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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

念写変成

2008年11月04日(Tue) 07:08:35

女の子の服、着てみたくはないかね?
そんな囁きを、耳元に吹き込まれて。
ユウヤはぎくりとして、相手を見あげた。
親たちよりも、はるかに年上らしいその男は。
枯れ切った白皙の頬を、かすかに紅潮させていて。
色あせていた唇さえも、少女のようなバラ色を帯びていた。

女の子の服って・・・どんな?
おっかなびっくり、たどたどしくなった声に、満足したように。
来て御覧。
男は少年を、奥の部屋へと引き入れた。
かすかに漂う、ぬくもりを帯びたその芳香が、年頃の少女の痕跡なのだと。
なぜか、訊きもしないで察しをつけてしまっていた。

どうかね?
音もなく引き開けられた古びた箪笥の抽斗から、男が取り出したのは。
色鮮やかな、紫のワンピース。
たたみの上、散ばすようにぞんざいに投げられた下着類に、
ユウヤはもういちど、息をのみ込んでいた。
部屋から出て。
独りで着かえるから・・・
上ずった声で口走る少年に。
いいとも。待っていてあげよう。
服の着方は、わかるだろうね?
言葉じりに含まれた軽い揶揄さえも、聞き分けるゆとりを忘れて、
ドアが外側から閉ざされるのもそこそこに、
少年は女の子用のワンピースを手にしていた。

もどかしく震える手が、パンティを手にして、
くるぶしからひざ小僧、太ももから腰へと、ゆっくりと引き上げていって。
部屋のどこかに視線が隠れてはいまいかと、
おどおどとあたりを見回しながら、スリップをかぶり、整えていって。
紺のストッキング地のハイソックスが、丈足らずにもならないで、
首尾よくひざ下までぴっちりと伸びるのを、満足げに見おろして。
さいごにワンピースを手にしたとき、さすがにわなわなと、手が震えた。
かぶって着るのか、脚を入れて引き上げるのか。
さんざん迷った覚束ない手つきが、自分自身を女のなりに姿を変えてゆくのを。
扉に開けられた覗き窓から差しれられた視線が、ふとほほ笑ましく、和んでいた。

いいよ、入って。
ユウヤは震える声で、そういうと。
後ろめたそうにドアに背中を向けて、部屋の隅っこに視線を迷わせる。
入ってくる男と目を合わせないように、気まり悪げに押し黙っていたが。
よかった、よかった。なかなか似合うじゃないか。
穏やかな声色に、引きこまれるように。
似合ってる?
半信半疑、救いを求めるようにして。
男を見あげ、初めて姿見に自分の姿を映してみる。
化粧を刷いたわけでもないのに。
鏡のなかの自分の顔が、見知らぬ少女の顔に映っていた。

写真を撮らせてもらうよ。
きみと私の、記念のために。
手にした大きなカメラに、戸惑ういとまも与えずに。
男はばしゃばしゃと、少女のなりをした少年に、フラッシュを浴びせかけてゆく。
炸裂する爆弾の閃光のように、身の周りを焦がすフラッシュは。
あたりの風景をモノクロに染めて。
少年はいつしか自分が、グラビアアイドルにでもなったような錯覚に落ちていた。

いいかね?
このことはもちろん、内緒だよ。
きみのお母さんにも、話してはいけないよ。
男の目のなかに、有無を言わせない力を感じて。
少年は怯えたように、頷いていた。
よろしい。
毎週木曜、学校帰りにここに来なさい。
そうだな。土曜日も、来てもらおうか?
お母さんには、きみに勉強を教えることにしておくからね。
男の声はどこまでも、ものやわらかさを忘れていない。

