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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

女装の友

2010年11月15日(Mon) 08:11:08

セーラー服の肩先に、そっと手を置いたのは。
いつの間にか後ろから迫ってきた、妖しい影―――
そのまま抱きすくめられて、うなじを吸われてしまっていた。
  だいじょうぶ。汚したりしないから。
男はあくまでも、わたしの制服にまで、気を使っていた。

美味しいね。きみ、制服がとても似合うんだね。
わたしが男の子だと、さいしょから察していたらしい。
妹の服を無断で拝借して、夜な夜なたどる散歩道。
いつから彼に、視られていたのだろう?
いつから彼に、狙われていたのだろう?

血を吸われることへの恐怖よりも。
女装がばれてしまう。
その気恥ずかしさのほうが、先に立つことを。
男は黙っていても、察してくれていた。
  だいじょうぶ。そのまま女装をつづけるといい。
  きみの趣味を辱めるものは、いなくなるのだから―――
男はにんまりとして、わたしを見る。
もの欲しげに這わされる、足許への視線。
わたしは黒のストッキングのふくらはぎを、求められるままに差し伸べていた。
取引成立の証しのように・・・

引き剥いだストッキングを、だいじぞうに持ち帰った彼は。
別れぎわ、耳もとにそっと、ささやいていった。
こんどは母さんの、ワンピースを着ておいで。
いつもきみの母さんが穿いている、紺のストッキングが似合うやつを。
約束どおり、週末の夜。
母の気に入りの水玉もようのワンピースを着て佇んだわたし。
咬み剥がれてゆくストッキングが、みるみるたるんでずり落ちていって。
もの欲しげな唇の下、くしゃくしゃに辱められてゆくのを。
小気味よく見守っていたわたし。

台所のほうから洩れて来る、呻き声―――
日ごろしっかりものと評された母のものとは、思えなかった。
黒の礼服を着崩れさせて、白い素肌をちらちらさせて。
ひざ下までずり降ろされたストッキングには、男の吐き散らした熱情を、ぬらぬらとしみ込まされていた。
勉強部屋にこもった妹は。
うなじにつけられた痕を、かわいい指でまさぐりながら。
白のハイソックスに撥ねた赤黒いシミを、しきりに気にかけているようだった。

母は父を、どうたぶらかしたものか。
それからしばしば、真夜中のお出かけを愉しむようになった。
父はどういうわけか、そんな母を。むしろ愉しげに、送り出していた。
やぁだ、お兄ちゃんたら。あたしの制服着ないでよっ。
わたしの肩を、どやしつけながら。
それでも着替えを、手伝ってくれるようになっていた。
気をつけて行きなさいよ。
兄妹、おそろいのセーラー服で真夜中の登校に出かけるわたしたちを。
父はむしろ面白そうに、目を細めて見送ってくれる。

それからなん年、経ったことだろう?
そろそろきみも、男らしくならなきゃね。
若い女の子に、どんどんアピールしていって、ちゃんとお嫁さんをもらわなくちゃな。
けれども男が、わたしの女装をとがめたことは、いちどもない。
周囲の女たちに咎められることも、たえてない。
半開きにされたドアの向こう側、
夫婦のベッドのうえから洩れて来る、呻き声に。
わたしは胸焦がしながら―――
妻の気に入りの、濃い紫のスーツをまとう歓びを隠しきれない。

いつごろ聞き知ったものかは、はや記憶のかなた。
この街に棲む吸血鬼が。
目あての女を堕とすまえ。
その男家族を狙って、身代りに獲物の女の服を着させる趣味があるということを。
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