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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

あなた専門の、看護婦に―――

2011年01月11日(Tue) 06:07:27

恐る恐る、細めに開かれた雨戸から。
入る・・・?
怯えに震えた声が、庭先に洩れた。
若い女の声は、庭先でうずくまる男の、若い妻のものだった。
男は頬ぺたや背中、お尻や腕にまで、泥をつけていて。
たったいま、墓場から帰宅したのだと、だれの目からも明らかだった。

真夜中の帰宅を果たすところを、だれもが目にしようとはしなかった。
お互い相手の存在に気がつくと、その場で怖ろしい鬼ごっこが、始まってしまうから。
足音が聞こえてくると、どの家も。
ぴたりと雨戸を、鎖してしまう。
その足音が、自分の家のまえで立ち止まっても。
雨戸を開こうとする家は、そうそうはなかった。
泥だらけの長男の帰宅を拒んだ母親は、結婚を控えた娘と震えながら抱き合っていたし、
夫の来訪に応えなかった妻は、子供たちを守るため、わが身を夫から隔てようとした。

ふたたび集まった、血のない男衆は、
相手を取り替え合って、忍び込んでいったりもしたのだが。
どうしても妻をあきらめ切れなかった、その男は。
明け方までの限られた時間を、我が家だった場所の庭先で過ごすと、覚悟を決める。
朝陽に身体を灼かれても。
灰のひとかけらほどは、庭先にしみ込んでくれるだろうか―――
いちどは拒んだ妻が、雨戸を細めに開けたのは。
ちょうどそんなときだった。

入りなよ。わたしはいいから―――
いっしょにいよう。
喉が渇いているのなら、わたしの血を吸ってもいいんだから―――

夫を家にあげた若妻は、いそいそとジーンズを脱ぎ捨てて。
よそ行きのスーツに、着かえて行った。
いつもおめかしをするときのように、ウキウキとハミングさえしながら。
紺地に白の水玉もようのスカートの下。
白のストッキングの脚を、見せびらかして。
あなた専門の看護婦に、なってあげる。
けんめいに怯えを隠したほほ笑みに、男はいとおしげに唇を重ねていった・・・

寂しかった・・・?
わたしの血、おいしい・・・?
気分?悪くはないわ。襲っているの、あなただもの。
うふふ・・・毎晩来てね。
体調よくないときは、あまりあげられないけれど。
ずっと家にいてもいいのよ。
納戸を締めきって、あなたを匿してあげるから・・・
新婚の夫婦だけに訪れる奇蹟が、
若い妻に甘えるようにおおいかぶさる男の胸を、いつまでも震わせていた。
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