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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

田舎の女学校 3

2008年12月30日(Tue) 11:54:35

ひとーり。・・・ちゅっ。
ふたーり。・・・くちゅっ。
さーんにん。・・・ちゅううっ。
仲良く並んで、腰かけて。
差し出される濃紺のハイソックスの脛に、
ひとつひとつ、刻印を捺(お)すようにして。
唇吸いつけて、うら若いバラ色のしずくを失敬する。
飢えた唇這わせた、しなやかなナイロンの生地の向こう側。
しくっ・・・と筋肉を引きつらせ、怖がる子。
疼いた皮膚に、跳ねるように脚すくめる子。
さいごの子はくすぐったそうに、
うふふっ。
肩をすくめて、笑みを洩らしていた。

ふ・・・ふ・・・ふ。
ここは校長室。
お当番ですよ。
とうの昔からたぶらかしている、四十代の女の担任は。
能面のような無表情でおおった蒼ざめた頬を、教え子たちのほうに向けて。
お掃除当番の子たちとは別れ別れに、
三人ほど、調達してきてくれたのだ。
喉の渇いたおれに、若い女の血をあてがうために。
きょうは、紺色のハイソックスの日。
かすかにつけた破れ目から覗く、白い皮膚に欲情するように。
おれはもうひと口ずつ、女の子の血潮を盗み取ってゆく。

やめなさい。
背後から、突き刺すような制止の声。
なんだなんだ。尖った声は、願い下げだ。
振り返ると、そこに立ちすくんでいるのは、
あのときの若い女教師。
純白のブラウスに透けるストライプもようが、なだらかなカーブを描く胸元まで。
サラサラと柔らかそうな長い黒髪が、しっとりと映えていた。
女らしい、うっとりするような風情とは、裏腹に。
女の声は、ただならぬほどとげとげしい。
振り向いたおれの口もとに、教え子たちの身体をめぐる紅いしずくが散っているのをみとめると。
白い細面の額に刷いたような細い眉を、キリキリと神経質に逆立てた。

うふふふふふっ。
もう、いただいちまったぜ。
身を起こしたおれは、ソファの上の獲物を見せびらかすように。
わざと険悪な笑みで、まともに女を見返してやった。
まぁ・・・青田さん、猪田さん、歌島さん・・・っ。
呆けたようになってソファに身をもたせかけた女の子たちに、駈け寄ろうとする先生の肩を掴んで、
荒々しくこっちを振り向かせて。
やめてくださいっ!
あくまで生真面目な女の横面を、張り倒して。
さぁ、そこに座るんだ。
尻もちをついた床のあたりを、ぐるっと指さしてやる。

きょうは、紺色のハイソックスの日。
大人の女は、お呼びじゃないんだが。
どうしても・・・って、言うんなら。
黒のストッキングの日に変更してやっても、いいんだぜ?
女は床の上、座り込んだまま。
ハッと身構えて。丈の短かい黒のタイトスカートのすそを、サッと抑えて。
黒の薄々のナイロンに滲んだ乳色の太ももを、とっさに押し隠そうとした。
かすかに血ののぼった頬が。
艶っぽく揺れる黒髪が。
おれの欲情に、火をつけた。
散れ。
ソファの上の女子生徒たちは、ふやけたような顔つきをして。
無表情にぞろぞろと、校長室から立ち去っていく。
ほんとうはもう少し、いただいて。
あのぴちぴちとした脚もとから、ハイソックスをずり堕としてやるつもりだったんだが。
足りない分は、あんたからいただくぜ。

足許に取りついてきたおれのことを、女はどうすることもできないで。
もう、半泣きになりながら。
むやみにおれの背中を叩いたり。
ひざの上に乗っかった肩を、押しのけようとしたり。
力の抜けた細腕に、いったいなにができるものか。
おれはいともやすやすと、女の脚を抑えつけていって。
お目当てのふくらはぎに、唇を吸いつけて。べろを這わせて。
ナーヴァスに引きつるふくらはぎの筋肉を、もてあそぶようにして。
硬質に透きとおる、気丈なほどに鮮やかな墨色のナイロンの、
見かけとは裏腹に、なよなよと頼りない舌触りを。
ちゅうちゅうと、聞えよがしな音を洩らしながら、
遠慮会釈なく、愉しみはじめていた。

このあいだ、あれほどもてあそんでやったのに。
性懲りもなく、女は毎日、黒のストッキングを穿いてきた。
いかにも都会ふうな、洗練された装いの下。
この村の女のだれもが脚を通したことのないような、舶来もののストッキング。
かすかに帯びた光沢の高貴さが、だれの目にも鮮やかだった。
誇り高い女のステータスを、思うさま辱めてやるような。
虐げる愉しみに、己を忘れかけたとき。
切れ切れに洩れる、涙交じりの吐息の向こう。
からりと音をたてて、校長室の扉が開かれた。

