fc2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

変容  ~怪人との逢瀬~

2008年04月10日(Thu) 06:48:52

どこかの国ではね。
かなり年上のその友人は、いつものように。
年配らしいおだやかな声で、語りはじめた。
娼婦をとるときにはこんなふうに、ヒルに娼婦の血を吸わせるというのだよ。
目のまえで、体調10cmはあろうかという半透明の軟体動物が、ヌルヌルとした粘液をうわぐすりのように光らせて、彼の手のなかで不気味にうごめいている。
娼婦・・・?
わたしは彼女と目を見合わせた。
彼女はなぜか羞じらうように、目を伏せてゆく。
さあ・・・
男は彼女のほうへとにじり寄ると、手にしたヒルをおもむろに突き出して、
彼女の首筋に這わせてゆく。
ひっ・・・
ぬるりとした感触に、縮みあがるように。
その瞬間彼女は座ったまま、白いハイヒールの爪先を立てていた。

白いうなじに這う半透明のヒルは、淫靡なうごめきをつづけながら。
じわじわと、その身を彼女の血潮の色で滲ませてゆく。
あ・・・あ・・・あ・・・
肩を抑えられ、首筋をとらえられながら。
押し殺したような呻き声をあげる女は、
肩先まで流れる長い黒髪を、かすかに震わせて。
首筋に這わされたヒルをもぎ離そうとした手指は、
いつかいとおしむように、自分の血を吸う軟体動物を包むように覆っていた。
一瞬走った嫌悪の翳は、いつか甘い苦悶に浸されている。

さぁて・・・と。
彼はおもむろに手を伸ばして、彼女の首筋からヒルを引き剥がした。
あ・・・うっ。
よほど強烈に吸いついていたのだろう。
彼女はとっさに、上半身を波打たせた。
振り乱された黒髪が、白一色のスーツの肩先にゆさっと揺れる。
しばらくのあいだ。傷口を抑えながら、荒い息を吐いていた。
瞳に滲む蒼い焔。
それは彼と出逢っからというもの、こうして過ごすひと刻だけに宿される情欲の焔。

つぎは、きみの番だね?
穏やかな上目遣いが、逃がさないぞと告げていた。
彼女の血を吸って膨らんだ、忌むべき軟体動物が。
こんどはわたしの首筋に、あてがわれる。
そいつの冷ややかな体温が、わたしの皮膚に伝わってきた。
痺れるような痛みが、皮膚の奥までしみ込んでくる―――
にじみ出た血潮が、ヌメヌメとうごめく軟体に吸収されてゆくのを覚えながら。
彼女の血とわたしの血が、そいつの体内で交わることに、なぜか陶酔を感じはじめていた。
皮膚を破られて生き血を吸い取られながら、わたしは変容を遂げてゆく。
彼はブランデーグラスを傾けながら、冷ややかにわたしの顔色を観察し、
彼女はくすくすと笑いながら、まるで引力でひきつけられるように、彼に身を寄り添わせてゆく。
妖しくなってきた視界の彼方。
人の形をしていた彼の輪郭が、滲むようにかすんでいって。
やがて不自然に鮮やかな黄緑色をした、巨大な軟体動物になりかわってゆく。
薄暗い密室のなか。
彼は大ビルに変容し、わたしは心のなかを変容させてゆく。
彼女も、微笑を振りまきながら。
変容して、娼婦に変わる。

ふ、ふ、ふ。
大ビルは彼の声を含ませながら、触手をあやつって。
純白のスーツに身を固めた彼女の身体に、巻きつけてゆく。
透明なチューブに似た触手は、折り目正しいスーツのジャケットをところどころしわ寄せながら、ゆっくりと巻きついていって。
かんじがらめに、緊縛してしまう。
ううっ・・・
傍らの柱ごと、立ったまま巻かれた彼女は、わたしのほうを見るまいと目をそむけ、
振り乱した黒髪が、頬をおおってゆく。
触手の先端が、ブラウスの襟首にもぐり込んでゆく。
あ・・・あ・・・あ・・・
彼女を征服される。
それも、人間ばなれした怪人に。

