それぞれ童貞を卒業していたのだ。
それはエエです、と、郷助はいった。
「女房の仇討ちなんて殊勝なことを考えた訳じゃありません。
むしろ女房がお二人に女の手ほどきをさせていただけたのを、ありがたく思ってるくらいですから――」
そう、、郷助は自分の妻が襲われていると知りながら、家の鍵を中から施錠して、彼らのやりやすいように手助けをしていた。
そして、自分の妻がパンストを片方だけ脱がされた脚をばたつかせ、半泣きになりながらスカートをたくしあげられてたくし上げられてゆくのを、舌なめずりをして覗き続けたのだ。
彼が吸血鬼に咬まれたのは、そのすぐ後のことだった。
「あのあと女房は吸血鬼にもやられちまったけど――お坊ちゃんがたお二人のおかげで、覚悟がついたような気がしたもんです」
郷助が身体じゅうの血を抜かれた翌日のこと。
ヒカルが学校から戻ってきたとき、家に誰もいなかったのが「ご縁」の始まりだった。
首すじを咬まれて血を吸われると、
「うちで真っ先に吸血鬼になるのが、郷助とはね」
と言いながら、気の済むまで吸血に応じていったのだ。
吸血鬼のはびこり始めたこの街で、いつまでも逃げおおせることができるとは、ヒカルにはとても思えずにいた。
むしろ、自分の血を親しいものに吸われることに、安堵さえ覚えていた。
失血でぼうっとなりその場に倒れると、半ズボンの下肢に抱きつかれ、紺のハイソックスを咬み破られながら、さらに血を吸われた。
ハイソックスが好きなのかい?と問うと、郷助は正直に頷いた。
それなら、好きなようにさせてやるよ――彼は郷助が楽しめるようにと、ずり落ちかけていたハイソックスをひざ小僧の下までギュッと引き伸ばしてやった。
飢えていた郷助がヒカルの血を吸い終えたとき、彼の体内には人間として生き続けるために必要な量の血液は喪われていた。
こうしてヒカルは、半吸血鬼になった。
二人は、縄張りを線引することで争いを避け、周囲の男女の血を手分けして啜った。
主家の一家にほのかな憧れを抱いていた郷助は、ヒカルの両親を。
ヒカルは郷助の妻に初めて自分の牙を試して、この使用人の善良な妻を首尾よくその奴隷とした。
郷助はその見返りに、院長夫人をその夫の目の前で制圧して、主家の夫婦をその支配下に置いた。
院長夫人のブラウスには、吸い取られた血潮が撥ねて華やかなコサアジュを形作り、
はしたなくも夫の前で、理性を喪失した。
着衣を引き裂かれ剥ぎ取られてしまうと、見栄もプライドもかなぐり捨てて、
日ごろ嗜んでいるガーター・ストッキングの脚をくねらせながら、使用人の強引な欲望に応えていった。
郷助は片方だけ脱がせたストッキングを指でいやらしく弄びながら、
院長夫人の身体の奥に、その夫の目の前で、劣情に滾る白濁した粘液を吐き散らしていった――
ヒカルがつぎに狙ったのが、貴之の妹の香織だった。
香織は泣きじゃくりながら彼のお目当てのオーバーニーソックスを咬まれていったが、
いまでは兄のこの悪友の誘いを受けるときには、ひざ上最低でも15cmのミニスカートに黒や紺、果ては柄物のオーバーニーソックスを見せびらかすように脚にまとい、穿き替えまで用意をしてデートに出かける有様だった。
悪友に妹を寝取られた貴之は心平かではなかったが、
その実ヒカルの牙で、香織よりも先に首すじに咬み痕を付けられてしまい、吸血される悦びにも目ざめてしまっていた。
だから、悪友が妹を弄ぶことを、正面切って咎めることはなかった。
いまではヒカルのために、貴之の母親までもが、年甲斐もなくオーバーニーソックスを脚に通して、
娘の貧血を補うために、淫らなデートに日常的に応じる有様だった。
もともとヒカルが貴之の妹を襲ったのは、たまたま履いていたオーバーニーソックスに刺激を受けただけのことなので、
早晩彼が妹を棄てるのは、目に見えていた。
けれどもきっと妹は、教え込まれた経験を身に秘めながら、
そ知らぬ顔をして婿探しをするに違いない――と、貴之は見抜いてしまっている。
そんな3人が寄り集まれば、よからぬことが起きるのは自明のこと。
教師たちは自分たちの責任逃れに躍起となっていた。
生徒を襲うならせめて、自分たちが退校した後にしてほしいとばかりに、
夜も出入りをするのに必要な鍵を、わざと「紛失」してくれたのだった。
鍵を「紛失」をした教諭も、それをそそのかしたはげ頭の教頭も、
受け持ちのクラスや顧問をしている部に所属する教え娘に手を出して、
彼らに率先して、冒すべからざるはずの教室を、淫らな濡れ場にすり替えてしまうのだった。
冒頭の、3人の乙女が犠牲となった場面は、まさにそんな日常の出来事だった。
ヒカルはオーバーニーソックスの少女を連れて、教室から出ていった。
血の気の戻った少女はすっかり洗脳されて、何ごともヒカルの言うままだった。
もちろんヒカルは、この娘を恋人にするつもりなど、さらさらない。
茶髪のロングヘアをなびかせて少女が向かうべつの教室には、悪事の片棒を担いだ教頭が待ち構えている。
この女子生徒の処女は、夜の教室を自由に使用する便宜をはかってもらった御礼にする約束になっているはずだ。
そんなことはいまの彼女の知る由もないだろう。
美男のヒカルに夢中になるはずが、似ても似つかないはげ頭の教頭の、脂ぎった卑猥な唇をあてがわれるとは、まだ夢にも思っていないはずだ。
郷助が餌食にしたのは、ヒカルの妹の輝美子だった。
彼女は羞恥に頬を染めて、弛み落ちたハイソックスをおずおずとした手つきで引き伸ばしていった。
よだれまみれにされて咬み破られると知りながら、父親ほどの年配男に当たった不運を嘆くでもなく、相手を満足させようとけなげに振る舞っているのだ。
さすがに貴之たちと同じ教室でことに及ぶのは羞ずかしいらしく、これも教室から消えていった。
吸血初体験の今夜、処女までも喪うと――きっとヒカルも想像していたに違いない。
