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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

現金書留

2010年04月04日(Sun) 08:58:44

単身赴任先に届いた、現金書留。
なかに入っていたのは、ぴんぴんの一万円札。
いっしょに出てきた紙切れには、見なれた走り書き。
「奥さまのストッキング代 金壱萬円也」
年配の彼らしく、旧字体が板についていた。

単身赴任が決まったときに。
ためらいながら差し出した妻の貞節を。
むぞうさに狂わせ、奪っていった。あの男。
いまでは留守宅に我が物顔で出入りして。
妻を犯し、娘をもてあそんでゆくという。

律義で思いやり深いその老紳士は、
夜になると形相を一変させる。
その昔、母の愛人すらつとめた男は、わたしに悪魔のささやきを吹き込んでいた。
きみの奥さんだからこそ、堕としたい。

どうぞ家内を、誘惑してください・・・
浮ついた唇から洩れた、われながら信じられない言葉に。
どうしようもないほど熱っぽくなって。
妻のストッキングを、破ってほしい。心からそう、願っていた。

週に2足。いや3足か。
妻は1足だけですよと言い訳するけれど。
どうせなら、もっと破いていただきなさい。
そんな言い草に、心揺らがせる夫婦の文通。

文通などと古風なことにこだわったのは。
自筆を残すことに、彼が興を覚えたから。
十二年連れ添った妻、華江の貞操をお捧げします。
そう描いた一文は。いまでも彼の手許に握られている。

今週は、5足も破っちゃった。
携帯電話から洩れる、信じられないご自慢話に。
ズボンを履いていなくてよかったと、心から思った独りの夜。
破き心地はいかが―――?問う声色に、熱を帯びていた。

奥さんのストッキング代、きみの懐から出ているんだね。
ええ、お気になさらないでください。わたしも遠くから、愉しんでいますので。
そのこたえが、現金書留一万円。
いったいなん足、破られたのだろう?

一万円を手にして、わたしは独り盛り場へ。
浮気をするつもりはない。
妻が犯される。華江が娼婦にされる。そのほうが、よっぽど萌える。
あとは得た金を、女っ気のない飲み屋で使い果たすだけ。

わたしが酒をあおっているいまこのときに。
あいつは華江の生き血で、喉をうるおしているのだろう。
ストッキング代の一万円を使っているあいだじゅう。
妻はまた性懲りもなく、ストッキングを破らせているのだろう。

若いひとの身体は、いいね。
いつもにこやかに、語りかけてくる彼。
ゾクゾク昂りながら、うっとりと肯くわたし。
けれども今夜の酒は、どうにもむしょうにほろ苦かった。


あとがき
必ずしも吸血鬼ものではありませんな。^^
チャットを愉しんでいるときに、思いついたねたです。
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