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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血されるカップル

2007年05月16日(Wed) 00:10:24

その青年は、女の子のように控えめな目鼻と、ごく目だたない性格の持ち主だった。
しいてその子を特徴づけるなら。
女の子の服が気に入りだ、ということ。
母親や、姉たちの身につけるフェミニンな衣裳に魅せられて。
どうにもならなくなって、気がついたら人知れず、
箪笥の抽斗を、こっそりと開けていた。

似合うよ。すこしもヘンじゃない。
唯一、己の嗜好を明かした親友は、顔色ひとつ、変えないで。
真顔で彼の好みを肯定してくれた。
ありがとう。
深い声色に、親友も満足したらしい。
いちど、気に入りの服を着て、遊びにきてくれないか?
そんな求めにすら、なんらの疑いもさしはさまずに。
青年は真夜中、ストライプ柄のワンピースに身を包み、
しゃなりしゃなりと夜道をたどってやって来た。

きれいだね。きみ・・・
親友は、まるで恋人に接するように、うっとりとした目つきをして。
しなだれかかるように、迫ってきた。
同性愛の嗜好はなかったけれど。
甘やかに妖しい雰囲気に、呑まれるようにして。
青年はなされるがまま、身をゆだねてしまっていた。
フェミニンなワンピースの上から、身体をまさぐられながら、なかば夢見心地になって。
相手の青年がすり寄せてくる唇の裏側に、飢えた鋭利な牙が秘められているなど、夢想だにせずに。

かりり・・・くちゅうっ。
かすかな痛みと奇妙な音に、われにかえったときには。
もう、身動きできないまでに、がんじがらめに抱きすくめられていて。
その内側で、身につけている女ものの衣裳までもが、
彼を呪縛にかけるがごとく、しつように巻きついていた。
唯々諾々と。嬉々として。
彼は、求められるまま、うなじをえぐられて。
若い生き血を、ちゅうちゅうと。果てなく吸い出されてゆくのだった。

彼女がいるんだよね?
紹介してくれるよね?
きみの女装趣味に、まだ気づいていないんだって?
将来、結婚するつもりなんだろう?
だいじょうぶ。うまく取り計らってあげられるから。
そんな妖しい囁きに。
青年はうっとりと、自らのすべてをゆだねきってしまっている。

連れてきた彼女は、
友だちの結婚式の帰りだといっていたけれど。
鮮やかな若草色のワンピースに、少し濃いめの化粧をしていて。
足許を彩る肌色のストッキングも、いつもよりツヤツヤとした輪郭に縁どられていた。
おいしそうだね。
そんな言葉を、のみ込んで。
親友は若いカップルを、闇におおわれた館へと、招待する。

父さん?父さん?いるかい?
少年のころの声にかえって。
親友は闇の彼方に呼びかけた。
ズボンの下に秘めているのは、女もののストッキング。
青年から密かに手渡した、恋人の持ち物だった。
濃いめの黒は、紳士用の薄手の靴下だと弁解しても。
きっと彼女には、見抜くことができなかっただろう。
もっとも。
女装の彼に、愛用のストッキングを脚に通されるのは。
案外彼女にとっても、不愉快なことではなかったかもしれないが。

闇から追われるようにして現れた初老の紳士は。
青年と、うら若い女性のことを、
かわるがわる、まぶしそうに見比べていたけれど。
友だちと、彼女なんです。
息子が折り目正しく挨拶すると。
かわるがわる差し伸べられた手の甲に、紳士らしい接吻を重ねてゆく。
古風な挨拶を面白そうに受け入れた男女は、くすぐったそうに笑んでいた。
皮膚を通して巡る血潮を感じながら。
相手がひそかに、胸震わせているとも知らないで。

ほんのつかの間のことだった。
さいしょに、青年が。
つぎに、恋人が。
青年は、親友に。
恋人は、その父親に。
抱きすくめられて、うなじを吸われて。
ワンピースの胸に、ワイシャツの胸に。
若い血潮を、撥ねかせてしまっている。
やがてそれは、得がたいほどの愉悦になり代わって。
ふたりとも、唯々諾々と。嬉々として。
目のさめるほど鮮やかな衣裳を、己の生命の色に染め抜くことを愉しんでいた。

たくし上げられた青年のズボンの下。
目を見張る恋人のまえで、親友は脛に唇を当ててゆく。
親友の唇と、迎え入れる皮膚のあいだに介在するのは。
薄手の黒のストッキング。
よく見ると、相手の青年の脚もとも、おなじ色合いに映えていた。
お嬢さん。彼氏を見習うといい。
貴女のお召しになっているストッキングよりも。
彼のもののほうが、いい色合いをしているだろう?
きみの未来の花婿は、いいたしなみをもっているようだね。
彼の愛用のストッキングは。舌触りさえ、なめらかなのだよ。
初老の吸血鬼のささやきに。
女は応えなかったけれど。
うっとりとなって、恋人に囁いている。
こんど、あたしの服を貸してあげる。
明日の晩、ふたりでここに来ようね・・・と。
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