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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

オンリーさんとして暮らす妻。 ~まき子の場合~

2010年11月24日(Wed) 07:54:10

1.
まき子は、観念していた。
自宅のなかとはいえ、おいつめられてしまった部屋の隅。
相手の男は、父ほどの年かっこうの、五十がらみの男。
五分刈りに刈り込んだ白髪の下、陽に灼けた赤銅色の頬は、異様なまでにてかてかと光っている。
人の生き血を吸うものは、肌の輝きが違う。
まさかと思っていた、地元の老女の言い草が、いまさらながらまき子の脳裏をよぎっていった。

さぁ・・・
男は招くように、猿臂をのばして来る。
血を欲しがっている。
ぞくり・・・と、女は恐怖した。
生き血を吸われるなどというおぞましいことは、想像したこともないし、もちろん経験もなかった。
この村では、そういうことがある。
そう聞かされた時にも、実感は伴わなかった。
けれども目の前の男は、明白に、彼女の血液を欲している。

見逃して・・・ってお願いしても、だめ・・・?
女の問いかけに、男はむしろ悲しげにかぶりを振る。
自分の意志ではどうにもならぬ。そう告げているようだった。
せめて、殺さないでってお願いすることはできるかな・・・?
けんめいに明るく振る舞おうとする自分が、われながら哀れに思える。
けれども男は、わが意を得たり、というように。
目を細め、別人のように相好を崩して、応えたものだった。
奥さん、あんた賢いね。人間ができている。
男はやおら、まき子の頭を掴むと荒々しくおとがいを仰のけて、首っ玉にがぶりと食いついていた。
じゅうっ・・・
ワンピースに撥ねる鮮血が、花柄模様を浸すのを。
女はちょっとだけ、もったいないと感じていた。


2.
たまに、逢ってくれるな・・・?
男の言い分に、いなやはなかった。
女は黙って、頷いた。
だんなには、なにも言わないでいいからな。
いったいなにを言えというのだろう?
まぁ、話しても構わぬが。
ぬけぬけと、仰いますこと。
口にする勇気のない言葉の抗いを、女は胸の中で反芻しながら。
まるきりべつのことを、いった。
お洋服、汚れちゃったわね。
男はひどくすまなさそうに、ワンピースのあちこちに血を撥ねかした女の、凄まじいなりを見渡した。
台無しにしちまったな。こんど新しいのを、買ってやる。
買って済む問題なのか?けれども女はそれにも、黙って頷いてしまっている。

じゃからもう少し・・・すまんな。
男は居ずまいを改めると。
女のひざ小僧に、手を伸ばしてきた。
まき子は、黒のストッキングを穿いている。
白い脛の透けてみえる薄々のナイロンのうえから、なまの唇がむたいに圧しつけられてきた。
あっ、ひどいッ!
女の抗弁には、耳を貸さないで。
男はひたすら、ストッキングの脚を唇でいたぶりつづけていった。
太ももを狙って、ワンピースのすそまで、たくし上げて・・・

3.
幻影がぐるぐると、まき子の脳裏の奥で、とぐろを巻いていた。
初めて襲われた四畳半の納戸のようす。
カーテンにも畳にも、まき子の撥ねかした血が赤黒く、光っている。
足許の血だまりを見つめるのは、ほかならぬ夫の洋一郎。
会社帰りのスーツのまま、妻の撥ねかした血だまりを、じいっと見おろしていて。
後ろから現われたあの男に、なれなれしく肩を叩かれると、
苦笑いをしながら、握手を交わしてゆく。
そういえば。
あの男を夫が初めて招いたのは、ついこのあいだのことだった。

家に招んじゃ、なんねぇ。
この村のことをあらいざらい、話してくれた老女は、たしかにそういっていた。
招ばれたもんじゃないと、だまって家にあがりこむことはできぬからのぅ。