「ひどいよね、まったく・・・」
貴之と二人きりになると、彼の相手をした女子生徒はいった。
「夜遊びしようって言うから、何かと思った。
制服にハイソックスで来いって言うから、変態なんだと思った。
首すじを咬まれて、初めて分かった。
怖い世界に踏み込んじゃったって。
あたしの血、美味しかった・・・?」
貴之はいった。
「前から思っていたんだ。
ハイソのすぐ上のあたりをかんでみたいって。
きみのハイソの丈がちょうど目を惹いたのさ」
女子生徒は不平そうに、口を尖らせる。
「ハイソの丈で、あたしを選んだの?」
「そういうことだね」
「ひどい・・・変態!」
少女は罵ったが、声に力はなかった。
「貧血だよ、もう。。」
くりごとのように少女は呟いた。
「それくらい旨かったってことさ、きみの血は」
貴之はいった。
少女から吸い取ったうら若い血の芳香は、まだ喉の奥に澱んでいる。
そしてその活き活きとめぐる血液は、いま貴之の血管を妖しく浸し、皮膚を潤しはじめている。
「美味しいんだったら、まあいぃか。許しちゃおう」
少女はまた呟いた。そして貴之に向って、
「こっちの脚も、噛んでいいよ。
どうせヤだって言っても咬みつくつもりなんだろうけど」
そういって、まだ噛まれてないほうの脚も、差し向けてきた。
丈足らずのハイソックスを、キッチリと引き伸ばして。
男は制服姿の女子生徒の足許に、かがみ込んだ。
教室の窓から差し込む薄明かりに浮びあがった影法師が、ひとつになった。
もつれ合った影法師は姿勢を崩し、平らになり、激しくうごめき、ぎごちなくもじもじとした身じろぎをくり返した。
「彼氏いるんだよ、あたし」
少女は弛み落ちたハイソックスを、また引きあげた。
太ももを伝い落ちる初めての紅いしずくが、口ゴムを浸すのもためらわずに。
「生き血も旨かった。あそこも、美味しかった」
「もう!」
男の言い草に、女は本気でその背中をどやしつけた。
女子学生は、太っちょが良い。
2023年02月04日(Sat) 21:23:32
女子学生を襲うとしたら。
俺は躊躇なく、太っちょのコを選ぶ。
飢えた吸血鬼の、悲しい本能で。
獲られる血の量は、体重に正比例すると識っているから。。
いつも好んで咬みつくことにしている、紺のハイソックスのふくらはぎだって、肉づきのあるほうが咬みごたえがあるというものだ。
きょうはどのコのハイソックスを咬み破って、べそを掻かせてやろうか――?
そんなワケで。
近所に越してきた、なにも知らなさそうなご一家の長女に、オレは狙いを定めたのだ。
お人好しなご主人に接近して、言葉巧みに信用されて。
娘さんの勉強見てあげますよと持ちかけた。
場所はもちろん、オレの家。
色々な本を持っていて、教えるのに都合が良いから、、というのが、娘を招き入れるためのもっともらしい口実。
邸のなかで襲ってしまえば、キャーとかワーとこ騒ぎたてても、もはやまんまとこちらのもの。
あとは制服のブラウス濡らしながら、クイクイ血を啜り抜いて、夢中にしてしまうのは造作もないのだ。
お目当てのハイソックス?
なぁに、向こうから咬んで破って・・・って、頼み込んでくるものさ。
智恵美というこの娘は、いかにも地味でモッサリさんな太っちょで。
貫禄たっぷりのウエストに、紺とグリーンのチェック柄のプリーツスカートを膝まで垂らし、
黒いだけが取り柄の引っ詰めた三つ編みを肩先に揺らして、
色気のかけらも感じさせない黒縁メガネのなか、潔癖そうな二重まぶたの丸い瞳でこちらを注意深く窺ってくる。
父親よりもよほど、手強そうにみえた。
けれども、その豊かな身体には、健康な血液がたっぷりと、脈打っている。
頼もしい体格の輪郭を通して、血潮の気配がありありと伝わってきて――オレは痺れてしまいそうになっていた。
ピンポンを鳴らして佇む足許は、案に相違して黒のタイツをしなやかに履きこなし、ふっくらと豊かなふくらはぎをしていた。
この黑タイツを破かれながら、べそを掻き掻き吸血されてしまうともつゆ知らず、娘は出されたスリッパを履いたつま先を、冷え込んだフローリングの上にすべらせてくる。
牙をむき出して立ちはだかると、さすがに恐怖に眉をあげ、引きつった顔をして後じさりしてゆく。
さあ追い詰めた!
あとは無理無体に抱きすくめて、首すじを咬んでしまえばこっちのもの・・・と思ったら。
智恵美はしんけんな顔つきで、血相変えてまくし立てた。
吸血鬼だなんて、聞いていません!
私、勉強を教えてもらいに来たんです。
人の血がお要りようなのはわかりました。
でも、父か母と話してください。
私がいきなり咬まれたら、父も母も悲しみます!
お願いです、どうかそんなことしないでください!
自分の娘の生き血が欲しいとねだられて、どこの親が応じるものか。
オレは娘を横抱きにして、首すじを狙って強引に唇を吸いつけた。
やめて!お願い!よしてッ!
智恵美は懸命に身もだえをして、オレを拒もうとする。
本気で嘆き、悲しんでいた。
悲痛なすすり泣きをくり返す少女を、オレはお人好しにも抱きしめて、もう怖いことはしないからと、なだめすかしてしまっていた。
相手が吸血鬼だと分かっても、このコは感心にも、それ以上うろたえもしなかったし、逃げようともしなかった。
約束どおり、お勉強は教えていただきます。
でも、血を差し上げるのは、母に訊いてからにしてください。
オレは約束どおり娘に数学と古文を教えたあとで、
まだ涙目をしていり智恵美の手を引いて、彼女の家のインタホンを鳴らしていた。
お勉強はどうでした?と問う母親に、
お母さま。
この方、私の血が欲しいと仰るの。
でも、両親の許可をもらってからにしてくださいとお願いしたら、血を吸わないで来てくれたの。
ちゃんとお勉強も教えてくれたのよ。
私、この小父さまなら信用できるから、血をあげても良いと思ってるの。
お母さまも賛成してくれますか?
