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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

化粧落とし、持ってきて。

2007年12月22日(Sat) 09:02:57

1.
困ってるんです。
ほんとうに、困り果てているようすが、かわいくて。
事情を聞くと、おやすい御用。
だいじな書類を、シュレッダーしちゃったんだって。
そういうのをごまかすのは、大の得意という蛭田くん。
さっそくうまくとりつくろってあげて。
感謝、感謝の女の子を、さりげなくいつもの別室に連れ込んで。
あたりに人がいないのを見計らって、やおら本性さらけ出す。

きゃあっ。怖い・・・怖いです・・・
女の子はもう、半泣きで。
ひたすらかぶりを振って、いやいやをして。胸の前に手を合わせて。
ごめんなさい。そういうの、ダメなんです。お願いですから、見逃してください。
髪震わせてひたすら哀願するようすが、なおさら初々しくって。
ごめんね。きみ。でもボクももう、あとに引けないや。
正体を知ってしまった以上、きみもボクも、ひとつ運命になるしかないのさ。
蛭田くんはドキドキ、わくわく胸わななかせながら。
女の子の肩を捕まえて。
ちょっとだけ痛いけど・・・さいしょのうちだけだから。ガマンするんだよ。
そむけられた顔。キュッと閉じられたまぶた。がくがく震える、白ストッキングの脚。
どれもこれもが、いとおしくって。
つい、股間を昂ぶらせちゃって。
なだめ言葉ももどかしく、
かりり・・・
彼女のうなじを、噛んでいる。

やだっ。やだっ。お嫁にいけなくなっちゃう・・・
いまさら、なんて古風な子なんだろう。
思い切り抱きしめた腕のなか。
女の子はいっそう硬く、身をすくませる。
吸い取られてしまう血の量を、なんとかそんなことで加減できると思っているのだろうか?
涙声の下をくぐり抜けるようにして吸い出した血は、まぎれもなく処女の味。
いまどきほんとうに、珍しい。
こないだエジキにしたのは、すんでのこと蹴られそうになった奈津子の妹分ども。
テーブルの下、追いこめられて。
せぇの、せっ!で、ハイヒールで蹴られそうになって。
一発逆転、モノにしてはみたものの。
なんと処女率、0%・・・
さすがは奈津子の妹分・・・って、感心するわけないだろう?
だからなおさら、はぜるほど渇いた喉に。
この子の血潮は心地よかった。

ひどい。ひどい。
ブラウスに撥ねた血を、悔しそうにハンカチで拭おうとして。
ぺたりと腰かけた椅子の下
透きとおるほど薄いストッキングを穿いた足許に、かがみ込んでいって。
白のストッキングが光沢をよぎらせて、初々しく輝くひざ小僧のまわり。
よだれたっぷりのべろを垂らして、思いっきりねぶりつく。
ああ!もう・・・やめて・・・っ!
この子、なかなか酔わないな。
酔わせて、ふらふらにして、くたりと倒れ臥してからが、お愉しみ。^^
白のフレアスカートのすそ、もみくちゃにして。
スカートの奥まで、味わってしまおう。
いやまてよ・・・いちどで尽くすのは、もったいないかな?

くらっ。
めまいがした。
女の子が・・・ではなくて、めまいの主は、蛭田。
一瞬のこと。ぐらーんと、身体が傾いていって。
さいごに意識したのは、おでこを床で、したたかに打ったこと。
・・・・・・。
・・・・・・。
かわいいわね。いつもいつも。
初々しい髪型の下。
スッと冷めた頬に、じわりと笑みを滲ませるのは。
かつてこの会社に、秘書としてもぐり込んでいた女。
たおやかなその身をめぐる血潮に秘められた毒を、消し去りかねている女。
白鳥秘書・・・自らの名を社員の記憶から消し去ったのは、彼女自身。

2.
ふーん。
理科の先生が、ビーカーのなかの化学反応でも見るような目をして。
じっと顔を見つめてくる。
意識が戻って、美貌の主に、いきなりそんなことをされたなら。
どんな男の子だって、どぎまぎしてしまうことだろう。
ましてそれが蛭田ときた日には。
をろをろ、そわそわ・・・って。
うろたえきっているようすに、顔を覗き込んだ女も、かたわらに控える女も、
くすくす、げらげら、つつしみなんかかなぐり捨てて笑い転げている。
理科の先生は、ひさしぶりに見る知的な美貌をいっそう輝かせていて。
髪の毛をちょっと、茶色く染めて。
見慣れない金ぶちメガネの奥、あの魅惑的な瞳を、きらきらと輝かせて。
少年のような好奇心を、あらわにする。

気付け薬は、いらないようね。
岬さん、もういいのよ?
理科の先生は、かいがいしく胸をはだけた奈津子を制すると。
あなたの血は、この子なんかにもったいないから。
って。
きらきらとした知性を吹っ飛ばして、もういちど笑い転げた。
当社きってのキャリアレディにして、史上最年少の女性重役。
女史と呼ばれ畏れられる鳥飼さんが、こんなにもあけっぴろげに笑いをはじけさせるのは。
たぶん、このふたりの前だけだろう。

