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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

扉を開いては、いけないわ。

2008年02月07日(Thu) 23:28:58

開けて。
扉一枚へだてた外から洩れてくるのは。
まぎれもなく、気になるあの娘の声。
けれども、だれもが知っている。
あの家の人たちは、みんな吸血鬼。
一夜にして、一家全員が血を吸い取られて。
それからは・・・目ぼしい知人の家々を、生き血を摂りにまわっているという。
逢いたいけれど。
開けてあげたいけれど。
夜逢うきみは、ふだんとは別人なんだよね?
いちどドアを開けちゃったら、
ボクたち家族の血を、吸うんだろう?
低く抑えたボクの声に。
いがいなくらい、素直な応えがかえってくる。
うん。きっと吸う。
喉が渇いたの。血が欲しいの。
夜も、眠れないんだから。
なんのてらいもなく、素直な声が。
かえってまがまがしく、闇を透して鼓膜をくすぐる。

気遣わしげにボクを窺う、母さんと妹と。
ふたりを安心させたくて。
つい、口を突いて出てきた言葉。
ボク、一人で出て行くから。
母さんはそんなボクに、ゆっくりとかぶりを振って。
寄り添うように、扉に近寄ると。
黙ってカギを、開けていた。

ようこそ。
迎える母さんに。
ごめんください。
娘はいつものように礼儀正しい会釈をかえす。
母さんの指に、背中を押されて。
ボクが真っ先に、面と向かった。
どこから、吸うの?
首すじ・・・
うん・・・
ソファに腰かけたボクに、寄り添うようにして。
切迫した呼気が、耳たぶに迫ってきた。

めまいがするほど、ふらふらになって。
ソファのまえ、尻もちついたボクの前。
母さんは足許にかがみこんでくる彼女のために、
ひざ下まである黒の礼装を、軽やかにたくし上げて。
黒のストッキングのふくらはぎを、侵されるままになっていた。
ごめんなさい。
お手柔らかにね。
せめて、香苗だけは見逃してくれる?
娘だけはかばおうとする母さんをさえぎるようにして。
あたしも、相手するわ。
いつもおとなしいはずの香苗の目が、いつになく挑むような輝きを秘めてゆく。

真っ白なハイソックスに、バラ色をにじませて。
香苗はそれでも泣くまいと、口許をキュッと引き締めて、耐えていた。

ありがとう。
だれのものとも見分けのつかないバラ色のしずくを、口許から拭うと。
娘は嫋々とした長い黒髪を、たなびかせて。
お母様と香苗さん。こんど兄さんに逢わせてあげたい。
無邪気にはずんだ声に、母さんは声震わせながら。
そうね・・・
それでもしっかりと、相槌を打っている。
お父様も、もういないんだし。
どこにも迷惑のかからない身の上ですから・・・
でも、香苗だけは・・・
なおも娘をかばおうとする母親の声をさえぎって。
あたしだって、お相手するわ。
いつも大人しかったはずの妹は。
あたしだって、大人なのよ。
そう、言いたげに。
背筋をぴんとさせて、睨むように娘を見あげる。
さっき自分の血を吸い取った女と、対峙するようにして。
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