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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

亡き夫の贈り物

2006年01月14日(Sat) 05:06:47

愛し合っている夫婦がいた。
広い額。切れ長の目。高い鼻。分厚い唇。
妻は夫のすべてを愛した。
不幸にして夫は吸血鬼に遭い、生命を落とした。
悲嘆にくれる幾晩かの後。
ある夜更け、妻は外からほとほとと扉を叩く音を耳にした。
開けてはならない、と周囲のものから聞いていた。
血を求めるものはまず、肉親を毒牙にかけようとするものなのだと。
そして扉の向こうから聞えてくるのは紛れもなく、懐かしい夫の声だった。
妻は寂しさに耐え切れず、扉を開けてしまった。

幾晩も。幾晩も。
逢瀬は続いた。
妻はすっかりやつれ果て、誰の目からも血を吸い取られゆく女に映った。
ある晩夫との逢瀬を愉しんでいる最中に、
村の男たちが踏み込んできて、たちまちのうちに夫の胸を杭で貫いてしまった。
目のまえで夫を灰にされてしまった女は半狂乱になったが、
そのときすでに彼女は夫の子を宿していた。

必死で生まれ月を偽って。
女が生んだのは男の子だった。
優しく逞しく成長した息子はやがて、かつての夫そっくりの少年になっていた。
きざしがあらわれたのは、彼が大人になりかけた年頃だった。
にわかに胸を押さえて苦しむ息子に、母親はなにが起こっているのかを察していた。
生え初めた牙を、息子はもう隠しきれなくなっていたのだ。
母親はもっとも母親らしく振る舞った。
息子の口許から洩れてきた牙をわが胸にあてがって、彼の欲望どおりに遂げさせてやったのである。

それからは昼となく夜となく。
息子は恥じらいながら母の寝室を訪れるようになった。
月夜の晩。
すっかり逞しくなった息子の腕に抱かれながら。
広い額。切れ長の目。高い鼻。分厚い唇。
かつての夫が自分のもとに戻ってきたのだと女は感じた。
太ももに触れ、押し当てられてくる少年の下半身は熱く逆立って、
やり場のない熱情をもてあましているようだった。
女はもうためらいもなく、押し当てられた熱い塊をあるべき部位へと導いていった。
―――ありがとう。
初めて女を征服する歓びに満ち足りた男が発した声は、まぎれもなく夫のものだった。

母さんの血を吸って。ぜんぶ貴男にあげるから。
息子は本能の赴くまま、毎晩のように母の寝室を訪れて。
とうとう女はその身を巡るすべての血潮をわが子にプレゼントしていた。
そしてある晩。
息子でもあり最愛の夫ですらあるかもしれない男とともに姿を消した女は、二度と村に戻ってはこなかった。


あとがき
「魔」がささやきかけてきました。
夜更けに扉を叩く音が聞えたら。
それがたとえこの世のものならぬ相手であっても。
肉親であれば扉を開いてしまうであろうということを。
それは決して間違った選択とはいえないのだということを。
そして、夫の形見は時として、最愛の夫そのものであるかもしれないのだと。
姿を消した女はきっと、愛するものとともにいつまでも歩みをともにすることになるのだろうと・・・
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