fc2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

中学生のうちから、そんなばかなことはしないわよ。

2009年06月17日(Wed) 06:46:07

人けのない、放課後に。
廊下のすみに追い詰めた・・・つもりだった。
二分前まで遠い関係に過ぎない同級生だった、彼女。
ブラウスの襟首から覗く白いうなじに、俺は牙を昂らせていた。
制服のジャケットの両肩をつかまえて、引き寄せる。
ただそれだけで、ことは足りるはず。

ところがなぜか、追い詰められたほうは、追い詰めたはずの男のことを、睨むようにみつめていて。
俺はなぜか足がすくんで、うごけなくなっていた。
ダメだ。何やってんだ。まんまと逃げられちまう。
そんな焦りを、見透かすように。
女は冷やかな侮蔑の視線をおくってきて。
逃げないよ。逃げたって…どうせほかの子を襲うんでしょ?
憎々しげな声色は。
きっと彼女の親友を、先週襲ったことを知っているからにちがいなかった。

首筋に唇をつけてしまうと、目だつところに痕がつく。
ブラウスも汚してしまう。
俺らしい機転の利かせかたで、立ち止まった女の足許に、かがみ込んでゆく。
紫のラインが二本入った真っ白なハイソックスは。
太めのリブを真新しく、ツヤツヤと輝かせていた。
―――。

血のついた口許を、隠そうとして。
女に背を向けて、口を拭っていると。
こっち向いて頂戴。
女はさっきと変らぬ平静な声をして。
声に応えて振り向きざま、
熱湯をあてられたような痛みが、横っ面に走った。
ぱしぃん!
平手打ちの音がしたのが、だいぶあとのように感じたのは。
きっと何発か食ったせいに違いない。
これでおあいこに、してあげる。
女は憎々しげに、そういうと。
欲しいんでしょう?あげるから・・・って。
脱いだハイソックスを、俺の鼻先にぶら下げると。
あなたに噛まれた痕のついたやつなんか、もう履けないからって。
小憎たらしい捨てぜりふを吐くと。
素足のまま上履きをつっかけて、すたすたと背を向けて立ち去ってゆく。
いさぎよいほど、背筋を伸ばして。いちどもこちらを、振り返ろうとはしなかった。
辱めを与えた方が、逆に侮辱されたような。
いやな敗北感だけが、俺の胸のなかくすぶっていた。

次の日。
負けるもんかと、廊下の隅で呼び止めて。
お前・・・処女なんだな?
きのうの血の味の感想を、面と向かってぶつけてやると。
あたりまえじゃない。中学生のうちから、そんなばかなことしないわよ。
こっちが声をひそめてやったのに。
周りに聞こえるような声で、平気で返してくる。
来い―――
俺は女の手を無理に引っ張って、校舎の裏へと足を向ける。
やり取りに気づいて振り向いたやつも、なん人かはいたようだけど。
そんなこと、気にしている場合じゃない。

もっと吸うの?吸いたかったら、いいよ。遠慮しなくて。
女の言い草を、真に受けることができなくて。
一瞬振りかざした手を、それでも元に戻してゆく。
すまなかったな。
口を突いて出てきたことばは、自分の予想を裏切ったものだった。
その言葉を、聞きたかった。
女の言い草も、俺の想像にはなかったものだった。

人の血が、要るんでしょう?
だからって、気の弱い子を襲うのはやめなさい。
どうにもならなくなったら、素直にいえば相手にしてあげる。
ガマンしているの、わかっているから―――
さいごのひと言だけは、ちょっとだけ語尾が、震えていた。
そろそろとかがみ込んだ足許は。
彼女には珍しい、黒のタイツ。
白より、めだたないでしょう?
女の声に、聞こえないふりをして。
なすりつけた唇に、しなやかなナイロンの舌触りがしっくりと伝わってくる。

弁償しなさいよ。
突きつけられた手のひらに、千円札を乗っけてやると。
あたしの血、売りものじゃないんだから。
あなたのために履いて来てあげる靴下を買うためだから。って。
週にいちどは必ず、真新しいハイソックスを穿いてくるようになっていた。

待望の首筋を噛ませてくれるようになったのは、一ヶ月後。
いままでのどの子よりも、長引いたのは。
やっぱり強情な性格のせいだろう。
たらりたらりと、吸い取ったばかりの血を、ブラウスにしたたらせてやると。
汚したな?って。
下から睨みあげてくるような子は、彼女が初めてだったから。
いいよ。もっと噛んでも。
どうせ汚しちゃったんだから、好きなようになさい。
まるで、お母さんみたいな言い草だった。

中学生のうちは、ばかなことはしないって言ってたよな?
さりげなくまさぐる手を、自分の胸から追い払うと。
高校に入っても、ばかなことするつもりなかったんだけど。
女の語尾が、過去形になっていることに満足をして。
おれはいっそう、ブラウスの上の手に力を込める。
処女の血、もういらないの?
そんなわけないけど・・・お前の血は特別だからな。
照れ隠しに交わした初めてのキスに、お互い、むせ返りながら。
おなじ高校に受かったら・・・ね。
彼女はまだ、強がりを言っている。


あとがき
柏木の描くのは、ふりんものだけじゃないんです。^^
気の強い子の不器っちょな純愛ものなんかも、たまには描くんです。^^
前の記事
ほんとうは、好きな男がいるんじゃないの?
次の記事
妻だけでなく

コメント

所長はこういう女性は大好きです。
彼女の態度は好きな男性が、他の女の血を吸うのが気に入らないからでしょうか?

しかし、二人とも素直じゃないねw

そう言えば血を吸い尽くされなければ、吸血鬼にはならないのですか?
あと、学校にも通っているし
この世界の吸血鬼には弱点がなさそうにも見えますがどうでしょうか?
所長の感じた点では、能力も人間程度で血を吸うくらいの違いにも見えます。
by アクノス所長
URL
2009-06-17 水 22:57:00
編集
>アクノス所長様
愉しんでいただけたようで、嬉しいです。^^

お察しの通り、うちに出てくる吸血鬼たちは、普通の人間に近いですね。
お話によって少しずつニュアンスが違ったりするのですが。
気分で描いているの、ばればれですね~。^^;
詳しくは別記事にしてみましたので、御覧になって下さい。
by 柏木
URL
2009-06-18 木 06:38:26
編集

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/1758-53aec8f5