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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ぬくもりが欲しい・・・

2006年04月11日(Tue) 06:58:42

体が冷える。ぬくもりが欲しい・・・
いく度、彼の呟きを耳にしたことだろうか?
そのたびにスーツのズボンをたくし上げて、
長めの靴下ごしに飢えた牙にふくらはぎを侵させてやっていた。
理性を奪われて、意のままにされながら。
独りでいる彼とのあいだにはそこはかとない共感と親愛が漂っていた。

暖まりたい。渇きをやわらげたい。
そうせがまれるたびに。
男の血じゃ、癒しきれないんだろう?
せめてものこととストッキング地のハイソックスを脚に通して
すがりつくような性急さですりつけられてくる唇に帯びた寂しさを紛らわせてやる。
いつも、すまないね・・・
彼のねぎらいは、ふらりと揺らいだ理性の彼方、ひどくうっとりと耳に響いていた。

あぁ、おかげできょうは少しだけ、和らいだ。
いつになく伸びやかな、彼の声。
いつもかさかさな肌にうるおいの艶がよぎり、
整った目鼻だちからは、あの差し迫ったような険しさが去っている。
あぁ、それはよかったね。
心から友を祝福しながら、口許についた血のりをハンカチで拭ってやった。
もう少し、もう少しだったら、彼女も気分を害さないだろうね。
念を押すように覗き込んでくる目線に、柔らかに応えながら。
きみに魅入られて、厭がるやつはいないだろう?
そういう私も、身体の奥に感じ続けていた渇きを癒される思いだった。

うつ伏せに倒れているワンピース姿に、慕い寄るようにかがみ込んで。
仰のけたおとがいのすき間に割り込むように、うなじに牙を滲ませてゆく。
ぐいっ・・・と食いついた拍子に、女の顔がこちらに向いた。
どす黒いなにかが、ちくりと胸を刺した。
まぎれもない妻の顔が、そこにある。

ちゅう、ちゅう、ちゅう・・・
くいっ、くいっ、くいっ・・・
リズミカルなまでにどん欲な吸血の音が、鼓膜の奥まで心地よく注ぎ込まれる。
心の奥の渇きを潤おすような、不思議な力を秘めた音。
抱きすくめられた腕の中。
妻は目を瞑り、眉をひそめ、半ば開いた口許から白い歯を覗かせて。
切なげに身もだえしながらも飽くなき吸血に応じはじめている。
男の血じゃ、きみの渇きは癒しきれないのだったね。
彼の獲物がたまたま妻だった。いまは、それだけのこと。
切ない渇望を満たすためにヒロインの役をみごとに演じきっている妻が誇らしい。
頭を抱かれたまま、うなじを侵されている妻。
血を吸っている相手が本当にいとおしくなったときの、彼の癖だった。
彼の獲た快感が。妻の感じはじめている恍惚が。
私の心の奥にまで、滲み込むように伝わってくる。
よしよし。もっと吸い取らせておやり・・・
少女のようにうっとりとした笑みをうかべつづける妻の頭を撫でてやる。
相手が私の妻だと気づいた彼は、いっそうこれ見よがしになって。
ちらりちらりとイタズラっぽい目線をこちらに送りながら、
ストッキングに包まれた太ももを、意地汚くいたぶり始めている。
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