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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

時を超えた男

2006年01月27日(Fri) 07:07:26

妻は今宵も、銀髪の吸血鬼と歓楽の刻を営んでいる。
もう、どれほどの交わりが営まれたことか。
世間体などかえりみることなく淫らな愉しみに耽る妻を
なぜか咎めることなく受け入れて、もうなん十年も見て見ぬふりをし続けていた。
軽い嫉妬を含んだ愉悦にぐるぐると渦巻くどす黒いものが、私を異形の世界へと導いていた。

数十年もの時を超えて。
たどりついたのは新婚当時の新居。
妻はまだ若々しく初々しく、
白髪交じりのわたしは、彼女の夫とはかけ離れた存在。
見知らぬ男のはずの私を、それでも彼女はこころよく迎え入れる。
そう。たとえ新婚のころとはいっても。
こんな早い刻限に、いちどとして帰宅したことのない私。
台所で嬉しそうにいそいそと立ち働く、エプロン姿。
湯気のたった料理に、満ち足りた穏やかな笑み。
そうして和やかな食卓を終えると、
妻は恥らいながら、見知らぬ初老の男のまえ
見覚えのないガーターストッキングに縁取られた太ももを開いていった。

うっすらとよみがえる、淡い記憶。
新婚当時から妻の影にみた、私とよく似た銀髪の紳士。
あれは本当は私自身だったのだ。
あのとき愛し足りなかった妻のことを、
時を超えて愛しに訪れていたのだろうか。
ほかの男に妻を取られるなど我慢のならなかったはずの若いころ。
その男だけは、軽い愉悦を含んだ嫉妬とともに
存在を認め、許し受け入れていたのだった。


あとがき
ちょっと込み入っていますが。
妻の浮気相手は、時をさかのぼってきた年老いた自分自身だったというお話です。
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