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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

お見合いパーティー

2007年12月06日(Thu) 07:19:33

シャンデリアきらめく、ゴージャスな一室に。
ドレスアップした男女が群れ集う、お見合いパーティー。
美藤貴晴は、そのなかでひときわ目立ついけめんの美男子。
カツイセタオは、まったくさえないうっそり男。
それなのにどういうわけか仲がよいのは、本人たちも首をかしげるばかり。

目だたない小さな扉の向こう側には、ちょっと一服できるようなソファがしつらえられていて。
意外にくたびれる立食パーティーの席では、なかなか重宝されてしかるべきなのに。
その存在を知っているのは、なぜかこの二人だけ。
気に入りの女性ができると、そっと手を引いて。
あとはもう、お愉しみのまま・・・
とはいったものの。
ふたりの愉しみ方は、かなり違っている。
なにしろ貴晴はふつうの健康に人間なのだが、
セタオのほうは、吸血鬼だったのだから。

「ほら」
貴晴が得意げに見せびらかしたハンカチには、紅いシミがじんわりと。
セタオがおずおずと取り出したハンカチにも、おなじような色のシミがどんよりと。
貴晴のそれは、首尾よくいただいた女が、処女だった証し。
セタオのほうは、血を吸い取った首筋をぬぐった名残り。
「ふうーん」
セタオは感心したように、貴晴の”戦果”をみとめたけれど。
「いったいどうやったら、そんなに簡単に処女を落とせるんだよう」
ほんとうに切なさそうな声になったのには、貴晴もぷっと吹き出してしまった。
「ははは。ウデの違いだよ」
ますます得意げに鼻うごめかす悪友に、セタオはますますげんなりとする。
気安い間柄だったから。
イカツイヘタオだの、カッタルイネタオだのと呼ばれても、ちっとも頭にこないのだが。
いちばん頭にくることは・・・
「お前、ほんとうは結婚しているんだよな?」
ソウイウ立場デコンナトコニ美男ヅラヲサラスナヨ・・・
どうしたって、そういってやりたくなる。
「ばらすなよ~。あとが怖いぜ」
ちぇっ。
この男には、なにかと頭があがらない。
よほどの優越感をもっているのか、信頼されきっているのか、はたまたなめきっているのか。
美人の奥さんを結婚前に貸してくれて、血を吸わせてくれたりとか、
名門校に通っている妹やその友だちを紹介してくれたりとか、
吸血鬼のくせに、なにかと、なにかと・・・頭が上がらないのである。
どうしてこういうやつに、処女の嫁さんが来るのだろうか?
腕のなか、うっとりとなった貴晴の婚約者の透きとおるような肌を見つめながら。
現れる女、血をかすめ取った女。
どんなに純情そうな顔をしていても、初々しいぎこちなさを漂わせていても。
だれもかれもが、経験者だった。
生まれたときから経験ずみなんて女、いるわけないのにな・・・
吸血鬼のくせに、処女に出逢えない。
さえないセタオにしても、シンコクな悩みだった。

紳士協定だぜ?
ニヤニヤと趣味のわるい笑みを浮かべていたあいつの顔が、今でも目に浮かぶ。
友だちを裏切ることができない性格をよく知っている彼は、
未来の花嫁の処女の生き血まで、悪友に与えながら。
新婚初夜まで義理堅く、とうとうそれ以上のことをできなかったセタオから彼女を取り返すと、
さいしょの約束どおりしっかりと、処女をゲットしてしまっている。
お前も、処女の嫁さんができるといいなぁ。
冷酷なからかい口調は、その実半分は思いやり深い本音だったりする。
義理堅いのは彼のほうもいっしょで、あれほど女好きなくせをして、自分の嫁になる女には、新婚初夜まで指一本触れなかったくらいなのだ。
セタオが処女の生き血を吸うチャンスを、ひと晩でもよけいに与えてやろうとして。
けれども、せっかく紹介してやった妹やその友だちも、そちらのほうはしっかり”卒業”してしまっていた。
そうそう。
お友だちの、いくたりかは。
かれ自身が毒牙にかけていたりしたのだが。
吸血鬼の牙となじくらい、手ごわい毒牙に。