久しぶりの美貌に、陶然となりながらも。
どうしてこんなに、笑われなくっちゃならないのか。
蛭田には、どうしても、ぴんとこない。
そりゃ、ボクはみっともないキャラですよ。
だけど、だけど、いきなりそんなに笑うなんて・・・
内心じくじくしている蛭田の顔色を察すると。
女史はその思いを一発で吹き飛ばす妙案を持っていた。
岬さん、鏡持ってきて。
まだ、くすくす笑い崩れながら。
女史は奈津子の持ってきた化粧直し用の鏡を蛭田に向けた。
それは、ドラキュラに突きつけた十字架ほどの効果があった。
ぎゃああああっ・・・
蛭田の絶叫に、女たちはもういちど、爆笑をはじけさせた。

これが・・・ボクの・・・顔?
鏡に映っているのは、まぎれもなく女の顔。
それも、どこかで見た覚えのある美女の顔。
たしかこのひと・・・うちの会社で秘書やっていたような。
かわいい子。ちょっとイタズラ、してあげる。
遠くなった意識のかなた。
まるで鼓膜を毒液に浸されるような、甘美に濡れた、ねっとりとした声。
いまごろになって、じんじんとよみがえってきた・・・
巧みに刷かれた化粧は、なつかしくもあるその女(ひと)の面貌を
たしかにうり二つに再現ようとしていたけれど。
けれどもごつごつとした顔の輪郭と。
くっきり太い濃い眉毛は。
巧妙なメイクそのものを、裏切っている。
だれの血を吸ったんだか、よぅくわかったわね?
女史のささやきに、がっくりと。蛭田ははっきり肩を落とす。
困った女の子を助けてあげるのは、見あげたことだけど。
見返りを要求したら、そこですべてが終わるのよ。わかった?
まるで母親のようにさとされる傍らで、
奈津子はまだ、くっ、くっ、と、笑いの余韻をこらえかねている。


岬さん、化粧落とし取ってくれる?
あぁ、やっと開放されるんだ・・・
顔の皮膚から空気をさまたげる、ごつごつとこわばった化粧が、いまさらながらうっとうしい。
ファンデーションなるものの正体は、これなのか。
女の装いの裏側。
まるで手品の種をみせられたよう。
これはたしかに、苦しいや。
化粧直しのさいちゅうの女を襲うのだけは、やめとこう・・・
そんな殊勝な決意をしたときに。
女史は透きとおった頬に、意地のわるい微笑をじんわり滲ませる。
岬さん、そこの基礎化粧品も、お願い。

そおら、できあがり。
鏡のなかの自分は、もっと”美しく”されている。
おいおい・・・みんなでそこまでなぶるの?
蛭田が泣きを入れようとすると、女史はすかさず彼の心を読んでいて。
あら。感謝してもらいたいくらいだわ。ねぇ、岬さん。このひと、きれいでしょ?
ウン。
奈津子までもが、おおまじめに頷きかえしている。
よく見ると・・・鏡のなかの自分の貌は、女史とうり二つの輝きを帯びている。
はい、メガネ。
女史愛用の銀ぶちメガネをかけると、できあがり。
即席女史の、できあがりね。
奈津子がおどけると、さすがに女史は「こら」と奈津子をたしなめたけど。
すこしくらい、私たちのイタズラにも付き合ってもらわなくちゃね。
こっち来なさい。
囚われの蛭田。そこにはもう自由はない。

悪いようには、しないから。
女史のことばをいっしんに信じて。
信じて信じきっているうちに。
これ、私が若いころ着ていた服なのよ。
髪型、もうちょっとアップにしたほうが、女史に似ますわよ。
女ふたりは、蝶ちょが花と戯れるよう。
蛭田の周りを、ひとまわりふたまわりして。
サナギを蝶に、変えてゆく。

ニッと、笑ってみる。
ツンと、取り澄ましてみる。
きりりと、頬を引き締めてみる。
どう見ても、女史の顔。
それも若いころの、いっそう輝いた女史の顔。
すばらしい・・・って、奈津子がほめたのは。
蛭田の顔では、もちろんなくて。女史の腕前そのものに過ぎなかったけど。
それくらいに見栄えのする化粧だった。
男子社員をね。こうやって別会社に、女性秘書として送り込んだこともあるのよ。私。
女史はちょっぴり得意げに笑いながら。
でもこれは、禁じ手。いまのわたしなら、そんな姑息なことはやらないわ。
でも若いころって、自分の腕や才能を、なにかにつけて愉しみたくなるものなのよね。
女史はちょっと悩ましげに、長いまつ毛を震わせる。
この悩み・・・あなたになら、分かるでしょ?
そんなふうに見つめられて。
奈津子はうっとりと、頷きかえしている。

