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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

だれかがうちに、来るんだろう・・・?

2010年12月24日(Fri) 06:57:09

ちょっと・・・出かけて来てもいい?
いつもハッキリとした性格の洋子にしては、言いにくそうな、歯切れのよくない口調だった。
お気に入りの白のスーツに、ワインカラーのブラウスが、夫の睦彦にはむしろ、毒々しく映った。
いいよ。うちに呼べよ。おれが出かけるから。
自分の口から洩らされる言葉が、むしろ淡々とした調子を伴なっていることに、
睦彦はわれながら、意外に思っていた。
だれかと・・・逢うことになっているんだろう?
え・・・?
どきりとして立ちすくむ洋子に、睦彦は自分から寄っていって。
妻のうなじをなぞるように、撫でていた。
噛まれたんだな?
白くて細い首すじには、かすかだが痛々しいほどの赤黒い痕。

いつからなんだ?
先月からよ。
帰りの遅かったあの晩のことだ。
睦彦ははっきりと、自覚した。
あの晩妻はいつもの快活さを忘れたように、疲れ切った顔をしていた。
蒼ざめていたのはその日の勤労奉仕による疲れのせいだけではなくて、
失血と狼狽とが隠されていたのだろう。
その日の勤労奉仕は確か、高齢者の介護だった。
相手はだれ?
知らないほうが、いいでしょ?
洋子はとうとう、相手の名前を口にしなかった。

一時間後。
あるじのいなくなった家のドアを、音をはばかるように叩くものがあった。
開いたドアの向こうにいたのは、睦彦の幼馴染の亮介だ。
洋子は慣れた手つきで、肩先まで伸びた髪を背中に追いやると、
ドアを閉めた玄関で、男の肩にしなだれかかるように、両腕を巻きつけた。
赤黒い痣の、ちょうど真上に。
熱い唇が這うのを、感じながら・・・

まだあなただって、気づいていないみたい。
わざと知らないようにしているんだな、あいつ。
押し倒した女のスカートの奥に、熱くたぎった粘液をびゅうびゅうと吐き出したあと。
亮介は冷めた目線になっている。
情事を共にした共犯者の、収まりかけてゆく熱情にもの足りなさを覚えながら。
洋子は引き破られたストッキングをたいぎそうに、ふくらはぎから抜き取っていった。
こんどはいつ来るの?
あいつのいないとき・・・かな。
悪いことしてると、思っているんだ。
そそのかすような上目づかいをしながら、
女はむしろ自分よりも彼の方が、夫のことを気遣っているのを感じ取っている。

手当たりしだい、というのが適切な表現かもしれなかった。
狭い村では、だれもが顔見知りであり、縁つづきだったから。
毎日顔を合わせて、いっしょに働いていたり。
おなじ屋根の下で暮らしていたり。
そうしたものたちの妻や娘を襲い、血を啜る。
よそ行きのワンピースやブラウスを、持ち主の血で汚しながら、
衝動や劣情にまかせて生き血を味わっているときは。
土気色の男たちはほとんど、無表情だった。
自分の加える凌辱に、兄嫁や義妹や友人の妻たちが、満ち足りたようにうっとりとなってしまうと。
交尾を果たした獣たちはその家から立ち去って、なにごともなかったかのように、仕事場に戻っていって。
なにもしらない、あるいは知らないはずの、犠牲者の夫たちと冗談を交わしながら、
ふたたびいつもの日常へと、戻ってゆく。

母を呼んだわ。あなた襲ってあげて。
戻ってきた睦彦に、洋子は唐突な言葉を投げた。
あなたにも、生えかけているんでしょう・・・?
妻のなぞる指先の下、唇の端に隠れた牙が、じわじわと疼きはじめていた。
父はもういないから、だれにも迷惑はかからないわ。
襲われた女が酔ってしまうのも、わたし知っているから。
自分が酔っていることを、さりげなく伝えると。
日取りはいつが、いいかしらねぇ。
来週、うちの両親結婚記念日なんだ。
話題の異常さだけを残して、声色だけはいつもの専業主婦に戻っていった。
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