FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

人形(ひとがた)を彫る老婆

2007年12月09日(Sun) 07:09:49

ストレスを解消してくれるのが、睡眠です。
けれどもストレスがあまりにつのると、そうした眠りすらも妨げられることがあります。
そんな夜。
わたしはいつも、ドライブに出ます。
ちょっと風変わりな、ドライブです。
納戸に、母の箪笥があります。
スーツやワンピース、礼服にいたるまで、色とりどりの服が、そこに納められています。
それをわたしは身に着けて、寝静まった家族に気づかれないようにでかけるのです。
フェミニンなブラウスの、胸や肩先をさらさらと流れる感触や、
ひざのあたりにまとわりつく、スカートのすそのたよりない感覚。
それに、太ももをぴちっと締めつける薄手のストッキングのほどよい密着感。
そうしたもろもろがわたしを包み、まるで別世界に拉し去られるような気分になるのです。

その夜も、わたしはよく眠れませんでした。
明日は、日曜日。
多少の無理をしても、仕事にはかかわりがありません。
午前二時。
眼の覚めたわたしは、ためらいもなくベッドから起き上がり、納戸に足を忍ばせます。
かすかにきしみながら開かれた抽斗(ひきだし)の中。
母の衣装がいく揃いとなく、きちんと行儀よく折り畳まれています。
震える指先が選んだのは、黒の礼服でした。
わたしは抽斗のなかから母の礼服をそっと持ち出すと、いったん部屋に取って返します。
もちろん、着替えて”変身”するために。

黒一色の礼服に、黒のストッキング。
ぴかぴか光るエナメルのハイヒールだけは、自前です。
コツコツとヒールの足音を響かせて駐車場に向かうとき。
一歩一歩、歩みを進めることにさえ、ドキドキと胸が高鳴ります。
ぶるるるるん・・・
ときならぬエンジン音に驚いた猫が、ヘッドライトの限られた視界をすばやくよぎって消えていきます。
ごと、ごと・・・
砂利を噛むタイヤの音を気にしながら、深夜のドライブが始まるのです。

あてもなく車を走らせるうち。
いつか、峠道を越えてしまいました。
ときおり選ぶこのコースの先は、ほんとうは行ってはいけない村があるのです。
母に訊いても、理由は教えてもらえません。
とにかく、近寄らないでね。
そういうと、あとはぴたりと押し黙ってしまうのです。
なんでも、人形創りがさかんだと聞いているのですが。
それ以上のことは、わたしも知りませんでした。
けれどもこの村の辺りは、まるで隠れ里のように孤立していて、
人目を忍んでドライブを愉しむわたしにとって、絶好のスポットでした。
携えたデジタルカメラで、人目を気にせずにフラッシュを焚いて、
フェミニンな正装を着けた後ろ姿や、ストッキングに透ける自分の脚を撮るのです。

車を停めたのは、とある廃屋の前。
このあいだぐうぜん見つけたスポットです。
ほかの家並みから離れた一軒家でした。
からまるツタに埋もれるようにうずくまった平屋建ては、傾きかけた軒や破れたガラス窓をさらしながら、ひっそりとしています。
お邪魔します。
小声で囁くと、木霊がかえってきそうな静けさでした。
あたりのたけの短い雑草を踏みしめて、庭先に回ります。
もとは瀟洒な洋館だったらしく、しゃれたベンチがしつらえられていました。
携えてきた小型の三脚を据えて。
足を組んだり、折り曲げたり。
女のようにくねくねとしたポーズを、フラッシュが一瞬浮き彫りにします。
ほんとうに、女になったようなひと刻が過ぎていきます。

おや、女装の兄さんだね?
だしぬけにかけられた声に、わたしは飛び上がらんばかりにびっくりしました。
ふり返ると、いつの間に入り込んできたのでしょうか、
ラフなジャージ姿の中年の男性が、人のよさそうな笑いを浮かべていました。
なんと返事をしてよいものやら、ただもじもじとしてしまったのですが。
男はそんなわたしに、かえって照れくさそうに会釈を投げてきます。
すまん、すまん。邪魔したね。ここはだれも住んでいないから、好きに使うといいよ。
困ったことがあったら、あちらの離れに婆さんが住んでいるから、声かけてみな。
それだけ言うと、男は決まり悪げに首のあたりを掻き掻き来た道を戻っていきました。
まえに、ここで朝を迎えてしまったとき。
遠くからじーっと見つめている人影があったのです。
そのときの人だったのでしょうか。
ともあれ、危害も加えられず、咎められもせずに立ち去ってくれたのは、ありがたいかぎりでした。