いけねぇ。いけねぇ。
めずらしく貴晴が、頭を抱えるようにしてこっちに逃げもどってくる。
あのタイプは、苦手~。
顔にそう、書いてある。
これほど手だれな男でも、かなりしばしば逃げ帰ってくるものだ・・・ということは。
長いつきあいでそれとなく、わかるようになっていた。
ウマが合わないと、どうしようもないものなんだな。
腹の中でそんなふうに納得しながら。
どう苦手なんだよ?
目で合図をすると、
まー、話してみな。
もうそれ以上、あんな女にかかわりたくないと言いたげにして。
貴晴は別の方向、きらきらした衣装につつまれたはしゃいだ集団のほうへとほこ先をかえた。
あきらめのよさが、つぎの成功を生むのだよ。
いつもの勝手な言いぐさだが。
それがしばしばほんとうの成功を生むのを、セタオはいやというほど見せつけられている。

そんな貴晴が三舎を避けたのは。
上背のある、凛々しいかんじのする美人。
ほっそりとした白い首筋が、軽くウェーブのかかった黒髪に映えて、いっそうなまめかしい。
さほど濃く刷いているふうもない化粧はかえってノーブルで、唇も地の紅さでひきたっていた。
純白のスーツに、黒のストッキング。
ぞくり、とした。
ほどよい肉づきのふくらはぎが、絶妙なカーブを描いていて。
黒、というよりも透明といったほうがふさわしい色合いの薄っすらとしたナイロンの彩りは、
脚の白さを滲ませて、脚線美の輪郭をくっきりときわだてている。
破ってみたい。
どす黒い衝動が、ぐるぐると渦巻いた。
あ、あ、あ・・・
あとは渦に巻かれる小舟のようだった。
どう口説いたものか、さっぱり記憶にない。
セタオの誘いにのって、女はぴんと張った背筋をいっそう伸ばして、
ぴかぴか光るエナメルのハイヒールのつま先を、例の小部屋へと向けていた。

おお・・・
笑うなかれ、セタオの目には、涙が宿っている。
とうとう掘り当てた、処女の泉。
口許のしずくを拭う手ももどかしく、彼はふたたび傷口に唇を寄せた。
もっと吸いたい、というよりも。
ただ、純白の衣装にしみをつけたくなかったから。
征服された女はただ、這わされる唇の妖しい疼きに身をまかせながら、
うぅ・・・っ、とうめき、細い眉をひそめるばかり。

うまくいったわね。
挙式は、今年のうちだってさ。気の早いやつだな。
貴晴はつけた煙草をガラスの灰皿にさすと、女の唇を吸おうとした。
タバコくさいのは、厭。
女は軽く拒みながら、それでもけっきょくは強引なキッスに積極的な返しをしている。
いい女だな。
品定めをするようにあごに手をやって、おとがいを仰のけると。
いけすかない。
女はかわいくなく、あかんべぇをした。
ほんとうは、あいつにはお前をくっつけたかったんだけどな。
あたしじゃやだ・・・って、いうんだもん。
ショジョじゃないから・・・なんて。どういうつもりなのかしら?
女はちょっと不平そうに口を尖らせたけれど、
でもあたし、まだ結婚するつもりないんだしー。
もっとお兄様とエッチを愉しみたいしー。
わざとかわいく小首をかしげて。
秀麗な目鼻にふふっとよぎらせた笑みは、兄とうり二つに見えた。

絶対、ナイショだよ。
妹にはあらかじめ、くぎをさされていた。
あの子、女学校に入るまえは、男の子だったんだ。
どうしても、女の子になりたいって、手術をして。
でもね、あたしの友だちのどの子よりも、女らしかった。
ほら、ドラマに出てくるみたいに。
しぐさも、落ち着いていて。
性格も控えめで、潔癖で、しおらしくって。
でも、性格が優しいのって、まえの性別のせいだと思うんだけどな。
たしかに・・・
妻や妹のしたたかさに接している貴晴にしてみれば、むしろそちらのほうが好ましくって。
結婚してもう何年もたつのに、いまだに女という女の尻を追いかけまわしている。
どちらが幸せなのか・・・
貴晴は吸いさしの煙草をとると、ふうっと勢いよく紫煙を吐き出した。

知っているよ。
すぐに、わかったよ。
独りで、悩みつづけさせるわけにいかないから。
さりげなく、聞いてやったんだ。
でもいまは・・・本物の女だから。
オレが、女にしてやったんだから。
世界じゅう、どこを探しても見つからないような、最高の女だよ。
悪い虫がつかなくて、よかった、よかった。
冗談まじりに語る悪友は、いまは別人のような頼もしさを漂わせている。
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