おじさま、だめよ。先生のこと苛めちゃ。
舌足らずな可愛い声に、ふと顔をあげると。
驚いた。
このあいだからずっと、お目当てにしているあの少女が。
なぜかひとりだけ、真っ白な夏のセーラー服姿で。
ちょっぴりかがめた膝に、両手を置いて。
ツヤツヤと光る、長い黒髪を。肩先にすべらせるように添わせながら。
こちらを覗きこむようにして、ほほ笑んでいた。

あの子を連れてこい。
きょう・・・今すぐにだ。
おれに耳打ちをされた、学年主任の男の先生は。
長い髪の毛の子?あ~、有江くんのことだね?って。
妙に納得したような顔つきをして。
おーい!有江くんはいないか?えっ?いない?
いつもこんなあんばいで。
近くにいながら、決して捕まえることのできない少女。
きょうにしたって。
わざわざ出席番号順で呼び出してもらったのは。
「あ」行で始まる苗字の彼女に、ひそかに狙いを定めてのことだったが。
きょう・・・彼女は紺のハイソックスを履いてきていなかったらしかった。

真っ白な夏の制服に。
濃紺の襟首が。襟首に走る三本の白線が。
おなじように、三本の白線をあしらった袖口が。
目に痛いほど、映えていて。
鮮やかなプリーツの走る、濃紺のスカートの下。
薄々の黒のストッキングが、白い脛をなまめかしく染めていた。
白い制服の胸元に映えた、ツヤツヤと長い黒髪と。
黒革のストラップシューズにくるまれた、しっとりと大人びた足許の装いと。
なにからなにまで同級生と変わらない、清楚で質朴なはずの装いが。
なぜか、先生の足許を彩る高価なストッキングとおなじくらい、女らしい芳香を漂わせていた。

這いずって逃げようとする人の気配に、はっと気づいて。
素早く脚を、抑えつけて。
ダメだよ、先生。生徒を置き去りにしちゃ。
もういちどこれ見よがしに、唇をなすりつけてやる。
お目当ての少女に、見せつけるようにして。
待っていろよ。
あんたの履いている通学用のストッキングも。
いま。おなじようにあしらってやるからな。
そういう想いをこめて、にゅるり、にゅるり・・・と、いたぶってやった。
そんなつもりじゃない。生徒を見捨てたりなんか、しません・・・っ。
女は四つん這いの、ぶざまな格好のまま。
黒のストッキングの脚を、吸われながら。
長い黒髪を震わせて、かぶりを振りつづけていた。

だぁめ。
額に軽く触れた、少女の掌の冷たさに。
おれははっとなって、先生の脚を吸うのをやめて、頭をあげて。
女先生は素早く立ち上がると、教え子をかばうように、ふたり寄り添いあうようにして。
部屋の隅っこに、立ちすくむ。
いずれ劣らぬ、薄墨色に映えた脚線に。
おれは、舌なめずりをしながら、にじり寄る・・・

はっとした。
愉しかった・・・?
少女の冷やかすような声が、部屋の隅からにじみ出たような気がした。
けれども声の主はおろか、さっきあれほどいたぶり尽くしてやった女先生すら、
影ひとつ、とどめていない。
手にしているのは、帯のように長い、黒の長靴下。
透きとおるナイロンは、ふやけたように萎えたまま、それでも女の脚の容をとどめている。
まだぬくもりが、残っているのだから。
脱いでいくらも、経っていないはず。
だれの持ち物なのか。いったいどうやって、脱がせたものか。脱いだものか。
それすらも、記憶の切れ端すら、とどまっていない。
冷え切った室内は、もうなん時間も人がいなかったように、シンと静まり返っていて。
下校時間を告げる校内放送が、ひどく遠くから洩れてくるばかり。

あんまりいろんなひとを苛めた罰ですよ。
きょうはもうこれくらいにして、さっさとお帰りなさい。
少女の声だろうか。女教師の声だろうか。
どちらともつかない、甘い響きを秘めた低い囁き。
それが、まるで悪ガキを諭す母親のような声色で。
いつまでも鼓膜の奥を、くすぐりつづけている。


あとがき
ちょっと好評だったことに、げんきんなほど気をよくしてしまいまして。(^^ゞ
つづけるつもりのあまりなかった続編を、描いてしまいました。
先生の白の透けるブラウスと、少女の真っ白な夏の制服と、
白い上衣に映える黒髪と、なまめかしい黒のストッキングと。
わざとだぶらせて描いたのは、お気づきいただけましたでしょうか?^^

わざわざ出席番号順で女子生徒を呼び出すなんて、手の込んだことをしているくせに。
お目当ての子がどんな靴下を履いているのかチェックしていなかったなんて。
おっさん吸血鬼のずさんなリサーチ不足ぶりは、座布団をあげたいくらいですが。(笑)

ちょっと唐突な結末ですが。
どうもこの少女は、つかまえようがありません。
実のところ、あとでどの先生にお伺いしても。
「有江」という苗字の生徒は、どの先生の受け持ちのクラスにも、いなかったということでした。

―――夕べ、ほんとうに見ちゃいましたよ。お目当ての女性をつかまえそこねる夢。(苦笑)
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