おとといの木曜日には、白のワンピースに黒のタイツ。
先週の土曜日には、真っ赤なワンピースに蒼のひざ上ハイソックス。
そのまえは、チェック柄のミニスカートに、白のハイソックス。
つぎつぎと取り換えられる、衣装ケースの中身のことを。
少年はどきどきと、期待のこもった眼で、さぐるようになっていた。
できあがった女の子の姿に浴びせられるフラッシュさえも、
いつか、さらけ出す快感の心地よさに酔うようになっていた。
ストッキング、履けるかね?
少し、大人の格好をしてみようじゃないか。
その日出された服は、純白のリボンのついたセーラー服。
重たいプリーツスカートを腰からぶら下げながら。
少年は慣れない手つきももどかしく、
男に教わるまま、頼りないほど薄い女ものの長靴下のつま先をさぐってゆく。
今にも破けやしないかと、それこそおっかなびっくりに。

ソックスよりは、もちろん長く。
ハイソックスの丈も、するりと超えて。
ぐーんと伸びた薄いナイロンが、腰周りまで包んでしまうと。
まるで別人の脚のようになまめかしい墨色を帯びた自分の脚を、
少年は陶然として、見つめていた。
似合う。似合うよ。
まるで、娘が帰ってきたようだ・・・
小さな拍手さえ交えながら。
男はいつものように容赦なく、女学生のなりをした少年に、フラッシュの洗礼を浴びせかけた。

見せて。よかったら一枚、もらえない?
おずおずと口にする少年に。
いいよ。あげる。けれども誰にも見せちゃ、いけないよ。
男の差し出した写真のなか、
エレガントな衣装にくるまれた自分自身が、本物の女の子みたいにうっとりとした目色をしているのを。
少年は満足そうに、確かめると。
誰にも、見せない。
だから、誰にも見せないで。
懇願する声が、なぜか女の子のように艶を含んでいた。

数日後。
息子の挙動を不審に思った母親は。
いつも息子があきもせずに読み返している本を開いてみて。
さいごのページに挟まれた数葉の写真に、ぎくりとした。
そこに映っているのは彼女の知っている息子ではなく、
人形のように無表情な、見知らぬ美少女だった。

お気に入りの紫のワンピースを身に着けて。
たたみの上、あお向けになった少年は。
男に迫られるまま、のしかかられて。
自分よりも上背のある身体の重さに顔しかめながら。
それでも、抑えつけられる束縛感に、軽い陶酔さえ覚えていた。
少年のうなじに、長いこと吸いつけていた唇をやっと離すと。
残されたのは、赤黒く爛れた痕。
自分の身体から吸い取られた血潮が、男の唇を染めるているのを。
少年はうっとりと、見つめ返して。
口紅を刷いた唇を、惚けたように弛めると。
重ねられてくる唇に、自分のほうから唇を合わせていった。

お父さま・・・お父さま・・・
戸惑うような、少女の声は。
けれどもはっきりと、意味のある言葉をつづってゆく。
どうぞ、ぜんぶお吸いになって。
わたしの血、一滴残らず差し上げたいの。
お父さまの中で、わたしは永遠に生きつづけたいの。
そんな囁きを、口にしながら。
うら若い身をめぐる血液を、一滴余さず口に含んでゆく父親に。
蒼ざめた頬に、甘えるような微笑を絶やすことなく、
少女は幸せそうに、目を閉じる。永遠に―――
たたみの上に組み敷いた、よその家の少年が。
いつか、なん年もまえにおなじように血を含んでいった愛娘の面影と重なりあっていた。

あの子が最近、顔色が悪いのです。
ちょうど、三か月ほど前。
お宅に伺うようになってからですわ。
思いつめた母親は、ひとり男の邸を訪ねていって。
せつせつと、そう訴えたのだが。
思い当たるふしは、ありませんな。
息子さんはいつも、とても機嫌よく、うちではお過ごしになっていくのですよ。
内心の翳りを、押し隠して。
男はあくまでも他人行儀に、しらじらしい受け答えをくり返していた。
黒のワンピースの足許を彩る漆黒のストッキングに、蒼白く滲んだふくらはぎと。
銀のネックレスとウェーブのかかったエレガントな栗色の髪とを装身具にした、
ワンピースの襟首に四角く縁取られた乳色の胸元とを。
男はさりげなく、獣の視線で盗み見ている。

