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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

初めは処女のごとく。おわりは・・・

2010年02月20日(Sat) 09:58:15

和朗と向かい合わせにティーカップをもてあそぶのは。
黒衣に身を包んだ、白髪の老人。
ただの老人でないことは。
振りみだされた長い白髪が、銀色の輝きを帯びていることでわかるのだけれど。
さすがに亭主のカンロクからか。
はたまた人がいいだけなのか。
和朗は動じるようすもなく、吸血鬼と知れた男と対座している。

なんだ。女房が小説描いているのも知らぬのか。
ぼそりと呟く吸血鬼は、むしろ感心したような語調を漂わせる。
―――じゃあもちろん、奥方が吸血鬼相手に春をひさいでいることも?
言いかけてさすがに呑み込んだひと言に、男はにまにまとほくそ笑む。
相手の笑いがなんのためなのか、和朗にはちっとも見当がつかなかったけれど。
ここは素直に・・・と思ったのか、まともな応えをかえしてゆく。
エエいつも、筆が乗らないってぼやくんですよ。って。

なかなか描き進めることができないのは。
思い切りが悪いせい?
生来引っ込み思案なのを、まだ引きずっている?
う~ん、女房のことって、意外にわからないものですね。。。
けれどもいつも、ぼやくんです。
第一章のまえに、プロローグがあるって。
へたをするとそのまた前に、序文があって。あいさつがあって。
場合によったら、べつのお話がそのお話のまえにあったりして。
きりがないじゃんって私言ったら、さすがにぷんぷんしていましたよ。

和朗の声色はどこまでものん気だったが。
やはりなにかあると察したらしい。
終始気遣わしげで、言葉の先でなにかを手探りしつづけている。
ウン、それでよい。
心のなかを見透かした言葉に。
へ?
真意を見抜けぬ素直すぎる男は、けげんそうに相手の表情を窺った。

なに。さっきの話じゃよ。
たとえとしては、これほど適切な表現もないものだな。
お国の古いことわざでは・・・ほれ、なんと申したか。
そうそう。「初めは処女の如く、おわりは脱兎のごとく」だったかの?
いやそれは、中国の古い昔話で。・・・って言いかけた言葉を、和朗は呑み込むはめになる。
さいしょはだれしも、ためらうものだから。

第一章のまえに、プロローグがあるのじゃろう?
そのひとつまえに、序文やあいさつがあるのじゃろう?
へたをするとさらにそのまえに、べつの話があるというのだな?
わしの前には、柏木がおる。
やつとはやつが子供のころからの、つき合いで。
母親も花嫁も・・・そう、美味じゃった。
奥さんが柏木と”あいさつ”をして。
そのまえにメールという名の”序文”があって。
あれはたいそう、長々としたものだったな。
そのひとつまえの話は・・・そう、やつの女房をわしがモノにしたなどというような、粗忽な話ではないはず。
奥さんが描いている小説。まさか吸血鬼ものの話ではあるまいな?

どうやら妻の描くものをいちども目にしたことのないらしい男は、
それでもお人よしな想像力の限りを尽くして。
彼のまえに、柏木という男がいて、その前に吸血鬼話があって・・・
指折り数えるように、想像を突き進めていって。
逆に観ていけば、吸血鬼小説があって、メールのやり取りがあって、出逢いがあって。
それから。それから・・・
どうやら理恵は、輪姦されるらしい。
推理のすえにたどり着いた結論に、そんな危険を察知する。
さすがに一瞬凍りついたようにみえた頬が、
やれやれ・・・と言いたげにふたたびゆとりを取り戻したのは。
隣の部屋の気配から。

ああっ・・・うんうんっ。
声の主の妻が、隣室でなにをされているのかは、さすがに成人男子とあれば察しがつこうもの。
浮足立ったご亭主殿を後ろから支えたのは、白髪鬼の意外に力のつよい掌。
観るものではない。
なに、奥方が脚に通されているストッキングに、ちょいと執着しているだけさ。
黒の薄々が、好みらしいて・・・
ストッキングを破らせてやるくらい、そもじの立場なら痛くもかゆくもなかろうて。
寛大に、振る舞われよ。あくまで寛大に・・・の?

いやぁ、なかなか・・・
和朗は照れくさそうに頭を掻いて。言ったものだ。
だって、第一章のまえの話は詳しくしてくれたけど。
第二章やクライマックスがあるのを、あなたわざと話していませんね?
いったん筆が乗りはじめると。
理恵はとめどがなくなるんです。
めくるめく展開だって、柏木氏も言っておりましたよ。
ほんとうにスリリングで、刺激的で、うならせるような展開だって。
ほんとうに・・・ほんとうに・・・そうなんですか?

見せつける、ということは。
観て愉しむことができる・・・って、われらが見込んだゆえのこと。
そう、ご納得していただけまいか?
寛大に振舞うことに決めた夫は、さっそく寛大なフルマイをみせ始めてゆく。
嗅がせた媚薬は、あとの記憶を奪うはず。
けれどもその刻に灼きつけられたコアだけは、
脳裏の奥深く無意識に植えつけられてしまうだろう。
そう、吸血鬼がほんらい、犠牲者の首すじに残すはずの淫らな”痕”を。
われらは記憶にならない記憶として、置き土産にしていくのだから。

さてそろそろ、わしの出番じゃな?
お前はそのままここで、紅茶を啜っておるがよい。
わしは入れ代わりに、所帯持ちのよろしいこの家の主婦の生き血を、啜ろうほどに。
気になるのなら、覗いてもよいのだぞ。
そのほうがいっそ、激しくそそられそうじゃから。
けれども絶対に、なにも知らないふりをし通すのじゃぞ。
それが奥方に対する、礼儀というものじゃからの。
なに。そもじへの礼儀・・・?
そうそう、それは今もっとも重んじられなければならんのぅ。
奥方をすみからすみまで味わい辱め尽くすこと。
それが、われらが貴殿に捧げる礼儀というものであろうから。
ご納得いただけたなら、さ、さ、素知らぬふりで、お席について。

白髪鬼はまず柏木の血をちゅーっと吸い取って、かたわらに転がすと。
こんどは理恵の首筋に、牙を迫らせる。
うぅううぅぅぅん・・・っ!
のけぞったのは、理恵ばかりではないらしい。
主人が気絶しているあいだ、着かえるわ。
貴男に、ご馳走するために。
エエ、お洋服も、ご馳走の一部ですからね。
自由に汚してもらって、構わないのですよ。
でも何を着るのかは、貴男決めてくださる?
若いころ着ていた、黄色のスーツと。
いまでも歌舞伎や結婚式のときに着ていく、濃い紫のやつと。
どちらのほうが、映えるかしら?あたしの血。
自分で服選ぶと、時間かかりますからね。
はやく決めないと、和朗起きてしまいますからね。。。


あとがき

さいしょはおずおず、でもノッてきたらどこまでも大胆にっていうのが、主婦の奥ゆかしさですよね?^^
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暗喩。
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村の婚礼・親族其の二 ~脱ぎ替える女たち~

コメント

この話、管理人さんがすらんぷなのが元ネタですか(爆)。
by 影の応援団
URL
2010-02-20 土 11:49:49
編集
あー、これは蔵出しです。^^
もっと早くにあっぷするつもりが、諸般の事情で・・・
現在は、すらんぷ。すらんぷ。--;
by 柏木
URL
2010-02-20 土 15:21:09
編集

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