そうそうに撮影を切り上げて、車に戻りました。
運転席に落ち着くと、ほっと一息。
時計を見ると、もう五時をまわっていました。
家に帰り着くころには、朝になっています。
どこで男の服に着替えようかと考えながらキーをまわすと、エンジンがかかりません。
寒くなると、エンジンのかかりが悪くなるのですが。
何度ためしても、プシン、プシンと、頼りない音がするばかり。
困ってしまいました。
業者に来てもらうにも、連絡の方法がありません。
ここは、携帯電話も通話できない場所なのです。
そうだ、と思いました。
男が教えてくれた家をたずねよう。
そこで電話を借りて、連絡すればいい。
さっきはびっくりさせられましたが、このときばかりは男に感謝する思いでした。
それにしても。
いまの女の格好では、とても人前に出ることはできません。
私は持ってきた男もののセーターにジャケット、スラックスを取り出しました。
ところが、なにをかん違いしたのでしょうか。
スラックスだと思い込んで持ち出してきたのは、夏もののハーフパンツだったのです。
ハーフパンツも、そろそろ違和感のある季節です。
そのうえ脚に穿いているのは、肌の透けて見える黒のストッキングでした。
ふとまさぐり当てたのは。
妹の箪笥の抽斗から内緒で借りてきたハイソックス。
黒のハイソックスはストッキング地で、ちょっと薄手でしたが、ストッキングよりはまだましです。
紳士用でも薄い靴下はあるんだと自分に言い聞かせて、思い切って車外に出ました。

離れに住んでいる老人は、どうやら朝の早い人のようです。
まだ早いのに、もう灯りが点っていました。
離れは、洒落たかんじのする母屋とはちがって、古びた日本風の一軒家で、やっぱり平屋でした。
こちらも母屋と似たり寄ったりのうらぶれようで、
戸板は外れ、障子は破れていて、すきま風だけでカゼを引くのでは、というていたらくです。
わたしはちょっとためらいましたが、ほかの民家は遠く、灯りが洩れてくるようすもありません。
思い切って、ドアを叩きました。
この古い家には、インターホンすらなかったのです。
ごめんください。車がえんこしちゃいまして・・・
婆さんの耳が遠くなかったのは、幸いでした。
やがて奥からしずかな足音がして、ギイ・・・と引き戸がきしむ音がしました。
面と向かった老婆は、枯れ木のように痩せこけた和服姿。
ちょっと赤ら顔で、ふさふさとした白髪をしていました。
疑わしげなまなこでじろじろ眺められたのは、仕方のないことでした。
女もののナイロンハイソックスの足許を舐めるように見まわされたときは、つい脚をひきたくなるほどでした。
老婆はまるで品定めをするようにわたしを眺めまわすと、得心がいったように頷いて、おあがんなさい、としわがれ声でつぶやきました。

