FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

男相手。

2010年06月06日(Sun) 07:41:46

いただきまぁす。
意外なくらい神妙な声が、薄暗い和室に響きわたった。
それからひと呼吸おいて、うなじのつけ根に、痺れるような痛みが走る。
もぐり込まされた牙が、尖った疼痛を滲ませながら。
なま温かい血液を、抜き去ってゆく。
あお向けに横たえられた畳の上、伝い落ちた血液がぼたぼたと滴った。

身動きできないほどきつく抑えつけられた、左隣で。
母は黒の礼服姿の身をよじらせながら。
激しくかぶりを振って、抵抗している。
時間の問題だろう。
母の上に覆いかぶさっている初老の男は、鶴のように細いうなじを咥え込んでしまっていたから。
おなじ姿勢で抑えつけられた、セーラー服姿の妹は。
暑苦しいほど伸びた、豊かな黒髪を振り乱しながら。
べそをかきながら、わたしとおなじ部位を、噛まれていった。
無念そうに、唇噛み締めながら。

やっぱり若い子の血は、いいなぁ。
右隣から、そんな声。
わたしよりも年下の少年が、稚ない唇を妹の血で浸している。
ストッキングを破らせていただくぞ。
初老の男はほくそ笑みながら、薄墨色に染まった肉づきたっぷりのふくらはぎに、唇這わせてゆく。
いけません。いけませんてば・・・
いつも気丈な母に似ず、おずおずとしたたしなめ口調。
清楚な黒のストッキングを、欲情に持ちた唇に、みるみる噛み剥がれてしまっている。
妹はとっくに正気を喪っていて。
へらへらと笑いこけながら、ふくらはぎを吸わせてしまっていて。
真新しい白のハイソックスに、ばら色のシミをしみ込まされていた。

ちぇっ、ついてないの。ボクだけ男の血だなんて。
わたしよりずっと年下の、その少年は。
小さな身体に似ない物凄い力でわたしのことを抑えつけていて。
ワイシャツのうえ、ぼたぼたと散らされる血潮のなま温かさを。
したたかに、見せつけながら。
そこかしこと思い思いに、容赦なく噛みついてくる。
ふん、いちばんいい思いをしくさるくせに。
その子の父親らしい、母の情夫は。
意地悪そうに、息子を睨んだ。

数日後。
陽射しのふんだんに差し込んだ、レストランの一角は。
わたしたち家族だけに、貸し切られていた。
母と妹は、それとなく座を遠ざけていって。
いつか、自分の相手と手を握り合って、
ソファとソファの重なりに隠した足許に、
男どもの唇を、吸いつけさせていった。
わたしはあの少年に、にこやかに語りかけている。
婚約者の、華子さんだ。○×大学の四年生。
卒業したら式を挙げるんだよ。
薄い黄色のスーツに身を包んだ華子さんは。
わたしの傍ら、ねずみ色のストッキングに包まれた両脚を、淑やかに揃えている。
羞じらいを含んだ、初々しい白い頬には。
これから引き起こされる惨劇の予感など、かけらもない。
壊してしまう。
そんなことに恐れを抱きながら。
わたしはさりげなく、手を伸ばて。
黄色のタイトスカートのうえから、彼女のひざ小僧を抑えつけていった。


あとがき
いちばん得をしたのは、さいしょは男相手だった少年・・・というお話です。

ご家族揃って、血液を提供しながら。
どうやら必ずしも、事態を100%受け容れているわけではなさそうですね。
吸血を経て理性を完全に堕とされてしまってから。
状況を愉しむようになった感じです。

初々しい婚約者の襲撃シーンをあえてカットしてみました。
黄色のスーツのすそから覗くねずみ色のストッキングを描くだけで。
なまめかしいナイロンがむざんに噛み破られるだろう情景を、賢明な読者のみな様はありありと想像してくださることでしょうから。
前の記事
早い帰宅。
次の記事
三人の侵入者

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/2105-dbbac884