智恵美の母親は、表情を消して立ち尽くした。
賛成のわけはない。
お引取りください で、さよならだ。
オレはげんなりとして、この母娘のやり取りを眺めていた。
ところが母親は意外にも。
オレのことを穴があくほど見つめると。
娘のことを弄んだり、侮辱したりさないで扱ってくださいますか?と訊いてきた。
すかさずもちろんですとこたえると、この子が恥ずかしい想いをしないようになさってくださいねと言って、
娘の勉強部屋から背を向けた。
「よろしくお願いします」
お勉強を教わるとき同じように、娘は正座して、神妙に手をついた。
オレはわれ知らずその手を取って、手の甲に接吻していた。
貴婦人・・・みたいですね。
娘は羞じらった。
「タイツを破りたいって仰ったわね。良いですよ」
差し伸べられた脚は、健康そうにピチピチとした生気が、黒タイツを通して伝わってきた。
オレは娘の好意に甘え切って――少女の履いている黒タイツをビリビリと破りながら、吸血に耽っていった。
ドアの向こうから。
息をひそめて覗き込んでくる者がいた。
いうまでもない、彼女の母親だった。
娘の危難を気遣って中の様子を窺っていたのに、
まな娘に対するオレのあしらいに、興奮を感じてしまったらしい。
抱きすくめた首すじに食いついて、制服のブラウスを濡らしながら吸血したり。
三つ編みのおさげを片手で弄びながら、初めてのキスをディープに奪っていったり、
特にタイツを咬み破る情景は、彼女の胸に染みたらしい。
自分の穿いているストッキングを咬み破られたくて、うずうずしてしまいました――と、だいぶあとで言われた。
日を改めて訪問してきた娘は、オレの希望を容れて、今度は紺のハイソックスを履いていた。
「ハイソックスも破りたいんですか?」
娘は生真面目な問いを投げてくる。
「旨そうだからな。あんたの脚に履かれていると特に」
とこたえると、「いやらしいですね」と言いながら。
ふくらはぎ刺し込まれてくるオレの牙を、息を詰めて見おろしてきて。
あちこち食いつきたがるオレのために、脚の角度を変えながら何度も咬み破らせてくれた。
パンティを舐め抜いた挙句、処女を汚したいと囁いたとき。
娘は半泣きになって、「まだ早い」と抗議した。
そして、「お嫁さんにしてくれますか」と訊いてきた。
あいにく――彼女とオレとでは、時間軸の移ろいがまるで違っている。
それは無理だとこたえると、ちょっとだけ考えさせてくださいといって――
それでも、パンティは濡れ濡れに濡れそぼるまで、舐め尽くさせてくれていた。
母親のパンストを咬み破るときには、
ご主人よりも先に、娘のほうに相談した。
きみを裏切るわけじゃない、オレはきみたち家族が好きなのだ――と見え透いたことを囁くと。
「それ、ずるいですよね」と、けしからぬ意図をしっかりと見抜かれて、
「でも、相談してくれて嬉しかったです」
「パパを泣かせることはしないでくださいね」
といって、オレの邪まな想いを遂げるのを同意してくれていた。
ご主人はむしろ、オレと奥さんとのメイク・ラブに理解を示してくれた。
「この街に来た時から、家族の血を吸われるのはわかっていました。
それが貴男であることは、わたしにとってそう不幸ではありません」
と、言い切ってくれたのだ。
「娘の血が気に入ったのだから、きっと家内もやられちゃうんだと観念してました。まさか事前に相談してくれるなんて」
といって、
「じゃあわたしは、気がつかないふりをしていますね」
と、妻を寝取られることに同意してくれた。
奥さんはたったのひと突きで、オレに完全に征服された。
母親までモノにされたと伝え聞いて。
娘はフクザツそうな顔をした。
「お父さんもお母さんも不潔だなんて、思わないでくれよな」
とオレがいうと、「それは大丈夫」と請け合ってくれた。
そして思いつめた顔をして、打ち明けてくれた。
こちらに来てから、クラスの男子と付き合うようになった。
もちろん、身体の関係なんてない。
でも、できれば彼と結婚したいと思っている。
セックス経験のある女の血を吸うときには、犯しちゃうって母から聞いたわ。
だとするといつか、わたしは彼を裏切ることになってしまうの――と。
すんなり伸びたふくらはぎは、しなやかな筋肉の輪郭を、ハイソックスで縁どっていた。
「これ、智恵美さんのハイソックスなんですよ」
少年は爽やかに笑いながら、半ズボンの下にまとったハイソックスを、オレのよだれに塗りたくられていた。
彼女、いつもこんなふうにされちゃってるんですね?
パンティも舐め抜くところまではお許しもらってるんだ。
オレが子供じみた自慢をすると。彼も「へえすごいな」と素直に感心する。
「小父さんは、智恵美さんの純潔を欲しいのですか」
失血に顔をかすかに蒼ざめさせながら、彼は訊いた。
「欲しいね」
「彼女もきっと、その気です」
少年は、嬉しいことを請け合ってくれた。
「お願いがあるんです。
彼女の純潔をプレゼントしたいのです。
あくまでボクからのプレゼントとして、小父さんに愉しませてあげたいんです。
その代わり、そのようすを、ボクにも見せてくれませんか。
ボク自身が得ることができなくても。
彼女がだれかに純潔を捧げるところを目にすることができたなら――それは一生の記憶になると思うんです」
ふと見ると、彼の後ろに智恵美が控えていた。
顔を心持ち俯けて、唇を固く噛みしめているようすからは、彼女の意思は窺えない。
けれども、恋人の考えを指示しているのだということは、オレにもよくわかった。
「きょう――初めて小父さまに咬まれてからちょうど一年になるんです。
獲物にした女を一年もモノにできないのは、小父さまの世界では残念なことだそうですね。
なのでわたくしも、観念することにしました」
目を瞑った少女の胸もとから、赤いリボンを取り去って。
しずかにブラウスの胸をはだけ、ハイソックスに区切られたひざ小僧を崩していって。
このごろ好んで穿くようになったスケスケのパンティから透ける陰毛をなぞるようにして、舌で舐め抜き疼きをしみ込ませていって。
「できれば制服のまま」という少女の希望を容れて、それ以上は脱がさずに。
少年は自分の花嫁の純潔をムザムザと汚されてしまう歓びに打ち震えながら、いちぶしじゅうを見届けてゆく。
ギシギシときしむベッドのうえで、生真面目な少女の純潔は、シーツに散った赤いしずくとともに喪われていった。
「泣いちゃった」
べそを掻いた彼女の目許を拭うのは、もはやオレの役目ではない。
手を振って別れを告げる少年にお辞儀を返してゆくと、
「学校卒業しても、時々お勉強教えてくださいね」
彼女はそういって、イタズラっぽく笑みかけていった。
悔い改めた鬼畜。
2023年02月04日(Sat) 20:39:09
つ、鶴枝、、、っ!
