FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

振袖姿の未来の花嫁を、御挨拶に伴う時。

2010年01月02日(Sat) 08:00:03

ごあいさつにうかがった、ゆう子さんのお宅では。
お母様がわざわざ着物に着替えられていて。
ゆう子さんなどはもちろん、お振袖。
赤白の鮮やかな彩りが、つい眩しくて。
いつになく目をそむけると。
お母様はべつのことをお察しになったように。
大役、御苦労さまですね。
わたしのことを、ねぎらってくれた。

アップに結った黒髪の下。
きりりとした襟足のすき間。
首すじに浮いた、古傷が。
いけないことでは、ないのですよ。
そんなふうに、告げているようだった。
ふと留めたわたしの目線をとがめるように。
あら。
痕を抑えながら、小娘のように羞じらっていた。
おなじ痕を、まな娘の真っ白なうなじに留めるという。
きょうは晴れの儀式の日。

よく、来なさった。
御老体は改まった身なりのわたしたちを、迎え入れると。
抱き寄せんばかりにして、歓待してくれた。
振る舞われた酒は、喉越しにどろりと濃くまつわりついて。
ほどよい眠りに、誘うよう。
傍らに敷かれた座布団のうえ。
ゆう子さんも化粧をよく刷いた目許を、ほんのり心地よげに染めていた。

では、味見と参ろうかの。
御老体は早くも、腰を浮かしている。
あ・・・そうですわね。
お酒も時間も過ごしてしまったことに、はっと気づいたように。
ゆう子さんはいまいちど、身づくろいを整えようとする。
わたしは未来の花嫁の後ろにまわって、
三つ編みに編んだ黒髪をぐるぐると巻いた頭の後ろに手をかけて。
お母様に手ずから訓えられたように、
ゆう子さんの髪を、解いてゆく。
震える手指にからまった、しんなりと輝く黒髪が。
意思を持った生き物のように。
だらりと肩先に、流れてゆく。

その場でむたいに抱き寄せるほど。
無体な振る舞いには、及ばぬもの。
御老体は目でわたしに退席を促すと。
そのおなじ目で、隣室にいてよいと告げていた。
おっとりと小首をかしげるように会釈を投げてくるゆう子さんの挙措は。
すこし取り澄まして、他人行儀なそぶりをみせた。

細めに開かれた、ふすまの間。
赤と白の振袖に巻かれたしなやかな肢体が。
齢に似ず思いのほか逞しい、
毛むくじゃらの腕に荒々しく抱きすくめられる。
なにかが、しくっ・・・と。
ズボンのなかで、逆立つのを。
わたしはけんめいに、こらえていた。

圧しつけられた唇は。
ひび割れだらけで、かさかさに乾いていて。
あてがわれた素肌の瑞々しさと、ひどく不似合いに映るのは。
もとより嫉妬のせいだけではないはず。
なすりつけられるように。
しつように。しつように。
初々しい柔肌を、這いまわって。
あとに染みついた唾液が、白磁のうえのうわぐすりのように光らせていった。

ひときわつよく咬んだとき。
ゆう子さんはアッと声を洩らして。
洩らした声を、恥じるように。
うろたえたように、口を噤んだ。
未来の花婿がそばにいながら、遂げる密会。
嫁入り前の生娘には、あってはならないはずのこと。
こくり・・・こくり・・・と、喉を鳴らして。
うら若い生き血を、飲まれていきながら。
耐えるように俯けた瞼を縁取る長い睫毛を、ピリピリとナーヴァスに震わせていた。

たらり。ぼとぼとっ。
振袖を彩る、鮮やかな赤の文様は。
ほとぶ血潮を、まぎらせるためだったのだろうか?
そう、疑ってしまうほど。
ゆう子さんがほとばせたバラ色のしずくは。
折り目正しい装いを、しっとりと妖しく染めてゆく。
引き抜かれた牙の下。
吸い取られたばかりの血潮が、したたって。
あお向けになった胸もとを、色鮮やかに彩ってしまうのを。
白い頬をゆったりと笑ませて、ちらと目線を這わせるのだった。

男は振袖の襟首に手をかけて。
腑わけをするようにずりずりと、無遠慮に。
女の衣装を、剥いでゆく。
生娘であった証拠を、心ゆくまで味わったあと。
ぞんぶんに啜り摂った清冽な血潮の主を、
汚してゆく。