コツコツ・・・カツカツ・・・
宴会ではたしかに、女装して芸をやったこともある。
なによりも、女に身を寄り添わせるうちに。
女の身体から、生き血を盗み取ってゆくうちに。
たいがいのことは、わきまえ身に着けるようになった男。
ふつうならけつまずいてしまうような、かかとの高いハイヒールも。
蛭田は苦もなく、穿きこなしている。
まるで女史そのものになったように、カツンカツンとヒールの音を響かせて。
闊歩するのは、オフィスの廊下。
ばれるかばれないか、賭けてみようよ。
女史が奈津子をつっつくと。
ばれないと思うけど・・・じゃあ私ばれるほうに賭けますわね。
どこまでも可愛い、娘分だった。

いつものオフィスに顔を出しても。
それが蛭田だと気づかない周囲の連中は。
よどんで疲れきった空気のなか、いつもと変わりなくお仕事に励んでいる。
あの間々田にしてからが、ワイシャツ一枚のたくましい胸を突き出すようにして、伸びなんかしちゃって。
新来の”女”になんか、目もくれないで、お堅く構えきっている。
コツコツ、ツカツカ・・・
得意になって歩き回るオフィス。
さすがに周囲の連中も、異分子の存在に注意を払い始める。

オイ、あれ・・・だれだ?
さぁ。でも美人だな。
間々田んとこの、クライアントだろう。
いや、ちがうって。そうだったらあいつがちゃんとお世話するもん。
じゃー、いったい・・・?
女史の娘じゃないか?そっくりじゃん。
あっ!そういえば。
身のこなしや歩き方まで、似ているぜ。
ご本人にしちゃ、若すぎるもんな。
だれか、声かけてみろよ。
えー、だって・・・
女史とはかかわりたいような、かかわりたくないような。
しかけてみたいような、しっぺ返しが怖いような。
男子社員のあいだに漂う、ためらいの空気。

蛭田は内心、得意である。
女史の仮面をつけたまま。
みんなのまえ、ストッキングの脚をさらして歩き回る、いつものオフィス。
けれどもさすがに、おなじ課のAが前に進み出てきて、
あの・・・って、ためらいがちに声かけてきたときは、びっくりした。
さすがに声までは、変えられていない。
ちょっと顔をしかめてみせて。
相手が失望と安堵を同時に滲ませて見送る視線を感じながら。
落ち着き払って、オフィスをあとにする。

よくできました。
役員室のなか。女史はぱちぱちと軽く手を叩いて。
蛭田の労をねぎらった。
もう。早く落としてくださいよ。
そうね。
じゃ、岬さん。化粧落とし持ってきて。
それと・・・そこのファンデーションと、口紅と・・・
ええええええっ!?
真顔になって指示をつづける女史のまえ。
蛭田はほんとうに、女の子みたいにすくみあがった。

きょうはもう、お仕事あがりにしていいでしょ?
(どうせたいした仕事があるわけじゃなし)
女史の顔には、そう書いてある。
早退届、出しておきました。
奈津子の処置も、ソツがない。
じゃあこれから、ホテル行きましょ。
特等席、とっておいたわ。
そこでふたりで、このまんまの格好で。
いつものように、遊ぶのよ。
出張先(むこう)で写真術、覚えてきたの。
さっそく試してみたいものだわ。
若いときは、自分のウデや才能を、なにかにつけて愉しみたくなるものね・・・
ふふっ、と得意げに笑う女史のまえ。
奈津子は示し合わせたように、笑み返す。
賭けに負けた奈津子は、蛭田とのプレイの撮影権を女史に譲り渡したらしい。
女史と乱れているみたいで・・・昂奮できそうですわ。
相手が蛭田くんでも。
くすっと笑って、可愛く肩をすくめる奈津子を。
女史はじつの娘のようにいとおしげに見つめている。

ホテルのロビーに降り立ったのは。
きりりとしたスーツに装った、三人の女。
母娘らしいひと組と。娘のほうと同年代のOLふうの美人。
はた目にはきっと、そう映ったことだろう。
ラウンジの窓ごしに、アップル・ティーを啜る女は。
ウキウキとエレベーターの向こうへと消えて行く三人の影を目で追いかけて。
また・・・やられてしまいましたわね。
わたくしも、覗いてみたいくらだいだわ。
心の中で、そっとつぶやいている。
秘めている妍が、いつになく和らいでいて。
女はおだやかに笑みながら、カップをもてあそぶ。
体内の血に、猛毒を秘めた女。
あの子に血を吸われると毒の濃度が下がるみたい。
ふふふ。
また、愉しませてね。蛭田くん。
女はティー・カップごし、三人を見送ると。
さいごのひと口を飲み干して。
つやつやと輝く光沢入りのストッキングの脚を、退屈そうに組みなおした。
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