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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

知らない夫 認める夫 薄々感づいている夫

2010年12月24日(Fri) 07:28:14

出産後も、お産婆さんがめんどうを見てくれる。
そんな昔ながらのやりかたが、都会育ちの美樹にはむしろ、もの珍しかった。
この村に嫁いできて、はや三年。
初孫に、どちらの祖父母もよろこんでくれていた。
ふつうなら、満ち足りた若い母親であるはずが、
美樹はちょっぴり、フクザツだった。

村に嫁いで、すぐのころ。
夫のいないあいだ、義父に迫られて、押し倒されて。
忌むべき関係を断ち切れないまま、ずるずると過ごすうち。
義父は自分よりも年配の悪友を、夫の留守に引き込むようになっていた。
複数の年配の男性と関係を結ぶ日常が、この村ではごくふつうのことなのだと。
義父に聞かされ、ほかの男たちも異口同音にそう告げるのだった。
うちの嫁も、わしの相手をしてくれる。毎晩じゃぞ。
いつも臭い息を吹きかけて来て、辟易させられる最年長の七十男にしてからが。
若い時分は隣村からもらったばかりの嫁を、兄や父親に食い物にされていたという。

そんな村に、都会から手伝いに母の美恵子と兄嫁の由梨絵がやってきたのは。
村の男どもにとっては、カモがネギを背負ってきたにひとしかった。
さいしょに美恵子が、それから由梨絵が、ひとりきりのときに迫られて堕とされて。
互いに知らないどうしだった秘密を、ひとつ部屋のなか分かち合うことにさえ、なっていた。

産後は養生せんとの。
義父はいつも、優しかった。
経験に裏打ちされた手当の適切さを加えると、夫よりも居心地がよいほどだった。
その義父が、暗闇の中では獣にかわることを、
美樹は自分の身体で、知っている。
あの・・・なにかを言いかけた息子の嫁に、気づかぬように。
とうぶん夜のお勤めは休んでええ。代わりを見つけたでの。
義父はいつものようにおだやかで、優しい声色だった。

ご母堂は・・・
義父の言葉づかいは、ひどく時代がかっていて、古くさい。
そういうときにかぎって、かなり重要なことを口にするのを、美樹は知っている。
ご尊父どのに、すべて話されたそうじゃ。
寛大な方々じゃ。なかったことにする、知らないことにする。そう仰せじゃったそうな。
そのかわり、美樹の身体をくれぐれも・・・とな、ご母堂を通じていましがた、うかがったところじゃ。
安心するがええ。
あくまでおだやかな義父の態度に、応える言葉を思いつかなくて。
美樹は黙って、窓の外の雪景色を視ているだけだった。

布団の上に突いた掌のうえ、義父の節くれだった掌が、包み込むように乗せられる。
部屋の向こうにかすかな人の気配が立ったが、なかの様子を察すると、そそくさと足取りを遠ざけてゆく。
良治のことなら、気にせずともよい。
興ざめであろうからと、だまっておったが、薄々感づいておるようじゃ。
村のしきたりは、あれもよぅ心得ておるでの。
義父のことばが救いになるのか、ならないのか。
美樹はなんども、呟いていた。 良治さんは、知っている。良治さんは薄々感づいている・・・

兄嫁殿は、さすがになにも言わぬようじゃな。若いもんほど、過ちのふたつやみっつは、あるだろうに。
「ひとつやふたつ」ではなくて、「ふたつやみっつ」。
五つや六つではなくて?
思わず口にした応えに、義父はひどく満足げだった。
美樹のご両親は、しんそこ寄り添い合っておいでなのじゃろう。
さいしょのとき。さすがにすこし取り乱し涙ぐんだようすだけは、さすがの彼も嫁に告げはしなかったけれど。
すぐに事実を告げ、夫に許しを乞い、夫もすべてのことを判断して、夫婦としての不名誉を受け容れた。
よほど心が通じ合っておらぬと、できぬことじゃわ。
さしあたりいちばん気がかりなのが、義姉さんですね―――
村の女の顔に戻った美樹の声色は、むしろ冷ややかなくらいにしずかだった。
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