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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

絵の中の女(ひと)

2010年11月29日(Mon) 06:48:21

―――
ばあさん座りをしているきみの足許に。
あいつは唇を、這わせていった。
それはそれは、旨そうに。
墨色に染まるきみの脚を。
ストッキングをよだれで濡らしながら、舐めまわしていった。
あいつの好みに合わせた装いが。
他愛なくびりびりと、脚から裂き取られてゆくありさまを。
きみは静かに見おろして―――
愉しんでしまえるようになったのだね?
―――

アラ、絵を描いていらっしゃるの?
湯気のたったコーヒーカップをふたつ乗せたお盆を、
妻の優里子は傍らのテーブルにそっと置いた。
お盆の上でコーヒーカップが、カチャカチャと心地よい音を響かせる。
いかが―――?
絵筆を握る、わたしのために。
頬に触れるほど近く、差し出されたコーヒーカップ。
鼻先にくゆらぐほろ苦い香りに、
わたしは思わず、ほほ笑んでいる。
はい。あ~んっ。
熱いコーヒーを、こんなふうにして飲ませるのは。
かんたんなようで、よほど行きがあっていないとやけどをする。
器用に唇に含ませてくれた妻は、わたしのキャンバスを覗き込んだ。

あら~・・・
画題はおおよそ、見当がついていたらしい。
身に覚えのある光景を、ありかりと再現されて。
優里子は、小娘のように羞じらっている。
キャンパスのうえ、さらさらと流した水彩画。
タイトスカートのすそから覗く、ふくらはぎの描写が、
ひどくリアルだと、口許に手を当てて羞じらっている。
それはそれは、愉しげに。

あいつ、今夜も来るのだろう?
ご連絡、あったのかしら?
穏やかな面ざしにさりげなく走る、心地よい緊張が。
整った目鼻だちを、ほどよく引き締めた。
そうだね。なんとなくそんな気がする。
さっき、連絡があったのよ。
てっきりあなたにも、あったのかと思ったわ。
あなたたち、よほど気持ちが通じているのね。

おそろいのように。
首のつけ根につけられた痕。
わたしが痕をつけられた、そのつぎの日に。
薄ぼんやりとなっているわたしのまえで。
あいつは優里子の生き血を、吸い取っていった―――
そのありさまを絵にしたのが、さいしょだった。
つぎの夜訪れたその男は、ひどくその絵を気に入って。
あんた、よほど奥さんを愛しているんだな。
寂しい想いは、させないから。
ほんのしばらく、おれのくだらない欲望に、付き合ってくれまいか?
あいつの声はどこか寂しげで、
わたしは思わず、彼の横顔をまじまじと見つめていた。

くだらない―――そんな言い方はよそうよ。
最愛の妻の、かけがえのない血に触れるのなら。
ああ、わるかった。
あいつは素直にわたしにわびると、
もう少しだけ・・・と。目で懇願し、
わたしは妻を、目で促していた。
ストッキングが、お好きなんですか?
性急に圧しつけられた唇が、薄いナイロンの装いを穢すのを。
妻は唇を噛んで、耐えている。

ひとしきり、行為がすんだあと。
走り書きに描いたデッサンに、男は少年のように照れくさげな顔をした。
足許に辱めを受けながら、不快げにひそめた眉が、
同調の翳りをみせたのは。
男がわたしの絵と妻の足許とを、等分に。
賞賛のまなこをむけたあとだった。

きょうはどんな絵を、描くのかしら・・・?
コーヒーカップを手にする妻と、向い合せにキャンパスを置きながら。
わたしはすぐに画想を練ると、おもむろに絵筆を走らせる。
できあがるまでが、愉しみね。
妻はいつものように、ゆうゆうと。
コーヒーカップを口許に運ぶ。
カップは三つ、要ったかしら?
でも彼が飲むコーヒーは、紅い飲みものですものね。
しずかに笑う妻が、薄い唇から白い歯をこぼれさせた。

拝見しても、いいかしら?
絵が出来上がったころ合いを、みはからって。
着かえてきた妻は、わたしの隣に腰かける。
気に入りの紫のスーツに、ワインカラーのブラウスを。
今夜は彼のために、濡らすつもりなのだね?
おなじ衣装を着た妻が、キャンバスのうえ、悩ましげに眉を顰めていた。

あら、あら。
いいのかしら―――?
トーンのあがった、妻の声。
はしたないわ、というように。
白珠のような葉をみせた唇を、とっさに手で抑えると。
似合いのふたりだと、思うけど・・・ちょっぴり妬けるな。
衣装をしどけなく着崩れさせた、キャンバスのうえの妻にのしかかるのは。
得意げに笑んだ、黒衣のあいつ―――
たくし上げられたスカートを、腰周りに巻きつけたまま。
太もも丈のストッキングが、ゴムがあらわになるほど、さらけ出された脚。
紫のスカートと、薄墨色のストッキングにはさまれて、いっそう白さをきわだたせた豊かな太ももが、
男の腰に、割られている。
春画と紙一重だわ。
妻は困ったように笑いながら、それでも芸術ね、そう付け加えるのを忘れなかった。
絵のなかの自分の股間を割る男の逞しい腰のリアルさに、
しんそこ羞じらう、白い頬。

描いた絵には、さいごに数行、詩を書きつける。
わたしは描いた。妻のまえで―――

―――
おなじ女性を愛するきみへ。
きょうはわたしのいちばん大切な宝物を、きみのために捧げます。
夫の目を盗んでまで、また逢ってみたいって、
彼女がそう思えるほど。
きみは巧みに、愛するのだろうね。
ちょっと妬きもちをやく夫&きみの忠実な悪友より
―――

翌朝。
べつの部屋から起き出してきたわたしのまえ。
持ち去られた絵の代わり、
ぬるりとした艶を帯びた、黒のストッキングが。
持ち主の足形を残したまま、キャンパスにかけられていた。
お礼のつもりなのだね?
妻の情夫となって立ち去った男に、今さら届くはずのない問いを、あけ放たれた窓に投げて。
夫婦の寝室のドア越しに、妻の目ざめを感じると。
わたしはそそくさと、彼の贈りものをポケットにしまい込む。

まだ出逢って二度目の晩に。
あのひとの穏やかな笑みを、たいせつにしたいから―――
いつになく神妙に呟いた彼は。
妻を奪い去るよりも、共有する道を択んでいた。
狙った女の夫であるわたしに苦痛を感じさせまいと、さきにわたしの血を吸い取っておいて。
男の血は、好みじゃないんだけどな。
わざと恩着せがましく笑うあいつは、ひどく愉しげだった。
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