4.
毎晩来るつもり?
女は恐怖しながら、男に訊いていた。
あたりの刺すような冷気を素肌にあてまいとして、はぎ取られたブラウスを胸に当てながら。
背中や肩先にしみ込んでくる冷えた空気は、女を責めるように、容赦なく皮膚にしみ込んでくる。
長い時間は、いられない。
ここは、村はずれの納屋だった。

だんなの目を気にせずに、あんたも愉しめるだろうからな。
わらの上、スーツ姿の女を組み敷いておいて。
冷酷な雰囲気のする唇から発せられた男の言い草は、どこまでもあからさまだった。
私が・・・愉しんでいる・・・ですって?
訊き返すまでもなく、男の剛(つよ)い一物が、女の柔らかな股間を貫いていった。
たっぷり返してやるぞい。
嘲るような文句とともに。
びゅうびゅうと放埓に注がれる濁った粘液を感じていた。

なぁに、週にいちどがせいぜいだよ。
え?
忘我の一瞬のあと。
女はさいしょの問いを、忘れかけていた。
飢えているからな。この食欲を毎晩ぶつけられたら、命がいくつあっても足りないだろう?
男の言い草は、もっともだった。
けれどもな。そのうち毎晩来る。
え・・・?
量をむさぼる必要がなくなったら、お前のことを毎晩愉しみに・・・な。
週にいちど、あからさまにむさぼられるのと。少量を、毎晩吸いに来られるのと。
どちらがいいのだろう・・・?
女は薄ぼんやりと、反芻していた。

男の性欲が、ふたたび頂点に達したらしい。
だめ・・・家に帰して・・・
女の抗弁は、分厚く荒々しい唇に、ふさがれた。

ひざ上まで剥ぎ降ろされたストッキングが、
女の脚の動きに合わせて、
ずるずるとふしだらに、ずり落ちていった。

5.
畳部屋のリビングに、あお向けにされながら。
女が着ていたのは、真っ赤なワンピース。
夫が買ってくれたワンピースを、血だらけにされて、脱がされて。
そのうちに、自分で脱ぐようになっていた。
いままでの清楚なワンピースを脱ぎ棄てて、
男から与えられた派手な衣装に袖を通す。
そうすることが、娼婦になることを意味するのだと。
女はとうに、わきまえていた。
毎日のように色を替えるストッキングも、男に破らせるためにまとうようなものだった。
夫の知らないうちに。
女は、衣装もろとも支配を受けるようになっている。

巻きつけられて来る猿臂に、形ばかり抗いながら。
首筋に圧しつけられてくる分厚い唇を、避けようともせずに受け容れる。
若い女の血は、えぇのう。
白髪頭を覆いかぶせてきながら、男はあからさまに目を細め、女の血を愛でてゆく。
ふ、ふ、ふ・・・
顔をもたげて、唇を半開きにして。
いま吸い取ったばかりの女の血を、真紅のワンピースの胸にしたたらせる。
やだ・・・
女がけだるげに、眉をひそめる。
抗おうとした両腕を、畳のうえに抑えつけて。
男はなおも。
ぼと・・・ぼと・・・ぼと・・・
情婦の身にまとう衣装を、熱い血潮で、染めていった。

女の持ち合わせる衣装のほとんどが、男の買った派手な服にすり替わるころ。
男は公然と、女を村のあちこちに、連れ歩くようになっていた。

6.
都会育ちの女で、この村に棲みつくものは。
特定の相手をもつもの。
不特定のものの相手をする女。
そのふた通りに、わかれるらしい。
どうやら自分は前者なのだと、女は自覚しはじめていた。
だいいち、これほど頻繁に訪ねてこられては。
ほかの男の相手をする余裕など、あるはずもない。
それこそ、「命がいくつあっても足りない」だろうから。

特定の相手をもつことに、女はなんとなしに、名誉のようなものを感じていた。
浮気しちゃ、ダメよ・・・って、いいたいけれど。
あたしだって、主人に求められる晩もあるし。
あなただって、あたしの血だけじゃ、足りないんでしょう?
目いっぱいに開いた股ぐらに、活きの良いしぶきを享けながら。
女は男の髪を、まるで母親のように優しく撫でていた。


