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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

雑踏のなかの幻影 ~まりあとの邂逅~

2009年10月24日(Sat) 08:50:38

はじめに~ このお話、えろくないです。(^^;) ごめんあそばせ♪

まりあ・・・
思わず口にした、その名前を聞きとがめて。
きみはまりあを、知ってるの?
ケンと名乗るその若い男は、ちょっとびっくりしたように、けれどもその実そんなに驚いてはいないみたいに、私のほうを振り向いた。
いつもの夕暮れの雑踏のなか。
唐突にあらわれた彼は、いともさりげなく私との会話に興じていて、
ほんの数分のあいだに、まるで十年以上昔からの親友みたいに仲良く肩を並べて語り始めていた。
これでもボク、もう四十なんですよ。
わざと自慢げに言う彼は、どう見てもそんな年齢にはみえない。
まだ学生っ気さえ残っているような面ざしに、やんちゃ坊主みたいなイタズラぱッぽい笑みを浮かべながら。
柏木さんは、ななつとしうえのお兄さん、かな?
嘘つけ。お前、絶対背伸びしているだろ?
言いあてたつもりが少しだけずれている年齢に苦笑しながら、私は彼に手玉に取られかかっていることを自覚していた。
案外彼自身ほんとうに、「不惑」と呼ばれているその齢に、ほど近い境地にいるのかもしれない。
ちょっと見には、二十代にさえ見える彼。
でも二十代でこの存在感は、絶対に出ないだろうから。

あっ。
ふと目を転じたその先に、私は目を離せなくなっている。
小声で「まりあ・・・」と、目に捉えた人影の主の名前を呟くと。
さすがにケンもしんけんなまなざしになって、私の視線のかなたをとらえようとした。
OLふうのスーツに身を固めた若い女がひとり、雑踏のなかにまぎれている。
肩までかかるつやつやとしたロングヘアに、お嬢さんのような軽いウェーブをかけて、ゆったりとなびかせていて。
上背のあるすらりとしたプロポーションを、あたりの雑踏にゆだねながら。
すいすいとリズミカルに、こちらに向かって歩みを速めていた。
もはや、ケンどころではない。
私は彼の傍らをすり抜けるようにして足早に階段を降りて、
立ちふさがるように、まりあのまえにあらわれている。
ケンの漂わせる不思議な若さが、私に乗り移ったかのように、息せき切って。

あら。
まりあは私を見ても、驚かなかった。
この街にいるはずのない彼女。
それなのにどういうわけか、私が日常見なれている風景のなか、
まりあは十年も棲んでいるような風情で、佇んでいた。
だれかと思えば・・・
ふふふ。とコケティッシュに笑ませた横顔が、いかにもまりあそのものだった。
いちど、逢ってるわよね。
一度なんてもんじゃない。きみとうはもう何十回、何百回も・・・
そう言いかけて。
逢っているのは、お話のなかだけなのか。
それとも、じつは現実のなかでなのか・・・
ひどく記憶が、あやしくなってきた。
いつの間にかケンは、まりあと私の傍らに立っていて。
ふたりの様子を面白そうに眺めていたが。
オレだってめったに彼女と逢えないんだぜ?
そう言いたげな顔つきで、時折私のほうを盗み見てくる視線を、私はありありと感じていた。

まりあは近くの店先に、まるで自分の家のように奥へ奥へと入り込んでいく。
私も、あとから追いかけてくるようについてくるケンも、
彼女を見失うまいとついていった。
果物、かごにいっぱいお願いね。
気さくに彼女はお店のひとに声かけながら。
「私、何時からだっけ?」
同僚の声色で、同年代らしい若い女の店員にひそひそ話をしている。
ここで働いているの?
私が訊いても、まるで取り合わないようにして。
働いているというか、棲んでいるというか、お客さんというか・・・
まるで説明になっていない応えを返してきて、
やっぱり「ふふふ・・・」と、ただ笑っているばかり。
それ以上の会話を、思い出すことができないのは。
きっと彼女が、私の記憶に封印をかけていったから。

こんどはいつ、逢えるの?
そう訊く私を、はぐらかすように。
それでもまりあは、手にした手帳をちらつかせるようにして。
そっと私に、手渡してくれた。
見てもいいわよ。メアドも電話番号も、そのなかに入っているから。
住所は・・・?って、尋ねそうになって。
なにを訊きだしてみたところで、それらはすべて変更可能で、彼女を捉えるにはなんの役にも立たないことを思い知りながら。
もどかしい手つきでぱらぱらと、手帳を、めくっていく。
まりあはわざとのように、手帳のどこにそれが書き入れてあるのかを、言おうとしない。

女性の手帳というものを。
こんなにもたんねんに、眺めてしまってもいいものなのだろうか?
うらやましいね。
ケンは相変わらず、からかうような目で、私のしぐさを見つめている。
一瞬目に入った、
ne.jpの文字。
けれどもその先頭にあるのは、「節雄」という男の名前。
ケンでも私でもない。ではいったい誰?
そもそも、メールアドレスに漢字を使えるのか?
けれどもまりあは微笑むだけで、それ以上の説明をなんら与えてくれそうにない。
落書きみたいな稚拙な字で書かれたメールアドレス。
もしかすると案外、節雄などという男はそもそも存在しないかもしれないのだ。
ふとそのページを見失うと、もう二度とアドレスらしきものを控えたページに行き当たることができなかった。
めくるページ、めくるページ、一見稚拙だが的確なタッチのイラスト。
もともと印刷してあるのか、まりあのイタズラ描きなのか。
あるページでは夏用の制服に黒ストッキングの女学生が教室じゅうにあふれていて、
べつのページをめくると少年が同世代の男の子の二の腕に噛みついて、血を啜っていた。
これ・・・柏木ワールドじゃないの?って、
問おうにも問いかけることができない。
なぜって彼女はきっと、それさえも不思議な笑みでごまかしてしまうだろうから。

ハッと、気がついた。
目が覚めた私は、独りきりの布団のうえ。
ただぼうぜんとなって、話の途中で掻き消えてしまった幻影を追い求めている。
まりあ。まりあ。
さっきまで身近にいたあの顔だちを、いまはもう思い浮かべるさえ困難になっている。
わざとのように私の記憶を消して、夢のなかから立ち去って行った彼女。
また、逢おうね・・・
私は独り呟いて、残り惜しげに床を離れた。


あとがき
今朝、じっさいに見た夢の記憶を追いながら描いてみました。
想像力豊かである柏木は、時折こういう感じのりあるな夢を見てしまうのです。^^;
なお、ケンという相棒の男性のモデルは、とあるお話から無断借用してしまいました。(^^ゞ
終始正体不明であった彼の正体は、きっとこのひとなのだろうと。
たぶん、まちがっていない自信があります。(笑)
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