樋沼謙司は悲痛な声をあげて、男ふたりの手ごめにされた妻を見た。
鶴枝の後ろから髪を掴まえて、
向かい合わせに立ちはだかるもうひとりに女の顔がよく見えるように、
力まかせにグイと頭を仰のけた。
ご婦人の髪をつかむものではない。
鶴枝の正面に立った未知の男は、仲間を冷静にたしなめた。
しかし、続けたひと言は、樋沼を戦慄させた。
礼儀を尽くせばきっとこの女(ひと)も、機嫌よくお前の恋人になってくれるだろう。
そういうつもりだったのか!?
樋沼は鶴枝を背後から羽交い絞めにしている男を見た。
彼は追川志乃生(しのぶ)といって、大学時代からの友人だった。
結婚式にも招んだから、鶴枝とも面識があった。
もともと鶴枝目当てに、ぼくたちを此処に招んだのか?
ぼくは・・・鶴枝をこんな目に遭わされるために、鶴枝を伴ってこの遠い街を訪問した というのだろうか??
追川が言われるままに鶴枝の髪から手を離すと、
未知の男はあとを引き取るように女の顎を捕まえて、おとがいをつよく仰のけた。
そして、女の首のつけ根を咥えると、がぶりと食いついた。
アアッ!
鶴枝が悲鳴をあげた。
男は女を抱き支えたまま、あふれ出る血潮をゴクゴクと飲みはじめた。
クリーム色のブラウスに、ボトボトと血潮が撥ね、むざんな斑点を不規則に散らした。
薄い唇から前歯をむき出しにして、鶴枝は苦痛に顔を歪めた。
しっかりと食いしばる前歯の白さが、樋沼の目に灼きついた。
ごくり・・・ごくり・・・
男が喉を鳴らすたびに、鶴枝は頬をヒクつかせ、眉を顰め顔色を翳らせてゆく。
鶴枝・・・鶴枝・・・
夫の呼ぶ声に応えるように、鶴枝は細っそりした掌に力を込めて、迫ってくる男の逞しい胸を弱々しく拒もうと試みたが、むだだった。
ふたりの男に挟まれながら、彼女は姿勢を屈め膝を崩し、なよなよとその場に尻もちを突いた。
支えろ。
吸血鬼に命じられるままに、追川が女の肩を支えた。
失血がこたえたのか、鶴枝は肩で息をしている。
吸血鬼は鶴枝のうす茶のスカートをひざまでたくし上げると、ふくらはぎに唇を吸いつけた。
肌色のストッキングがかすかに波打ちながら、恥知らずな唾液に塗りつぶされてゆく。
や、やめろ、、、
鶴枝の夫は、力なく呟いた。
うろたえ、悲嘆にくれる夫にはお構いなく、吸血鬼は再び牙をむき出して、鶴枝の脚に咬みついた。
パチパチと音をたてて、ストッキングが破れた。
鶴枝の下肢を彩る淡い色のストッキングは、卑猥な舌に舐め味わわれ、本来の用途にはない辱めを受けながら、破れ堕ちてゆく。
ストッキングを器用に剥ぎ降ろしてゆく吸血鬼の唇に卑猥な意図が籠められているのを夫は感じたが、もはやどうすることもできなかった。
鶴枝を手ごめにするまえに血をしたたかに吸い取られてしまった樋沼は、身じろぎひとつできなくなっていたのだ。
鶴枝の脚からストッキングを引きむしってしまうと、吸血鬼は彼女のうえに馬乗りになった。
追川は我が意を得たりとばかり吸血鬼の手助けをして、鶴枝の両肩を抑えつけた。
吸血鬼は鶴枝のブラウスを引き破り、スカートを腰までたくし上げた。
お願いだ、やめてくれぇ、、
哀れな夫のすすり泣き交じりの訴えも虚しく、吸血鬼はにんまりと満足そうな笑みを洩らすと、
逞しい筋肉に鎧われた臀部をスカートの奥の細腰に沈み込ませた。
片方だけストッキングに包んだ脚を切なげに足摺りさせながら、鶴枝は犯された。
下腹部にめり込まされた一物がしつように突き入れ引き抜かれ、彼女の奥底をくまなく汚した。
忘れられないセックスを体験させてやる。
吸血鬼のそんな意図が、
強く力を込めた猿臂やスリップ越しに突きつけられる筋骨隆々とした胸板、
それに重ね合わされた唇から容赦なく嗅がされる生々しくも熱い息遣いを通して、
鶴枝を圧倒した。
気がつけば、男の背中に腕をまわして、しがみついてしまっていた。
荒々しい吶喊に耐えかねてのこととはいえ、夫の目の前でほかの男に抱きついてしまったはしたなさに慄えながら、
男が無理強いに強いてくる激しい上下動に腰の動きを合せていった。
妻のふしだらを咎めるような夫の視線が、呪わしかった。
貴方が守ってくださらないからこんなことになったのよ、と言いたくなった。
しかし、屈強な男が二人、それも一人は吸血鬼という異常な状況で、夫になにができただろう?