ふらふらとした、覚束ない足取りで。
いつもと変わらないはずの家路を、女はたどっていた。
息子はとっくに、家に戻っているだろう。
どんな顔をして。どんな言葉で装って。
取り繕ったものだろうか。なにごとも起こらなかったのだと。
首筋につけられたふたつの痕は、まだ赤黒く爛れていて。
吸い残された血潮が、まだ固まりきらないで。
ぬらぬらと妖しい輝きを秘めている。
ふくらはぎには、もっとあからさまに。
食いつかれて噛み破られた黒のストッキングが、
大胆な裂け目を滲ませていて。
裂け目ほどは、目だたなかったけれども。
そのまえにいじましいほどなすりつけられた唇に、脚線をなぞられた痕跡が、
唾液の湿りになって、そこかしこにしみ込まされていた。
さすがはユウヤくんのお母さんだ。佳い味をしていらっしゃる。
こと果てたあと、男はむしろ、敬意をこめて。
女の肩を抱きしめると。
女はうつろな視線を迷わせながら、傷口に這わされてくる唇を、もはや避けようともせずに許していった。

女の懇願に、男はどこまで応えてくれるのだろう?
今夜も少年は、出かけて行った。
どこに行くとも、いや出かけることさえも、口にしないで。
今夜もストッキングを、試してみるかね?
無表情にうなずく少年のまえ。
男は手にした黒のワンピースを、丁寧に畳に広げると。
さっき、おなじ部屋にまろばせたあの女のことを思い出して。
おなじような服を、選んでしまったな。
ひそかに苦笑いを、浮かべていた。

破けないようにと、おそるおそる、脚に通してゆく黒のストッキングは、
さして毛深くない少年の脚を、女の色に塗り変えてゆく。
しなやかに肌を打つ、薄いナイロンの柔らかな密着感に。
少年は満足したように、脚の角度を変えていって。
ナイロンの濃淡が織りなすなまめかしさを、目で愉しんでいた。
男が足許にかがみ込んで来て、唇を這わせてきて、
脚の線をなぞるようにし、唾液をしみ込ませてくるのを、
ひどくくすぐったそうにして。

息子が、女に変えられてゆく。
見知らぬ少女と、入れ替えられてゆく。
眠れぬ夜を、過ごしながら。
女はベッドのうえ、身を起こして。
決心したように、服をはおり始めてゆく。
もしかするともう戻れない・・・いちどだけ、我が家を振り返ると。
漆黒の闇の彼方、ハイヒールの音を忍ばせていった。

どうかね?いい絵になっているだろう?
少年の首筋に、時折唇を這わせながら。
啜る音が漏れるたび、少年はくすぐったそうに身をすくめながら。
手にした写真を、幾枚も。
かわるがわる、手にしてゆく。
紫のワンピース。花柄のタイトスカート。セーラー服・・・
どれもこれもが、見知らぬ少女の顔つきになっているのを。
なんの不審も抱かずに、己のあで姿として見入っていた。

きみは、この少女に生まれ変わるのだ。
そして、私の娘になるのだ。
ちょうど、いまのきみと同じ齢だった。
わたしの渇きを、いやそうとして。
その身をめぐるうら若い血を、そっくりくれた優しい娘だった。
若い身空で、じぶんの生命と引き換えに・・・。
今宵、わたしの愛娘は。
きみの姿を借りて、蘇る―――

だしぬけに、ドアが開いた。
蒼白な顔をした女が、そこに立っていた。
少年とうりふたつにさえ見える、ノーブルな目鼻だち。
遅かったね。
男は憐れむように、少年の母親を見つめていた。
部屋の隅、漆黒のワンピースをまとっているのが。
自分の息子とは別人の、年頃の少女になっているのを。
女は両手で顔を蔽って、見まいとした。

