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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

シャイなのかしら

2007年12月12日(Wed) 05:52:33

あら、おかしいわねえ。
朝餉の支度に台所に立っていた妻が、ふと声を洩らす。
指先についているのは、バラ色のしずく。
今しがた手をあてがって引っ掻いていたうなじのあたりには、かすかな擦り傷のような痕。
どうしたの?
わたしが声をかけると。
うん・・・なんでもないけど。ほら。
差し出された指先についた血は、ちらちらとした艶を帯びていて。
ひどく神秘的な輝きを秘めている。
蚊に刺されたの?
さあ・・・
妻は謎めいた微笑をたたえて、
蚊にしては、ちょっと大きかったかも。
そういいかけて、にわかに口をつぐんでいる。
聞かなかったことにして頂戴ね。
取り澄ました横顔には、そんなふうに書いてある。
うん。そうだね。
首筋のあたりの疼くようなかゆみを、わたしも指先で紛らせながら。
うかつに口をすべらせると。
シャイなのかしら。なにもいわないで立ち去るなんて。
すこしくらい、上の空でも。朝餉の支度は整うものらしい。
カチャカチャとお皿の音を立てながら運ばれてくるティー・カップ。
ふたり向かい合って、無言のままカップを傾けて。
今夜は遅くなるよ。
”彼”が来たら、言ってみるといい。
淋しいから、お話し相手になって・・・って。
ウフフ。いいの?
お話し相手以上の関係に、なっちゃうわよ。
だいじょうぶ。気に入らない展開になったら、ものでも投げて追い払うから。
そお?
妻は疑わしそうに、からかうようにわたしを見ると。
そろそろ、お時間よ。
いつものように、わたしをうながしている。

夜。
ものを投げるどころか。
物音ひとつ、立たなかった。

冬の夜明けは遅いはずなのに。
どういうわけか、けさにかぎって。
いつもより早く感じたものだ。
アラ。いつお戻りになっていらしたの?
妻はいつに変わらぬようすで、小首を傾げてほほ笑みかける。
う~ん、かなり遅くなっちゃってね。
なにやら少し、カゼっぽいのは。
夜通し縁側で過ごしたせいに、ちがいない。
あら、あなた。お顔の色がよくないわ。
きょうはお休みをもらって、家でゆっくりしていらしたら?
わたくし?ちょっと人に逢わないといけなくなったの。
留守にしても、いいかしら。
あのひと、シャイだから。
でも、そのうちに・・・きちんと挨拶してもらいましょうね。
妻は軽くハミングしながら、薄ぼんやりとしているわたしの前、
黒のストッキングをむぞうさに、脚に通していった。
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