彼にできたのは、妻に先だって瀕死になるほど吸血されて、仇敵に自分の妻を征服するための精力を与えたことだけだった。
お次は俺の番――
今度は追川が、鶴枝に迫った。
吸血鬼による凌辱に半死半生となった鶴枝のうえに、容赦のない追い打ちが加えられた。
同じく強姦であっても、相手が顔見知りであるほうが、罪の意識の生々しさは倍加する。
「こんどは人間どうし、仲良くしようぜ」
男はむごいことを言って、悔し気に歯噛みをする夫のまえで、その妻に迫った。
女はもうスカートしか身に着けていなかったが、豊かな胸を震わせながら、抱きつかれてゆく。
――貴男は主人のお友だちですよね?
ノーブルな細面に精いっぱいの批難を込めた眼差しを投げながらも、
もはや彼女の身体は彼女のものであって彼女のものではなかった。
お前たちは悪魔だ・・・
近寄ってきた吸血鬼に、樋沼は毒づいた。
ああ、確かにな。
吸血鬼はあっさりと、夫の悪罵を認めた。
よく視ておくんだ。
自分の女房がヤられるところなんて、めったに観られるもんじゃないぜ?
吸血鬼は夫の視線をその妻のほうへと促した。
呪うべき宴の坩堝にあって、鶴枝は理性を奪い尽くされて、夢中になっていた。
二人めの男と組んづほぐれつしながらも、突っ込まれた一物の齎す疼痛に耐えかねて、
柳眉を逆立て細っそりとした腰を激しい上下動にゆだね切ってしまっている。
交わし合う口づけは熱を帯び、ほどかれた黒髪を蛇のように上背に絡みつけながら、
本能のもまの吶喊を許すたび、その髪をユサユサと揺らしていた。
「あなた視ないで」という叫び声はいつしか、「あなた、視て視て!」に変わっていた。
大人しい彼女としては信じられないことに、大きいッ!と声をあげ、自分から暴漢に抱き着いてゆく。
慎ましく淑やかだった若妻は、夫の旧友を相手の交接に、耽り抜いてしまっていた。
どうだ、少しは気が晴れたか?
女を夫のまえに置き去りにすると、吸血鬼は男に訊いた。
ああ、かなりスッとした。
男は言下にそうこたえたが、すこし経ってから呟くように続けた。
あのだんなさんには、ちょっと悪いことしちまったな――
樋沼夫妻は、吸血鬼の主催する婚礼にそれとは知らずに招かれていた。
招いたのはほかならぬ追川で、彼自身もついふた月ほど前に、当地に住み着いたばかりだった。
移り住んでひと月と経たないうちに、男はこの土地の流儀を思い知る羽目になった。
夫婦ながら吸血された挙句、目の前で妻を犯されモノにされてしまったのだ。
さっき自分たちが犯したのと、まったく同じ経緯だった。
強気な追川は、自分一人がこのような目に遭うことに納得がいかなかった。
当地では妻を吸血鬼に差し出した男はべつの人妻を襲う権利を与えられたので、彼はさっそくその権利を行使することにした。
手ごろな知人夫婦を選んでこの街に呼び寄せて、コトに及ぶことを目論んだのだ。
自分の欲望を遂げるためには、経験者の協力が必要だった。
彼は自分の妻を愛人にしてしまった吸血鬼に、力添えを依頼した。
それが、さっきの一件だったのだ。
もともとあんたが悪いんだぞ。
追川は吸血鬼に、責任転嫁した。
もちろんだ。
吸血鬼はこたえた。
「あんたの奥さんは魅力的だからな、俺はひと目で、ヤるしかない、と思ったんだ。
だがこれだけは、言わせてくれ。
女を憎んだり侮辱するためのセックスは止めることだ。
お前はあのひとを欲しくて、此処に招んだんだろう?
あのひとが恋しいなら、友だちにそう言えば良い。
ただ踏みにじるだけのために招んだのなら、さっさと家に帰してやれ。
ついでに自首することを薦めるね」
そんな勝手な・・・
追川はそう言おうとして、止めた。
相手の言い草に一理を認めたのだ。
確かに妻は犯されて、やつのものになってしまった。
手段は邪悪だったが、妻に熱烈に恋したことは間違いない。
そして、今でも愛している妻は、彼のもとを去ることはなく、ともに暮らしている。
吸血鬼は追川夫人を犯しながらも、夫婦別れをしないよう配慮を重ねてくれていたのだ。
時折遂げられてしまう不倫を除けば、なに不平を交えることのできないほど、妻は自分に尽くしてくれていた・・・
「それに俺は、女を選ぶのと同じように、だんなのことも見極めたうえで手を出している」
吸血鬼はいった。
「自慢するな――」
追川は口を尖らせたが、徐々に落ち着きを取り戻していた。
どういうことだよ?
声を潜めて問う追川に、吸血鬼はこたえた。
「妻を襲われて興奮してしまいそうな、寛大なご主人をもつご婦人だけを狙っているのさ」
追川は、一言もなかった。
「あんたにも権利はあるから、いちどは付きあった。
だが、身体目当てに女をいたぶるだけのセックスしか考えないのなら、俺は手を切るぜ」
吸血鬼は真顔だった。
「わ、わかった・・・」
追川は観念したように、いった。
「俺は自首する。
樋沼夫人は独身時代の俺にとって、理想の女(ひと)だった。
でももう、取り返しがつかないよな。。」
追川はむしろ、サバサバとした表情になっていた。
「和美のことはよろしく頼む。
いまだから言うけど――女房を気に入ってくれたのがあんたで、ほんとうは良かったと思っていたんだ」
追川が起ちあがると、控えめにノックする音がした。
誰だ?とドアを開けると、そこには樋沼夫妻が佇んでいた。
追川は、きまり悪そうな顔つきになった。
樋沼も、さらにきまり悪そうな顔をしていた。
鶴枝はその樋沼に隠れるようにひっそりと立っていて、夫の肩越しに追川を見つめている。
「さっきは――」
追川が言いかけると、樋沼がそれを遮るように、いった。
「追川くん、迷惑でなければ、その・・・うちの家内の恋人になってくれないか?」
え?
