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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

汚れない女

2005年09月06日(Tue) 21:41:00

誰かに幾度となく襲われて。
繰り返し血を吸い取られて。
一度死んで、甦って。屍鬼となり果てた私。

血を吸うことは悪くない。
甦ったときにはそう教わった。
襲われるほうも、いちど咬んでしまえばあとは大人しくなると。
人によっては吸われることに歓びを覚え、自ら招く者さえあると。
そういわれて引き入れてしまった親友のひとり。

女のほうがよかったかね・・・
さきに屍鬼となった仲間にそう冷やかされながらも、
働き盛りの血液を声もなくむさぼってしまった私。

親友は快く、私の所行を赦してくれた。
しかし、それはあくまでも、正気を喪ったがゆえの好意。
私は夜、彼を伴ってねぐらを抜け出す。

目指したのは彼の家。
もともと離れた隣町にある。
あそこまで離れれば。二度と再び村に近寄らなければ。
もう、襲われることはないだろう。
けれども道は遠く、帰りにはどこかで必ず夜が明ける。
日光を浴びると、私の体はみるみる炭化してしまうはず。
呪わしいさだめを断ち切るいい機会だ・・・
とうに虚無的になっていた私には、それがさして恐ろしいものとは思えない。
むしろ、顔見知りを襲って血を採りつづけることのほうがよほど虚しいことだった。

首尾よく彼の家に着いた。
出迎えてくれたのは彼の妻だった。
大きな瞳。長い黒髪。そして、何よりも透きとおるような白い素肌。
初めてみる彼の妻にひととき魅了され、求められるままに家にとどめられた。
急げば夜が明けるまでにはかろうじて、ねぐらに戻れるほどの刻限だった。
彼女に引き留められたところで、私の運命は定まった。

疲れのあまり気を喪ったようにベッドに倒れた彼。
彼に関するかぎり、もう安心だった。
二人きりになったとき、私に注がれる、潤いを帯びた瞳。
―――もう、助からないのですよね?
―――そうとわかって、俺を引き留めたの?
―――・・・ここにいたがっているように見えたから。
―――もう、このへんで、しまいにしたいんだ。
―――そう・・・
彼女はしばらく黙って、闇の薄れかけた窓辺に寄った。
そして、黙って立ち上がり、厚いカーテンを閉めて、これから昇る太陽を私から遮ろうとした。
それでも私の口許から、虚ろな笑みは消えなかった。我ながら、潔いくらいに。
―――もう、いいんですよ。本当に。
―――お気の毒ですね。
憂いと同情を帯びた目線。
このまなざしを得ただけでも、墓場から泥だらけになって這い出してきた甲斐があった。
彼女は黙って、長い髪の毛を掻きあげる。
そして、それほど高価ではなさそうなネックレスをはずし、飾り気のない無地のブラウスのまえをはだける。
白磁のような素肌を惜しげもなくさらすと、さあ、と囁いて。
私の牙に豊かな胸を押しつけてきた。

・・・・・・。
僅かな時間許された、至福の沈黙。
彼女の華奢な身体を掻き抱き、じゅうたんの上でもつれ合っていた。
まるで恋人同士のように。
もうなにも遮るもののない開放感に浸りながら。
初めて心から、暖かい血潮を快く感じながら
硬くそそり立った部分で彼女の秘奥を思うさま侵しつづけていた。
不意に覚えた活き活きとしたものをどくどくと注ぎ込み、それでも彼女はしっかりと目を開いていた。

―――行ってしまうんですね。
なにごともなかったように落ち着いた口調に、本当の淑女を感じながら、私は強く頷いている。
貴女を辱め抜いたはずなのに。
貴女はちっとも、汚れていない。
さいごの瞬間に逢った人が貴女であって、とても幸せだった。
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