7.
その日も真っ昼間から、犯されていた。
夫はいまごろ、勤め先で事務仕事に励んでいる時分だろうか?
生活費をつくり出す夫に、それを浪費する妻。
男の手なぐさみに破られるストッキングは、週になん足にもなっているのに。
夫はまったく、気づいていないのだろうか?
軽蔑してもいいのだろうか?
それとも・・・恥入るのは、自分・・・?
女は反芻しながら、ずり落ちてくるストッキングをたくし上げようと、むだな努力をくり返していた。

もうじき、夜ね。
暮れかけた空を窓辺に観ながら。
女はなおも、男の一物を口に含みつづけている。
掴まれた髪が、ギュッと痛い。
はたからみたら、どんなふうに見えるだろう?とおもうほど、
あからさまな、隷従の姿―――

夜になると、夫が戻ってくる。
けれどもそれが、なんだというのだろう?
夕餉の支度は、とうに放棄している。
帰りの遅い夫は、それでも文句ひとついわないで、外食ですますようになっていた。
先にシャワーを浴びて、昼さがりの愉しみの痕跡を消して。
ひととおり、夫婦の営みが済んで、夫が寝入ってしまうと。
女はスーツに着替え、そそくさと家を出る。
そうして夜明け前には、かならず帰宅する。
そうしないと、伝線したストッキングの脚を視られるはめになるから。

夜だけの夫婦―――
それ以外の時間は、人目を忍んで時間を盗むようにして。
男のために、捧げていた。


8.
だれかが、帰って来たようだった。
玄関先に、人の立つ気配。
しまった―――
女のなかに、急に理性が戻ってきた。
夫の手前をとりつくろうために、男をはねのけようとした。
けれども男の厚くたくましい胸は、壁のように女の腕を拒んでいる。
え?え?え・・・?
狼狽する女を、畳のうえにしっかりと抑えつけて。
男はさいごの吶喊を、股ぐらに衝(つ)き込んでくる。
あ・・・・ぁ・・・あっ。
不覚にも、声をあげてしまっていた。

ふすま越しにたった人影の反応は、意外なほどしずかだった。
じいっと見おろして来るのを、ありありと感じる。
ただならぬ感情が、立つ人の心を渦巻いているのさえ、ありありと伝わってくる。
けれども人影は、ふすまの明け放たれた部屋のなかに入ってこようとはしなかった。
着ているワンピースはこのごろには珍しく、夫が結婚記念日に買ってくれたもの。
そのワンピースを、くしゃくしゃに踏みしだきながら。
男はぞんざいな声を、背後の人影に投げていた。
「すまねぇな。」
人影は、軽く手をあげて応えたようだった。
そして意外なくらい、あっさりと・・・背を向けて玄関へと歩み去ってゆく。

う、ふ、ふ、ふ。
もう一発、果たさせてもらうぞ。
白髪男がにんまりと笑うのに、女もつられて笑み返していた。


9.
オンリーさんにしてもらっているんだね?
夫の問いに、女はうつろに頷いている。
女がまとうのは、黒の礼服。
キリッと装った、タイつきのブラウスの下。
けれども女はスカートを、着けていない。
むき出しになった下肢を、黒のガーター・ストッキングが、ぬらりとした艶で、くるんでいる。
村に来るまでは、脚に通したことのなかった、娼婦の装いを、女がたしなむようになったのは。
夫の認知を受けて、公然と、白髪男の意に従うようになってから。
きょうはスカートなしで、歩いて来い。
男の言うなりになって、女ははしたない姿のまま、夫に送りだされてゆく。

あくまで、献血ですからね。
言い張る女に、夫はひどく寛容だった。
さきさまに、よろしくね。
想い存分、吸わせてあげなさい。。。


あとがき
長いだけですな~。 笑
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