追川はあ然とした。
「申し訳ありません、お二人の話を立ち聞きしてしまいました。はしたないことです」
鶴枝は小さな声で頭を下げた。
「あのあと、主人と話し合ったんです。
わたくし、主人以外の男性は、初めてでした。
あまりのことに気を呑まれて、つい夢中になってしまいましたが――
たぶん、夜のお相手の相性は、追川さんととてもよろしいと思ってしまったんです。
主人は、わたくしと別れたくないと言ってくれました。
ですので――恋人ということでいかがでしょう?
ひとりの人妻として、恥ずかしい申し出だとは重々承知しております。
でも――貴男の身体が忘れられなくなってしまったの。
吸血鬼様も、よろしかったら・・・毎日のお相手はいたしかねますけれど、お尽くししたいと存じます」
樋沼が妻に代わった。
「情けない話だけど、きみには完敗だ。
昔はぼくのほうがモテたつもりだけど――本丸を攻め取られちゃったね。
生真面目な鶴枝をあそこまでたらし込んじゃうなんて、お見事だった。
これからはきみのことを、男として尊敬するよ」
目を白黒させている追川に、吸血鬼はいった。
「だから言ったはずだ。俺は狙いをつけた女の亭主まで観察すると」
「鶴枝って、呼び捨てにしてもかまわない?」
鶴枝はにこやかに答えた。「ハイ、追川さま」
追川はきょうにそなえて、入念なリハーサルをしたのだと打ち明けた。
妻の和美を鶴枝に見たてて、二人の間に挟んでどんなふうに料理するかの手順を決めていたのだ。
「どうりで手早いわけだ」
樋沼はあきれた。
「奥さんの髪を掴んだりして、申し訳なかった」
追川は謝罪した。「人妻を恋人にするなら、もっと相手を気遣って」と、妻に忠告されたともいった。
「きみ自身、このひとに奥さんを犯されていたんだね」
「同病相憐れむということさ」
追川はこたえた。
樋沼は鶴枝に促されて、口ごもりながらいった。
「きょう鶴枝を連れてきたのは――
さっきの”儀式”をもう一度やって見せて欲しかったんだ」
視るのがくせになりそうだ――樋沼はそういって笑った。
鶴枝は真新しいスーツを着ていた。
「このお洋服も、堕とすの楽しんでくださいね」
そして、真新しいストッキングを通した脚を、上目遣いの媚びを含みながら、差し伸べてきた。
「わたし、わたくしね――」
鶴枝は羞ずかしそうに、いった。
「髪を掴まれるの、嫌じゃないの。
わたくしを主人の前で、さっきみたいに荒々しく引きずり回してくださいませんこと?」
吸血鬼に狙われた夫婦の、寛容な対応
2023年02月04日(Sat) 19:54:38
あなた、この方はいったい、、、
妻はそこまで言いかけて、絶句した。
素早く背後にまわった吸血鬼に、首すじを咬まれたのだ。
さっきまでわたしの身体から、働きざかりの血をたっぷりと吸い取った彼は、
わたしの妻の生き血も、喉を鳴らして美味そうに漁(あさ)り獲ってゆく。
おびただしい血を喪ったわたしは、吸血鬼の性(さが)を植えつけられてしまっていた。
長年連れ添った妻の安否を気遣うよりもむしろ、
三十代の人妻の活き活きとした血に酔い痴れる彼の満足感に、同感を覚えていた。
血を吸いあげるゴクゴクという音が、リズミカルにわたしの鼓膜を浸した。
妻が生命を落とす危険はなかった。
大人しく血液を提供しさえすれば必要以上の危害は加えられないことも、彼との交際を重ねるうえで熟知していた。
むしろ彼の友人の一人として、かち獲た獲物に彼が満足していることが、むしょうに嬉しかった。
たとえそれが、最愛の妻だったとしても――
わたしたち夫婦の血液が、干からびた彼の喉をおだやかに潤してゆく。
2人で力を合わせて、彼の喉の渇きを飽かしめているのだ。
夫婦ながら抜き取られた血液が、干からびた彼の血管を緩やかにめぐり、荒涼殺伐とした彼の心象を宥めてゆくのを感じて、
えもいわれない歓びが、わたしの胸をひたひたと浸していた。
仰向けに倒れた姿勢のままぼう然と天井を見あげる妻は、その身をめぐる血潮を好き勝手にむさぼらせてしまっている。
気絶した人間の血は、自由に漁り獲ってよい。
それが彼らのおきてだった。
もしも妻が、自分の血を彼らに与えることを希望していたとすれば、いまの彼女の振舞いは、吸血鬼のためのもっとも適切な応接だった。
ひとしきり妻の身体から血液を吸い取ってしまうと、彼は顔をあげてわたしのほうに視線を投げた。
口許にも、頬にも、ばら色のしずくをテラテラと光らせている。
さすがはあんたの奥さんだ。わしに対するもてなし方をよぅわきまえておいでぢゃな。
そんなはずはない、、、
彼女はただ、彼の腕のなかでうろたえ抜いて、好き放題に血液を摂取されてしまっただけなのだ。
紹介があとさきになってしまいましたね。
わたしの家内です。
富美子といいます。
今年で38になります。
貴男にとっては、食べごろだったのではないでしょうか?
