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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血鬼になった息子。

2010年02月01日(Mon) 04:32:30

そろえて立膝をした両脚は。
ひざから下が、白のハイソックス。
けだるそうにかわるがわるくり返す足摺りが、
さいしょはつま先半分くらいづつ。
さっきから少しずつ、歩幅を広げて。
頻度も激しくなってゆく。
なにかを抜き取られるのを、忌むように。耐えるように。

ハイソックスの生地に縦に走った太めのリブは。
頭上の灯りをツヤツヤと照り返していて。
わずかに覗くひざ小僧と、太ももの輪郭と。
そこからにじみ出る、はち切れるほどの生気の延長を。
ひざ下を覆う厚手のナイロンごしに透き通らせてくるようだ。

シーツをつかんだ掌のこわばりと。
力の込められた腕の筋肉のしなやかな隆起とが。
ハイソックスの主が少年なのだとつげている。
そういえば、ライン入りのハイソックスというやつは。
かつては運動部の男子だけのものだったかもしれない。
あお向けに横たわる少年のうえ、のしかかっている黒い影は。
さっきから唇をしつように吸いつけていて。
激しくなってきた少年の悶えの原因を作っている。

精度の粗い録画画面の向こう側。
少年の履いているハイソックスをよぎるラインが、
激しく上下をくり返すのを。
男は唇噛んで見守っている。
やがて足摺りが熄(や)んで。
立膝さえもぐったりと崩していって。
崩れた立膝の向こう側、身を起こした黒影は。
口許から吸い取ったばかりのバラ色の液体をたらたらとしたたらせていた。

影法師はククク・・・と得意げに笑みを含めて。
だらしなく弛み笑み崩れた唇を。
こんどはハイソックスのふくらはぎに這わせてゆく。
まるでナイロン生地の舌触りを試すように。
しつように吸いつけられた唇の下。
真っ白なハイソックスに赤黒いシミが滲み、広がりはじるまで。
かなりの時間が経っていた。
それほどに・・・太めのリブのハイソックスは舌触りが愉しいものなのだろうか?

片方のふくらはぎに、赤黒いシミを広げると。
もう片側にも、かぶりついていって。
両脚のふくらはぎに、等分に、血潮を滲ませてゆくと。
こんどはもういちど。
さいしょに食いついたのは反対側の首筋に、唇を添わせてゆく。
うう、うう、うう・・・
どうかそこまでで、止めにしてくれ。
さっきから画面に、視線をくぎ付けにした男は。
苦悶の表情を浮かべる若い供血者と、うり二つの面影を宿している。

首筋から唇を放した時点で、なんとか振りほどいてその場を逃げ出すことができたなら。
きっと、すこしの貧血で済んだことだろう。
そのあとすぐに、片方のひざ下を侵された段階で、赦されたなら。
明け方までうとうとしていれば、べつのハイソックスをまとっていつも通り登校できたはず。
どうしても両側のハイソックスに、血を滲ませたいというのなら。
それも、許してやれただろう。
けれども男は、ツタのように絡みつけた腕から、少年を放さずに。
もういちど食いついたうなじから。
残りの血を吸い取ってしまうまで、得心がいかなかったようだった。

乱れたシーツのうえ。
けだるそうに手足を迷わせた少年は。
両肩を抑えつけられたまま耳もとに唇を寄せた吸血鬼が、なにごとかを囁くのを、じっと聞き入っていて。
蒼ざめた頬から、くすぐったそうな笑みを絶やすことなく。
耳もとから離した唇を、ふたたび首筋に這わせてくるのを厭おうともせずに。
男が血を吸い終わるまで、そのまま笑みつづけていた。

良い息子さんだ。
わしが満足したと告げてやったら。嬉しげにほほ笑んで。
「なら、良かった」って。
なんの屈託も無げに、白い歯を見せたのだ。
後日嬉しげに報告に来た影法師の言い分は、たぶん間違ってはいないのだろう。
せめてどこか、もっと早い時点で、息子を放してもらいたかった。
喉の渇きがおさまったあたりで、満足してもらえれば。
彼はまた、きみのことを受け容れたことだろうに。
父親の繰り言に耳を傾けた男は、彼の肩に手を置いて。
なんとかしよう。あんたの気に入るように。
少年の血を吸った唇は、早くもかさかさと乾きかけていたけれど。
端っこにはまだ、凝固しかかったうら若い血潮が、しずかな輝きを秘めていた。

