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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

姉とおそろいで

2006年04月10日(Mon) 11:50:02

黒のストッキングって、いいよね?
そういうみどりに、いつも優しいほほ笑みが返ってくる。
高校に進学したゆう子姉さんは、とても大人びてきた。
紺のスカートの下に、黒のストッキングを履くようになってから。
毎朝おなじ中学に、おそろいの白のハイソックスをそろえるようにして通学していたのが、ずっと昔みたいな気がして。
そういうときにみどりはちょっと寂しくなる。

ゆう子姉さんのストッキングは、いつも太ももまでのもの。
どうして母さんみたいに、パンティストッキングにしなかったの?
そう訊いても、ふふっ・・・と笑って、教えてくれない。
オトナの秘密・・・ということなのかなぁ。
なんとなく、取り残されたような気分。

そういえば。
あれから姉さんは
お邸に行ってきます。
母さんにそんなふうに言いおいて。
夜更けに出かけてゆくことが増えていた。
どこ行ってるの?
そう訊いても、やぱりふふっ・・・と。
くすぐったそうな笑みがかえってくるだけだった。

とうとうガマンできなくなって。
ゆう子姉さんのあとをつけてみた。
雨上がりの夜道。
ひたひたと音を忍ばせた革靴が二対、距離を置いて歩みを進めてゆく。
時折横切る街灯が、黒のストッキングに染められた姉さんの脚をどきっとするほどなまめかしく浮かび上がらせる。
あたしの脚もいま、あんなふうに見えるのかな?
家を出るときにいつものハイソックスを脱ぎ捨てて、
みどりも黒のストッキングを脚に通していた。
どうしてそんなことをしたのか、本人にもわからないでいる。
こういうときはそうしなければならないのだと、誰かに言われたような気がしたから・・・

「みどりが出かけましたよ」
その時分。
割ぽう着のままの母親が、新聞をへだてた父親にそう、話しかけた。
「しょうがないやつだな」
できるだけ感情を抑えた父親の声が、新聞紙の向こうから聞えてきた。
「ほんとうに・・・仕方ありませんよね」
ため息混じりにそういいながら、母親は夫と自分の茶碗だけに、ご飯を盛ってゆく。

たどり着いたお邸は、こんな家がこの街にあったのか・・・というくらい古風に豪勢な邸宅だった。
姉が門前に現われると、ひとりでにゲートが開く。
玄関に佇むと、やはりひとりでに、扉が開かれた。
扉の向こうに呑み込まれるように姿を消した姉。
みどりはためらわず、扉を押した。
拍子抜けするほどあっけなく、扉は開かれた。
目のまえは広々とした吹き抜けになっている。
見通しのよい空間にそらぞらしく佇んだ不意の来訪者の姿を、
しかしとがめるものはないようだった。
無人の館のように、人の気配のしない家。
しかし誰かが住んでいることは間違いない。
入念に手入れされた室内には、階段の手すりにもちり一つついていなかった。

あぁ・・・
声がしたようだった。
声とみどりのあいだには、階上につうじる階段があった。
足音を気遣うことも忘れ、少女は一気に駆けのぼって、声のしたと思しきドアを開いてしまっていた。

「とうとう来ちゃったのね?」
ベッドにうつ伏せになっていた姉は顔をあげ、いつものように優しく笑っている。
黒い影がふたつ、横たわる姉におおいかぶさっていた。
ひとりはうなじに、ひとりは黒ストッキングのふくらはぎに、唇を吸いつけているように見えた。
じじつ、吸いつけていた。
ちゅう、ちゅう・・・
きゅう、きゅう・・・
異様な音を立てて・・・血を吸っている!
ひっ・・・。
ひくく呻いて身体を硬くしたみどりとはうらはらに、
ゆう子姉さんはまどろむような夢見心地にひたっているらしい。
うっとりとした含み笑いを滲ませながら、
男たちが吸いやすいようにおとがいを仰のけ、脚の向きをかえてやっている。

「ど、どうしてっ・・・!?」
おののくみどりを、背後から伸びてきた一対の猿臂が抱きすくめる。
やめてぇ・・・
縫い針をちくりと刺されたような感覚とともに、
冷たく尖った異物がもぐり込むように、少女の肌を侵した。
縮みあがって抗う少女の動きは、すぐにとまった。
「あまり、乱暴にしないであげてね」
ゆう子はとりなすように、男たちに声をかけた。
少女が大人しくなったためか、ゆう子の言うことは聞き入れる約束になっているためか、
男たちは必要以上に手荒なあしらいを加えることはなかった。
ただひとつの例外を除いて・・・
純白のシーツにおおわれた、広々としたツインベッド。
姉の傍らに仰向けにされたみどりはただわなわなと唇を震わせていて。
チェック柄のプリーツスカートからにょきりとのぞかせた両脚は、意思を喪ったように半ば開かれて、シーツの上にだらりと横たえられていた。
もうじき黒ストッキングの足許と白のシーツとを己の血で汚すことを予感しているかのように。
「お嬢さん、失礼するよ」
さいしょにみどりの首筋に牙を入れた男は薄笑いを浮かべながら、少女の身体に体重を載せてゆく。
「初めてのようだが・・・遠慮なく、お邪魔するとしようか」
濡れた唇が刻印するようにねっとりと、冷たい感触を素肌に沈めると、
少女はちょっぴり痛そうに身をすくめ、
あとはもう、なされるがままスカートのすそを乱していった。


あとがき
ゆう子姉さんはどうしていつも、太ももまでのストッキングを着けていたのでしょうか?
あとはもう、言わぬが花、ですな。^^



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コメント

ねえさま・・・
みどりさんの口から零れる呼び声が
「ねえさまぁ・・・」と聞こえる気がするのはわたくしだけでしょうか
姉のデートに付いてゆく妹
わたくしたちの父母の世代には現実にあったとことのようですが
いまの時代には全く聞かれなくなりましたね
付いて行った先に立ちはだかる扉が<大人の扉>だったなんて
みどりさんにとって、幸せだったのか・・・不幸せだったのか
ふと、そんなことを考えてしまいました
by 祥子
URL
2006-04-10 月 16:51:04
編集
大人の扉
さすがは祥子さま。
見事にお話の核心を読み解かれていらっしゃいますね。
そう。
<大人の扉>は好奇心と羨望をいだいた乙女たちの目の前に、
いつも鍵をかけない状態で半開きにされています。
誰もが一度はこの扉を通り抜けて、
果てないしじまの彼方に仕掛けられた、もはや後戻りすることのできない陥穽に堕ちるのでしょうか。
by 柏木
URL
2006-04-10 月 21:49:59
編集

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