車が動かなくなったとな?
遠方から来て・・・さぞや難儀じゃろうて。
人を呼ぶにも、まだ早すぎる。朝になるまで、ゆっくりしていくがよい。
棒読みでもするように抑揚のない声は、さびれたような静けさをもっています。
お言葉に甘えて、すこし休ませてもらうことにしました。
老婆が立ち去るとゆとりができたせいか、わたしは部屋を眺めまわしていました。
外れた戸板、破れた障子・・・
確かにすきま風は冷たく、ふだんなら凍える思いをしたことでしょうけれど。
さっきまで初冬のいちばん寒い夜更け刻に屋外にいて、しかも女ものの薄着で通していたのにくらべれば、はるかにくつろげる感じでした。
しつらえられた調度はすくなく、年代ものの黒ずんだ箪笥がふたつ、つくねんと置かれているだけでした。
箪笥のうえには、なにやらこけしのような人形が数体、佇むように置かれています。
そういえば、人形で有名な村だったっけな。
わたしは人形を見ようと箪笥に近寄りました。
人形たちはいちようにこちらを向いていて、はっきりこちらを見返してくるようでした。
一体一体まじまじと見てみると、思いのほか真に迫った造形です。
こけしの台座の部分は没個性的な円柱でしたが、その上の顔はあきらかにだれかに似せて描かれているようです。
めがねをかけた、分別盛りの壮年の男。
奥さんのように寄り添う別の一体は、人のよさげな丸顔に、落ち着いた笑みを浮かべています。
すぐ隣は、女学生くらいの少女。
髪の毛はわざわざそれと似せた黒糸を撚り合わせて、三つ編みのおさげをたくみに表現しています。
面差しは奥さん人形とうり二つで、まるで生き写しのようでした。
お逃げなさい。お逃げなさい。
え・・・?
どこかで声が、したようです。
耳を澄ますと、もうなにも聞こえません。
ちょっと離れたところに佇む一対の人形が、なぜかわたしを諭すように見つめています。
そういえば。
真ん中の一対も。
隅っこの家族らしい四体組みも。
どれも、これも、こちらを向いて、視線をわたしのほうへと集中させているのです。
まん前の一対に、なぜか目が行きました。
男のほうは、どこかで見覚えがありました。
けれども、それがだれなのか思い出せません。
思い出せないまま、ふと訪れた睡魔が、わたしをその場に横たえてゆきました。

ふと気がついたとき。
まだ、夜は明けていないようでした。
案外、それほどの時間が経過したわけではなかったのかもしれません。
眠りから覚めたのは、足首をギュッと握られているような違和感が、ひたひたと伝わってきたからです。
え?
たしかに、わたしはだれかに足首を畳の上に抑えつけられていました。
だれ・・・?
ふり返ろうとすると、身体が妙にけだるくて、いうことをききません。
どうにか首を振り向けると、視界のすみに古びた着物のたもとが映りました。
さっきの老婆のものでした。
とっさに、ふりほどこうと身をよじったのですが。
老人とは思えないほどの力でした。
ものもいわないで私の脚を抑えつけた老婆の顔がふくらはぎの真上にあるのを、気配で感じました。
ぬるり・・・
なま温かい感触が、ハイソックスの上からふくらはぎを撫でます。
這わされてきたものは意外に柔らかく、ヒルみたいにねっとりとしています。
そいつがストッキング地のハイソックスごしに、物欲しげに舐めくりまわしてくるのです。
時おりぬるりと洩れてくるのは、舌なめずりでしょうか。
まるで薄い靴下の舌触りを愉しむようにして、くり返しくり返し、なぶりつづけました。
あ、あ、あ・・・
わたしは声をたてることもできないままに、ただ老婆の行為を許しつづけるしかなかったのです。
かりっ。
ふくらはぎの一角に、硬くて鋭い異物がもぐり込んできたとき。
わたしは思わずキャッ・・・と、叫び声をあげていました。

うふふふ・・・うふふふふう・・・っ。
化け猫みたいになま温かい吐息を、首筋の周りをよぎらせながら。
老婆はしわくちゃの唇を突き出すようにして、わたしのうなじに幾度も幾度も這わせてきます。
ただ・・・這わせているわけではなくて。
首筋につけた傷口から、血を啜りとってゆくのです。
ズズ・・・ずずず・・・じゅるうっ。
不気味な音を立てながら、老婆はさも旨そうにわたしの血を吸い取っていったのです。
逃がさん。逃がさんぞ・・・
まるで男が女を抱きすくめるように、しつように。
老婆はわたしの肩を抱き、腕を抑え、手指を握り締めてきます。
わたしは、厭わしくて、厭わしくて、ひたすらかぶりを振りつづけて拒絶の意思をしめしたのですが。
老婆にはいっかな、通じません。
さっきいたぶられた足許からは、咬み破られたハイソックスが、ちりちりに引き剥かれてだらしなくずり落ちています。
そもじが履いておる靴下は、妹ごのものじゃな?
はじめて意味のある言葉をつづった老婆の声は、いやらしい欲情に満ちていました。
図星をさされてわたしが答えに窮していると。
よい、よい。言わんでもよいのじゃ。
老婆は吸い取った血をわたしの服の上にわざとしたたらせながら起き上がると、
人のわるそうな笑みをうかべて、箪笥の上を指し示しました。
人形のおいてある箪笥・・・そこにはもう一体、新しい人形が増えていました。
まだ削りかけで、彩色も施されてはいませんでしたが。
それは明らかに、わたし自身の人形だったのです。

