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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血鬼のおじさんがね、わたしのこと好きだって・・・

2009年10月06日(Tue) 04:45:49

吸血鬼さんがね、わたしのこと好きだっていうの。
ミチコの言い草に、サダオはどきり!と胸おののかせて。
えっ・・・?それって、どういうこと・・・?
思わず無言で顔見合せていた。

どういうことなんですか?
息せき切るように問い詰められた、その初老の男は。
むしろ、恥じ入るようにして。
すまないね。
そうつぶやくばかりだった。

きみのお情けで、彼女を紹介してもらって。
処女の生き血を、恵んでもらって。
彼女、とても優しいんだね。
脚を咬みたがるわたしに、ちょっと羞ずかしそうにして。
いつも、真新しいハイソックスを履いてきてくれるのだよ。
そんな心遣いに気づいてからだな。
あの子が私の傍からいなくなったらどうしよう?と、そんな恐怖に襲われるようになったのは。

ウン、わかっているさ・・・
ミチコに告白された時のドキドキが、また胸の奥によみがえってきた。
でもね。おじさん。
その恐怖にいま襲われているのは、ボクのほうなんだよ。
さいしょはだって、ほんとうに。
若い女の子の血をあげるだけだって、思い込んでいたんだもの。

さっきからサダオは、反芻している。
おじさんに対する声色が、やたらと突っ張っているのは、なぜ?
ああ、きっと。これが”嫉妬”というやつなんだ。
嫉妬もなかなか、悪くないものなのだよ。
出がけに父さんは、なぞをかけるような口ぶりで。
そんなことを、囁いてきたんだっけ。

おじさんのほうからなんだね?
ミチコに、ボクに伝えるようにさせたのは。
けれどもどうして?
内緒で盗っちゃうことだって、おじさんには簡単なはずなのに。
もちろん・・・そんなふうにされるのだけは、ガマンならなかったけど。

坊主こそ、よく来たね。
内緒で盗るつもりなんか、もともとなかった。
でももしも、きみのほうからやってこなかったら。
つぎにミチコに逢ったとき。
どうなっていたかは、見当もつかないな。

ミチコを連れてサダオが彼の邸を訪ねたのは、その次の日のことだった。
せり上げたスラックスの下、ミチコがいつも穿いている真っ白なハイソックスを見せびらかすようにして。

さすがに、戸惑いを隠せなかった。
彼氏のまえ、おろおろとなったミッちゃんは。
長く垂らした三つ編みの髪を、さらさらとほどかれていきながら。
裸になるよりも、髪の毛をほどかれることのほうに、むしろ羞ずかしそうにして。
見ないでね・・・って、彼氏に告げながら。
けれどもいざ制服のスカートを太ももが見えるほどたくし上げらてしまうと。
彼氏に聞こえるような声で、
羞ずかしいいっ・・・・って、わざとのように叫んでいた。

逃げる腰に、迫る腰。
せり上がる筋肉、応える肌。
ぎこちない初々しさに、手なれた愛撫がくわわるのを。
少年はじいっと、凝視していた。
股間を火柱のように、熱くさせながら。。。

どうしたのお?
サダオ、夕べからヘンだよぉ。
からかうミチコと、目を合わせようともしないまま。
サダオは学校帰りの足取りを急がせていた。
ねぇ、こっち向いてよ・・・
思わずふり返った先にある少女の顔は、心配そうな翳りをよぎらせていた。
―――悪い子だって、思ってるんでしょ?

そりゃ、だって・・・
ボクが望んで、おじさんにさせてあげたんだもの。
思わずすらすらと、そんなことばが口をついてくることに。
サダオが、わがことながら驚いていると。
え・・・?
長く垂らした三つ編みが、ひどく不均等に傾しがっていた。
おじさん・・・って・・・だれ・・・?

少女の記憶に、吸血鬼の影はあとかたもなくなっていた。
翌日息せき切って訪ねていったいつものお邸は。
もう、数十年も手入れされていないかのように、くもの巣だらけで。
消えそうになるほどかすかになった記憶いがい、おじさんの痕跡はどこにもなくなっていた。
きのう脚に通した彼女のハイソックスには、ありありと咬まれた痕。
眩しいほど真っ白な生地には、彼じしんの血のシミが、まだ微かに残っていた。
彼女のハイソックスを手にしたまま、サダオはしばし呆然と立ち尽くしていた。

二十年後。
―――ほら、藁屑ついてる・・・
すっかり主婦になり切ったミチコは、登校しようとする娘の制服を、せわしげに払っている。
はい、これでだいじょうぶ。彼氏によろしくね♪
彼氏?どういうことだ?
娘が出かけていくまでは、とても妻に訊きかえすことはできなかった。

う~ん、よくわからないわ。どんなひとだか。
齢の離れている人みたいだよ。
でも、とても優しくしてくれるんだって。
クラスでつきあっている男子も、いるんだけど。
その子まで熱烈なファンになっているんだって。
男の子って、昂奮するの?そういうときって。

妻の言葉が、無機質に駆け抜けてゆく。
その先に、かすかな追憶が甘い疼きを伝えてくる。
おじさん、また戻ってきたのかな?
時は、くりかえしてゆくものなのだろうか。
あのときのハイソックスを、サダオがどこかにたいせつにしまい込んでいることを。
妻にはとうとう、話しそびれてしまっている。
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