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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

東京レンタル妻 3

2008年07月04日(Fri) 07:44:08

もしも。
あなたの奥さんが、あなたの知らないところで。
なん人もの見知らぬ男たちに、レンタルされていて。
バツグンの人気を誇っていたとしたら。
あなたは怒りを覚えますか?
(ソレガフツウノ感覚デショウガ)
それとも、ひそかな誇りを覚えますか・・・?

いつもすれ違いの日常は。
ダブルインカムという、ていのいい言葉とは裏腹に。
ひどく索漠とした、砂を噛むほどの味気なさ。
男も女も、そうとは感じながら。
いちど手にしたステータスを手放すことは、容易でなくて。
お互い差し伸べあうはずだった手と手を引っ込めあうほどに。
己じしんに執着してゆく。
相手と自分と、どちらがたいせつなのか。
結ばれたすぐのころ、こたえは決まっていた。
おなじこたえを、いまでも迷わずに返せるのか?
女はためらいもなく、首を縦に振っているのに。
妻を目のまえにした男は、わずかな逡巡を覚えている。

妻の帰りが遅い。
そんなことは、日常茶飯事。
子どものいない夫婦のあいだで、それはたいして苦になることはない。
煩雑な日常の、いやというほど濃い人いきれのなかに暮らしていると。
無表情で空虚な無人の空間が、
なぜかむしょうに恋しくなるときもある。

フッ・・・と、よぎった、まがまがしい空想に。
男はふらりと立ちあがって。
覚束ない足取りで、妻の部屋へとさまよいこんだ。
ふだん、ひとりのときに入ることのまずない空間は。
よそよそしい警戒感を帯びて、彼を迎え入れていた。

スケスケの衣装を着て。
踊り子のように、あだっぽく。淫靡な手振り脚構えで。
周囲に群がるおおぜいの男どもと、戯れあって。
嫣然と微笑みながら、若い頃さながらに振舞う妻―――。

妄想を打ち消そうとするように、
男が垣間見た舞台裏は。
いともそっけない、無機質の空間。
モノトーンの家具がひしめき合う四畳半。
いちだんと奥まったスペースに、どっしりと鎮座する古びた箪笥。
それだけが、そらぞらしい現代的な雰囲気を否定するように。
木目のかすかに浮いた地肌を、てかてかと光らせている。

そう・・・っと手を伸ばし。なんども引っ込めて。
こわごわと開かれた抽斗の奥。
きちんと折りたたまれた下着は、いつも見慣れたそっけない白無地で。
ほっとした手つきが、下着のうえを。
触れてはいけないもののまえ、ためらうように。
さわさわと揺れた。
その指先の、かすかな過ちに。
はらり・・・と落ちた白下着のあとを追いかけた視線が。
はたと戸惑ったように、箪笥の奥に釘づけになる。

ぬるりととぐろを巻いたヘビのように。
しんなりとした光沢を放っている、見慣れない衣装。
つまんだ手指の先から、引き出されたのは。
ついぞ目にしたこともない、黒のガーターストッキング。
幾度も脚に通された形跡を、かすかに走るひきつれに残していて。
疑いの目が、ぎらぎらと狂おしく輝きを帯びてきた。

むさぼるように、掘り起こす手は。
かすかな震えを帯びていたけれど。
わななく手指の節々に、奇妙な熱っぽささえ帯びながら。
作業はとまることなく、見慣れぬ衣装たちをかい出してゆく。
濃い紫の、ラメ入りのパンティ。
毒々しい艶を帯びた、レエスつきのスリップ。
夫婦のベッドのうえ、妻が身に着けるところをいちどたりとも見た覚えのないものが。
ごっそりと、ひと山。ふた山。
隣の抽斗からは、見慣れぬ筆跡の手紙。
淫靡で露骨な文字のつづられたそのなかに。
男は食い入るように、没入する。

地味で華のない、家事ひとすじ、仕事ひとすじ・・・に見えた妻。
いまその隠れた素顔を、ありありとさらけ出して。
ついぞ見慣れぬ蠱惑的な笑み。
少女のように、無邪気に。
淫婦のように、ねっとりと。
けれどもそのまなざしは、男ひとりを追いかけている。

ねぇ、わたし。ほかの男でも感じているのよ。
ほら、こんなに乱れて。人目をはばからず、よがり狂って。
でも、愛しているのは、あなただけ。
そんなわたしを・・・あなたは許すことができるのかしら?
挑むような目つきに、たたえられた輝きに。
男はぼう然と、尻もちをついたまま。
背後で何度も鳴りつづけるインターホンが、妻の帰宅を告げるのにも。
応えることができないでいた。


あとがき
ご好評いただいた「東京レンタル妻」の続編です。
いままでのお話とはちがう登場人物なので、番外編にしようかと思ったのですが。
なぜかこれらのお話はすべて「番外編」のような気がしまして、
あえて「3」にしてみました。
あ・・・こんな話を真に受けて。
奥さんのたんすのひきだしなんて、あさっちゃダメですってば。(笑)
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