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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

あのおうちと仲良く・・・

2008年02月18日(Mon) 04:58:34

こーら。どこへ行く。
マサオがぎくりとしたのは、もっともだった。
いまは真夜中。
家族はとうに、寝静まっているはず。
それなのに、彼はこっそり外出しようとしている。
半ズボンの下に履いているのは、太ももまでのストッキング。
それはママのタンスの抽斗から失敬してきたやつだった。
ギイ・・・
リビングに通じるドアが開いてあらわれたのは、寝巻き姿のパパ。
あたー。
いちばん見られなくないやつに・・・
マサオはつま先から凍りついていくような気分だった。
忘れもんだよ。
パパがにやりと笑って渡してくれたのは、ローソクの灯った燭台。
これ持って行くんだろう?途中で火を消すなよ。
パパは言いたいことだけを言って、すぐに顔を引っ込めた。
ばつの悪そうな顔をしている息子の顔を、もうそれ以上見ないようにして。

コツ、コツ、コツ、コツ・・・
春先とはいっても、真夜中の空気はまだまだひんやりとしている。
薄いストッキング一枚の足許を、冷や冷やとした夜気に撫でられながら。
それがなぜか、むしょうに心地よいと感じるのは。
きっと、ボクがマゾだから。
マゾ・・・
まだまだ十代。うぶな心の持ち主は、言葉を思い浮かべただけで頬を火照らせてしまう。
じりじりとかすかな音を立てている灯火のせいだけではないのだろう。
こんなことなら、思いきって。
妹の真美がいつも履いている、真っ赤なチェック柄のスカートも履いてくるんだった。
そんな妙な後悔をするくらい、パパはあっさりと送り出してくれた。
自分の妻のストッキングを穿いて、息子が真夜中ひっそりと出かけていく。
そのことの意味を、パパが知らないわけはないはずなのに。
待てよ。
スカートだったら、太ももがもっとすーすーしただろうな・・・

時おり吹いてくる微風にローソクを吹き消されまいかとびくびくしながらも、
マサオはどうにかローソクを消さずにお邸にたどり着いた。
そのあと彼の身になにが起きたのか、だれも知らない。
いつも早起きしているお隣のご主人が庭に出たときに。
マサオらしい人影が薄ぼんやりとした足取りで、自宅の門をすうっと音もなくくぐり抜けて行ったのを見ただけだった。
半ズボンの下には黒のストッキングを穿いていて、それはびちっと派手に破けていたという。

ほら、ママが出かけるぞ。
パパの声で起こされて。
眠い目をこすりながら階下のリビングに降りていったのは、それから数日後の日曜日のこと。
リビングの時計の針は、午前三時をさしている。
ふつうの時間じゃない。
えっ、どこ行くの?
思わず声をあげたくらい、ママの晴代はあでやかに着飾っている。
純白のボウタイブラウスに、黒のロングスカート。
目の覚めるようなワインカラーのジャケット。
いつもキリキリと頭の後ろに結い上げている髪の毛は、さらりと肩に落としていて。
まるでどこかのお嬢さんみたに、若々しく見える。
どこに行くって?
きみがこのまえ、おイタをしに行ったあのおうちさ。
パパは愉しげにマサオを見て。
傍らの真美はぷっと不平そうに頬をふくらませる。
真美は濃紺のジャケットに、白のブラウス。じんわりとした光沢のある青のリボン。
真っ赤なチェック柄のプリーツスカートのすそを、いつものように太ももにひらひらさせている。
太ももまでの黒ストッキングのゴムが、みじかいスカートのすそからちらちら覗いているのが。
いつになくなまめかしくて、オトナっぽい。
真美も出かけるの?
いぶかしそうにマサオがパパに訊くと。
ああもちろんさ。ふたりであのおうちの人たちと仲良くして来るんだよ。
まるで幼い子どもに言い聞かせるような口調だった。
こんな夜更けに、二人してなにをしに・・・?
いや、いや。
マサオはすべてを、知ってしまっているのだ。