わたしがいうと、彼も語った。
富美子さんの血液型はO型だ。ご主人といっしょだね。
処女のままあんたに嫁いで、浮気歴はない。
身持ちの良い奥さんだ。
几帳面で、規則正しい日常を送っていて、身体のケアもきちんとしている。
だから、血の味も良い。
齢より若々しい、熟れて麗しい血液をお持ちでいらっしゃる。
わしにご紹介くださるのは本意ではなかろうが、
わしはあんたの奥さんに惚れてしまった――
困ります。迷惑です。
うわべは拒みながらも、わたしは恋を告白された少女のように、胸をドキドキとはずませていた。
妻のことをたんに血液を摂取する対象としてしかあしられないよりも、
一人の女として興味をそそったことが、誇らしくもあり嬉しくも感じたのだ。
いつの間にか目ざめた妻が口をはさんだ。
「このかた、吸血鬼・・・?」
「ああそうだ。親しくしている友人なんだ。
引き合わせるのがあと先になってしまったね」
わたしはこたえた。
お友だちなのね、と、妻はいった。
「だから時々、彼にはぼくの血を吸わせてあげているんだ。
ぼくの血は、彼の好みに合っているそうだ。
どうせ痛い想いをして吸い取られるなら、美味しく飲んでもらったほうが嬉しいと思っている――」
「だから、貴方の血を・・・?」
「そう。いつものようにあげていたら、とつぜんきみが入ってきた」
「わたくし、びっくりしてしまって――」
自分が血を吸われてしまったことよりも、
わたしの友人のまえで粗相がなかったかと、妻はそちらのほうを気にかけていた。
所帯持ちの良い彼女らしい反応に、彼とわたしとは安堵の目配せを交わしあう。
「貧血を起こしたね?だいじょうぶかい?」
わたしが気遣うと、妻はゆるやかにかぶりを振った。
「イイエ、だいじょうぶ。わたくし、体は強いのよ」
妻は気丈にこたえた。
初めて遭った吸血鬼に対して、幸い妻は嫌悪も恐怖も感じないようだった。
夫の親友として紹介されたこともさることながら、
吸い取られた血液と引き替えに体内に注入されてしまった毒液が、彼女をそうさせたのだろう。
妻は吸血鬼に優しく会釈を投げると、いった。
「いかがでしょうか?わたくしの血は、お口に合ったのでしょうか?」
妻はさぐるような目で、吸血鬼を見た。
自分の奥底まで識られてしまったかのような羞恥ににた感情が、妻の横顔を微かに翳らせていた。
「今年出逢ったどんな人妻よりも、美味でしたぞ」
吸血鬼な満面に笑みをたたえて、妻に言った。
「いやな方!」
妻はおどけて、彼の背中をどやしつけた。
彼が言外に含めたエッチな意図を、半分くらいは理解している様子だった。
――厚かましいお願いだが、
と、彼は前置きして、
「奥さんの血をもう少しだけ、恵んではいただけまいか?」
そういって、妻とわたしとを、等分に見つめた。
妻の生き血については、わたしにも夫としての発言権があると言いたげな様子だった。
妻はわたしを見て、良いかしら?と小声で訊いた。
彼女に応えるかわり、わたしはいった。
「よろこんで進呈しましょう。わたしに遠慮は無用です」
彼よりもむしろ妻のほうが、嬉しげにわたしを見返した。
では――というように、妻はおとがいを仰けて、吸血鬼に向き合った。
無防備にさらされたうなじに、鋭利な牙がゆっくりと刺し込まれてゆく。
痛みよりもむしろ心地よい疼きが伝わっているのが、彼女の顔色でわかった。
静かに音を立てて妻の血が啜り取られてゆくのを、
わたしはズキズキと胸をはずませて見入っていた。
ネッチリと食いついてくる牙に酷たらしい傷をつけられながら、
妻もまた自分の血を飲み耽る喉鳴りに聞き惚れるように、ウットリと目を瞑り吸血されていった。
男はわたしの妻を抱きすくめて、30代の人妻の熟れた血に酔い痴れてゆく。
吸血鬼に迫られた女はふたたびベッドに倒れ込みながらも、心尽くしのもてなしを続けて、血を捧げ抜いた。
男の抱擁から開放されると妻は、ふらつく頭を抑えながらも気丈に起きあがった。
気遣うわたしの目に「だいじょうぶ」と応えると、
姿見の前に身をさらし、首すじにつけられた咬み痕を、うっとりと眺めた。
首のつけ根のあたりに2つ、赤黒い痣がくっきりと刻印されている。
自分が吸血鬼の所有物になった証しを目にして、彼女は嬉しげに白い歯をみせた。
歯並びの良い前歯だった。
「わたくしのブラウス、汚さないでくださったのね?」
姿見に映された傷口に見惚れながらも彼女は、身に着けた衣裳を彼が毀損していないことを確かめると、
妻は自分の血を吸った男に、称賛のまなざしを投げた。
「ほんとうは・・・きみの服を汚したがっていたのだよ」
わたしは彼女に教えてやった。
餌食にしたご婦人は装いもろとも辱め抜くのが、彼の好みなのだと。
じゃあ汚して。
妻は驚くほどあっさりと、身に着けた衣裳を血濡らされてしまうことに同意した。
「代わりのお洋服、おねだりしても良いかしら・・・?」
こういうときの甘えた上目遣いは、妻のもつ魅力のひとつだった。
「もちろん――」
わたしも、気前の良い夫の顔になっていた。
では、もっと噛んで。
妻はにこやかに、男にいった。
絨毯のうえに抑えつけられて。
妻は唯々諾々と、三たび咬まれてゆき、
引き抜かれた牙からしたたり落ちるちしおで、真っ白なブラウスをしたたかに濡らされてゆく。
飢えた吸血鬼に襲われて、その素肌を魔性の牙の犠牲にされてゆく貴婦人を姿見のなかに認めながら、
妻は満足そうにまた、白い歯をみせた。
脚をイタズラしても良いかね?
