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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

麻酔のように

2006年04月20日(Thu) 22:38:22

その来客は決まって、夜更け我が家を訪れる。
態度は慇懃、あくまでも主人である私をたてるジェントルマン。
巧みな話術に酔うように、いつか睡魔が訪れて。
話の途中で必ず寝入ってしまうのだが。
そんな私を咎めたり、まして揺り起こすような無礼をはたらくこともなく、
彼はいつの間にか、姿を消している。

アラ、オ帰リニナラレマシタヨ。
オ父サマ、マタ寝チャッタノネ?
妻も娘も、そんな私に苦笑いする。
良家の子女にふさわしく、
必ず着飾って訪客を迎えるならわしだったのだが。
脚周りを染める色とりどりのストッキングはふしだらにゆるんでいて、
スカートのすそからあらわに裂け目をのぞかせている。

はじめはさして不思議にも思わなかったけれども、
たび重なる粗相を見咎めると、
二人はフフフ・・・と、謎めいた笑みを交わし合うばかり。
たまたま目ざめの早かったとき。
謎はすぐさま氷解した。

身体にのしかかる体重が去って、
そらぞらしい空気に取り巻かれるのを覚えて。
ふと我にかえった私が目にしたものは、
うっとりとするばかりの絵空事。
妻はにこやかに笑んだまま、
口許から赤黒いひと筋のしたたりを帯びた唇を、
まるで無抵抗に吸いつけられてゆく。
ぱりり・・・
かすかな音をたてて破られるストッキング。
乱された衣裳のすき間から洩れてくるのは、
まごうことになき、吸血の調べ。
娘もイタズラっぽく笑いながら、
いつも学校に履いてゆく黒のストッキングに包んだつま先を、
ためらいもせずにすべらせてゆく。
ぶちちっ・・・
こんどは娘の番だった。

きゃっ。きゃっ。・・・。
ふたりながら、脚をつま先立てながら。
男の淫らな欲情に、装った脚をいたぶらせてしまっている。
こと果てるまで、薄目をしながら見届けてしまったわたしは、
彼の立ち去った後、もっともらしく、のびをする。
どれ、今夜も寝過ごしてしまったようだね。

アノ方、今夜モ見エルソウヨ。
ジャア、オ料理、気張ラナクッチャネ。
妻も娘もウキウキと台所にたつ夕べ。
いつものようにから眠りをする私。
いつものように脚を伸べてゆくふたり。
いつものようにふしだらに乱される、女たちの衣裳。
誰もがとうに、気づいている。
気づきながらも、けっして口にはのぼらない。
不面目や不名誉を却って愉しみのスパイスにしながらも。
今夜もわが家は客人を待ち受ける。
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