人の生き血を頂戴するときにの。
礼のしるしに、ひとがたを刻んでやるのよ。
ひとがたを刻みながら、夜な夜な忍んでいって・・・
夜な夜な、呼び寄せて・・・
さいごにすっかり、魂を抜いてしまうのじゃよ。
魂が抜けきったとき、ひとがたはできあがる。
ぜんぶで十三体。
どれもこれも、たっぷり味あわせてもろうた。
いまは夜の街に徘徊して・・・よそのものの血を漁り取って暮らしているのよ。
昼間はあたりまえの顔をして、仕事に精出したり学校で勉強したりしておるがの。
そもじも・・・そういうひとがたになりたいかや?
なりたくない。
そんな返事を、老婆は受けつけてくれるのでしょうか?
ほくそ笑む老婆の口許が、危難を前に身じろぎひとつしなくなったわたしのうなじを求めて、
またあの生臭い息を吹きかけてきました。

目が覚めると。
まだ、夜はつづいていました。
細めに開いたふすまの向こう。
中年の女が、老婆と向かい合わせになって。抱きすくめられていて。
ブラウスをはだけて、おとがいを仰のけています。
うふふふふっ。
老婆は得意げにほくそ笑みながら。
女の背中に腕を回し、うなじにねっとりと唇を這わせゆきます。
畳のうえ、力の抜けた女の身体を柔らかにねじ伏せてしまうと。
ひときわつよく、首のつけ根にがぶりと食いつきました。
女のかすかな身じろぎで、それとわかりました。
うう・・・うう・・・ううう・・・っ
苦悶の声は、どこか愉悦を漂わせ、くすぐったそうに震えています。
目のまえで。
女の着けている紺のスカートのすそがひろがって、肌色のストッキングの脚が大きく広がりました。
ふくらはぎの真ん中に鮮やかに走った裂け目が、
よじれる脚のうごきに合わせた薄いナイロンのかすかなたるみが、
ひどくなまめかしく、ふしだらによじれ歪んでいきました。
ふと、ふり返ると。
いちばん前にあった一対の人形の女のほうが。
ひどくきらきらとしたまなざしを、ふすまの向こうへと注いでいるように見えました。
その人形は、女の分身だったのでしょうか。

薄ぼんやりとなったわたしの前。
老婆はいぎたなく姿勢を崩し、卑猥な鼻歌をうなりながら、
人形に朱を入れていきます。
ほぅら、綺麗じゃろう?
筆先には、さっき女から吸い取った血が浸されていて。
それがスッと刷かれた跡は、端正な唇になっています。
元に戻された傍らの、見覚えのある一体は、そう。あのとき廃屋の前でわたしに声をかけたジャージ姿の中年男の顔でした。
首のあたりを掻きながら帰っていったのは。
わざわざ血を吸われるために、家を抜け出してきたものとみえます。
どうじゃ。こんなふうにの。一体一体、入念にこしらえてゆくのじゃぞ。
見よ。
老婆の指先の向こう。
ちゃぶ台のうえ、ひとつだけ立っている作りかけの人形。
その貌は、あきらかにわたしの目鼻立ちをもっていたのです。

あの靴下は、妹ごのものじゃろう?
そうすると、車のなかには、母ごの衣装もお持ちじゃろう?
出してくるのじゃ、いますぐに。
なに。恥ずかしがるには及ばない。
そもじが着て、母ごや妹ごになりかわって。
衣装をなぶらせてくれれば、それでよいのじゃ。