吸血鬼が妻にそう囁くと、彼女はけだるげにベッドににじり寄って腰を下ろした。
ストッキングを脱ごうとした妻の掌を軽く抑えると、
彼女の足許を薄っすらと彩るナイロン製の生地のうえに、好色な唇を這わせてゆく。
「まあ、いやらしい・・・」
潔癖な婦人としては当然な批難を口にしながらも、
唾液をヌメらせながらストッキングをいたぶる卑猥なやり口を、妻は拒もうとはしなかった。
ためらいもせずに自分から脚を差し伸べて、
気品をたたえた足許の装いを男の愉しみに供してゆく。
自分の穿いているストッキングが、よだれをたっぷりとしみ込まされて、ふしだらによじれ、皺くちゃにされてゆくのを、
妻は面白そうに見おろしていた。
そして、求められるままに、ストッキングを惜しげもなく咬み破らせていったのだ。
吸血鬼はもはや、人妻を襲う獣と化していた。
男の荒々しい息遣いに切なげな吐息で応えながら、
夫婦の褥のうえに抑えつけられて、
迫られた唇に唇を合わせてゆく。
首すじに熱っぽく吸い着く唇が、べつの意図をもっていることに気づきながらも、
彼女はイタズラっぽい笑みをチラチラとわたしのほうに投げながら、
少しずつブラウスをはだけられ、
スカートの奥に手を入れられて、
破れたストッキングをずり降ろされてゆく。
失血のあまり身体の自由を奪われていたわたしは、
悪友の好色な腕のなかから最愛の妻を救い出すことができずにいた。
それを良いことに、彼はわたしだけのものだった妻の貞操を、モノにしてしまおうとしている――
わたしだけの妻が、ほかの男に奪われようとしている。
夫としての人並みな危機感に苛まれながらも、
そうした苦痛や羞恥すらも。わたしは愉しみはじめてしまっていた。
恥ずべき愉しみだった。忌むべき歓びだった。
けれども、血液もろとも人並みな理性を吸い取られたわたしはもはや、どうすることもできなかった。
妻を吸血鬼の意のままにさせてしまうこと。
それは夫としては恥ずべき行いだと承知していながらもなお――
わたしは妻の貞操の危機に、いい知れぬ悦びを感じはじめてしまっていた。
レイプに似た荒々しいあしらいに、妻もまた抗いながらも応えてゆく。
夫の親友である吸血鬼に理解を示して気前よく吸血に応じた妻は、
熟れた人妻の生き血を餌食にされてゆくことに歓びを植えつけられてしまっていたが、
こんどは女として獲物になることさえも、受け容れようとしている。
うす茶のスカートが、じょじょにせり上げられてゆく。
ストッキングを片方脱がされた脚が、白蛇のように淫らにのたうち、くねってゆく。
裂き堕とされた肌色のパンティストッキングがずり落ちて、ハイソックスほどの丈になって、ふやけたように妻の足許にまとわりついている。
健全なるべきわたしの令夫人の貞操は、このようにして汚された。
手練手管に長けた吸血鬼を相手に、ユサユサと身体がしなるほどにあしらわれて。
妻は完全に手玉に取られ堕ちていった。
荒っぽいロマンスに酔い痴れてしまっていた。
決めごと、しませんか?
嵐が過ぎ去ると、妻がいった。
わたしは再び彼の牙を首すじに埋め込まれて、ふたりが熱烈なロマンスにうち興じるための原資として、したたかに血を吸い取られてしまい、絨毯のうえに転がされていた。
思う存分血を抜き取られたあとの、奇妙にスッキリした気分に、わたしは浸されていた。
妻の細腰にくどいほどペニスを突きたてていった吸血鬼に対しても、
悪友の不埒な挑発に大胆に腰を振って応えてしまった妻にたいしても、
怒りの感情は湧いてこなかった。
ふたりのセックスはピッタリと息が合っていて、ヒロインがわたしの妻だという以外、申し分のないカップルに見えた。
妻は不倫の恋人を得たことを、わたしは妻が恋人を得たことを、悦んでいた。
妻はスーツのジャケットを、ブラウスをはぎ取られてむき出しになった肩に羽織り、片方だけ引きちぎられたスリップの肩ひもをもてあそんでいた。
めくれ落ちたスリップからは、豊かな胸を片方だけ、無造作にさらけ出している。
頭の後ろにアップにしてまとめあげていた黒髪はほどかれてジャケットの肩に乱れかかっていた。
お嬢さんのように、と言いたかったが、ふしだらに波打つようすはむしろ、娼婦のそれを連想させた。
「ごめんなさい、楽しんじゃった。」
ふだんにない稚なげな調子で、妻が呟いた。
「俺もだ。奥さんなかなかやるね。」
吸血鬼は、イタズラっぽく嗤った。
「悪かったな、ご馳走さん。」
わたしに向かって告げられたのは、あっけらかんとした謝罪だった。
「恥ずべきことに、どうやらぼくもそうらしい。」
わたしも告白した。
妻が犯されているあいだじゅう、わたしのペニスも逆立ちせんばかりに、昂りつづけてしまっていた。
それを吸血鬼も妻も目にしていたが、どちらの目にも軽蔑や批難の色はなかった。
「決めごとって、どんな?」
妻の申し出に、だいぶ間をあけてわたしは訊いた。
「貴方はこれからも、このかたに血を差し上げるおつもりね?」
妻がいった。
もちろんだ、と、わたしはこたえた。
「だとすると、わたくしのロマンスも受け容れてくださるおつもり?」
妻の瞳に、いくらかのためらいと不安とが浮かぶのを見てとると、わたしほいった。
「きみは、ぼくの妻を愛してくれますか」
向けられた問いに、彼は言下にこたえてくれた。
「もちろんだ」
「ありがとうございます。妻を奪われた甲斐があります」
「でも、奥さんをきみの手から奪い取ろうとは思わない。
あくまでも、きみの令夫人のまま犯しつづけ奪い尽くしたいのだ」
「嬉しいです――貴男に妻を奪われて、満足です。
貴男を家内の恋人として、ぼくたちの家庭に迎えたい・・・」
言いながらわたしは、胸が激しく掻きむしられるのを感じた。
それは無念さや屈辱からではなく、危険な関係を自ら受け入れることへの、ときめきによるものだった。
いまでは、三人のなかでは、ふたりのロマンスはこのように理解されている。
彼は人妻の生き血が好物だった。
ぼくはさいしょから、最愛の妻を彼の獲物として捧げたい感じていた。
人妻の生き血に飢えていた彼は妻を襲って生き血を美味しくむさぼり尽くしてくれた。
そればかりか彼は、妻に対して女としての関心を抱いてくれた。
妻は彼の吸血癖に理解を示し、彼の欲求にキチンと応えるべく、親友の妻として自身の血で渇きを飽かしめることに同意した。
そして、迫られるままに肌身を許し、夫であるぼくの前でロマンスを実らせた。
ぼくの前で結ばれた愛の儀式は、ぼくに対する裏切り行為だとは思っていない。
親友がぼくと同じ女性を好きになってくれたことを嬉しく思い、ふたりのロマンスを心から祝福している――