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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

あたしにばかり逢っていると、死んじゃうわよ。

2010年09月16日(Thu) 02:48:01

闇のかなたから、ちぃちぃと虫の音が響いてくる。
ここは、人けのない公園。真夜中の。
早い時間の夜よりも、いちだんと落とされた照明の下。
女はいつものように、白い顔をさらす。
薄いグレーのカーディガンの下は、真っ白なワンピース。それに白いパンプス。
ひざ丈のワンピースの下、すらりと伸びた脛を覆う黒のストッキングが、ひときわなまめかしく際だっていた。

また、来たの・・・?
女は冷やかすように、男を見あげると。
男は黙って、頷きだけを返してゆく。
ふふふ。
女の嗤いは、どこまでも冷ややかだ。
そんなにあたしにばかり逢っていると、死んじゃうわよ。
語尾にすこし滲んだ震えは、もしかするとしんそこからの憐みだったかもしれない。
じゃあ、遠慮なく血をいただくわ。
有無を言わせず、女は男の二の腕をつかんだ。

なにも応えない男のまえ。
女はパンプスのつま先に、ギュッと力を込めて、背伸びをする。
きれいな栗色の髪をした女の丈は、男の肩ほどまでにしかならなかった。
肩までかかる、栗色の髪を揺らしながら。
女は甘えるように、男の上体にしなだれかかる。
足首にかすかに浮いた、ストッキングのしわ―――
ピンと反り立った、格好の良い足首―――
ぐびり・・・ごくり・・・
優雅な挙措に似合わず、女が発する吸血の音は、
ひどく獣じみて、露骨であった。

ふぅ・・・
女はひと息ついて、血に濡れた口許を手の甲で拭う。
その手の甲を、包むように。
男のハンカチが優しく覆った。
壊れものでも、扱うように。
女は男の庇うような手つきを、どこか満足げに見つめていて。
そんなことしたって、ダメよ。あなたのこと放さないんだから。
わざと邪慳に、そう言い放つ。
じゃあね。また明日の晩・・・必ず来てね♪
女はまた背伸びして、男の頬に軽くキッスをした。

よく、つづくわね―――
女は今夜も、男の血で手の甲を拭ってゆく。
恭しく介抱をするように手の甲に巻かれてゆくハンカチを見つめながら、
女はひどくもの憂げだった。
男は女の憂さに誘われるように、はじめて言葉を漏らした。
だって・・・こうして逢ってくれる女(ひと)は、きみだけなんだもの。
ぎょっとした女が見あげる瞳が、ひどくみずみずしく輝いていた。

男の独り住むマンションが、あるじを失ったとき。
しんそこ惜しむものは、どれほどいただろうか。

今夜も女は、こ洒落たワンピースに身を包んで。
深夜の公園に、ヒールの足音を響かせてゆく。
忍び足で、ゆっくりと―――
まばらな照明の彼方、影絵のように薄っすらと浮かぶ人影目ざして。
来てあげたわよ。あなた喉渇いているのでしょう?
女は男をからかうように、見あげた―――
立場が逆転しても、ふたりの関係にあまり変化はないらしい。
細い肩を掴まえてくる男の猿臂に挟まれたまま。
女はワンピースの胸ぐりを、くつろげて。
おろされてくる牙を、しずかに待った。

ふふふ。あなた―――お行儀悪いわね。
そんなだったらまだ、ほかの女の人のまえには出れないわ。
女は自分のハンカチで、ワンピースの胸にしたたらされた紅いシミを、わざとのようにていねいに拭ってゆく。
ほら。痕が残った。どうしてくださるの?
ことさら口をとがらせる女に、男はちょっとだけ済まなさそうに口ごもり、そして笑んだ―――
その意気ね。
女は自分の服を拭ったそのハンカチで、男の口許まで拭ってやると。
じゃあまた明日。必ず来てあげるからね。
あなた、わたし以外の女には、とうぶん逢えないだろうから。

きょうも。
オフィス街を闊歩する美しい女吸血鬼は、犠牲を求める。
愛する男を養うための血を、我が身に取り込むために―――
けれども決して、男に逢わせようとはしないだろう。
じぶんいがいの女を。


あとがき
久しぶりに、自分のなかでグッとくるものが描けました。
えらい時間ですが。 爆
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いっしょに行ってあげてもいいかな?
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折り目正しい制服姿に加えられた、ひとつの凌辱の風景。

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