ちくり。
触手の鋭い先端が、彼女の豊かな乳房を突いた。
はだけられたブラウスのすき間からのぞく胸元は、青白い静脈が透けるほど白く、
柔肌の下脈打つ血液を、触手が欲しているのは、目に見えるほどあからさまだった。
触手の先端は、そのままぐぐ・・・っと、埋め込まれて。
ちゅーっ。
人をこばかにしたような、あからさまな音といっしょに。
彼女の血潮が、抜き出されてゆく。
真っ白なスーツのうえ巻きつけられた、透明なチューブが。
赤黒い液体に、ゆっくりと充たされていった。
長いチューブを、這うようにして。
彼女の血が抜き取られてゆく、残酷な光景。
純白のスーツの周り。
縛りついたチューブは、紅い紐のように、彼女をがんじがらめに緊縛している。
あ・・・あ。。。ア・・・っ。
生命の源泉を搾り取られる、甘美な苦痛。
喉からほとばしる呻き声が、なぜか扇情的にわたしの鼓膜にしみ込んできた。
わたしにからみついたままのヒルは、わたしたち二人の血を吸って、数十cmにも成長していて。
シャツの上から吸いつけた吸血口が、皮膚に擦りつけられてくる。

くたり。
触手をほどかれた途端、彼女は肌色のストッキングに包まれたひざ小僧を床に突いて。
四つん這いになって、突っ伏している。
かすかに上下するおとがいが、喪われた血の量をものがたっていた。
大ヒルに化けた男は、なおも容赦なく、かすかな澱を残した透明な触手を、
ストッキングを穿いた彼女のふくらはぎに巻きつけてゆく。
かすかなてかりをよぎらせた肌色のストッキングは、透明感を滲ませていて。
締めつけるように巻かれてくる触手にいたぶられて、くしゃくしゃになっていって。
オブラアトのように他愛なく、チリチリになって剥ぎ堕とされてゆく。
ふ。ふ。ふ。
大ヒルはふたたび、男の姿に戻っていた。
とうとう堕ちたな。
あとは人の身に成り代わって、喰ろうてやろう。

我が物顔に彼女に迫り、衣裳を剥いでいって、堕としてゆく。
身体も心も痺れさせられてしまったわたしのまえ、
堕ちてゆく婚約者は、悩ましくまつ毛を翳らせていた。
半脱ぎになったズボンからむき出しになった筋肉質の脚は、
破れたストッキングをまつわりつかせた白い太ももの間に分け入って、
逞しく筋肉を浮き上がらせた臀部を、スカートの奥へと沈み込ませていった。
あぁあ・・・
引きつるような呻きを喉からほとばしらせて。
その瞬間、彼女はキュッと、唇を噛んでいた。

ふふ・・・ふふ・・・ふふふ・・・
くすぐったそうな含み笑いを、虚ろに響かせながら。
黒髪に隠されていた白い頬は、いつか淫蕩な笑みを浮かび上がらせていた。
ホホ・・・ホホ・・・ホホホ・・・
もはやつつしみをかなぐり捨てた女は、未来の夫のまえ。
公然と夫を、裏切りつづけてゆく。
純白のスカートのすそに散らされた、ぬるぬるとした粘液は、
彼女を身体の裏側から支配している。

一週間後、またここに来るのだぞ。
こんどはお前の妹も、連れてこい。
生娘のうちに、味わっておく。
おだやかな声色は、もとのままだったが。
気づかいに満ちていたはずの言葉は、いつの間にか命令形に変わっている。
くぐもった声に、拝礼するように。
わたしたちは黙って頭を垂れて。
手に手を取り合って、部屋を出る。
ここに入るまえとおなじように、さも仲睦まじげに。


あとがき
くろすさんと吸血三葉虫のやり取りしていたら、昔のことを思い出してしまいました。(^^ゞ
前の記事
過去の映像を目のまえに
次の記事
息子をそそのかして・・・

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/1381-7b73530d