老婆に求められるまま。
わたしは車のなかに置いてきた母の礼服を持ち出して。
老婆のために、着てやりました。
それは・・・もう。
くしゃくしゃになるほど、辱められながら。
わたしは老婆に生き血を啖らい取られていったのです。

どうしたの?どこ行ってたのよ?
朝がた家に戻ると、母は半狂乱になって、わたしを責めました。
わたしの朝帰りを察していない母ではないはずなのに・・・といぶかったわたしは、
じつは知らないうちに、もう三日間も経っていたと聞かされて、唖然としました。
もともと放浪癖があって、学生のころはよく突然泊まりの旅行に出たりしていたのですが。
さすがに会社勤めをするようになってからは、家を黙って何日もあけるなどということは、たえてなくなっていたのです。
会社には・・・病気だって届けておいたけど。
もしかして、あなた・・・”村”に行ったわけじゃないでしょうね?
わたしの沈黙を肯定ととって、母はますます蒼ざめていったのです。

それからは、毎晩のように。
わたしは深夜のドライブを愉しむようになりました。
夜更けに、起き出して。
母の箪笥の抽斗から、黒の礼服を取り出して。
ブラウスの袖を通して。スカートをひざ小僧の周りひらひらさせて。
黒のストッキングを、スッと脚に通して、ずりずりと引きあげて。
ふと顔をあわせると、そこには母の姿。
いつも後ろにまとめた髪を肩までおろして、
化粧も、いつもより濃く刷いて。
身に着けているのは、若いころの訪問着。
肌色のストッキングは、いつもよりどぎつい光沢をよぎらせて。
老婆を悦ばすための、けんめいな若作りを。
そしてあの物欲しげな唇をだらしなくゆるめて、母のうなじに近寄せていって。
貪婪な夜食に耽る夜。

そうじゃ。そうじゃ。通ってくるのじゃぞ。
毎晩毎晩、遊びにくるのじゃぞ。
そうして、身体のすみずみまで、わらわに生き血を舐め尽されて。
魂が抜けたら、人形のできあがりじゃ。
もしも人形を作られたくなかったら。
家族の女を、連れて来い。
順ぐりに啖ろうていって。
わらわが満ち足りれば、そもじらの魂を抜くまでもないからの。
そうじゃな。四人もおれば。こと足りようか。
どうじゃ?用立てできるかの?

自ら逢うことを望んで、ひと晩で老婆の欲情に屈した母は。
それからも、わたしの夜のドライブに同行するようになりました。
ふたり、ストッキングに染めた脚を並べて。
たたみに伸べたふくらはぎを、老婆の欲情にゆだねていくのです。
いつか、夜家を出る人影のなかに、妹も交じるようになりました。
さいしょに破かれたのが自分のナイロンハイソックスだと知ると。
お兄さん、ひどい。
プッと頬ふくらませて、怒ったのもつかの間のこと。
若いおなごは久しぶりじゃ。
老婆のだらしない唇をみずみずしい肩先に這わされると。
じわり・・・と目色をうるませて。
そのままその場に突っ伏して。
いつも学校に履いて行く真っ白なハイソックスに、ばら色の飛まつをしみ込まされてしまいました。

お友だちも、連れて行きたいわ。
途中で、妹のクラスメイトのお宅のまえに一時停止すると。
妹のクラスメイトと、そのお母さんが乗り込んできます。
おそろいのチェック柄のスカートを履いたひざ小僧を並べて、くすくす笑い合っているのを。
母親たちは、身に着けているストッキングの目映い光沢をお互い見せびらかすようにして、
意味深な笑みをこめた流し目を交し合っています。
こんどは、ハルミさんも連れて行かなくちゃ。
妹が口にするのは、春に挙式予定の婚約者の名前。
そう・・・まだ生娘のうちに、あのしわくちゃな唇を体験させてしまうのは。
ちょっと、気の引けるところです。
どうして?といえば。
村の男どものいくたりかは、老婆に魂を抜かれて夜さ迷い歩く血吸いびとになってしまっているのですが。
うっとりとしてそのまま寝入ってしまったりすると。
夜這いをかけてくる・・・そう聞いているものですから。
前の記事
人形(ひとがた)を彫る老婆 2
次の記事
文也の彼女

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/1239-a50a7db9