はい、お兄ちゃん。
妹がしぶしぶ兄に手渡したのは。
いつも学校に履いて行く、黒のストッキング。
なれた手つきで脚に通していく兄のことを、さもケイベツしたように見守っているのが。
横っ面にくすぐったい。
これでみぃんな、おそろいね♪
ママがウキウキと、口にする。
ママのとおなじくらい透けていて、脚の輪郭には淡い光沢さえちらちらしている。
ズボンを履いたパパの足許も。
よく見ると、ストッキング地の靴下。
これは紳士用だぜ?
愉しげな弁解に、娘はもう・・・!って口を尖らせて。
パパのお尻をひっぱたいている。

晴代も、真美も。きょうから、あの家と同じ苗字に変わるのだよ。
いままでどおり、この家にいっしょに住んでいても。
晴代はあのかたの第七夫人にしていただくのだし。
真美は養女にもらわれていくのだから。
従姉のさよりさんと、お前が婚約したら。
さよりさんをお邸に連れていくのは、マサオの役だろうね?
パパはイタズラっぽく自分の妻をふり返ると。
家名を汚してきますわよ。
ママがくすっと、ほほ笑むと。
そんなことはない。
あのかたの寵愛を受けることは、名誉なのだと心得なさい。
さあ、ご披露が済んだら、男どもは退散。さっさと寝た寝た・・・
自分から率先して、夫婦の寝室に引き上げてゆく。

ベッドにもどったあとも、まんじりとはしなかった。
門を開け閉めする音がカランカランとうつろに響くと。
マサオはさっと起き上がって。半ズボンを脱ぎ捨てて。
代わりに真美の部屋から拝借してきた青のチェック柄のスカートを、腰に巻いて。
そう・・・っと、抜き足差し足して家を抜け出すと。
とっくに影を消した母と妹の後を追いかけている。

ああっ・・・うっ・・・うぅん・・・
母と妹。どちらの声だろう?
おそるおそる覗き込んだガラス戸ごし。
彼があの晩持って行った燭台が、ゆらゆらと長い焔をくゆらせている。
焔に浮き彫りにされたふたつの女体は、素肌をむき出しにして。
着崩れさせた礼装が、かえって全裸よりもふしだらに映った。
真美がうなじを抑えて、あえいでいる。
真っ赤なチェック柄のスカートからにょっきり伸びた太ももは。
ストッキングの裂け目をびちっとハデに走らせていて。
白のブラウスには、点々と。
吸い取られたバラ色のしずくの残滓が散っている。
吸血鬼がとりついているのは、ママの胸元。
きりっと結わえていたブラウスのタイを、ほどかれて。
花びらみたいに、ひらひらさせて。
ママはあらぬかた、うっとりと視線をめぐらせて。
うなじをちゅうちゅうと、やられてしまっていた。
すべてが数日前、マサオにおおいかぶさった儀式のまま。
あの晩美味しいとほめられた生き血と、おなじ血を。
白髪頭の吸血鬼は、さも旨そうに、むさぼっている。
家族の女たちが、つぎつぎと生き血を吸い取られているというのに。
胸をズキズキとはずませてしまうのは、なぜだろう?
死なせることはない・・・
たしかに彼は、そう約束してくれた。
これは、家と家との契約。両家のあいだで代々取り交わされてきたしきたりなのだから。
男が毒液のように吹き込んできた言葉が、鼓膜にまだしみ込んでいる。
おいしい?おいしいかい?ああ・・・おいしいんだね。
もっと吸って。まだ、だいじょうぶだから・・・
あの晩とおなじ囁きが、口をついて洩れてくる。
おや・・・?
ガラス戸と向かい合わせのドアが、半開きになっていて。
その向こうにある人の気配は・・・
マサオはいつか、くすくす忍び笑いをしている。
マゾの血。パパからもらった血だったんだね・・・?

あとがき
妻や娘を吸血鬼の邸に召し出されて。
血を吸われたり、犯されちゃったり。
苗字まで変わる・・・ということは。
令夫人のまま、お妾にされてしまうのですね?
それが家の名誉になるなんて。
仲良くすることになるなんて・・・。^^
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