汚していただくのが、礼儀なのですよ。
婦徳を辱め抜かれることが、歓びなのですよ。
見守りながら、昂ることができるのならば。
貴男は初めて、わたくしどもの身内と認めていただけるのです。
お母様の訓えは、どこからどこまでも、的を射ていた。
ズボンを濡らしてしまった昂りの痕をどうしようかと、考えないでもなかったけれど。
いまはただ、白い目鼻立ちに浮かんだ苦痛と羞恥とが。
ふしだらな愉悦に変化してゆくありさまを。
ただ、ただ、息を詰めて見守るばかり。

せい子さんはね。
女学校の制服で伺ったんですって。
終わったあとも、血が出つづけて。
紺色のプリーツスカートのすそから、太ももを伝って。
真っ白なハイソックスを履いていたんですって。
彼氏も目のやり場に困ったらしいのよ。
口を衝いて出てくる過激なことばと裏腹に。
ゆう子さんの声色は、どこまでもしずかで、おだやかだった。

わたくし、そこまで露骨な振る舞いは厭だと申し上げたのです。
ですから・・・きょうはお振袖に。
でもどうしたって、血だってわかってしまいますよね?
きちんと身づくろいをすませた襟首にも、長いたもとにまでも。
点々と散った、狼藉の痕。
手を取らせていただきますよ。お嬢様。
犯す直前、男が囁いたことばを、口真似をすると。
それまで平静を保ってきた外貌が、にわかに羞恥を帯びていた。
手の甲に這わせた接吻を、かすかな唾液が沁み入るほどに。
永く永く、とどめつづける。

中学にあがったころから結ばされていた、ふたりの行く末。
初めて血を与えるときも。
制服姿のゆう子さんと連れだって訪(おとな)いを入れたのもわたしだった。
そのまま十年ちかくも、味わいつづけられて。
そのたびに、送り迎えをしてあげて。
やがてゆう子さんは、わたしに黙って逢うようになった。
逢いつづけて、しばらくして。
御老体はわざわざ紋付を着て、わたしの母に挨拶に来た。
年が明けたらぜひ、おふたりで御挨拶に見えられるように・・・と。

処女の生き血は、もう御入り用ではありませんの?
すぐにそれと察した母は、優雅に微笑して。
表向き人払いされた夫や息子に、聞かれてはならない話題に入っていた。
味見ははやいほうが、よろしいでの。
薄っすらと笑んだ御老体のまえ。
いつも厳しかった母がにわかに見せた羞じらいは、なんだったのだろう?

入れ代わりに、初枝さんをいただこうか。
”御挨拶”が済んだ、つぎの週に。
こんどはお母様が、お連れになるとよい。
介添えを、願おうほどに。
いつになく朱の目だつ唇が、よどみなくそう告げる。
ゆう子さんの柔肌を這い生き血を吸った、おなじ唇が。
こんどはわたしの妹を、求めている。
中学にあがったばかりの、無邪気にはしゃぐセーラー服姿が。
ぬめりを帯びた御老体の唇と、想像のなかで重なって。
思わず不覚にも、失禁を覚えてしまっていた。

祝言のあと。
当然のように花嫁に迫り、みずから白無垢を剥ぎ取って。
我が物顔に横抱きにしてゆく御老体と。
羞じらいもかなぐりすてて、不義に耽る花嫁と。
似合いのふたりを、ふたりきりにして、新床を背にすると。
お兄ちゃん。
ひっそりとした囁き声が、鼓膜をひんやりと浸している。

お嫁さんを、自由にされちゃう代わり。
今夜は何をしても、いいんでしょ?
あとでお義母さまのところにも、おうかがいするんでしょ?
あたし、なんでも知っているんだから。
そのまえに・・・
クスッと笑んだ口許から、並びの良い白い歯をイタズラっぽく覗かせて。
セーラー服の少女は、プリーツスカートのすそをちらりと引きあげる。
いつも履いている真っ白なハイソックスを。
先週真っ赤に濡らしながら、
母に付き添われながら、べそをかきながら、たどった家路。
今夜妹の足許を染める、黒のストッキングが。
大人の女としてのお相手をするの。
そんな気負いを、滲ませていた。
前の記事
こぎれいな少年は、決してはずれくじではない。
次の記事
いよいよ年の暮れ。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/1957-be9813d2