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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

屍鬼のいる森

2005年09月28日(Wed) 08:32:09

夜明け―――。
まだ薄暗いなか。
家のなかで灯りもつけないで。
私は音を忍ばせて着替えをする。
白のブラウスに、漆黒のスカート。
そんなシンプルないでたちを好む男(ひと)に逢うために・・・
夫が起きだしてきた。
けれど、彼は私の行動を咎めない。
もう数年来つづいている、そんな習慣。
「行くのか?気をつけて・・・」
夫は口数をすら惜しむように、そういって私のことを送り出す。

村はずれの夜明けの森。
真っ白なワンピースやロングスカート。
純白のスカーフ。
黒一色の礼装。
白と黒。
モノトーンに統一された衣裳の女たちが精霊のように行き交う、木立ちの彼方。
足許の下草を踏みしめながら、近づいてゆく。胸をはずませながら。
早足になる足どりに、肌の透ける黒のストッキングが淫蕩に映える。

モノトーンの女たちのなかにまじる、うす汚れた身なりの哀れな屍鬼たち。
かれらのために血潮をあたえるための、物静かな集い。
つれだって、かわるがわる首すじを吸わせている、年配の夫婦もの。
初めてそでを通したロングドレスに夢中になりながらうなじを咬まれ、ちょっと痛そうに顔をしかめる女の子。
―――やはり、若い子はいいなぁ・・・
そう呟きながら、隣家に住むOLのうなじに唇を近寄せてゆく年老いた屍鬼。

少し遅れて現われた、洋品店の若奥さん。
声をひそめたどよめきが、屍鬼たちのあいだから湧きあがる。
「よく旦那が出したねぇ」
と、ご主人をほめたたえるもの。
「内緒で、出てきたんですよ」
と、声をいっそう忍ばせる若奥さん。
肌色のストッキングを履いたその足許に、しっとりと這わされる飢えた唇。
そのありさまをにこやかに見おろしながら、べつの屍鬼にうなじをゆだねてゆく若奥さん。

傍らにいた彼が、私の肩に手を添える。
フッとうなじに吹きつける呼気が、冴えた冷気のなかで生々しい。
―――どうぞ。
わざと冷たく囁いた私を後ろから羽交い締めにして。
彼は私のうなじを牙で貫いた。
つ、つーーーっと伝い落ちる、吸い残しの血。
ブラウスにひとすじ、ふたすじ。
涙の痕のように鮮やかな軌跡を描く。
白ブラウスの二の腕、わき腹。それに太もも・・・
愛情をこめて、あちこち咬みついてくる彼。

さいしょに私を襲ったとき。
「こんないい女房を喰われちまって。莫迦なダンナだな」
彼はそう、嘯いた。
「夫を莫迦にするのはやめて」
みじかく告げた私に、素直に従ってくれた。
それ以来、私は彼に心まで許しはじめている―――。
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