独り職場に残って眺めた録画の内容は。
ほんらいとても、見るに耐えないものだったけれど。
妻や娘のいる家では、さらに見ることのはばかられるものだった。
コツコツ・・・コツコツ・・・
人通りの絶えた道に、響く靴音に。
闇の彼方でなにかが目ざめたようだった。

父さん?
切れかかった街灯の下。
和んだ笑みを投げてくるのは、まぎれもなく息子だった。
鉛色に変わった頬の色いがい、なにもかもがいままでどおりだった。
真っ白のショートパンツと、おなじく純白のハイソックスのすき間から、
大胆にむき出しになった太ももも。
やはり、鉛色をしていた。
血液を喪った皮膚の色。
けれどもかつて息子だった少年は言葉を口にし、以前と変わらないほほ笑みを投げてくる。

ハイソックスのふくらはぎには、あのときのままの赤黒いシミ。
息子の仇敵の命ずるままに。
襲われたときそのままの装いで、送り出したのだ。
せめてこんなものも、履かせてやりたかったな。
父親は息子が成人したら贈るつもりだった、愛用の長靴下を、息子の足許に添わせていった。
濃紺の紳士用のハイソックスは、女もののストッキングのように薄くて、つややかな光沢を放っていた。
あの靴下。大事に取ってあるからね。
母さんや清美に逢いに行くとき、履いていくつもりだから。
ふふっ。
父親は身構えた己を恥じるように、照れ笑いを浮かべる。
あのとき息子が浮かべたのと、おなじ種類の笑みだった。
同じやつ。いま履いているんだぜ?父さんの血、吸うか?
こくりと肯いた息子のため、傍らのベンチに腰を下ろすと、スラックスをするするとたくし上げていった。
ふたつの影が、寄り添うようにして。
ベンチに座った人影のまえ、かがみ込んだもうひとつの影法師は。
むき出しされた相方のふくらはぎに。しっとりと唇を吸いつけてゆく。

街灯の明かりの下。
薄手のナイロンに滲んだ光沢は。
女もののストッキングもかくやとばかりの、毒々しさを放っていた。
くしゃくしゃにずり落ちて弛んだ靴下を、もういちどひざ下まで引きあげると。
縦に走った不規則な裂け目が、蒼ざめかけた皮膚をあらわに露出させていた。
もう片方も、だろう?
うん。おねだりね。
ちょっとだけずり落ちたのを気にするように。
まだ無傷の側の足許に手をやって。
濃紺のハイソックスをきちっと履き直す。
つややかな光沢越しに這わされた息子の唇を、男はくすぐったそうな笑みで見おろした。

父さんの血なんか、いちばんおいしくないだろうに。
ウン。だけど、母さんや清美は夜家から出て来ないからね。
なるほど。そういうことだったのか。
なりたての吸血鬼は、だれかが迎え入れてくれないと、自分の家にさえはいることができない。
息子の血を吸ったやつも、たしかにそう教えてくれていた。
こんや。父さんがおまえを連れ帰ってやろう。
もうふたりとも、寝静まった時分だから。
なにも気づかないまま、おまえの渇きを慰められるだろうから。

そうだね。それも良いけれど。
息子は早くも、怜悧な狡猾さを秘めはじめていた。
新たに備えた本能に由来するものなのだろうと、父親は思いやった。
いっそ、正気なときにもらったほうが。ボクとしては、嬉しいかな。
ボクだって。
正気なときに、生きながら血を吸い取られていって。
それでもハイソックスの脚を、愉しませてあげたのだから。

母さんはいまでも、黒のストッキング履いているんだぜ?
きっと父さんの薄い靴下よりも、いい舌触りなんだろうね。
息子の返しを、面白がって。父親のほうもやり返していた。
清美の履いている紺のハイソックスも、おまえのやつより愉しいかもしれないね。
どちらに先に穴をあけるつもりだね?水を向ける父親の問いを、受け流している。

ウン、早く襲いたいな。母さんも清美のことも。明日の晩ならふたりとも、つごうがいいかな。
母さんのパートも、清美の塾もお休みの日だしね。
庭先で待っているから。
晩ご飯が終わったら、雨戸をあけてね。
父さんはそれまでに、二人によく言い含めておくんだよ。
お酒を飲むと明るくなる母さんには、たっぷり飲ませておいて。
ちょっとアルコール臭い血も、悪くはないかな。
こんど家に帰るときはボク、父さんのくれたあの薄いハイソックス、履いて帰るからね。
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