けだるい朝が、訪れた。
女は着衣のまま放り込まれたベッドのうえ。
夜通しあげつづけたうめき声のなごりを、まだ発しつづけていた。
残酷な運命をさらにもてあそぶようにして。
無表情に見つめる少女のまえ、手ごめにした女のことを。
男は冷たい頬に薄笑いを重ねながら、
夜通し寄り添って、あなたのことも変えてあげよう。
脚にまとっていた黒のストッキングは、まだ引き裂かれてはいなかった。

さて。
そろそろ娘が、起きてくるころだ。
いっしょに、朝のあいさつをしてくれるね?
わたしの娘は、あんたの子ども。
夕べから夜通しかけて、そういう契りを重ねたはずだね?
整った顔だちが、羞恥と屈辱に歪むのを。
男は心地よげに窺うと、
初めて女の身体を放して、しつように巻きつけていた四肢から華奢な女体を解放した。
ドアの向こうから、足音が近づいてくる。
母さん、帰ろう。
その声を耳にすると、男も女も、色をうしなった。
廊下の声は、少年の声だった。

半ズボンの下、むき出しになった脚が。
ひざ上までの黒い長靴下で覆われている。
女の子の靴下って、履き心地がいいよね?
夕べ履いた母さんのストッキングも、素敵だったよ。
少年は口許から健康そうな白い歯をみせて、
血色のよい頬を、いっそう輝かせていた。
運が良かったようだね。
男は負けを認めるように、女を、そして少年を、見比べていた。
うかつにも、気がつかなかった。
女がむなしい懇願をしにきたあの日、箪笥の秘密の抽斗に、ひそかに自分のストッキングを紛れ込ませていたのを。
まな娘を変成するには、いちぶしじゅうを彼女の服で装わなければならなかったというのに。
この邸のなか。
娘の服に身を包むときには、男の愛娘として、よみがえって。
ふだんの姿に戻るときには、女の息子に立ち戻って。
ふたつの生命をひとつの身体に宿した少年は。
どんなふうに、生きていくのだろう?

だいじょうぶ。
帰りはもう少し、おろして履くからさ。
男の子がひざ上の靴下なんて、人目にふれたら恥ずかしいからね。
でも・・・時々この家に来るのは許してね。
ボク、やっぱり女の子の服が、とても好きなんだよ。
なにも知らないのか。すべてを知ってしまったのか。
少年はくったくなく笑って、あらぬ姿の母親を、眩しそうに見つめている。

知ってる?こんど転入してきた子、独りで大きなお邸に住んでいるんだって。
遊びに来てね、って、誘われちゃった。
あなたも、行く?
とても、愉しいんだよ。
でもね。必ず女の子らしい、きちんとした服を着てかないといけないんですって。
しつけの厳しい執事さんがいっしょに住んでいて、
見苦しいなりの子は、家に入れないんですって。
ユウヤがひっそりと学校を退学したころ。
近くのお嬢様学校のおなじ学年に、少女がひとり転入した。
彫りの深いノーブルな顔だちは、母親ゆずりだといっていた。
過去のことはいっさい口にせず、問われても謎めいた頬笑みを返すだけ。
だれもがなぜか、もうそれ以上問いただすことを忘れたようになっていた。
選ばれた少女たちは、招かれるまま、邸のなかに迷い込んで。
出てくるときには、首筋に目だたないほどの大きさの、奇妙な痕をつけているという。
それとはひと周り大きい、おなじ容をした痕を。
ハイソックスや色の濃いタイツの下にひた隠して。
母や姉、べつのクラスメイトを誘って、
連れだってお邸通いを繰り返すようになるという。
謎の少女はお邸のなかで、時おり少年の顔に戻っていて。
興が乗ると、クラスメイトの女の子のスカートの奥に割り込んでいくという。

女の子の服を着て、写真を撮ってみないかね?
そんな誘惑を向けてくる男がいたら。
うちに遊びに来ない?いつも独りでさびしいの。
そんな招きを投げてくる少女がいたら。
いちおうは、疑ってみるほうが賢明です。
それでもなおかつ、好奇心に逆らいがたかったら。
あとはお気の向かれるままに・・・
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