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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

真夜中の部活

2010年05月10日(Mon) 06:36:17

その日は試合のあとで、もうどろどろに疲れていました。
そんなとき学校帰りのボクの目の前に立ちはだかったのが、“彼”だったのです。
どうして“彼”の正体を、そんな一瞬で見破ることができたのか、いまだにわかりません。
明日は試合があるんです、どうか見逃してください。
手を合わせて、頼んでいました。
そうか・・・試合じゃしょうがないな。
“彼”は評判できくよりも、もの分かりのいいことを言ってくれました。
明日、必ず来ますから。
“彼”は、あてになんねぇ約束だな・・・そう呟いて、立ち去って行きました。
事実明日という日は、大会だったのです。

彼が長い靴下を履いた女の子を襲うのって、校内でも有名だったのです。
男の血なんか、吸うんですか?ボクが長い靴下を履いているから、狙ったんですか?
彼が長い靴下を履いた女の子を襲うのって、校内でも有名だったのです。
紺色のハイソックスや黒のタイツだと、よくわからないときもありましたが。
白のハイソックスに赤黒いシミをつけたまま下校してゆく同級生や、
黒の薄々のストッキングのふくらはぎを伝線させて歩いている上級生のお姉さんを時折り見かけることがありました。
そのときボクは、運動部のユニフォームを着ていたので。
たしかに長い靴下を、履いていたのです。
もっとも練習のあとで、泥と汗になっていましたが。

あとで考えても、どうしてあんなことを訊けてしまったのか、不思議でなりません。
それだけこっちも、切羽詰まっているんだよ。
投げ捨てるように告げる“彼”に、なぜかすみませんすみませんと、しきりに謝っていました。
お前、いいやつだな。オレのほうが悪いのによ。
そんなことないです。病気なんでしょう?
「病気」というボクの言い草に、“彼”はちょっとだけびっくりしたような顔をしていましたが。
なるほど・・・そうとも言えるかもな。
妙に納得、していました。
それとな。俺は汗が苦手なんだ。昼間の運動もできないんだよ。
なるほどたしかに、かれがハイソックスのふくらはぎに噛みつくのが好みだといってみても、
筋肉質の太い脚に、泥と汗になってずり落ちかけたソックスでは、そそられようもなかったでしょう。
明日彼に逢うときには、試合のあと真新しいのに履き替えてやろうと思いました。

一回戦負けでした。
というか、お坊ちゃん学校で通っていたうちが、試合に出て勝つことなんか、ありえなかったのです。
それでもボクたちは、精いっぱいがんばったことについて、とても満足していました。
じゃあね。
仲間に別れを告げようとしたとき、だれかが咎めるように声をかけてきました。
あれ?お前帰り道そっちだったっけ?
いや・・・ちょっと・・・
口ごもったボクは、けっきょく仲間に夕べのことをあらいざらい、話してしまいました。

なにをお人よしな・・・
なかにはそういって、笑うやつもいましたが。
いちばんの仲良しふたりが、付き添ってやる・・・って、言ってくれました。
気をつけてな。
ほかの連中が気にしぃしぃ立ち去ったあと。
俺たちもストッキング、新しいのに履き替えようか?
ボクだけが真新しいソックスに履き替えたのを、彼らは目ざとく気づいていたのです。

遅くなって、ごめんなさい。友だちも連れてきたから。
待ち合わせ場所の公園の片隅でうずくまっていた“彼”は、ボクたちが三人なのを見て少しびっくりしていました。
ひとりじゃしんどいからさ・・・
キャプテンが慣れた感じで、“彼”のほうへと真新しいハイソックスの脚を差し向けていきました。
じつは以前から、“彼”とは気が合っていたらしかったのです。
三人が三人ながら血を吸われて、ハイソックスに赤黒いシミをつけてしまうころには。
もうそうしたものが気にならないほど、あたりは暗くなっていました。
こんどいっしょに、練習しないか?
キャプテンの言い草に、“彼”はどきりとしたらしく、思わず顔をあげました。
血が付いてるよ。
べつのひとりが、“彼”の口もとを拭ってやりました。
さいごに血を吸われたのは彼だったので、自分の血を拭いてやったというわけです。
昼間の運動はダメだけど。夜ならいいよね?
いちどくらい、部活やってみたら?

真夜中の校庭は、別世界のように静まり返っていました。
幽霊が出るとうわさされた校舎も、シンとして闇夜のなかにうずくまっています。
主だった部員は、ぜんぶそろっていました。
そろいのユニフォームで、ランニングをして。
転がるボールを追いかけて、校庭じゅうを駆け回っていました。
ほどよく汗が、滲むころ。
そろそろやめようか?
キャプテンの声に振り向くと、ユニフォーム姿の“彼”はもう、息を切らしはじめています。
一週間の禁欲は、きつかったかな?
照れたように笑う彼に、警戒心のこもった尖った視線を送るものはだれひとり、いませんでした。
今夜の当番は、だれ?
数名の部員が、手をあげましたが、“彼”はかぶりを振るばかり。
今夜はなんだか、やりにくいな。おなじユニフォーム着ちゃうとさ。
真新しいユニフォームが気に入ったのか、彼はそのままの姿で、帰ってゆきました。
こんどの練習は、チアガールも用意したほうがいいかな?
キャプテン彼女連れてくるんですか?うってつけですね。
冷やかしたそいつが背中をどやされたのは、いうまでもありません。
華やかなショウで有名なあの部に所属する彼女たちは、おそろいのミニスカートのコスチュームの下、白の薄々のハイソックスを履いているので。
お前たちもだれかいない?
妹を・・・って言いたかったんだけど。
遠い街に住んでいるという母親ちがいの妹に、ボクは逢ったことがまだなかったのでした。


あとがき
特定のスポーツの名前には、わざと触れない柏木でした。
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